JP4370487B2 - テープカセット - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は新規なテープカセットに関する。詳しくは、テープカセットの側面部の段差を小さくすると共にフロントリッドのスムーズな開閉動作を可能にする技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
テープカセットにおいて、記録の高密度化に伴い、不使用時においてテープ状記録媒体のカセットシェルから露出している部分をリッドと称する蓋体によって覆い、テープ状記録媒体に塵埃が付着したり、人の手指が触れて油脂等が付着したりするのを防止する技術がある。
【0003】
カセットシェルの前部に設けた前方及び上下に開口したマウス部の前部を横切るように位置したテープ状記録媒体の前側をフロントリッドで覆い、使用時には、フロントリッドをほぼ90度上方へ回動させて、テープ状記録媒体を露出させるようにしたものでは、マウス部の上側がフロントリッドによって塞がれるため、使用時にマウス部内に配置する部材が種々の制限を受けるという問題があるので、カセットシェルに前後方向に移動自在なスライダーを設け、該スライダーの前端部にフロントリッドを回動自在に支持し、開蓋時には、フロントリッドを上方へ回動すると共にスライダーを後方へ移動させて、マウス部の上方にフロントリッドが止まらないようにする技術がある(図26参照)。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、スライダーにフロントリッドを支持する場合、ただ単に、スライダーaをカセットシェルbに前後方向に移動自在に設け、該スライダーaの前端部にフロントリッドcを回動自在に設けただけであると、テープカセットdの前端部と後端部との横幅を同じにする、すなわち、フロントリッドcの横幅とカセットシェルbの後端部の横幅とを同じにするためには、少なくともフロントリッドcの側面部eの厚みの分だけはスライダーaの外面が内側に位置することになり、従って、カセットシェルbのうちスライダーaが摺動する部分と後端部fとの間に大きな段差gができてしまう。
【0005】
そして、このような段差gがあると、テープカセットdを記録再生装置の所定の装着位置に装着するためのホルダhに挿入する際に、挿入姿勢が少しでも傾くと上記段差gがホルダhの入り口iに引っかかる等の事故が生じる惧がある(図26参照)。
【0006】
そこで、本発明は、テープカセットの側面部の段差を小さくすると共にフロントリッドのスムーズな開閉動作を可能にすることを課題とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明テープカセットは、上記した課題を解決するために、カセットシェルに前後方向に移動自在なスライダーを設け、スライダーのカセットシェルの側面に沿う側面部が前端部のリッド支持部と該リッド支持部より外側に位置した主面部とを有し、フロントリッドはテープ状記録媒体の前面を覆う前面部と該前面部の両端から後方へ突出した側面部とを有し、上記側面部が上記スライダーのリッド支持部に回動自在に支持され、スライダーの主面部の前端部とフロントリッドの側面部とには左右方向で互いに重なり合うオーバーラップ部を有し、フロントリッドの側面部の後縁部は回動支点軸を中心とした円弧状に形成され、側面部の外面のうち後縁部に対応した部分に円弧状を為す浅い凹部が形成され、該凹部が形成された部分がフロントリッドのオーバーラップ部とされ、スライダーのオーバーラップ部が上記フロントリッドのオーバーラップ部を摺動するように位置するようにしたものである。
【0008】
従って、本発明テープカセットにあっては、スライダーの主面部はリッド支持部より外側に位置しているので、カセットシェルの側面のうち該主面部がスライドする部分がより外側に位置することになり、その分後端部との間にできる段差が小さくなる。また、スライダーの主面部の前端部とフロントリッドの側面部とに左右で互いに重なり合うオーバーラップ部が設けられるので、フロントリッドの回動中フロントリッドのオーバーラップ部がスライダーのオーバーラップ部に案内されるようになり、フロントリッドの開閉動作が安定してスムーズに行われるようになる。また、フロントリッドの側面部の外面のうち後縁部に対応した部分に円弧状を為す浅い凹部が形成され、該凹部が形成された部分がフロントリッドのオーバーラップ部とされ、スライダーのオーバーラップ部がフロントリッドのオーバーラップ部を摺動するように位置するので、フロントリッドの側面部の外面とスライダーの主面部の外面とを同一の平面内に位置させることができ、カセットテープの側面部に無用な凹凸を無くすと共に見栄えを良好にすることができる。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明テープカセットの実施の形態について添付図面を参照して説明する。
【0010】
カセットテープ10は、薄い箱状をしたカセットシェル20内にテープ状記録媒体である磁気テープ30を巻装したテープリール40、50が回転可能に収納され、カセットシェル20の前面に沿って位置する磁気テープ30の前面側を覆うフロントリッド60及び該磁気テープ30の後側を覆うバックリッド70を備え、そして、上記バックリッド70はカセットシェル20に前後方向に移動自在に支持されたスライダー80に一体に形成され、また、上記フロントリッド60は上記スライダー80の前端部に回動自在に支持されている。
【0011】
カセットシェル20は薄い箱状を為し、プラスチックスで形成されていて、全体が又は上方からテープリール40、50の全体若しくは一部が見える部分が透明にされている。
【0012】
カセットシェル20の前部にはマウス部と称される大きな凹部21が形成されている。該マウス部21は前方並びに上方及び下方に開口されている。
【0013】
該マウス部21の奥面のうちカセットシェル20内に配置されたテープリール40、50の最大外径部に対向した部分を避けた位置に上下方向に延びる凹条21a、21a、・・・が形成されている。
【0014】
