JP4385440B2 - 重合性ポリオキシアルキレンモノアルキルエーテル誘導体、該誘導体の重合体及び該重合体を含有する分散剤 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、重合性ポリオキシアルキレンモノアルキルエーテル誘導体、該誘導体の重合体及び該重合体を含有する分散剤に関する。さらに詳しくは、本発明は、2価のアルコール化合物を含まない高純度のポリオキシアルキレンモノアルキルエーテルを原料とする重合性ポリオキシアルキレンモノアルキルエーテル誘導体、該誘導体の重合体及び該重合体を含有する分散性に優れた分散剤に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、重合性ポリオキシアルキレンモノアルキルエーテル誘導体が開発され、それを単量体とする重合体や、他の単量体との共重合体が開発されている。しかし、重合性ポリオキシアルキレンモノアルキルエーテルを単量体として用いた重合体の中には、本来目的とするよりも分子量分布の広い重合体が生成する場合や、重合反応の際にゲル化を起こす場合などがあり、本来目的とする重合体の性能が得られない。このような現象がおこる理由の一つとして、重合性ポリオキシアルキレンモノアルキルエーテル誘導体が、副生成物として2官能の重合性ポリアルキレングリコール誘導体を含んでおり、この2官能の重合性ポリアルキレングリコール誘導体に由来する架橋反応が考えられる。
上記のような問題を解決するためには、副生成物である2官能の重合性ポリアルキレングリコール誘導体を含まない重合性ポリオキシアルキレンモノアルキルエーテル誘導体を単量体として用いればよい。例えば、重合性官能基を有し、かつアルキレンオキシドの付加が可能な化合物を原料に用い、これにアルキレンオキシドを付加させ、次に末端の水酸基にアルキル化合物を反応させることにより目的とする重合性ポリオキシアルキレンモノアルキルエーテル誘導体を得ることができる。しかし、重合性官能基を有する化合物にアルキレンオキシドを付加させる反応条件下においては、重合性官能基の転移などの副反応が進行しやすく、また、重合性官能基を有する化合物の重合などの副反応が進行しやすく、アルキルエーテル化の反応条件下においても、重合やエステル部位の分解など副反応がしやすいために、本来目的とする化合物とは異なる化合物が得られる場合が多い。従って、重合性ポリオキシアルキレンモノアルキルエーテル誘導体を得るには、ポリオキシアルキレンモノアルキルエーテルを原料として、重合性官能基を導入する方法が一般に用いられる。
重合性ポリオキシアルキレンモノアルキルエーテル誘導体の副生成物である2官能の重合性ポリアルキレングリコール誘導体は、重合性ポリオキシアルキレンモノアルキルエーテル誘導体の原料であるポリオキシアルキレンモノアルキルエーテル中に副生成物として含まれるポリアルキレングリコールに起因する。すなわち、ポリアルキレングリコールを副生成物として含むポリオキシアルキレンモノアルキルエーテルを原料として重合性の官能基を導入すると、重合性の官能基はその水酸基部位に導入されるために、本来目的とする1官能の重合性ポリオキシアルキレンモノアルキルエーテル誘導体とともに、副生成物としてポリアルキレングリコールに由来する分子の両末端に2個の重合性の官能基を有する重合性ポリアルキレングリコール誘導体が生成するためである。従って、2個の重合性の官能基を有する重合性ポリアルキレングリコール誘導体を含有しない重合性ポリオキシアルキレンモノアルキルエーテル誘導体を得るためには、副生成物のポリアルキレングリコールを含有しないポリオキシアルキレンモノアルキルエーテルを原料に用いればよい。
ポリオキシアルキレンモノアルキルエーテルは、1価のアルコール化合物を出発原料とし、アルカリ又は酸触媒の存在下において、アルキレンオキシドを直接付加させることにより製造されるが、製造条件によって複数の副生物が生成することが知られている(大島義彦、水谷敏康、塗装工学、第22巻、397〜403頁、1987年)。例えば、アルカリ金属やアルカリ土類金属の水酸化物を触媒として、1価のアルコール化合物にアルキレンオキシドを付加させる場合や、反応容器内に水が存在した状態でアルキレンオキシドの付加反応を行った場合、水分子とアルキレンオキシドが反応して2官能のアルキレングリコールが生成し、さらに生成したアルキレングリコールにアルキレンオキシドが付加する。その結果、1価のアルコール化合物であるポリオキシアルキレンモノアルキルエーテルと同時に、副生成物として2価のアルコール化合物であるポリアルキレングリコールが生成する。このような副生物が共存するポリオキシアルキレンモノアルキルエーテルからポリオキシアルキレンモノアルキルエーテルのみを選択的に分離することは容易でなく、大量に処理することは非常に困難である。しかも、ポリオキシアルキレンモノアルキルエーテル中に含まれるポリアルキレングリコールの定量は困難な場合が多く、重合性ポリオキシアルキレンモノアルキルエーテル誘導体の原料として好ましいものかどうかは判定しにくい。勿論、これらの原料を用いた重合性ポリオキシアルキレンモノアルキルエーテル誘導体に含まれる2官能の重合性ポリアルキレングリコール誘導体の定量も困難である。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、2価のアルコール化合物をほとんど含まない高純度のポリオキシアルキレンモノアルキルエーテルを原料とする重合性ポリオキシアルキレンモノアルキルエーテル誘導体、該誘導体の重合体及び該重合体を含有する分散性に優れた分散剤を提供することを目的としてなされたものである。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の課題を解決すべく、ポリオキシアルキレンモノアルキルエーテルは1価のアルコール化合物であるのに対して、ポリアルキレングリコールは2価のアルコール化合物であり、これらが共存する系においてアルキレンオキシドを付加させた場合、理論上ポリアルキレングリコールに付加反応可能なアルキレンオキシドの分子数は、ポリオキシアルキレンモノアルキルエーテルの2倍となる点に着目して鋭意検討した結果、ゲル浸透クロマトグラフィーのクロマトグラムに特有の分布を有するポリオキシアルキレンモノアルキルエーテルを原料として用い、これに重合性の官能基を導入した重合性ポリオキシアルキレンモノアルキルエーテル誘導体は、2官能の重合性ポリアルキレングリコール誘導体に由来する障害が少ないことを見いだし、この知見に基づいて本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、
(1)式[1]で示されるポリオキシアルキレンモノアルキルエーテルであって、
R1O(AO)nH …[1]
(ただし、式中、R1は炭素数1〜18の炭化水素基であり、AOは炭素数2〜4のオキシアルキレン基であり、AOは1種であっても、2種以上であってもよく、AOが2種以上のとき、その付加形式はランダム状であっても、ブロック状であってもよく、nはオキシアルキレン基の平均付加モル数で5〜500である。)
ゲル浸透クロマトグラフィーにおいて、示差屈折率計を用いて得られた屈折率強度と溶出時間で表されるクロマトグラム上の最大の屈折率強度極大点とベースラインの最短距離をLとしたとき、溶出開始点からクロマトグラム上の屈折率強度がL/3となる最速溶出時間までのピーク面積S1と、溶出開始点から最大の屈折率強度極大点までのピーク面積Soの比が、
S1/S0 ≦ 0.1237 …(A)
を満足するポリオキシアルキレンモノアルキルエーテルであって、かつ、1価のアルコールに炭素数2〜4のアルキレンオキシドを付加重合させる際に、内容積V(ml)の反応容器に水分Ci(ppm)の溶剤Wi(g)を仕込み、撹拌して溶剤洗浄を行ったのち抜き取った溶剤の水分がCf(ppm)であるとき、
反応容器内の水分=Wi×(Cf−Ci)/V≦10
の式を満足する条件によって製造されたポリオキシアルキレンモノアルキルエーテルを原料とすることを特徴とする式[2]で示される重合性ポリオキシアルキレンモノアルキルエーテル誘導体、
