JP4365947B2 - マイクロアレイ作製装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、DNA断片等の生体試料を基板上に多数配列させて生体試料のマイクロアレイを作製するためのマイクロアレイ作製装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
現在、多彩な生物の全遺伝子を効率的に解析するための技術開発が進んでいる。DNAマイクロアレイは、所定の塩基配列のDNA断片を含むスポットをスライドガラスやシリコンなどの基板上に多数配列させたものであり、このような解析に欠かせない。また、DNAマイクロアレイを用いて遺伝子の変位を検出することにより、遺伝子が関係する無数の病気について、個々の患者に適合する医療を施すことも可能となる。
【0003】
特表平10−503841号公報には、このようなマイクロアレイを作製するための装置が開示されている。この装置では一対の互いに距離を開けて設けられた細長い部材の間に形成された開放毛管流路に試薬溶液を保持するとともに、この細長い部材の先端を基板の所定位置に軽く打ち付けてDNA断片等を含む試薬溶液を基板に付着させることにより、各スポットを形成している。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記装置では一度に開放毛管流路に保持できる試薬溶液の量が比較的少ない。このため、多数のマイクロアレイを同時に作製する場合には、試薬溶液を頻繁に開放毛管流路に補充しなければならず、マイクロアレイの製造に時間がかかる。
【0005】
また、保持される試薬溶液の量が少ないと試薬溶液が乾燥し易くなり、したがってその粘度が変動し易くなるため、安定して多数のスポットを形成することが困難になるという問題もある。
【0006】
本発明の目的は、効率良く安定してマイクロアレイを作製できるマイクロアレイ作製装置を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
請求項1に記載の発明は、複数枚の基板を配列し得る作業台(11)と、生体試料を含む溶液を貯える溶液貯留部(12)と、溶液貯留部(12)から溶液を取り入れて保持し、基板上に溶液のスポットを形成するための保持手段(51,52)と、保持手段(51,52)を支持して基板に対して近接・離間する方向で移動させ、保持手段(51,52)をしてスポットを形成せしめる移動手段(29,32…)と、移動手段(29,32…)を支持して作業台(11)および溶液貯留部(12)を含む領域において搬送して二次元座標を与える搬送手段(2Y,2X)と、を備えたマイクロアレイ作製装置であって、保持手段(51,52)は、溶液が溜められるテーパー状の内部空間を有する液溜め部(52)と、液溜め部(52)に対して出没して液溜め部(52)に溜められた溶液を所定量ずつ基板上に付着させるニードル(51)とからなり、前記ニードル(51)及び前記液溜め部(52)の同時昇降動作、並びに前記液溜め部(52)が停止した後の前記ニードル(51)のみの昇降動作の2つの動作を、単一の駆動手段(32)のみにより行うことを特徴とする。
【0008】
この発明によれば、液溜め部(52)に溜められた溶液をニードル(51)を用いて基板上に付着させるようにしたので、液溜め部(52)に多量の溶液を溜めておくことができる。したがって、多数の基板に対して連続してスポットを形成するような場合であっても、溶液の補充を頻繁に行う必要がなくなり、マイクロアレイの製造時間を短縮することができる。また、液溜め部(52)に多量の溶液を溜めることができるので、溶液の乾燥が抑制され、溶液の粘度の変動が抑えられ、長時間にわたりスポットを安定して形成することができる。また、ニードル(51)及び液溜め部(52)の同時昇降動作、並びに液溜め部材(52)が停止した後のニードル(51)のみの昇降動作の2つの動作を、単一の駆動手段(32)のみにより行っている。これにより、これらの2つの動作を個別の駆動手段によって行う場合に比して、装置全体としての駆動源が少なく抑えられると共に、これに関連する部品点数も削減され、コストの低減が達成されている。また、このように駆動手段が単一であることから、該駆動手段を備えるマイクロアレイ作製装置が軽量となり、構造も簡素化されている。従って、マイクロアレイ作製装置を高速駆動することが可能なり、マイクロアレイの製造時間が短縮される。