また、カセットシェル20のマウス部21の両脇の部分は角筒を寝かせた如き形状をしたテープ引出部22、22とされ、該テープ引出部22、22の前端22a、22aが開口している。そして、磁気テープ30はテープ引出部22、22の開口22a、22aから外部に引き出され、上記マウス部21の前面を横切るように開口22a、22a間に張り渡されている。
【0015】
カセットシェル20の底面壁には左右に並んで2つのリール台挿入口23、23が形成されており、該リール台挿入口23、23を通して上記テープリール40、50の図示しない係合穴が下方に臨まされており、テープカセット10が図示しない記録再生装置に装着されると、記録再生装置に設けられたリール台が上記リール台挿入口23、23からカセットシェル20内に挿入されて、リール台に設けられたリール係合軸がテープリール40、50の係合穴に係合されると共にテープリール40、50がリール台に載置される。
【0016】
カセットシェル20内の後部には2つのリールロック部材90、90が配置され、不使用時には該リールロック部材90、90の爪91、91がテープリール40、50の下フランジに形成された係合突起41、41、・・・、51、51、・・・に係合してテープリール40、50が妄りに回転してしまわないようにロックしている。なお、リールロック部材90、90は図示しないバネによってテープリール40、50をロックする方向に付勢されている。そして、テープカセット10が図示しない記録再生装置に装着されると、記録再生装置に設けられたロック解除ピンがカセットシェル20の底面に形成された挿入口24から挿入されてリールロック部材90、90をロックを解除する方向に回動させて、テープリール40、50へのロックが解除される。
【0017】
カセットシェル20の上記マウス部21の奥面の左右方向における中央の内側には遮光筒25が形成され、該遮光筒25は下面に開口25aが形成され、且つ、左右に切欠25b、25bが形成されている。
【0018】
カセットシェル20の側面壁の中央からやや前端に寄った位置には透光孔25c、25cが形成されており、該透光孔25c、25cから上記遮光筒25の切欠25b、25bを見通すことができるようになっている。
【0019】
上記テープ引出部22、22の前端面のうち外側に位置する部分22b、22bのほぼ上半部には前方へ突出したカム部26、26が形成されている。そして、該前端面22b、22bは他の3つの前端面よりやや後方に引っ込んでおり、該前端面22b、22bと上下の前端面22c、22c、22d、22dとはテープカセット10が図示しないカセットホルダに挿入されるときにカセットホルダに設けられたストッパーに当接してテープカセット10のカセットホルダへの挿入限度を規定する前進ストッパーとされている。
【0020】
さらに、テープ引出部22、22の内側の内面のうち開口22a、22aと接した位置には半円柱状をしたカセット内ガイド22e、22eが形成されている。そして、不使用時における磁気テープ30は上記カセット内ガイド22e、22eに巻き付けられた状態でテープ引出部22、22間に張り渡されている。
【0021】
カセットシェル20の一方、すなわち、向かって右側の側面のほぼ後半部には下端寄りの位置に前後方向に延びる下向きの段差部27aが形成され、左側の側面の後半部の下端寄りの位置にも下向きの段差部27bが形成され、これら段差部27a、27bは内端部に溝が形成された状態になっている。
【0022】
カセットシェル20の側面のほぼ前半の部分は後半の部分より内側に引っ込んだ状態となっており、この引っ込み度合いは左側の方が右側の方より大きくされ、左側の前半部の上端には外方へ突出した庇状部分28aが形成されている。
【0023】
また、両側面の上端寄りの位置に前端近くから透光孔25c、25cのところまで延びる摺動溝28b、28bが形成されている。
【0024】
さらに、カセットシェル20の後端部には左右及び上方へ突出した突部29が形成され、該突部29の左右両側面には上端寄りの位置から下端にかけて溝29a、29aが形成されている。また、該突部29、29の下端からはやや前方まで延びる突条29b、29bが形成されており、該突条29b、29bの上端と上記段差部27a、27bとの間には極僅かな間隙が形成されている。
【0025】
上記したカセットシェル20は上シェル100と下シェル110とが上下で突き合わせられて形成される。そして、上記した各部はそれぞれ上シェル100と下シェル110とに分担して又は上シェル100と下シェル110とが結合されることによって形成される。
【0026】
上シェル100には、カセットシェル20の上面の全部を為す上面部101と、カセットシェル20の後面の上半分を為す後面部102と、カセットシェル20の側面のうちほぼ後半部分の下端部を除くほとんどの部分を為す側面後部103、103と、カセットシェル20の側面の残りの部分の上端の部分を為す側面前部104l(左)、104r(右)と、カセットシェルの前面、すなわち、マウス部21の奥面の中央部を除く両側部の下端部を除く部分を為す前面部105、105とが一体に形成されて成る。なお、側面前部104l、104rは側面後部103、103より僅かに内側に位置しており、さらに左側の側面前部104lは上面部101の側縁からやや内側に引っ込んだ位置に形成されそれによって、庇状部分28aが形成される。
【0027】
下シェル110は、カセットシェル20の底面の全部を為す底面部111と、カセットシェル20の後面の下半分を為す後面部112と、カセットシェル20の側面のうちほぼ後半部分の下端部を為す側面後部113、113と、カセットシェル20の側面の残りの部分の上端部を除く部分を為す側面前部114、114と、カセットシェル20の前面、すなわち、マウス部21の奥面の中央部を為す前面中央部115と、マウス部21の両側部の下端部分を為す前面側部116、116及びテープ引出部22、22の内側側面部を為す内側側面部117、117とが一体に形成されて成る。
【0028】
なお、側面後部113、113のうち突部29の下端部に対応する部分を除いた部分113a、113aは上シェル100の側面後部103、103より内側に位置して該側面後部103、103との間に僅かな間隔の隙間が形成され、該隙間の下端部が上記段差部27a、27bの内端部の溝を為すようになっている。
【0029】