R1O(AO)nR2 …[2]
(ただし、式中、R1は炭素数1〜18の炭化水素基であり、R2はアクリロイル基又はメタクリロイル基であり、AOは炭素数2〜4のオキシアルキレン基であり、AOは1種であっても、2種以上であってもよく、AOが2種以上のとき、その付加形式はランダム状であっても、ブロック状であってもよく、nはオキシアルキレン基の平均付加モル数で5〜500である。)、
(2)第(1)項記載の式[2]で示される重合性ポリオキシアルキレンモノアルキルエーテル誘導体5〜95モル%と、これと共重合可能な単量体95〜5モル%を共重合して得られる分子量500〜100,000の共重合体、
(3)式[2]で示される重合性ポリオキシアルキレンモノアルキルエーテル誘導体と共重合可能な単量体が、不飽和カルボン酸である第(2)項記載の共重合体、及び、
(4)第(3)項記載の共重合体を含有することを特徴とする分散剤、
を提供するものである。
【0005】
【発明の実施の形態】
本発明の重合性ポリオキシアルキレンモノアルキルエーテル誘導体の原料であるポリオキシアルキレンモノアルキルエーテルは、式[1]
R1O(AO)nH …[1]
で示される化合物である。式[1]において、R1は炭素数1〜18の炭化水素基であり、AOは炭素数2〜4のオキシアルキレン基であり、AOは1種であっても、2種以上であってもよく、AOが2種以上のとき、その付加形式はランダム状であっても、ブロック状であってもよく、nはオキシアルキレン基の平均付加モル数で5〜500である。
式[1]において、R1で示される炭素数1〜18の炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert―ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、シクロヘキシル基、フェニル基、ベンジル基などを挙げることができる。これらの中で、炭素数1〜4の炭化水素基がより好ましい。
式[1]において、AOで示される炭素数2〜4のオキシアルキレン基としては、例えば、オキシエチレン基、オキシプロピレン基、オキシブチレン基、オキシテトラメチレン基などを挙げることができる。これらの中で、オキシエチレン基、オキシプロピレン基及びオキシブチレン基が特に好ましい。式[1]において、AOは1種であっても、2種以上であってもよく、AOが2種以上のオキシアルキレン基であるとき、その付加形式はランダム状であっても、ブロック状であってもよい。また、nはオキシアルキレン基の平均付加モル数で5〜500であり、より好ましくは10〜300である。nが5未満であると、該ポリオキシアルキレンモノアルキルエーテルを出発原料として得られる分散剤が、十分な分散性能を発現しないおそれがある。nが500を超えると、粘度が高くなって取り扱いが困難となるおそれがある。
【0006】
本発明に用いるポリオキシアルキレンモノアルキルエーテルは、ゲル浸透クロマトグラフィーにおいて、示差屈折率計を用いて得られた屈折率強度と溶出時間で表されるクロマトグラム上の最大の屈折率強度極大点とベースラインの最短距離をLとしたとき、溶出開始点からクロマトグラム上の屈折率強度がL/3となる最速溶出時間までのピーク面積S1と、溶出開始点から最大の屈折率強度極大点までのピーク面積S0の比が、
S1/S0 ≦ 0.1237 …(A)
を満足する。ただし、ゲル浸透クロマトグラフィーに使用した展開溶媒などに起因するピークや、使用したカラムや装置に起因するベースラインの揺らぎによる疑似ピークは除いたポリオキシアルキレンアルキルエーテルに由来するピークについてのみ計算する。
図1は、ポリオキシアルキレンモノアルキルエーテルのゲル浸透クロマトグラフィーにより得られるクロマトグラムのモデル図であり、横軸は溶出時間を、縦軸は示差屈折率計を用いて得られた屈折率強度を示す。ゲル浸透クロマトグラフに試料溶液を注入して展開すると、溶出開始点Aにおいて、最も分子量の高い分子から溶出が始まり、屈折率強度の増加に伴い溶出曲線が上昇していく。その後、屈折率強度が最大となる屈折率強度極大点を過ぎ、溶出曲線は下降していく。高分子量側又は低分子量側に含まれる不純物が多いと、最大の屈折率強度極大点以外にも、屈折率強度極大点が現れる場合がある。最大の屈折率強度極大点Pとベースラインとの最短距離を求め、これをLとする。得られたLをもとにL/3を計算し、屈折率強度がL/3となる最速溶出時間Bを求める。溶出開始点Aから最大の屈折率強度極大点Pまでのピーク面積をS0とし、溶出開始点Aから屈折率強度がL/3となる最速溶出時間Bまでのピーク面積をS1とする。本発明のポリオキシアルキレンモノアルキルエーテルは、S1とS0の比、S1/S0が0.1237以下であり、より好ましくは0.12以下である。S1/S0が0.1237を超えると、ポリオキシアルキレンモノアルキルエーテル中のポリアルキレングリコールの含有量が多く、該ポリオキシアルキレンモノアルキルエーテルを出発原料として得られる分散剤が、十分な分散性能を発現しないおそれがある。
【0007】
ポリオキシアルキレンモノアルキルエーテル、これを原料として重合性官能基を導入した重合性ポリオキシアルキレンモノアルキルエーテル誘導体、さらに該誘導体を重合して得られる重合体、すなわち単独重合体又は共重合体は、S1/S0の値が大きくなるにつれ、2官能の重合性ポリアルキレングリコール誘導体に由来する粘度の増加などがみられ、S1/S0が0.1237を超えると、該重合体を分散剤として用いた場合、その分散性能が十分に発現しないおそれがある。しかし、S1/S0が小さくなるにつれ、2官能の重合性ポリアルキレングリコール誘導体に由来する粘度の増加などは起こりにくく、S1/S0が0.1237以下、より好ましくは0.12以下であれば、重合体を分散剤として用いた場合、本来有すべき優れた性能が発揮される。
本発明において、ピーク面積S0及びピーク面積S1を求めるためのゲル浸透クロマトグラフィーに特に制限はないが、例えば、GPCシステムとしてSHODEX GPC SYSTEM−11、示差屈折率計としてSHODEX RI−71を用い、カラムとしてSHODEX KF804Lを3本連続装着し、カラム温度を40℃とし、展開溶剤としてテトラヒドロフランを用いて行うことができる。展開溶剤は、1ml/分の流速で流し、サンプル濃度0.1重量%のサンプル溶液0.1mlを注入し、BORWIN GPC計算プログラムを用いて、屈折率強度と溶出時間で表されるクロマトグラムを得ることができる。
本発明に用いるポリオキシアルキレンモノアルキルエーテルは、1価のアルコールに炭素数2〜4のアルキレンオキシドを付加重合させる際に、内容積V(ml)の反応容器に水分Ci(ppm)の溶剤Wi(g)を仕込み、撹拌して溶剤洗浄を行ったのち抜き取った溶剤の水分がCf(ppm)であるとき、
反応容器内の水分 = Wi×(Cf―Ci)/V ≦ 10 …(B)
を満足することにより、容易に製造することができる。反応容器内の水分は、式(B)に示されるように10以下であり、より好ましくは8以下である。
アルキレンオキシドの付加を行う反応容器に、予めカールフィッシャー法などにより水分を求めた溶剤を仕込む。使用する溶剤に特に制限はなく、例えば、アセトン、アセトニトリルなどを挙げることができる。反応容器を密封し、常圧又は加圧下に、必要に応じて溶剤の沸点以下又は沸点以上の温度条件で、反応容器内の溶剤洗浄を行う。溶剤洗浄後、加えた溶剤を注意深く抜き取り、カールフィッシャー法などにより、洗浄後の溶剤に含まれる水分を測定する。反応容器の内容積V(ml)、加えた溶剤の重量Wi(g)、洗浄前の溶剤の水分Ci(ppm)、洗浄後の溶剤の水分Cf(ppm)より、数式(B)を用いて反応容器内の水分を求めることができる。
【0008】
