JP4397153B2 - 研削水タンク装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、眼鏡レンズの周縁を研削加工する際に使用される研削水タンク装置に関する。
【0002】
【従来技術】
眼鏡レンズの周縁を加工する装置では、レンズの加工部分を冷却するとともに加工粕(屑)を取り除くために、加工時に研削水を供給する。この研削水の供給としては、タンクに貯水した研削水をポンプにより汲み上げて加工装置本体側に供給し、加工に使用した排水を再びタンクに導入することにより、研削水を循環して使用する方式のものがある。
【0003】
ところで、プラスチック製の眼鏡レンズを砥石によって加工すると、研削水と加工粕の微粒子と空気によって泡が発生する。この泡が循環タンク内に溜まると、加工装置に接続される排水ホースにも泡が充満して塞ぎ、研削水が循環タンク内に流れ込まないため、加工装置の砥石室内が水で溢れてしまう。このため、一般的には、泡の発生を抑制するために消泡剤(界面活性剤)を研削水に混ぜて使用している。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、消泡剤を使用すると、研削水が加工粕によって混濁しやすくなる。混濁した研削水をそのまま循環して使用すると、加工品質が低下したり、加工装置に故障が発生しやすくなる。また、最近では、環境問題の点で、消泡剤に含まれる界面活性剤の使用を抑制することも必要になっている。消泡剤を使用しない場合は、少ない枚数のレンズを加工するだけで循環タンク内が泡で一杯になるので、タンク内の研削水を頻繁に交換する必要がある。
【0005】
本発明は、上記従来技術の問題点に鑑み、消泡剤を使用しない場合にも、循環タンク内に溜まる泡を効率良く抑制できる研削水タンク装置を提供することを技術課題とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、本発明は以下のような構成を備えることを特徴とする。
(1) 研削水を蓄えるタンクを持ち、レンズの周縁を砥石により加工する眼鏡レンズ加工装置に前記タンク内の研削水を供給し、眼鏡レンズ加工装置から前記タンク内に排出された研削水を再使用する循環式の研削水タンク装置において、眼鏡レンズ加工装置からの排水が導かれる排水口であって、前記タンクの上部に設けられた排水口と、前記排水口に吊り下げられてタンク内に蓄えられた研削水に届く長さを持ち、砥石によるプラスチックレンズの粗加工時に発生する加工粕を通過させ、前記加工粕より大きな泡を通さない大きさの多数の穴を持つ袋状の伸縮自在な消泡用フィルタであって、前記排水口から落下する排水の流入によって膨張し、高屈折レンズの粗加工時に発生する1〜2mmの糸屑状の加工粕をも通過可能な消泡用フィルタと、を備えることを特徴とする。
【0007】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。図1はレンズ加工装置全体の概略構成を示す図である。レンズ加工装置は、加工装置本体1と、加工装置本体1を載置するテーブル40と、テーブル40内に配置される研削水貯蔵用の研削水タンク装置200と、から概略構成される。
【0008】
加工装置本体1の筐体内部には、被加工レンズLEを保持する2つのレンズ回転軸2R,2L、レンズ回転軸2R,2Lが回転可能に取付けられたキャリッジ部3、レンズLEの周縁を加工するためにモータ12の回転軸に取付けられた砥石5を持つ加工機構部10が配置されている。砥石5は、プラスチックの粗加工用砥石、ガラスレンズの粗加工用砥石、仕上げ用砥石から構成される。キャリッジ部3はレンズ回転軸の軸方向に移動可能で、且つ砥石5に対して相対的に移動可能に構成されている。なお、この加工機構部10については、本出願人による特開平5−212661号公報等において周知の構成が使用できるので、詳細な説明は省略する。
【0009】
また、加工装置本体1の内部には、レンズ回転軸2R,2Lに保持されるレンズLEと砥石5を取り囲む形で、防水カバー8によって加工室9が形成されている。この加工室9には研削水を噴射するノズル11が延びている。防水カバー8の下部にある排水口には排水ホース201が接続され、排水ホース201は研削水タンク装置200の研削水貯蔵用のタンク210側に延びている。
【0010】
タンク210は底部を持つ円筒形状であり、20リットルの容量を持つ。タンク210の上部の開口部には、外空間からタンク210内をほぼ密閉する蓋211が着脱自在に嵌め込まれている。図1における蓋211の中央より左側上部には接続口(排水口)212が設けられており、この接続口212に加工装置本体1からの排水ホース201が接続されている。接続口212には、消泡用のフィルタ220がバンド等の取付け部材により着脱自在に取り付けられている。排水ホース201によって導かれる排水は、接続口212の下に吊下げられた消泡用フィルタ220に投入される。