そして、側面前部114、114の後端部には上端に開口する切欠114a、114aが形成され、さらに、側面前部114、114の外面のうち上端寄りの部分の前端部を除く部分に浅い凹部114b、114bが形成され、さらにまた、該凹部114b、114bの上端部の前端部を除く部分に浅い凹部114c、114cが形成されている。
【0030】
そして、上記したマウス部21の奥面の凹条21a、21a、・・・は上シェル100の前面部105、105と下シェル110の前面側部116、116に形成されている。また、リール台挿入口23、23、挿入口24及び遮光筒25は下シェル110の底面部111に形成され、カム部26、26は下シェル110の側面前部114、114の前端部に形成される。
【0031】
さらに、上記段差部27a、27bは上シェル100の側面後部103、103の下端によって形成されている。
【0032】
さらにまた、上記摺動溝28b、28bは上シェル100の側面前部104l、104rと下シェル110の側面前部114、114の上端部に形成された凹部114b、114bとよって形成される。また、上シェル100の側面前部104l、104rと下シェル110の側面前部114、114の上端部との間には凹部114c、114cによって僅かな隙間が形成されている。
【0033】
そして、上記突部29は上シェル100の上面部101、側面後部103、103及び下シェル110の側面後部113、113に亘って形成されている。
【0034】
また、上記透光孔25c、25cは、下シェル110の側面前部114、114に形成された切欠114a、114aの上端が上シェル100によって塞がれて形成される。
【0035】
上記した上シェル100と下シェル110とが上下で突き合わされ、ネジ120、120、・・・によって互いに結合されることによってカセットシェル20が形成される。
【0036】
スライダー80は薄い金属板、できれば、導電性を有する金属板で形成される。スライダー80は左右方向に長い板状をした上面部81と該上面部81の左右両側縁から下方へ突出した側面部とが一体に形成されて成る。側面部は、前後方向における中央よりやや前寄りの部分から後端までの主面部82、82と、主面部82、82より前側の部分のリッド支持部83、83とから成る。
【0037】
リッド支持部83、83は主面部よりやや内側に位置しており、上下幅は主面部82、82のほぼ半分になっている。そして、リッド支持部83、83には下方へ開口したほぼ半円状の軸保持部83a、83aが形成され、また、リッド支持部83、83の後端部下縁には内方へ突出した摺動突起83b、83cが形成されている。これら摺動突起83b、83cは、向かって左側のもの83bが右側のもの83cより長く形成され、各摺動突起の先端部83b′、83c′は上方へ屈曲されている。
【0038】
主面部82、82の下端部が内側に折り返されて断面U字状を為す摺動係合部82a、82aが形成される。また、主面部82、82の前端縁の下端部からは前方へ且つやや下方へ向けてオーバーラップ部82b、82bが突設されている。
【0039】
上記スライダー80にバックリッド70が一体に形成されている。バックリッド70はその上端縁がスライダー80の上面部81の前縁に一体に連結されている。バックリッド70は、垂直に延び左右の幅が上記マウス部21の左右の幅に等しい主部71と、該主部71の下端縁から前方へ且つやや下方へ向けて延びる下端閉塞部72とが一体に形成されて成り、下端閉塞部72は裏側、すなわち、後方から折り返されている。該折返し部72aが形成されることによって、下端閉塞部72の下端には鋭いエッジができることがない。このように鋭いエッジが生じないことは、バックリッド70によって、磁気テープ30や、記録再生装置側の部材、例えば、ピンチローラ等を傷付けることが防止される。
【0040】
スライダー80は以下のようにしてカセットシェル20に前後方向にスライド自在に取着される。
【0041】
スライダー80の上面部81を上シェル100の上面部101の前端部に載せた状態で、スライダー80を後方へスライドさせていく。スライダー80の摺動係合部82a、82aが上シェル100の側面後部103、103の下端縁に摺動自在に係合する。また、スライダー80の摺動突起83b、83cは上シェル100の側面前部104l、104rの下側に位置し、さらに上方に屈曲した先端部83b′、83c′が上記側面前部104l、104rの内面に係合した状態となる。
【0042】
そこで、下シェル110と上シェル100とを結合すると、上シェル100の側面前部104l、104rと下シェル110の凹部114b、114bとによって形成される前後方向に長い摺動溝28b、28bの上端部、すなわち、凹部114c、114cの下端部に相当する位置に内スライダー80の摺動突起83b、83cが摺動自在に位置し、これら摺動突起83b,83cの上方に屈曲した先端部83b′、83c′は上シェル100の側面前部104l、104rと下シェル110の凹部114c、114cとの間にできる間隙内に位置する。これによって、スライダー80はカセットシェル20に前後方向に摺動自在に取着される。そして、スライダー80の移動範囲の後端はスライダー80の上面部81の後端がカセットシェル20の突部29と当接した位置であり、前端はスライダー80に支持されるフロントリッド60の後述する回動支点軸が摺動溝28b、28bの前端に当接する位置である。
【0043】
上記したスライダー80の前端部に設けられたリッド支持部83、83にフロントリッド60が回動自在に支持される。
【0044】
フロントリッド60は、ほぼ左右方向に長い帯状をした前面部61と、該前面部61の左右両端縁から後方へ突出した側面部62、62とが一体に形成されて成る。前面部61の上端部61aは上方へゆくに従って後方へ変位するように緩やかに湾曲している。
【0045】
側面部62、62の内面の前面部61との接合部に接した部分に厚肉部63、63が形成され、該厚肉部63、63に側方から見て円弧面を為す規制面64、64が形成される。また、側面部62、62の内面のほぼ中央部で上記規制面64、64に対向した部分に回動支点軸65、66が突設されている。そして、該回動支点軸65、66の基部には環状の溝65a、66aが形成されている。また、向かって左側の回動支点軸65は、環状の溝65aに続いて大径部65bと小径部65cがこの順で連設されており、全体の長さは向かって右側の回動支点軸66の長さより長くなっている。そして、上記規制面64、64は回動支点軸65、66を中心とする円弧面に形成されている。
