JP5665465B2 - 象牙細管封鎖剤 - Google Patents

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Description

本発明は、露出した象牙質の象牙細管を封鎖することのできる象牙細管封鎖剤に関する。
80歳になっても20本以上自分の歯を保とうとする、いわゆる8020運動(口腔衛生の向上、歯質の保存(MI:Minimal Intervention))に伴い、う蝕に罹患する前の初期う蝕の段階で石灰化を行い健全な歯質に戻す石灰化治療が近年脚光を浴びている。この観点から、有効成分としてフッ素やカルシウム可溶化剤(CPP−ACP;Casein Phosphopeptide−Amorphous Calcium Phosphate、POs−Ca(登録商標);リン酸化オリゴ糖カルシウム)が配合された機能性ガム、歯磨材、歯面処理材が各社より発売されている。しかしながら、フッ素は歯の耐酸性を向上させて、歯質のミネラル分を強化する機能があるとされているが、大量に摂取することによる副作用の問題があった。また、カルシウム可溶化剤を配合した材料は歯質付近に高濃度のミネラル分を供給できる反面、可溶性が高いためミネラル分の沈着能力は低いという問題もあった。
特許文献1には、合成水酸アパタイトに水酸化カルシウムを混合してなる粉状基材と、蒸留水に第2リン酸ナトリウム、フッ化ナトリウム及びグリセリンを溶解せしめてなる液状助剤とによって構成される歯科用修復材料が記載されている。この歯科用修復材料は、微結晶質の水酸アパタイトが析出することにより、窩洞内の象牙質表面に保護層を形成し、二次象牙質が形成されるとしている。しかしながら、特許文献1で得られる歯科用材料は、象牙質透過抑制率が低いという問題点があった。
また、特許文献2には、親水性の非水系ビヒクル中に、少なくとも1種の水溶性カルシウム塩と、水溶性リン酸塩に加えて、乾燥剤並びに安定化剤を含有する安定な一剤型の非水系ドライミックス製品が記載されている。前記水溶性カルシウム塩とは、20℃で100mlの水に少なくとも0.25g溶解する水溶性カルシウム化合物である。これによれば、歯のエナメル質の再石灰化又は象牙質細管の石灰化により、ウ蝕又は過敏症が阻止されると記載されている。しかしながら、象牙細管を封鎖させる目的で、水酸化カルシウム、リン酸のアルカリ金属塩及び水を組み合わせた構成とすることについては記載されていなかった。さらに、特許文献2では、水溶性カルシウム塩と水溶性のリン酸塩とが主成分として使用されており、これら成分は、水溶液中に溶解してカルシウムイオンとリン酸イオンを生成し、ヒドロキシアパタイト(以下、「HAp」と略記することがある)として沈着するとされている。しかし、露出した象牙質に開口している象牙細管は、約2μmの直径を有しており、析出したヒドロキシアパタイトが象牙細管を完全に封鎖するためには、長時間、あるいは材料を繰返し適応させることを要し、実用性に問題があった。
特開昭61−167607号公報 特表平10−510550号公報
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、露出した象牙質の象牙細管を封鎖することができるとともに、該封鎖後に周辺象牙質を再石灰化させることができる象牙細管封鎖剤を提供することを目的とするものである。
上記課題は、水酸化カルシウム粒子(A)を30〜75重量%、リン酸のアルカリ金属塩(B)を0.5〜25重量%、及び水(C)を20〜65重量%含有する象牙細管封鎖剤であって、象牙質表面にすり込むことにより象牙細管を封鎖させるために用いられるものである象牙細管封鎖剤を提供することによって解決される。このとき、更にフッ素化合物(D)を含有することが好適である。更にシリカ粒子(E)を含有することも好適である。
該象牙細管封鎖で厚さ700μmの牛歯ディスクの片面を処置した際の象牙質透過抑制率が下記式(I)を満たすことも好適である。
[1−(象牙細管を封鎖した牛歯ディスクの透過量)/(象牙細管の封鎖を行っていない牛歯ディスクの透過量)]×100≧70・・・(I)
牙細管封鎖剤からなる歯磨材であることが本発明の好適な実施態様である。本発明の好適な実施態様は、象牙細管封鎖剤からなる歯面処理材である。また、本発明の好適な実施態様は、象牙細管封鎖剤からなる象牙質知覚過敏抑制材である。
本発明によれば、露出した象牙質の象牙細管を封鎖することができるとともに、該封鎖後に周辺象牙質を再石灰化させることができる象牙細管封鎖剤が提供される。このことにより、象牙細管の開口により生じていた知覚過敏症の治療が可能となり、また、象牙細管を封鎖した本発明の象牙細管封鎖剤が、周囲の象牙質の歯質を強化するため、耐う蝕性を付与することもできる。
実施例5において、象牙細管が本発明の象牙細管封鎖剤で封鎖された牛歯象牙質断面のSEM写真である。 実施例5において、象牙細管が露出された牛歯象牙質表面のSEM写真(a)と、象牙細管が本発明の象牙細管封鎖剤で封鎖された牛歯象牙質表面のSEM写真(b)である。
本発明の象牙細管封鎖剤は、水酸化カルシウム粒子(A)を30〜75重量%、リン酸のアルカリ金属塩(B)を0.5〜25重量%、及び水(C)を20〜65重量%含有するものである。これにより、露出した象牙質の象牙細管を封鎖することができるとともに、周辺象牙質を再石灰化させることができる。その作用機序は必ずしも明らかではないが、以下のようなメカニズムが推定される。
