JP4370745B2 - リン酸イオンを含むフッ素含有水の処理方法 - Google Patents
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【発明の属する技術分野】
本発明はリン酸イオンを含むフッ素含有水の処理方法に係り、特に、フッ素と共にリン酸イオンを含有する水を晶析法により処理してフッ素濃度の低い高水質の処理水を得る方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、フッ素含有水の処理方法としては、フッ素含有水にカルシウム化合物を添加して、フッ素含有水中のフッ素をフッ化カルシウム(CaF2)として沈殿させて固液分離する凝集沈殿法があるが、凝集沈殿法は、発生する汚泥量が多く、しかも、汚泥のCaF2純度が低いためにCaF2含有汚泥の再利用にも適さないという欠点がある。
【0003】
この問題を解決するものとして、フッ素含有水にカルシウム化合物を添加してフッ素及び/又はカルシウムを含む種晶を充填した晶析塔に通水し、下記反応により、フッ素含有水中のフッ素をフッ化カルシウム(CaF2)として種晶表面に析出させることにより除去する晶析法が知られている(特開昭60−206485号公報、特開平11−33564号公報)。
Ca2++2F−→CaF2
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明者の研究により、晶析法によりフッ素含有水中のフッ素を除去する際に、リン酸イオンが共存するとフッ素除去効果が低下し、フッ素濃度の低い高水質の処理水を得ることができないことが判明した。
【0005】
従って、本発明は、リン酸イオンを含むフッ素含有水を処理してフッ素を高度に除去した高水質処理水を得る方法を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明のリン酸イオンを含むフッ素含有水の処理方法は、リン酸イオンを含むフッ素含有水(原水)を処理する方法において、原水をリン晶析塔に通水して該水中のリン酸イオンを、水溶性カルシウム化合物の共存下、種晶と接触させるリン酸カルシウム晶析法により晶析除去した後、該リン晶析塔の処理水に水溶性カルシウム化合物を添加して、フッ素晶析塔にてフッ素及び/又はカルシウム含有種晶と接触させてフッ素を晶析除去するリン酸イオンを含むフッ素含有水の処理方法であって、原水は、フッ素イオン濃度、リン酸イオン濃度が各々500mg/L以下の水であり、原水に、原水中のPO4に対してCaとして1.0〜2.0当量倍の水溶性カルシウム化合物を添加して、pH6〜9でリン酸イオンを晶析除去して、前記リン晶析塔よりリン酸イオン濃度5mg−PO4/L以下の処理水を得、該リン晶析塔の処理水に、該処理水中のフッ素濃度に対してCa/F濃度比で1.1〜1.4となるように水溶性カルシウム化合物を添加して、pH4〜9でフッ素を晶析除去することを特徴とする。
【0007】
晶析法によるフッ素の除去において、リン酸イオンが阻害因子となる理由の詳細は明らかではないが、晶析法によるCa2++2F−→CaF2の反応において、リン酸イオンが共存すると、
3Ca2++2PO4 3−→Ca3(PO4)2
の反応が生起し、Ca2+を消費することによるものと考えられる。
【0008】
本発明では、このようなフッ素の晶析除去の阻害因子となるリン酸イオンを予め除去するため、リン酸イオンによる阻害を受けることなく、フッ素を高度に除去することが可能となる。
【0009】
このリン酸イオンは、以下の理由により、晶析法により除去することが好ましく、また、リン酸イオンはその濃度が5mg−PO4/L以下となるように除去することが望ましい。
【0010】
即ち、従来、リンの除去方法としては、凝集沈殿法、吸着法、晶析法などが知られている。本発明では既知の任意のリン除去方法を採用できるが、このうち、凝集沈澱法では、装置が過大となる上に、鉄塩、アルミニウム塩等を用いた凝集沈殿法では大量の汚泥が生成するという欠点がある。また、カルシウム塩による凝集沈殿法では、大量のカルシウム塩が必要となる上に、pHを強アルカリ性にするためにスケール生成の問題や処理水の中和が必要であるといった欠点がある。また、吸着法では吸着材の吸着量に限界があり、吸着量が飽和した時点で吸着材の交換又は再生が必要となる。