【0046】
側面部62、62の後縁部62a、62aは上記回動支点軸65、66を中心とした円弧状に形成され、そして、側面62の外面のうち該後縁62a、62aに対応した部分に円弧状を為す浅い凹部62b、62bが形成され、該凹部62b、62bが形成された部分62c、62cがオーバーラップ部とされている。
【0047】
左側の側面部62の内面の下端部に下方に開口した凹部62dが形成されている。
【0048】
向かって左側の側面部62の内面の回動支点軸65から後ろ下方に離間した位置に支持軸67が突設されている。
【0049】
さらに、側面部62、62の上縁の後端部寄りの部分には透光切欠68、68が形成されている。
【0050】
さらにまた、前面部61の向かって両端の下端寄りの位置には前方と側方に開口した係合凹部61b、61bが形成され、また、前面部61の下縁の左端近くに挿通切欠61cが形成されている。
【0051】
そして、フロントリッド60の回動支点軸65、66の環状の溝65a、66aがスライダー80の軸保持部83a、83aに回転可能に係合され、これによって、フロントリッド60はスライダー80の前端部のリッド支持部83、83に回動可能に支持される。フロントリッド60の側面部の凹部62b、62b内にスライダー80の主面部82、82に形成されたオーバーラップ部82b、82bが摺動自在に位置しており、これによって、スライダー80の主面部82の外面とフロントリッド60の側面部62、62の外面とは同一平面内に位置した状態、いわゆる、面一の状態となる。
【0052】
フロントリッド60の向かって左側の側面部62の内側にはリッドロック部材130が取着される。リッドロック部材130は全体に細長く形成され、中央部に支持孔131が形成されている。そして、該支持孔131にフロントリッド60の向かって左側の側面部62に形成された支持軸67が挿通され、これによって該側面部62に回動自在に支持される。
【0053】
リッドロック部材130が向かって左側から見て右下がりの姿勢であるとき(図14参照)に、上端部にほぼ前方へ向かって突出した係止爪132が形成され、該係止爪132が上記スライダー80の向かって左側のリッド支持部83に形成された摺動突起83bの上面に後方から係止し得るようになっている。支持孔131と下端との間の部分で上記側面部62に対向した面と反対側の面を切り欠いて形成したバネ掛け面133が形成されている。さらに、下端面の前側の部分134は円弧面となっている。さらにまた、下端寄りの部分の左側面、すなわち、フロントリッド60の側面部62に対向した面にロックピン135が突設されている。そして、該ロックピン135はフロントリッド60の左側の側面部62に形成された凹部62d内に位置している。
【0054】
捩じりコイルバネ140が設けられることによって、フロントリッド60及びリッドロック部材130がそれぞれ所定の方向に付勢される。
【0055】
捩じりコイルバネ140のコイル部141はフロントリッド60の左側側面部62に形成された回動支点軸65の大径部65bに外嵌され、一方の腕片142はスライダー80の左側のリッド支持部83に形成された摺動突起83bの上面に前側から弾接され、また、他方の腕片143はリッドロック部材130のバネ掛け面133に弾接されている(図14参照)。これによって、リッドロック部材130は左側から見て時計回り方向に付勢され、また、フロントリッド60はリッドロック部材130及び支持軸67を介して左側から見て時計回り方向、すなわち、前面部61によってマウス部21の前側を閉塞する閉塞方向に付勢される。
【0056】
このように、リッドロック部材130及び捩じりコイルバネ140はフロントリッド60の側面部62の内側に位置されるので、リッドロック部材130が回転してもリッドロック部材130や捩じりコイルバネ140が外部に露呈することが無く、従って、スライダー80をカセットシェル20から取り外さない限り、リッドロック部材130や捩じりコイルバネ140を指で触ったり、取り外すことは不可能である。また、フロントリッド60が回動しても、リッドロック部材130が表に露呈されることはない。さらに、リッドロック部材130はフロントリッド60が開くのをロックしているが、フロントリッド60とスライダー80を捩じりコイルバネ140の力で押さえていることにもなるので、フロントリッド60及びスライダー80のガタも吸収している。
【0057】
下シェル110の向かって右後端部に形成されたメモリ収容溝118にはカセット内メモリ150が収納される。該カセット内メモリ150は、横長矩形をした基板151の中央部にメモリ素子152が搭載され、基板151の表裏両面に導電パターンによって渦巻き状に通信用アンテナ153が形成されて成るものである。該カセット内メモリ150はアンテナ153を介して外部と通信され、磁気テープの種類、記録内容等のデータが記録されるようになっている。
【0058】
上シェル100の上面部101の下面にはリール押えバネ160、160の一端部が固定されており、該リール押えバネ160、160の他端部によってテープリール40、50の上端中央を押圧し、リール40、50を下シェル110の底面部111に押さえつけておくようになっている。
【0059】
上記したテープカセット10の組立は、以下に示すように、まず、下シェル110に各部材を組み込んだ下シェルユニット、上シェル100に各部材を組み込んだ上シェルユニット及びスライダー80にリッドロック部材130等を組み込んだフロントリッド60を支持させたスライダーユニットの3つのユニットを形成し、次いで、スライダーユニットを上シェルユニットに組み込み、最後に、スライダーユニットを組み込んだ上シェルユニットと下シェルユニットとを結合する、という手順によって為される。
【0060】
下シェルユニットは、下シェル110に磁気テープ30を巻装したテープリール40、50、リールロック部材90、90、カセット内メモリ150等を組み込んで形成する(図3、図7参照)。上シェルユニットは、上シェル100にリール押えバネ160、160を組み込んで形成する(図4参照)。そして、スライダーユニットは、リッドロック部材130及び捩じりコイルバネ140を組み込んだフロントリッド60をスライダー80に支持して形成する(図5参照)。
