JP2012097075A - 歯牙石灰化剤及びその製造方法 - Google Patents

歯牙石灰化剤及びその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】石灰化効果の高い歯牙石灰化剤を提供する。
【解決手段】難溶性リン酸カルシウム粒子(A)、リンを含まないカルシウム化合物(B)及び水(C)を含有する歯牙石灰化剤であって、粒子(A)が、無水リン酸一水素カルシウム[CaHPO]粒子、α−リン酸三カルシウム[α−Ca(PO]粒子、β−リン酸三カルシウム[β−Ca(PO]粒子、非晶質リン酸カルシウム[Ca(PO・nHO]粒子、ピロリン酸カルシウム[Ca]粒子、ピロリン酸カルシウム2水和物[Ca・2HO]粒子、リン酸八カルシウム5水和物[Ca(PO・5HO]粒子及びリン酸一水素カルシウム2水和物[CaHPO・2HO]粒子からなる群から選択される少なくとも1種であり、粒子(A)を30〜76重量%、リンを含まないカルシウム化合物(B)を0.001〜4重量%、及び水(C)を23〜69重量%含有する歯牙石灰化剤である。
【選択図】図1

Description

本発明は、歯牙表面を石灰化させる歯牙石灰化剤に関する。
80歳になっても20本以上自分の歯を保とうとする、いわゆる8020運動(口腔衛生の向上、歯質の保存(MI:Minimal Intervention))に伴い、う蝕に罹患する前の初期う蝕の段階で石灰化を行い健全な歯質に戻す石灰化治療が近年脚光を浴びている。この観点から、有効成分としてフッ素やカルシウム可溶化剤(CPP−ACP;Casein PhosphoPeptide−Amorphous Calcium Phosphate、POs−Ca(登録商標);リン酸化オリゴ糖カルシウム)が配合された機能性ガム、歯磨材、歯面処理材が各社より発売されている。しかしながら、フッ素は歯の耐酸性を向上させて、歯質のミネラル分を強化する機能があるとされているが、大量に摂取することによる副作用の問題があった。また、カルシウム可溶化剤を配合した材料は歯質付近に高濃度のミネラル分を供給できる反面、可溶性が高いためミネラル分の沈着能力は低いという問題もあった。
特許文献1には、リン酸水素カルシウム、リン酸三カルシウム、リン酸八カルシウム、リン酸二水素カルシウムの群から選ばれた少なくとも一つとリン酸四カルシウム、酸化カルシウム、水酸化カルシウムの群から選ばれた少なくとも一つの混合物からなる粉末部と練和液を基本構成とする硬化性組成物において、練和時における練和液中のリン酸イオン濃度が30ミリモル濃度以上、あるいはpHが3以下あるいはpHが10以上となる硬化性組成物が記載されている。これによれば、生体親和性に優れ、形態付与性があり、かつ臨床応用可能な20分以内の硬化時間を持つ硬化性組成物が提供できるとされている。さらに、この硬化性組成物は、骨や歯などの硬組織の欠損部や空隙部に適応し、当該個所に所望の形態のリン酸カルシウム硬化体を形成させ、欠損空隙部の機能を補綴することと共に新生硬組織の発生を誘発するとされている。
特許文献2には、カルシウム源が追加された、リンに対するカルシウムのモル比が5/3以下であるリン酸テトラカルシウム以外のリン酸カルシウム塩と、約12.5またはそれ以上のpHを維持する様に塩基を用いて調整し、固形の結晶リン酸の不存在下で、約0.2モル/Lまたはそれ以上のリン酸塩の濃度を有する水溶液とを混合し、周囲の温度で主要生成物としてヒドロキシアパタイトに自己硬化するリン酸カルシウムセメントの製造方法が記載されている。この自己硬化性リン酸カルシウムは、特に迅速に硬化する利点があり、歯科及び整形的欠損を修復する補綴物としての利用が期待できるとされている。
特許文献3には、少なくとも1種の部分水溶性カルシウム塩を含有するカチオン性成分、水溶性のリン酸塩およびフッ化物塩を含有するアニオン性成分、及び水との混合水性組成物からなる歯の表面下病変部の再石灰化や露出象牙細管の石灰化のための液状製品が記載されている。ここで、部分水溶性カルシウム塩とは、pH7.0、25℃の水溶液中で、リン酸二カルシウム二水和物(DCPD)の溶解度より大きいカルシウム塩であって、40ppmより多く、1400ppmより多くない量のカルシウムカチオンを遊離させることができるような溶解度を有するとされている。具体的には、硫酸カルシウム、無水硫酸カルシウム、硫酸カルシウム半水和物、硫酸カルシウム二水和物、リンゴ酸カルシウム、酒石酸カルシウム、マロン酸カルシウム、およびコハク酸カルシウムが例示されている。また、練り歯磨き、ゲル剤及びクリーム剤製品には研磨剤を含有してもよいことが記載されている。研磨剤の具体例としては、β相ピロリン酸カルシウム、リン酸二カルシウム二水和物、無水リン酸カルシウム、炭酸カルシウム、ケイ酸ジルコニウム、及び熱硬化性樹脂が記載されている。
特許文献4には、少なくとも1種の水溶性カルシウム塩を約0.05〜15%含有する成分と、水溶性のリン酸塩を約0.05〜15%及びフッ化物塩を約0.01〜5%含有する成分とを混合した、歯のエナメル質の再鉱化用の製品が記載されている。水溶性カルシウム塩としては、20℃で100mlの水に少なくとも0.25g溶解する化合物とされており、具体的には、塩化カルシウム、硝酸カルシウム、酢酸カルシウム、グルコン酸カルシウム、安息香酸カルシウム、グリセロリン酸カルシウム、ギ酸カルシウム、フマル酸カルシウム、乳酸カルシウム、酪酸カルシウムおよびイソ酪酸カルシウム、リンゴ酸カルシウム、マレイン酸カルシウム、プロピオン酸カルシウム、および吉草酸カルシウムが例示されている。また、歯磨き用ペースト及びゲルを調製する際、研磨剤を使用してもよいことが記載されている。研磨剤の具体例としては、β相ピロリン酸カルシウム、リン酸二カルシウム二水和物、無水リン酸カルシウム、炭酸カルシウム、ケイ酸ジルコニウム、及び熱硬化性樹脂が記載されている。
上記先行特許文献に記載されているように、これまで、従来の技術では、水溶性カルシウム塩と水溶性のリン酸塩を主成分とする歯牙石灰化剤、あるいは難溶性リン酸カルシウム、多量の水溶性カルシウム塩、並びに水溶性リン酸塩を主成分とする歯牙石灰化剤が使用されてきた。しかしながら、難溶性リン酸カルシウム粒子、リンを含まないカルシウム化合物、及び水を一定量含有することで、石灰化効果の高い歯牙石灰化剤が得られることについての記載はなかった。また、上記先行特許文献では、水溶性カルシウム塩と水溶性のリン酸塩とが主成分として使用されているため、晶出したヒドロキシアパタイトの沈着能力が低いという欠点があり、改善が望まれていた。
特開平6−172008号公報 特表平10−504467号公報 特表2000−504037号公報 特表2001−523217号公報
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、石灰化効果の高い歯牙石灰化剤を提供することを目的とするものである。
上記課題は、難溶性リン酸カルシウム粒子(A)、リンを含まないカルシウム化合物(B)及び水(C)を含有する歯牙石灰化剤であって、難溶性リン酸カルシウム粒子(A)が、無水リン酸一水素カルシウム[CaHPO]粒子、α−リン酸三カルシウム[α−Ca(PO]粒子、β−リン酸三カルシウム[β−Ca(PO]粒子、非晶質リン酸カルシウム[Ca(PO・nHO]粒子、ピロリン酸カルシウム[Ca]粒子、ピロリン酸カルシウム2水和物[Ca・2HO]粒子、リン酸八カルシウム5水和物[Ca(PO・5HO]粒子及びリン酸一水素カルシウム2水和物[CaHPO・2HO]粒子からなる群から選択される少なくとも1種であり、難溶性リン酸カルシウム粒子(A)を30〜76重量%、リンを含まないカルシウム化合物(B)を0.001〜4重量%、及び水(C)を23〜69重量%含有することを特徴とする歯牙石灰化剤を提供することによって解決される。
このとき、リンを含まないカルシウム化合物(B)が、水酸化カルシウム[Ca(OH)]、酸化カルシウム[CaO]、塩化カルシウム[CaCl]、硝酸カルシウム[Ca(NO・nHO]、酢酸カルシウム[Ca(CHCO・nHO]、乳酸カルシウム[Ca(C]、クエン酸カルシウム[Ca(C・nHO]、メタケイ酸カルシウム[CaSiO]、ケイ酸二カルシウム[CaSiO]、ケイ酸三カルシウム[CaSiO]、及び炭酸カルシウム[CaCO]からなる群から選択される少なくとも1種であることが好適である。リン酸のアルカリ金属塩(D)を0.1〜25重量%含有することが好適である。難溶性リン酸カルシウム粒子(A)及びリンを含まないカルシウム化合物(B)の総和のCa/P比が0.9〜1.25であることが好適である。更にフッ素化合物(E)を含有することが好適であり、更にシリカ粒子(F)を含有することも好適である。
歯牙石灰化剤からなるエナメル質石灰化剤が本発明の好適な実施態様である。歯牙石灰化剤からなる歯磨材が本発明の好適な実施態様である。歯牙石灰化剤からなる歯面処理材が本発明の好適な実施態様である。
上記課題は、難溶性リン酸カルシウム粒子(A)、リンを含まないカルシウム化合物(B)及び水(C)を主成分とする液体又は水系ペーストを混合する歯牙石灰化剤の製造方法であって、難溶性リン酸カルシウム粒子(A)が、無水リン酸一水素カルシウム[CaHPO]粒子、α−リン酸三カルシウム[α−Ca(PO]粒子、β−リン酸三カルシウム[β−Ca(PO]粒子、非晶質リン酸カルシウム[Ca(PO・nHO]粒子、ピロリン酸カルシウム[Ca]粒子、ピロリン酸カルシウム2水和物[Ca・2HO]粒子、リン酸八カルシウム5水和物[Ca(PO・5HO]粒子及びリン酸一水素カルシウム2水和物[CaHPO・2HO]粒子からなる群から選択される少なくとも1種であり、難溶性リン酸カルシウム粒子(A)を30〜76重量%、リンを含まないカルシウム化合物(B)を0.001〜4重量%、水(C)を主成分とする液体又は水系ペーストを23〜69重量%配合することを特徴とする歯牙石灰化剤の製造方法を提供することによって解決される。
