JP3622407B2 - 水処理方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はフッ化物イオン(F)及びカルシウムイオン(Ca)を含有する水、或いは、Fを含有する水及びCaを含有する水を処理して高純度水を製造する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、純水の製造手段としては、イオン交換樹脂によるイオン交換法又は逆浸透(RO)膜分離装置によるRO膜分離法があるが、イオン交換法では、イオン交換樹脂の再生のために酸又はアルカリを多量に必要とすることから、RO膜分離法が採用される場合が多い。
【0003】
しかし、RO膜分離法は、膜で不純物を分離する方法であるため、原水中にSSが混入したり、膜濃縮水中の塩類濃度が高くなり、溶解度を超える濃度となって塩類が析出したりすると、膜表面にこれらが沈積し、膜の目詰りで通水が不可能となる。特に、原水中にCaとFが含まれている場合には、難溶性のCaFが生成することになるが、このCaFの溶解度は8ppm(F換算)と低いため、濃縮によるCaFの析出でRO膜を閉塞させ易い。即ち、例えば、原水のF濃度が5ppmの場合、純水(透過水)回収率90%でRO膜分離処理すると、濃縮水のF濃度は50ppmとなり、また、純水回収率95%でRO膜分離処理すると濃縮水のF濃度は100ppmとなり、Caが共存するとCaFの析出でRO膜が閉塞し、通水は不可能となる。
【0004】
このため、従来においては、原水中にCa及びFが含まれている場合には、RO膜分離を行わず、イオン交換樹脂によるイオン交換法が採用されている。或いは、Caをソーダライム法でCaCOとして沈殿分離させた後、F等の塩類をRO膜で分離する方法が採用されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、イオン交換樹脂のみで処理する方法では、前述の如く、再生のための酸やアルカリを多量に必要とするため、工業的に不利である。
【0006】
また、Caを沈殿分離した後RO膜分離する方法では、
▲1▼ Caの沈殿分離のための薬注条件やpH管理が難しい。
▲2▼ 沈殿槽を必要とする。
▲3▼ CaCOの汚泥が発生する。
▲4▼ RO膜分離処理の原水中にNa,CO等のイオンが増加するため、膜負荷が大きくなり、RO膜分離装置を大型化する必要がある。
▲5▼ Fが濃縮されたRO膜濃縮水の処理の問題がある。
といった欠点がある。
【0007】
本発明は上記従来の問題点を解決し、F及びCaを含有する水或いはFを含有する水及びCaを含有する水を効率的に処理して純水を製造する方法を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
請求項1の水処理方法は、フッ化物イオン及びカルシウムイオンを含有する水を処理する方法において、該水をカチオン交換樹脂と接触させ、次いで逆浸透膜分離処理して透過水を第1処理水とする第1工程と、該カチオン交換樹脂の再生排液と該逆浸透膜分離処理の濃縮水とを混合してCaFを生成させ、このCaFを分離して分離水を第2処理水とする第2工程とを有することを特徴とする。
【0009】
請求項2の水処理方法は、フッ化物イオンを含有するF含有水とカルシウムイオンを含有するCa含有水とを処理する方法において、該Ca含有水をカチオン交換樹脂と接触させて第1処理水を得る第1工程と、該F含有水を逆浸透膜分離処理して透過水を第2処理水とする第2工程と、該カチオン交換樹脂の再生排液と該逆浸透膜分離処理の濃縮水とを混合してCaFを生成させ、このCaFを分離して分離水を第3処理水とする第3工程とを有することを特徴とする。なお、Ca含有水はCaFとして析出するレベル以下の濃度であればFを含有していても良い。
【0010】
本発明の方法では、被処理水中のCaをカチオン交換樹脂で除去し、F、その他の塩類をRO膜で分離することにより純水を得る。このカチオン交換樹脂の再生により排出される、Caを多量に含む再生排液と、RO膜分離処理で得られるFを多量に含む濃縮水とを混合することでCaFを析出させ、これを分離除去することにより、再生排液及び濃縮水についても放流可能な処理水にまで容易に処理することができる。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
【0012】
図1は請求項1の水処理方法の実施の形態を示す系統図、図2は請求項2の水処理方法の実施の形態を示す系統図である。なお、図2において、図1に示す部材と同一機能を奏する部材には同一符号を付してある。
【0013】
図1に示す方法は、Ca及びFを共に含有する水(以下、Ca・F含有水ということがある。)を処理する方法であって、Ca・F含有水はまずpH調整槽1で必要に応じて酸又はアルカリのpH調整剤を添加して後段のRO膜分離装置3の通水条件であるpH5〜8にpH調整される。
【0014】