【0061】
上記したスライダーユニットを、フロントリッド60を上方へ回動させた状態で、上シェルユニットに組み込む。すなわち、スライダー80の上面部81を上シェル100の上面部101の前端部に載せた状態で、スライダー80を後方へスライドさせていく。これによって、スライダー80の摺動係合部82a、82aが上シェル100の側面後部103、103の下端縁に摺動自在に係合する(図20参照)。また、スライダー80の摺動突起83b、83cは上シェル100の側面前部104l、104rの下側に位置し、且つ、摺動突起83b、83cの上方へ屈曲した先端部83b′、83c′が側面前部104l、104rの内面に係合した状態となる(図6、図7参照)。図7に示した状態がフロントリッド60をスライダー80に組み込んだスライダーユニットを上シェルユニットに組み込んだ状態である。
【0062】
そこで、スライダーユニットを組み込んだ上シェルユニットを下シェルユニットと結合する。すなわち、上シェルユニットの上シェル100の各部の下端と下シェルユニットの下シェル110の各部の上端とを上下で突き合わせ、この状態でスライダー80を前端までスライドさせ、且つ、フロントリッド60を下方へと回動する。これによって、フロントリッド60の向かって左側の回動支点軸65の小径部65cはカセットシェル20の向かって左側の側面に形成された摺動溝28bに摺動自在に係合され、右側の回動支点軸66はカセットシェル20の右側側面に形成された摺動溝28bに摺動自在に係合される。従って、フロントリッド60の回動支点軸65、66はそれぞれ摺動溝28b、28bによって上下方向への移動を制限されながら前後方向に移動できるようになっている。
【0063】
そこで、上下のシェル100、110をネジ120、120、・・・によって結合する(図7参照)。これによって、テープカセット10が完成する(図1参照)。
【0064】
このように、テープカセット10にあっては、全体の構成部品を、上記したように、下シェルユニット、上シェルユニット及びスライダーユニットの3つの部分にあたかも3つの部品のようにまとめておいて、これらを上記したように順次組み立てるので、組立途中における部品管理が容易であり、且つ、組立も簡単に行うことができる。
【0065】
そして、不使用状態において、磁気テープ30はその前後がフロントリッド60とバックリッド70とによって覆われ、下側はバックリッド70の下端閉塞部72で覆われ、上側はフロントリッド60の主部61の上端部61aで覆われる。従って、磁気テープ30に塵埃が付着するのを防止することができ、また、磁気テープ30に異物が触れたり、磁気テープ30を指で触ってしまったりということを防止することができる。また、テープ引出部22、22の前端面、すなわち、22b、22b、22c、22c、22d、22d等もフロントリッド60の前面部61によって覆われ、見栄えが良好になる。そして、リッドロック部材130の係止爪132がスライダー80の摺動突起83bの上面に後側から係合し、これによって、フロントリッド60が図1に示す閉塞位置にロックされる。
【0066】
なお、図示は省略したが、カセットシェル20の背面には誤消去防止タグが設けられ、該誤消去防止タグがカセットシェル20の高さ方向に移動して記録可能状態又は記録不可状態を現出する。
【0067】
さらにまた、スライダー80のリッド支持部83、83は主面部82、82より内側に引っ込んで位置しているので、該リッド支持部83、83に支持されたフロントリッド60の側面部62、62の外面とスライダー80の主面部82、82の外面とがほぼ同一の平面内に位置し、そのため、スライダー80の主面部82、82が接するカセットシェル20の側面のほぼ後半部、すなわち、上シェル100の側面後部103、103のうち後端部を除く面と突部29との間の段差170、170が極僅かなもの、すなわち、スライダー80の主面部82、82の板厚に相当するだけのものとなる。
【0068】
次ぎに、上記したテープカセット10の使用について説明する。
【0069】
テープカセット10を保持し、そして、該テープカセット10を記録再生装置の所定の位置に装着する図示しないカセットホルダのテープカセット10の両端部に対応した位置に板状の支持部材180l、180rが立設され、該支持部材180l、180rにリッドオープナー190、190とリッド押圧突起200、200が設けられる。
【0070】
リッドオープナー190、190は長い腕状を為し、その上端部が支持部材180l、180rの内側の面の上端部に回動自在に支持される。リッドオープナー190、190の回動端部の内面には係合突起191、191が突設されている。捩じりコイルバネ210、210のコイル部211、211がリッドオープナー190、190の回動軸192、192に外嵌され、一方の腕212、212が支持部材180l、180rの一部を切り起こし状に内側に突出させて形成したバネ掛け片181、181に上方から弾接し、他方の腕213、213がリッドオープナー190、190の前縁のうち回動支点寄りの位置に弾接され、これによって、リッドオープナー190、190は左方から見て(図14参照)時計回り方向に付勢される。そして、リッドオープナー190、190は上端寄りの部分がバネ掛け片181、181に当接することによって回動端が下端に位置する垂直な姿勢に保持される。
【0071】
リッド押圧突起200、200は支持部材180l、180rの上端部に内側に突出するように形成されている。
【0072】
左側の支持部材180lの基端部の向かって右側の側面に近接してロック解除カム220が設けられている。該ロック解除カム220はテープカセット10が挿入されてくる側の端面が傾斜部221となっている。そして、このロック解除カム220の左右幅はフロントリッド60の前面部61に形成された挿通切欠61cの幅よりやや小さく形成されている。
【0073】