【0010】
このように、液溜め部(52)の内部空間をテーパー状に形成したことにより、溶液を確実に保持することができるとともに、液溜め部(52)からニードル(51)が突出する際にニードル(51)に移る溶液の量を適切に制御することができる。
【0011】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のマイクロアレイ作製装置において、ニードル(51)の基板側先端に平坦面(51b)が設けられていることを特徴とする。
【0012】
この場合には、ニードル(51)の先端を基板に接触させたときのニードル(51)の先端部分の変形が抑制されるので、スポットを安定して形成することができる。
【0013】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載のマイクロアレイ作製装置において、ニードル(151)には溶液を保持するためのスリット(151c)が形成されていることを特徴とする。
【0014】
この場合には、スリット(151c)の内部に溶液を保持することができるので、ニードル(151)により保持できる溶液の分量を増加させることができる。
【0015】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれか1項に記載のマイクロアレイ作製装置において、液溜め部(52)の内部空間に洗浄液を流し込むことにより液溜め部(52)の内部空間を洗浄する洗浄手段(60)を備えることを特徴とする。
【0016】
この場合には、液溜め部(52)の内部空間に洗浄液を流し込むようにしたので、液溜め部(52)の内部を充分に洗浄することができる。
【0017】
なお、本発明の理解を容易にするために添付図面の参照符号を括弧書きにて付記するが、それにより本発明が図示の形態に限定されるものではない。
【0018】
【発明の実施の形態】
−第1の実施形態−
以下、図1〜図8を参照して、本発明によるマイクロアレイ作製装置の第1の実施形態について説明する。
【0019】
図1は本実施形態のマイクロアレイ作製装置を示す平面図、図2は図1におけるII−II線方向から見たこの装置の正面図、図3は図1におけるIII−III線方向から見たこの装置の断面図である。
【0020】
図1〜図3に示すように、第1の実施の形態はマイクロアレイが形成される多数(図1では192枚)の基板が載置される基体1と、基体1に取り付けられ、一対のアレイングヘッド3A,3Bと、これらのアレイングヘッドを同時にY軸方向(図1の上下方向)に駆動するための一対のリニア駆動機構2Yと、アレイングヘッド3A,3BをそれぞれX軸方向(図1の左右方向)に駆動するためのリニア駆動機構2Xとを備える。なお、以下、アレイングヘッド3A,3Bをとくに区別しない場合には、「アレイングヘッド3」と表記する。アレイングヘッド3の詳細については後述する。
【0021】
基体1の上面は、図1の左右方向に並んで配置される2つの区画10A,10Bに分離されており、各区画10A,10Bにはそれぞれ同一の要素が配置される。区画10A,10Bは、それぞれXY平面内におけるアレイングヘッド3A,3Bの移動範囲に対応している。
【0022】
図1に示すように、各区画10A,10Bには、多数の基板がマトリクス状に載置される作業台としての基板載置部11と、例えばDNA断片を含む溶液等が貯えられる多数の凹部が配列して形成された溶液貯留部としてのタイタープレート12と、アレイングヘッド3が具備する液溜め部材(後述)を超音波を付与した水により外側から洗浄するための超音波洗浄機13と、該液溜め部材をすすぎ洗浄するためのすすぎ洗浄部14と、洗浄した液溜め部材を乾燥させるための乾燥部15と、試験的にマイクロアレイを作製するための2枚の基板またはダミー基板が載置されるテスト台16と、がそれぞれ設けられる。
【0023】
基板載置部11には各基板に対応して吸引孔11a(図1)が開口されるとともに、不図示の真空装置の管路がこの吸引孔11aに接続されている。真空装置を作動させることにより、吸引孔11aから空気を吸引して基板を基板載置部11に固定することができる。
