JP4388749B2 - レーザマーキング装置の高速文字変更制御方法及びレーザマーキング装置 - Google Patents

レーザマーキング装置の高速文字変更制御方法及びレーザマーキング装置 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、レーザ光を用いて樹脂、木、金属等の対象物の表面に文字やマークの印字加工(以下、単に印字という)を行うレーザマーキング装置に関する。特に、印字文字列を変更しながら複数の対象物に印字を行う場合に印字文字列の変更に伴う時間ロスを短縮するための印字内容変更制御方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
この種のレーザマーキング装置は、炭酸ガスレーザ又はYAGレーザから発せられたレーザ光で樹脂、木、金属等の対象物の表面を加熱し、表面を局部的に変色又は変形させることにより文字等の印字(マーキングということもある)を行う。
【0003】
印字すべき文字等に沿って対象物の表面をレーザ光のスポットが移動するようにレーザ光を偏向させる方法として、通常はベクタースキャンと呼ばれる方法が用いられる。これは、ガルバノミラーを用いてレーザ光のX方向及びY方向の偏向を同時に制御することにより、文字又は線画に沿ってレーザ光の照射スポットを移動させる方法である。効率よく短時間で印字を行うように、できるだけ一筆書きとなる軌跡が選択される。
【0004】
レーザマーキング装置は通常、ヘッド部とコントローラ部からなり、ヘッド部にはレーザ発振器及びレーザ偏向装置(ガルバノミラー)が内蔵されている。コントローラ部には、制御用のマイクロコンピュータと、設定データやフォントデータを記憶するメモリが備えられている。設定データは印字する文字やマークの種類、大きさ、印字位置、印字方向等の情報を含む。
【0005】
コンソール又は外部コンピュータからコントローラ部に与えられた設定データは一旦メモリに記憶される。コントローラ部のマイクロコンピュータは印字実行指令(トリガー信号)にしたがって、設定データを読み出して展開データを生成する。つまり、印字内容に関する設定データとフォントデータからレーザ光がたどるべき軌跡を規定する線分データ及びレーザ制御データからなる展開データを生成する。
【0006】
生成された展開データは、コントローラ部からヘッド部に転送される。ヘッド部では、受信した展開データに含まれる線分データに基づいてガルバノミラーが制御されると共に、レーザ制御データに基づいてレーザのオン・オフ制御が行われる。こうして、対象物の表面にレーザ光で印字加工が行われる。
【0007】
上記のような設定データから展開データを生成する処理(以下、展開処理という)は、同一の印字内容を繰り返し使用する場合は1回だけ実行すればよい。例えば複数の対象物に同じ文字列を印字する場合は、最初の対象物の印字の際に展開処理が実行され、展開データがメモリに記憶されると共にヘッド部に転送される。2個目の対象物からは、メモリから読み出した展開データをヘッド部に転送して使用すればよい。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、印字内容を変更しながら複数の対象物に印字を行うような場合は、対象物ごとに異なる印字データから展開データを生成する展開処理が、印字のたびに(対象物が変わるたびに)必要となる。文字列のうちの一部の文字のみが異なる場合も、文字列全体を展開処理の対象として新たな展開データを生成する。
【0009】
また、1つの対象物に複数の印字箇所(印字ブロックという)があり、それら複数の印字ブロックが1つの印字データを構成している場合がある。このような場合に、1箇所(1ブロック)の印字内容のみを変更する場合でも複数の印字ブロックの全体を展開処理の対象として新たな展開データを生成する。
【0010】
上記のような展開処理は、印字内容が複雑になるほど、それに要する時間が長くなる。そして、印字内容を変更しながら複数の対象物に印字を行うような場合は、印字開始から印字終了までに要する時間は、印字内容を変更するたびに必要な展開処理の分だけ長くなる。
【0011】
例えば、製造ラインを流れてくる製品に製造ロット番号を印字するような場合は、印字文字列のうちの一部の文字のみを変更しながら複数の対象物(製品)に順次印字を行うことになる。このような場合に、従来のように対象物ごとに展開処理を行って印字をしていたのでは、印字に要する時間の短縮に対する要求に応えることが困難である。
【0012】