このとき、難溶性リン酸カルシウム粒子(A)及びリンを含まないカルシウム化合物(B)を含む粉体又は非水系ペーストに、水(C)を主成分とする液体又は水系ペーストを加えて混合することが好適である。難溶性リン酸カルシウム粒子(A)を含む粉体又は非水系ペーストに、水(C)を主成分としリンを含まないカルシウム化合物(B)を含む液体又は水系ペーストを加えて混合することが好適である。
また、このとき、リンを含まないカルシウム化合物(B)を含む粉体又は非水系ペーストに、水(C)を主成分とし難溶性リン酸カルシウム粒子(A)を含む液体又は水系ペーストを加えて混合することが好適である。水(C)を主成分とし難溶性リン酸カルシウム粒子(A)を含む液体又は水系ペーストに、水(C)を主成分としリンを含まないカルシウム化合物(B)を含む液体又は水系ペーストを加えて混合することが好適である。混合比(P/L)が0.5〜3であることも好適である。
上記課題は、難溶性リン酸カルシウム粒子(A)及びリンを含まないカルシウム化合物(B)を含む粉体又は非水系ペーストと、水(C)を主成分とする液体又は水系ペーストとからなる歯牙石灰化剤キットを提供することによって解決される。上記課題は、難溶性リン酸カルシウム粒子(A)を含む粉体又は非水系ペーストと、リンを含まないカルシウム化合物(B)を含む粉体又は非水系ペーストと、水(C)を主成分とする液体又は水系ペーストとからなる歯牙石灰化剤キットを提供することによって解決される。このとき、難溶性リン酸カルシウム粒子(A)の平均粒径が0.05〜7μmであり、リンを含まないカルシウム化合物(B)の平均粒径が0.05〜12μmであることが好適である。
上記課題は、難溶性リン酸カルシウム粒子(A)、リンを含まないカルシウム化合物(B)、及びリン酸のアルカリ金属塩(D)を含む粉体又は非水系ペーストと、水(C)を主成分とする液体又は水系ペーストとからなる歯牙石灰化剤キットを提供することによって解決される。上記課題は、難溶性リン酸カルシウム粒子(A)及びリン酸のアルカリ金属塩(D)を含む粉体又は非水系ペーストと、リンを含まないカルシウム化合物(B)を含む粉体又は非水系ペーストと、水(C)を主成分とする液体又は水系ペーストとからなる歯牙石灰化剤キットを提供することによって解決される。上記課題は、難溶性リン酸カルシウム粒子(A)を含む粉体又は非水系ペーストと、リンを含まないカルシウム化合物(B)及びリン酸のアルカリ金属塩(D)を含む粉体又は非水系ペーストと、水(C)を主成分とする液体又は水系ペーストとからなる歯牙石灰化剤キットを提供することによって解決される。このとき、難溶性リン酸カルシウム粒子(A)の平均粒径が0.05〜7μmであり、リンを含まないカルシウム化合物(B)の平均粒径が0.05〜12μmであり、リン酸のアルカリ金属塩(D)の平均粒径が1〜20μmであることが好適である。
上記課題は、難溶性リン酸カルシウム粒子(A)を含む粉体又は非水系ペーストと、水(C)を主成分としリンを含まないカルシウム化合物(B)を含む液体又は水系ペーストとからなる歯牙石灰化剤キットを提供することによって解決される。このとき、難溶性リン酸カルシウム粒子(A)の平均粒径が0.05〜7μmであることが好適である。
上記課題は、難溶性リン酸カルシウム粒子(A)及びリン酸のアルカリ金属塩(D)を含む粉体又は非水系ペーストと、水(C)を主成分としリンを含まないカルシウム化合物(B)を含む液体又は水系ペーストとからなる歯牙石灰化剤キットを提供することによって解決される。このとき、難溶性リン酸カルシウム粒子(A)の平均粒径が0.05〜7μmであり、リン酸のアルカリ金属塩(D)の平均粒径が1〜20μmであることが好適である。
上記課題は、水(C)を主成分とし難溶性リン酸カルシウム粒子(A)を含む液体又は水系ペーストと、水(C)を主成分としリンを含まないカルシウム化合物(B)を含む液体又は水系ペーストとからなる歯牙石灰化剤キットを提供することによって解決される。上記課題は、水(C)を主成分とし難溶性リン酸カルシウム粒子(A)を含む液体又は水系ペーストと、水(C)を主成分としリンを含まないカルシウム化合物(B)を含む液体又は水系ペーストと、リン酸のアルカリ金属塩(D)を含む粉体又は非水系ペーストとからなる歯牙石灰化剤キットを提供することによって解決される。このとき、リン酸のアルカリ金属塩(D)の平均粒径が1〜20μmであることが好適である。
上記課題は、リンを含まないカルシウム化合物(B)を含む粉体又は非水系ペーストと、水(C)を主成分とし難溶性リン酸カルシウム粒子(A)を含む液体又は水系ペーストとからなる歯牙石灰化剤キットを提供することによって解決される。このとき、リンを含まないカルシウム化合物(B)の平均粒径が0.05〜12μmであることが好適である。
上記課題は、リンを含まないカルシウム化合物(B)及びリン酸のアルカリ金属塩(D)を含む粉体又は非水系ペーストと、水(C)を主成分とし難溶性リン酸カルシウム粒子(A)を含む液体又は水系ペーストとからなる歯牙石灰化剤キットを提供することによって解決される。このとき、リンを含まないカルシウム化合物(B)の平均粒径が0.05〜12μmであり、リン酸のアルカリ金属塩(D)の平均粒径が1〜20μmであることが好適である。
本発明によれば、石灰化効果の高い歯牙石灰化剤が提供され、特にエナメル質表面に対する石灰化効果の高い歯牙石灰化剤が提供される。このことにより、初期う蝕の段階での治療が可能となるばかりでなく、健全歯質、特に健全エナメル質を更に強化することが可能となり、う蝕を予防する材料を提供することが可能となる。
実施例8において、エナメル質表層に作製した脱灰エナメル質(脱灰部分)のコンタクトマイクロラジオグラム像である。 実施例8において、エナメル質表層に作製した脱灰エナメル質を歯牙石灰化剤により短時間接触条件で石灰化したエナメル質(石灰化部分)のコンタクトマイクロラジオグラム像である。
本発明の歯牙石灰化剤は、無水リン酸一水素カルシウム[CaHPO]粒子(以下、単にDCPAと略すことがある)、α−リン酸三カルシウム[α−Ca(PO]粒子、β−リン酸三カルシウム[β−Ca(PO]粒子(以下、単にβ-TCPと略すことがある)、非晶質リン酸カルシウム[Ca(PO・nHO]粒子、ピロリン酸カルシウム[Ca]粒子、ピロリン酸カルシウム2水和物[Ca・2HO]粒子、リン酸八カルシウム5水和物[Ca(PO・5HO]粒子(以下、単にOCPと略すことがある)、及びリン酸一水素カルシウム2水和物[CaHPO・2HO]粒子(以下、単にDCPDと略すことがある)からなる群から選択される少なくとも1種である難溶性リン酸カルシウム粒子(A)を30〜76重量%、リンを含まないカルシウム化合物(B)を0.001〜4重量%、及び水(C)を23〜69重量%含有するものである。その作用機序は必ずしも明らかではないが、以下のようなメカニズムが推定される。
難溶性リン酸カルシウム粒子(A)、リンを含まないカルシウム化合物(B)及び水(C)を一定量含有する歯牙石灰化剤を調製して用いた際に、難溶性リン酸カルシウム粒子(A)が溶解して得られるカルシウムイオンとリン酸イオン、リンを含まないカルシウム化合物(B)が溶解して得られるカルシウムイオンとが歯質中に浸透した後、歯質内部で反応してエネルギー的に安定なヒドロキシアパタイト(以下HApと略すことがある)が析出するようである。その結果、エナメル質表層付近の脱灰エナメル質が石灰化されて、該エナメル質表面のミネラル成分が回復されるようである。このことにより、初期う蝕の段階での治療が可能となる。ここで本発明者等は、上記効果を奏するにはカルシウムイオンとリン酸イオンとが供給される速度のバランス、並びに液材中でのこれらイオンの濃度が重要であると推察している。即ち、pH7.0で20℃の水に対するカルシウムイオンの放出量が1.0×10−3mol/l以上を示すリン酸カルシウム粒子を用いた場合には、水溶液中のカルシウムイオン濃度、並びにリン酸イオン濃度が高くなり過ぎ、歯質にこれらイオンが供給される前にHApに転化することで石灰化効果が低くなると推察される。したがって、難溶性リン酸カルシウム粒子(A)、リンを含まないカルシウム化合物(B)及び水(C)を一定量含有することで、カルシウムイオンとリン酸イオンとの供給バランス、並びに液剤中でのこれらイオンの濃度が適切となる本発明の構成を採用する意義が大きい。
本発明の歯牙石灰化剤は、難溶性リン酸カルシウム粒子(A)を30〜76重量%含有することが必要である。難溶性リン酸カルシウム粒子(A)の含有量が30重量%未満の場合、組成物中のイオン濃度が少なすぎるため、HApの析出が阻害されて石灰化効果が得られないおそれがあり、35重量%以上であることが好ましく、45重量%以上であることが更に好ましい。一方、難溶性リン酸カルシウム粒子(A)の含有量が76重量%を超える場合、液材成分の含有量が少なくなり、組成物を充分ペースト化できなくなるため、操作性が悪くなるおそれがある。また、HApの析出が阻害されて石灰化効果が得られないおそれがあり、70重量%以下であることが好ましく、65重量%以下であることが更に好ましい。
本発明で用いられる難溶性リン酸カルシウム粒子(A)の平均粒径は、0.05〜7μmであることが好ましい。平均粒径が0.05μm未満の場合、平均粒径が小さすぎて製造することが困難である。また、液剤への難溶性リン酸カルシウム粒子(A)の溶解が過多となるため液剤中のイオン濃度が高くなり過ぎるおそれがある。更には液剤との混合により得られるペーストの粘度が高くなり過ぎるおそれがある。一方、難溶性リン酸カルシウム粒子(A)の平均粒径が7μmを超える場合、難溶性リン酸カルシウム粒子(A)が液剤へ溶解しにくくなるおそれがある。その結果、液剤中でのこれらイオン濃度が過少となることから歯質中でのHApの析出が円滑でなくなり、石灰化効果が低下するおそれがある。難溶性リン酸カルシウム粒子(A)の平均粒径は、6μm以下がより好ましい。難溶性リン酸カルシウム粒子(A)の平均粒径は、レーザー回折式粒度分布測定装置を用いて測定し、算出したものである。
