JP4374632B2 - 定着ローラ用温度センサ - Google Patents
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Description
【0001】
本発明は、複写機、プリンタ、ファクシミリなどの定着装置に用いられている定着ローラの表面に接触させて該ローラの表面温度を測定する定着ローラ用温度センサに関する。
【0002】
【従来の技術】
複写機等の定着ローラの温度検知に用いられる定着ローラ用温度センサの感熱素子には、従来より主としてビード型サーミスタが使用されてきた。しかし、複写機等の定着ローラの表面に接触させてローラ表面の温度を測定するセンサの感熱素子にビード型サーミスタを使用したときの問題点として、特開平10−23170号公報(先行例1)には以下のような問題点を指摘している。
【0003】
すなわち、温度センサの感熱素子としてビードサーミスタ素子を使用した場合は、素子の形状が約1mm程度の球状もしくは、楕円を有しており、温度センサを加熱定着ローラの表面に圧接した際に、感熱素子の感熱部が加熱定着ローラに対して点接触することになり、被検知体に傷をつけるおそれがあるとともに、温度センサを固定する際の取付角度や位置ずれにより、感熱素子がローラ表面からずれたり、あるいは検出位置から離れて取付けられることによって、温度を正確に検知することが難しいという欠点がある、と云うのである。
【0004】
そこで、先行例1においては、このような問題点を解消するため、被検知体と接触する面が平面形状である薄型サーミスタを用いると云う構想が開示されている。また、この先行例1においては、例えば、図6に示すような一対の金属板20の細幅金属板23の先端間に感熱素子24を載置した構造を従来例として示し、このような構造によるときには機械的振動が発生するような厳しい条件下で使用される温度センサとしては、温度検知の安定性が未だ不十分であり、熱応答性の観点からも改善し得る余地があった、という問題点を掲げている。
【0005】
この問題点を解決する試みとして、先行例1においては、図7のように一方の端子部と連設して延びる細幅金属板部31と、この細幅金属板部31を囲むように形成され、他方の端子部と連接しているU字状金属部32との組み合わせを用い、細幅金属板部31とU字状金属部32間に感熱素子33を取り付け、薄膜シート34を金属板部面に設けるという構想の温度センサを提案し、この構造によれば、被検知体等の機械的振動が緩和されて、接触不良や断線不良が改善できる利点があるとともに、感熱素子からリード部を伝わって散逸する熱を最小限にすることで、熱抵抗を大きくして熱応答性が改善できる、という効果が強調されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、先行例1の発明に係る温度センサは、従来の温度センサでは、機械的振動が発生するような厳しい条件下で使用される温度センサとして、温度検知の安定性が未だ不十分であるとして、被検知体やその周辺からの機械的振動に強く、耐久性を備え、かつ温度検知が安定し、熱応答性に優れた温度センサを提供する目的で提案されたものである。
【0007】
しかしながら、複写機、プリンタなどの定着装置に使用される定着ローラが、先行例1において問題とされるほどの機械的振動が発生するような厳しい条件で駆動されているとは思われず、定着ローラに接触させてその温度を検知する目的で使用するかぎり、先行例1が強調するような厳しい機械的振動に対する耐久性は必ずしも必要ではないのではないかと思われる。
【0008】
この先行例1の構造によるときに何故厳しい機械的振動に対する耐久性を向上させることができることになるのかは、必ずしも明らかにされているわけではないが、おそらくは、U字状金属板部で細線金属板部を囲んだことによる効果であろうと思われる。
【0009】
また、先行例1の構成によれば、感熱素子からリード部を伝わって逸散する熱を最小限にすることで、熱抵抗を大きくして熱応答性を改善した、という効果が述べられているが、図7に示された構造によれば、感熱素子33は、細幅金属板31の先端部とU字状金属板部32の舌片部35との間に設けられているのであって、感熱素子の熱放散性については、さらに断熱材を設け、その断熱材上に感熱素子を載せて、細幅金属板31およびU字状金属板部32から感熱素子33を熱的に隔離する場合は別として、図7の構造では、先行例1の従来例として示された一対の細線金属板の先端間に感熱素子を載置する図6の構造のものと基本的には何ら変わらないのではないかと思われる。
