JP4367136B2 - 油脂及びその製造法並びにこれを用いた製品 - Google Patents
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Description
また、代表的な油性菓子であるチョコレートは、典型的にはカカオマス、ココアバター、砂糖、粉乳等から製造される。これに対し、チョコレートの物性改良や原料コストの節約の目的から、ココアバターの一部または全部をハードバターやさらに他の油脂に置き換えられることも一般的に行われる。このうちカカオ成分をほとんど用いない、所謂チョコレート類も存在する(以下においてチョコレート類というときは、各国の法令や規格の規定にかかわらず、所謂準チョコレート等も含包して呼称する)。
近年のチョコレート菓子は単独で食されるだけでなく他の食品、例えば焼き菓子等と組み合わせたものや、含気泡チョコレート、冬季限定の低融点化チョコレートといった商品も多く見られる。
実際に食用油脂の酸化を酸化防止剤にて抑制し、酸化によって発生する悪風味を低減させる方法はかなり以前よりなされている。(例えば、特許文献1参照)しかし、用いる酸化防止剤が特殊な上、酸化防止自体に対しての効果を期待したものであるため、本件にて目標とする油性感の低減には触れられていない。
油脂に乳製品粉末と還元糖を添加したものを混合・加熱処理を施すことでコク味を呈した風味油とすることにより硬化臭をマスキングすること技術が考案されている。(例えば、特許文献2参照)しかし、還元糖と乳製品粉末の組合せが必須であり、しかも強い風味が付く為に用途が限定される。
すなわち、本発明は、
(1)高甘味度甘味料を含有してなる油脂であり、(2)高甘味度甘味料が5−120ppm含まれる(1)記載の油脂であり、(3)高甘味度甘味料がスクラロース、アセスルファムカリウム、ソーマチン、アスパルテームから選ばれた少なくとも1種を含有してなる(1記載の油脂であり、(4)(1)記載の油脂を用いた油脂組成物であり、(5)油脂組成物がチョコレート類製品である(4)記載の油脂組成物であり、(6)油脂組成物がホワイトチョコレート類あるいはミルクチョコレート製品である(4)記載の油脂組成物であり、(7)油脂組成物が乳化物製品である(4記載の油脂組成物であり、(8)水性媒体を用いた高甘味度甘味料の溶液を油脂に添加、吸収させ、同一相として存在することを特徴とする油脂の製造法であり、(9)水性媒体を用いた高甘味度甘味料の溶液を油脂に添加し、50〜180℃、0.5〜100Torrの減圧条件下で、脱水処理することを特徴とする油脂の製造法である。
この発明において、高甘味度甘味料を添加する対象油脂としては例えば、ナタネ油、大豆油、パーム油、綿実油、シア脂、サル脂、落花生油、ヒマワリ種子油、コーン油、サフラワー油、カポック油、月見草油、ヤシ油、パーム核油等の植物性油脂並びに牛脂、ラード、魚油、鯨油等の動物性油脂が例示でき、上記油脂類のそれらの硬化、分別、エステル交換等を施した加工油脂または合成油脂であってもよく、液油から融点の高い油脂にいたるまで幅広い油脂が適応できる。これらの油脂は一般に精製された油脂であることが好ましい。
温度は低すぎると、乾燥ないし脱溶媒に要する時間が長くかかり、高すぎると甘味料の種類によっては甘味料が分解してその効果が乏しくなる。
このように作製した油脂を通常の濾紙等で濾過し、その濾液中に結晶や粒径1μmを超える水滴として高甘味度甘味料が存在しない状態で、即ち油脂と同一相に高甘味度甘味料が存在することで、所期の効果を得ることが可能となる。
スクラロース含有ハードバターの作製
70℃のハードバター(不二製油株式会社製 商品名「メラノNEW SS7」)100重量部に対し5.0%スクラロース(三栄源エフ・エフ・アイ株式会社製 商品名「サンスイートSU−100」、蔗糖を1とした場合の甘味度は約600)水溶液を0.2重量部加え、温度70℃、真空度40Torrの条件で、攪拌しながら20分間脱水を行い、TOYO No.5C濾紙(1μm相当)にて濾過し、濾液としてスクラロース含有ハードバターを作製した。このハードバターを食したところ、本来ハードバターが有していた油性感はほとんど感じられなかった。