本発明に用いるS1/S0が0.1237以下であるポリオキシアルキレンモノアルキルエーテルは、例えば、下記のごとくして製造することができる。反応前に予め反応容器内をメタノール、エタノール、イソプロパノール、アセトン、メチルエチルケトン、アセトニトリルなどの比較的低沸点の水溶性の溶剤、又は、ベンゼン、トルエンなどの水と共沸可能な溶剤で洗浄し、次いで、50〜150℃、100Torr以下の条件で1時間以上乾燥し、反応容器内の水分を系外に除去する。次いで、反応容器に溶剤を仕込み、撹拌して溶剤洗浄を行う。溶剤洗浄に用いる溶剤の量及び洗浄前後の溶剤の水分を測定して、数式(B)より反応容器内の水分を求め、反応容器内の水分が10以下であることを確認する。
出発原料である1価のアルコール化合物は、水分を極力含まないものが好ましい。出発原料である1価のアルコールが、水と共沸することなく蒸留可能な場合は、ナトリウム、カリウム、水酸化ナトリウム、マグネシウムなどの乾燥剤を加えて還流した後、蒸留を行い水分を除去し、反応容器にアルカリ金属及びアルカリ土類金属の水酸化物を除くアルカリ触媒とともに加える。反応容器に原料アルコールやアルカリ触媒を加える際には、極力水分を加えないように注意する。
出発原料である1価のアルコール化合物の沸点が高く、蒸留が困難な場合は、反応容器に原料の1価のアルコールとともに、トルエンなどの水と共沸する溶剤を仕込み、乾燥窒素ガス雰囲気下、50〜150℃、200Torr以下の条件で、1時間以上減圧処理を行い、添加した溶剤を除去することで、原料である1価のアルコールに含まれる水分を除去することができる。さらに、極力水分を加えないように、アルカリ金属及びアルカリ土類金属の水酸化物を除くアルカリ触媒を加え、反応容器内を乾燥窒素ガス雰囲気下に加圧状態にしたのち、乾燥したアルキレンオキシドを50〜150℃で連続的に添加し、付加重合することによって得ることができる。また、出発原料である1価のアルコール化合物に付加反応させる炭素数2〜4のアルキレンオキシドについても、水分を極力含まないものが好ましい。もちろん、炭素数2〜4のアルキレンオキシドを反応容器内に加える際には、極力水分を加えないように注意することも肝心である。
アルキレンオキシドの付加反応の触媒として用いるアルカリ金属及びアルカリ土類金属の水酸化物を除くアルカリ触媒としては、例えば、ナトリウム、カリウム、ナトリウムカリウムアマルガム、ナトリウムハイドライド、ナトリウムメトキシド、カリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウムエトキシドなどを挙げることができる。また、ナトリウムメトキシドのメタノール溶液や、ナトリウムエトキシドのエタノール溶液などを用いることもできる。
アルキレンオキシドの付加反応には、上記のアルカリ触媒の他に、三フッ化硼素や四塩化錫などのルイス酸触媒が用いられるが、酸触媒を用いて高分子量の化合物を得ようとすると、1,4−ジオキサンなどの環状モノマーや環状ポリエーテルが副生し、目的の純度の化合物を得ることが困難となるおそれがある。
【0009】
本発明の重合性ポリオキシアルキレンモノアルキルエーテル誘導体は、式[2]
R1O(AO)nR2 …[2]
で示される化合物である。式[2]において、R1は炭素数1〜18の炭化水素基であり、R2はアクリロイル基又はメタクリロイル基であり、AOは炭素数2〜4のオキシアルキレン基であり、AOは1種であっても、2種以上であってもよく、AOが2種以上のとき、その付加形式はランダム状であっても、ブロック状であってもよく、nはオキシアルキレン基の平均付加モル数で5〜500である。
式[2]において、R1で示される炭素数1〜18の炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert―ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、シクロヘキシル基、フェニル基、ベンジル基などを挙げることができる。これらの中で、炭素数1〜4の炭化水素基がより好ましい。
【0010】
式[2]において、AOで示される炭素数2〜4のオキシアルキレン基としては、例えば、オキシエチレン基、オキシプロピレン基、オキシブチレン基、オキシテトラメチレン基などを挙げることができる。式[2]において、AOは1種であっても、2種以上であってもよく、AOが2種以上のオキシアルキレン基であるとき、その付加形式はランダム状であっても、ブロック状であってもよい。また、nはオキシアルキレン基の平均付加モル数で5〜500であり、より好ましくは10〜300である。nが5未満であると、重合性ポリオキシアルキレンモノアルキルエーテル誘導体の重合体を含有する分散剤が、十分な分散性能を発現しないおそれがある。nが500を超えると、粘度が高くなって取り扱いが困難となるおそれがある。
本発明の重合性ポリオキシアルキレンモノアルキルエーテル誘導体は、ゲル浸透クロマトグラフィーにより得られるクロマトグラムにおいて、
S1/S0 ≦ 0.1237 …(A)
を満足する式[1]で示されるポリオキシアルキレンモノアルキルエーテルを原料として製造する。式[1]で示されるポリオキシアルキレンモノアルキルエーテルに、R2で示されるアクリロイル基又はメタクリロイル基を導入する方法に特に制限はなく、例えば、ポリオキシアルキレンモノアルキルエーテルに、p−トルエンスルホン酸・一水和物などの触媒を加え、アクリル酸又はメタクリル酸とのエステル化反応によって得ることができ、ポリオキシアルキレンモノアルキルエーテルに、ナトリウムメトキシドなどの触媒を加え、アクリル酸メチル又はメタクリル酸メチルなどのアクリル酸アルキル又はメタクリル酸アルキルとのエステル交換反応によって得ることもでき、また、ポリオキシアルキレンモノアルキルエーテルと、アクリル酸クロライド又はメタクリル酸クロライドとの反応によって得ることもでき、あるいは、ポリオキシアルキレンモノアルキルエーテルとアクリル酸無水物又はメタクリル酸無水物との反応によって得ることもできる。
【0011】
本発明の重合体は、式[2]で示される重合性ポリオキシアルキレンモノアルキルエーテル誘導体を単量体とする単独重合体又は共重合体である。式[2]で示される重合性ポリオキシアルキレンモノアルキルエーテル誘導体の単独重合体は、分子量が1,000〜300,000、より好ましくは5,000〜100,000である。単独重合体は、式[2]で示される重合性ポリオキシアルキレンモノアルキルエーテル誘導体の1種又は2種以上の混合重合体でもよい。
式[2]で示される重合性ポリオキシアルキレンモノアルキルエーテル誘導体の共重合体は、式[2]で示される重合性ポリオキシアルキレンモノアルキルエーテル誘導体5〜95モル%と、これと共重合可能な単量体95〜5モル%を共重合して得られる分子量500〜100,000、より好ましくは分子量1,000〜50,000の共重合体である。共重合体の分子量が500未満であると、共重合体を含有する分散剤が、十分な分散性能を発現しないおそれがある。共重合体の分子量が100,000を超えると、粘度が高くなって取り扱いが困難となるおそれがある。
共重合可能な単量体としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸などの不飽和モノカルボン酸及びそれらの塩、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、メサコン酸、イタコン酸などの不飽和ジカルボン酸及びそれらの塩、メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレートなどのアルキルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、ブチルメタクリレートなどのアルキルメタクリレート、スチレン、p−スチレンスルホン酸、インデンなどの重合性芳香族不飽和化合物、イソブチレン、イソプレンなどのオレフィン、N−フェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミドなどのマレイミド、その他アクリルアミド類、無水マレイン酸、マレイン酸アルキルエステル類、酢酸ビニル、アクリロニトリル、アリルスルホン酸、メタリルスルホン酸及びこれらの塩などを挙げることができる。これらの単量体は、1種を単独で用いることができ、あるいは、2種以上を組み合わせて用いることもできる。これらの中で、不飽和モノカルボン酸、不飽和ジカルボン酸及びこれらの塩を好適に使用することができ、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸及び無水マレイン酸を特に好適に使用することができる。