【0011】
これに対して、晶析法であれば、装置がコンパクトで、しかも、半永久的に連続運転が可能であり、汚泥発生量も抑えられるという優れた特長がある。
【0012】
晶析法としては、
(1) 原水をカルシウム化合物の共存下、種晶と接触させることにより、リン酸イオンとカルシウムイオンとの反応でリン酸カルシウム、アパタイトの結晶を生成させ、種晶表面に析出させるリン酸カルシウム晶析法
(2) 原水をマグネシウムイオン、アンモニウムイオンの共存下、種晶と接触させることにより、リン酸イオンとマグネシウムイオンとアンモニウムイオンとを反応させてMAP(マグネシウムアンモニウムホスフェート)を生成させ、種晶表面に析出させるMAP法
とがあるが、本発明はリン酸カルシウム晶析法を採用する。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下に図面を参照して本発明のリン酸イオンを含むフッ素含有水の処理方法の実施の形態を詳細に説明する。
【0014】
図1は本発明のリン酸イオンを含むフッ素含有水の処理方法の実施に用いられる装置の実施の形態を示す系統図である。
【0015】
原水槽1に導入されたリン酸イオンを含むフッ素含有水(原水)は、原水ポンプ2により、リン酸カルシウム晶析法によりリンを除去するリン晶析塔3に通水される。
【0016】
リン晶析塔3に充填する種晶としては、ヒドロキシアパタイト、フルオロアパタイト又はリン酸三石灰などのリン酸カルシウムを含む結晶種が使用でき、天然のリン鉱石又は骨炭はこれらのリン酸カルシウムを主成分としており、結晶種としても適している。また、砂などの濾材面にリン酸カルシウムを析出させた結晶種を用いることもできる。結晶種としては反応によって生成するリン酸カルシウムと同種のリン酸カルシウムを主成分とするものが望ましい。
【0017】
種晶の粒径は小さい方が表面積が大きい分反応に有利であるが、固液分離性の点からある程度の粒径は必要であり、実用的には0.1〜1mm程度が良い。
【0018】
リン晶析塔3には、塩化カルシウム(CaCl2)、水酸化ナトリウム(Ca(OH)2)等の水溶性カルシウム化合物(Ca塩)が添加される。このCa塩の添加量は原水中のPO4に対してCaとして通常1.0〜2.0当量倍である。過剰に添加しても残留するCa塩を後段のフッ素晶析塔7における晶析処理に利用することができるため、若干の過剰量であっても良い。
【0019】
このリン晶析塔3における処理はpH6〜9で行う。従って、必要に応じて、原水に水酸化ナトリウム(NaOH)等のアルカリや塩酸(HCl)等の酸を添加してpH調整を行う。なお、Ca塩としてCa(OH)2を用いた場合には、Ca(OH)2によるpH変動を考慮する必要がある。
【0020】
リン晶析塔3の通水方式は、下向流、上向流のいずれであっても良いが、種晶の固着化現象を防止するために、上向流通水とし、かつ、種晶を流動させる通水速度とするのが望ましい。
【0021】
リン晶析塔3の通水LVは特に限定しないが、塔内の種晶の展開率は種晶の固着化現象を防止した上で高い接触効率を得るために、150〜250%とすることが好ましく、従って、このような展開率が得られるような通水LVとすることが好ましい。
【0022】
このリン晶析塔3の処理水は循環槽4に導入され、一部がポンプ5によりリン晶析塔3の底部に循環水として返送され、残部はポンプ6により、フッ素晶析塔7に送給される。
【0023】
リン晶析塔3では、下記反応により原水中のリン酸イオンがリン酸カルシウムとして、或いはアパタイトとして種晶の表面に析出し、リン酸イオンが除去されるが、本発明においては、このようにして、フッ素の晶析除去に先立ちリン酸イオンを除去することにより、水中のリン酸イオン濃度が5mg−PO4/L以下となるようにリン酸イオンを除去する。リン酸イオン除去後のリン酸イオン濃度が5mg−PO4/Lを超えると、リン酸イオンを除去したことによるフッ素の晶析除去効率の改善効果を得ることができず、低フッ素濃度の処理水を得ることができない場合がある。