【0011】
消泡用フィルタ220について説明する。フィルタ220の形状は、接続口212と同程度の径(50〜60mm)を持つ袋形状である。フィルタ220の長さは少なくとも100mm以上で、タンク210内の研削水に届く長さが好まし。実施形態のものは300mm程である。フィルタ220はメッシュ構造であり、多数の穴(編目)を持つ。その穴の大きさは、プラスチックレンズの粗加工時に発生する加工粕を通過させ、それより大きな泡を通過させない大きさである。寸法的には、好ましくは直径0.3〜1.5mm程であり、さらに好ましくは直径0.5〜1.0mm程である。また、フィルタ220は伸縮自在な構造の合成樹脂の繊維からなる。例えば、ストッキングに使用されている細い繊維と網み方によって、伸縮自在なフイルタ構造を製作可能である。
【0012】
図1における蓋211の中央付近には、タンク210内を2つの室に仕切るための仕切り板230が固定されている。この仕切り板230により、図1の左側が排水投入室側210a、右側が吸水室側210bに分離される。ただし、タンク210の底面と仕切り板230の下端部との間、及びタンク210の側壁と仕切り板230の側面端部との間には、それぞれ研削水が流れる流路を確保する隙間(開口)が形成されており、排水投入室側210aと吸水室側210bは連結されている。
【0013】
吸水室側210bには、水循環に用いる水中ポンプ240が仕切り板230に固定されている。仕切り板230は水中ポンプ240を蓋211の内側(下側)に固定する固定部材を兼ねている。水中ポンプ240の給水口241は、水深の約1/3以上の深さ位置にあり、加工粕の浮遊量が少ない水を吸引すると共に沈殿した加工粕を吸引することを防ぐ。水中ポンプ240により吸引された水は、ホース242によりタンク210外に導かれ、さらにホース242に接続された送水ホース244を経由して加工装置本体1側のノズル11に導かれる。
【0014】
タンク210の底には、加工粕を沈殿し易くすると共に、加工粕から水を分離する濾過フィルタ251が設けられている。濾過フィルタ251はタンク210の水平断面と同じく円形形状をした板状である。加工粕は濾過フィルタ251の上に堆積する。タンク210の底面と濾過フィルタ251との間には中空部252が形成されており、中空部252には吸引パイプ253が繋げられている。中空部252は、濾過フィルタ251の下面に格子状の溝を形成することにより構成されている。吸引パイプ253はタンク210外まで延びている。吸引パイプ253の接続口には、吸引ポンプ260から延びるホース261が接続されている。吸引ポンプ260が吸引した水は、ホース262を経てタンク210の側面に取り付けられた接続口263からタンク210内に戻される。
【0015】
濾過フィルタ251として、軽量で耐久性が有り、加工性も良いことから、プラスチックビーズを焼結して製作したプラスチック焼結多孔質体のものを使用している。プラスチック焼結多孔質体は、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体等を原材料としたものである。濾過フィルタ251の気孔径は15μm程度である。
【0016】
次に、以上のような研削水タンク装置の使用について説明する。加工装置本体1から延びる排水ホース201の接続口212には、消泡用のフィルタ220を取り付ける。タンク210内には研削水を入れておく。研削水の水面は、接続口212から10cm以上開け、フィルタ220が水面上に出るようにする。ここで、一般に、泡の発生を抑えるために研削水には消泡剤を混入させるが、研削水が加工粕によって混濁する等の問題を避けるため、本装置では消泡剤を使用しないようにする。
【0017】
加工装置本体1によりレンズLEの周縁加工を開始すると、加工装置本体1側の制御部の制御信号により水中ポンプ240が駆動され、吸水室側210b側から汲み上げられた研削水がノズル11から噴射される。噴射された研削水と加工時に発生した加工粕は防水カバー8によって受けられ、排水ホース201を介してタンク210側に導かれ、接続口212に取り付けられたフィルタ220に排出される。
【0018】
プラスチックレンズの加工時に発生した加工粕の微粒子と、空気と、加工時の研削水とにより、泡が発生する。砥石5の高速回転によって砥石表面には空気の層ができており、それに冷却用の研削水が加わることによって水と空気が混ざり合い、排水ホース201からは水と空気が一緒に排出される。この空気と水に溶け込まない1μm以下の粕によって泡が作られる。一旦泡が作られると、その泡に大きな粒子の加工粕も付着し、さらに堆積が大きな泡となる。