本発明において、式[2]で示される重合性ポリオキシアルキレンモノアルキルエーテル誘導体の単独重合体及び共重合体の分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(以下、GPCと称する。)により測定した値であり、ポリエチレングリコール換算の重量平均分子量である。
【0012】
本発明の重合体の製造方法に特に制限はなく、式[2]で示される重合性ポリオキシアルキレンモノアルキルエーテル誘導体を単独で、又は、式[2]で示される重合性ポリオキシアルキレンモノアルキルエーテル誘導体と共重合可能な単量体を共に、有機溶剤中又は水系溶剤中で溶液重合することができ、あるいは、無溶剤で塊状重合することもできる。また、重合反応に用いる重合開始剤としては、水系溶剤の場合には、例えば、tert―ブチルヒドロペルオキシドなどのヒドロペルオキシドや、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウムなどの過硫酸塩などの水溶性の重合開始剤を挙げることができる。有機溶剤系又は無溶剤系で重合を行う場合には、例えば、ベンゾイルペルオキシド、ジ−tert−ブチルペルオキシドなどの過酸化物や、2,2'−アゾビスイソブチロニトリルなどのアゾ系開始剤などを挙げることができる。これらの重合開始剤は、1種を単独で用いることができ、あるいは、2種以上を組み合わせて用いることもできる。
本発明の分散剤は、式[2]で示される重合性ポリオキシアルキレンモノアルキルエーテル誘導体の単独重合体、又は、式[2]で示される重合性ポリオキシアルキレンモノアルキルエーテル誘導体5〜95モル%と、これと共重合可能な単量体95〜5モル%の共重合体を含有するものである。式[2]で示される重合性ポリオキシアルキレンモノアルキルエーテル誘導体の単独重合体、及び、式[2]で示される重合性ポリオキシアルキレンモノアルキルエーテル誘導体5〜95モル%と、これと共重合可能な単量体95〜5モル%の共重合体は、分散剤の成分として優れた分散性能を発揮する。分散剤に含有せしめる共重合体は、式[2]で示される重合性ポリオキシアルキレンモノアルキルエーテル誘導体30〜70モル%と、これと共重合可能な単量体70〜30モル%の共重合体であることがより好ましい。
本発明の分散剤の形態に特に制限はなく、例えば、重合体を単独で用いることができ、重合体を水溶液又は有機溶剤溶液として用いることもでき、あるいは、重合体の溶液にさらに消泡剤などの薬剤を添加して用いることもできる。本発明の分散剤の使用量に特に制限はなく、例えば、分散すべき固体に対して、重合体が0.01〜10重量%となるよう、好ましくは0.1〜5.0重量%となるよう添加することにより、固液分散系における固体粒子の分散状態や沈降抑制効果を著しく改良することができる。
本発明の分散剤は、各種の分散剤として使用できるが、好ましくはセラミック用途に用いて、無機粉体の高濃度のスラリーを形成することができ、塗料用途に用いて、顔料をビヒクル中に1次粒子に分散させて安定な懸濁液を形成することができる。セメント用途に用いて、モルタルやコンクリートの流動性や流動保持性を高め、高強度、高耐久性、施工性を向上させることができる。特に無機粉体の分散剤及びセメント用途の分散剤として有用である。
【0013】
【実施例】
以下に、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明する。
実施例1
温度計、圧力計、安全弁、窒素ガス吹き込み管、撹拌機、真空排気管、冷却コイル、蒸気ジャケットを装備したステンレス製5リットル(内容積4,890ml)の耐圧反応装置を水で洗浄したのち、反応容器内の水分を乾燥窒素ガスで払い、次いで蒸気ジャケットに蒸気を供給しながら、50〜100Torrで15分減圧乾燥した。水洗浄工程終了後常圧に戻し、さらに室温まで冷却したのち、メタノール2リットルを仕込み、窒素ガス雰囲気下、0.05〜0.1MPa、70〜75℃で30分撹拌し、反応容器内をメタノール洗浄した。メタノールを廃棄し、反応容器内に乾燥窒素ガスを吹き込み、蒸気ジャケットに蒸気を供給し、かつ、50〜100Torrで1時間減圧乾燥した。
室温まで冷却したのち、窒素ガス吹き込み管より、市販の脱水アセトニトリル(カールフイッシャー法により水分を測定したところ51ppmであった。)2,010gを仕込んだ。乾燥窒素ガスで0.05MPaまで加圧したのち、15分間撹拌した。次いでアセトニトリルを注意深く抜き取った結果、2,002gのアセトニトリルが回収された。抜き取ったアセトニトリルの水分をカールフイッシャー法により求めたところ、66ppmであった。数式(B)より算出した反応容器内の水分は、6.2であった。
反応容器内に残存するアセトニトリルを乾燥窒素ガスで払い、蒸気ジャケットに蒸気を供給し、50〜100Torrで1時間減圧乾燥した。反応装置を30℃以下に冷却したのち、水分量が21ppmの脱水メタノール128g及びナトリウムメトキシド27gを仕込み、反応容器内を窒素ガスで置換した。90℃まで昇温したのち、90〜100℃、0.6MPa以下の条件で、窒素ガス吹き込み管より、エチレンオキシド3,640gを撹拌下に連続的に加圧添加した。エチレンオキシド添加終了後、90〜100℃で2時間反応させた。次に80℃まで冷却したのち、窒素ガスを吹き込みながら、75〜85℃、50〜100Torrで1時間減圧処理を行った。反応物を5リットルのナスフラスコに移し、速やかに1N塩酸で中和し、窒素ガス雰囲気下で脱水後、ろ過を行い、得られた反応物について、ゲル浸透クロマトグラフィーによる測定を行った。
ゲル浸透クロマトグラフィーには、システムとしてSHODEX GPC SYSTEM−11、示差屈折率計としてSHODEX RI−71、カラムとしてSHODEX KF804Lを3本連続装着し、カラム温度40℃、展開溶剤としてテトラヒドロフランを1ml/分の流速で流し、得られた反応物の0.1重量%テトラヒドロフラン溶液0.1mlを注入し、BORWIN GPC計算プログラムを用いて、屈折率強度と溶出時間で表されるクロマトグラムを得た。図2は、得られたクロマトグラムである。このクロマトグラムからS1/S0を求めると、0.114であった。
撹拌装置、温度計、空気吹き込み管、ディーンスターク管、ジムロート管を装着した5リットルの四つ口フラスコに、反応物1,650gを仕込み、これにトルエン1,400gを加え、p−トルエンスルホン酸・一水和物115g及びハイドロキノン5gを加え50℃まで昇温し、50〜60℃で30分撹拌させた。次に、メタクリル酸206gを加え、エアーポンプを用いて空気吹き込み管より空気を吹き込みながら、110〜120℃で9時間反応させた。反応物を60℃まで冷却後、分液漏斗に移し、5N水酸化ナトリウム水溶液を加えてよく振り混ぜ、静置後に生じた下層を分離した。さらに20重量%塩化ナトリウム水溶液を加えてよく振り混ぜ、静置後に生じた下層を分離した。上層に、p−メトキシフェノール0.1gを加え、減圧下60℃以下の条件でトルエンを除去し、ポリオキシエチレンモノメチルエーテルメタクリレート(a)を得た。
【0014】
実施例2
実施例1と同様の耐圧反応装置を用い、実施例1と同様にして、洗浄及び乾燥を行った。室温まで冷却したのち、窒素ガス吹き込み管より、市販の脱水アセトン(カールフイッシャー法により水分を測定したところ44ppmであった。)2,100gを仕込んだ。乾燥窒素ガスで0.05MPaまで加圧し、15分間撹拌した。次いでアセトンを注意深く抜き取った結果、2,095gのアセトンが回収された。抜き取ったアセトンの水分をカールフイッシャー法により求めたところ、59ppmであった。数式(B)より算出した反応容器内の水分は、6.4であった。