pH調整された水は、次いでカチオン交換塔2に通水され、カチオン交換樹脂によりCaが除去される。カチオン交換塔2の流出水は次いでRO膜分離装置3に導入される。そしてRO膜でF、その他の塩類が分離された透過水を純水(第1処理水)として回収する。一方、濃縮水は混合槽4に導入される。
【0015】
混合槽4には、カチオン交換塔2から排出されるカチオン交換樹脂の再生排液が導入され、Fが濃縮され、高濃度にFを含むRO膜分離装置3の濃縮水と、カチオン交換樹脂の再生によりCaを多量に含む再生排液とが混合される。
【0016】
本発明においては、カチオン交換塔2の再生液としてはNaCl水溶液を用いるのが、中性の再生排液が得られるため有利である。即ち、再生排液が中性であれば、RO膜分離装置3の濃縮水もpH5〜8のほぼ中性域であるため、これらを混合すれば、pH調整を行うことなく、CaFの沈殿に好適なpH域(pH6〜8)とすることができる。従って、カチオン交換塔2のカチオン交換樹脂としてはNa型弱酸性カチオン交換樹脂又はNa型強酸性カチオン交換樹脂を用いる。
【0017】
RO膜分離装置3の濃縮水とカチオン交換樹脂の再生排液とは混合槽4で混合された後、凝集槽5でポリアクリルアミド系ポリマー等の高分子凝集剤が添加され、これにより、CaFが析出沈殿する。このCaFは沈殿槽6で分離される。
【0018】
沈殿槽6でCaFを分離して得られる分離水は、放流可能な排出基準(一般的にはF濃度15ppm以下)にまで十分にF濃度を低減したものとなり、処理水として系外に排出し放流することができる。
【0019】
なお、この場合、FをCaFとして十分に除去するには、再生排液中のCaが不足する場合には、混合槽4に別途Ca源を添加してCaの不足分を補う。この場合、Ca源としてCaClを添加すれば、pH調整を行う必要がないが、Ca(OH)を用いた場合には更にHCl又はHSO等の酸を添加して系内のpHを6〜8程度に調整する必要がある。
【0020】
図1に示す方法は、Fを含む地下水やFを含む排水を予めCa塩を添加して沈殿処理を行ない、これをそのまま放流又は雑用水として再利用あるいは純水として回収等、多目的のため一次処理を行なったCa及びFを含む排水の処理等に有効である。
【0021】
図2に示す方法は、Caを含むがFをほとんど含まない通常の工水、水道水、あるいはCa塩を使用した排水処理水等のCa含有水と、IC製造工程から排出されるような、HF,NHF等のFとHNO等の酸を含み、Caを含まないF含有水とがそれぞれ分別されて排出される場合に好適な方法であり、この場合には、図2に示す如く、Ca含有水のみをカチオン交換塔2で処理し、F含有水はカチオン交換塔2に通水することなく、直接RO膜分離装置3で処理する。このようにすることにより、Ca含有水とF含有水とを混合して処理する場合に比べて、カチオン交換塔2の通水量が低減されるため、カチオン交換塔2を小型化することができる。
【0022】
図2に示す方法では、Ca含有水及びF含有水をそれぞれpH調整槽1A,1Bに導入して、前述の如く、RO膜分離装置3の通水条件であるpH5〜8にpH調整する。
【0023】
そして、F含有水はそのまま滞留槽7へ送られる。一方、Ca含有水はカチオン交換塔2に通水してCaを除去して第1処理水とされ、滞留槽7へ送られる。F含有水と第1処理水とが混合された水は、この滞留槽7からRO膜分離装置3に導入され、RO膜でF及びその他の塩類を除去して得られる透過水を純水(第2処理水)として回収する。
【0024】
このRO膜分離装置3の濃縮水とカチオン交換塔2の再生排液は、図1に示す方法と同様に、混合槽4に導入されて混合された後、凝集槽5で高分子凝集剤の添加を受けて凝集処理され、次いで沈殿槽6でCaFが沈殿分離され、分離水は処理水(第3処理水)として系外へ排出される。
【0025】
この方法においても、再生排液中のCaのみでは、濃縮水中のFをCaFとして十分に除去することができない場合には、別途CaClなどのCa源を混合槽4に添加する。Ca(OH)を使用する場合はHCl又はHSOでpH6〜8に調整する必要がある。これは混合槽で行なってもよいが、混合槽の次工程にpH調整槽を設置した方が運転管理は容易となる。
【0026】
【実施例】
以下に、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明する。
【0027】
実施例1
Ca及びFを含む下記水質の地下水を原水として図1に示す方法で処理を行った。
【0028】
原水水質
pH:6.2
Ca:12mg/L
F :6.5mg/L
このCa・F含有水を直接カチオン交換樹脂としてレバチットCNP−80(バイエル社製)を1.0L充填したカチオン交換塔2にSV20/hrで通水した。
【0029】
次いで、カチオン交換塔2の流出水(水質は表1に示す通り。)をRO膜分離装置3に導入し、透過水を純水として回収すると共に、濃縮水を混合槽4に送給した。このRO膜分離装置3は、RO膜としてポリアミド系材質のスパイラル型のものを用いたものであり、RO膜分離は水回収率80%で操作圧10〜15気圧の条件で行った。
【0030】
得られた純水及び濃縮水の水質は表1に示す通りであり、高純度の純水が得られた。
【0031】