このような平均粒径を有する難溶性リン酸カルシウム粒子(A)の製造方法は特に限定されず、市販品を入手できるのであればそれを使用してもよいが、市販品を更に粉砕することが好ましい場合が多い。その場合、ボールミル、ライカイ機、ジェットミルなどの粉砕装置を使用することができる。また、難溶性リン酸カルシウム原料粉体をアルコールなどの液体の媒体と共にライカイ機、ボールミル等を用いて粉砕してスラリーを調製し、得られたスラリーを乾燥させることにより難溶性リン酸カルシウム粒子(A)を得ることもできる。このときの粉砕装置としては、ボールミルを用いることが好ましく、そのポット及びボールの材質としては、好適にはアルミナやジルコニアが採用される。また、希薄な難溶性リン酸カルシウムの溶液をスプレードライすることでナノレベルの粒径を持つ難溶性リン酸カルシウム粒子(A)を得ることができる。
本発明で用いられるリンを含まないカルシウム化合物(B)としては特に限定されず、水酸化カルシウム[Ca(OH)]、酸化カルシウム[CaO]、塩化カルシウム[CaCl]、硝酸カルシウム[Ca(NO・nHO]、酢酸カルシウム[Ca(CHCO・nHO]、乳酸カルシウム[Ca(C]、クエン酸カルシウム[Ca(C・nHO]、メタケイ酸カルシウム[CaSiO]、ケイ酸二カルシウム[CaSiO]、ケイ酸三カルシウム[CaSiO]、及び炭酸カルシウム[CaCO]等が挙げられ、これらのうちの1種又は2種以上が用いられる。中でも、HAp析出能の観点より、水酸化カルシウム、酸化カルシウム、メタケイ酸カルシウム、ケイ酸二カルシウム、ケイ酸三カルシウムが好ましく、水酸化カルシウムがより好ましい。
本発明の歯牙石灰化剤は、リンを含まないカルシウム化合物(B)を0.001〜4重量%含有することが必要である。リンを含まないカルシウム化合物(B)の含有量が0.001重量%未満の場合、難溶性リン酸カルシウム粒子(A)は、ほとんど溶解せず、溶解してもHApの析出がほとんど起こらないため、歯質中でのHApの析出が円滑でなくなり、石灰化効果が低下するおそれがある。リンを含まないカルシウム化合物(B)は、0.001重量%以上の場合、難溶性リン酸カルシウム粒子(A)の表面を溶解し、HApを析出することが可能であり、好ましくは0.005重量%以上、より好ましくは0.01重量%以上である。リンを含まないカルシウム化合物(B)の含有量が4重量%を超える場合、溶液中のカルシウムイオン濃度が高くなりすぎるため、カルシウムイオンとリン酸イオンとの供給バランスが崩れ、HAp析出が円滑でなくなるおそれがある。リンを含まないカルシウム化合物(B)の含有量は、3.8重量%以下であることがより好ましく、2重量%以下であることが特に好ましい。
さらに本発明で用いられるリンを含まないカルシウム化合物(B)は、粉体のまま加えて配合してもよいし、液材として加えて配合してもよく、いずれの場合であっても歯牙石灰化効果を有する。ただし、リンを含まないカルシウム化合物(B)は、粉体のまま加えて配合した方が、HApの析出により失われたカルシウムイオンが常に供給され、溶液中のカルシウムイオン濃度が安定するため、難溶性リン酸カルシウム粒子(A)から放出されるカルシウムイオンと、リン酸イオン濃度が安定し、長時間に渡り歯質中でのHApの析出能が維持されるため好ましい。
本発明で用いられる難溶性リン酸カルシウム粒子(A)及びリンを含まないカルシウム化合物(B)の総和のCa/P比は、0.9〜1.25が好ましい。通常Ca/P比は、HAp中のCa/P比と同等である1.67とするのが好ましいとされている。本発明の組成物では、難溶性リン酸カルシウム粒子(A)は、リンを含まないカルシウム化合物(B)と比較すると溶解し難いため、組成物のCa/P比は、0.9〜1.25であっても、溶液中のCa/P比は1.67付近となり、HApが析出し易い状態となる。溶液中のカルシウムイオンとリン酸イオンの供給バランスが崩れると、歯質中でのHApの析出量が低下するおそれがある。Ca/P比は、1.2以下であることがより好ましい。一方で、溶液中のカルシウムイオンとリン酸イオンの供給バランスの観点より、Ca/P比は、1以上であることがより好ましい。
リンを含まないカルシウム化合物(B)の平均粒径は、0.05〜12μmであることが好ましい。平均粒径が0.05μm未満の場合、液剤への溶解が過多となるため液剤中のイオン濃度が高くなりすぎるおそれがある。更には液剤との混合により得られるペーストの粘度が高くなり過ぎるおそれがあり、より好適には0.5μm以上である。一方、平均粒径が12μmを超える場合、液剤へ溶解しにくくなるおそれがある。その結果、液剤中でのカルシウムイオン濃度が過少となることから歯質中でのHApの析出が円滑でなくなり、石灰化効果が低下するおそれがある。リンを含まないカルシウム化合物(B)の平均粒径は、より好適には7μm以下である。リンを含まないカルシウム化合物(B)の平均粒径は、レーザー回折式粒度分布測定装置を用いて測定し、算出したものである。
このような平均粒径を有するリンを含まないカルシウム化合物(B)の製造方法は、上述した難溶性リン酸カルシウム粒子(A)と同様に行うことができる。
本発明の歯牙石灰化剤は、難溶性リン酸カルシウム粒子(A)及びリンを含まないカルシウム化合物(B)に加えて、更に水(C)を23〜69重量%含有することが必要である。このことにより、石灰化効果が高く、特にエナメル質表面に対する石灰化効果が高い利点を有する。水(C)の配合量が23重量%未満の場合、液材成分の含有量が少なくなり、組成物を充分ペースト化できなくなるため、操作性が悪くなるおそれがある。また、HApの析出が阻害されて石灰化効果が得られないおそれがあり、25重量%以上であることが好ましく、30重量%以上であることがより好ましい。一方、水(C)の配合量が69重量%を超える場合、HApの析出が阻害されて石灰化効果が得られないおそれがあり、60重量%以下であることが好ましく、50重量%以下であることがより好ましい。
更に本発明の歯牙石灰化剤は、リン酸のアルカリ金属塩(D)を含有させることが好ましい。リン酸のアルカリ金属塩(D)は、HApが析出する際、リン酸イオンを与えHApの析出速度を向上させる。難溶性リン酸カルシウム粒子(A)とリンを含まないカルシウム化合物(B)から放出されたカルシウムイオンとリン酸イオンによりHApを生成する際、リン酸のアルカリ金属塩(D)から放出されたリン酸イオンが存在すると、HAp析出速度が向上するため、歯質中のHAp析出量が増加し、石灰化率を向上させることができる。本発明で使用するリン酸のアルカリ金属塩(D)としては特に限定されず、リン酸一水素二ナトリウム、リン酸一水素二カリウム、リン酸二水素一リチウム、リン酸二水素一ナトリウム、リン酸二水素一カリウム、リン酸三ナトリウム、リン酸三カリウム、ならびにこれらの水和物等が挙げられ、これらのうちの1種又は2種以上が用いられる。中でも、安全性や純度の高い原料が容易に入手できる観点から、リン酸のアルカリ金属塩(D)がリン酸一水素二ナトリウム及び/又はリン酸二水素一ナトリウムであることが好ましい。
リン酸のアルカリ金属塩(D)の配合量は、0.1〜25重量%であることが好ましい。リン酸のアルカリ金属塩(D)の配合量が0.1重量%未満の場合、HApの析出速度が低下し、石灰化効果が低下するおそれがあり、0.3重量%以上がより好ましく、1重量%以上であることが更に好ましい。一方、リン酸のアルカリ金属塩(D)の含有量が25重量%を超える場合、リン酸イオンが過剰となり、HApの析出速度が低下し、石灰化効果が低下するおそれがあり、20重量%以下であることがより好ましく、15重量%以下であることが特に好ましい。
さらに本発明で用いられるリン酸のアルカリ金属塩(D)は、粉体のまま加えて配合してもよいし、液材として加えて配合してもよく、いずれの場合であっても歯牙石灰化効果を有する。ただし、リン酸のアルカリ金属塩(D)は、粉体のまま加えて配合した方が、短時間接触歯牙石灰化率だけでなく、長時間接触歯牙石灰化率を向上させることができ、特に、長時間接触歯牙石灰化率をより向上させることができるため好ましい。
リン酸のアルカリ金属塩(D)の平均粒径は、1〜20μmであることが好ましい。平均粒径が1μm未満の場合、液材への溶解が早すぎて、歯牙石灰化組成物中のリン酸イオン濃度が高くなるため、カルシウムイオンとリン酸イオンの供給バランスが崩れ、HApの析出速度が低下し、石灰化効果が低下するおそれがある。更には、リン酸のアルカリ金属塩粒子同士の二次凝集が発生し、同時に混合する他の粒子との分散性が低下する。より好適には3μm以上である。一方、平均粒径が20μmを超える場合、リン酸のアルカリ金属塩(D)が液材へ溶解しにくくなり、HApの析出速度が低下し、石灰化効果が低下するおそれがある。リン酸のアルカリ金属塩(D)の平均粒径は、より好適には15μm以下である。リン酸のアルカリ金属塩(D)の平均粒径は、レーザー回折式粒度分布測定装置を用いて測定し、算出したものである。
このような平均粒径を有するリン酸のアルカリ金属塩(D)の製造方法は、上述した難溶性リン酸カルシウム粒子(A)と同様に行うことができる。
本発明の歯牙石灰化剤は、更にフッ素化合物(E)を含有することが好ましい。このことにより、歯質に耐酸性を付与させるとともに石灰化を促進させることが可能となる。本発明で用いられるフッ素化合物(E)としては特に限定されず、フッ化ナトリウム、フッ化カリウム、フッ化アンモニウム、フッ化リチウム、フッ化セシウム、フッ化マグネシウム、フッ化カルシウム、フッ化ストロンチウム、フッ化バリウム、フッ化銅、フッ化ジルコニウム、フッ化アルミニウム、フッ化スズ、モノフルオロリン酸ナトリウム、モノフルオロリン酸カリウム、フッ化水素酸、フッ化チタンナトリウム、フッ化チタンカリウム、ヘキシルアミンハイドロフルオライド、ラウリルアミンハイドロフルオライド、グリシンハイドロフルオライド、アラニンハイドロフルオライド、フルオロシラン類、フッ化ジアミン銀等が挙げられる。中でも石灰化促進効果が高い観点からフッ化ナトリウム、モノフルオロリン酸ナトリウム、フッ化スズが好適に用いられる。