本発明は、上記のような課題に鑑み、印字文字列を変更しながら複数の対象物に印字を行う場合に、印字文字列の変更に伴う時間ロスを短縮することができるレーザマーキング装置の印字内容変更制御方法を提供することを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明によるレーザマーキング装置の高速文字変更制御方法は、レーザ光を用いて対象物の表面に印字加工を行うレーザマーカにおいて、印字文字列の少なくとも一部の文字を変更しながら複数の対象物に連続して印字を行う際に高速で印字文字を変更するための制御方法であって、(a)ユーザが入力した印字内容に関する設定情報に基づいて、前記印字文字列を構成する複数の文字のそれぞれについて、印字のためにレーザ光がたどるべき軌跡を文字ごとの仮想座標で規定する線分情報と、印字領域全体における前記複数の文字の位置を絶対座標で示す文字座標情報とを含む展開データを生成するステップと、(b)印字実行指令に先立って、高速文字変更の対象としてユーザが指定した複数の文字について、前記線分情報を生成し、高速変更文字線分情報としてメモリに記憶するステップと、(c)前記設定情報に含まれる前記印字文字列の少なくとも一部の文字が変更されたときに、変更後の文字列に前記高速文字変更の対象としてユーザが指定した文字が含まれている場合は、その高速変更文字線分情報をメモリから読み出して前記展開情報に含まれる印字文字ごとの線分情報を書き換えるステップとを有することを特徴とする。
【0014】
このような高速文字変更制御方法によれば、あらかじめ高速文字変更の対象としてユーザが指定した複数の文字を用いて印字文字列の変更を行った場合は、印字実行指令に伴う展開情報の生成処理(展開処理)を再度実行する必要がない。すなわち、あらかじめ生成された高速変更文字線分情報を読み出して変更前の文字の線分情報を置き換えればよい。文字座標情報はそのまま変更せずに使用する。こうして、展開処理を行う場合に要する時間だけ印字文字列の変更に伴う時間ロスを短縮することができる。
【0015】
好ましい実施形態において、前記設定データが複数の印字ブロックのそれぞれについて印字内容を規定するブロック情報を含み、前記ブロック情報は、当該印字ブロックが高速文字変更対象の印字ブロックであるか否かを示す情報を含み、前記ステップ(c)は、高速文字変更対象の印字ブロックである場合に実行し、そうでない場合はステップ(a)による展開情報の生成を再度実行する。
【0016】
このような構成によれば、高速文字変更の対象である印字文字を使用して印字文字列の変更を行った場合であっても、高速変更文字線分情報による置き換えで印字内容の変更を高速で行うか、又は通常の展開処理を再度行うかを指定することができる。例えば、高速文字変更の対象である印字文字を使用して印字文字列の変更を行った場合であっても、例えば印字文字の線の太さを変える場合のように、印字方法を変更する場合には高速文字変更対象の印字ブロックから外しておけばよい。その結果、展開処理が再度実行され、変更後の線の太さに応じた線分情報が新たに生成される。
【0017】
また、本発明によるレーザマーキング装置は、レーザ発振器から発したレーザ光を対象物の表面に集光すると共にレーザ偏向装置で偏向させることによって前記対象物の表面に印字加工を行うレーザマーキング装置であって、印字文字列を構成する複数の文字の種類、大きさ、位置、方向等の印字内容の情報を含む設定データを記憶する不揮発性メモリと、前記不揮発性メモリから読み出した設定データからレーザ光がたどるべき軌跡を規定する線分データ及びレーザ制御データを含む展開データを生成する展開処理を実行する処理装置と、前記展開データを記憶する揮発性メモリを備え、前記展開情報は前記印字文字列を構成する複数の文字のそれぞれについて、印字のためにレーザ光がたどるべき軌跡を文字ごとの仮想座標で規定する線分情報と、印字領域全体における前記複数の文字の位置を絶対座標で示す文字座標情報とを含み、前記処理装置は、印字実行指令に先立って、高速文字変更の対象としてユーザが指定した複数の文字について、前記線分情報を生成し、高速変更文字線分情報として前記メモリに記憶する処理と、前記設定情報に含まれる前記印字文字列の少なくとも一部の文字が変更されたときに、変更後の文字列に前記高速文字変更の対象としてユーザが指定した文字が含まれている場合は、その高速変更文字線分情報をメモリから読み出して前記展開情報に含まれる印字文字ごとの線分情報を書き換える処理とを更に実行することを特徴とする。なお、高速変更文字線分情報と記憶するメモリは展開データを記憶する揮発性メモリでもよいし、専用メモリを別途設けてもよい。
