JP5834355B2 - 知覚過敏抑制剤及びその製造方法 - Google Patents
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健全牛歯切歯の頬側中央を#80,#1000研磨紙を用いて回転研磨機により研磨し、象牙質を露出させた。この牛歯研磨面をさらにラッピングフィルム(#1200,#3000,#8000,住友スリーエム社製)を用いて研磨し、平滑とした。この象牙質部分に歯に対して縦軸方向及び横軸方向に各7mm試験部分の窓を残し(以下、「象牙質窓」と称する)、周りをマニキュアでマスキングし、1時間風乾した。この牛歯に対して、0.5M EDTA溶液(和光純薬工業株式会社製)を5倍に希釈した溶液を30秒間象牙質窓に作用させ脱灰を行った後、30分以上水洗した。更に10%次亜塩素酸ナトリウム溶液(ネオクリーナー「セキネ」、ネオ製薬工業株式会社製)を2分間作用させ清掃した後、更に約1時間水洗することで石灰化に用いる牛歯を調製した。
塩化ナトリウム(8.77g,150mmol)、リン酸二水素カリウム(122mg,0.9mmol)、塩化カルシウム(166mg,1.5mmol)、Hepes(4.77g,20mmol)をそれぞれ秤量皿に量り取り、約800mlの蒸留水を入れた2000mlビーカーに攪拌下に順次加えた。溶質が完全に溶解したことを確認した後、この溶液の酸性度をpHメータ(F55、堀場製作所製)で測定しながら、10%水酸化ナトリウム水溶液を滴下し、pH7.0とした。次にこの溶液を1000mlメスフラスコに加えてメスアップし、擬似唾液1000mlを得た。
DCPA:10.2μm 無水リン酸一水素カルシウム〔CaHPO4〕 和光純薬工業株式会社製
DCPD:5.1μm リン酸一水素カルシウム二水和物〔CaHPO4・2H2O〕 太平化学産業株式会社製
β-TCP:1.0μm β−リン酸三カルシウム〔β−Ca3(PO4)2〕 太平化学産業株式会社製
[リン酸のアルカリ金属塩(B)]
Na2HPO4:リン酸水素二ナトリウム 和光純薬工業株式会社製
NaH2PO4:リン酸二水素ナトリウム 和光純薬工業株式会社製
[フッ素化合物(D)]
NaF:フッ化ナトリウム 和光純薬工業株式会社製
MFP:モノフルオロリン酸ナトリウム 和光純薬工業株式会社製
[シリカ粒子(E)]
Ar130:「アエロジル130(商品名)」日本アエロジル社製
[その他のリン酸カルシウム]
TTCP:10.8μm リン酸四カルシウム 〔Ca4(PO4)2O〕 太平化学産業株式会社製
DCPA:平均粒径1.1μmの調製
DCPA:平均粒径1.1μmは、DCPA:10.2μm 50g、95%エタノール(和光純薬工業株式会社製「Ethanol(95)」)240g、及び直径が10mmのジルコニアボール480gを1000mlのアルミナ製粉砕ポット(株式会社ニッカトー製「HD−B−104 ポットミル」)中に加え、1500rpmの回転速度で15時間湿式振動粉砕を行うことで得られたスラリーを、ロータリーエバポレータでエタノールを留去した後、60℃で6時間乾燥させることで得た。0.7μm、ならびに5.0μmのDCPAは、上記方法と同様にし、粉砕時間をそれぞれ、30時間、並びに7時間とすることにより得た。
DCPD:平均粒径1.1μmは、DCPD:5.1μm50g、95%エタノール(和光純薬工業株式会社製「Ethanol(95)」)240g、及び直径が10mmのジルコニアボール480gを1000mlのアルミナ製粉砕ポット(株式会社ニッカトー製「HD−B−104 ポットミル」)中に加え、1500rpmの回転速度で10時間湿式振動粉砕を行うことで得られたスラリーを、ロータリーエバポレータでエタノールを留去した後、60℃で6時間乾燥させることで得た。
Na2HPO4:平均粒径4.6μmは、ナノジェットマイザー(NJ−100型 アイシンナノテクノロジーズ社製))で、粉砕圧力条件を原料供給圧:0.7MPa/粉砕圧:0.7MPa、処理量条件を8kg/hrとし、1回処理することにより得た。