反応容器内に残存するアセトンを乾燥窒素ガスで払い、蒸気ジャケットに蒸気を供給し、50〜100Torrで1時間減圧乾燥した。室温まで冷却したのち、ステアリルアルコール1,100gを仕込み、反応容器内を窒素ガスで置換した。110℃まで昇温したのち、105〜115℃で、反応容器内に窒素ガスを吹き込みながら100Torr以下の減圧下で脱水を行った。脱水終了後70℃まで冷却し、一部19gを抜き取り、カールフィッシャー法により水分量を求めると34ppmであった。ナトリウムメトキシド2gを加え、反応容器内を窒素ガスで置換した。次に80℃まで昇温したのち、90〜100℃、0.6MPa以下で窒素ガス吹き込み管よりプロピレンオキシド2,870gを撹拌下に連続的に加圧添加した。プロピレンオキシド添加終了後、90〜100℃で2時間反応させた。
次に80℃まで冷却したのち、窒素ガスを吹き込みながら、75〜85℃、50〜100Torrで1時間減圧処理を行った。反応物の一部307gを0.5リットルのナスフラスコに移し、速やかに1N塩酸で中和し、窒素ガス雰囲気下で脱水、ろ過を行い、得られた反応物について、ゲル浸透クロマトグラフィーによる測定を行った。図3は、得られたクロマトグラムである。このクロマトグラムよりS1/S0を求めると、0.117であった。
残りの反応物の967gを撹拌装置、温度計、空気吹き込み管を装着した3リットルの四つ口フラスコに仕込み、これにナトリウムメトキシドのメタノール溶液(川研ファインケミカル株式会社製、SM−28、ナトリウムメトキシド28重量%)5gを加え、窒素ガス雰囲気下、110℃まで昇温したのち、105〜110℃で、反応容器内に窒素ガスを吹き込みながら、100Torr以下の減圧下で脱メタノールを行った。
50℃まで冷却後、リービッヒ管、減圧用分留器を取りつけ、メタクリル酸メチル1,032g及びt−ブチルヒドロキシトルエン0.6gを加え、エアーポンプを用いて空気吹き込み管より空気を吹き込みながら、75〜85℃、500Torrで4時間反応させた。続いて、50Torr以下、95〜105℃でメタクリル酸メチルを回収した。反応物を60℃まで冷却後、分液漏斗に移し85重量%りん酸水溶液及び20重量%塩化ナトリウム水溶液を加えてよく振り混ぜ、静置後に生じた下層を分離した。次いで20重量%塩化ナトリウム水溶液を加えてよく振り混ぜ、静置後に生じた下層を分離し、ポリオキシプロピレンモノステアリルエーテルメタクリレート(b)を得た。
【0015】
実施例3
実施例1と同様の耐圧反応装置を用い、実施例1と同様にして、洗浄及び乾燥を行った。室温まで冷却したのち、窒素ガス吹き込み管より、市販の脱水アセトニトリル(カールフイッシャー法により水分を測定したところ51ppmであった。)1,975gを仕込んだ。乾燥窒素ガスで0.05MPaまで加圧したのち、15分間撹拌した。次いでアセトニトリルを注意深く抜き取った結果、1,968gのアセトニトリルが回収された。抜き取ったアセトニトリルの水分をカールフイッシャー法により求めたところ、65ppmであった。数式(B)より算出した反応容器内の水分は、5.7であった。
反応容器内に残存するアセトニトリルを乾燥窒素ガスで払い、蒸気ジャケットに蒸気を供給し、50〜100Torrで1時間減圧乾燥した。室温まで冷却したのち、予め蒸留した水分量が26ppmのn−ブタノール144g及びカリウム−tert−ブトキシド6gを仕込み、反応容器内を窒素ガスで置換した。次に80℃まで昇温したのち、90〜100℃、0.6MPa以下で窒素ガス吹き込み管よりプロピレンオキシド2,416gを撹拌下に連続的に加圧添加した。プロピレンオキシド添加終了後、90〜100℃で2時間反応させたのち、80℃まで冷却し、窒素ガスを吹き込みながら、75〜85℃、50〜100Torrで1時間減圧処理を行った。次に80℃まで昇温したのち、90〜100℃、0.6MPa以下で窒素ガス吹き込み管より1,2−ブチレンオキシド588gを撹拌下に連続的に加圧添加した。1,2−ブチレンオキシド添加終了後、90〜100℃で3時間反応させたのち、80℃まで冷却し、窒素ガスを吹き込みながら、75〜85℃、50〜100Torrで1時間減圧処理を行った。
反応物を5リットルのナスフラスコに移し、速やかに1N塩酸で中和し、窒素ガス雰囲気下で脱水後、ろ過を行い、得られた反応物について、ゲル浸透クロマトグラフィーによる測定を行った。図4は、得られたクロマトグラムである。このクロマトグラムよりS1/S0を求めると、0.103であった。
撹拌装置、温度計、空気吹き込み管、ディーンスターク管、ジムロート管を装着した5リットルの四つ口フラスコに、反応物1,456gを仕込み、これにトルエン1,200gを加え、p−トルエンスルホン酸・一水和物46g及びハイドロキノン6gを加え50℃まで昇温し、50〜60℃で30分撹拌させた。次に、メタクリル酸89gを加え、エアーポンプを用いて空気吹き込み管より空気を吹き込みながら、110〜120℃で12時間反応させた。反応物を60℃まで冷却後、分液漏斗に移し5N水酸化ナトリウム水溶液を加えてよく振り混ぜ、静置後に生じた下層を分離した。さらに20重量%塩化ナトリウム水溶液を加えてよく振り混ぜ、静置後に生じた下層を分離した。上層にp−メトキシフェノール0.1gを加え、減圧下60℃以下の条件でトルエンを除去し、ポリオキシプロピレンオキシブチレンモノブチルエーテルメタクリレート(c)を得た。
【0016】
実施例4
実施例1と同様の耐圧反応装置を用い、実施例1と同様にして、洗浄及び乾燥を行った。室温まで冷却したのち、窒素ガス吹き込み管より、市販の脱水アセトニトリル(カールフイッシャー法により水分を測定したところ51ppmであった。)1,857gを仕込んだ。乾燥窒素ガスで0.05MPaまで加圧したのち、15分間撹拌した。次いでアセトニトリルを注意深く抜き取った結果、1,848gのアセトニトリルが回収された。抜き取ったアセトニトリルの水分をカールフイッシャー法により求めたところ、68ppmであった。数式(B)より算出した反応容器内の水分は、6.5であった。
反応容器内に残存するアセトニトリルを乾燥窒素ガスで払い、蒸気ジャケットに蒸気を供給し、50〜100Torrで1時間減圧乾燥した。室温まで冷却したのち、ナトリウムメトキシドのメタノール溶液(川研ファインケミカル株式会社製、SM−28、ナトリウムメトキシド28重量%)76gを加え、反応系を窒素ガスで置換した。90℃まで昇温したのち、90〜100℃、0.6MPa以下で窒素ガス吹き込み管よりエチレンオキシド2,904gとプロピレンオキシド1,196gの混合物を撹拌下に連続的に加圧添加した。エチレンオキシドとプロピレンオキシドの混合物の添加終了後、90〜100℃で3時間反応させ、次に80℃まで冷却したのち、窒素ガスを吹き込みながら、75〜85℃、50〜100Torrで1時間減圧処理を行った。
反応物を5リットルのナスフラスコに移し、速やかに1N塩酸で中和し、窒素ガス雰囲気下で脱水後、ろ過を行い、得られた反応物について、ゲル浸透クロマトグラフィーによる測定を行った。図5は、得られたクロマトグラムである。このクロマトグラムよりS1/S0を求めると、0.1237であった。
撹拌装置、温度計、空気吹き込み管、ディーンスターク管、ジムロート管を装着した5リットルの四つ口フラスコに、反応物1,415gを仕込み、これにn−ヘキサン1,500gを加え、p−トルエンスルホン酸・一水和物53g及びハイドロキノン6gを加え40℃まで昇温し、40〜50℃で30分撹拌させた。次に、アクリル酸66gを加え、エアーポンプを用いて空気吹き込み管より空気を吹き込みながら、70〜75℃で12時間反応させた。反応物を50℃まで冷却後、分液漏斗に移し5N水酸化ナトリウム水溶液を加えてよく振り混ぜ、静置後に生じた下層を分離した。さらに20重量%塩化ナトリウム水溶液を加えてよく振り混ぜ、静置後に生じた下層を分離した。上層にp−メトキシフェノール0.1gを加え、減圧下50℃以下の条件でn−ヘキサンを除去し、ポリオキシエチレンオキシプロピレンモノメチルエーテルアクリレート(d)を得た。