【0024】
上記した一対のリニア駆動機構2Yは各々、Y軸方向に延設された長手固定フレーム20と、この固定フレーム20にY軸方向に伸長して装着されたレール21a及び該レール21aに対して移動自在に組まれたスライダ21bからなるリニアガイドと、このリニアガイドによって案内されるテーブル22と、該テーブル22を駆動するリニアモータとを備える。該リニアモータは、Y軸方向に延在する二次側としてのマグネット23aと、テーブル22の裏側に該マグネット23aに対向して取り付けられた一次側としてのコイル23bとからなる。
【0025】
また、リニア駆動機構2Xは、上記両リニア駆動機構2Yにより駆動される一対のテーブル22の間にX軸方向に架設された長手可動フレーム24と、この可動フレーム24にX軸方向に伸長して装着されたレール25a及び該レール25aに対して移動自在に組まれたスライダ25bからなるリニアガイドと、このリニアガイドによって案内されるテーブル26と、該テーブル26を駆動するリニアモータとを備える。該リニアモータは、X軸方向に延在する二次側としてのマグネット27aと、テーブル26の裏側に該マグネット27aに対向して取り付けられた一次側としてのコイル27bとからなる。
【0026】
上記テーブル26には電動アクチュエータ29が取り付けられている。この電動アクチュエータ29は詳しくは、断面がコ字状のレール29aと、該レール29a内に往復動自在に組まれたスライダ29bとを備える。そして、このスライダ29bにはナット(図示せず)が設けられ、このナットに螺合するねじ軸29cが設けられ、該ねじ軸29cを回転駆動するモータ29dを有する。
【0027】
上述したアレイングヘッド3は、この電動アクチュエータ29のスライダ29bに取り付けられている。電動アクチュエータ29の作動方向は上記X軸方向及びY軸方向に対して直角な上下方向(Z軸方向)である。すなわち、電動アクチュエータ29は、アレイングヘッド3が具備ずる後述の保持手段を基板載置部11上の基板に対して近接・離間する方向で移動させる移動手段の一部として作用する。
【0028】
また、上記リニア駆動機構2Y及びリニア駆動機構2Xは、この電動アクチュエータ29(従ってアレイングヘッド3)を支持して上記基板載置部11およびタイタープレート12を含む領域において搬送して二次元座標を与える搬送手段として作用する。
【0029】
図4はアレイングヘッド3の構成を示す断面図である。図示のように、アレイングヘッド3は上記テーブル26(図4では不図示)に取り付けられて搬送される支持部31と、この支持部31に取り付けられたサーボモータ32aを含む駆動手段32と、レール及びスライダからなるリニアガイド36を介して支持部31に対して図4の上下方向(Z軸方向)、つまり上記基板載置部11上の基板に対して近接・離間する方向において移動自在に取り付けられた第1の可動部材33と、レール及びスライダからなるリニアガイド37を介してこの第1の可動部材部33に対して上下方向において移動自在に取り付けられた第2の可動部34とを備える。また、第1の可動部材33と第2の可動部材34との間には圧縮ばね55,56が介装されている。
【0030】
上記のように、支持部31はテーブル26に取り付けられており、図1乃至図3に示すモータ29dを作動させることにより支持部31を上下方向に移動することができる。これにより、基板の厚み等に合せてアレイングヘッド3全体の上下方向(Z軸方向)の位置を調整することができる。
【0031】
第2の可動部材34は、上記駆動手段32により駆動される。この駆動手段32は、次に示す構成と上記サーボモータ32aとからなる。
【0032】
すなわち、図4に示すように、上下方向に伸長し、その両端部にて軸受32b,32cを介して支持部31に対して回転自在に取り付けられたねじ軸32dと、該ねじ軸32dとサーボモータ32aの出力軸32eとを連結するカプラ32fと、第2の可動部材34の上端部に連結アーム39aを介して装着されて該ねじ軸32dと螺合するナット39bとからなる。なお、ねじ軸32dとナット39bとの間には多数のボール(図示せず)が介装され、ナット39bには該ボールが循環する無限循環路が形成され、各ボールはねじ軸32bとナット39bの相対回転に伴って循環するようになされている。