水酸化カルシウムの水(20℃)への溶解度は、0.13g/100gであり、その溶解性は低い。そのため、本発明の象牙細管封鎖剤を露出した象牙質表面に適応すると、平均粒径が1〜10μmの水酸化カルシウム粒子はそのまま象牙細管内に侵入することが可能である。この時、粉末で配合したリン酸のアルカリ金属塩(B)が水(C)に溶解し、リン酸イオンが高濃度で水酸化カルシウム粒子(A)の周辺に存在することにより、水酸化カルシウム粒子(A)よりわずかに溶解したカルシウムイオンと、リン酸イオンがヒドロキシアパタイトとして析出し、水酸化カルシウム粒子(A)同士を結合するようである。象牙細管に侵入した水酸化カルシウム粒子(A)は、前記析出したヒドロキシアパタイトを介して、象牙質表面にも結合することにより、強固な塊状の封鎖物が生成するようである。この反応は、本発明の象牙細管封鎖剤を象牙質に適応後、数分の短時間の間に完了する。
さらに、本発明の象牙細管封鎖剤は、口腔内のリン酸イオンにより数週間にわたり、該象牙細管封鎖剤の内部にまでヒドロキシアパタイトに変化すると共に、カルシウムイオンの放出元となり、カルシウムイオンを放出することにより象牙細管の周囲の象牙質の歯質を強化するため、耐う蝕性を向上することもできる。
本発明で用いられる水酸化カルシウム粒子(A)の平均粒径は、1〜10μmであることが好ましい。平均粒径が1μm未満の場合、液剤へ溶解してしまうと共に、象牙細管内に留まり難く、封鎖性が低下することがある。更には液剤との混合により得られるペーストの粘度が高くなり過ぎるおそれがあり、塗布性が低下し、その結果、象牙細管封鎖性が低下することがある。平均粒径が2μm以上であることがより好適である。一方、平均粒径が10μmを超える場合、水酸化カルシウム粒子(A)が象牙細管内に侵入することができず、封鎖性が低下するおそれがある。水酸化カルシウムは、水に溶け難いがわずかには溶解するため、象牙細管の直径より若干大きい平均粒径を有する方が好ましい。かかる観点から、平均粒径が8μm以下であることがより好適であり、平均粒径が6μm以下であることがさらに好適である。水酸化カルシウム粒子(A)の平均粒径は、レーザー回折式粒度分布測定装置を用いて測定し、算出したものである。
このような平均粒径を有する水酸化カルシウム粒子(A)の製造方法は特に限定されず、市販品を入手できるのであればそれを使用してもよいが、市販品を更に粉砕することが好ましい場合が多い。その場合、ボールミル、ライカイ機、ジェットミルなどの粉砕装置を使用することができる。また、水酸化カルシウム原料粉体をアルコールなどの液体の媒体と共にライカイ機、ボールミル等を用いて粉砕してスラリーを調製し、得られたスラリーを乾燥させることにより水酸化カルシウム粒子(A)を得ることもできる。このときの粉砕装置としては、ボールミルを用いることが好ましく、そのポット及びボールの材質としては、好適にはアルミナやジルコニアが採用される。
本発明の象牙細管封鎖剤は、水酸化カルシウム粒子(A)を30〜75重量%含有することが必要である。水酸化カルシウム粒子(A)の含有量が30重量%未満の場合、組成物中の不溶成分が少なすぎるため、象牙細管を充分に封鎖することができなくなるおそれがある。水酸化カルシウム粒子(A)の含有量は、36重量%以上であることが好ましく、38重量%以上であることがより好ましい。一方、水酸化カルシウム粒子(A)の含有量が75重量%を超える場合、液材成分の含有量が少なくなり、本発明の象牙細管封鎖剤を充分ペースト化できなくなるため、短時間でのヒドロキシアパタイトの析出が阻害されて塊状封鎖物が得られず、象牙細管を封鎖できなくなるおそれがある。70重量%以下であることが好ましく、65重量%以下であることがより好ましい。
本発明で用いられるリン酸のアルカリ金属塩(B)としては特に限定されず、リン酸一水素二ナトリウム、リン酸一水素二カリウム、リン酸二水素一リチウム、リン酸二水素一ナトリウム、リン酸二水素一カリウム、リン酸三ナトリウム、リン酸三カリウム、並びにこれらの水和物等が挙げられ、これらのうちの1種又は2種以上が用いられる。中でも、安全性や純度の高い原料が容易に入手できる観点から、リン酸のアルカリ金属塩(B)がリン酸一水素二ナトリウム及び/又はリン酸二水素一ナトリウムであることが好ましい。
本発明の象牙細管封鎖剤は、リン酸のアルカリ金属塩(B)を0.5〜25重量%含有することが必要である。リン酸のアルカリ金属塩(B)の配合量が0.5重量%未満の場合、HApの析出が阻害されて短時間での塊状封鎖物が得られず、象牙細管を封鎖できなくなるおそれがある。リン酸のアルカリ金属塩(B)の含有量は、1重量%以上であることが好ましく、3重量%以上であることがより好ましい。一方、リン酸のアルカリ金属塩(B)の含有量が25重量%を超える場合、組成物中の可溶成分が多くなりすぎるため、生成した封鎖物内に空隙を生じ、象牙細管を充分封鎖することができなくなるおそれがある。リン酸のアルカリ金属塩(B)の含有量は、23重量%以下であることが好ましく、15重量%以下であることがより好ましい。
リン酸のアルカリ金属塩(B)の平均粒径は、2〜15μmであることが好ましい。平均粒径が2μm未満の場合、液剤への溶解が早すぎて、象牙細管にリン酸のアルカリ金属塩(B)が侵入する前に、組成物中のリン酸イオン濃度が高くなる。その結果、象牙細管に水酸化カルシウム(A)が侵入する前に、該水酸化カルシウム粒子(A)の表面にヒドロキシアパタイトが析出するため、象牙細管内で塊状封鎖物を生成しにくくなるおそれがある。さらには、リン酸のアルカリ金属塩(B)の粒子同士の二次凝集が発生し、同時に混合する他の粒子との分散性が低下するおそれがある。リン酸のアルカリ金属塩(B)の平均粒径は、より好適には3μm以上である。一方、リン酸のアルカリ金属塩(B)の平均粒径が15μmを超える場合、リン酸のアルカリ金属塩(B)が液剤へ溶解しにくくなるおそれがある。また、象牙細管内に侵入することができず、封鎖性が低下するおそれがある。さらに、実際に塗布した場合に、ざらつきがあるために使用感がよくない場合がある。リン酸のアルカリ金属塩(B)は水に溶解するため、象牙細管の直径より大きい平均粒径を有する方が好ましい。かかる観点から、リン酸のアルカリ金属塩(B)の平均粒径は、より好適には12μm以下である。リン酸のアルカリ金属塩(B)の平均粒径は、レーザー回折式粒度分布測定装置を用いて測定し、算出したものである。
