JP4986276B2 - リン酸カルシウム組成物からなる骨セメント及びその製造方法 - Google Patents

リン酸カルシウム組成物からなる骨セメント及びその製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、リン酸カルシウム組成物からなる骨セメントに関する。特にリン酸四カルシウム粒子及びリン酸水素カルシウム粒子からなるリン酸カルシウム組成物からなる骨セメント及びその製造方法に関する。
リン酸カルシウム組成物を焼結して得られるヒドロキシアパタイト(Ca10(PO(OH))は、骨や歯などの無機成分に近い組成を有し、骨と直接結合する性質である生体活性を有していることから、骨欠損部や骨空隙部の修復用材料としての利用が報告されている。しかし、このようなヒドロキシアパタイトからなる材料は、生体親和性は優れているが、複雑な形態を有する部位に応用するには、成形性という点で困難な場合があった。
一方、リン酸カルシウム組成物の中でもセメントタイプ、即ち硬化性を有するリン酸カルシウム組成物は、生体内や口腔内において生体吸収性のヒドロキシアパタイトへ徐々に転化し、さらに形態を保ったままで生体硬組織と一体化し得ることが知られている。このようなリン酸カルシウム組成物は、生体親和性が優れているだけではなく、成形性を有することから複雑な形態を有する部位への応用が容易であるとされている。
例えば、特許第3017536号公報(特許文献1)には、リン酸四カルシウムとリン酸水素カルシウム無水物の混合物が水の存在下で反応してヒドロキシアパタイトを生成することが記載されている。しかしながら、これらのリン酸カルシウム組成物は症例によっては十分な硬化物の機械的強度を示さないなど、臨床現場でさまざまな問題が発生していた。例えば、充填部位に大量の血液が存在する場合に、血液と接触した部分で血液凝固物を含有する不均一かつ脆弱なリン酸カルシウム硬化物が部分的に生成して、硬化物の機械的強度が低下するおそれがあり、血液との親和性の向上や血液凝固物を形成する前に速やかに血液成分をリン酸カルシウム硬化物中に吸収する特性の改善が望まれていた。
特許第3017536号公報
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、臨床現場で使用する際に血液と接触しても硬化物の機械的強度が高い骨セメントを提供することを目的とするものである。また、そのような骨セメントの好適な製造方法を提供することを目的とするものである。
上記課題は、リン酸四カルシウム粒子(A)及びリン酸水素カルシウム粒子(B)からなるリン酸カルシウム組成物からなる骨セメントであって、リン酸四カルシウム粒子(A)の平均粒径が15〜45μmであり、かつリン酸四カルシウム粒子(A)における5μm以下の粒径の粒子の含有率が10重量%以下であることを特徴とする骨セメントを提供することによって解決される。
このとき、リン酸水素カルシウム粒子(B)の平均粒径が0.1〜5μmであることが好適である。また、リン酸四カルシウム粒子(A)とリン酸水素カルシウム粒子(B)の配合割合(A/B)がモル比で40/60〜60/40であることも好適である
また、リン酸四カルシウム粒子(A)が、ボールミル、ジェットミル及びライカイ機からなる群から選択される少なくとも1種を用いて調製されることを特徴とする骨セメントの製造方法を提供することが好適である。また、前記リン酸四カルシウム粒子(A)が、分級などの操作により5μm以下の粒径の粒子を除去することによって調製されることも好適である。
本発明の骨セメントは、臨床現場で使用する際に血液と接触してもその硬化物の機械的強度が高い
本発明のリン酸カルシウム組成物は、リン酸四カルシウム粒子(A)及びリン酸水素カルシウム粒子(B)からなるものである。リン酸四カルシウム粒子(A)及びリン酸水素カルシウム粒子(B)を含有するリン酸カルシウム組成物は、水の存在下で混練すると熱力学的に安定なヒドロキシアパタイトを生成して硬化する。