そこで、テープカセット10をカセットホルダに前面側、すなわち、フロントリッド60の側から図14の矢印Aの方向に挿入していくと、テープカセット10の前端部が支持部材180lと180rとの間に入っていく。また、ロック解除カム220はフロントリッド60の前面部61に形成された挿通切欠61cからフロントリッド60の内側に相対的に挿入されていく。この時、上記したように、カセットシェル20の後端部に形成される前向きの段差170、170は極小さなものであるので、この段差170、170がカセットホルダの入口等に引っかかってしまうようなことがない。
【0074】
そして、リッドオープナー190、190の係合突起191、191がフロントリッド60の係合凹部61b、61bに係合し、また、ロック解除カム220の傾斜部221をリッドロック部材130の下端円弧面134が滑り上がり、これによって、リッドロック部材130が図16で見て反時計回り方向に回動して、係止爪132のスライダー80の摺動突起83bへの係合が外れる。従って、フロントリッド60の閉塞位置へのロックが解除される。
【0075】
そこからさらに、テープカセット10がカセットホルダ内に挿入されると、すなわち、図中矢印A方向に移動されると、リッドオープナー190、190は回動端に設けた係合突起191、191が矢印A方向に押されるので、図17で見て反時計回り方向、すなわち、図中矢印B方向に回動され、従って、上記係合突起191、191が上方へと移動し、該係合突起191、191と係合凹部61b、61bが係合しているフロントリッド60が反時計回り方向、すなわち、図中矢印B方向へと回動していく。
【0076】
なお、スライダー80は、フロントリッド60を介してリッドオープナー190、190の係合突起191、191によってカセットシェル20に対して相対的に後方へ移動する力を受けるが、フロントリッド60の規制面64、64がカセットシェル20のカム部26、26と当接していることによって、カセットシェル20に対して後方へ移動することができず、フロントリッド60のみが上方へ回動していく(図17参照)。
【0077】
また、この図17に示す状態においては、リッドロック部材130のロックピン135はフロントリッド60の左側の側面部62に形成された凹部62dの後側の内側面に当接しており、この状態からフロントリッド60がさらに矢印B方向に回動するのに伴って、ロックピン135が凹部62dの後側内側面によって矢印B方向に引っ張られ、これによって、リッドロック部材130も矢印B方向に回動していくことになる。
【0078】
そして、フロントリッド60が最初の状態(図14に示す閉塞状態)から矢印B方向へ90度回動すると、フロントリッド60の規制面64、64とカセットシェル20のカム部26、26との係合が外れ(図18参照)、スライダー80がカセットシェル20に対して後方へ移動できる状態となる。また、この図18に示した状態で、支持部材180l、180rに形成したリッド押圧突起200、200はフロントリッド60の前面部61の上端に後方から近接した状態となる。なお、フロントリッド60の側面部62、62のオーバーラップ部62c、62cの外側にスライダー80のオーバーラップ部82b、82bが位置しているので、フロントリッド60の回動中、側面部62、62の後縁部であるオーバーラップ部62c、62cの外側がスライダー80のオーバーラップ部82b、82bによって支えられ、これによってフロントリッド60の回動が安定してスムーズに為される。
【0079】
図18の状態からさらにテープカセット10をカセットホルダの奥へ、すなわち、矢印A方向へ移動させると、フロントリッド60は係合凹部61b、61bにリッドオープナー190、190の係合突起191、191が係合していることにより、フロントリッド60及び該フロントリッド60が支持されているスライダー80は矢印A方向には移動することができず、その場所に置いて行かれる形になるので、スライダー80がフロントリッド60と共にカセットシェル20に対して相対的に後方へ移動することになる。もちろん、バックリッド70もカセットシェル20に対して相対的に後方へ移動する。バックリッド70は真っ直ぐ後方へ移動して磁気テープ30から離間するので、従来のバックリッドをカムを利用して斜め上後方へ移動させて磁気テープから離間させるものに比較して、磁気テープ30を巻き込みにくく、バックリッド70による巻き込みによって磁気テープ30に損傷を与える惧がない。また、バックリッド70を導電性を有する金属板によってスライダー80と一体に形成したあるので、バックリッド70が帯電し難く、静電気によって磁気テープ30を巻き込んでしまう惧がない。そのため、所定の装着位置への装着時に、磁気テープ30がガイド等に乗り上げてしまう等の事故を防止することができる。
【0080】
そして、前進ストッパーであるテープ引出部22、22の各前端面22b、22b、22c、22c、22d、22dがカセットホルダーに設けられた図示しないストッパーに当接したところが、テープカセット10のカセットホルダへの挿入完了位置である(図19参照)。
【0081】
該挿入完了位置にある状態では、バックリッド70はマウス部21の一番奥まで後退しており、また、フロントリッド60の側面部62、62に形成した透光切欠68、68がカセットシェル20の側面に形成された透光孔25c、25cと一致する。なお、不使用時にあっては、カセットシェル20の透光孔25c、25cはスライダー80の主面部82、82によって閉塞されていて、該透光孔25c、25cから塵埃等の異物がカセットシェル内に侵入しないようになっている。
【0082】
テープカセット10はカセットホルダから浮き上がらないように、下方へ押さえ付けておくことが必要であるが、この場合、金属製であるスライダー80を介してテープカセット10を下方へと押さえ付けておくようにすると良い。この場合、スライダー80を押圧する部材を導電性を有する材料で形成し、該部材をカセットホルダのグランド部材と接触させておくことによってバックリッド70の帯電を防止することができる。
【0083】
なお、フロントリッド60はカセットシェル20の上面に弾接するため、捩じりコイルバネ140の弾発力がカセットシェル20をカセットホルダから浮き上がらせるように作用することはない。すなわち、従来、フロントリッドの開蓋状態は記録再生装置側に設けられた開蓋部材によって保持されていたため、フロントリッドを閉蓋方向へ付勢しているバネの弾発力が上記開蓋部材に作用し、その反力がカセットシェルをカセットホルダから浮き上がらせるように作用していたが、上記テープカセット10にあっては、捩じりコイルバネ140の弾発力はフロントリッド60をカセットシェル20の上面に弾接させるように作用するだけであるからである。