Na2HPO4:平均粒径9.7μmは、Na2HPO4をナノジェットマイザー(NJ−100型 アイシンナノテクノロジー社製)で、粉砕圧力条件を原料供給圧:0.3MPa/粉砕圧:0.3MPa、処理量条件を8kg/hrとし、1回処理することにより得た。
Na2HPO4:平均粒径19.7μmは、Na2HPO4をナノジェットマイザー(NJ−100型 アイシンナノテクノロジー社製)で、粉砕圧力条件を原料供給圧:0.2MPa/粉砕圧:0.1MPa、処理量条件を20kg/hrとし、1回処理することにより得た。
Na2HPO4:平均粒径1.45μmは、Na2HPO4をナノジェットマイザー(NJ−100型 アイシンナノテクノロジー社製)で、粉砕圧力条件を原料供給圧:1.3MPa/粉砕圧:1.3MPa、処理量条件を1kg/hrとし、4回処理することにより得た。
NaH2PO4:平均粒径4.8μmは、NaH2PO4をナノジェットマイザー(NJ−100型 アイシンナノテクノロジー社製)で、粉砕圧力条件を原料供給圧:0.7MPa/粉砕圧:0.7MPa、処理量条件を8kg/hrとし、1回処理することにより得た。
(1)象牙質石灰化剤用粉体の調製
表1〜2に示す組成で秤量した各粉体成分を高速回転ミル(アズワン株式会社「SM−1」)中に加え、22000rpmの回転速度で3分間混合することで象牙質石灰化剤の粉体を調製した。混合の必要ない粉体は、そのまま象牙質石灰化剤の粉体として使用した。
表1〜2に示す組成で秤量した各液剤成分を蒸留水に溶解させることで象牙質石灰化剤用の液剤を得た。液剤成分を含有しない組成の場合は、蒸留水をそのまま象牙質石灰化剤用の液剤として使用した。
表1〜2に示す組成の上記(1)で得た粉体と、上記(2)で得た液剤を加え混合することで象牙質石灰化剤を調製した。
上記(1)〜(3)の手順で表1〜5に記載の組成で象牙質石灰化剤を調製し、石灰化試験を行った。また、SEM観察、並びに硬化時間測定試験を行った。得られた評価結果を表6にまとめて示す。
表3〜4に示す組成で秤量した精製水とグリセリン以外の各成分を高速回転ミル(アズワン株式会社「SM−1」)中に加え、22000rpmの回転速度で3分間混合した後、秤量した精製水とグリセリンを加え、混合することで象牙質石灰化剤を調製した。
上記(4)の手順で表3〜4に記載の組成で象牙質石灰化剤を調製し、短時間、並びに長時間接触石灰化試験を行った。また、硬化時間測定試験を行った。得られた評価結果を表6にまとめて示す。
上記(1)〜(3)の手順で表2に記載の象牙質石灰化剤を調製し、短時間、並びに長時間接触石灰化試験を行った。また、硬化時間測定試験を行った。得られた評価結果を表6にまとめて示す。
DCPA:1.1μm 30g、NaF 0.21g、Ar130 0.5g、グリセリン(和光純薬工業株式会社製)19.29gを混合し、第一液状ペーストを調製した。Na2HPO4 3g、サッカリン酸ナトリウム(和光純薬工業株式会社製)0.5g、ポリエチレングリコール(マクロゴール400、三洋化成工業株式会社製)3g、グリセリン5g、プロピレングリコール(和光純薬工業株式会社製)5g、セチルピリジニウムクロリド一水和物(和光純薬工業株式会社製)0.05g、Ar130 3.5g、蒸留水29.95gを混合し、第二液状ペーストを調製した。上記で作製した第一液状ペースト50gと水系ペースト50gを加え混合することで象牙質石灰化剤を調製した。実施例1と同様にして、短時間、並びに長時間接触石灰化試験を行った。また、硬化時間測定試験を行った。得られた評価結果を表6にまとめて示す。
実施例44と同様にして表5に記載の象牙質石灰化剤を調製し、短時間、並びに長時間接触石灰化試験を行った。また、硬化時間測定試験を行った。得られた評価結果を表6にまとめて示す。
(1)石灰化用牛歯ディスクの調製
