JP4377493B2 - ウレタン防水材の施工法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、ウレタン防水材の施工法に関し、ウレタンエラストマーの上層とウレタン弾性発泡体の下層とからなる複合防水材を用い、その下層に下地挙動緩衝層と下地処理層との機能を持たせたものである。
【0002】
【従来の技術】
従来のウレタン防水には、図4に示すようなものが知られている。図4において、符号1はコンクリートスラブなどの防水下地である。この防水下地1上には複層のウレタン防水層2が設けられている。
このウレタン防水層2は、上層3と下層4とからなり、下層4が防水下地1に密着して配されている。
【0003】
下層4は、JIS硬度A50、抗張力50kg/cm2、伸び700%程度の比較的軟らかいウレタンエラストマーからなり、上層3は、JIS硬度A90、抗張力100kg/cm2、伸び400%程度のやや硬いウレタンエラストマーからなるものである。
この複層ウレタン防水層2にあっては、下層4が軟らかく、伸びが良いため、下地1にクラックなどが生じた場合などでも、下層4がこれに追従して伸び、上層3が破断することがないとされている。
【0004】
しかしながら、この複層ウレタン防水層2では、その追従可能なクラックの幅は3mmが上限であり、防水下地1がPC版(プレキャストコンクリート版)やALC版(気泡混入軽量コンクリート版)あるいは金属屋根などの接合部における5mm以上の大きな変動には全く追従できず、防水性能を失うと言う問題があった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
よって、本発明における課題は、防水下地の激しい動きに対して十分追従でき、防水性能が低下しないウレタン防水材の施工法を得ることにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
かかる課題を解決するために、請求項1のウレタン防水材の施工法は、イソシアネート成分とポリオール成分とを混合してなる硬化時間が120秒以内の硬化性混合物に前記イソシアネート成分と反応しない発泡用ガスを圧入、混合し、この発泡用ガスが前記硬化性混合物に混合された状態で前記発泡用ガスが抜け出さないうちに硬化が進行する前記混合物を防水下地上に噴射し、これを防水下地上に発泡状態で付着させここで硬化させることで独立気泡構造のウレタン弾性発泡体からなる下層を形成し、ついで、この下層上にイソシアネート成分とポリオール成分との混和物を噴射してウレタンエラストマーからなる上層を形成するものとした。
請求項2記載のウレタン防水材の施工法は、スプレーガンにイソシアネート成分とポリオール成分とを別々に圧給して、まずこれらを混合して硬化性混合物とし、つづいてスプレーガンに圧給され前記イソシアネート成分と反応しない発泡用ガスをこの硬化性混合物に圧入、混合し、スプレーガンから噴射して下層を形成するものとした。
請求項3記載のウレタン防水材の施工法は、スプレーガンにイソシアネート成分とポリオール成分とを別々に圧給して、まずこれらを混合して硬化性混合物とし、つづいてスプレーガンに圧給され前記イソシアネート成分と反応しない発泡用ガスをこの硬化性混合物に圧入、混合し、スプレーガンから噴射して下層を形成し、ついで、下層を形成する際に用いたスプレーガンを使用し、これにイソシアネート成分とポリオール成分を圧給、混合して混和物とし、発泡用ガスの圧給を行わずにスプレーガンから噴射して上層を形成するものとした。
請求項4記載のウレタン防水材の施工法は、下層となる硬化性混合物には整泡剤が添加されているものとした。
請求項5記載のウレタン防水材の施工法は、前記下層が、発泡倍率2〜10倍、伸び200〜1000%、引張強度20〜100kg/cm 2 のウレタン弾性発泡体であり、
前記上層が、伸び100〜700%、引張強度60〜400kg/cm 2 のウレタンエラストマーであるものとした。
請求項6記載のウレタン防水材の施工法は、下層をなすウレタン弾性発泡体は、透湿度100〜500g/m 2 ・24時間の透湿性を有するものとした。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳しく説明する。
図1は、本発明のウレタン防水材の一例を示すものである。
図1において、符号11は防水下地を示す。この防水下地1は、現場打ちコンクリート、PC版、ALC版、スレート板、金属折版などや既設の露出防水層、例えばシート防水材、砂付きアスファルトルーフィング、あるいは防水押えのシンダーコンクリート、押えモルタルあるいは池などの土壌などであって、特に限定されるものではない。