【0018】
このような構成によれば、あらかじめ高速文字変更の対象としてユーザが指定した複数の文字を用いて印字文字列の変更を行った場合は、印字実行指令に伴う展開処理を再度実行する必要がないので、展開処理を行う場合に要する時間だけ印字文字列の変更に伴う時間ロスを短縮することができる。
【0019】
好ましい実施形態において、前記設定データが複数の印字ブロックのそれぞれについて印字内容を規定するブロック情報を含み、前記ブロック情報は、当該印字ブロックが高速文字変更対象の印字ブロックであるか否かを示す情報を含み、前記処理装置は、高速文字変更対象の印字ブロックについて前記高速変更文字線分情報をメモリから読み出して前記展開情報に含まれる印字文字ごとの線分情報を書き換える処理を実行し、高速文字変更対象でない印字ブロックについては、展開情報の生成を再度実行する。
【0020】
このような構成によれば、高速文字変更の対象である印字文字を使用して印字文字列の変更を行った場合であっても、高速変更文字線分情報による置き換えで印字内容の変更を高速で行うか、又は通常の展開処理を再度行うかを指定することができる。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0022】
図1は、本発明の実施形態に係るレーザマーキング装置の概略構成図である。レーザマーキング装置はヘッド部1とコントローラ部2を備え、両者がケーブル4で接続されている。また、液晶表示器とタッチパネルを用いたコンソール(表示・操作卓)3がケーブル5によってコントローラ部2に接続されている。ヘッド部1にはレーザ発振器11及びレーザ偏向装置12が内蔵されている。
【0023】
レーザ発振器11は、炭酸ガスレーザ又はYAGレーザを用いたレーザ管である。レーザ偏向装置12は、二次元のガルバノミラー12a及び集光レンズ(fθレンズ)12bからなる。レーザ発振器11から発したレーザ光LBはガルバノミラー12aによってX方向及びY方向に(二次元に)偏向されると共に集光レンズ12bによってワーク(加工対象物)WKの表面に集光される。こうして、ワークWKの表面に所望の文字や記号等を印字することができる。
【0024】
図2は、本発明の実施形態に係るレーザマーキング装置の回路構成を示すブロック図である。ヘッド部1は、レーザ発振器11及びレーザ偏向装置12の他に、ラインレシーバ13、データ復元・タイミング調整部14、D/A変換器15及びガルバノ制御部16を備えている。
【0025】
コントローラ部2は、処理装置(MPU)21、スタティックRAM(SRAM)22、フォントデータ用メモリ(ROM)23、ダイナミックRAM(DRAM)24及びラインドライバ25を備えている。処理装置21は、コンソール3から受信した印字内容に関する設定データをSRAM22に記憶させると共に、設定データ及びフォントデータから展開データを生成してDRAM24に記憶させる処理を実行する。なお、設定データ及びフォントデータから展開データを生成する処理のことを展開処理という。
【0026】
SRAM22は、バッテリバックアップによって、電源オフ時にも記憶内容を保持することができる不揮発性メモリを構成する。SRAM22は、コンソール3等から受信した設定データの記憶に使用される。設定データは、印字する文字又はマークの種類、大きさ、位置、方向等の印字内容の情報を含む。
【0027】
フォントデータ用メモリ23は、印字に使用される各種文字やマークのフォントデータを記憶している。このフォントデータを印字内容の共通データとして管理することにより、各設定データの情報量を少なくすることができる。したがって、設定データから展開データを生成するときに、フォントデータ用メモリ23が参照される。
【0028】
DRAM24は、電源オフ時に記憶内容が消える揮発性メモリである。DRAM24には、設定データから生成された展開データが一時記憶される。展開データは、印字加工のためにレーザ光がたどるべき軌跡を規定する線分データとレーザのオン・オフ制御のためのレーザ制御データを含む複数ビットからなる時系列のデータである。なお、印字内容の設定データに比べて展開データの情報量は多く、DRAM24に記憶できる展開データの数には制限がある。
【0029】
コンソール3にはメモリカード31を着脱可能なスロットとリード・ライト用のインターフェイスが備えられている。コンソール3から入力した印字内容に関する設定データをメモリカード31に保存しておき、必要なときに読み出してコントローラ部2に送信することができる。また、外部コンピュータ等で作成した設定データをメモリカード31を介してコンソール3からコントローラ部2に転送することができる。