5Ca2++3HPO4 2−+4OH−→Ca5(PO4)3OH+3H2O
【0024】
このようにしてリン酸イオンが除去された水は、次いでフッ素晶析塔7に通水されてフッ素が晶析除去される。
【0025】
フッ素晶析塔7に充填する種晶としては、フッ素及び/又はカルシウムを含有する粒子を用いることができ、例えばホタル石、リン鉱石、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、フッ化カルシウム、鉱滓スラグ等が挙げられる。これらの粒子の粒径には特に制限はないが、展開性、流動性、取り扱い性、接触効率等の面から0.05〜0.5mmであることが好ましい。
【0026】
フッ素晶析塔7には、塩化カルシウム(CaCl2)、水酸化ナトリウム(Ca(OH)2)等のCa塩が添加される。このCa塩の添加量は、フッ素晶析塔7の流入水中のフッ素濃度の理論量、即ち流入水のフッ素濃度の1/2モル倍以上であることが好ましく、Ca/F濃度比で1.1〜1.4となるように添加する。なお、リン晶析塔3の流出水中に、Ca塩が残留する場合は、この残留Ca塩量を考慮してCa塩添加量が決定される。
【0027】
このフッ素晶析塔7における処理はpH4〜9で行う。従って、必要に応じて、フッ素晶析塔7の流入水に水酸化ナトリウム(NaOH)等のアルカリや塩酸(HCl)等の酸を添加してpH調整を行う。なお、Ca塩としてCa(OH)2を用いた場合には、Ca(OH)2によるpH変動を考慮する必要がある。
【0028】
フッ素晶析塔7の通水方式は、下向流、上向流のいずれであっても良いが、種晶の固着化現象を防止するために、上向流通水とし、かつ、種晶を流動させる通水速度とするのが望ましい。
【0029】
フッ素晶析塔7の通水LVは特に限定しないが、塔内の種晶の展開率は種晶の固着化現象を防止した上で高い接触効率を得るために、140〜250%とすることが好ましく、従って、このような展開率が得られるような通水LVとすることが好ましい。
【0030】
このフッ素晶析塔7でフッ素が晶析除去された処理水は循環槽8に導入され、一部がポンプ9によりフッ素晶析塔7の底部に循環水として返送され、残部は処理水として系外へ排出される。
【0031】
この処理水は、砂濾過塔や限外濾過(UF)膜分離装置、精密濾過(MF)膜分離装置等で濾過した後、循環水としても良い。
【0032】
本発明において、処理対象とされるリン酸イオンを含むフッ素含有水は、電子産業プロセス排水等のリン酸イオンとフッ素を含有する水であり、更にアンモニウムイオン(NH4 +)等のフッ素以外の成分が含有されていても良い。原水中のフッ素イオン、リン酸イオン及びアンモニウムイオン濃度は、各々500mg/L以下、例えば100〜500mg/Lであることが好ましい。
【0033】
なお、図1は、本発明の実施の形態の一例を示すものであって、本発明はその要旨を超えない限り、何ら図示の方法に限定されるものではない。
【0034】
原水中のリン酸イオンは、前述の如く、装置及び発生汚泥量の面で、晶析法により除去することが好ましい。また、晶析法を採用する場合、残留Ca塩を後段のフッ素晶析塔で利用することができ、このフッ素の晶析除去のためのCa塩添加量を削減できる点からリン酸カルシウム晶析法が好ましい。
【0035】
また、リン晶析塔やフッ素晶析塔の前段には必要に応じてpH調整槽を設けても良く、各晶析塔は複数個を多段に設けても良い。
【0036】
また、図1の装置では、Ca塩が晶析塔の下部に添加されるが、Ca塩は晶析塔の入口部分で被処理水の導入配管に添加し、被処理水と共に晶析塔に流入させるようにしても良い。また、Ca塩は、この導入配管と晶析塔の下部との2箇所で添加しても良く、晶析塔の高さ方向の異なる位置の複数箇所で添加しても良い。また、晶析塔を多段に設ける場合、各塔毎にCa塩を添加する方法を採用しても良い。いずれの場合であっても、ポンプでの結晶の析出を防止するために、ポンプの下流側で添加することが望ましい。