【0033】
第2の可動部材34の下端部には、基板載置部11に載置された基板に対し先端が接触可能とされたニードル51が取り付けられている。ニードル51は、第2の可動部材34に対して上下方向に取り付けられている。具体的には、図6に示すように、ニードル51を第2の可動部材34に装着するための取付具50が中空とされており、ニードル51の上端部がこの内部空間に挿通されている。そして、この内部空間には、ニードル51の上端を受けるようにコイルスプリング49が設けられている。ニードル51は第2の可動部材34と共に降下してその先端が基板に当接するのであるが、コイルスプリング49はこの当接時に圧縮され、緩衝作用をなす。また、第2の可動部材34はニードル51が基板に当接した後も降下を続けるが、該コイルスプリング49はその降下分だけ縮まる。これにより、ニードル51に対して所定の当接力が付与される。
【0034】
第1の可動部材33の下端部には、基板に供給すべき溶液53が溜められる液溜め部としての液溜め部材52が取り付けられている。図4および図6に示すように、液溜め部材52は先細りのテーパー管形状に形成され、そのテーパー状の内部空間には溶液53とともにニードル51が収納される。また、液溜め部材52の下端に形成された開口52aからニードル51の先端部51aが出没可能とされている。
【0035】
ニードル51は、液溜め部材52から突出するときに、該液溜め部材52内の溶液53を所定量ずつ搬出して、基板載置部11上の基板上に付着させる。
【0036】
これら液溜め部材52及びニードル51を保持手段と総称する。該保持手段は、溶液貯留部としてのタイタープレート12から溶液を取り入れて保持する。この保持手段は、基板載置部11上の基板上に溶液53のスポットを形成するためのものである。
【0037】
なお、上述したアレイングヘッド3を構成する各部材のうち、該保持手段(液溜め部材52及びニードル51)を除く各構成部材と、前述した電動アクチュエータ29とを、移動手段と総称する。この移動手段は、上記保持手段を支持して基板載置部11上の基板に対して近接・離間する方向で移動させ、該保持手段をして上記スポットを形成せしめる作用をなす。
【0038】
図4に示すように、上記支持部31の下端部にはダンパー41aを含む第1の規制部材41が設けられており、第1の可動部材33の下端がこの第1の規制部材41に当接可能とされている。この第1の規制部材41は、第1の可動部材333の支持部31に対する下方向(矢印Z方向とは反対方向)への移動を所定位置で規制する。
【0039】
また、第1の可動部材33の上端部には第2の規制部材42が設けられており、第2の可動部材34の上端部近傍に突設された当接ピン34aがこの第2の規制部材42に当接可能となっている。この第2の規制部材42は、第2の可動部材34の第1の可動部材33に対する上方向(矢印Z方向)への移動を所定位置で規制する。なお、当接ピン34aは、ダンパー34bを含む。
【0040】
図4〜図7に示すように、ニードル51の先端部51aは先細り形状に形成されている。また、図6に示すように、この先端部51aには円形状の平坦面51bが設けられている。
【0041】
上記サーボモータ32aを作動させると、ねじ軸32dが回転し、ナット39bが上下位置の間を往復し、これにより第2の可動部材34が上方位置と下方位置との間で往復駆動される。図4は、第2の可動部材34がこれら上方位置と下方位置との間にある状態を示している。
【0042】
第2の可動部材34が上方位置にあるとき、第2の可動部材34に設けられた当接ピン34aは、第1の可動部材33に設けられた第2の規制部材42に当接し、第1の可動部材33の下端面は支持部31に設けられた第1の規制部材41から離間している。このとき、第1の可動部材33と第2の可動部材34との相対的な位置関係は図4と同様であり、かつ、図4に示されるよりも両可動部材33,34が上方に移動した状態となる。
【0043】
一方、第2の可動部材34が下方位置にあるとき、第1の可動部材33の下端面は支持部31に設けられた第1の規制部材41に当接する。また、第2の可動部材34に設けられた当接ピン34aは、第1の可動部材33に設けられた第2の規制部材42から離間しており、圧縮ばね55,56は圧縮される。