【0030】
また、コントローラ部2にパーソナルコンピュータ32を接続することも可能である。接続インターフェイスとして、RS232Cシリアルポート、パラレルポート、USBポート、IEEE1394ポート等が用いられる。パーソナルコンピュータ32にインストールした専用ソフトウェアにより、パーソナルコンピュータ32の画面やフルキーボード、マウス等を用いてコントローラ部2に対する設定データの作成や管理を行うことができる。
【0031】
図3は、レーザマーキング装置のコントローラ部2の処理装置21が実行する展開処理の概略を示すフローチャートである。ステップ#101において、処理装置21はSRAM22から設定データを読み出す。続くステップ#102において、フォントデータ用メモリ23から読み出したフォントデータを参照し、設定データに含まれる印字文字や記号等を複数の連続加工曲線(直線を含む)に分解する。それぞれの連続加工曲線は、一筆書きのようにレーザ光を連続して出力しながらレーザ光のスポットを移動させる切れ目の無い曲線である。
【0032】
1つの連続加工曲線は、レーザ偏向装置12の二次元ガルバノミラー12aを一定間隔で制御するための複数の座標の集合(線分データに相当する)として表される。つまり、1つの連続加工曲線は、複数の座標(折れ曲り点)で接続された複数の線分で近似される。また、1つの連続加工曲線の終端から次の連続加工曲線の始端への移動(偏向)はレーザ光の出力を停止した状態(ゼロパワー)で行われる。
【0033】
次のステップ#103において、複数の連続加工曲線の並び替えを行う。レーザ光スポットの移動が最も効率的になるように、すなわち、連続加工曲線間のゼロパワー移動を含む全移動距離が最も短くなるように、連続加工曲線の加工処理順序が選択される。続くステップ#104において、1つの連続加工曲線の終端から次の連続加工曲線の始端への移動経路(レーザ出力がゼロの線分)を生成し付加する。
【0034】
例えば、文字「B」は一筆書きのように1つの連続加工曲線で描くことができる。これに対して、文字「A」は一筆書きで描くことができないので、第1の連続加工曲線(直線)「∧」と第2の連続加工曲線(直線)「−」に分解される。この場合、第1の連続加工曲線(直線)「∧」の終端から第2の連続加工曲線(直線)「−」の始端までの移動経路が生成され付加される。この移動経路についても、レーザ偏向装置12の二次元ガルバノミラー12aを一定間隔で制御するための複数の座標点の集合(線分データ)として表される。
【0035】
続くステップ#105において、時系列の線分データ(X座標及びY座標のデータ)及びレーザ制御データ(レーザ出力のオン・オフの区別)を含む展開データが生成される。このようにして、生成された展開データは次のステップ#106でDRAM24に一時的に書き込まれ、展開処理が終了する。
【0036】
この後、処理装置21は、印字実行指令にしたがって、DRAM24から指定された展開データを読み出し、ラインドライバ25を介してヘッド部1に展開データを送信する。図2に示すように、ラインレシーバ13を介して展開データを受信したヘッド部1では、データ復元・タイミング調整部14が展開データに含まれるレーザ制御データに基づいてレーザ発振器11のオン・オフ制御を実行すると共に、線分データから求めたレーザ光の移動量に相当するデータをD/A変換器15に与える。
【0037】
D/A変換器15は、移動量に相当するデータをアナログ電圧に変換しガルバノ制御部16に与える。ガルバノ制御部16は与えられたアナログ電圧にしたがってレーザ偏向装置12の二次元ガルバノミラー12aを駆動し、これによってレーザ光のビームスポットが所定の位置へ移動する。このようにして、レーザ発振器11から発したレーザ光がレーザ偏向装置12で逐次偏向されてレーザ光のビームスポットがワークWKの表面を移動することにより、ワークWKの表面に所望の文字や記号等が印字される。
【0038】
次に、設定データ及びそれから展開処理によって生成される展開データの詳細について説明する。
【0039】
設定データは、大きく分けると、▲1▼レーザマーキング装置全体の設定情報(システム情報)、▲2▼設定共通情報、▲3▼ブロック情報、の3つを含んでいる。これらうち、▲1▼レーザマーキング装置全体の設定情報(システム情報)は、現在時刻設定情報、レーザ印字開始タイミング、通信ボーレート、印字位置及び角度補正情報を含んでいる。