本発明で用いられるフッ素化合物(E)の使用量は特に限定されず、フッ素化合物(E)の換算フッ化物イオンを0.01〜3重量%含むことが好ましい。フッ素化合物(E)の換算フッ化物イオンの使用量が0.01重量%未満の場合、石灰化を促進する効果が低下するおそれがあり、0.05重量%以上であることがより好ましい。一方、フッ素化合物(E)の換算フッ化物イオンの使用量が3重量%を超える場合、安全性が損なわれるおそれがあり、1重量%以下であることがより好ましい。
本発明の歯牙石灰化剤は、更にシリカ粒子(F)を含有することが好ましい。これにより、得られる本発明の歯牙石灰化剤の操作性を向上させることができる。かかる操作性向上の観点から一次粒子径が0.001〜0.1μmのシリカ粒子(F)が好ましく使用される。市販品としては、「アエロジルOX50」、「アエロジル50」、「アエロジル200」、「アエロジル380」、「アエロジルR972」、「アエロジル130」(以上、いずれも日本アエロジル社製、商品名)が例示される。
本発明で用いられるシリカ粒子(F)の使用量は特に限定されず、シリカ粒子(F)を0.1〜10重量%含むことが好ましい。シリカ粒子(F)の含有量が0.1重量%未満の場合、操作性が低下するおそれがあり、0.3重量%以上であることがより好ましい。一方、シリカ粒子(F)の含有量が10重量%を超える場合、粉体のかさ密度が低下しすぎることで操作性が低下するばかりか、ペーストとした際の粘度が上昇するおそれがあり、5重量%以下であることがより好ましい。
本発明の歯牙石灰化剤は、さらにシリカ粒子(F)以外のフィラーを配合してもよい。フィラーは、1種単独を配合してもよく、複数種類を組み合わせて配合してもよい。フィラーとしては、カオリン、クレー、雲母、マイカ等のシリカを基材とする鉱物;シリカを基材とし、Al23、B23、TiO2、ZrO2、BaO、La23、SrO、ZnO、CaO、P25、Li2O、Na2Oなどを含有するセラミックス及びガラス類が例示される。ガラス類としては、ランタンガラス、バリウムガラス、ストロンチウムガラス、ソーダガラス、リチウムボロシリケートガラス、亜鉛ガラス、フルオロアルミノシリケートガラス、ホウ珪酸ガラス、バイオガラスが好適に用いられる。結晶石英、アルミナ、酸化チタン、酸化イットリウム、ジルコニア、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、フッ化イッテルビウムも好適に用いられる。
本発明の歯牙石灰化剤は、本発明の効果を阻害しない範囲で難溶性リン酸カルシウム粒子(A)、リンを含まないカルシウム化合物(B)、水(C)、リン酸の金属塩(D)、フッ素化合物(E)、及びシリカ粒子(F)以外の成分を含有しても構わない。例えば、可溶性リン酸カルシウムも必要に応じて配合することができる。可溶性リン酸カルシウムの具体例としては、リン酸四カルシウム、無水リン酸二水素カルシウム、酸性ピロリン酸カルシウムが挙げられる。また他にも、増粘剤を配合することができる。増粘剤の具体例としては、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、ポリアクリル酸、ポリスチレンスルホン酸、ポリスチレンスルホン酸塩、ポリグルタミン酸、ポリグルタミン酸塩、ポリアスパラギン酸、ポリアスパラギン酸塩、ポリLリジン、ポリLリジン塩、セルロース以外のデンプン、アルギン酸、アルギン酸塩、カラジーナン、グアーガム、キタンサンガム、セルロースガム、ヒアルロン酸、ヒアルロン酸塩、ペクチン、ペクチン塩、キチン、キトサン等の多糖類、アルギン酸プロピレングリコールエステル等の酸性多糖類エステル、またコラーゲン、ゼラチン及びこれらの誘導体などのタンパク質類等の高分子などから選択される1つ又は2つ以上が挙げられるが、水への溶解性及び粘性の面からはカルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、アルギン酸、アルギン酸塩、キトサン、ポリグルタミン酸、ポリグルタミン酸塩から選択される少なくとも1つが好ましい。増粘剤は、粉体に配合してもよいし液材に配合してもよく、また混合中のペーストに配合してもよい。
また、必要に応じて、グリセリン、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジグリセリン等の多価アルコール、キシリトール、ソルビトール、エリスリトール等の糖アルコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のポリエーテル、アスパルテーム、アセスルファムカリウム、カンゾウ抽出液、サッカリン、サッカリンナトリウム等の人工甘味料などを加えてもよい。更に、薬理学的に許容できるあらゆる薬剤等を配合することができる。セチルピリジニウムクロリド等に代表される抗菌剤、消毒剤、抗癌剤、抗生物質、アクトシン、PEG1などの血行改善薬、bFGF、PDGF、BMPなどの増殖因子、骨芽細胞、象牙芽細胞、さらに未分化な骨髄由来幹細胞、胚性幹(ES)細胞、線維芽細胞等の分化細胞を遺伝子導入により脱分化・作製した人工多能性幹(iPS:induced Pluripotent Stem)細胞ならびにこれらを分化させた細胞など硬組織形成を促進させる細胞などを配合させることができる。
本発明では、難溶性リン酸カルシウム粒子(A)、リンを含まないカルシウム化合物(B)、及び水(C)を主成分とする液体又は水系ペーストを加えて混合することによってペースト状の歯牙石灰化剤を得ることができる。水(C)を含むこのペースト状の歯牙石灰化剤は、直ちにHApに転化する反応が起こり始めるため、医療現場で使用する直前に混合して調製することが好ましい。混合操作としては特に限定されず、手混合、スタティックミキサーを用いた混合等が好ましく採用される。
本発明において、歯牙石灰化剤を得る方法は特に限定されない。難溶性リン酸カルシウム粒子(A)及びリンを含まないカルシウム化合物(B)を含む粉体又は非水系ペーストに、水(C)を主成分とする液体又は水系ペーストを加えて混合することによってペースト状の歯牙石灰化剤を得ることができる。難溶性リン酸カルシウム粒子(A)を含む粉体又は非水系ペーストと、リンを含まないカルシウム化合物(B)を含む粉体又は非水系ペーストと、水(C)を主成分とする液体又は水系ペーストとを混合することによってもペースト状の歯牙石灰化剤を得ることができる。リンを含まないカルシウム化合物(B)を含む粉体又は非水系ペーストに、水(C)を主成分とし難溶性リン酸カルシウム粒子(A)を含む液体又は水系ペーストとを混合することによってもペースト状の歯牙石灰化剤を得ることができる。難溶性リン酸カルシウム粒子(A)を含む粉体又は非水系ペーストに、水(C)を主成分としリンを含まないカルシウム化合物(B)を含む液体又は水系ペーストとを混合することによってもペースト状の歯牙石灰化剤を得ることができる。水(C)を主成分とし難溶性リン酸カルシウム粒子(A)を含む液体又は水系ペーストと、水(C)を主成分としリンを含まないカルシウム化合物(B)を含む液体又は水系ペーストとを混合することによってもペースト状の歯牙石灰化剤を得ることができる。
また、更にリン酸のアルカリ金属塩(D)を配合する場合の混合方法についても特に限定されない。難溶性リン酸カルシウム粒子(A)、リンを含まないカルシウム化合物(B)及びリン酸のアルカリ金属塩(D)を含む粉体又は非水系ペーストに、水(C)を主成分とする液体又は水系ペーストを加えて混合することによってペースト状の歯牙石灰化剤を得ることができる。難溶性リン酸カルシウム粒子(A)及びリンを含まないカルシウム化合物(B)を含む粉体又は非水系ペーストに、水(C)を主成分としリン酸のアルカリ金属塩(D)を含む液体又は水系ペーストを加えて混合することによってペースト状の歯牙石灰化剤を得ることができる。難溶性リン酸カルシウム粒子(A)及びリン酸のアルカリ金属塩(D)を含む粉体又は非水系ペーストと、リンを含まないカルシウム化合物(B)を含む粉体又は非水系ペーストと、水(C)を主成分とする液体又は水系ペーストとを混合することによってもペースト状の歯牙石灰化剤を得ることができる。難溶性リン酸カルシウム粒子(A)を含む粉体又は非水系ペーストと、リンを含まないカルシウム化合物(B)及びリン酸のアルカリ金属塩(D)を含む粉体又は非水系ペーストと、水(C)を主成分とする液体又は水系ペーストとを混合することによってもペースト状の歯牙石灰化剤を得ることができる。
難溶性リン酸カルシウム粒子(A)を含む粉体又は非水系ペーストと、リンを含まないカルシウム化合物(B)を含む粉体又は非水系ペーストと、水(C)を主成分としリン酸のアルカリ金属塩(D)を含む液体又は水系ペーストとを混合することによってもペースト状の歯牙石灰化剤を得ることができる。リンを含まないカルシウム化合物(B)及びリン酸のアルカリ金属塩(D)を含む粉体又は非水系ペーストに、水(C)を主成分とし難溶性リン酸カルシウム粒子(A)を含む液体又は水系ペーストとを混合することによってもペースト状の歯牙石灰化剤を得ることができる。リンを含まないカルシウム化合物(B)を含む粉体又は非水系ペーストに、水(C)を主成分とし、難溶性リン酸カルシウム粒子(A)とリン酸のアルカリ金属塩(D)を含む液体又は水系ペーストとを混合することによってもペースト状の歯牙石灰化剤を得ることができる。難溶性リン酸カルシウム粒子(A)及びリン酸のアルカリ金属塩(D)を含む粉体又は非水系ペーストに、水(C)を主成分としリンを含まないカルシウム化合物(B)を含む液体又は水系ペーストとを混合することによってもペースト状の歯牙石灰化剤を得ることができる。難溶性リン酸カルシウム粒子(A)を含む粉体又は非水系ペーストに、水(C)を主成分とし、リンを含まないカルシウム化合物(B)及びリン酸のアルカリ金属塩(D)を含む液体又は水系ペーストとを混合することによってもペースト状の歯牙石灰化剤を得ることができる。