【0010】
本発明の目的は、簡単な構造ながら、感熱素子をリード線である板ばねから熱的に隔離して熱応答性に優れた定着ローラ用温度センサを提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明による定着ローラ用温度センサにおいては、 板ばねと、保持体と、感熱素子と、カバーシートとを有する定着ローラ用温度センサであって、
板ばねは、感熱素子のリード線であり、対をなし、対をなす板ばねは、それぞれ主幹部分と、島部分を有し、
板ばねの対は、左右対称形であり、島部分は、主幹部分の片縁に開放して形成され、両主幹部分は、島部分が隣り合わせになるよう向きを定めて配列され、
対をなす主幹部分は、外部出力線に接続する部分であり、
対の島部分は、感熱素子の電極として主幹部分の一部を切り抜いて形成された方形の部分であり、
島部分と主幹部分とは、縦方向のタイバーと、横方向のタイバーとによってつながれ、
縦方向のタイバーと、横方向のタイバーとは、それぞれの主幹部分に電気的に接続するとともに両板ばね間に生じた捩れ応力を吸収させるものであり、
保持体は、両主幹部分の一部を埋め込み、両板ばねの主幹部分を、互いに隣接して平行に保持させる絶縁体であり、
感熱素子は、ソリッドタイプの角チップサーミスタ又は厚膜型のチップサーミスタであり、両板ばねの島部分にまたがって接着され、
カバーシートは、感熱素子が取付けられた島部分の表面を除いて両板ばねを覆い、タイバーのみによって主幹部分につながれた島部分の保持強度を確保するものである。
【0015】
また、カバーシートは、両縁の一部に矩形の切欠きを有し、両島部分の裏面と両主幹部分の裏面を覆い、さらに感熱素子が取付けられた島部分の表面を除き、両主幹部分の表面側に折り返して貼り付けられ、感熱素子が取付けられた島部分の全体を切欠き内に露出させるものである。
【0016】
また、感熱素子の表面に、防湿コートを有し、
防湿コートは、トナー粉の付着などによる汚れ、あるいは湿度による感熱素子への影響を阻止するものである。
【0018】
また、島部分は、その板面に透孔を有し、
透孔は、感熱素子を島部分に接着する接着剤を受け入れ、透孔内で固化させることによりその接着強度を高めるための孔である。
【0019】
また、前記島部分の透孔は、島部分の中央部に横方向に開口された透孔と、内奥部分に開口された縦長の透孔とからなるものである。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の実施の形態を図によって説明する。図1において、本発明による定着用温度センサにおいては、板ばね1a,1bの対と、感熱素子2と、カバーシート3と、保持体4とからなるものである。対の板ばね1a,1bは、感熱素子2のリード線であり、対をなす板ばね1a,1bは、図2に示すようにそれぞれ主幹部分5と、島部分6とを有している。
【0021】
主幹部分5は、外部出力線に接続するリード線の部分であり、その一部は保持体4に支えられて平行に配列されている。保持体4は、両主幹部分5,5の一部を埋め込み、両板ばねの主幹部分5.5を、互いに隣接して平行に保持させる絶縁性樹脂成形体である。
【0022】
保持体4には、ねじ孔7が開口され、保持体4から引き出された両主幹部分5,5の端末にはそれぞれ外部引き出し線8,8が接続されている。板ばね1a、1bの対は、左右対称形であり、島部分6は、主幹部分5の片縁に開放して形成され、両主幹部分5,5は、島部分6,6が隣り合わせになるよう向きを定めて配列されたものである。
【0023】
対の島部分6.6は、感熱素子2の電極部分であり、互いに隣接して配置され、それぞれの主幹部分5に電気的に接続されている。
主幹部分5と、島部分6とは、エッチングまたはプレス加工によりばね板から切り取られたものであり、島部分6は、エッチングまたはプレス加工により、主幹部分5の一部を切り抜いて形成された方形の部分である。対の島部分6,6は、平行に配列された対の主幹部分に囲まれ、島部分と主幹部分とは、縦方向及び横方向に延びる細線状のタイバー9a,9bによってつながれている。
【0024】
島部分6と主幹部分5とは、このタイバー9a,9bを除いて実質的には熱的に互いに隔離され、また、タイバー9a,9bによって互いに電気的に接続されているものである。もちろんタイバー9a,9bが島部分6と主幹部分5とをつなぐものである以上、このタイバー9a,9bを通して島部分6から主幹部分5に熱が伝わって行くのは避けることができない。