アセスルファムカリウム・スクラロース製剤含有ハードバターの作製
70℃のハードバター(「メラノNEW SS7」)100重量部に対し5.0%アセスルファムカリウム・スクラロース製剤(三栄源エフ・エフ・アイ株式会社製、商品名「サンスイート SA−5050」、アセスルファムカリウム45%含有、スクラロース15%含有、蔗糖を1とした場合の甘味度は約200)水溶液を0.2重量部加える他は実施例1と同様にして、アセスルファムカリウム・スクラロース製剤含有ハードバターを作製した。このハードバターを食したところ、本来ハードバターが有していた油性感はほとんど感じられなかった。
また、実施例1と同様に本ハードバターを用いてホワイトチョコレート(油分約48%)を得た。このチョコレートを食したところ、油性感がなく、すっきりした良好な乳風味が感じられた。
ソーマチン含有ハードバターの作製
70℃のハードバター(「メラノNEW SS7」)100重量部に対し5.0%ソーマチン製剤(三栄源エフ・エフ・アイ株式会社製、商品名 「サンスイート T−147」、ソーマチン10%含有、蔗糖を1とした場合の甘味度は約300)水溶液を0.2重量部加える他は実施例1と同様にしてソーマチン含有ハードバターを作製した。このハードバターを食したところ、本来ハードバターが有していた油性感は殆ど感じられなかった。
また、実施例1と同様に本ハードバターを用いてホワイトチョコレート(油分約48%)を得た。このチョコレートを食したところ、油性感がなく、すっきりした良好な乳風味が感じられた。
アスパルテーム添加ハードバターの作製
55℃のハードバター(「メラノNEW SS7」)100重量部に対し5.0%アスパルテーム(味の素株式会社製 商品名「PAL SWEET DIET」、蔗糖を1とした場合の甘味度は150〜200)水溶液を0.2重量部加え、温度55℃、真空度40Torrの条件で攪拌しながら40分間脱水を行う他は実施例1と同様にしてハードバターを作製した。このハードバターを食したところ、従来のハードバターが有していた油性感が軽減されていた。このアスパルテーム添加ハードバターを用いてホワイトチョコレート(油分約48%)を得た。このチョコレートを食したところ油性感が軽減されていた。
さらにそれらのホワイトチョコレートをそれぞれ1週間室温(約20℃)で蛍光灯下30cmに保持した状態を経た後にその風味を比較すると実施例1〜4に比べて比較例1の油性感はエージング前より強く、その差異は大きくなった。
トレハロース添加ハードバターの作製
70℃のハードバター(「メラノNEW SS7」)100重量部に対し5.0%トレハロース(株式会社林原商事製、蔗糖を1とした場合の甘味度は0.45)水溶液を0.2重量部加える他は実施例1と同様にしてハードバターを作製した。このハードバターを食したところ、従来のハードバターと同様油性感を感じるものであった。このトレハロース添加ハードバターを用いてホワイトチョコレート(油分約48%)を得た。このチョコレートを食したところ油性感が強く感じられた。
α―サイクロデキストリン添加ハードバターの作製
70℃のハードバター(「メラノNEW SS7」)100重量部に対し5.0%α−サイクロデキストリン(塩水港精糖株式会社製 商品名「デキシーパールK−100」)水溶液を0.2重量部加える他は実施例1と同様にしてハードバターを作製した。このハードバターを食したところ、従来のハードバターと同様油性感を感じるものであった。このα―サイクロデキストリン添加ハードバターを用いてホワイトチョコレート(油分約48%)を得た。このチョコレートを食したところ油性感が強く感じられた。
蔗糖添加ハードバターの作製
70℃のハードバター(「メラノNEW SS7」)100重量部に対し蔗糖(ホクレン農業協同組合連合会製 商品名「ビートグラニュ糖」)水溶液を0.2重量部加える他は実施例1と同様にしてハードバターを作製した。このハードバターを食したところ、従来のハードバターと同様油性感を感じるものであった。この蔗糖添加ハードバターを用いてホワイトチョコレート(油分約48%)を得た。このチョコレートを食したところ油性感が強く感じられた。