水(C)を主成分とし難溶性リン酸カルシウム粒子(A)を含む液体又は水系ペーストと、水(C)を主成分としリンを含まないカルシウム化合物(B)を含む液体又は水系ペーストと、リン酸のアルカリ金属塩(D)を含む粉体又は非水系ペーストとを混合することによってもペースト状の歯牙石灰化剤を得ることができる。水(C)を主成分とし難溶性リン酸カルシウム粒子(A)及びリン酸のアルカリ金属塩(D)を含む液体又は水系ペーストと、水(C)を主成分としリンを含まないカルシウム化合物(B)を含む液体又は水系ペーストとを混合することによってもペースト状の歯牙石灰化剤を得ることができる。水(C)を主成分とし難溶性リン酸カルシウム粒子(A)を含む液体又は水系ペーストと、水(C)を主成分としリンを含まないカルシウム化合物(B)及びリン酸のアルカリ金属塩(D)を含む液体又は水系ペーストとを混合することによってもペースト状の歯牙石灰化剤を得ることができる。
ここで、良好な操作性及びより高い石灰化効果の観点から、難溶性リン酸カルシウム粒子(A)及びリンを含まないカルシウム化合物(B)を含む粉体又は非水系ペーストに、水(C)を主成分とする液体又は水系ペーストを加えて混合することが好ましい。難溶性リン酸カルシウム粒子(A)を含む粉体又は非水系ペーストに、水(C)を主成分としリンを含まないカルシウム化合物(B)を含む液体又は水系ペーストを加えて混合することが好ましい。リンを含まないカルシウム化合物(B)を含む粉体又は非水系ペーストに、水(C)を主成分とし難溶性リン酸カルシウム粒子(A)を含む液体又は水系ペーストを加えて混合することが好ましい。また、水(C)を主成分とし難溶性リン酸カルシウム粒子(A)を含む液体又は水系ペーストに、水(C)を主成分としリンを含まないカルシウム化合物(B)を含む液体又は水系ペーストを加えて混合することが好ましい。
これらの方法は、使用直前に混合して調製する際の操作が簡便である。非水系ペーストに使用される水以外の溶媒としては特に限定されず、例えば、グリセリン、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジグリセリン等の多価アルコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のポリエーテルなどが例示される。また、上記説明した歯牙石灰化剤の製造方法において、リンを含まないカルシウム化合物(B)が粉体又は非水系ペーストに含まれる場合、リンを含まないカルシウム化合物(B)としては、水酸化カルシウム、酸化カルシウム、メタケイ酸カルシウム、ケイ酸二カルシウム、並びにケイ酸三カルシウムが好適に用いられる。
ここで、水(C)の存在下では、難溶性リン酸カルシウム粒子(A)及びリンを含まないカルシウム化合物(B)を含有する歯牙石灰化剤が速やかにHApに転化する反応が起こるため、難溶性リン酸カルシウム粒子(A)及びリンを含まないカルシウム化合物(B)と、水(C)を主成分とする液体又は水系ペーストとを予め混合して保存しておくことができない。難溶性リン酸カルシウム粒子(A)及びリンを含まないカルシウム化合物(B)を含む粉体又は非水系ペーストと、水(C)を主成分とする液体又は水系ペーストとからなる歯牙石灰化剤キットであることが本発明の実施態様の一つである。難溶性リン酸カルシウム粒子(A)を含む粉体又は非水系ペーストと、リンを含まないカルシウム化合物(B)を含む粉体又は非水系ペーストと、水(C)を主成分とする液体又は水系ペーストとからなる歯牙石灰化剤キットであることが本発明の実施態様の一つである。難溶性リン酸カルシウム粒子(A)を含む粉体又は非水系ペーストと、水(C)を主成分としリンを含まないカルシウム化合物(B)を含む液体又は水系ペーストとからなる歯牙石灰化剤キットであることが本発明の実施態様の一つである。水(C)を主成分とし難溶性リン酸カルシウム粒子(A)を含む液体又は水系ペーストと、水(C)を主成分としリンを含まないカルシウム化合物(B)を含む液体又は水系ペーストとからなる歯牙石灰化剤キットであることが本発明の実施態様の一つである。リンを含まないカルシウム化合物(B)を含む粉体又は非水系ペーストと、水(C)を主成分とし難溶性リン酸カルシウム粒子(A)を含む液体又は水系ペーストとからなる歯牙石灰化剤キットであることが本発明の実施態様の一つである。
本発明の歯牙石灰化剤において、リン酸のアルカリ金属塩(D)を含有する場合、難溶性リン酸カルシウム粒子(A)、リンを含まないカルシウム化合物(B)、及びリン酸のアルカリ金属塩(D)を含む粉体又は非水系ペーストと、水(C)を主成分とする液体又は水系ペーストとからなる歯牙石灰化剤キットであることが本発明の実施態様の一つである。難溶性リン酸カルシウム粒子(A)及びリン酸のアルカリ金属塩(D)を含む粉体又は非水系ペーストと、リンを含まないカルシウム化合物(B)を含む粉体又は非水系ペーストと、水(C)を主成分とする液体又は水系ペーストとからなる歯牙石灰化剤キットであることが本発明の実施態様の一つである。難溶性リン酸カルシウム粒子(A)を含む粉体又は非水系ペーストと、リンを含まないカルシウム化合物(B)及びリン酸のアルカリ金属塩(D)を含む粉体又は非水系ペーストと、水(C)を主成分とする液体又は水系ペーストとからなる歯牙石灰化剤キットであることが本発明の実施態様の一つである。難溶性リン酸カルシウム粒子(A)及びリン酸のアルカリ金属塩(D)を含む粉体又は非水系ペーストと、水(C)を主成分としリンを含まないカルシウム化合物(B)を含む液体又は水系ペーストとからなる歯牙石灰化剤キットであることが本発明の実施態様の一つである。水(C)を主成分とし難溶性リン酸カルシウム粒子(A)を含む液体又は水系ペーストと、水(C)を主成分としリンを含まないカルシウム化合物(B)を含む液体又は水系ペーストと、リン酸のアルカリ金属塩(D)を含む粉体又は非水系ペーストとからなる歯牙石灰化剤キットであることが本発明の実施態様の一つである。リンを含まないカルシウム化合物(B)及びリン酸のアルカリ金属塩(D)を含む粉体又は非水系ペーストと、水(C)を主成分とし難溶性リン酸カルシウム粒子(A)を含む液体又は水系ペーストとからなる歯牙石灰化剤キットであることが本発明の実施態様の一つである。
これらの方法は、使用直前に混合して調製する際の操作が簡便である利点も有する。非水系ペーストに使用される水(C)以外の溶媒としては特に限定されず、例えば、グリセリン、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジグリセリン等の多価アルコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のポリエーテルなどが例示される。また、上記説明した歯牙石灰化剤キットにおいて、リンを含まないカルシウム化合物(B)が粉体又は非水系ペーストに含まれる場合、リンを含まないカルシウム化合物(B)としては、水酸化カルシウム、酸化カルシウム、メタケイ酸カルシウム、ケイ酸二カルシウム、並びにケイ酸三カルシウムが好適に用いられる。こうして用いられる本発明の歯牙石灰化剤は、エナメル質表面に対する石灰化硬化が高く、エナメル質石灰化剤であることが、本発明の好適な実施態様である。
本発明では、粉体及び/又は非水系ペーストと、液体及び/又は水系ペーストを混合し、歯牙石灰化剤を得ることができる。粉体及び/又は非水系ペーストと、液体及び/又は水系ペーストの混合比(P/L)は、0.5〜3が好ましい。P/L比が、0.5未満の場合、粉体成分の含有量が少なくなり、HApの析出が阻害されて石灰化効果が得られないおそれがある。P/L比が、0.6以上であることがより好ましく、0.8以上であることがさらに好ましい。一方、P/L比が3を超える場合、液体成分が少なすぎるため、組成物を充分ペースト化できなくなるため、操作性が悪くなるおそれがある。また、HApの析出が阻害されて石灰化効果が得られないおそれがある。2.2以下であることがより好ましく、2以下であることがさらに好ましい。難溶性リン酸カルシウム粒子(A)は、液体や水系ペーストに配合されても、ほとんど溶解せず粉体として存在するため、難溶性リン酸カルシウム粒子(A)は、常に粉体(P)として算出する。
本発明の歯牙石灰化剤は、歯面処理材、歯磨材、又はチューイングガムの各種用途に好ましく用いられる。すなわち、本発明の好適な実施態様は、歯牙石灰化剤をからなる歯面処理材、歯牙石灰化剤を含有する歯磨材である。水(C)の存在下では、難溶性リン酸カルシウム粒子(A)及びリンを含まないカルシウム化合物(B)からなる歯牙石灰化剤が速やかにHApに転化する反応が起こるため、歯磨材やチューイングガムなどのように使用時に適宜水分が供給されるような態様であってもよいが、水を一定量配合することでエナメル質表面を効率的に石灰化できる点から、歯面処理材などのように使用直前に液材と適宜混合するような態様であることが好ましい。したがって、歯牙石灰化剤からなる歯面処理材が本発明のより好適な実施態様である。
本発明の歯牙石灰化剤は、歯牙表面に塗布した時には、緩く硬化しその場に留まる必要があるが、石灰化後は、容易に除去される必要がある。歯牙石灰化剤の速硬性が高くなりすぎると、歯牙石灰化剤が歯牙表面に強固に固着し、除去できなくなり、スケーラー等で落とさなければならなくなる。歯牙表面への歯牙石灰化剤の固着を放置すると、歯牙表面に歯垢が付着し易くなり、う触の原因となる恐れがある。固着した歯牙石灰化剤は、スケーラー等で除去することができるが、チェアタイムが増加し、好ましくない。本発明の歯牙石灰化剤は、石灰化後、水を含ませた綿球等で、擦り洗いを行うと、除去できる程度の硬化性であることが好ましい。
以下、実施例を用いて本発明を更に具体的に説明する。本実施例において難溶性リン酸カルシウム粒子(A)、リンを含まないカルシウム化合物(B)及びリン酸のアルカリ金属塩(D)粒子、の平均粒径は、レーザー回折式粒度分布測定装置(株式会社島津製作所製「SALD−2100型」)を用いて測定し、測定の結果から算出されるメディアン径を平均粒径とした。