【0084】
上記したように、リッド60、70を開蓋位置へ移動させるために、回動するアームであるリッドオープナー190、190という簡単な構造を用いながら、カセットシェル20にカム部26、26を形成し、該カム部26、26をフロントリッド60の規制面64、64と係合させる構造を採ることによって、先ず、フロントリッド60が開蓋位置まで回動し、次いで、スライダー80が後退してバックリッド70が開蓋位置まで移動するという、順次動作を行わせることができる。
【0085】
テープカセット10が図示しないカセットホルダに上記した挿入完了位置まで挿入されると、カセットホルダが所定の位置まで移動(通常は下降)して、テープカセット10を所定の装着位置に装着する。
【0086】
テープカセット10が所定の装着位置に装着されると、図示しないリール台がリール台挿入口23、23からカセットシェル20内に侵入してテープリール40、50がリール台に載置されると共にリール台に設けたリール係合軸がテープリール40、50の係合穴に係合し、マウス部21に回転ヘッドドラム230、図示しない引出ガイド、ピンチローラ等が挿入される。また、遮光筒25内には磁気テープ30の始端及び終端を検出するためのセンサの発光部が挿入され、該センサの受光部がフロントリッド60の上記透光切欠68、68(カセットシェル20の透光孔25c、25cと重なっている。)に近接して配置される。これによって、上記センサの発光部と受光部とが磁気テープ30を挟んで対向される。
【0087】
それから、引出ガイドやピンチローラ等が移動して磁気テープ30をカセットシェル20から引き出して、磁気テープ30を回転ヘッドドラム230に所定の巻き付け角で巻き付けると共に所定のテープパスを形成する。
【0088】
このテープカセット10にあっては、フロントリッドを単に上方へ回動させて開蓋するもの及び開蓋時にバックリッドをマウス部の上側に収納するタイプのものと違ってマウス部21の上方が開放される。従って、回転ヘッドドラム230をマウス部21の上面から突出するように位置させる(図21参照)ことができるので、例えば、回転ヘッドドラム230の傾斜角を大きくして記録トラックのアジマス角を大きくすることができ、これによって記録トラック間のクロストークを少なくして記録密度を上げることができる。
【0089】
磁気テープ30に対する記録又は再生が終了すると、引出ガイドやピンチローラ等の部材がマウス部内に移動し、一方のテープリール40に余分な磁気テープ30が巻き取られる。
【0090】
それから、カセットホルダが上記挿入完了位置まで戻され、次いで、テープカセット10が取り出し方向、すなわち、図中矢印C方向に移動される(図24参照)。
【0091】
テープカセット10が矢印C方向に移動されると、支持部材180l、180rに設けたリッド押圧突起200、200がフロントリッド60の前面部61の上端部の両側を相対的に矢印C方向と反対の方向に押圧し、これによって、フロントリッド60及びスライダー80(バックリッド70も一緒)はカセットシェル20の前端方向に向かって移動せしめられる。
【0092】
スライダー80が移動範囲の前端に達すると(図25参照)、フロントリッド60の厚肉部63、63の下端部63a、63aがカセットシェル20の上面から外れるので、フロントリッド60は下方へ回動し得る状態となり、リッドロック部材130介して加えられる捩じりコイルバネ140の付勢力によって、フロントリッド60は下方へ回動し、閉蓋位置に達し、前進してきているバックリッド70と協同して磁気テープ30を覆う。そして、リッドロック部材130の係止爪132がスライダー80の摺動突起83bの上面に係合する。そして、テープカセット10は図示しないカセットホルダから取り出される。
【0093】
なお、カセットシェル20の後端部に形成された突部29は、側方へはスライダー80の側面より外側に位置するように突出しており、テープカセットのオートチェンジャーを使用する場合に、チェンジャーによる掴み部となる。
【0094】
上記テープカセット10にあっては、スライダー80のリッド支持部83、83は主面部82、82より内側に引っ込んで位置しているので、該リッド支持部83、83に支持されたフロントリッド60の側面部62、62の外面とスライダー80の主面部82、82の外面とがほぼ同一の平面内に位置し、そのため、スライダー80の主面部82、82が接するカセットシェル20の側面のほぼ後半部、すなわち、上シェル100の側面後部103、103のうち後端部を除く面と突部29との間の段差170、170が極僅かなもの、すなわち、スライダー80の主面部82、82の板厚に相当するだけのものとなる。このように、段差170、170が極小さなものとなるので、ホルダの入口等に引っかかってしまうようなことがない。
【0095】
また、フロントリッド60の側面部62、62のオーバーラップ部62c、62cの外側にスライダー80のオーバーラップ部82b、82bが位置しているので、フロントリッド60の回動中、側面部62、62の後縁部であるオーバーラップ部62c、62cがスライダー80のオーバーラップ部82b、82bによって支えられ、これによってフロントリッド60の回動が安定してスムーズに為される。
【0096】
なお、上記した実施の形態において示した各部の形状乃至構造は、何れも本発明を実施するに際して行う具体化のほんの一例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されることがあってはならないものである。
【0097】
【発明の効果】