【0044】
第2の可動部材34が上方位置から下方位置に向けて駆動されるとき、第1の可動部材33の下端面が第1の規制部材41に当接するまでの間、第2の可動部材34は当接ピン34aを介して第2の規制部材42に当接したまま第1の可動部材33とともに降下する。第1の可動部材33の下端面が第1の規制部材42に当接すると、第1の可動部材33はその位置に留まる。その後、第2の可動部材34のみが降下して下方位置に到達する。
【0045】
第2の可動部材34が下方位置から上方位置に向けて駆動されるとき、第2の可動部材34に設けられた当接ピン34aが第2の規制部材42に当接するまでの間、第2の可動部材34のみが上昇し、第1の可動部材33は第1の規制部材41に当接した状態で留まっている。当接ピン34aが第2の規制部材42に当接すると、その後、第2の可動部材34は第1の可動部材33とともに上昇し、第1の可動部材33の下端面は第1の規制部材41から離れる。
【0046】
図6(a)〜図6(d)は、液溜め部材52に対してニードル51が上下方向に移動する場合の溶液の様子を示す断面図である。
【0047】
第2の可動部材34が上方位置にあるとき、図6(a)に示すようにニードル51は液溜め部材52の内部に完全に収納されている。第2の可動部材34が上方位置から下方位置に向けて駆動されると、第1の可動部材33の下端が第1の規制部材41に当接するまでの間、ニードル51および液溜め部材52は図6(a)の位置関係を維持しつつ降下する。第1の可動部材33の下端が第1の規制部材41に当接すると、第1の可動部材33に取り付けられた液溜め部材52がその位置で停止し、図6(b)および図6(c)に順に示すようにニードル51のみが降下を続ける。図6(c)に示すように、液溜め部材52の開口52aからニードル51の先端部51aが突出するとき、ニードル51の表面に溶液が付着する。そして、図6(d)に示すように、ニードル51の先端を基板70に接触させることにより、その付着している溶液が微細な液滴として基板70に移り、付着してスポットが形成される。
【0048】
上記から明らかなように、第1の実施形態では、第1の可動部材33は、駆動手段32により駆動される第2の可動部材34と連動して駆動される。すなわち、第2の可動部材34及び第1の可動部材33(つまり、ニードル51及び液溜め部材52)の同時昇降動作、並びに第1の可動部材33(つまり、液溜め部材52)が停止した後の第2の可動部材34(つまり、ニードル51)のみの昇降動作の2つの動作を、サーボモータ32aを含む単一の駆動手段32のみにより行っている。これにより、これらの2つの動作を個別の駆動手段によって行う場合に比して、装置全体としての駆動源が少なく抑えられると共に、これに関連する部品点数も削減され、コストの低減が達成されている。また、このように駆動手段が単一であることから、該駆動手段を含むアレイングヘッド3が軽量となり、構造も簡素化され、重量が軽くなっている。従って、リニア駆動機構2X,2Yによってアレイングヘッド3を高速駆動することが可能なり、マイクロアレイの製造時間が短縮される。
【0049】
図7に示したように、本実施形態では、ニードル51の先端には円形状の平坦面51bが形成されている。このため、繰り返しスポットを形成してもニードル51の先端の変形が極めて小さく抑えられる。したがって、ニードル51を頻繁に交換することなく多数のスポットを連続して安定に形成することができる。
【0050】
なお、ニードル51の先端は必ずしも平面状に形成しなくてもよく、滑らかな曲面としてもよい。要は、ニードル51先端の変形が抑制されるような形状であればよい。また、平坦面51bは、ニードルの軸線上から見たときの形状が円でなくてもよく、例えば矩形とすることもできる。但し、微細なスポットを細かなピッチで配列したい場合には、スポットの径が安定することから、円に近い形状を採用することが好ましい。
【0051】
次に、図8を参照して液溜め部材52に溶液を充填する方法について説明する。
【0052】