比較例6として、製品である粉体状のスクラロースそのものを70℃のハードバター(「メラノNEW SS7」)100重量部に対し100ppmになるように加える他は実施例1と同様にしてハードバターを作製し、これを用いてホワイトチョコレート(油分約48%)を得た。このチョコレートを食したところ油性感が強く感じられた。
比較例7として、製品である粉体状のアセスルファムカリウム・スクラロース製剤そのものを70℃のハードバター(「メラノNEW SS7」)100重量部に対し100ppmになるように加える他は実施例1と同様にしてハードバターを作製し、これを用いてホワイトチョコレート(油分約48%)を得た。このチョコレートを食したところ油性感が強く感じられた。
比較例8として、製品である粉体状のソーマチン製剤そのものを70℃のハードバター(「メラノNEW SS7」)100重量部に対し100ppmになるように加える他は実施例1と同様にしてハードバターを作製し、これを用いてホワイトチョコレート(油分約48%)を得た。このチョコレートを食したところ油性感が強く感じられた。
比較例9として、製品である粉体状のアスパルテームそのものを70℃のハードバター(「メラノNEW SS7」)100重量部に対し100ppmになるように加える他は実施例1と同様にしてハードバターを作製し、これを用いてホワイトチョコレート(油分約48%)を得た。このチョコレートを食したところ油性感が強く感じられた。
比較例10として、比較例1で用いたホワイトチョコレートと同じ配合にスクラロース20ppmを加え、定法により作製したチョコレート80部に対し、甘味料無添加のハードバター(「メラノNEW SS7」)20部を加え、シード(「チョコシードA」)テンパリング処理し冷却後、1週間のエージングを経てホワイトチョコレート(油分約48%)を得た。このチョコレートを食したところ油性感が強く感じられた。
比較例11として、比較例1で用いたホワイトチョコレートと同じ配合にアセスルファムカリウム・スクラロース製剤20ppmを加え、定法により作製したチョコレート80部に対し、甘味料無添加のハードバター(「メラノNEW SS7」)20部を加え、シード(「チョコシードA」)テンパリング処理し冷却後、1週間のエージングを経てホワイトチョコレート(油分約48%)を得た。このチョコレートを食したところ油性感が強く感じられた。
比較例12として、比較例1で用いたホワイトチョコレートと同じ配合にソーマチン製剤20ppmを加え、定法により作製したチョコレート80部に対し、甘味料無添加のハードバター(「メラノNEW SS7」)20部を加え、シード(「チョコシードA」)テンパリング処理し冷却後、1週間のエージングを経てホワイトチョコレート(油分約48%)を得た。このチョコレートを食したところ油性感が強く感じられた。
溶解したホワイトチョコレート(不二製油株式会社製 油分約34%)50部に、実施例1で作製したスクラロース含有ハードバター20部、乳化剤1.5部を加え、品温を31℃に温調し、そこにシード剤(不二製油製/商品名「チョコシードA」)をチョコレートに対し0.2部を加えテンパリング処理し、これに生クリーム26部、洋酒(V.S.O.P)4部を混合した後、冷却後、1週間のエージングを経てホワイトガナッシュを得た。これを食したところ油性感がなく、すっきりした良好な風味であった。
スクラロース含有ハードバターに換えて実施例2で作製したアセスルファムカリウム・スクラロース製剤含有ハードバターを用いるほかは実施例5と同様にしてホワイトガナッシュを得た。これを食したところ油性感がなく、すっきりした良好な風味であった。
スクラロース含有ハードバターに換えて実施例3で作製したソーマチン製剤含有ハードバターを用いるほかは実施例5と同様にしてホワイトガナッシュを得た。これを食したところ油性感がなく、すっきりした良好な風味であった。
スクラロース含有ハードバターに換えて甘味料非含有のハードバター(「メラノNEW SS7」)を用いるほかは実施例5と同様にしてホワイトガナッシュを得た。これを食したところ油性感が強く感じられた。
スクラロース含有ハードバターに換えて比較例6で作製したハードバターを用いるほかは実施例5と同様にしてホワイトガナッシュを得た。これを食したところ油性感が強く感じられた。