【0019】
ここで、一般的なCR−39の材質からなるプラスチックレンズを粗加工した場合、CR−39は硬くて脆い性質なために、粒状の加工粕が発生する。フィルタ220はこの加工粕を通過させて、加工粕が内部に溜まらないようにする。一方、粗加工により発生する加工粕より大きな泡はフィルタ220内部に閉じ込められた状態となり、フィルタ220はタンク210の中に泡が分散するのを防止する。泡は大量の空気を含んでいるために水面に浮いた状態となっている。その泡に、排水ホース201から落下する排水が衝突し、フィルタ220内の泡を攪拌する。この攪拌によって大きな泡が潰れる。泡の中の大きめの加工粕は泡と分離された後、フィルタ220外に排出される。こうして、泡の発生量が抑えられる。フィルタ220外の水面にはフィルタ220を通過できた微小な泡が存在するが、容量的には少ない。本発明者の実験にれば、従来の半分以下に泡の量を減らすことができた。
【0020】
また、フィルタ220は伸縮自在な構造となっているので、CR−39の加工時に生じる加工粕より大きなものについても目詰まりを解消し、その加工粕を通過させることが可能である。例えば、高屈折レンズの粗加工時の加工粕は、1〜2mmの糸屑状になり、フィルタ220の穴に引っ掛かり易すい。しかし、排水の流入によりフィルタ220は膨張し、その編目が大きくなる。このため、高屈折レンズの加工粕も通過するようになり、目詰まりが解消される。
【0021】
なお、加工装置本体1からの排水による泡の攪拌効果を高めるには、加工装置1からの排水が勢い良くフィルタ220内に流れ込むのが良い。よって、タンク210は、加工装置本体1に対して高低差が大きいほど良い。
【0022】
フィルタ220から排出された加工粕は、水より重いため、沈殿する。排水投入室側210aと吸水室側210bとは、タンク底部付近及び側面の一部の隙間を除いて、仕切り板230によって仕切られているため、排水投入室側210a側に排出された加工粕は吸水室側210b側に届きにくく、その殆どがタンク底部に沈殿する。さらに、本装置では加工粕の沈殿を促進するために、加工時には吸引ポンプ260を駆動させる。吸水ポンプ260を駆動すると、濾過フィルタ251の下に形成された中空部252に吸引圧が掛かり、タンク210内の研削水が濾過フィルタ251により加工粕と分離され、吸引される。吸引された水は、ホース262を経てタンク210内に戻される。この吸引によって、加工粕がフィルタ251側に引っ張られ、加工粕の沈殿が促進される。さらに、沈殿した加工粕の固形化が進むことによって、研削水の混濁が抑えられる。
【0023】
タンク210内に溜まった加工粕を廃棄する場合は、ホース262を接続口263から外し、ポンプ260により吸引した水を外部又は別のタンクに排水する。タンク210内の研削水がフィルタ251を介して排出されることにより、加工粕がフィルタ251の上部に溜まる。最後には、加工粕に含まれる水分も吸引され、加工粕は固形化される。このため、加工粕のみを廃棄処理できる。
【0024】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、消泡剤を使用しない場合にも、循環タンク内に溜まる泡を効率良く抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】レンズ加工装置全体の概略構成を示す図である。
【符号の説明】
1 加工装置本体
200 研削水タンク装置
201 排水ホース
210 タンク
212 接続口
220 消泡用フィルタ
240 水中ポンプ
250 濾過フィルタ
260 吸引ポンプ
Claims (1)
- 研削水を蓄えるタンクを持ち、レンズの周縁を砥石により加工する眼鏡レンズ加工装置に前記タンク内の研削水を供給し、眼鏡レンズ加工装置から前記タンク内に排出された研削水を再使用する循環式の研削水タンク装置において、眼鏡レンズ加工装置からの排水が導かれる排水口であって、前記タンクの上部に設けられた排水口と、前記排水口に吊り下げられてタンク内に蓄えられた研削水に届く長さを持ち、砥石によるプラスチックレンズの粗加工時に発生する加工粕を通過させ、前記加工粕より大きな泡を通さない大きさの多数の穴を持つ袋状の伸縮自在な消泡用フィルタであって、前記排水口から落下する排水の流入によって膨張し、高屈折レンズの粗加工時に発生する1〜2mmの糸屑状の加工粕をも通過可能な消泡用フィルタと、を備えることを特徴とする研削水タンク装置。
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