カチオン交換塔2は10重量%NaCl水溶液により、4000BVに1回の頻度で再生レベル100g−NaCl/L−樹脂,SV5/hrの条件で再生処理した。再生により得られた表1に示す水質の再生排液は、混合槽4に送給した。
【0032】
混合槽4では、再生排液と濃縮水とを1:80の容量比で混合し、その後、CaCl300mg/L(as Ca)及び凝集槽5でポリマー(クリフロックPA367(栗田工業(株)製))を1mg/L添加した後、沈殿槽6でCaFを分離した。
【0033】
沈殿槽6の分離水の水質は表1に示す通りであり、放流可能な処理水が得られた。
【0034】
【表1】
Figure 0003622407
【0035】
実施例2
半導体工場の総合廃水処理設備から排出されるCaを含む下記水質の排水とエッチング工程から排出されるFを含む下記水質の排水を原水として図2に示す方法で処理を行った。
【0036】
Ca系原水水質
pH:9.5
Ca:60mg/L
F :0.1mg/L以下
F系原水水質
pH:3.1
F :32.6mg/L
Ca:0.1mg/L以下
このCa含有水及びF含有水をそれぞれpH調整槽1A,1BでHCl又はNaOHを添加してpH6.0に調整した後、Ca含有水はカチオン交換樹脂としてレバチットCNP−80(バイエル社製)を1.0L充填したカチオン交換塔2にSV20/hrで通水した。
【0037】
このカチオン交換塔2の流出水(水質は表2に示す通り。)とpH調整したF含有水を滞留槽7を経てRO膜分離装置3に導入し、透過水を純水として回収すると共に、濃縮水を混合槽4に送給した。滞留槽7へ流入するカチオン交換塔処理水とF含有水の比率は2:1であった。このRO膜分離装置3は、RO膜としてポリアミド系材質のスパイラル型のものを用いたものであり、RO膜分離は水回収率90%で操作圧10〜15気圧の条件で行った。
【0038】
得られた純水及び濃縮水の水質は表2に示す通りであり、高純度の純水が得られた。
【0039】
カチオン交換塔2は10重量%NaCl水溶液により、700BVに1回の頻度で再生レベル100g−NaCl/L−樹脂,SV5/hrの条件で再生処理した。再生により得られた表2に示す水質の再生排液は、混合槽4に送給した。
【0040】
混合槽4では、再生排液と濃縮水とを1:10の容量比で混合し、その後、凝集槽5でポリマー(クリフロックPA367(栗田工業(株)社製))を1mg/L添加した後、沈殿槽6でCaFを分離した。
【0041】
沈殿槽6の分離水の水質は表2に示す通りであり、放流可能な処理水が得られた。
【0042】
【表2】
Figure 0003622407
【0043】
【発明の効果】
以上詳述した通り、Caをカチオン交換樹脂で除去し、F、その他の塩類をRO膜で分離除去する本発明の水処理方法によれば、
▲1▼ CaFによるRO膜の閉塞がない。
▲2▼ 従来のイオン交換樹脂法に比べて、イオン交換樹脂の再生のための薬剤量は
大幅に低減される。
▲3▼ CaをCaCOとして沈殿分離した後、RO膜分離処理する従来法に比べて、CaCO汚泥発生がなく、しかも、RO膜の負荷の増大もないため、装置を小型化できる。
といった効果が奏され、Ca・F含有水或いは、Ca含有水及びF含有水を低コストにて、安定かつ効率的に処理することができる。
【0044】
しかもカチオン交換樹脂の再生排液とRO膜分離処理の濃縮水とを混合し、生成したCaFを分離するのみで、これらを放流可能な処理水にまで処理することができ、再生排液や濃縮水の処理も効率的に行える。
【図面の簡単な説明】
【図1】請求項1の水処理方法の実施の形態を示す系統図である。
【図2】請求項2の水処理方法の実施の形態を示す系統図である。
【符号の説明】
1,1A,1B pH調整槽
2 カチオン交換塔
3 RO膜分離装置
4 混合槽
5 凝集槽
6 沈殿槽
7 滞留槽

Claims (3)

  1. フッ化物イオン及びカルシウムイオンを含有する水を処理する方法において、
    該水をカチオン交換樹脂と接触させ、次いで逆浸透膜分離処理して透過水を第1処理水とする第1工程と、
    該カチオン交換樹脂の再生排液と該逆浸透膜分離処理の濃縮水とを混合してCaFを生成させ、このCaFを分離して分離水を第2処理水とする第2工程と
    を有することを特徴とする水処理方法。
  2. フッ化物イオンを含有するフッ化物含有水とカルシウムイオンを含有するカルシウム含有水とを処理する方法において、
    該Ca含有水をカチオン交換樹脂と接触させて第1処理水を得る第1工程と、
    該F含有水を逆浸透膜分離処理して透過水を第2処理水とする第2工程と、
    該カチオン交換樹脂の再生排液と該逆浸透膜分離処理の濃縮水とを混合してCaFを生成させ、このCaFを分離して分離水を第3処理水とする第3工程と
    を有することを特徴とする水処理方法。
  3. 請求項2の方法において、該第1処理水をF含有水と共に逆浸透膜分離処理することを特徴とする水処理方法。
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