アセスルファムカリウム・スクラロース製剤含有ハードバターに換えて比較例7で作製したハードバターを用いるほかは実施例6と同様にしてホワイトガナッシュを得た。これを食したところ油性感が強く感じられた。
ソーマチン含有ハードバターに換えて比較例8で作製したハードバターを用いるほかは実施例7と同様にしてホワイトガナッシュを得た。これを食したところ油性感が強く感じられた。
スクラロース含量が120ppm、50ppmまたは10ppmのハードバターを用いる他は、実施例1と同様の配合・手順で作製したホワイトチョコレートを得た。(実施例8・実施例9・実施例10の順にスクラロース含量120ppm・50ppm・10ppmのハードバターを使用した。)
これらのものと比較例1と比較評価したところ、10ppmでも比較例1と比べて油性感が改善されていたが、スクラロース含量が多いほど効果は大きく50ppm、120ppm含有する方が油性感の軽減効果は顕著であった。
実施例8・実施例9・実施例10と比較例1の配合と評価を表7に示す。
アセスルファムカリウム・スクラロース製剤含量が120ppm、50ppmまたは10ppmのハードバターを用いる他は、実施例1と同様の配合・手順で作製したホワイトチョコレートを得た。(実施例11・実施例12・実施例13の順にアセスルファムカリウム・スクラロース含量120ppm・50ppm・10ppmのハードバターを使用した。)
これらのものと比較例1と比較評価したところ、10ppmでも比較例1と比べて油性感が改善されていたが、アセスルファムカリウム・スクラロース製剤含量が多いほど効果は大きく50ppm、120ppm含有する方が油性感の軽減効果は顕著であった。
実施例11・実施例12・実施例13と比較例1の配合と評価を表8に示す。
ソーマチン製剤含量が120ppm、50ppmまたは10ppmのハードバターを用いる他は、実施例1と同様の配合・手順で作製したホワイトチョコレートを得た。(実施例14・実施例15・実施例16の順にソーマチン製剤含量120ppm・50ppm・10ppmのハードバターを使用した。)
これらのものと比較例1と比較評価したところ、10ppmでも比較例1と比べて油性感が改善されていたが、ソーマチン製剤含量が多いほど効果は大きく50ppm、120ppm含有する方が油性感の軽減効果は顕著であった。
実施例14・実施例15・実施例16と比較例1の配合と評価を表9に示す。
これにより多様化した食用油脂利用製品、特に比較的油分の高い(油分30%以上)食品や、乳固形分を含む食品に応用したり、光や空気、熱に長時間曝される陳列環境に曝されている商品に応用することで油性感の増加が抑制できる。
Claims (11)
- 水性媒体を用いた高甘味度甘味料の溶液を油脂に添加し、脱溶媒処理をすることで油脂中に溶解・分散してなる高甘味度甘味料が5−120ppmである油性感改良用油脂の製造方法。
- 水性媒体を用いた高甘味度甘味料の溶液の濃度が0.1〜30重量%であることを特徴とする請求項1記載の油性感改良用油脂の製造方法。
- 水性媒体を用いた高甘味度甘味料の溶液の添加量が油脂に対して17ppm−12重量%であることを特徴とする請求項1記載の油性感改良用油脂の製造方法。
- 水性媒体を用いた高甘味度甘味料の溶液の添加量が油脂に対して17ppm−1.2重量%であることを特徴とする請求項1記載の油性感改良用油脂の製造方法。
- 水性媒体を用いた高甘味度甘味料の溶液を油脂に添加し、50〜180℃、0.5〜100Torrの減圧条件下で、脱溶媒処理することを特徴する請求項1記載の油性感改良用油脂の製造方法。
- 高甘味度甘味料がスクラロース、アセスルファムカリウム、ソーマチン、アスパルテームから選ばれた少なくとも1種を含有してなる請求項1記載の油性感改良用油脂の製造方法。
- 請求項1記載の製造方法にて得られた油性感改良用油脂。
- 請求項7記載の油性感改良用油脂を用いた油脂組成物。
- 油脂組成物がチョコレート類製品である請求項8記載の油脂組成物。
- 油脂組成物がホワイトチョコレート類あるいはミルクチョコレート製品である請求項9記載の油脂組成物。
- 油脂組成物が乳化物製品である請求項8記載の油脂組成物。
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