最初に、図8(a)に示すように液溜め部材52をタイタープレート12内の所定の凹部71に差込み、液溜め部材52の先端を溶液53に浸す。このとき、ニードル51の先端は液溜め部材52の開口52aから突出しないぎりぎりの位置に位置付けられる。このように液溜め部材52の先端を溶液53に浸すことにより、凹部71内の溶液が毛管作用によって液溜め部材52の内部に引き込まれ、ある程度充填される。次に、液溜め部材52を固定したままニードル51を上昇させると、ニードル51の先端に対する溶液の付着力に基づき、ニードル51の上昇に合せて溶液53の液面が引き上げられ、液溜め部材52内に多量の溶液が充填される。この状態から液溜め部材52およびニードル51を引き上げると、液溜め部材52に充填された溶液53はそのまま保持される。
【0053】
このように、本実施形態では液溜め部材52の内部に溶液53を充填するようにしているので、液溜め部材52に比較的多量の溶液53を溜めておくことができる。このため、多数の基板に対して連続してスポットを形成するような場合であっても、溶液53を頻繁に補充する必要がなくなり、マイクロアレイの製造時間が短縮される。また、液溜め部材52に多量の溶液53を保持することができるため、溶液53の乾燥を抑制することができ、溶液53の粘度の変動が抑えられる。このため、長時間にわたりスポットを安定して形成可能であり、マイクロアレイの歩留まりを向上できるという利点もある。特に溶液を高速にて搬送する場合には通常溶液が乾燥しやすくなるが、本実施形態では溶液53を高速で搬送した場合であっても溶液53の状態、粘度等を長時間にわたり安定させておくことができる。
【0054】
また、本実施形態では、液溜め部材52の内部空間がテーパー状に形成されている。よって、溶液53を確実に保持することができるとともに、液溜め部材52からニードル51が突出する際にニードル51に移る溶液の量を適切に制御することができる。
【0055】
図9は、液溜め部材52の内部空間を洗浄するための洗浄手段を示している。この洗浄手段60は、洗浄液としての超純水を蓄えるための純水槽61と、超純水を純水槽61から送水するポンプ62と、超純水の送水流量を調節するための電磁バルブ63と、圧搾空気を作り出すための空圧源65と、空圧源65による空気圧の脈動を低減するためのタンク66と、タンク66から送られてくる空気流量を調節するための電磁バルブ67と、電磁バルブ63を介して送られてくる超純水および電磁バルブ67を介して送られてくる空気を送るためのフレキシブルパイプ68と、液溜め部材52に取り付けられたプラグ69とを備える。図9に示すように、プラグ69にはフレキシブルパイプ68が接続される。
【0056】
図9の洗浄手段を用いることにより、プラグ69を介して液溜め部材52の内部空間に超純水を流し込むことができるため、超音波洗浄機13では洗浄が困難な液溜め部材52の内部を十分に洗浄することが可能となる。液溜め部材52の内部に残った水は、圧搾空気により排出される。
【0057】
このように、液溜め部材52内を洗浄するようにしたので、前工程で液溜め部52が保持した溶液が次の工程まで液溜め部材52内に残留することがない。また、液溜め部材52の外側については超音波洗浄機13及びすすぎ洗浄機14により充分に洗浄され、前工程で使用した溶液が次工程まで付着することはない。よって、異なる種類の溶液同士の混合が防止される。
【0058】
なお、この洗浄手段60により液溜め部材52を洗浄する際には、液溜め部材52をすすぎ洗浄部14に位置付ける。
【0059】
次に、マイクロアレイを作製する手順に即して、本実施形態のマイクロアレイ作製装置の動作について説明する。なお、以下の工程では、リニア駆動機構2X、リニア駆動機構2Yおよび電動アクチュエータ29を適宜動作させることにより、アレイングヘッド3を所定の位置に順次位置付ける。このような制御は不図示の制御装置により実行される。
【0060】
マイクロアレイを作製する際には、まず、アレイングヘッド3を基板載置部11から退避させた状態で、区画10A,10Bの基板載置部11上に複数(例えば96枚)の基板を配列し、前述の真空装置を作動させて基板を吸引固定する。タイタープレート12の各凹部には、例えば、互いに異なるDNA断片を含む複数の溶液等が入れられる。テスト台16には試験的にマイクロアレイを形成するための基板、あるいはダミーの基板を固定する。なお、テスト台16には基板載置部11と同様、基板を吸引するための吸引孔(不図示)が形成されており、テスト台16の基板は基板載置部11と同様に真空装置によって吸引固定される。