【0040】
▲2▼設定共通情報は、複数の印字ブロックに共通の設定情報であり、印字実行指令から実際の印字開始までの待ち時間であるトリガレディ情報、印字方向、連続印字回数(印字するワークWKの数に相当する)、及び高速文字変更の対象文字の指定を含む。これらのうち、高速文字変更の対象文字の指定は、展開処理をあらかじめ行って展開データを記憶しておくことにより、印字内容変更時の展開処理を不要にして印字終了までの時間を短縮するために指定する文字の情報である。これについては後で詳しく述べる。
【0041】
▲3▼ブロック情報は、印字ブロックごとに設定できる情報であり、文字配置方法(横書き、縦書き、円弧に沿って外側又は内側に配置)、均等配置の指定、ブロック座標、印字ブロックの角度、フォント種類、文字列、文字サイズ、文字間隔、文字角度、太線幅、太線印字線数、印字パワー、印字スキャンスピード、助走長、及び高速文字変更対象の印字ブロックの指定を含む。これらのうち、高速文字変更対象の印字ブロックの指定は、前述の高速文字変更を有効にする印字ブロックを指定する情報である。つまり、YESであれば、印字内容変更時の展開処理を不要にして印字終了までの時間を短縮する対象の印字ブロック(高速文字変更対象の印字ブロック)であり、NOであれば、高速文字変更対象の印字ブロックではない。
【0042】
図4は、ユーザによる設定データの入力から印字開始までの処理の流れを示すフローチャートである。ステップ#201において、ユーザにより上述のシステム情報、設定共通情報及びブロック情報を含む設定データが入力される。ステップ#202において、図3を用いて説明したような展開処理が実行される。更に付け加えると、ユーザの入力した文字サイズ、助走長、太線幅にしたがって、基本文字線分情報で定義された文字を拡大縮小し、助走線分を付加し、太線化処理を実行する。
【0043】
助走線分は、図5(a)に破線で示すように、文字をレーザ光で一筆書きのように描く場合に、レーザ出力を行わずにレーザ偏向装置12を駆動することによって得られる線分軌跡に相当する。つまり、前述のレーザ制御データにしたがってレーザのオン・オフ制御が行われるときに、図5(a)の実線で示す各線分はレーザ出力がオンであり、破線で示す助走線分はレーザ出力がオフになる。このような助走線分を設けることにより、印字速度(スキャンスピード)を速くしても線分の接続点(折れ曲り点)で軌跡が丸くならないようにすることができる。太線化処理は、図5(b)に示すように、レーザスポットの大きさで決まる太さの線分を複数本並べて描くことによって太線の文字を実現する処理である。指定された太線幅に応じて、並べて描く線分の本数が決められる。
【0044】
なお、この時点で印字文字ごとに生成された展開後の線分情報は、印字エリアにおける絶対座標ではなく、その文字内での座標を示す仮想座標で記述されている。各文字を絶対座標におけるどの位置に配置するかを示す文字座標情報が別途記憶されている。スキャナ及びレーザ管理ハードウェア(ヘッド部1のデータ復元・タイミング調整部14に相当する)の機能によって、各印字文字の仮想座標と文字座標情報から絶対座標が生成される。
【0045】
図6は、印字文字の仮想座標から絶対座標への変換の例を示す図である。図6(a)は、文字Aの線分情報が仮想座標で示された様子を示している。文字Aの左下の端点が仮想座標の原点とされ、傾き角度はゼロ(正立姿勢)である。図6(b)は、文字Aの線分情報が絶対座標で示された様子を示している。文字Aの左下の端点は絶対座標(a,b)に位置し、傾き角度はθである。この場合、文字座標情報(a,b,θ)の情報が入力されることになる。
【0046】
図4に戻って、ステップ#203で展開データがDRAM(印字時参照メモリ)24に格納される。この後、ユーザがコンソール3又はパーソナルコンピュータ32から印字実行指令を入力するのを待つ(ステップ#204)。印字実行指令の入力があれば、DRAM24から読み出した展開データが前述のようにヘッド部1に転送され(ステップ#205)、印字が開始される(ステップ#206)。
【0047】
なお、ヘッド部1に転送された展開データは、スキャナ及びレーザ管理ハードウェアのFIFOメモリやレジスタに蓄積される。展開データの蓄積が完了した時点で、あるいはFIFOメモリに空き領域が無くなった時点で、内部の印字開始命令が発行され、印字が開始される。FIFOメモリに空き領域が無くなった時点で展開データに残り部分がある場合は、展開データの転送が一旦中断され、印字の実行に伴ってFIFOメモリに半分の空き領域が生じた時点で展開データの転送が再開される。