このような平均粒径を有するリン酸のアルカリ金属塩(B)の製造方法は、上述した水酸化カルシウム粒子(A)と同様に行うことができる。
本発明の象牙細管封鎖剤は、水酸化カルシウム粒子(A)及びリン酸のアルカリ金属塩(B)に加えて、更に水(C)を20〜65重量%含有することが必要である。水の配合量が20重量%未満の場合、液成分の含有量が少なくなり、組成物を充分にペースト化できなくなるため、HApの析出が阻害されて象牙細管の封鎖物が得られないおそれがある。水(C)の含有量は、25重量%以上であることが好ましく、30重量%以上であることがより好ましい。一方、水の配合量が65重量%を超える場合、不溶成分が少なすぎるため象牙細管を封鎖することができなくなるおそれがあり、60重量%以下であることが好ましく、58重量%以下であることがより好ましい。
本発明の象牙細管封鎖剤は、更にフッ素化合物(D)を含有することが好ましい。このことにより、生成した封鎖物に耐酸性を付与させるとともに周辺象牙質の再石灰化を促進させることが可能となる。本発明で用いられるフッ素化合物(D)としては特に限定されず、フッ化ナトリウム、フッ化カリウム、フッ化アンモニウム、フッ化リチウム、フッ化セシウム、フッ化マグネシウム、フッ化カルシウム、フッ化ストロンチウム、フッ化バリウム、フッ化銅、フッ化ジルコニウム、フッ化アルミニウム、フッ化スズ、モノフルオロリン酸ナトリウム、モノフルオロリン酸カリウム、フッ化水素酸、フッ化チタンナトリウム、フッ化チタンカリウム、ヘキシルアミンハイドロフルオライド、ラウリルアミンハイドロフルオライド、グリシンハイドロフルオライド、アラニンハイドロフルオライド、フルオロシラン類、フッ化ジアミン銀等が挙げられる。中でも耐酸性封鎖物生成効果が高い観点からフッ化ナトリウム、モノフルオロリン酸ナトリウム、フッ化スズが好適に用いられる。
本発明で用いられるフッ素化合物(D)の使用量は特に限定されず、フッ素化合物(D)の換算フッ化物イオンを0.01〜3重量%含むことが好ましい。フッ素化合物(D)の換算フッ化物イオンの使用量が0.01重量%未満の場合、耐酸性封鎖物生成効果、並びに再石灰化を促進する効果が低下するおそれがあり、0.05重量%以上であることがより好ましい。一方、フッ素化合物(D)の換算フッ化物イオンの使用量が3重量%を超える場合、安全性が損なわれるおそれがあり、1重量%以下であることがより好ましい。
本発明の象牙細管封材は、更にシリカ粒子(E)を含有することが好ましい。これにより、得られる本発明の象牙細管封材の操作性を向上させることができる。かかる操作性向上の点で、一次粒子径が0.001〜0.1μmの微粒子シリカが好ましく使用される。市販品としては、「アエロジルOX50」、「アエロジル50」、「アエロジル200」、「アエロジル380」、「アエロジルR972」、「アエロジル130」(以上、いずれも日本アエロジル社製、商品名)が挙げられる。
本発明で用いられるシリカ粒子(E)の使用量は特に限定されず、シリカ粒子(E)を0.1〜10重量%含むことが好ましい。シリカ粒子(E)の含有量が0.1重量%未満の場合、操作性が低下するおそれがあり、0.3重量%以上であることがより好ましい。一方、シリカ粒子(E)の含有量が10重量%を超える場合、粉体のかさ密度が低下しすぎることで操作性が低下するばかりか、ペーストとした際の粘度が上昇するおそれがあり、5重量%以下であることがより好ましい。
本発明の象牙細管封鎖剤は、さらにシリカ粒子(E)以外のフィラーを配合してもよい。フィラーは、1種単独を配合してもよく、複数種類を組み合わせて配合してもよい。フィラーとしては、カオリン、クレー、雲母、マイカ等のシリカを基材とする鉱物;シリカを基材とし、Al、B、TiO、ZrO、BaO、La、SrO、ZnO、CaO、P、LiO、NaOなどを含有するセラミックス及びガラス類が例示される。ガラス類としては、ランタンガラス、バリウムガラス、ストロンチウムガラス、ソーダガラス、リチウムボロシリケートガラス、亜鉛ガラス、フルオロアルミノシリケートガラス、ホウ珪酸ガラス、バイオガラスが好適に用いられる。結晶石英、アルミナ、酸化チタン、酸化イットリウム、ジルコニア、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、フッ化イッテルビウムも好適に用いられる。
シリカ粒子(E)以外のフィラーを配合することにより、粉体の二次凝集が抑制され、長期間保存後の粉体採取性が良好となる。フィラーは、0.5〜3重量%含有することが好ましい。
本発明の象牙細管封鎖剤は、本発明の効果を阻害しない範囲で水酸化カルシウム粒子(A)、リン酸のアルカリ金属塩(B)、水(C)、フッ素化合物(D)及びシリカ粒子(E)以外の成分を含有しても構わない。例えば、必要に応じて増粘剤を配合することができる。増粘剤の具体例としては、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、ポリアクリル酸、ポリスチレンスルホン酸、ポリスチレンスルホン酸塩、ポリグルタミン酸、ポリグルタミン酸塩、ポリアスパラギン酸、ポリアスパラギン酸塩、ポリLリジン、ポリLリジン塩、セルロース以外のデンプン、アルギン酸、アルギン酸塩、カラジーナン、グアーガム、キタンサンガム、セルロースガム、ヒアルロン酸、ヒアルロン酸塩、ペクチン、ペクチン塩、キチン、キトサン等の多糖類、アルギン酸プロピレングリコールエステル等の酸性多糖類エステル、またコラーゲン、ゼラチン及びこれらの誘導体などのタンパク質類等の高分子などから選択される1つ又は2つ以上が挙げられるが、水への溶解性及び粘性の面からはカルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、アルギン酸、アルギン酸塩、キトサン、ポリグルタミン酸、ポリグルタミン酸塩から選択される少なくとも1つが好ましい。増粘剤は、粉体に配合してもよいし液剤に配合してもよく、また混合中のペーストに配合してもよい。