【0037】
更に、フッ素晶析塔の流出水は、フッ素吸着樹脂を充填した吸着塔に通水して高度処理を行っても良い。
【0038】
【実施例】
以下に実施例を挙げて本発明をより具体的に説明する。
【0039】
実施例1
F:200mg/L,NH4:120mg/Lの水にPO4:50mg/Lを添加して調製した水を原水として、図1の装置により処理を行った。この原水のpHは7.0〜7.3で水温は22〜24℃である。
【0040】
リン晶析塔及びフッ素晶析塔の仕様は下記の通りである。
[リン晶析塔]
30mmφ,2000mmHのカラムに粒径0.2〜0.4mmのリン鉱石を0.5L充填したもの
[フッ素晶析塔]
30mmφ,2000mmHのカラムに粒径0.3〜0.5mmのホタル石を0.5L充填したもの
【0041】
原水にH2SO4を添加してpH6.5〜6.7に調整した後、6L/hrでリン晶析塔に上向流で通水し、処理水のうちの一部15L/hrをリン晶析塔の底部に循環した。リン晶析塔の下部にはカルシウム塩としてCaCl2を原水中のPO4に対してCa換算で表1に示す割合となるように添加した。リン晶析塔内の種晶の展開率は約180%であった。
【0042】
リン晶析塔の処理水は、次いでNaOHを添加してpH6.5〜7.0に調整して6L/hrでフッ素晶析塔に上向流で通水し、処理水のうちの一部24L/hrをフッ素晶析塔の底部に循環した。フッ素晶析塔の下部にはカルシウム塩としてCaCl2を原水中のFに対してCa換算で1.4倍となるように添加した。フッ素晶析塔内の種晶の展開率は約150%であった。
【0043】
その結果、リン晶析塔の処理水の水質及びフッ素晶析塔の処理水のフッ素濃度は表1に示す通りであった。
【0044】
【表1】
【0045】
なお、PO4を添加せずに、F:200mg/L,NH4:120mg/Lの水を直接フッ素晶析塔に上記と同様の条件で通水して処理することにより得られた処理水のフッ素濃度は8〜10mg/Lであった。
【0046】
以上の結果から、リン酸イオンを含むフッ素含有水を処理するに当たり、予め
リン酸イオンを5mg−PO4/L以下に除去しておくことにより、リン酸イオンによるフッ素の晶析反応阻害を防止して、フッ素を高度に除去することができることがわかる。
【0047】
【発明の効果】
以上詳述した通り、本発明のリン酸イオンを含むフッ素含有水の処理方法によれば、リン酸イオンを含むフッ素含有水を処理してフッ素濃度の低い高水質の処理水を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明のリン酸イオンを含むフッ素含有水の処理方法の実施に用いられる装置の実施の形態を示す系統図である。
【符号の説明】
1 原水槽
3 リン晶析塔
4,8 循環槽
7 フッ素晶析塔
Claims (1)
- リン酸イオンを含むフッ素含有水(原水)を処理する方法において、
原水をリン晶析塔に通水して該水中のリン酸イオンを、水溶性カルシウム化合物の共存下、種晶と接触させるリン酸カルシウム晶析法により晶析除去した後、該リン晶析塔の処理水に水溶性カルシウム化合物を添加して、フッ素晶析塔にてフッ素及び/又はカルシウム含有種晶と接触させてフッ素を晶析除去するリン酸イオンを含むフッ素含有水の処理方法であって、
原水は、フッ素イオン濃度、リン酸イオン濃度が各々500mg/L以下の水であり、
原水に、原水中のPO4に対してCaとして1.0〜2.0当量倍の水溶性カルシウム化合物を添加して、pH6〜9でリン酸イオンを晶析除去して、前記リン晶析塔よりリン酸イオン濃度5mg−PO4/L以下の処理水を得、
該リン晶析塔の処理水に、該処理水中のフッ素濃度に対してCa/F濃度比で1.1〜1.4となるように水溶性カルシウム化合物を添加して、pH4〜9でフッ素を晶析除去することを特徴とするリン酸イオンを含むフッ素含有水の処理方法。
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