本発明で用いられるリン酸四カルシウム粒子(A)の平均粒径は15〜45μmである。平均粒径が15μm未満の場合は、血液との親和性が悪くなるばかりか、大量の血液が充填部位に存在する場合に血液凝固物を含有する不均一かつ脆弱なリン酸カルシウム硬化物が生成するおそれがある。平均粒径は、より好適には20μm以上であり、さらに好適には30μm以上である。一方、平均粒径が45μmを超える場合は、水を主成分とする液剤との混合により得られるペーストが十分な粘性を示さない、あるいはざらつき感が大きくなるなどペースト性状が好ましくない。また、歯科用の根管充填剤などとして使用する場合、狭い移植箇所へシリンジを用いて注入する際にノズルの先端が詰まるおそれもある。平均粒径は、より好適には40μm以下であり、さらに好適には35μm以下である。ここで、本発明で使用するリン酸四カルシウム粒子(A)の平均粒径とは、レーザー回折式粒度分布測定装置を用いて測定し、算出したものである。
また、リン酸四カルシウム粒子(A)における5μm以下の粒径の粒子の含有率が10重量%以下であることにより、血液に接触したり血液が混入したりした場合であっても、得られるリン酸カルシウム組成物の硬化物の機械的強度が高いことが明らかになった。この理由は、必ずしも明らかではないが、以下のようなメカニズムが推定される。
すなわち、リン酸四カルシウム粒子(A)における5μm以下の粒径の粒子の含有率が一定割合以下であることによって、リン酸カルシウム組成物のペーストを骨などに充填した場合に、その周囲に血液が存在しても、リン酸四カルシウム粒子(A)相互の間隙に赤血球や血小板などの血液成分が血液凝固物を形成する前に速やかに吸収される特性をもつようである。その結果、血液に接触したり血液が混入したりした場合であっても、血液凝固物を含有する不均一かつ脆弱なリン酸カルシウム硬化物を生成することが無くなり、医療用材料、特に骨セメントに好適である。
本発明のリン酸カルシウム組成物は、リン酸四カルシウム粒子(A)が5μm以下の粒径の粒子をリン酸四カルシウム粒子(A)全体に対して10重量%以下含有する。5μm以下の粒径の粒子が0.1重量%未満の場合、リン酸四カルシウム粒子(A)が液剤へ溶解しにくくなるため水溶液のpHが低くなる。このことにより、ヒドロキシアパタイトの析出が円滑でなくなり、硬化物の機械的強度が低下するおそれがある。5μm以下の粒径の粒子は、より好適には0.2重量%以上であり、さらに好適には0.3重量%以上である。一方、5μm以下の粒径の粒子が10重量%を超える場合は、血液との親和性が低下し、不均一かつ脆弱なリン酸カルシウム組成物の硬化物しか与えないばかりか、リン酸四カルシウム粒子(A)の溶解が過度となり、水溶液のpHが高くなる。このことにより、ヒドロキシアパタイトの析出が円滑でなくなり、硬化物の機械的強度が低下するおそれがあり、より好適には8重量%以下であり、さらに好適には5重量%以下である。
本発明で使用されるリン酸四カルシウム[Ca(POO]粒子(A)の製造方法は特に限定されず、市販品を入手できるのであればそれを使用してもよいが、市販品をさらに粉砕することが好ましい場合が多い。その場合、ボールミル、ライカイ機、ジェットミルなどの粉砕装置を使用することができる。また、リン酸水素カルシウム原料粉体と炭酸カルシウム原料粉体をアルコールなどの液体の媒体と共にライカイ機、ボールミル等を用いて粉砕してスラリーを調製し、得られたスラリーを乾燥させることによりリン酸四カルシウム粒子(A)を得ることもできる。このときの粉砕装置としては、ボールミルを用いることが好ましく、そのポット及びボールの材質としては、好適にはアルミナやジルコニアが採用される。また、本発明で使用されるリン酸四カルシウム粒子(A)は、公知の方法により分級を行って平均粒径や5μm以下の粒径の粒子の含有量を適宜調整することも好ましい。