【0061】
次に、テスト台16の基板に対して試験的に溶液のスポットを形成することにより、装置の調整や溶液粘度の調整等を行う。試験的なスポットの形成工程には、図8に示した溶液充填のための工程と、図6に示したスポット形成のための工程とが含まれる。また、必要に応じて、後述する液溜め部材52の洗浄および乾燥工程が含まれる。
【0062】
上記のように各溶液の粘度を調整することにより、各溶液のスポット径を最適化することができる。
【0063】
上記の調整が終了した後、基板載置部11に固定された基板に対するスポット形成を行う。最初に、図8に示した工程によって第1番目の種類の溶液を液溜め部材52に充填し、図6に示した工程によって基板載置部11の全基板に順次スポットを形成する。液溜め部材52の溶液が不足しないよう、スポットの形成中に必要に応じて液溜め部材52への溶液の補充を行う。第1番目の種類の溶液について全基板に対しスポットの形成が終了すれば、図9に示した洗浄手段60によって液溜め部材52内部に残留している溶液を洗浄し且つ乾燥させるとともに、超音波洗浄機13及びすすぎ洗浄部14により液溜め部材52の外側を洗浄する。さらに乾燥部15において液溜め部材52の外側を乾燥させる。
【0064】
次いで、第2番目の種類の溶液について全基板に対しスポット形成を行い、同様の方法で液溜め部材52の洗浄を行う。このような工程をすべての種類の溶液について繰り返し、全種類の溶液についてスポット形成を行うことで、全基板についてマイクロアレイが作製される。
【0065】
本実施形態では、ニードルの先端が先細り形状にされているが、ニードルの形状はこれに限定されず、どのような形状であってもよい。また、本実施形態では、液溜め部材52がテーパー状に形成されているが、液溜め部材の形状は任意に選択可能である。
【0066】
−第2の実施形態−
以下、図10を参照して本発明によるマイクロアレイ作製装置の第2の実施形態について説明する。なお、第1の実施形態と同一構成部分については、その説明を省略する。
【0067】
第2の実施形態では、ニードルの先端にスリットを形成するようにしている。図10(a)および図10(b)に示すように、ニードル151の先端部151aは先細り形状に形成されている。また、先端部151aにはニードル先端部分の変形を抑制するための円形状の平坦面151bが設けられているとともに、ニードル151の軸心方向に沿ってスリット151cが形成されている。スリット151cは平坦面151bの中央を横断するように開口している。
【0068】
このようにスリット151cを形成した場合には、スリット151cの内部に溶液が保持されるため、ニードル151に保持される溶液の分量を増大させることができる。このため比較的大きな径のスポットを形成したい場合等に好適である。
【0069】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によるマイクロアレイ作製装置においては、溶液を溜める液溜め部と、該液溜め部に対して出没して液溜め部に溜められた溶液を所定量ずつ基板上に付着させるニードルとを有している。かかる液溜め部には多量の溶液を溜めておくことができるので、多数の基板に対して連続してスポットを形成するような場合であっても、溶液の補充を頻繁に行う必要がなくなり、マイクロアレイの製造時間を短縮することができる。また、液溜め部に多量の溶液を溜めることができるので、溶液の乾燥が抑制され、溶液の粘度の変動が抑えられ、長時間にわたりスポットを安定して形成することができる。
【0070】
また、請求項1に記載の発明では、液溜め部がテーパー状の内部空間を有する。このように液溜め部の内部空間をテーパー状に形成することにより、溶液を確実に保持することができるとともに、液溜め部からニードルが突出する際にニードルに移る溶液の量を適切に制御することができる。
【0071】
また、請求項2に記載の発明では、ニードルの先端に平坦面が設けられている。よって、ニードルの先端を基板に接触させたときのニードルの先端部分の変形が抑制され、スポットを安定して形成することができる。