【0017】
実施例5
実施例1と同様の耐圧反応装置を用い、実施例1と同様にして、洗浄及び乾燥を行った。室温まで冷却したのち、窒素ガス吹き込み管より、市販の脱水アセトン(カールフイッシャー法により水分を測定したところ44ppmであった。)2,206gを仕込んだ。乾燥窒素ガスで0.05MPaまで加圧し、15分間撹拌した。次いでアセトンを注意深く抜き取った結果、2,197gのアセトンが回収された。抜き取ったアセトンの水分をカールフイッシャー法により求めたところ、63ppmであった。数式(B)より算出した反応容器内の水分は、8.6であった。
反応容器内に残存するアセトンを乾燥窒素ガスで払い、蒸気ジャケットに蒸気を供給し、50〜100Torrで1時間減圧乾燥した。室温まで冷却したのち、ナトリウムメトキシドのメタノール溶液(川研ファインケミカル株式会社製、SM−28、ナトリウムメトキシド28重量%)46gを加え、反応系を窒素ガスで置換した。90℃まで昇温したのち、90〜100℃、0.6MPa以下で窒素ガス吹き込み管よりエチレンオキシド3,683gを撹拌下に連続的に加圧添加した。エチレンオキシド添加終了後、90〜100℃で2時間反応させ、次に80℃まで冷却したのち、窒素ガスを吹き込みながら、75〜85℃、50〜100Torrで1時間減圧処理を行った。
反応物を5リットルのナスフラスコに移し、速やかに1N塩酸で中和し、窒素ガス雰囲気下で脱水後、ろ過を行い、得られた反応物について、ゲル浸透クロマトグラフィーによる測定を行った。得られたクロマトグラムよりS1/S0を求めると、0.119であった。
撹拌装置、温度計、空気吹き込み管、ディーンスターク管、ジムロート管を装着した5リットルの四つ口フラスコに、反応物1,477gを仕込み、これにトルエン1,500gを加え、p−トルエンスルホン酸・一水和物38g及びハイドロキノン6gを加え50℃まで昇温し、50〜60℃で30分撹拌させた。次に、メタクリル酸60gを加え、エアーポンプを用いて空気吹き込み管より空気を吹き込みながら、110〜120℃で12時間反応させた。反応物を60℃まで冷却後、分液漏斗に移し5N水酸化ナトリウム水溶液を加えてよく振り混ぜ、静置後に生じた下層を分離した。さらに20重量%塩化ナトリウム水溶液を加えてよく振り混ぜ、静置後に生じた下層を分離した。上層にp−メトキシフェノール0.1gを加え、減圧下60℃以下の条件でトルエンを除去し、ポリオキシエチレンモノメチルエーテルメタクリレート(e)を得た。
【0018】
比較例1
実施例1と同様の耐圧反応装置を、水で良く洗浄したのち、反応容器内の水分を乾燥窒素ガスで払い、次いで蒸気ジャケットに蒸気を供給しながら、50〜100Torrで15分減圧乾燥した。室温まで冷却したのち、窒素ガス吹き込み管より、実施例1で用いたものと同じ水分51ppmの市販脱水アセトニトリル2,004gを仕込み、乾燥窒素ガスで0.05MPaまで加圧し、15分間撹拌した。次いでアセトニトリルを注意深く抜き取った結果、1,997gのアセトニトリルが回収された。抜き取ったアセトニトリルの水分をカールフイッシャー法により求めたところ、121ppmであった。数式(B)より算出した反応容器内の水分は、28.7であった。
反応装置を30℃以下に冷却したのち、脱水メタノール128g及びナトリウムメトキシド27gを仕込み、反応容器内を窒素ガスで置換した。90℃まで昇温したのち、90〜100℃、0.6MPa以下の条件で、窒素ガス吹き込み管より、エチレンオキシド3,640gを撹拌下に連続的に加圧添加した。エチレンオキシド添加終了後、90〜100℃で2時間反応させた。次に80℃まで冷却したのち、窒素ガスを吹き込みながら、75〜85℃、50〜100Torrで1時間減圧処理を行った。反応物を5リットルのナスフラスコに移し、速やかに1N塩酸で中和し、窒素ガス雰囲気下で脱水後、ろ過を行い、得られた反応物について、ゲル浸透クロマトグラフィーによる測定を行った。図6は、得られたクロマトグラムである。このクロマトグラムからS1/S0を求めると、0.156であった。
撹拌装置、温度計、空気吹き込み管、ディーンスターク管、ジムロート管を装着した5リットルの四つ口フラスコに、反応物1,650gを仕込み、これにトルエン1,400gを加え、p−トルエンスルホン酸・一水和物115g及びハイドロキノン5gを加え50℃まで昇温し、50〜60℃で30分撹拌させた。次に、メタクリル酸206gを加え、エアーポンプを用いて空気吹き込み管より空気を吹き込みながら、110〜120℃で9時間反応させた。反応物を60℃まで冷却後、分液漏斗に移し、5N水酸化ナトリウム水溶液を加えてよく振り混ぜ、静置後に生じた下層を分離した。さらに20重量%塩化ナトリウム水溶液を加えてよく振り混ぜ、静置後に生じた下層を分離した。上層に、p−メトキシフェノール0.1gを加え、減圧下60℃以下の条件でトルエンを除去し、ポリオキシエチレンモノメチルエーテルメタクリレート(a')を得た。
【0019】
比較例2
実施例1と同様の耐圧反応装置を、水で良く洗浄したのち、反応容器内の水分を乾燥窒素ガスで払い、次いで蒸気ジャケットに蒸気を供給しながら、50〜100Torrで15分減圧乾燥した。室温まで冷却したのち、ナトリウムメトキシドのメタノール溶液(川研ファインケミカル株式会社製、SM−28、ナトリウムメトキシド28重量%)46gを加え、反応系を窒素ガスで置換した。90℃まで昇温したのち、90〜100℃、0.6MPa以下で窒素ガス吹き込み管よりエチレンオキシド3,683gを撹拌下に連続的に加圧添加した。エチレンオキシド添加終了後、90〜100℃で2時間反応させ、次に80℃まで冷却したのち、窒素ガスを吹き込みながら、75〜85℃、50〜100Torrで1時間減圧処理を行った。
反応物を5リットルのナスフラスコに移し、速やかに1N塩酸で中和し、窒素ガス雰囲気下で脱水後、ろ過を行い、得られた反応物について、ゲル浸透クロマトグラフィーによる測定を行った。図7は、得られたクロマトグラムである。このクロマトグラムよりS1/S0を求めると、0.195であった。
撹拌装置、温度計、空気吹き込み管、ディーンスターク管、ジムロート管を装着した5リットルの四つ口フラスコに、反応物1,477gを仕込み、これにトルエン1,500gを加え、p−トルエンスルホン酸・一水和物38g及びハイドロキノン6gを加え50℃まで昇温し、50〜60℃で30分撹拌させた。次に、メタクリル酸60gを加え、エアーポンプを用いて空気吹き込み管より空気を吹き込みながら、110〜120℃で12時間反応させた。反応物を60℃まで冷却後、分液漏斗に移し5N水酸化ナトリウム水溶液を加えてよく振り混ぜ、静置後に生じた下層を分離した。さらに20重量%塩化ナトリウム水溶液を加えてよく振り混ぜ、静置後に生じた下層を分離した。上層にp−メトキシフェノール0.1gを加え、減圧下60℃以下の条件でトルエンを除去し、ポリオキシエチレンモノメチルエーテルメタクリレート(e')を得た。
実施例1〜5及び比較例1〜2のクロマトグラムのL、S0、S1及びS1/S0の値を第1表に、合成条件及び得られた化合物の特性を第2表に示す。
【0020】
【表1】
【0021】
【表2】
【0022】
[注]EO:エチレンオキシド、PO:プロピレンオキシド、
BO:1,2−ブチレンオキシド。
PO−BO:ブロック付加、EO/PO:ランダム付加。
MA:メタクリロイル基、A:アクリロイル基。
水酸基価:JIS K 1557 6.4に準拠して測定。
けん化価:JIS K 0070に準拠して測定。
臭素価:JIS K 2605に準拠して測定。
分子量及びnは、モノアルキルエーテルであるとして、水酸基価より求めた計算値である。
【0023】
実施例6(単独重合体)