本発明で使用されるリン酸水素カルシウム粒子(B)は、無水物[CaHPO]であっても、2水和物[CaHPO・2HO]であっても良いが、好適には無水物が使用される。リン酸水素カルシウム粒子(B)の平均粒径は0.1〜5μmであることが好ましい。平均粒径が0.1μm未満の場合、液剤との混合により得られるペーストの粘度が高くなり過ぎるおそれがあり、より好適には0.5μm以上である。一方、平均粒径が5μmを超える場合は、リン酸水素カルシウム粒子(B)が液剤へ溶解しにくくなるため、リン酸四カルシウム粒子(A)の溶解が過度となり、水溶液のpHが高くなる。このことにより、ヒドロキシアパタイトの析出が円滑でなくなり、硬化物の機械的強度が低下するおそれがある。平均粒径は、より好適には2μm以下である。リン酸水素カルシウム粒子(B)の平均粒径は、上記リン酸四カルシウム粒子(A)の平均粒径と同様にして算出される。
このような平均粒径を有するリン酸水素カルシウム粒子(B)の製造方法は特に限定されない。市販されているリン酸水素カルシウム粒子(B)をそのまま用いてもよいし、適宜粉砕して粒径を整えて使用してもよい。粉砕方法としては、上記リン酸四カルシウム粒子(A)の粉砕方法と同様の方法が採用できる。
リン酸四カルシウム粒子(A)とリン酸水素カルシウム粒子(B)の配合割合(A/B)は、特に限定されないが、モル比で40/60〜60/40の範囲となるような配合割合で使用されることが好ましい。これによって、硬化物の機械的強度が高いリン酸カルシウム組成物を得ることができる。上記配合割合(A/B)は、より好適には45/55〜55/45であり、実質的に50/50であることが最適である。
本発明のリン酸カルシウム組成物は、本発明の効果を阻害しない範囲でリン酸四カルシウム粒子(A)、リン酸水素カルシウム粒子(B)以外の成分を含有しても構わない。例えば必要に応じて増粘剤を配合することができる。これはリン酸カルシウム組成物ペーストの成形性又は均一な充填性を向上させるためである。増粘剤としては例えば、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、ポリアクリル酸、ポリグルタミン酸、ポリグルタミン酸塩、ポリアスパラギン酸、ポリアスパラギン酸塩、セルロース以外のデンプン、アルギン酸、ヒアルロン酸、ペクチン、キチン、キトサン等の多糖類、アルギン酸プロピレングリコールエステル等の酸性多糖類エステル、またコラーゲン、ゼラチン及びこれらの誘導体などのタンパク質類等の高分子などから選択される1つ又は2つ以上が挙げられるが、水への溶解性及び粘性の面からはカルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、アルギン酸、キトサン、ポリグルタミン酸、ポリグルタミン酸塩から選択される少なくとも1つが好ましい。増粘剤は、リン酸カルシウム組成物に配合したり、液剤に配合したり、又は混練中のペーストに配合することができる。
必要に応じてX線造影剤を含んでも良い。これはリン酸カルシウム組成物ペーストの充填操作のモニタリングや充填後の変化を追跡することができるからである。X線造影剤としては、例えば、硫酸バリウム、次炭酸ビスマス、酸化ビスマス、酸化ジルコニウム、フッ化イッテルビウム、ヨードホルム、バリウムアパタイト、チタン酸バリウム等から選択される1つ又は2つ以上が挙げられる。X線造影剤は、リン酸カルシウム組成物に配合したり、液剤に配合したり、又は混練中のペーストに配合することができる。
また、薬理学的に許容できるあらゆる薬剤等を配合することができ、消毒剤、抗癌剤、抗生物質、抗菌剤、アクトシン、PEG1などの血行改善薬、bFGF、PDGF、BMPなどの増殖因子、骨芽細胞、象牙芽細胞、未分化な骨髄由来幹細胞など硬組織形成を促進させる細胞などを配合させることができる。