また、必要に応じて、グリセリン、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジグリセリン等の多価アルコール、キシリトール、ソルビトール、エリスリトール等の糖アルコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のポリエーテル、アスパルテーム、アセスルファムカリウム、カンゾウ抽出液、サッカリン、サッカリンナトリウム等の人工甘味料などを加えてもよい。更に、薬理学的に許容できるあらゆる薬剤等を配合することができる。セチルピリジニウムクロリド等に代表される抗菌剤、消毒剤、抗癌剤、抗生物質、アクトシン、PEG1などの血行改善薬、bFGF、PDGF、BMPなどの増殖因子、骨芽細胞、象牙芽細胞、さらに未分化な骨髄由来幹細胞、胚性幹(ES)細胞、線維芽細胞等の分化細胞を遺伝子導入により脱分化・作製した人工多能性幹(iPS:induced Pluripotent Stem)細胞並びにこれらを分化させた細胞など硬組織形成を促進させる細胞などを配合させることができる。
本発明の象牙細管封鎖剤は、該象牙細管封鎖剤で厚さ700μmの牛歯ディスクの片面を処置した際の象牙質透過抑制率が下記式(I)を満たすことが好ましい。下記式(I)を満たす本発明の象牙細管封鎖剤は、露出した象牙質の象牙細管を封鎖することができるとともに、周辺象牙質を再石灰化させることができる。このことにより、象牙細管の開口により生じていた知覚過敏症の治療が可能となり、また、象牙細管を封鎖した象牙細管封鎖剤が、周囲の象牙質の歯質を強化するため、耐う蝕性を付与することもできる。
[1−(象牙細管を封鎖した牛歯ディスクの透過量)/(象牙細管の封鎖を行っていない牛歯ディスクの透過量)]×100≧70・・・(I)
上記象牙質透過抑制率は80%以上であることがより好ましく、85%以上であることが更に好ましく、90%以上であることが特に好ましい。
本発明では、水酸化カルシウム粒子(A)、リン酸のアルカリ金属塩(B)、及び水(C)を主成分とする液体又は水系ペーストを混合することにより、ペースト状の象牙細管封鎖剤を得ることができる。水(C)を含むこのペースト状の象牙細管封鎖剤は、直ちにHApに転化する反応が起こり始めるため、医療現場で使用する直前に混合して調製することが好ましい。混合操作としては特に限定されず、手混合、スタティックミキサーを用いた混合等が好ましく採用される。
本発明において、象牙細管封鎖剤を得る方法は特に限定されない。水酸化カルシウム粒子(A)及びリン酸のアルカリ金属塩(B)を含む粉体又は非水系ペーストに、水(C)を主成分とする液体又は水系ペーストを加えて混合することによってペースト状の象牙細管封鎖剤を得ることができる。水酸化カルシウム粒子(A)を含む粉体又は非水系ペーストと、リン酸のアルカリ金属塩(B)を含む粉体又は非水系ペーストと、水(C)を主成分とする液体又は水系ペーストとを混合することによってもペースト状の象牙細管封鎖剤を得ることができる。リン酸のアルカリ金属塩(B)を含む粉体又は非水系ペーストに、水(C)を主成分とし水酸化カルシウム粒子(A)を含む液体又は水系ペーストとを混合することによってもペースト状の象牙細管封鎖剤を得ることができる。水酸化カルシウム粒子(A)を含む粉体又は非水系ペーストに、水(C)を主成分としリン酸のアルカリ金属塩(B)を含む液体又は水系ペーストとを混合することによってもペースト状の象牙細管封鎖剤を得ることができる。水(C)を主成分とし水酸化カルシウム粒子(A)を含む液体又は水系ペーストと、水(C)を主成分としリン酸のアルカリ金属塩(B)を含む液体又は水系ペーストとを混合することによってもペースト状の象牙細管封鎖剤を得ることができる。
ここで、象牙細管の内部のリン酸イオン濃度を高く維持し、象牙細管透過抑制効果のより高い象牙細管封鎖剤を得ることができる観点から、水酸化カルシウム粒子(A)及びリン酸のアルカリ金属塩(B)を含む粉体又は非水系ペーストに、水(C)を主成分とする液体又は水系ペーストを加えて混合することが好ましい。また、リン酸のアルカリ金属塩(B)を含む粉体又は非水系ペーストに、水(C)を主成分とし水酸化カルシウム粒子(A)を含む液体又は水系ペーストを加えて混合することが好ましい。これらの方法は、使用直前に混合して調製する際の操作が簡便である。非水系ペーストに使用される水以外の溶媒としては特に限定されず、例えば、グリセリン、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジグリセリン等の多価アルコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のポリエーテルなどが例示される。