【0048】
例えば、複数のワークWKに同じ文字列を印字する場合は、最初のワークWKの印字の際にステップ#201からステップ#203の処理が実行され、2個目以降のワークWKではステップ#204からステップ#206までの処理が繰り返されることになる。つまり、印字内容に変更がない限り、ステップ#201からステップ#203の処理を実行する必要はない。
【0049】
図7は、展開データから実際の印字文字が配置される様子を模式的に示す図である。図7(a)は展開データに含まれる7個の印字文字に関する文字座標情報を示すテーブルであり、図7(b)は各文字の線分情報を仮想座標で示した例である。図7(c)は実際の印字文字の配置例を示している。
【0050】
この例では、7個の印字文字のうち、3文字目と7文字目は同じ文字「う」であり、4文字目と6文字目は同じ文字「い」である。したがって、図7(a)及び(b)に示すように、7文字分の文字座標情報と「あ、い、う、え、お」5文字の線分情報が展開データとしてDRAM24に記憶される。6文字目及び7文字目の印字には、4文字目及び3文字目の線分情報が使用される。
【0051】
しかしながら、印字ブロックが異なると文字サイズや助走線分が異なる可能性があるので、印字文字は同じ場合でも先に印字した文字の線分情報を使用することをしないで、再び展開処理を実行して新たな線分情報を生成する。したがって、文字の線分情報は印字ブロックごとに使用されている文字の種類数だけ記憶する必要がある。
【0052】
次に、高速文字変更機能について説明する。高速文字変更機能は、頻繁に使用される印字文字(マークを含む)について、展開処理をあらかじめ行って展開データを記憶しておくことにより、印字内容変更時の展開処理を不要にして印字終了までの時間を短縮する機能である。
【0053】
この高速文字変更機能を使用するために、ユーザは前述の設定共通情報において、高速文字変更の対象文字の指定を行う。つまり、頻繁に使用される印字文字(マークを含む)を、あらかじめ展開データを記憶して印字文字として指定する。また、前述のブロック情報において、高速文字変更機能を使用する印字ブロックを指定する。これにより、数秒程度以上の時間がかかる展開処理が省略され、印字終了までの時間がその分だけ短くなる。
【0054】
前述のように、展開処理によって生成される展開データは、各印字文字の線分情報と文字座標情報とを個別の情報として含んでいる。高速文字変更機能は、このような展開データの持ち方を利用している。つまり、印字対象の印字ブロックが高速文字変更対象として指定されている場合に、その中の高速文字変更の対象文字として指定されている印字文字については、ユーザが入力したブロック情報の文字列の内容に加えて、あらかじめ展開処理を行い、線分情報を記憶しておく。あらかじめ展開処理を行うタイミングとしては、例えば電源投入直後の処理ルーチンが好ましい。
【0055】
図8は、高速文字変更の対象文字の展開データと実際の印字文字が配置される様子を模式的に示す図である。図8(a)は展開データに含まれる7個の印字文字に関する文字座標情報を示すテーブルであり、図8(b)は各文字の線分情報を仮想座標で示した例である。図8(c)は実際の印字文字の配置例を示している。
【0056】
この例では、ある印字ブロックの印字文字列が「おえういあいう」であり、使用される印字文字のそれぞれについて展開処理が行われて線分情報がそれぞれ記憶される。ここまでは、図4に示した通常の展開データと同じである。これに加えて、高速文字変更対象として設定共通情報で指定された高速文字変更の対象文字(この例では「P,Q,R」)の展開処理が実行され、それぞれの線分情報が記憶される。
【0057】
なお、設定共通情報において高速文字変更の対象文字を指定するための画面インターフェイスについては特に例示しないが、例えばパーソナルコンピュータ32の画面上で、所定の入力エリアにキーボードから「P,Q,R」と入力すればよい。あるいは、高速文字変更対象の印字文字を指定する通信コマンドにパラメータとして文字を羅列して指定すればよい。また、高速文字変更対象の印字ブロックの指定については、ブロック情報の設定画面において、例えば高速文字変更対象であるか否かのチェックボックスを設けておけばよい。あるいは、高速文字変更対象の印字ブロックを指定する通信コマンドにパラメータとして設定番号、ブロック番号、YES又はNOを続ければよい。
【0058】