本発明のリン酸カルシウム組成物は、上記リン酸四カルシウム粒子(A)及びリン酸水素カルシウム粒子(B)からなるものであるが、その混合方法は特に限定されない。例えば、ライカイ機、ボールミルなどの容器駆動型ミル、もしくは回転羽を底部に有する高速回転ミルなどを用いて混合することにより得ることができる。好適には高速回転ミルが使用される。このとき、アルコールなど水を含まない液体の媒体を存在させて混合することも可能である。
本発明のリン酸カルシウム組成物は、粉体組成物として販売され、医療現場で使用する際などに液剤と混練してリン酸カルシウム粉体組成物ペーストとなり、所望の部位に充填あるいは塗布されて使用することができる。このとき使用される液剤は、水以外の成分が溶解した水溶液、又は他の成分が分散した水分散液であってもよい。水に対して配合される成分としては、リン酸、リン酸二ナトリウム、リン酸一ナトリウム等のリン酸ナトリウム塩類ならびにこれらの混合物、リン酸カリウム塩類、リン酸アンモニウム塩類、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−2−アミノエタンスルホン酸、N−トリス(ヒドロキシメチル)メチル−2−アミノエタンスルホン酸などのpH緩衝剤、フッ化ナトリウム、フッ化カリウム、フッ化アンモニウムなどのフッ化物塩、グリセリン、プロピレングリコールなどの水溶性多価アルコール、などが例示される。なかでも、安全性の面からはリン酸二ナトリウム、リン酸一ナトリウム等のリン酸ナトリウム塩類ならびにこれらの混合物を配合することが好ましい。
リン酸カルシウム組成物ペーストを調製する際の、リン酸カルシウム組成物と液剤との質量比(リン酸カルシウム組成物/液剤)は特に限定されないが、好適には10/10〜60/10であり、より好適には25/10〜45/10である。リン酸カルシウム組成物と液剤とが均一に混じるように、十分に混練してから、速やかに骨組織に充填あるいは塗布することができる。また、本発明のリン酸カルシウム組成物は組成物のみを骨組織に粉体のまま注入・充填し、生体中の水分により硬化させることも可能であり、組成物を充填の後に硬化を促進するため硬化用の液剤を後から充填箇所に適用する方法も好ましい態様として用いられる。
本発明のリン酸カルシウム組成物は、医療用の各種用途に好適に使用される。例えば、接着又は固着用の骨セメントとして好適に使用される。本発明のリン酸カルシウム組成物を上記用途に使用した場合、ペーストの充填性に優れており、複雑な形態をした部位の隅々にまで充填することができる。特に、充填部位に血液が存在する場合などには、血液と接触した部分であっても均一なリン酸カルシウム組成物の硬化物が生成され、硬化物の機械的強度が良好である。また、ペースト自体が生体内又は口腔内で短期間のうちにヒドロキシアパタイトに転化し、充填した部位で新生骨に置換され、生体硬組織との一体化が起こることから生体親和性に優れている。
以下、実施例を用いて本発明をさらに具体的に説明する。本実施例においてリン酸四カルシウム粒子(A)、及びリン酸水素カルシウム粒子(B)の平均粒径は、レーザー回折式粒度分布測定装置(株式会社島津製作所製「SALD−2100型」)を用いて測定し、測定の結果から算出されるメディアン径を平均粒径とした。
実施例1
(1)リン酸四カルシウム粒子(A)の調製