【0013】
この防水下地1上には、ウレタン防水材12が設けられている。ここでのウレタン防水材12は、上層13と下層14とからなる二層構造のもので、上層13が外表面に露出し、下層14が防水下地11に接しており、上層13と下層14とが接合一体化した状態となっている。
【0014】
上層13は、ウレタンエラストマーからなる厚み2〜5mmの連続したシームレスの樹脂層であって、その伸び(JISK6301)が100〜700%、引張強度が60〜400kg/cm2の非透水性のものである。このウレタンエラストマーは、イソシアネート成分とポリオール成分とを混合し、硬化させてなるもので、イソシアネート成分には変性MDIなどが、ポリオール成分にはポリエーテルなどが、硬化剤にはアミンなどが用いられ、硬化時間が120秒以内の速硬化性の非発泡性の組成物からなるものである。
ここで、伸びおよび引張強度が上記範囲外では、下地1の動きに上層13が追従できなくなり、破断の恐れがある。
【0015】
下層14は、ウレタン弾性発泡体からなる厚み2〜5mmの連続したシームレスの発泡層であって、その発泡倍率が2〜10倍、伸び200〜1000%、引張強度20〜100kg/cm2である。また、この下層14の発泡体は独立気泡構造で非透水性であるとともに薄いセル膜を有しているため、透湿性が良好で、透湿度(JISZ0208)が100〜500g/m2・24時間のものである。
ここで、発泡倍率が2倍未満では伸びが不足し、10倍を越えると引張強度が不足する。
また、伸びおよび引張強度が上記範囲外では、下地1の動きに下層14が追従できなくなる。また、透湿度は、発泡倍率によって左右され、発泡倍率が2〜10倍では、この範囲内になる。
【0016】
この下層14をなすウレタン弾性発泡体は、イソシアネート成分とポリオール成分とを混合して硬化性混合物とし、これに発泡用ガスを圧入、混合して物理的に発泡させて得られたものである。
イソシアネート成分には変性MDIなどが、ポリオール成分にはポリエーテルなどが、硬化剤にはアミンなどが用いられ、発泡用ガスには炭酸ガス、窒素ガス、空気、アルゴンなどのイソシアネート成分と反応しないガスが用いられる。
上記硬化性混合物は、その硬化時間が120秒以内の速硬化性であり、発泡用ガスが硬化性混合物から抜け出さないうちに硬化が進行するものである。
【0017】
次に、このようなウレタン防水材の施工法について説明する。
まず、防水下地11の表面を清掃してゴミ、異物などを除去する。この際、下地11に若干の凹凸や不陸があっても、これを研削するなどの下地調整は不要である。また、下地11に多少の水分が含まれていてもあえて乾燥する必要はない。
【0018】
このような防水下地11上に下層14を設ける。下層14の形成は、例えば図2に示すような特殊な構造のスプレーガン15を用いる。このスプレーガン15の第1入口16からイソシアネート成分を、第2入口17からポリオール成分をそれぞれ30〜70kg/cm2程度の加圧状態で圧入し、1次混合室18でこの2成分を混合し、硬化時間が120秒以内の硬化性混合物とする。
この硬化性混合物を1次混合室18につづく2次混合室19に送り、第3入口20から導入された30〜60kg/cm2程度の加圧状態の発泡用ガスと混合し、これをノズル21から下地11に目がけて噴射する方法で行われる。
【0019】
この際、硬化性混合物に、ポリエーテルシロキサン系などの整泡剤を0.5〜2重量%添加し、発泡状態を良好にし、独立気泡構造をとるようにすることが望ましい。
そして、イソシアネート成分とポリオール成分と発泡用ガスとの混合比を適宜調整することで下層14に上述の機械的特性等を持たすことができる。
【0020】
この下層14の形成においては、イソシアネート成分とポリオール成分とからなる硬化性混合物の硬化時間を120秒以内とすることが重要である。この硬化時間が120秒を越えると、発泡用ガスが硬化中の硬化性混合物から散逸し、発泡倍率を2〜10倍とすることができない。すなわち発泡用ガスが硬化中の混合物の内部に十分に取り込まれ、これを十分に発泡させうるだけの硬化速度を有していることが必要である。
【0021】
このような発泡用ガスを用いる物理的発泡では、通常の化学的発泡とは異なり、スプレーガン15の2次混合室19内で既に発泡が開始され、ノズル21から噴射された時点で発泡が進行しており、防水下地11上に発泡状態で付着し、ここで硬化するので、下地11に少々の凹凸や不陸があっても下層14の表面は平坦となる。
また、場合によっては、スプレーガン15にイソシアネート成分とポリオール成分と発泡用ガスとを別々にかつ同時に圧給し、噴射してもよい。
【0022】