[石灰化用牛歯の調製]
健全牛歯切歯の頬側中央を#80,#1000研磨紙を用いて回転研磨機により研磨し、エナメル質を露出させた。この牛歯研磨面をさらにラッピングフィルム(#1200,#3000,#8000,住友スリーエム社製)を用いて研磨し、平滑とした。この研磨エナメル質部分に歯に対して縦軸方向及び横軸方向に各7mm試験部分の窓を残し(以下、「エナメル質窓」と称する)、周りをマニキュアでマスキングし、1時間風乾した。この牛歯を、Reynoldsら(E.C. Reynolds, J. Dent. Res., 76(9), 1587−1595.)の手法に準じて人工脱灰液(0.1mol/L乳酸、0.5g/Lヒドロキシアパタイト、20g/Lポリアクリル酸(Mw:250kDa)、NaOH適量、pH4.8)中に5日間浸漬して脱灰を行った。人工脱灰液は毎日交換した。脱灰エナメル質窓の半分をマニキュアでマスキングし、1時間風乾することで石灰化に用いる牛歯を調製した。
[擬似唾液の調製]
塩化ナトリウム(8.77g、150mmol)、リン酸二水素一カリウム(122mg、0.9mmol)、塩化カルシウム(166mg、1.5mmol)、Hepes(4.77g、20mmol)をそれぞれ秤量皿に量り取り、約800mlの蒸留水を入れた2000mlビーカーに攪拌下に順次加えた。溶質が完全に溶解したことを確認した後、この溶液の酸性度をpHメータ(F55、堀場製作所)で測定しながら、10%水酸化ナトリウム水溶液を滴下し、pH7.0とした。次にこの溶液を1000mlメスフラスコに加えてメスアップし、擬似唾液1000mlを得た。
[短時間接触石灰化試験]
上記で調製した石灰化用牛歯を蒸留水に浸漬し、30分間静置した後、エナメル質窓に対してペースト状の歯牙石灰化剤を塗布し、37℃、100%RH条件下で3分間インキュベートし、石灰化を行った。その後、歯牙石灰化剤を蒸留水で洗い流した後、擬似唾液中37℃で保存した。歯牙石灰化剤塗布は1日毎に実施し、連続して20回実施した。歯牙石灰化剤の塗布・除去作業時間以外は常時擬似唾液中に浸漬した。また、擬似唾液は毎日交換した(n=5)。
[長時間接触石灰化試験]
上記で調製した石灰化用牛歯を蒸留水に浸漬し、30分間静置した後、エナメル質窓に対してペースト状の歯牙石灰化剤を塗布し、37℃、100%RH条件下で15分間インキュベートし、石灰化を行った。その後、歯牙石灰化剤を蒸留水で洗い流した後、擬似唾液中37℃で保存した。歯牙石灰化剤塗布は1日毎に実施し、連続して10回実施した。歯牙石灰化剤の塗布・除去作業時間以外は常時擬似唾液中に浸漬した。また、擬似唾液は毎日交換した(n=5)。
[形態学的評価]
(1)エポキシ樹脂の調製
エポキシ樹脂の調製はLuft法に準じて行い、エポキシ樹脂、硬化剤を均一に混合した後、加速剤を添加する方法を用いた。100mlディスポカップに、ルベアック812(エポキシ樹脂、ナカライテスク株式会社製)41ml、ルベアックMNA(硬化剤、ナカライテスク株式会社製)31ml、ルベアックDDSA(硬化剤、ナカライテスク株式会社製)10mlをそれぞれディスポシリンジを用いて量り取りディスポカップに加え、10分間攪拌した。これにディスポシリンジで量り取ったルベアックDMP−30(加速剤、ナカライテスク株式会社製)1.2mlを攪拌しながら徐々に滴下し、添加後さらに10分間攪拌することで調製した。
(2)CMR撮影用サンプルの作製
擬似唾液から石灰化牛歯を取り出し、水洗した後、バイアル中の70%エタノール水溶液中に浸漬した。浸漬後、直ちにバイアルをデシケータ内に移し、10分間減圧条件下に置いた。この後、バイアルをデシケータから取り出し、低速攪拌機(TR−118,AS−ONE社製)に取り付け、約4rpmの回転速度で1時間攪拌した。同様の操作を、80%エタノール水溶液、90%エタノール水溶液、99%エタノール水溶液、100%エタノール(2回)を用いて行い、2回目の100%エタノールにはそのまま1晩浸漬した。翌日、プロピレンオキサイドとエタノールの1:1混合溶媒、プロピレンオキサイド100%(2回)についても順次同様の作業を行い、2回目のプロピレンオキサイドにそのまま1晩浸漬した。さらに、エポキシ樹脂:プロピレンオキサイド=1:1混合溶液、エポキシ樹脂:プロピレンオキサイド=4:1混合溶液、エポキシ樹脂100%(2回)についても同様の作業を行った。これらについては浸漬時間を2時間とした。最後にエポキシ樹脂を入れたポリ容器に牛歯サンプルを入れ、45℃にて1日間、60℃にて2日間硬化反応を行った。硬化終了後、ポリエチレン製容器とともに精密低速切断機(BUEHLER、ISOMET1000)により脱灰面・石灰化面に対して垂直方向に切断し、試験部分の断面を含む厚さ約1mmの切片を得た。この切片をラッピングフィルム(#1200,#3000,#8000,住友スリーエム社製)を用いて研磨し、切片厚さを80〜100μmとすることでCMR(Contact Micro Radiography;軟X線顕微鏡像)撮影用サンプルとした(n=5)。
(3)CMR撮影
CMR撮影およびフィルム現像はすべて暗室中において行った。CMR撮影には、CMR−2(ソフテックス株式会社製)を使用した。上記で得たCMR撮影用サンプルを専用ガラス感板(HIGH PRECISION PHOTOPLATE,コニカミノルタ製)上に密着させた状態で置き、管電圧15kV、管電流2.6mA、X線照射時間30分の条件で各サンプルの軟X線透過像を撮影した。現像は現像液(ハイレンドール,富士フィルムメディカル社製)、定着液(ハイレンフィックス,富士フィルムメディカル社製)を用い、現像液に5分間浸漬した後30秒間水洗し、定着液に5分間浸漬した後1分間水洗、乾燥させ、軟X線写真フィルムを得た。得られた軟X線写真の透過像を光学顕微鏡(ECRIPSE 80i,Nikon社製)で対物レンズ40倍にて観察し、透過像を光学顕微鏡に接続したCCDカメラ(DS−Ri1,Nikon社製)を用いて写真画像データとして得た。得られた画像を画像解析コンピュータソフトScion Imageβ4.03(Scion社製)を用いて解析した。脱灰部分と石灰化部分のフィルム濃度(グレイ値)をエナメル表層から一定深さ位置(約30μm)で測定し、脱灰部分のフィルム濃度を0%、エナメル質表面から更に深部の未脱灰部分のフィルム濃度を100%としたときの換算値(%)により石灰化率を算出した。実施例1の歯牙石灰化剤により石灰化した脱灰エナメル質の短時間接触石灰化率は69%であり、長時間接触石灰化率は58%であった。
(4)操作性
歯牙石灰化剤を、練和紙(85×115mm)上で歯科用練和棒にて20秒間混合し、そのペースト性状について塗布操作のしやすさの観点から、以下の評価基準に従って、操作性を評価した。
[操作性の評価基準]
A:ペーストは滑らかで、歯科用練和棒でペーストを練和紙中央に集めた際、まとまりやすい。練和棒の形が残らない。
B:ペーストは滑らかではあるが、粉が少し残って見える。ペーストを練和紙中央に集めた際、まとまりやすい。練和棒の形が残らない。
C:流動性の高いペーストであり、ペーストを練和紙中央に集めた際、少し流れるがまとまる。練和棒の形は残らない。
D:粉っぽく、ボソボソしてまとまらず、練ることができない。
E:液状で練和紙上を流れてしまい、まとめることができない。
なお、A、B、Cが実使用レベルである。
(5)除去性
石灰化用牛歯に歯牙石灰化剤を塗布し、37℃、100%RH条件下で15分間インキュベートし、石灰化を行った後、蒸留水で湿らせた綿球(リッチモンド社製 コットンペリット#3)で、歯牙表面を擦り洗いした。歯牙石灰化剤の除去性を、以下の評価基準に従って、目視により評価した。
[除去性の評価基準]
a:歯牙表面への歯牙石灰化剤の残存を認めない。
b:歯牙表面に若干歯牙石灰化剤が残存する。
c:歯牙石灰化剤が歯牙に強固に固着し、除去することができない。
[難溶性リン酸カルシウム粒子(A)]
DCPA:10.3μm 無水リン酸一水素カルシウム〔CaHPO〕 和光純薬工業株式会社製
DCPD:5.1μm リン酸一水素カルシウム2水和物〔CaHPO・2HO〕 太平化学産業株式会社製
β-TCP:1.0μm β−リン酸三カルシウム〔β−Ca(PO〕 太平化学産業株式会社製
OCP:4.8μm リン酸八カルシウム5水和物〔Ca(PO・5HO〕
ピロリン酸Ca:15.0μm ピロリン酸カルシウム〔Ca〕 太平化学産業株式会社製
[リンを含まないカルシウム化合物(B)]
Ca(OH):14.5μm 水酸化カルシウム 河合石灰工業株式会社製
CaO:10.0μm 酸化カルシウム 和光純薬工業株式会社製
Ca(NO:硝酸カルシウム 和光純薬工業株式会社製
CaCl:塩化カルシウム 和光純薬工業株式会社製
CaSiO:メタケイ酸カルシウム 和光純薬工業社製
[リン酸のアルカリ金属塩(D)]
NaHPO:リン酸一水素二ナトリウム 和光純薬工業株式会社製
NaHPO:リン酸二水素一ナトリウム 和光純薬工業株式会社製
[フッ素化合物(E)]
NaF:フッ化ナトリウム 和光純薬工業株式会社製
MFP:モノフルオロリン酸ナトリウム 和光純薬工業株式会社製
[シリカ粒子(F)]
Ar130:「アエロジル130(商品名)」日本アエロジル社製
[その他]
HAp:2.5μm ヒドロキシアパタイト(HAP−200) 太平化学産業株式会社製
MCPA:7.0μm 無水リン酸二水素カルシウム 太平化学産業株式会社製
[各粉体の調製]
DCPA:平均粒径1.1μmの調製
DCPA:平均粒径1.1μmは、DCPA:10.3μm 50g、95%エタノール(和光純薬工業株式会社製「Ethanol(95)」)240g、及び直径が10mmのジルコニアボール480gを1000mlのアルミナ製粉砕ポット(株式会社ニッカトー製「HD−B−104 ポットミル」)中に加え、1500rpmの回転速度で15時間湿式振動粉砕を行うことで得られたスラリーを、ロータリーエバポレータでエタノールを留去した後、60℃で6時間乾燥させることで得た。0.7μm、ならびに5.0μmのDCPAは、上記方法と同様にし、粉砕時間をそれぞれ、30時間、並びに7時間とすることにより得た。