【0025】
したがって、タイバー9a,9bは、できるだけ細いほうが好ましいし、タイバー9a,9bの近傍の主幹部分5の一部には、熱の放散をできる限り抑えるため、板ばねの加工時に、エッチングまたはプレス加工により開口された窓孔10を設けておくのが好ましい。また、島部分5と主幹部分5との間隔は大きいほうが望ましいが、余り間隔を広げすぎるとタイバー9a,9bによる島部分6の支持強度が低下するため、その間隔は或程度の支持強度が得られるように適正に選ぶ必要がある。
【0026】
感熱素子2は、ソリッドタイプの角チップサーミスタ又は厚膜型のチップサーミスタであり、両板ばね1a,1bの島部分6,6間にまたがって接着されるものである。感熱素子2が接着された両島部分6,6は、感熱素子2の発する熱を分散させる均熱板として機能する。
【0027】
島部分6には、その板面に透孔11が開口されている。この透孔11も、板ばねの加工時に、エッチングまたはプレス加工により島部分6に開口されたものであり、この実施形態においては、島部分6の中央部に短い透孔11が横方向に二本、内奥部分に縦長の一本の透孔11を開口している。この透孔11は、感熱素子2を島部分6に接着する際に、図3のように使用された接着剤Bを開口内に受け入れる孔である。接着剤Bは、各透孔11内に浸入して硬化して感熱素子2の接着強度を高めている。
【0028】
カバーシート3は、両板ばね1a,1bの表面を覆うものであり、たとえば、ポリイミドテープを一定長さに切り取り、図4のようにその両縁の一部に矩形の切欠き12を形成したものである。カバーシート3は、感熱素子2が取付けられていない両島部分6,6の裏面と、両主幹部分5,5の背面とに跨って貼り付けられ、その両縁を折り返し、島部分6の表面側を除いて主幹部分5の表面側に貼り付けたものであり、感熱素子2が取付けられた島部分6の表面全体を、カバーシート3の切欠き12内に露出させる。
【0029】
図2に示すように方形の対の島部分6は、その3辺が主幹部分5に囲まれており、島部分6の裏面側と、両主幹部分5,5の裏面側とに跨って、カバーシート3が貼り付けられることによって、島部分6,6は、カバーシート3を介して主幹部分5,5に支えられることになり、この結果、島部分6の保持強度が高められ、感熱素子2は、カバーシート3の切欠き12内に臨んで外部に露出する。
【0030】
本発明の温度センサSを図5に示すように複写機などの定着ローラ13の表面温度検知に使用する場合において、感熱素子2を上向きの姿勢、すなわち、定着ローラ13の表面に、感熱素子2が取付けられた島部分6を接触させ、図1のように島部分6を通して感熱素子2に定着ローラ13の温度を検知させる。一方、外部引き出し線8から供給される電流は、主幹部分5からタイバー9a,9bを通り、島部分6から感熱素子2に通電され、感熱素子2が発熱し、定着ローラ13の温度を検知して生じた電流の変化が、温度検知信号としてタイバー9a,9bを通し、外部出力線である外部引き出し線8に取り出される。
【0031】
本発明において、感熱素子2が取付けられた島部分6と、外部引き出し線8に接続された主幹部分5とは、タイバー9a,9bにて電気的に接続されているものの、タイバー9a,9bは細く、島部分6の大部分は、主幹部分5から隔離されているため、感熱素子2に発した熱の殆どが熱放散されず、感熱素子2の熱時定数が損なわれない。
【0032】
また、本発明による温度センサSを定着ローラ13に接触させるに際し、対の板ばね1a,1bに対し、平均して力が掛かっていれば何らの問題が生じないが、対の板ばね1a,1bのそれぞれに作用する力の大きさが違って、板ばね1a,1b間に捩れなどが生じたときにおいても、島部分6と主幹部分5とは、縦,横方向のタイバー9a,9bによってつながれているため、タイバ9ーが細くても捩れによって生ずる応力は、それぞれのタイバー9a,9bに吸収され、板ばね1a,1b間の捩れの影響を受けない。
【0033】
また、本発明において、感熱素子2を外部に露出させることでトナー粉の付着などによる汚れ、あるいは湿度の影響を受けることも考えられるが、このような汚れや、湿度が問題になるときには、感熱素子2の表面に、図3のように防湿剤の塗布による防湿コート14を施すことによって十分に対処できる。
【0034】