撹拌装置、冷却管、窒素ガス導入管、温度計を装着した2リットルの四つ口フラスコに、実施例1で得られたポリオキシエチレンモノメチルエーテルメタクリレート(a)223g、水100g、2−プロパノール300g、チオグリコール酸10g、過硫酸カリウム2gを仕込み、窒素ガス雰囲気下、70〜75℃で6時間重合した。反応終了後、溶剤の2−プロパノールを減圧下で除去し、重合体の水溶液を得た。120℃、2時間経過後の乾燥減量より重合体水溶液の重合体濃度を求めると30.3重量%であった。得られた重合体水溶液の40℃における動粘度は1,173cStであり、GPCにより求めた重合体の分子量は63,100であった。
200ml共栓付き三角フラスコに、得られた重合体水溶液15gを秤取り、これにテトラヒドロフラン135gを加え、よく振り混ぜた結果、溶液は透明であった。
なお、GPCシステムとしては、SHODEX GPC SYSTEM−11、示差屈折率計としてSHODEX RI−71を用い、カラムとしてSHODEX KF−804Lを装着した。カラム温度を40℃とし、展開溶剤としてテトラヒドロフランを1ml/分の流速で流し、サンプル濃度0.1重量%のサンプル溶液0.1mlを注入した。分子量は、BORWIN GPC計算プログラムを用いて得られたクロマトグラムをもとに求めた、ポリエチレングリコール標準体換算の重量平均分子量である。
以下の実施例7及び比較例3においても、同様の条件で測定を行った。
実施例7
実施例6と同様の装置に、実施例3で得られたポリオキシプロピレンオキシブチレンモノブチルエーテルメタクリレート(c)189g、2−プロパノール500g、α−メチルスチレンダイマー4g、過酸化ベンゾイル2gを仕込み、窒素ガス雰囲気下、75〜80℃で5時間重合した。反応終了後、120℃、2時間経過後の乾燥減量より重合体溶液の重合体濃度を求めると28.2重量%であった。この重合体溶液の40℃における動粘度は197cStであり、GPCにより求めた重合体の分子量は53,300であった。
200ml共栓付き三角フラスコに、得られた重合体溶液15gを秤取り、これにテトラヒドロフラン135gを加え、よく振り混ぜた結果、溶液は透明であった。
比較例3
実施例1で得られたポリオキシエチレンモノメチルエーテルメタクリレート(a)の代わりに、比較例1で得られたポリオキシエチレンモノメチルエーテルメタクリレート(a')223gを用いた以外は、実施例6と同様の反応を行った。反応終了後、溶剤の2−プロパノールを減圧下で除去し、重合体の水溶液を得た。120℃、2時間経過後の乾燥減量より重合体水溶液の重合体濃度を求めると30.5重量%であった。得られた重合体水溶液の40℃における動粘度は、1,548cStであり、GPCにより求めた重合体の分子量は76,400であった。
200ml共栓付き三角フラスコに、得られた重合体水溶液15gを秤取り、これにテトラヒドロフラン135gを加え、よく振り混ぜた結果、溶液に濁りが認められた。架橋により不溶性となった重合体が存在するものと推定される。
【0024】
実施例8(共重合体)
撹拌装置、冷却管、窒素ガス導入管、温度計、滴下漏斗2個を装着した2リットルの四つ口フラスコに、無水マレイン酸54g、トルエン200gを仕込み、窒素ガス雰囲気下で85℃まで昇温させた。実施例1で得られたポリオキシエチレンモノメチルエーテルメタクリレート(a)480gとトルエン200gの混合溶液と、アゾビスイソブチロニトリル20gをトルエン100gに溶解させた溶液を、それぞれ別々の滴下漏斗に仕込み、窒素ガス雰囲気下、85〜95℃、2時間かけて滴下し、滴下終了後、同温度範囲で1時間反応させた。反応終了後、溶剤のトルエンを90〜100℃、減圧下で除去して、赤褐色の共重合体(P−a)を得た。得られた共重合体の100℃における動粘度は206cStであり、GPCにより求めた分子量は19,700であった。
なお、GPCシステムとしては、SHODEX GPC SYSTEM−11、示差屈折率計としてSHODEX RI−71を用い、カラムとしてSHODEX KF−801、KF−803及びKF−804を3本連続装着した。カラム温度を40℃とし、展開溶剤として0.05モル/リットル硝酸ナトリウム水溶液を用い、1ml/分の流速で流し、サンプル濃度0.1重量%のサンプル溶液0.1mlを注入した。分子量は、BORWIN GPC計算プログラムを用いて得られたクロマトグラムをもとに求めた、ポリエチレングリコール標準体換算の重量平均分子量である。
以下の実施例9〜10及び比較例4〜5においても、同様の条件で測定を行った。
実施例9
撹拌装置、冷却管、窒素ガス導入管、温度計、滴下漏斗2個を装着した3リットルの四つ口フラスコに、イオン交換水200gと2−プロパノール100gを仕込み、80℃まで昇温した。実施例4で得られたポリオキシエチレンオキシプロピレンモノメチルエーテルアクリレート(d)414g、アクリル酸29g、イオン交換水200g及び2−プロパノール100gの混合溶液と、過硫酸アンモニウムの10重量%水溶液20gをそれぞれ別々の滴下漏斗に仕込み、窒素ガス雰囲気下、80〜90℃、3時間かけて滴下し、滴下終了後、同温度範囲で1時間反応させた。反応終了後、溶剤の2−プロパノールを減圧下で除去し、5N水酸化ナトリウム水溶液を加えて中和し、イオン交換水を加えて水分を調整し、共重合体(P−d)の水溶液を得た。120℃、2時間経過後の乾燥減量より共重合体水溶液の重合体濃度を求めると、59.6重量%であった。得られた共重合体水溶液の25℃における動粘度は172cStであり、GPCにより求めた共重合体の分子量は30,300であった。
実施例10
撹拌装置、冷却管、窒素ガス導入管、温度計、滴下漏斗2個を装着した2リットルの四つ口フラスコに、イオン交換水200gを仕込み、窒素ガス雰囲気下で80℃まで昇温させた。実施例5で得られたポリオキシエチレンモノメチルエーテルメタクリレート(e)604g、メタクリル酸39gをイオン交換水400gに溶解させた溶液、過硫酸アンモニウム3g及びメタリルスルホン酸ナトリウム2gをイオン交換水40gに溶解させた溶液を、それぞれ別々の滴下漏斗に仕込み、窒素ガス雰囲気下、80〜85℃で、2時間かけて滴下した。滴下終了後、同温度範囲で1時間反応させた。5N水酸化ナトリウム水溶液を加えて中和し、イオン交換水を加えて水分を調整し、共重合体(P−e)の水溶液を得た。120℃、2時間経過後の乾燥減量より共重合体水溶液の重合体濃度を求めると59.2重量%であった。得られた共重合体水溶液の25℃における動粘度は397cStであり、GPCにより求めた共重合体の分子量は36,200であった。
【0025】
比較例4
実施例1で得られたポリオキシエチレンモノメチルエーテルメタクリレート(a)の代わりに、比較例1で得られたポリオキシエチレンモノメチルエーテルメタクリレート(a')を用いた以外は、実施例8と同様にして反応を行い、赤褐色の共重合体(P−a')を得た。得られた共重合体(P−a')の100℃における動粘度は243cStであり、GPCにより求めた分子量は22,100であった。
比較例5
実施例5で得られたポリオキシエチレンモノメチルエーテルメタクリレート(e)の代わりに、比較例2で得られたポリオキシエチレンモノメチルエーテルメタクリレート(e')を用いた以外は、実施例10と同様にして反応を行い、共重合体(P−e')の水溶液を得た。120℃、2時間経過後の乾燥減量より共重合体水溶液の重合体濃度を求めると59.4重量%であった。得られた共重合体水溶液の25℃における動粘度は448cStであり、GPCにより求めた共重合体の分子量は42,800であった。
実施例8〜10及び比較例4〜5で得られた共重合体の組成を、第3表に示す。
【0026】
【表3】
【0027】
実施例11(無機粉体用分散剤としてエチレングリコールモノブチルエーテル系での評価)
300mlビーカーに、酸化チタン[関東化学(株)]50gとエチレングリコールモノブチルエーテル90gを仕込み、分散剤として実施例8で得られた共重合体(P−a)の40重量%水溶液0.5gを加え、撹拌羽根で3分間混ぜ合わせてスラリー状組成物を調製した。