また、発泡することによって例えば、1回約1.5kg/m2の塗布量で厚みが3〜15mmの厚い下層14が連続的に得られるので、下地11の多少の凹凸などがこれで埋まり、下地11の凹凸、不陸が緩和され、下層14の表面に表われることがない。
この下層14は、それ単独でも非透水性を有するので、下層14自体が防水性を有し、下層14の形成が終了した時点で一応の防水が可能となる。このため、これ以降に降雨があっても、建物内部に雨水が侵入することがない。
【0023】
ついで、この下層14の上に上層13を形成する。上層13の形成方法は、上述の物性値を満足するウレタンエラストマーの連続層が形成できれば、特に限定されるものではないが、実際には下層14をなすイソシアネート成分およびポリオール成分と同様のイソシアネート成分およびポリオール成分を使用し、同様のスプレーガン15を使用して発泡用ガスのみを供給しない方法で行うことが作業が効率的に行えて好ましい。ただし、この混和物には、シリコーン系消泡剤を0.5〜2重量%を添加し、上層13の発泡を阻害するようにしておくことが望ましい。
【0024】
このようにして、イソシアネート成分とポリオール成分との混和物を例えば約2kg/m2の割合で下層14上に塗布することにより、厚み約2mmの連続したシームレスのウレタンエラストマーの下層13が得られ、これにより本発明のウレタン防水材が得られる。
なお、上層13の表面に必要に応じて保護塗料やFRPなどの保護層を適宜設けることもできる。
【0025】
このようなウレタン防水材12にあっては、下層14が伸びの良好なウレタン弾性発泡体からなるので、防水下地11の激しい動きがあっても、よく追従し、下層14に発生する応力を緩和し、上層13に伝わることがないので、防水材12全体として、高い疲労特性を示す。例えば、日本建築学会「建築工事標準仕様書・同解説JASS8防水工事」に定める疲労試験での「疲労A4」の結果を示すものとなる。
【0026】
また、下層14は、透湿性能が優れているので、例えば図3に示すように、下層14に連通する煙突状の通気部材22を付設することで、防水下地11に含まれている水分に起因する水蒸気を下層14を介して通気部材22から外気へ逃がすことができ、防水材12が下地11から剥離して膨れることがない。
【0027】
さらに、防水下地11に凹凸や不陸があっても下層14をなすウレタン弾性発泡体が物理的発泡によるものであるので、不陸等が修正され、下地11の影響が緩和され、上層13に及ぶことがなく、これにより下地調整作業が不要となり、例えば既設の砂付きアスファルトルーフィングやシングル覆き屋根に直接施工することができる。
【0028】
さらに、下層14のウレタン弾性発泡体は、発泡倍率が2〜10倍であるので、通常のウレタン発泡体に比べて機械的強度が高く、ウレタンエラストマーの上層13と相まって強固な防水層となり、しかも適度の弾性を有するため、例えばマンションの開放廊下、体育館、競技場などの床、病院、老人ホームなどの床などの弾性床にもなりうる。
また、遮音性をも有するので、雨音、歩行音などの衝撃音を軽減する。
【0029】
さらに、既設防水層に欠陥が生じて本施工法により改修を行う際に、旧防水層やこれの防水押えのコンクリート層などを撤去することなく、そのまま施工を行うことができ、改修のための施工コストを抑えることもできる。
このように、このウレタン防水材12の下層14は、下地挙動緩衝層ならびに下地調整(下地処理)層の役割を発揮するとともに防水層としても機能するものである。
【0030】
また、このようなウレタン防水材の施工法にあっては、下層14および上層13の形成が数分以内で完了するので、施工時間が極めて短く、天候等に左右されることも少ない。
また、下層14および上層13をなすイソシアネート成分とポリオール成分として同様の組成のものを使用する方法では、下層14の施工後にすぐに上層13の施工に移ることができ、スプレーガンや加圧定量ポンプなどの施工用装置を切り替えるなどの手間も不要となる。
【0031】
以下、具体例を示す。
(試験例1)
下層となるイソシアネート成分とポリオール成分とアミン系硬化剤と整泡剤との二液型の硬化性混合物として「GET−100」(商品名、(株)ダイフレックス製)を、発泡用ガスとして炭酸ガスを用い、硬化性混合物の供給圧を50kg/cm2、炭酸ガスの供給圧を50kg/cm2として、図2に示すスプレーガンを用いて、スレート板上に1.5kg/m2の割合で噴射して厚み3mmのウレタン弾性発泡体からなる下層を形成した。
【0032】