本実験に使用するリン酸四カルシウム粒子(A)は、高木らの方法(S. Takagi and H. Chow, J. Mater. Sci. Mater. Med. 12: 135-139, 2001.)に準じて調製した。無水リン酸水素カルシウム粒子(太平化学産業株式会社製、平均粒径9.15μm)136.06g(1mol)、炭酸カルシウム粒子(神島化学工業株式会社製「軽質炭酸カルシウムEC」、平均粒径2.99μm)109.09g(1mol)、95%エタノール(和光純薬工業株式会社製「Etanol(95)」)220g、及び直径が10mmのジルコニアボール240gを1000mlのアルミナ製粉砕ポット(株式会社ニッカトー製「Type A−4 HDポットミル」)中に加え200rpmの回転速度で2時間混合した。得られたスラリーは1000mlのナス型フラスコに移し変え、ロータリーエバポレータを用いて減圧条件でエタノールを留去した。その後、60℃で6時間乾燥させ、更に60℃で24時間真空乾燥した。得られた無水リン酸カルシウム粒子と炭酸カルシウム粒子の等モル混合物を、昇温速度5℃/分の条件で1450℃まで加熱し、同温度で20時間保持した。炉内より直ちにデシケータ中に移し変え急冷させた後、得られたリン酸四カルシウム粒子(A)の塊を乾燥条件で粗く砕いた。さらに、その粗いリン酸四カルシウム粒子(A)200g、及び直径が10mmのジルコニアボール500gを1000mlのアルミナ製粉砕ポット(株式会社ニッカトー製「Type A−4 HDポットミル」)中に加え200rpmの回転速度で1時間粉砕を行った。得られたリン酸四カルシウム粒子(A)の粒径及び粒径分布をレーザー回折式粒度分布測定装置(株式会社島津製作所製「SALD−2100型」)を用いて測定したところ、平均粒径は34.40μm、5μm以下の粒子の重量比率は0.57%であった。
(2)リン酸水素カルシウム粒子(B)の調製
本実験に使用する無水リン酸水素カルシウム粒子(B)(平均粒径1.14μm)は、市販の無水リン酸水素カルシウム粒子(太平化学産業株式会社製、平均粒径10.12μm)を50g、95%エタノール(和光純薬工業株式会社製「Ethanol(95)」)を120g、及び直径が10mmのジルコニアボール240gを400mlのアルミナ製粉砕ポット(株式会社ニッカトー製「Type A−3 HDポットミル」)中に加え120rpmの回転速度で24時間湿式粉砕を行なうことで得られたスラリーをロータリーエバポレータでエタノールを留去した後、60℃で6時間乾燥させ、更に60℃で24時間真空乾燥することで得た。
(3)リン酸カルシウム組成物の調製
上記リン酸四カルシウム粒子(A)72.9g及び無水リン酸水素カルシウム粒子(B)27.1gを小型粉砕機(アズワン株式会社製「SM−1」)中に加え、3000rpmの回転羽速度で3分間混合することでリン酸カルシウム組成物を得た。このとき、混合前と混合後でのリン酸四カルシウム粒子(A)及びリン酸水素カルシウム粒子(B)の平均粒径は実質的に変化していない。
(4)硬化用液剤の調製
牛頚動脈より採取した動脈血200mlに対して、血液保存液(CPD液:クエン酸ナトリウム26.3g、クエン酸3.27g、ブドウ糖23.2g、リン酸二水素ナトリウム2.51gに注射用水を加えて、全量を1000mlとした液)28mlを加えて素早く10秒間攪拌した。この血液から50mlを採取し、0.2MのNaHPO水溶液50mlに対して加え約10秒間攪拌した後、直ちに下記の圧縮試験に使用した。
(5)圧縮強度の測定
上記で得たリン酸カルシウム組成物1.5gを精秤し、この上に上記で得た硬化用液剤0.43gを加え混練することでリン酸カルシウム組成物ペーストを調製した(このときの粉/液混合重量比は3.5である)。直径が6mm、深さが3mmの分割可能なステンレス製のモールドを平滑なガラス板上に乗せ、気体を含ませないように注意しながらリン酸カルシウム組成物ペーストを充填し、上部より平滑なガラス板で圧縮することでリン酸カルシウム組成物ペーストを成型した(n=9)。その後、37℃、相対湿度100%の環境で4時間インキュベートした後、上記モールドよりリン酸カルシウム組成物の硬化物を取り出し、同じく37℃の蒸留水150ml中に浸漬し、さらに20時間保持した。その後、リン酸カルシウム組成物の硬化物の圧縮強度を、Chowら(L. C. Chow, S. Hirayama, S Takagi, E. Parry, J. Biomed. Mater. Res. (Appl. Biomater.) 53: 511-517, 2000.)の方法に準じて、力学的強度測定装置(株式会社島津製作所製「AG−1 100kN」)を使用し、円柱状の硬化物の軸方向に1mm/minの速度で荷重をかけて圧縮強度を測定した(n=9)。実施例1により得たリン酸カルシウム組成物の硬化物の圧縮強度は48.8±3.1MPaであった。