健全牛歯切歯の頬側中央を#80,#1000研磨紙を用いて回転研磨機によりトリミングし、直径約7mm、厚さ0.9mmのディスク状に成形した。この牛歯研磨面をさらにラッピングフィルム(#1200,#3000,#8000,住友スリーエム社製)を用いて研磨し、厚さ0.7mmまで研磨し、平滑とした。この牛歯ディスクの両面に対して、0.5M EDTA溶液(和光純薬工業株式会社製)を5倍に希釈した溶液を30秒間象牙質窓に作用させ脱灰を行った後、約60秒以上水洗した。更に10%次亜塩素酸ナトリウム溶液(ネオクリーナー「セキネ」、ネオ製薬工業(株)製)を1分間作用させて清掃し、象牙質透過抑制率評価に用いる牛歯ディスクを調製した。
上記(1)で調製した石灰化用牛歯ディスクの頬側象牙質表面に対して、スパーテルを用いて上記で調製した象牙質石灰化剤約0.1gを付着させ、続いてマイクロブラシ(MICROBRUSH INTERNATIONAL製「REGULAR SIZE(2.0mm),MRB400」)を用いて、象牙質処理面中央部における直径5mmの象牙質に対して30秒間すり込みを行った。その後、象牙質表面のペーストを蒸留水で除去し、直ちに象牙質透過抑制率評価試験、並びにSEM観察を実施した(n=5)。
上記(1)で調製した石灰化用牛歯ディスクの頬側象牙質表面に対して、スパーテルを用いて上記で調製した象牙質石灰化剤約0.1gを付着させ、続いてマイクロブラシ(MICROBRUSH INTERNATIONAL製「REGULAR SIZE(2.0mm),MRB400」)を用いて、象牙質処理面中央部における直径5mmの象牙質に対して30秒間すり込みを行った。その後、象牙質表面のペーストを蒸留水で除去し、擬似唾液中に2週間浸漬した後、象牙質透過抑制率評価試験、並びにSEM観察を実施した(n=5)。
象牙質透過抑制率の評価には、Pashleyらの方法(D.H.PASHLEY et al.,J.Dent.Res.65:417−420,1986.;K.C.Y.TAY et al.,J.Endod.33:1438−1443,2007.)に準じる方法を用いて実施した。同様の装置を設置し、上記で得た石灰化牛歯を歯髄からエナメル質の方向に液が透過する様に分割可能なチャンバー治具中に設置、固定した。Phosphate-buffered saline(Dulbecco’s PBS, Grand Island Biological Company, Grand Island, NY)の圧力を加える象牙質表面は、Oリングを用いて表面積を78.5mm2(直径5mm)に規格化し、10psi(69kPa)で加圧し、24時間経過した際の透過量を測定した。また、同様の操作で上記の石灰化(象牙細管封鎖)を行う前の同一の牛歯ディスクの透過量測定結果から、下記式を用いて象牙質透過抑制率を算出した。実施例1により石灰化した牛歯ディスクの、象牙質透過抑制率(すりこみ初期)は67%であり、象牙質透過抑制率(すりこみ長期)は69%であった。得られた結果を表6にまとめて示す。
象牙質透過抑制率(%)={1−(石灰化(象牙細管封鎖)した牛歯ディスクの透過量)/(石灰化(象牙細管封鎖)を行っていない牛歯ディスクの透過量)}×100
浸漬液より石灰化牛歯を取り出し、水洗した後、室温で真空乾燥を1時間行い、金属蒸着処理した後、石灰化処理面を、走査型電子顕微鏡(S−3500N、株式会社日立ハイテクノロジーズ製)を用いて倍率3000倍で観察した。実施例1により石灰化した牛歯ディスクの牛歯象牙質表面の観察を行い、象牙細管が象牙質石灰化剤で封鎖されていることを確認した。また、牛歯ディスクを割断し、牛歯象牙質断面の観察を行い、約10μmの深さまで塊状封鎖物が侵入していることを確認した。
ペースト状の象牙質石灰化剤を、顕微鏡用スライドグラス上に約30mg取り出した後、もう一枚の顕微鏡用スライドグラスで挟み、剪断力が加わるように押し付け、ペーストに不均一部分が発生していないか否かを目視にて検査した。不均一部分が発生した時点を硬化時間とした。硬化時間測定用試料は、調製後25℃で保存し、測定も25℃で実施した。30日以上保存し、硬化が認められない場合を硬化しないと判定した。