調製したスラリー状組成物を、ガラス板上に置いた内径50mm、外径60mm、高さ40mmの塩化ビニル樹脂製円筒パイプに入れ、上面をペーストナイフで平らに均し、円筒パイプを静かに上方に引き抜いた。スラリー状組成物の流動が停止したのち、広がった組成物の最大直径と最小直径を目視で判断し、その長さをmm単位で測定した。最大直径と最小直径の平均を求め、mmを単位とする無名数の整数で表し、これをスラリー状組成物のフロー値とした。その結果、フロー値は141であった。
実施例12
共重合体(P−a)の40重量%水溶液0.5gの代わりに、実施例9で得られた共重合体(P−d)の水溶液0.5gを用いた以外は、実施例11と同様にして、スラリー状組成物を調製し、そのフロー値を求めたところ、137であった。
比較例6
分散剤を添加しない以外は、実施例11と同様にして、スラリー状組成物を調製し、そのフロー値を求めたところ、77であった。
比較例7
共重合体(P−a)の40重量%水溶液の代わりに、比較例4で得られた共重合体(P−a')の40重量%水溶液を用いた以外は、実施例11と同様にして、スラリー状組成物を調製し、そのフロー値を求めたところ、118であった。
実施例11〜12及び比較例6〜7の結果を、第4表に示す。
【0028】
【表4】
【0029】
第4表の結果から、本発明の重合性ポリオキシアルキレンモノアルキルエーテル誘導体の共重合体を添加した実施例11及び実施例12のスラリー状組成物は、フロー値が大きく、酸化チタンの分散性が良好であることが分かる。これに対して、分散剤を添加しない比較例6のスラリー状組成物も、また、比較例4で得られた共重合体を添加した比較例7のスラリー状組成物もフロー値が小さく、酸化チタンの分散性が劣っている。
実施例13
JIS R 5201に規定された機械練り用練り混ぜ機の練り鉢に、普通ポルトランドセメント600g、砂[千葉県君津産、表乾比重2.51、表面水率0.2重量%]1,025gを秤取し、低速回転で30秒間練り混ぜた。次に、実施例8で得られた共重合体(P−a)2.4g及び消泡剤[ディスホームCC−118、日本油脂(株)]0.1gに水を加えて224gとした水溶液を15秒で添加し、続けて15秒間低速で練り混ぜ、さらに高速で2分間練り混ぜてモルタルを調製した。
調製したモルタルについて、JIS R 5201に規定されたフロー試験に準拠し、モルタルのフロー値を測定したところ、240であった。フロー値測定後のモルタルは、密閉容器に保管し、練り始めから30分後及び60分後にも、同様にフロー試験を繰り返した。30分後のフロー値は221であり、60分後のフロー値は177であった。
実施例14
共重合体(P−a)2.4gの代わりに、実施例10で得られた共重合体(P−e)の水溶液6.0gを用いた以外は、実施例13と同様にして、モルタルのフロー値を測定した。
モルタルのフロー値は、調製直後が229であり、30分後が213であり、60分後が188であった。
比較例8
共重合体(P−a)の代わりに、比較例4で得られた共重合体(P−a')を用いた以外は、実施例13と同様にして、モルタルのフロー値を測定した。
モルタルのフロー値は、調製直後が196であり、30分後が149であり、60分後が130であった。
比較例9
共重合体(P−a)2.4gの代わりに、比較例5で得られた共重合体(P−e')の水溶液6.0gを用いた以外は、実施例13と同様にして、モルタルのフロー値を測定した。
モルタルのフロー値は、調製直後が141であり、30分後が123であり、60分後が104であった。
実施例13〜14及び比較例8〜9の結果を、第5表に示す。
【0030】
【表5】
【0031】
第5表の結果から、本発明の重合性ポリオキシアルキレンモノアルキルエーテル誘導体の共重合体を含有する分散剤を添加した実施例13及び実施例14のモルタルは、練り上がり直後、30分後及び60分後においてフロー値が大きく、分散性が良好で流動性の保持効果があることが分かる。これに対して、比較例4及び比較例5で得られた共重合体を含有する分散剤を添加した比較例8及び比較例9のモルタルは、いずれもフロー値が小さく、分散性が劣っている。
【0032】
【発明の効果】
本発明の特有の分子量分布を有するポリオキシアルキレンモノアルキルエーテルを原料とした重合性ポリオキシアルキレンモノアルキルエーテル誘導体は、2官能の副生成物が極めて少なく、これを単量体として用いた重合体は、架橋による弊害が少ないことから、無機顔料、有機顔料など各種粉体の分散剤として用いる場合、少量の添加量で優れた分散性を示すために有効に使用することができ、また土木建築用セメント用添加剤として用いた場合にも、少ない添加量で優れた流動性を示すために作業性及び施工性を改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、ポリオキシアルキレンモノアルキルエーテルのゲル浸透クロマトグラフィーにより得られるクロマトグラムのモデル図である。
【図2】図2は、実施例1で得られたポリオキシエチレンモノメチルエーテルのクロマトグラムである。
【図3】図3は、実施例2で得られたポリオキシプロピレンモノステアリルエーテルのクロマトグラムである。
【図4】図4は、実施例3で得られたポリオキシプロピレンオキシブチレンモノブチルエーテルのクロマトグラムである。
【図5】図5は、実施例4で得られたポリオキシエチレンオキシプロピレンモノメチルエーテルのクロマトグラムである。
【図6】図6は、比較例1で得られたポリオキシエチレンモノメチルエーテルのクロマトグラムである。
【図7】図7は、比較例2で得られたポリオキシエチレンモノメチルエーテルのクロマトグラムである。
Claims (4)
- 式[1]で示されるポリオキシアルキレンモノアルキルエーテルであって、
R1O(AO)nH …[1]
(ただし、式中、R1は炭素数1〜18の炭化水素基であり、AOは炭素数2〜4のオキシアルキレン基であり、AOは1種であっても、2種以上であってもよく、AOが2種以上のとき、その付加形式はランダム状であっても、ブロック状であってもよく、nはオキシアルキレン基の平均付加モル数で5〜500である。)
ゲル浸透クロマトグラフィーにおいて、示差屈折率計を用いて得られた屈折率強度と溶出時間で表されるクロマトグラム上の最大の屈折率強度極大点とベースラインの最短距離をLとしたとき、溶出開始点からクロマトグラム上の屈折率強度がL/3となる最速溶出時間までのピーク面積S1と、溶出開始点から最大の屈折率強度極大点までのピーク面積Soの比が、
S1/S0 ≦ 0.1237 …(A)
を満足するポリオキシアルキレンモノアルキルエーテルであって、かつ、1価のアルコールに炭素数2〜4のアルキレンオキシドを付加重合させる際に、内容積V(ml)の反応容器に水分Ci(ppm)の溶剤Wi(g)を仕込み、撹拌して溶剤洗浄を行ったのち抜き取った溶剤の水分がCf(ppm)であるとき、
反応容器内の水分=Wi×(Cf−Ci)/V≦10
の式を満足する条件によって製造されたポリオキシアルキレンモノアルキルエーテルを原料とすることを特徴とする式[2]で示される重合性ポリオキシアルキレンモノアルキルエーテル誘導体。
R1O(AO)nR2 …[2]
(ただし、式中、R1は炭素数1〜18の炭化水素基であり、R2はアクリロイル基又はメタクリロイル基であり、AOは炭素数2〜4のオキシアルキレン基であり、AOは1種であっても、2種以上であってもよく、AOが2種以上のとき、その付加形式はランダム状であっても、ブロック状であってもよく、nはオキシアルキレン基の平均付加モル数で5〜500である。) - 請求項1記載の式[2]で示される重合性ポリオキシアルキレンモノアルキルエーテル誘導体5〜95モル%と、これと共重合可能な単量体95〜5モル%を共重合して得られる分子量500〜100,000の共重合体。
- 式[2]で示される重合性ポリオキシアルキレンモノアルキルエーテル誘導体と共重合可能な単量体が、不飽和カルボン酸である請求項2記載の共重合体。
- 請求項3記載の共重合体を含有することを特徴とする分散剤。
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