高速文字変更対象の印字ブロックにおける印字文字列を変更する方法については、通常のブロック情報の文字列を変更するインターフェイスとは異なるインターフェイスを用いることが好ましい。通常のブロック情報の文字列を変更する場合は、例えばパーソナルコンピュータ32の画面上で、テキスト入力エリア(テキストボックス)に印字文字列を書く(入力する)ことによって行われる。あるいは、通信コマンドのパラメータとして文字列を指定する。高速文字変更対象の印字ブロックにおける印字文字列の変更についても、パーソナルコンピュータ32の画面上での入力又は通信コマンドのパラメータとして文字列を指定すればよいが、通常のブロック情報の文字列を変更するインターフェイスとは異なる画面インターフェイス及び通信コマンドとすることにより、ユーザの設定ミスを防ぐことができる。
【0059】
図9は、データの流れに関するブロック図である。記述の説明と重複する点もあるが、このブロック図に従ってデータの流れを説明する。ユーザによって入力された設定データ41のうち、文字座標情報43はそのまま展開情報46の一部を構成する。また、印字パワー(レーザ出力)、スピード、その他の情報44も展開情報46の一部を構成する。また、フォントデータ(基本文字線分情報)42に対して設定データ41にしたがって前述のように縮小、拡大、太線化、助走線分の付加等の処理を施すことにより、各印字文字の線分データ45が生成される。この各印字文字の線分データ45も展開情報46の一部を構成する。
【0060】
更に、高速文字変更の対象ブロックである場合は、高速変更対象文字情報49にしたがって、指定された複数の文字について展開処理があらかじめ実行され、その線分情報も展開情報46の一部を構成する。このようにして生成された展開データ46は、DRAM(印字時参照メモリ)24に一旦記憶され、印字実行指令の入力に伴ってスキャナ、レーザ管理ハードウェア内レジスタ47及びスキャナ、レーザ管理ハードウェア内FIFOメモリ48に順次転送される。
【0061】
図10は、高速文字変更機能を用いて印字内容の変更を行った場合の展開データと実際の印字文字が配置される様子を模式的に示す図である。図10(a)は展開データに含まれる5個の印字文字に関する文字座標情報を示すテーブルであり、図10(b)は各文字の線分情報を仮想座標で示した例である。図10(c)は実際の印字文字の配置例を示している。
【0062】
この例は、図8に示した例において印字内容(印字文字列)を「おえういあいう」から「PあQうえ」に変更した場合である。前述のように、高速変更対象の印字文字「P,Q,R」を含む各印字文字の線分情報はすでに展開データとしてDRAM(印字時参照メモリ)24に記憶されている。高速変更対象の文字列の変更を行ったときは、図10(a)の文字座標情報を示すテーブルの文字の欄の情報が変更され、それ以外の情報は変更されない(そのまま引き継がれる)。
【0063】
なお、通常の印字文字列を変更するためのインターフェイスにおいて、あらかじめ設定した文字列長より長い高速変更文字列を指定した場合は、エラーとなる。また、あらかじめ設定した文字列長より短い高速変更文字列を指定した場合は、印字文字列の先頭方向に詰められる(左詰め)。
【0064】
このようにして、高速文字変更機能を使用することにより、展開処理を行うことなく(高速で)、図8(c)及び図10(c)に示すように印字内容を変更した印字が実行される。
【0065】
なお、本発明は、上記の実施形態に限らず、種々の形態で実施することが可能である。例えば、上記の実施形態では展開データを記憶する揮発性メモリ(DRAM)24に高速変更文字線分情報を記憶するが、高速変更文字線分情報を記憶するための専用メモリを別途設けてもよい。
【0066】
また、上記実施形態ではヘッド部1とコントローラ部2とが分離しており、通信ケーブルで両者が接続されているが、本発明はヘッド部とコントローラ部とが一体に構成されているレーザマーキング装置にも適用することができる。
【0067】
【発明の効果】
以上に説明したように、本発明のレーザマーキング装置の高速文字変更制御方法及びレーザマーキング装置によれば、あらかじめ高速文字変更の対象としてユーザが指定した複数の文字を用いて印字文字列の変更を行った場合は、印字実行指令に伴う展開処理を再度実行する必要がないので、展開処理を行う場合に要する時間だけ印字文字列の変更に伴う時間ロスを短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態に係るレーザマーキング装置の概略構成図である。
【図2】本発明の実施形態に係るレーザマーキング装置の回路構成を示すブロック図である。