実施例2
実施例1において、アルミナ製粉砕ポット(株式会社ニッカトー製「Type A−4 HDポットミル」)中で、200rpmの回転速度で2時間粉砕することによりリン酸四カルシウム粒子(A)の調製を行い、5μm以下の粒子を3.10重量%含有し、平均粒径が25.61μmであるリン酸四カルシウム粒子(A)を用いた以外は実施例1と同様にしてリン酸カルシウム組成物を調製し、評価を行った。得られた結果を表1にまとめて示す。
実施例3
実施例1において、アルミナ製粉砕ポット(株式会社ニッカトー製「Type A−4 HDポットミル」)中で、200rpmの回転速度で6時間粉砕することによりリン酸四カルシウム粒子(A)の調製を行い、5μm以下の粒子をリン酸四カルシウム粒子(A)全体に対して9.63重量%含有し、平均粒径が18.97μmであるリン酸四カルシウム粒子(A)を用いた以外は実施例1と同様にしてリン酸カルシウム組成物を調製し、評価を行った。得られた結果を表1にまとめて示す。
実施例4
実施例1において、アルミナ製粉砕ポット(株式会社ニッカトー製「Type A−4 HDポットミル」)中で、200rpmの回転速度で2時間粉砕することによりリン酸四カルシウム粒子(A)の調製を行って、5μm以下の粒子を3.10重量%含有し、平均粒径が25.61μmであるリン酸四カルシウム粒子(A1)を得た。上記方法において200rpmの回転速度で12時間粉砕することによりリン酸四カルシウム粒子(A)の調製を行い、5μm以下の粒子を14.21重量%含有し、平均粒径が11.86μmであるリン酸四カルシウム粒子(A2)を得た。重量比率(A1/A2)が50/50となるように(A1)と(A2)を混合して用いた以外は実施例1と同様にしてリン酸カルシウム組成物を調製し、評価を行った。得られた結果を表1にまとめて示す。
実施例5
実施例1において、リン酸四カルシウム粒子(A)と無水リン酸水素カルシウム粒子(B)のモル比(A/B)を0.7とした以外は実施例1と同様にしてリン酸カルシウム組成物を調製し、評価を行った。得られた結果を表1にまとめて示す。
比較例1
実施例1において、アルミナ製粉砕ポット(株式会社ニッカトー製「Type A−4 HDポットミル」)中で、200rpmの回転速度で20分粉砕することによりリン酸四カルシウム粒子(A)の調製を行い、5μm以下の粒子を0.15重量%含有し、平均粒径が48.30μmであるリン酸四カルシウム粒子(A)を用いた以外は実施例1と同様にしてリン酸カルシウム組成物を調製し、評価を行った。得られた結果を表1にまとめて示す。
比較例2
実施例1において、アルミナ製粉砕ポット(株式会社ニッカトー製「Type A−4 HDポットミル」)中で、200rpmの回転速度で12時間粉砕することによりリン酸四カルシウム粒子(A)の調製を行い、5μm以下の粒子を14.21重量%含有し、平均粒径が11.86μmであるリン酸四カルシウム粒子(A)を得た。得られたリン酸四カルシウム粒子(A)に対してさらに分級操作を行い、5μm以下の粒子を8.99重量%含有し、平均粒径が12.79μmであるリン酸四カルシウム粒子(A)を用いた以外は実施例1と同様にしてリン酸カルシウム組成物を調製し、評価を行った。得られた結果を表1にまとめて示す。
比較例3