2 HApで封鎖された象牙細管
Claims (9)
- 酸性リン酸カルシウム粒子(A)、リン酸のアルカリ金属塩(B)、及び水(C)を含有する象牙質石灰化剤からなる知覚過敏抑制剤であって、
酸性リン酸カルシウム粒子(A)が、無水リン酸一水素カルシウム[CaHPO 4 ]粒子、β−リン酸三カルシウム[β−Ca 3 (PO 4 ) 2 ]粒子、及びリン酸一水素カルシウム2水和物[CaHPO 4 ・2H 2 O]粒子からなる群から選択される少なくとも1種であり、
リン酸のアルカリ金属塩(B)がリン酸一水素二ナトリウム及び/又はリン酸二水素一ナトリウムであり、
該知覚過敏抑制剤に含まれるリン源とカルシウム源が、酸性リン酸カルシウム粒子(A)並びにリン酸のアルカリ金属塩(B)のみからなり、
該知覚過敏抑制剤の全量100重量部に対して酸性リン酸カルシウム粒子(A)を15〜80重量部、及び水(C)を15〜84重量部含み、かつ酸性リン酸カルシウム粒子(A)100重量部に対するリン酸のアルカリ金属塩(B)の配合量が0.1〜80重量部であり、
象牙質表面にすり込むことにより象牙細管を封鎖させるために用いられるものであることを特徴とする知覚過敏抑制剤。 - 酸性リン酸カルシウム粒子(A)が無水リン酸一水素カルシウム[CaHPO4]粒子及び/又はリン酸一水素カルシウム2水和物[CaHPO4・2H2O]粒子である請求項1に記載の知覚過敏抑制剤。
- 更にフッ素化合物(D)を含有する請求項1又は2に記載の知覚過敏抑制剤。
- フッ素化合物(D)がフッ化ナトリウムである請求項3記載の知覚過敏抑制剤。
- 酸性リン酸カルシウム粒子(A)の平均粒径が0.1〜20μmである請求項1〜4のいずれか記載の知覚過敏抑制剤。
- 酸性リン酸カルシウム粒子(A)、リン酸のアルカリ金属塩(B)、及び水(C)を主成分とする液体又は水系ペーストを混合する象牙質石灰化剤からなる知覚過敏抑制剤の製造方法であって、
該知覚過敏抑制剤が象牙質表面にすり込むことにより象牙細管を封鎖させるために用いられるものであり、
酸性リン酸カルシウム粒子(A)が、無水リン酸一水素カルシウム[CaHPO 4 ]粒子、β−リン酸三カルシウム[β−Ca 3 (PO 4 ) 2 ]粒子、及びリン酸一水素カルシウム2水和物[CaHPO 4 ・2H 2 O]粒子からなる群から選択される少なくとも1種であり、
リン酸のアルカリ金属塩(B)がリン酸一水素二ナトリウム及び/又はリン酸二水素一ナトリウムであり、
該知覚過敏抑制剤に含まれるリン源とカルシウム源が、酸性リン酸カルシウム粒子(A)並びにリン酸のアルカリ金属塩(B)のみからなり、
酸性リン酸カルシウム粒子(A)100重量部に対してリン酸のアルカリ金属塩(B)を0.1〜80重量部配合し、知覚過敏抑制剤の全量100重量部に対する酸性リン酸カルシウム粒子(A)の配合量を15〜80重量部とし、かつ知覚過敏抑制剤の全量100重量部に対する水(C)の配合量が15〜84重量部となるように水を主成分とする液体又は水系ペーストを加えて混合する請求項1記載の知覚過敏抑制剤の製造方法。 - 酸性リン酸カルシウム粒子(A)及びリン酸のアルカリ金属塩(B)を含む粉体又は非水系ペーストに、水(C)を主成分とする液体又は水系ペーストを加えて混合する請求項6記載の知覚過敏抑制剤の製造方法。
- 酸性リン酸カルシウム粒子(A)を含む粉体又は非水系ペーストに、水(C)を主成分としリン酸のアルカリ金属塩(B)を含む液体又は水系ペーストを加えて混合する請求項6記載の知覚過敏抑制剤の製造方法。
- 水(C)を主成分とし酸性リン酸カルシウム粒子(A)を含む液体又は水系ペーストに、水(C)を主成分としリン酸のアルカリ金属塩(B)を含む液体又は水系ペーストを加えて混合する請求項6記載の知覚過敏抑制剤の製造方法。
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