こうして得られた象牙細管封鎖剤は、露出象牙質表面に塗布等することにより好適に使用される。ここで、水を主成分とする液体とは、純水であっても、水を主成分とし他の成分を含有する液体であってもよく、また、水を主成分とする水系ペーストとは、水を主成分とし他の成分を含有するペースト状の液体を示す。他の成分としては特に限定されず、グリセリン、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジグリセリン等の多価アルコール、キシリトール、ソルビトール、エリスリトール等の糖アルコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のポリエーテルなどが例示される。
ここで、水の存在下では、水酸化カルシウム粒子(A)及びリン酸のアルカリ金属塩(B)が速やかにHApに転化する反応が起こるため、水酸化カルシウム粒子(A)及びリン酸のアルカリ金属塩(B)と、水(C)を主成分とする液体又は水系ペーストとを予め混合して保存しておくことができない。したがって、水酸化カルシウム粒子(A)及びリン酸のアルカリ金属塩(B)を含有する粉体又は非水系ペーストと、水(C)を主成分とする液体又は水系ペーストとからなる象牙細管封鎖剤キットであることが本発明の実施態様の一つである。水酸化カルシウム粒子(A)を含む粉体又は非水系ペーストと、リン酸のアルカリ金属塩(B)を含む粉体又は非水系ペーストと、水(C)を主成分とする液体又は水系ペーストとからなる象牙細管封鎖剤キットであることも本発明の実施態様の一つである。また、リン酸のアルカリ金属塩(B)を含む粉体又は非水系ペーストと、水(C)を主成分とし水酸化カルシウム粒子(A)を含む液体又は水系ペーストとからなる象牙細管封鎖剤キットであることも本発明の実施態様の一つである。
本発明の象牙細管封鎖剤は、歯面処理材及び歯磨材等の各種用途に好ましく用いられる。すなわち、本発明の好適な実施態様は、象牙細管封鎖剤からなる歯面処理材、及び象牙細管封鎖剤からなる歯磨材である。また、本発明の象牙細管封鎖剤によって、上記説明したように、象牙細管の開口により生じていた知覚過敏症の治療が可能であり、かかる観点から、象牙細管封鎖剤からなる象牙質知覚過敏抑制材が本発明の好適な実施態様である。水の存在下では、水酸化カルシウム粒子(A)及びリン酸のアルカリ金属塩(B)が速やかにHApに転化する反応が起こるため、歯面処理材などのように使用直前に液剤と適宜混合するような態様であることが好ましい。したがって、象牙細管封鎖剤からなる歯面処理材が本発明のより好適な実施態様である。
本発明の象牙細管封鎖剤は、象牙細管内へ組成物を到達させるために、露出象牙質に組成物を塗布した後、マイクロブラシ、綿棒、あるいはラバーカップ等で塗布した組成物を象牙細管内へすり込む操作を行うことが好ましい。すり込む操作は、マイクロブラシ等で象牙質表面を30秒程度擦るだけでよく、それにより象牙細管内に約10μmの深さで、塊状封鎖物が生成される。露出象牙質に組成物を塗布した後、数分間静置しただけでは、直径約2μmの象牙細管内に組成物が侵入することは無く、象牙質表面に薄くヒドロキシアパタイト層が形成されるのみであり、形成されたヒドロキシアパタイト層も、歯質との結合が弱いため、簡単にはがれてしまうことを本発明者らは確認している。したがって、象牙細管内にすり込むことにより象牙細管を封鎖させるために用いられるものである象牙細管封鎖剤であることが本発明の好適な実施態様である。また、このような象牙細管封鎖剤を象牙質表面にすり込むことによる象牙質知覚過敏抑制方法も本発明の好適な実施態様である。
以下、実施例を用いて本発明を更に具体的に説明する。本実施例において水酸化カルシウム(A)及びリン酸のアルカリ金属塩(B)粒子の平均粒径は、レーザー回折式粒度分布測定装置(株式会社島津製作所製「SALD−2100型」)を用いて測定し、測定の結果から算出されるメディアン径を平均粒径とした。
[象牙質透過抑制率評価]
(1)象牙質透過抑制率評価用牛歯の作製
健全牛歯切歯の頬側象牙質から#80、#1000研磨紙を用いて回転研磨機によりトリミングし、直径約1.5cm、厚さ0.9mmの象牙質ディスクを作製した。この牛歯ディスク表面をさらにラッピングフィルム(#1200、#3000、#8000、住友スリーエム社製)を用いて研磨し、厚さ0.7mmまで研磨し、平滑とした。この牛歯ディスクを、0.5M EDTA溶液(和光純薬工業株式会社製)を5倍に希釈した溶液に180秒間浸漬し、約30秒間蒸留水中で洗浄した。更に10%次亜塩素酸ナトリウム溶液(ネオクリーナー「セキネ」、ネオ製薬工業(株))を120秒間浸漬した後、約30分間蒸留水で洗浄することで象牙質透過抑制率評価に用いる牛歯ディスクを調製した。
(2)象牙質透過抑制率評価(初期)試料の作製
上記牛歯ディスクの頬側象牙質表面に対して、スパーテルを用いて上記で調製した象牙細管封鎖剤約0.1gを付着させ、続いてマイクロブラシ(MICROBRUSH INTERNATIONAL製「REGULAR SIZE(2.0mm)、MRB400」)を用いて、象牙質処理面中央部における直径5mmの象牙質に対して30秒間すり込みを行った。その後、象牙質表面のペーストを蒸留水で除去し、直ちに象牙質透過抑制率評価試験を実施した(n=5)。
[擬似唾液の調製]
塩化ナトリウム(8.77g、150mmol)、リン酸二水素カリウム(122mg、0.9mmol)、塩化カルシウム(166mg、1.5mmol)、Hepes(4.77g、20mmol)をそれぞれ秤量皿に量り取り、約800mlの蒸留水を入れた2000mlビーカーに攪拌下に順次加えた。溶質が完全に溶解したことを確認した後、この溶液の酸性度をpHメータ(F55、堀場製作所)で測定しながら、10%水酸化ナトリウム水溶液を滴下し、pH7.0とした。次にこの溶液を1000mlメスフラスコに加えてメスアップし、擬似唾液1000mlを得た。
(3)象牙質透過抑制率評価(長期)試料の作製