実施例1において、アルミナ製粉砕ポット(株式会社ニッカトー製「Type A−4 HDポットミル」)中で、200rpmの回転速度で1時間粉砕することによりリン酸四カルシウム粒子(A)の調製を行い、5μm以下の粒子を0.57重量%含有し、平均粒径が34.40μmであるリン酸四カルシウム粒子(A1)を得た。上記方法において200rpmの回転速度で24時間粉砕することによりリン酸四カルシウム粒子(A)の調製を行い、5μm以下の粒子を46.70重量%含有し、平均粒径が7.22μmであるリン酸四カルシウム粒子(A2)を得た。重量比率(A1/A2)が75/25となるように(A1)と(A2)を混合して用いた以外は実施例1と同様にしてリン酸カルシウム組成物を調製し、評価を行った。得られた結果を表1にまとめて示す。
Figure 0004986276
表1からわかるように、平均粒径が15〜45μmであり、かつ5μm以下の粒径の粒子の含有率が10重量%以下であるリン酸四カルシウム粒子(A)を用いてリン酸カルシウム組成物を調製した実施例1〜5では、血液が混入した場合であっても圧縮強度が高いことがわかった。これに対し、使用したリン酸四カルシウム粒子(A)の、平均粒径が45μmを超える比較例1、平均粒径が15μm未満である比較例2、及び5μm以下の粒径の粒子の含有量が10重量%を超える比較例3では、いずれも硬化物の圧縮強度が大きく低下した。このことから、平均粒径が15〜45μmであり、かつ5μm以下の粒径の粒子の含有率が10重量%以下であるリン酸四カルシウム粒子(A)を用いることによる効果は明らかである。
5μm以下の粒径の粒子を3.10重量%含有し、リン酸四カルシウム粒子(A)の平均粒径が25.61μmである実施例2では、0.57重量%、34.40μmのとき(実施例1)に比べてリン酸カルシウム組成物の硬化物の圧縮強度が若干劣った。これに対し、5μm以下の粒径の粒子を9.63重量%含有し、リン酸四カルシウム粒子(A)の平均粒径が18.97μmである実施例3では、0.57重量%、34.40μmのとき(実施例1)に比べてリン酸カルシウム組成物の硬化物の圧縮強度が少し劣った。また、平均粒径が25.61μmであるリン酸四カルシウム粒子(A1)と平均粒径が11.86μmであるリン酸四カルシウム粒子(A2)をそれぞれ重量比率(A1/A2)50/50で混合することにより、5μm以下の粒径の粒子を9.19重量%含有し、リン酸四カルシウム粒子(A)の平均粒径が18.83μmとなった実施例4では、0.57重量%、34.40μmのとき(実施例1)に比べてリン酸カルシウム組成物の硬化物の圧縮強度が少し劣った。また、リン酸四カルシウム粒子(A)と無水リン酸水素カルシウム粒子(B)のモル比(A/B)を0.7とした実施例5では、モル比(A/B)が1.0である実施例1に比べてリン酸カルシウム組成物の硬化物の圧縮強度が少し劣った。

Claims (5)

  1. リン酸四カルシウム粒子(A)及びリン酸水素カルシウム粒子(B)からなるリン酸カルシウム組成物からなる骨セメントであって、リン酸四カルシウム粒子(A)の平均粒径が15〜45μmであり、かつリン酸四カルシウム粒子(A)における5μm以下の粒径の粒子の含有率が10重量%以下であることを特徴とする骨セメント
  2. リン酸水素カルシウム粒子(B)の平均粒径が0.1〜5μmである請求項1記載の骨セメント
  3. リン酸四カルシウム粒子(A)とリン酸水素カルシウム粒子(B)の配合割合(A/B)がモル比で40/60〜60/40である請求項1又は2記載の骨セメント
  4. 前記リン酸四カルシウム粒子(A)が、ボールミル、ジェットミル及びライカイ機からなる群から選択される少なくとも1種を用いて調製されることを特徴とする請求項1〜3のいずれか記載の骨セメントの製造方法。
  5. 前記リン酸四カルシウム粒子(A)が、分級によって調製されることを特徴とする請求項1〜3のいずれか記載の骨セメントの製造方法。
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