【図3】レーザマーキング装置のコントローラ部の処理装置が実行する展開処理の概略を示すフローチャートである。
【図4】ユーザによる設定データの入力から印字開始までの処理の流れを示すフローチャートである。
【図5】印字文字の線分データに対する助走線分の付加及び太線化処理を説明するための図である。
【図6】印字文字の仮想座標から絶対座標への変換の例を示す図である。
【図7】展開データから実際の印字文字が配置される様子を模式的に示す図である。
【図8】高速文字変更の対象文字の展開データと実際の印字文字が配置される様子を模式的に示す図である。
【図9】データの流れに関するブロック図である。
【図10】高速文字変更機能を用いて印字内容の変更を行った場合の展開データと実際の印字文字が配置される様子を模式的に示す図である。
【符号の説明】
11 レーザ発振器
12 レーザ偏向装置
21 処理装置
22 不揮発性メモリ(SRAM)
23 フォントデータ用メモリ
24 揮発性メモリ(DRAM)

Claims (2)

  1. レーザ光を用いて対象物の表面に印字加工を行うレーザマーキング装置において、複数の印字ブロックのそれぞれについて印字内容が規定されたブロック情報がユーザによって入力され、当該ブロック情報に基づいて、当該印字ブロックに含まれる文字について、印字のためにレーザ光がたどるべき軌跡を文字ごとの仮想座標で規定する線分情報と、印字領域全体における文字の位置を絶対座標で示す文字座標情報とを含む展開データを生成し、これをメモリに記憶した後、少なくとも一部の文字を変更しながら複数の対象物に連続して印字を行う際に高速で印字文字を変更するための高速文字変更制御方法であって、
    (a)前記複数の印字ブロックのそれぞれについて、少なくとも一部の文字を高速で変更する高速文字変更対象の印字ブロックであるか否かと、当該高速文字変更対象の印字ブロックにおいて印字文字の高速変更対象となる複数の文字とが、ユーザの指定により設定されるステップと、
    (b)印字実行指令に先立って、前記ステップ(a)において設定された複数の文字について、前記線分情報の前記展開データを生成し、高速変更文字線分情報としてメモリに記憶するステップと、
    (c)前記複数の印字ブロックのうち、前記ステップ(a)において前記高速文字変更対象の印字ブロックであると設定された印字ブロック内の文字が変更されるときには、前記ステップ(a)において設定された文字について前記高速変更文字線分情報をメモリから読み出して前記線分情報を書き換える一方で、前記ステップ(a)において前記高速文字変更対象の印字ブロックでないと設定された印字ブロック内の文字が変更されるときには、前記展開データの生成を再度実行し得るステップと、
    を有することを特徴とする、レーザマーキング装置の高速文字変更制御方法。
  2. 複数の印字ブロックのそれぞれについて印字内容が規定されたブロック情報に基づいて、当該印字ブロックに含まれる文字について、印字のためにレーザ光がたどるべき軌跡を文字ごとの仮想座標で規定する線分情報と、印字領域全体における文字の位置を絶対座標で示す文字座標情報とを含む展開データを生成する処理装置と、前記処理装置によって生成された展開データを記憶するメモリと、を有し、レーザ光を用いて対象物の表面に印字加工を行うレーザマーキング装置において、
    前記複数の印字ブロックのそれぞれについて、少なくとも一部の文字を高速で変更する高速文字変更対象の印字ブロックであるか否かと、当該高速文字変更対象の印字ブロックにおいて印字文字の高速変更対象となる複数の文字とを、ユーザの指定により設定する設定手段を備えるとともに、
    前記処理装置は、
    印字実行指令に先立って、前記設定手段により設定された複数の文字について、高速変更文字線分情報としてメモリに記憶される前記線分情報の前記展開データを生成するとともに、
    印字実行指令の後に、前記複数の印字ブロックのうち、前記設定手段により前記高速文字変更対象の印字ブロックであると設定された印字ブロック内の文字が変更されるときには、前記設定手段により設定された文字について前記高速変更文字線分情報を前記メモリから読み出して前記線分情報を書き換える一方で、前記設定手段により前記高速文字変更対象の印字ブロックでないと設定された印字ブロック内の文字が変更されるときには、前記展開データの生成を再度実行し得ることを特徴とするレーザマーキング装置。
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