さらに、感熱素子2を外面に露出させることによって、温度センサの製造工程において、対の板ばね1a,1bにカバーシート3を貼り付ける処理を先に行い、その後、対の島部分6,6に感熱素子2を取付ける処理を選択できる。感熱素子2の表面をカバーシート3で覆わなければ、感熱素子の取付後、平坦な板ばね1a,1bの裏面にあてがったカバーシートの両縁を表面側に折り返すことによってカバーシートを板ばねに簡単に張りつけることができる。
【0035】
【発明の効果】
以上のように本発明によれば、感熱素子のリード線である対の板ばねを主幹部分と島部分とにそれぞれ区画し、島部分と、主幹部分とを電気的に接続するものの熱的には実質的に隔離したので、スポンジなどの断熱材を用いることなく感熱素子として、ソリッドタイプの角チップサーミスタ又は厚膜型のチップサーミスタを島部分に直接取付け、感熱素子からの熱放散を防止して、感熱素子の熱時定数を向上させることができる。
【0036】
また、縦および横方向に延びる細いタイバーをもって島部分を主幹部分に接続することにより、回転する定着ローラから力を受けて島部分に捩れの応力が作用しても十分にその応力を吸収することができ、さらに、裏面のカバーシートに支えられて強度を保つことができる。
本発明によれば、わずかな部品点数を用いて組み立てられ、構造が簡単でありながら測定精度が高く、耐久性に優れ、製造コストの安い定着ローラ用温度センサを提供できる効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による定着ローラ用温度センサの一実施形態を示す図である。
【図2】板ばねの要部拡大平面図である。
【図3】図2のA−A線に相当する部分の温度センサの断面図である。
【図4】カバーシートの展開図である。
【図5】温度センサの使用状態を示す図である。
【図6】表面温度センサの従来例を示す図である。
【図7】改良された従来の表面温度センサを示す図である。
【符号の説明】
1a,1b 板ばね
2 感熱素子
3 カバーシート
4 保持体
5 主幹部分
6 島部分
7 ねじ孔
8 外部引き出し線
9a,9b タイバー
10 窓孔
11 透孔
12 切欠き
13 定着ローラ
14 防湿コート
S 温度センサ
B 接着剤
Claims (5)
- 板ばねと、保持体と、感熱素子と、カバーシートとを有する定着ローラ用温度センサであって、
板ばねは、感熱素子のリード線であり、対をなし、対をなす板ばねは、それぞれ主幹部分と、島部分を有し、
板ばねの対は、左右対称形であり、島部分は、主幹部分の片縁に開放して形成され、両主幹部分は、島部分が隣り合わせになるよう向きを定めて配列され、
対をなす主幹部分は、外部出力線に接続する部分であり、
対の島部分は、感熱素子の電極として主幹部分の一部を切り抜いて形成された方形の部分であり、
島部分と主幹部分とは、縦方向のタイバーと、横方向のタイバーとによってつながれ、
縦方向のタイバーと、横方向のタイバーとは、それぞれの主幹部分に電気的に接続するとともに両板ばね間に生じた捩れ応力を吸収させるものであり、
保持体は、両主幹部分の一部を埋め込み、両板ばねの主幹部分を、互いに隣接して平行に保持させる絶縁体であり、
感熱素子は、ソリッドタイプの角チップサーミスタ又は厚膜型のチップサーミスタであり、両板ばねの島部分にまたがって接着され、
カバーシートは、感熱素子が取付けられた島部分の表面を除いて両板ばねを覆い、タイバーのみによって主幹部分につながれた島部分の保持強度を確保するものであることを特徴とする定着ローラ用温度センサ。 - カバーシートは、両縁の一部に矩形の切欠きを有し、両島部分の裏面と両主幹部分の裏面を覆い、さらに感熱素子が取付けられた島部分の表面を除き、両主幹部分の表面側に折り返して貼り付けられ、感熱素子が取付けられた島部分の全体を切欠き内に露出させるものであることを特徴とする請求項1に記載の定着ローラ用温度センサ。
- 感熱素子の表面に、防湿コートを有し、防湿コートは、トナー粉の付着などによる汚れ、あるいは湿度による感熱素子への影響を阻止するものであることを特徴とする請求項1または2のいずれか1に記載の定着ローラ用温度センサ。
- 島部分は、その板面に透孔を有し、
透孔は、感熱素子を島部分に接着する接着剤を受け入れ、透孔内で固化させることによりその接着強度を高めるための孔であることを特徴とする請求項1に記載の定着ローラ用温度センサ。 - 前記島部分の透孔は、島部分の中央部に横方向に開口された透孔と、内奥部分に開口された縦長の透孔とからなるものであることを特徴とする請求項4に記載の定着ローラ用温度センサ。
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