上記牛歯ディスクの頬側象牙質表面に対して、スパーテルを用いて上記で調製した象牙細管封鎖剤約0.1gを付着させ、続いてマイクロブラシ(MICROBRUSH INTERNATIONAL製「REGULAR SIZE(2.0mm)、MRB400」)を用いて、象牙質処理面中央部における直径5mmの象牙質に対して30秒間すり込みを行った。その後、象牙質表面のペーストを蒸留水で除去し、擬似唾液中に2週間浸漬した後、象牙質透過抑制率評価試験を実施した(n=5)。
(4)象牙質透過抑制率評価試験
象牙質透過抑制率の測定には、Pashleyらの方法(D.H.PASHLEY et al.,J.Dent.Res.65:417−420,1986.;K.C.Y.TAY et al.,J.Endod.33:1438−1443,2007.)に準じる方法を用いて実施した。同様の装置を設置し、上記で得た象牙細管封鎖処置を行った牛歯ディスクを歯髄からエナメル質の方向に液が透過する様に分割可能なチャンバー治具中に設置、固定した。Phosphate−buffered saline(Dulbecco’s PBS, Grand Island Biological Company, Grand Island, NY)の圧力を加える象牙質表面は、Oリングを用いて表面積を78.5mm(直径5mm)に規格化し、10psi(69kPa)で加圧し、24時間経過した際の透過量を測定した。また、同様の操作で上記の象牙細管封鎖処置を行っていない牛歯ディスクの透過量を測定し、下記式を用いて象牙質透過抑制率を算出した。
象牙質透過抑制率(%)=[1−(象牙細管を封鎖した牛歯ディスクの透過量)/(象牙細管の封鎖を行っていない牛歯ディスクの透過量)]×100
実施例1
[象牙細管封鎖剤の調製]
(1)水酸化カルシウム粒子(A)の調製
本実施例で使用する水酸化カルシウム粒子(A)(平均粒径1.0μm)は、市販の水酸化カルシウム粒子(河合石灰工業株式会社製)50g、99.5%エタノール(和光純薬工業株式会社製「Ethanol,Dehydrated(99.5)」)240g、及び直径が10mmのジルコニアボール480gを1000mlのアルミナ製粉砕ポット(株式会社ニッカトー製「HD−B−104 ポットミル」)中に加え、1500rpmの回転速度で15時間湿式振動粉砕を行うことで得られたスラリーを、ロータリーエバポレータでエタノールを留去した後、60℃で6時間乾燥させることで得た。平均粒径0.5μm、並びに平均粒径5.0μmの水酸化カルシウム粒子(A)は、上記方法と同様にし、粉砕時間をそれぞれ、40時間、並びに7時間とすることにより得た。平均粒径10.0μmの水酸化カルシウム粒子(A)は、市販の水酸化カルシウム粒子(河合石灰工業株式会社製)をそのまま使用した。
(2)リン酸のアルカリ金属塩(B)粒子の調製
リン酸のアルカリ金属塩(B)粒子の一例として本実施例で使用するリン酸一水素二ナトリウム(B)粒子(NaHPO、平均粒径8μm)は、市販のリン酸一水素二ナトリウム粒子(和光純薬工業株式会社製)50g、99.5%エタノール(和光純薬工業株式会社製「Ethanol,Dehydrated(99.5)」)240g、及び直径が10mmのジルコニアボール480gを1000mlのアルミナ製粉砕ポット(株式会社ニッカトー製「HD−B−104 ポットミル」)中に加え、1500rpmの回転速度で2.5時間湿式振動粉砕を行うことで得られたスラリーを、ロータリーエバポレータでエタノールを留去した後、60℃で6時間真空乾燥することで得た。平均粒径5.0μm、並びに平均粒径10.0μm、のリン酸一水素二ナトリウム(B)は、上記方法と同様にし、粉砕時間をそれぞれ、3時間、並びに2時間とすることにより得た。
(3)象牙細管封鎖剤用の粉剤の調製
上記で得た水酸化カルシウム粒子(A)(平均粒径5.0μm)35g、リン酸一水素二ナトリウム(B)粒子(平均粒径8.0μm)2.5gを高速回転ミル(アズワン株式会社製「SM−1」)中に加え、1000rpmの回転速度で3分間混合することで象牙細管封鎖剤用の粉剤を得た。
(4)象牙細管封鎖剤の調製
上記(3)で得た粉剤3.75gを精秤し、これに蒸留水6.25gを加え混合することで象牙細管封鎖剤を調製した。象牙質透過抑制率評価を実施し、初期象牙質透過抑制率80%、並びに長期象牙質透過抑制率83%を得た。得られた結果を表1に示す。
実施例2〜4
象牙細管封鎖剤の粉剤と液剤を表1に示す組成で調製し、実施例1と同様にして象牙細管封鎖剤を調製し、初期、並びに長期象牙質透過抑制率評価試験を行った。得られた評価結果を表1にまとめて示す。
実施例5
フッ化ナトリウム(和光純薬工業株式会社製)0.22gを蒸留水42.28gに溶解させることで象牙細管封鎖剤用の液剤を得た。水酸化カルシウム(平均粒径5.0μm)52g、リン酸一水素二ナトリウム(平均粒径8.0μm)5.5gを実施例1と同様の方法で混合し、象牙細管封鎖剤用の粉剤を得た。上記で作成した液剤42.5gを加え混合することで象牙細管封鎖剤を調製した。実施例1と同様にして、初期、並びに長期象牙質透過抑制率評価試験を行った。得られた評価結果を表1にまとめて示す。
(1)形態学的評価用牛歯の作製