DCPA:平均粒径0.1μmの調製
ナノレベルの粒径(0.1μm)を持つ難溶性リン酸カルシウム粒子(A)は、H.H.K.Xu(H.H.K.Xu et al.、“Nano DCPA-Whisker Composites with High Strength And Ca And PO Release"J.Dent.Res.85(8):722-727、2006.)らの方法を用いて調製した。DCPA:10.3μm 1.088gを、16mmol/L酢酸水溶液に溶解した溶液を作製した。この溶液をスプレードライヤー(PNR America、Poughkeepsie、NY、USA)を用いてスプレードライすることによって得た。
DCPD:平均粒径1.1μmの調製
DCPD:5.1μm50g、95%エタノール(和光純薬工業株式会社製「Ethanol(95)」)240g、及び直径が10mmのジルコニアボール480gを1000mlのアルミナ製粉砕ポット(株式会社ニッカトー製「HD−B−104 ポットミル」)中に加え、1500rpmの回転速度で10時間湿式振動粉砕を行うことで得られたスラリーを、ロータリーエバポレータでエタノールを留去した後、60℃で6時間乾燥させることで得た。
OCP:1.5μmの調製
酢酸カルシウム(和光純薬工業株式会社製)の0.04M水溶液を250ml、0.04M NaHPO水溶液250mlを調製した。67.5℃の0.04M NaHPO水溶液を400rpmでマグネチックスターラーで撹拌しながら、0.04M酢酸カルシウム水溶液を250ml/時間で滴下し、OCPの結晶を得た。得られた結晶を、60℃で10時間真空乾燥後、約500μmの結晶を得た。上記で得たOCP 50g、99.5%エタノール(和光純薬工業株式会社製「Ethanol,Dehydrated(99.5)」)240g、及び直径が10mmのジルコニアボール480gを1000mlのアルミナ製粉砕ポット(株式会社ニッカトー製「HD−B−104 ポットミル」)中に加え、1500rpmの回転速度で10時間湿式振動粉砕を行うことで得られたスラリーを、ロータリーエバポレータでエタノールを留去した後、60℃で6時間真空乾燥することで、OCP:4.8μmを得た。
ピロリン酸Ca:0.9μmの調製
ピロリン酸Ca:平均粒径0.9μmは、ピロリン酸Ca:15.0μm 50g、99.5%エタノール(和光純薬工業株式会社製「Ethanol,Dehydrated(99.5)」)240g、及び直径が10mmのジルコニアボール480gを1000mlのアルミナ製粉砕ポット(株式会社ニッカトー製「HD−B−104 ポットミル」)中に加え、1500rpmの回転速度で15時間湿式振動粉砕を行うことで得られたスラリーを、ロータリーエバポレータでエタノールを留去した後、60℃で6時間真空乾燥することで得た。
Ca(OH):平均粒径1.2μmの調製
Ca(OH):平均粒径1.2μmは、Ca(OH):14.5μm 50g、99.5%エタノール(和光純薬工業株式会社製「Ethanol,Dehydrated(99.5)」)240g、及び直径が10mmのジルコニアボール480gを1000mlのアルミナ製粉砕ポット(株式会社ニッカトー製「HD−B−104 ポットミル」)中に加え、1500rpmの回転速度で15時間湿式振動粉砕を行うことで得られたスラリーを、ロータリーエバポレータでエタノールを留去した後、60℃で6時間乾燥させることで得た。平均粒径0.1μm、0.6μm、5.0μm、並びに10.0μmのCa(OH)は、上記方法と同様にし、粉砕時間をそれぞれ、30時間、20時間、7時間、並びに4時間とすることにより得た。
CaO:2.0μmの調製
CaO:平均粒径2.0μmは、CaO:10.0μm 50g、99.5%エタノール(和光純薬工業株式会社製「Ethanol,Dehydrated(99.5)」)240g、及び直径が10mmのジルコニアボール480gを1000mlのアルミナ製粉砕ポット(株式会社ニッカトー製「HD−B−104 ポットミル」)中に加え、1500rpmの回転速度で17時間湿式振動粉砕を行うことで得られたスラリーを、ロータリーエバポレータでエタノールを留去した後、60℃で6時間真空乾燥することで得た。
Ca(NO:1.1μmの調製
Ca(NO:平均粒径5.0μmは、Ca(NO 50g、99.5%エタノール(和光純薬工業株式会社製「Ethanol,Dehydrated(99.5)」)240g、及び直径が10mmのジルコニアボール480gを1000mlのアルミナ製粉砕ポット(株式会社ニッカトー製「HD−B−104 ポットミル」)中に加え、1500rpmの回転速度で16時間湿式振動粉砕を行うことで得られたスラリーを、ロータリーエバポレータでエタノールを留去した後、60℃で6時間真空乾燥することで得た。
CaCl:1.0μmの調製
CaCl:平均粒径1.0μmは、CaCl 50g、99.5%エタノール(和光純薬工業株式会社製「Ethanol,Dehydrated(99.5)」)240g、及び直径が10mmのジルコニアボール480gを1000mlのアルミナ製粉砕ポット(株式会社ニッカトー製「HD−B−104 ポットミル」)中に加え、1500rpmの回転速度で16時間湿式振動粉砕を行うことで得られたスラリーを、ロータリーエバポレータでエタノールを留去した後、60℃で6時間真空乾燥することで得た。
CaSiO:5.0μmの調製
CaSiO:平均粒径5.0μmは、CaSiO 50g、99.5%エタノール(和光純薬工業株式会社製「Ethanol,Dehydrated(99.5)」)240g、及び直径が10mmのジルコニアボール480gを1000mlのアルミナ製粉砕ポット(株式会社ニッカトー製「HD−B−104 ポットミル」)中に加え、1500rpmの回転速度で15時間湿式振動粉砕を行うことで得られたスラリーを、ロータリーエバポレータでエタノールを留去した後、60℃で6時間真空乾燥することで得た。
NaHPO:4.6μmの調製
NaHPO:平均粒径4.6μmは、ナノジェットマイザー(NJ−100型 アイシンナノテクノロジーズ社製))で、粉砕圧力条件を原料供給圧:0.7MPa/粉砕圧:0.7MPa、処理量条件を8kg/hrとし、1回処理することにより得た。
NaHPO:9.7μmの調製
NaHPO:平均粒径9.7μmは、NaHPOをナノジェットマイザー(NJ−100型 アイシンナノテクノロジー社製)で、粉砕圧力条件を原料供給圧:0.3MPa/粉砕圧:0.3MPa、処理量条件を8kg/hrとし、1回処理することにより得た。
NaHPO:19.7μmの調製
NaHPO:平均粒径19.7μmは、NaHPOをナノジェットマイザー(NJ−100型 アイシンナノテクノロジー社製)で、粉砕圧力条件を原料供給圧:0.2MPa/粉砕圧:0.1MPa、処理量条件を20kg/hrとし、1回処理することにより得た。
NaHPO:1.45μmの調製
NaHPO:平均粒径1.45μmは、NaHPOをナノジェットマイザー(NJ−100型 アイシンナノテクノロジー社製)で、粉砕圧力条件を原料供給圧:1.3MPa/粉砕圧:1.3MPa、処理量条件を1kg/hrとし、4回処理することにより得た。
NaHPO:3.3μmの調製
NaHPO:平均粒径3.3μmは、NaHPOをナノジェットマイザー(NJ−100型 アイシンナノテクノロジー社製)で、粉砕圧力条件を原料供給圧:1.3MPa/粉砕圧:1.3MPa、処理量条件を4kg/hrとし、1回処理することにより得た。
NaHPO:4.8μmの調製
NaHPO:平均粒径4.8μmは、NaHPOをナノジェットマイザー(NJ−100型 アイシンナノテクノロジー社製)で、粉砕圧力条件を原料供給圧:0.7MPa/粉砕圧:0.7MPa、処理量条件を8kg/hrとし、1回処理することにより得た。
[歯牙石灰化剤の調製]
(1)歯牙石灰化剤用粉体の調製
表1及び表2に示す組成で秤量した各粉体成分を高速回転ミル(アズワン株式会社「SM−1」)中に加え、1000rpmの回転速度で3分間混合することで歯牙石灰化剤の粉体を調製した。混合の必要ない粉体は、そのまま歯牙石灰化剤の粉体として使用した。
(2)歯牙石灰化剤用液材の調製
表1及び表2に示す組成で秤量した各液材成分を蒸留水に溶解させることで歯牙石灰化剤用の液材を得た。液材成分を含有しない組成の場合は、蒸留水をそのまま歯牙石灰化剤用の液材として使用した。
(3)歯牙石灰化剤の調製
表1及び表2に示す組成の上記(1)で得た粉体と、上記(2)で得た液材を加え混合することで歯牙石灰化剤を調製した。
実施例1〜44
上記(1)〜(3)の手順で歯牙石灰化剤を調製し、短時間、並びに長時間接触石灰化試験を行った。また、操作性の評価試験を行った。得られた評価結果を表1及び表2にまとめて示す。
比較例1〜7
上記(1)〜(3)の手順で歯牙石灰化剤を調製し、短時間、並びに長時間接触石灰化試験を行った。得られた評価結果を表3にまとめて示す。
実施例45
DCPA:0.7μm 20.5g、Ca(OH):1.2μm 0.5g、NaHPO:4.6μm 4g、NaF 0.22g、Ar130 0.5g、グリセリン(和光純薬工業株式会社製)13.78gを混合し、非水系ペーストを調製した。DCPA:0.7μm 20.0g、サッカリン酸ナトリウム(和光純薬工業株式会社製)0.5g、ポリエチレングリコール(マクロゴール400、三洋化成工業株式会社製)3g、グリセリン5g、プロピレングリコール(和光純薬工業株式会社製)5g、セチルピリジニウムクロリド1水和物(和光純薬工業株式会社製)0.05g、Ar130 3.5g、蒸留水23.45gを混合し、水系ペーストを調製した。上記で作製した非水系ペースト39.5gと水系ペースト60.5gを加え混合することで歯牙石灰化剤を調製した。実施例1と同様にして、短時間、並びに長時間接触石灰化試験を行った。また、操作性の評価試験を行った。得られた評価結果を表4にまとめて示す。