このようにして得られた下層の発泡倍率は2倍、引張強度は46kg/cm2 、引き裂き強度は21.5kg/cm、伸び率は480%であった。また、その表面には約0.1mmのスキン層が形成されていた。スキン層を有したままでの透湿度は190g/m2・24時間で、スキン層を取り除いたものの透湿度は390g/m2・24時間であった。なお、一般のウレタン防水材の透湿度は40〜50g/m2・24時間である。
【0033】
(試験例2)
試験例1と同様にしてスレート板上に厚み4mmの下層を形成した。つぎに、上層となるイソシアネート成分とポリオール成分とアミン系硬化剤との二液型の混和物として「SP−100」(商品名、(株)ダイフレックス製)を用い、供給圧50kg/cm2にて同様のスプレーガンに送り、発泡用ガスの送給を停止して2kg/m2の割合で下層上に噴射して、厚み2mmのウレタンエラストマーの上層を形成し、ウレタン防水材とした。
【0034】
この上層の引張強度は90kg/cm2、伸びは600%であった。このウレタン防水材の下地亀裂追従性をKMK法で評価したところ、防水材破断時の亀裂幅は32mmであり、極めて良好であった。
また、このものについて上述のJASS8「防水工事」に定める疲労試験(A形試験体)を行ったところ、その結果は全試験工程終了後、防水材に破壊は認められず「疲労A4」の成績であった。
【0035】
【発明の効果】
本発明のウレタン防水材の施工法によれば、上述の優れた特性を有するウレタン防水材を短時間に効率的に形成することができる。また、防水下地の下地処理を不要とすることができるので、施工コストを抑えることができ、改修工事では既設防水層、防水押え層の撤去を不要にでき、改修費用も低減できる。さらに、通気手段を設ければ、下層を介して防水下地から発生する水蒸気を外部に排出でき、防水材の膨れを防止でき、かつ防水下地に少々の水分が含まれていても乾燥を待つまでもなく、施工を行うことができるなどの効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明のウレタン防水材の施工例を示す概略断面図である。
【図2】 本発明の施工法に使用されるスプレーガンの一例を示す概略構成図である。
【図3】 本発明のウレタン防水材の他の施工例を示す概略断面図である。
【図4】 従来のウレタン防水材を示す概略断面図である。
【符号の説明】
11 防水下地
12 ウレタン防水材
13 上層
14 下層
Claims (6)
- イソシアネート成分とポリオール成分とを混合してなる硬化時間が120秒以内の硬化性混合物に前記イソシアネート成分と反応しない発泡用ガスを圧入、混合し、この発泡用ガスが前記硬化性混合物に混合された状態で前記発泡用ガスが抜け出さないうちに硬化が進行する前記混合物を防水下地上に噴射し、これを防水下地上に発泡状態で付着させここで硬化させることで独立気泡構造のウレタン弾性発泡体からなる下層を形成し、
ついで、この下層上にイソシアネート成分とポリオール成分との混和物を噴射してウレタンエラストマーからなる上層を形成することを特徴とするウレタン防水材の施工法。 - スプレーガンにイソシアネート成分とポリオール成分とを別々に圧給して、まずこれらを混合して硬化性混合物とし、つづいてスプレーガンに圧給され前記イソシアネート成分と反応しない発泡用ガスをこの硬化性混合物に圧入、混合し、スプレーガンから噴射して下層を形成することを特徴とする請求項1記載のウレタン防水材の施工法。
- スプレーガンにイソシアネート成分とポリオール成分とを別々に圧給して、まずこれらを混合して硬化性混合物とし、つづいてスプレーガンに圧給され前記イソシアネート成分と反応しない発泡用ガスをこの硬化性混合物に圧入、混合し、スプレーガンから噴射して下層を形成し、ついで、下層を形成する際に用いたスプレーガンを使用し、これにイソシアネート成分とポリオール成分を圧給、混合して混和物とし、発泡用ガスの圧給を行わずにスプレーガンから噴射して上層を形成することを特徴とする請求項1記載のウレタン防水材の施工法。
- 下層となる硬化性混合物には整泡剤が添加されていることを特徴とする請求項2または3に記載のウレタン防水材の施工法。
- 前記下層が、発泡倍率2〜10倍、伸び200〜1000%、引張強度20〜100kg/cm 2 のウレタン弾性発泡体であり、
前記上層が、伸び100〜700%、引張強度60〜400kg/cm 2 のウレタンエラストマーであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のウレタン防水材の施工法。 - 下層をなすウレタン弾性発泡体は、透湿度100〜500g/m 2 ・24時間の透湿性を有することを特徴とする請求項5記載のウレタン防水材の施工法。
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