以上に記載したところから明らかなように、本発明テープカセットは、テープ状記録媒体を巻装したテープリールを内部に収納したカセットシェルの前部に前方及び上下に開放されたマウス部を有し、上記テープ状記録媒体の一部が上記マウス部の前端を横切るように位置されると共に、テープ状記録媒体の前側を覆うフロントリッドを有するテープカセットであって、カセットシェルに前後方向に移動自在なスライダーを設け、スライダーのカセットシェルの側面に沿う側面部が前端部のリッド支持部と該リッド支持部より外側に位置した主面部とを有し、フロントリッドはテープ状記録媒体の前面を覆う前面部と該前面部の両端から後方へ突出した側面部とを有し、上記側面部が上記スライダーのリッド支持部に回動自在に支持され、スライダーの主面部の前端部とフロントリッドの側面部とには左右方向で互いに重なり合うオーバーラップ部を有し、フロントリッドの側面部の後縁部は回動支点軸を中心とした円弧状に形成され、側面部の外面のうち後縁部に対応した部分に円弧状を為す浅い凹部が形成され、該凹部が形成された部分がフロントリッドのオーバーラップ部とされ、スライダーのオーバーラップ部が上記フロントリッドのオーバーラップ部を摺動するように位置することを特徴とする。
【0098】
従って、本発明テープカセットにあっては、スライダーの主面部はリッド支持部より外側に位置しているので、カセットシェルの側面のうち該主面部がスライドする部分がより外側に位置することになり、その分後端部との間にできる段差が小さくなる。また、スライダーの主面部の前端部とフロントリッドの側面部とに左右で互いに重なり合うオーバーラップ部が設けられるので、フロントリッドの回動中フロントリッドのオーバーラップ部がスライダーのオーバーラップ部に案内されるようになり、フロントリッドの開閉動作が安定してスムーズに行われるようになる。また、フロントリッドの側面部の外面のうち後縁部に対応した部分に円弧状を為す浅い凹部が形成され、該凹部が形成された部分がフロントリッドのオーバーラップ部とされ、スライダーのオーバーラップ部がフロントリッドのオーバーラップ部を摺動するように位置するので、フロントリッドの側面部の外面とスライダーの主面部の外面とを同一の平面内に位置させることができ、カセットテープの側面部に無用な凹凸を無くすと共に見栄えを良好にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図2乃至図25と共に本発明テープカセットの実施の形態を示すものであり、本図はフロントリッドが閉蓋位置ある状態を示す斜視図である。
【図2】フロントリッド、バックリッド共に開蓋位置にある状態を示す斜視図である。
【図3】下シェルユニットを分解して示す斜視図である。
【図4】上シェルユニットを示す斜視図である。
【図5】スライダーユニットを分解して示す斜視図である。
【図6】上シェルユニットとスライダーユニットとを分離して示す斜視図である。
【図7】スライダーユニットを組み込んだ上シェルユニットと下シェルユニットとを分離して示す斜視図である。
【図8】テープカセットの右側面図である。
【図9】図8のIX−IX線に沿う拡大断面図であり、(a)は左端部を、(b)は右端部をそれぞれ示すものである。
【図10】図8のX−X線に沿う拡大断面図であり、(a)は左端部を、(b)は右端部をそれぞれ示すものである。
【図11】図8のXI−XI線に沿う拡大断面図であり、(a)は左端部を、(b)は右端部をそれぞれ示すものである。
【図12】カセットシェルの左側面図である。
【図13】カセットシェルの右側面図である。
【図14】カセットホルダにテープカセットが挿入され始めた状態を要部を切り欠いて示す概略側面図である。
【図15】カセットホルダにテープカセットが挿入され始めた状態を示す概略平面図である。
【図16】リッドロック部材によるロックが解除された状態を要部を切り欠いて示す概略側面図である。
【図17】図16に続く状態を要部を切り欠いて示す概略側面図である。
【図18】フロントリッドが開放位置に達した状態を要部を切り欠いて示す概略側面図である。
【図19】スライダーが後退しフロントリッド及びバックリッドが共に開蓋位置に達した状態を要部を切り欠いて示す概略側面図である。
【図20】図19のXX−XX線に沿う拡大断面図であり、(a)は左端部を、(b)は右端部を示すものである。
【図21】テープカセットが記録再生装置の所定の装着位置に装着された状態を示す概略側面図である。
【図22】テープカセットが記録再生装置の所定の装着位置に装着された状態を示す概略平面図である。
【図23】テープカセットが記録再生装置の所定の装着位置に装着された状態における概略水平断面図である。
【図24】スライダーが前端へと移動され始めた状態を要部を切り欠いて示す概略側面図である。
【図25】スライダーが移動範囲の前端に達した状態を要部を切り欠いて示す概略側面図である。
【図26】比較例とその問題点を示す概略平面図である。
【符号の説明】
10…テープカセット、20…カセットシェル、21…マウス部、30…磁気テープ(テープ状記録媒体)、40…テープリール、50…テープリール、60…フロントリッド、61…前面部、62…側面部、62a…後縁部、62b…凹部、62c…オーバーラップ部、65…回動支点部、66…回動支点部、80…スライダー、82…主面部、82b…オーバーラップ部、83…リッド支持部
Claims (1)
- テープ状記録媒体を巻装したテープリールを内部に収納したカセットシェルの前部に前方及び上下に開放されたマウス部を有し、上記テープ状記録媒体の一部が上記マウス部の前端を横切るように位置されると共に、テープ状記録媒体の前側を覆うフロントリッドを有するテープカセットであって、
カセットシェルに前後方向に移動自在なスライダーを設け、
スライダーのカセットシェルの側面に沿う側面部が前端部のリッド支持部と該リッド支持部より外側に位置した主面部とを有し、
フロントリッドはテープ状記録媒体の前面を覆う前面部と該前面部の両端から後方へ突出した側面部とを有し、上記側面部が上記スライダーのリッド支持部に回動自在に支持され、
スライダーの主面部の前端部とフロントリッドの側面部とには左右方向で互いに重なり合うオーバーラップ部を有し、
フロントリッドの側面部の後縁部は回動支点軸を中心とした円弧状に形成され、側面部の外面のうち後縁部に対応した部分に円弧状を為す浅い凹部が形成され、該凹部が形成された部分がフロントリッドのオーバーラップ部とされ、スライダーのオーバーラップ部が上記フロントリッドのオーバーラップ部を摺動するように位置する
ことを特徴とするテープカセット。
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