実施例46〜48
実施例45と同様にして歯牙石灰化剤を調製し、短時間、並びに長時間接触石灰化試験を行った。また、操作性の評価試験を行った。得られた評価結果を表4にまとめて示す。
実施例49
DCPA:1.1μm 40.5g、NaHPO:4.6μm 4g、NaF 0.22g、Ar130 0.5g、グリセリン(和光純薬工業株式会社製)13.78g、蒸留水23.0gを混合し、水系ペースト1を調製した。Ca(OH):5.2μm 0.5g、サッカリン酸ナトリウム(和光純薬工業株式会社製)0.5g、ポリエチレングリコール(マクロゴール400、三洋化成工業株式会社製)3g、プロピレングリコール(和光純薬工業株式会社製)5.0g、セチルピリジニウムクロリド1水和物(和光純薬工業株式会社製)0.05g、Ar130 3.5g、蒸留水5.45gを混合し、水系ペースト2を調製した。上記で作製した水系ペースト1 82.0gと水系ペースト2 18.0gを加え混合することで歯牙石灰化剤を調製した。実施例1と同様にして、短時間、並びに長時間接触石灰化試験を行った。また、操作性の評価試験を行った。得られた評価結果を表5にまとめて示す。
1 エナメル質脱灰部分
2 エナメル質深部未脱灰部分
3 エナメル質石灰化部分

Claims (33)

  1. 難溶性リン酸カルシウム粒子(A)、リンを含まないカルシウム化合物(B)及び水(C)を含有する歯牙石灰化剤であって、
    難溶性リン酸カルシウム粒子(A)が、無水リン酸一水素カルシウム[CaHPO]粒子、α−リン酸三カルシウム[α−Ca(PO]粒子、β−リン酸三カルシウム[β−Ca(PO]粒子、非晶質リン酸カルシウム[Ca(PO・nHO]粒子、ピロリン酸カルシウム[Ca]粒子、ピロリン酸カルシウム2水和物[Ca・2HO]粒子、リン酸八カルシウム5水和物[Ca(PO・5HO]粒子及びリン酸一水素カルシウム2水和物[CaHPO・2HO]粒子からなる群から選択される少なくとも1種であり、
    難溶性リン酸カルシウム粒子(A)を30〜76重量%、リンを含まないカルシウム化合物(B)を0.001〜4重量%、及び水(C)を23〜69重量%含有することを特徴とする歯牙石灰化剤。
  2. リンを含まないカルシウム化合物(B)が、水酸化カルシウム[Ca(OH)]、酸化カルシウム[CaO]、塩化カルシウム[CaCl]、硝酸カルシウム[Ca(NO・nHO]、酢酸カルシウム[Ca(CHCO・nHO]、乳酸カルシウム[Ca(C]、クエン酸カルシウム[Ca(C・nHO]、メタケイ酸カルシウム[CaSiO]、ケイ酸二カルシウム[CaSiO]、ケイ酸三カルシウム[CaSiO]、及び炭酸カルシウム[CaCO]からなる群から選択される少なくとも1種である請求項1記載の歯牙石灰化剤。
  3. リン酸のアルカリ金属塩(D)を0.1〜25重量%含有する請求項1又は2記載の歯牙石灰化剤。
  4. 難溶性リン酸カルシウム粒子(A)及びリンを含まないカルシウム化合物(B)の総和のCa/P比が0.9〜1.25である請求項1〜3のいずれか記載の歯牙石灰化剤。
  5. 更にフッ素化合物(E)を含有する請求項1〜4のいずれか記載の歯牙石灰化剤。
  6. 更にシリカ粒子(F)を含有する請求項1〜5のいずれか記載の歯牙石灰化剤。
  7. 請求項1〜6のいずれか記載の歯牙石灰化剤からなるエナメル質石灰化剤。
  8. 請求項1〜6のいずれか記載の歯牙石灰化剤からなる歯磨材。
  9. 請求項1〜6のいずれか記載の歯牙石灰化剤からなる歯面処理材。
  10. 難溶性リン酸カルシウム粒子(A)、リンを含まないカルシウム化合物(B)及び水(C)を主成分とする液体又は水系ペーストを混合する歯牙石灰化剤の製造方法であって、
    難溶性リン酸カルシウム粒子(A)が、無水リン酸一水素カルシウム[CaHPO]粒子、α−リン酸三カルシウム[α−Ca(PO]粒子、β−リン酸三カルシウム[β−Ca(PO]粒子、非晶質リン酸カルシウム[Ca(PO・nHO]粒子、ピロリン酸カルシウム[Ca]粒子、ピロリン酸カルシウム2水和物[Ca・2HO]粒子、リン酸八カルシウム5水和物[Ca(PO・5HO]粒子及びリン酸一水素カルシウム2水和物[CaHPO・2HO]粒子からなる群から選択される少なくとも1種であり、
    難溶性リン酸カルシウム粒子(A)を30〜76重量%、リンを含まないカルシウム化合物(B)を0.001〜4重量%、水(C)を主成分とする液体又は水系ペーストを23〜69重量%配合することを特徴とする歯牙石灰化剤の製造方法。
  11. 難溶性リン酸カルシウム粒子(A)及びリンを含まないカルシウム化合物(B)を含む粉体又は非水系ペーストに、水(C)を主成分とする液体又は水系ペーストを加えて混合する請求項10記載の歯牙石灰化剤の製造方法。
  12. 難溶性リン酸カルシウム粒子(A)を含む粉体又は非水系ペーストに、水(C)を主成分としリンを含まないカルシウム化合物(B)を含む液体又は水系ペーストを加えて混合する請求項10記載の歯牙石灰化剤の製造方法。
  13. リンを含まないカルシウム化合物(B)を含む粉体又は非水系ペーストに、水(C)を主成分とし難溶性リン酸カルシウム粒子(A)を含む液体又は水系ペーストを加えて混合する請求項10記載の歯牙石灰化剤の製造方法。
  14. 水(C)を主成分とし難溶性リン酸カルシウム粒子(A)を含む液体又は水系ペーストに、水(C)を主成分としリンを含まないカルシウム化合物(B)を含む液体又は水系ペーストを加えて混合する請求項10記載の歯牙石灰化剤の製造方法。
  15. 混合比(P/L)が0.5〜3である請求項10〜14のいずれか記載の歯牙石灰化剤の製造方法。
  16. 難溶性リン酸カルシウム粒子(A)及びリンを含まないカルシウム化合物(B)を含む粉体又は非水系ペーストと、水(C)を主成分とする液体又は水系ペーストとからなる歯牙石灰化剤キット。
  17. 難溶性リン酸カルシウム粒子(A)を含む粉体又は非水系ペーストと、リンを含まないカルシウム化合物(B)を含む粉体又は非水系ペーストと、水(C)を主成分とする液体又は水系ペーストとからなる歯牙石灰化剤キット。
  18. 難溶性リン酸カルシウム粒子(A)の平均粒径が0.05〜7μmであり、リンを含まないカルシウム化合物(B)の平均粒径が0.05〜12μmである請求項16又は17記載の歯牙石灰化剤キット。
  19. 難溶性リン酸カルシウム粒子(A)、リンを含まないカルシウム化合物(B)、及びリン酸のアルカリ金属塩(D)を含む粉体又は非水系ペーストと、水(C)を主成分とする液体又は水系ペーストとからなる歯牙石灰化剤キット。
  20. 難溶性リン酸カルシウム粒子(A)及びリン酸のアルカリ金属塩(D)を含む粉体又は非水系ペーストと、リンを含まないカルシウム化合物(B)を含む粉体又は非水系ペーストと、水(C)を主成分とする液体又は水系ペーストとからなる歯牙石灰化剤キット。
  21. 難溶性リン酸カルシウム粒子(A)を含む粉体又は非水系ペーストと、リンを含まないカルシウム化合物(B)及びリン酸のアルカリ金属塩(D)を含む粉体又は非水系ペーストと、水(C)を主成分とする液体又は水系ペーストとからなる歯牙石灰化剤キット。
  22. 難溶性リン酸カルシウム粒子(A)の平均粒径が0.05〜7μmであり、リンを含まないカルシウム化合物(B)の平均粒径が0.05〜12μmであり、リン酸のアルカリ金属塩(D)の平均粒径が1〜20μmである請求項19〜21のいずれか記載の歯牙石灰化剤キット。
  23. 難溶性リン酸カルシウム粒子(A)を含む粉体又は非水系ペーストと、水(C)を主成分としリンを含まないカルシウム化合物(B)を含む液体又は水系ペーストとからなる歯牙石灰化剤キット。
  24. 難溶性リン酸カルシウム粒子(A)の平均粒径が0.05〜7μmである請求項23記載の歯牙石灰化剤キット。
  25. 難溶性リン酸カルシウム粒子(A)及びリン酸のアルカリ金属塩(D)を含む粉体又は非水系ペーストと、水(C)を主成分としリンを含まないカルシウム化合物(B)を含む液体又は水系ペーストとからなる歯牙石灰化剤キット。
  26. 難溶性リン酸カルシウム粒子(A)の平均粒径が0.05〜7μmであり、リン酸のアルカリ金属塩(D)の平均粒径が1〜20μmである請求項25記載の歯牙石灰化剤キット。
  27. 水(C)を主成分とし難溶性リン酸カルシウム粒子(A)を含む液体又は水系ペーストと、水(C)を主成分としリンを含まないカルシウム化合物(B)を含む液体又は水系ペーストとからなる歯牙石灰化剤キット。
  28. 水(C)を主成分とし難溶性リン酸カルシウム粒子(A)を含む液体又は水系ペーストと、水(C)を主成分としリンを含まないカルシウム化合物(B)を含む液体又は水系ペーストと、リン酸のアルカリ金属塩(D)を含む粉体又は非水系ペーストとからなる歯牙石灰化剤キット。
  29. リン酸のアルカリ金属塩(D)の平均粒径が1〜20μmである請求項28記載の歯牙石灰化剤キット。
  30. リンを含まないカルシウム化合物(B)を含む粉体又は非水系ペーストと、水(C)を主成分とし難溶性リン酸カルシウム粒子(A)を含む液体又は水系ペーストとからなる歯牙石灰化剤キット。
  31. リンを含まないカルシウム化合物(B)の平均粒径が0.05〜12μmである請求項30記載の歯牙石灰化剤キット。
  32. リンを含まないカルシウム化合物(B)及びリン酸のアルカリ金属塩(D)を含む粉体又は非水系ペーストと、水(C)を主成分とし難溶性リン酸カルシウム粒子(A)を含む液体又は水系ペーストとからなる歯牙石灰化剤キット。
  33. リンを含まないカルシウム化合物(B)の平均粒径が0.05〜12μmであり、リン酸のアルカリ金属塩(D)の平均粒径が1〜20μmである請求項32記載の歯牙石灰化剤キット。
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