【0072】
また、請求項3に記載の発明では、ニードルに溶液を保持するためのスリットが形成されているから、保持できる容量の分量を増加させることができる。
【0073】
また、請求項4に記載の発明においては、液溜め部の内部空間を洗浄する洗浄手段を備えているので、前工程で液溜め部が保持した溶液が次の工程まで液溜め部内に残留することがない。よって、異なる種類の溶液同士の混合が防止される。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1の実施形態のマイクロアレイ作製装置を示す平面図。
【図2】図1のII−II線方向から見た第1の実施形態のマイクロアレイ作製装置を示す正面図。
【図3】図1のIII−III線方向から見た第1の実施形態のマイクロアレイ作製装置を示す断面図。
【図4】第1の実施形態のマイクロアレイ作製装置に設けられたアレイングヘッドの構成を示す断面図。
【図5】図4に示したアレイングヘッドのニードル取付部の拡大図。
【図6】液溜め部材に対してニードルが上下方向に移動する場合の溶液の様子を示す図であり、(a)はニードルが液溜め部材に完全に収納された状態を示す断面図、(b)はニードルが(a)に示す位置によりも下方にある状態を示す断面図、(c)はニードルの先端が液溜め部材の先端から突出した状態を示す断面図、(d)はニードルの先端が基板の先端に接触した状態を示す図。
【図7】第1の実施形態のマイクロアレイ作製装置に設けられたニードルの形状を示す図であり、(a)はニードルを示す斜視図、(b)はニードルの軸心方向から見たニードルの先端部分を示す平面図。
【図8】液溜め部材に溶液を充填する方法を示す図であり、(a)は液溜め部材の先端を溶液に浸けた直後の状態を示す断面図、(b)は毛管現象によって液溜め部材の内部に溶液が充填された様子を示す図。
【図9】液溜め部材の内部を水流により洗浄するための洗浄手段を示す図。
【図10】第2の実施形態のマイクロアレイ作製装置のニードルの形状を示す図であり、(a)はニードルを示す斜視図、(b)はニードルの軸心方向から見たニードルの先端部分を示す平面図。
【符号の説明】
2X リニア駆動機構(搬送手段)
2Y リニア駆動機構(搬送手段)
3 アレイングヘッド
11 基板載置部(作業台)
12 タイタープレート(溶液貯留部)
32 駆動手段
41 第1の規制部材
42 第2の規制部材
51 ニードル
51b 平坦面
52 液溜め部材(液溜め部)
60 洗浄手段
151 ニードル
151c スリット
Claims (4)
- 複数枚の基板を配列し得る作業台と、
生体試料を含む溶液を貯える溶液貯留部と、
前記溶液貯留部から前記溶液を取り入れて保持し、前記基板上に溶液のスポットを形成するための保持手段と、
前記保持手段を支持して前記基板に対して近接・離間する方向で移動させ、前記保持手段をしてスポットを形成せしめる移動手段と、
前記移動手段を支持して前記作業台および前記溶液貯留部を含む領域において搬送して二次元座標を与える搬送手段と、を備えたマイクロアレイ作製装置であって、
前記保持手段は、前記溶液が溜められるテーパー状の内部空間を有する液溜め部と、前記液溜め部に対して出没して前記液溜め部に溜められた前記溶液を所定量ずつ基板上に付着させるニードルとからなり、
前記ニードル及び前記液溜め部の同時昇降動作、並びに前記液溜め部が停止した後の前記ニードルのみの昇降動作の2つの動作を、単一の駆動手段のみにより行うことを特徴とするマイクロアレイ作製装置。 - 前記ニードルの前記基板側先端に平坦部が設けられていることを特徴とする請求項1に記載のマイクロアレイ作製装置。
- 前記ニードルには前記溶液を保持するためのスリットが形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載のマイクロアレイ作製装置。
- 前記液溜め部の内部空間に洗浄液を流し込むことにより前記液溜め部の内部空間を洗浄する洗浄手段を備えることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のマイクロアレイ作製装置。
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