健全牛歯切歯の頬側中央を#80、#1000研磨紙を用いて回転研磨機により研磨してトリミングし、頬側象牙質が露出した厚さ2mmの象牙質板を作製した。この頬側象牙質面をさらにラッピングフィルム(#1200、#3000、#8000、住友スリーエム社製)を用いて研磨し、平滑とした。この頬側象牙質部分に歯に対して縦軸方向及び横軸方向に各7mm試験部分の窓を残し、周りをマニキュアでマスキングし、1時間風乾した。この牛歯に対して、0.5M EDTA溶液(和光製薬製)を5倍に希釈した溶液を30秒間象牙質窓に作用させ脱灰を行った後、30分以上水洗した。更に10%次亜塩素酸ナトリウム溶液(ネオクリーナー「セキネ」、ネオ製薬工業(株))を2分間作用させ清掃した後、約30分以上水洗することで象牙細管封鎖評価に用いる牛歯を調製した。上記歯面処理の後、歯の縦軸方向に半分をマニキュアでマスキングし、未処理の状態を保持した。上記牛歯の頬側象牙質表面に対して、スパーテルを用いて実施例5の象牙質知覚過敏抑制材約0.1gを付着させ、続いてマイクロブラシ(MICROBRUSH INTERNATIONAL製「REGULAR SIZE(2.0mm)、MRB400」)を用いて象牙質窓全面に対して30秒間すり込みを行った。その後、象牙質表面のペーストを蒸留水で除去した。
(2)SEM観察用サンプルの作製
上記処理後、牛歯サンプルをバイアル中の70%エタノール水溶液中に浸漬した。浸漬後、直ちにバイアルをデシケータ内に移し、10分間減圧条件下に置いた。この後、バイアルをデシケータから取り出し、低速攪拌機(TR−118、AS−ONE社製)に取り付け、約4rpmの回転速度で1時間攪拌した。同様の操作を、80%エタノール水溶液、90%エタノール水溶液、99%エタノール水溶液、100%エタノール(2回)を用いて行い、2回目の100%エタノールにはそのまま1晩浸漬した。翌日、プロピレンオキサイドとエタノールの1:1混合溶媒、プロピレンオキサイド100%(2回)についても順次同様の作業を行い、2回目のプロピレンオキサイドにそのまま1晩浸漬することで脱水、並びにマニキュアの除去を行った。プロピレンオキサイドを留去したサンプルを牛歯ディスクの象牙細管封鎖処理表面の形態観察用サンプルとした。また、プロピレンオキサイド留去後2本のプライヤーを用いて象牙細管封鎖処置を行った象牙質を脆性的に破壊し、象牙質断面の形態観察用サンプルとした。
(3)SEM観察
SEM観察にはS-3500N(日立ハイテク社製)を使用した。加速電圧は15kVの条件で、破壊前の牛歯ディスクの象牙細管封鎖処理−未処理境界付近の表面形態、並びに象牙質断面の象牙細管封鎖処理表面付近の形態を観察し、象牙質表面から象牙細管方向に知覚過敏抑制材により封鎖が観察される最も深い距離(以下、「象牙細管封鎖深さ」ということがある)の測定を行った。実施例5の象牙細管封鎖剤による象牙細管封鎖深さの平均は10μmであった。得られたSEM写真を図1及び図2(図1中の矢印はHApで封鎖された象牙細管である)に示す。
実施例6〜8、13、14、21、22
象牙細管封鎖剤の粉剤と液剤を表1に示す組成で調製し、実施例5と同様にして象牙細管封鎖剤を調製し、初期、並びに長期象牙質透過抑制率評価試験を行った。得られた評価結果を表1にまとめて示す。
実施例9
水酸化カルシウム粒子(A)(平均粒径5.0μm)52g、リン酸一水素二ナトリウム(B)粒子(平均粒径8.0μm)5.5g、フッ化ナトリウム(和光純薬工業株式会社製)0.22gを実施例1と同様の方法で混合し、象牙細管封鎖剤用の粉剤を得た。この粉剤を蒸留水42.28gに加え混合することで象牙細管封鎖剤を調製した。実施例1と同様にして、初期、並びに長期象牙質透過抑制率評価試験を行った。得られた評価結果を表1にまとめて示す。
実施例10
象牙細管封鎖剤の粉剤と液剤を表1に示す組成で調製し、実施例9と同様にして象牙細管封鎖剤を調製し、初期、並びに長期象牙質透過抑制率評価試験を行った。得られた評価結果を表1にまとめて示す。
実施例11
フッ化ナトリウム(和光純薬工業株式会社製)0.22gを蒸留水41.78gに溶解させることで象牙細管封鎖剤用の液剤を得た。水酸化カルシウム粒子(A)(平均粒径5.0μm)52g、リン酸一水素二ナトリウム(B)粒子(平均粒径8.0μm)5.5g、シリカ(「アエロジル130」平均粒径0.02μm、日本アエロジル社製)0.5g、を実施例1と同様の方法で混合し、象牙細管封鎖剤用の粉剤を得た。上記で作成した液剤42.0gを加え混合することで象牙細管封鎖剤を調製した。実施例1と同様にして、初期、並びに長期象牙質透過抑制率評価試験を行った。得られた評価結果を表1にまとめて示す。
実施例12
象牙細管封鎖剤の粉剤と液剤を表1に示す組成で調製し、実施例11と同様にして象牙細管封鎖剤を調製し、初期、並びに長期象牙質透過抑制率評価試験を行った。得られた評価結果を表1にまとめて示す。
実施例15
モノフルオロリン酸ナトリウム(和光純薬工業株式会社製)0.22gを蒸留水42.28gに溶解させることで象牙細管封鎖剤用の液剤を得た。水酸化カルシウム(平均粒径5.0μm)52g、リン酸一水素二ナトリウム(B)粒子(平均粒径8μm)5.5gを、実施例1と同様の方法で混合し、象牙細管封鎖剤用の粉剤を得た。上記で作製した液剤42.5gを加え混合することで象牙細管封鎖剤を調製した。実施例1と同様にして、初期、並びに長期象牙質透過抑制率評価試験を行った。得られた評価結果を表1にまとめて示す。
実施例16
リン酸のアルカリ金属塩(B)粒子としてリン酸二水素一ナトリウム(B)粒子(NaHPO、平均粒径8.0μm)は、市販のリン酸二水素一ナトリウム粒子(和光純薬工業株式会社製)50g、99.5%エタノール(和光純薬工業株式会社製「Ethanol,Dehydrated(99.5)」)240g、及び直径が10mmのジルコニアボール480gを1000mlのアルミナ製粉砕ポット(株式会社ニッカトー製「HD−B−104 ポットミル」)中に加え、1500rpmの回転速度で4時間湿式振動粉砕を行うことで得られたスラリーを、ロータリーエバポレータでエタノールを留去した後、60℃で6時間真空乾燥することで得た。象牙細管封鎖剤の粉剤と液剤を表1に示す組成で調製し、実施例5と同様にして象牙細管封鎖剤を調製し、初期、並びに長期象牙質透過抑制率評価試験を行った。得られた評価結果を表1にまとめて示す。
実施例17
フッ化ナトリウム(和光純薬工業株式会社製)0.22g及びリン酸一水素二ナトリウム2.5gを蒸留水45.28gに溶解させることで象牙細管封鎖剤用の液剤を得た。水酸化カルシウム(平均粒径5.0μm)52gを象牙細管封鎖剤用の粉剤として、上記で作成した液剤48.0gに加え混合することで象牙細管封鎖剤を調製した。実施例1と同様にして、初期、並びに長期象牙質透過抑制率評価試験を行った。得られた評価結果を表1にまとめて示す。
実施例18〜20
象牙細管封鎖剤の粉剤と液剤を表1に示す組成で調製し、実施例17と同様にして象牙細管封鎖剤を調製し、初期、並びに長期象牙質透過抑制率評価試験を行った。得られた評価結果を表1にまとめて示す。
比較例1〜4
象牙細管封鎖剤の粉剤と液剤を表2に示す組成で調製し、実施例1と同様にして象牙細管封鎖剤を調製し、初期、並びに長期象牙質透過抑制率評価試験を行った。得られた評価結果を表2にまとめて示す。
実施例23
水酸化カルシウム(平均粒径5.0μm)24g、リン酸一水素二ナトリウム(平均粒径5.0μm)4.5g、フッ化ナトリウム(和光純薬工業株式会社製)0.22g、シリカ(「アエロジル130」(平均粒径0.02μm)、日本アエロジル社製)0.5g、グリセリン(和光純薬工業株式会社製)9.73gを混合し、非水系ペーストを調製した。水酸化カルシウム(平均粒径5.0μm)24g、サッカリン酸ナトリウム(和光純薬工業株式会社製)0.5g、ポリエチレングリコール(マクロゴール400、三洋化成工業株式会社製)3g、グリセリン(和光純薬工業株式会社製)5.0g、プロピレングリコール(和光純薬工業株式会社製)5.0g、セチルピリジニウムクロリド一水和物(和光純薬工業株式会社製)0.05g、シリカ(「Ar130」シリカ(平均粒径0.02μm)、日本アエロジル社製)3.5g、蒸留水20.0gを混合し、水系ペーストを調製した。上記で作製した非水系ペースト38.95gと水系ペースト61.05gを加え混合することで象牙細管封鎖剤を調製した。実施例1と同様にして、初期、並びに長期象牙質透過抑制率評価試験を行った。得られた評価結果を表3にまとめて示す。
実施例24
水酸化カルシウム(平均粒径5.0μm)48g、リン酸一水素二ナトリウム(平均粒径5.0μm)4.5gを実施例1の方法で混合し、粉剤を調製した。フッ化ナトリウム(和光純薬工業株式会社製)0.22g、シリカ(「アエロジル130」(平均粒径0.02μm)、日本アエロジル社製)0.5g、グリセリン(和光純薬工業株式会社製)9.73gを混合し、非水系ペーストを調製した。サッカリン酸ナトリウム(和光純薬工業株式会社製)0.5g、ポリエチレングリコール(マクロゴール400、三洋化成工業株式会社製)3g、グリセリン(和光純薬工業株式会社製)5.0g、プロピレングリコール(和光純薬工業株式会社製)5.0g、セチルピリジニウムクロリド一水和物(和光純薬工業株式会社製)0.05g、シリカ(「アエロジル130」(平均粒径0.02μm)、日本アエロジル社製)3.5g、蒸留水20.0gを混合し、水系ペーストを調製した。上記で作製した粉剤52.5g、非水系ペースト10.45gと水系ペースト37.05gを加え混合することで象牙細管封鎖剤を調製した。実施例1と同様にして、初期、並びに長期象牙質透過抑制率評価試験を行った。得られた評価結果を表3にまとめて示す。
実施例25
リン酸一水素二ナトリウム(平均粒径5.0μm)4.5g、フッ化ナトリウム(和光純薬工業株式会社製)0.22g、シリカ(「Ar130」シリカ(平均粒径0.02μm)、日本アエロジル社製)0.5g、グリセリン(和光純薬工業株式会社製)9.73gを混合し、非水系ペーストを調製した。水酸化カルシウム(平均粒径5.0μm)48g、サッカリン酸ナトリウム(和光純薬工業株式会社製)0.5g、ポリエチレングリコール(マクロゴール400、三洋化成工業株式会社製)3g、グリセリン(和光純薬工業株式会社製)5.0g、プロピレングリコール(和光純薬工業株式会社製)5.0g、セチルピリジニウムクロリド一水和物(和光純薬工業株式会社製)0.05g、シリカ(「Ar130」シリカ(平均粒径0.02μm)、日本アエロジル社製)3.5g、蒸留水20.0gを混合し、水系ペーストを調製した。上記で作製した非水系ペースト14.95gと水系ペースト85.05gを加え混合することで象牙細管封鎖剤を調製した。実施例1と同様にして、初期、並びに長期象牙質透過抑制率評価試験を行った。得られた評価結果を表3にまとめて示す。

Claims (7)

  1. 水酸化カルシウム粒子(A)を30〜75重量%、リン酸のアルカリ金属塩(B)を0.5〜25重量%、及び水(C)を20〜65重量%含有する象牙細管封鎖剤であって、象牙質表面にすり込むことにより象牙細管を封鎖させるために用いられるものである象牙細管封鎖剤
  2. 更にフッ素化合物(D)を含有する請求項1記載の象牙細管封鎖剤。
  3. 更にシリカ粒子(E)を含有する請求項1又は2に記載の象牙細管封鎖剤。
  4. 該象牙細管封鎖剤で厚さ700μmの牛歯ディスクの片面を処置した際の象牙質透過抑制率が下記式(I)を満たす請求項1〜3のいずれか記載の象牙細管封鎖剤。
    [1−(象牙細管を封鎖した牛歯ディスクの透過量)/(象牙細管の封鎖を行っていない牛歯ディスクの透過量)]×100≧70・・・(I)
  5. 請求項1〜のいずれか記載の象牙細管封鎖剤からなる歯磨材。
  6. 請求項1〜のいずれか記載の象牙細管封鎖剤からなる歯面処理材。
  7. 請求項1〜のいずれか記載の象牙細管封鎖剤からなる象牙質知覚過敏抑制材。
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