JP2004325421A - マイクロアレイ作製方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】基板上に複数の生体試料含有溶液のスポットを配置するにおいて、スポット形成作業後に、次のスポット形成に先立ち行われる洗浄操作を確実かつ迅速なものとし、各スポット間のコンタミネーションを防止して品質の高いマイクロアレイを提供すると共に、マイクロアレイ作製の効率化を図るマイクロアレイ作製方法を提供することを課題とする。
【解決手段】基板上に複数種の生体試料含有溶液のスポットを、スポット配置具を用いて、複数形成するマイクロアレイ製作方法であって、各スポットの形成間に行われるスポット配置具の洗浄が、界面活性剤溶液を用いて行われることを特徴とするマイクロアレイ作製方法。
【選択図】 図6
【解決手段】基板上に複数種の生体試料含有溶液のスポットを、スポット配置具を用いて、複数形成するマイクロアレイ製作方法であって、各スポットの形成間に行われるスポット配置具の洗浄が、界面活性剤溶液を用いて行われることを特徴とするマイクロアレイ作製方法。
【選択図】 図6
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、DNA断片やオリゴヌクレオチド等の生体試料を基板上に多数配列させるマイクロアレイ作製方法およびマイクロアレイ作製装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
現在、多彩な生物の全遺伝子機能を効率的に解析するための技術開発が進んでいる。DNAマイクロアレイ(すなわちDNAチップ)は、スライドガラスやシリコンの基板にDNA断片等を含むスポットを多数整列させたものであり、遺伝子の発現や変異、多様性などの解析に非常に有効である。
【0003】
一般的な基板の大きさは1〜数十cm2で、この領域に数千〜数十万種のDNA断片のスポットが整列されている。基板上のDNA断片は、相補性を有する蛍光標識DNAを用いて調べられる。基板上のDNA断片と蛍光標識DNAとでハイブリタイゼーションが生じると蛍光が発する。この蛍光が生じるスポットを蛍光スキャナ等で検出し、蛍光イメージを解析することで遺伝子の発現や変異、多様性などを解析することができる。
【0004】
このDNAマイクロアレイの技術を発展させるためには、基板上に密集したDNA断片のスポットを精度良く配列させるマイクロアレイ作製技術が必要になる。
【0005】
例えば特許文献1には、あらかじめ調整したDNA断片を基板に配列させるマイクロアレイ作製装置が開示されている。この装置は、細長い一対の部材間に形成された開放毛管流路に試料を保持するとともに、細長い一対の部材で構成されるヘッドの先端を基板に軽く打ち付けることにより、基板上にスポットを配置している。また、ヘッドにはこれ以外にも、溶液を保持する液溜め部、及び該液溜め部から突出し、基板にスポットを配置するスポット配置具(例えばピン又はニードル)で構成されるものも知られている。
【0006】
なお、このようなマイクロアレイ作製装置にあっては、スポットの形成作業を終えたヘッドに種類の異なる次の溶液を保持させる際、前の溶液が混濁しないようにヘッドを洗浄する必要がある。ヘッドには、ひとつの基板に同時に複数のスポットを形成するために複数のスポット配置具(例えばピン又はニードル)が設けられることが多いが、溶液の混濁を防止するためには、これら複数のスポット配置具全てを確実に洗浄しなければならない。従来、このようなマイクロアレイ作製装置のスポット配置具の洗浄は、生体試料への影響性を考慮して、水のみを用いて行われていた。そして、その洗浄作用を高める上で、例えば特許文献2、3におけるような医療用分析機の分注ノズルの洗浄の場合と同様に、洗浄部に超音波振動をかけることが行われていた。しかしながら、前の溶液によるコンタミネーションを防止する上での洗浄操作には、このような超音波振動を併用しても水のみでは十分な洗浄が行えず、先の試料が後の試料中へと持ち越されてしまうキャリーオーバーが発生し、問題となっていた。特に、試料中に含まれる生体高分子が高分子量、例えば、鎖長1000mer以上となるようなものにおいては、そのキャリーオーバーが顕著となる傾向が見られ、改良が求められていた。また、水のみを用いて洗浄を行った場合、その洗浄処理に相当の時間を要し、この洗浄工程が、マイクロアレイ作製における律速となっているところがあった。
【特許文献1】
特表平10−503841号公報
【特許文献2】
特開平1−254871号公報
【特許文献3】
特開平8−21840号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明は、基板上に複数のスポットを配置するにおいて、前に使用された生体試料含有溶液による、後の生体試料含有溶液のスポットのコンタミネーションを有効に防止することのできるマイクロアレイ作製方法およびマイクロアレイ作製装置を提供することを課題とする。本発明はまた、スポット形成作業後に、次のスポット形成に先立ち行われる洗浄操作を確実かつ迅速なものとし、マイクロアレイ作製の効率化を図ると共に品質の高いマイクロアレイを提供し得るマイクロアレイ作製方法およびマイクロアレイ作製装置を提供することを課題とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決する本発明は、基板上に複数種の生体試料含有溶液のスポットを、スポット配置具を用いて、複数形成するマイクロアレイ製作方法であって、各スポットの形成間に行われるスポット配置具の洗浄が、界面活性剤溶液を用いて行われることを特徴とするマイクロアレイ作製方法である。
【0009】
このように本発明においては、各スポットの形成間に行われるスポット配置具の洗浄操作を界面活性剤を用いておこなうため、水のみを用いた場合と比較してより良好にかつ迅速に行うことができ、各試料間のコンタミネーションが防止できると共に、マイクロアレイ作製時間の短縮化が可能となる。
【0010】
なお、従来、生体試料への影響性を考慮して、水のみを用いた洗浄が行われていたが、使用する界面活性剤として適当なものを選択すれば、本発明におけるように界面活性剤を使用することによっても、生体試料に悪影響を及ぼすことなく、確実な洗浄操作が行えることを、本発明者らは見出したものである。
【0011】
さらに、このように界面活性剤を用いた洗浄を行うことで、このようなスポット配置具を構成する部材表面の親水性が改善され、スポット配置具における狭窄の流路においても生体試料含有溶液が液滴等を形成することなくスムーズに流れ、結果的に、形成する各スポットの大きさを均等に保つことができるという、さらなる効果も見出されたものである。
【0012】
さらに本発明のマイクロアレイ作製方法の一実施形態においては、前記スポット配置具の洗浄が、スポット配置具への界面活性剤溶液の供給、水洗および乾燥という工程で行われるものであるものが示される。このように、洗浄において、スポット配置具へ界面活性剤を最初に供給することによって、より効果的な洗浄効果が得られるものである。
【0013】
さらに本発明のマイクロアレイ作製方法の一実施形態においては、前記スポット配置具が、ノズルと、その内部に配されたノズル軸線方向に往復動可能とされたスタンピングピンとを有してなるものであり、このスポット配置具への界面活性剤溶液の供給が、少なくともこのノズル先端部を界面活性剤溶液に接触させた状態で、前記スタンピングピンを往復動させることにより行われるものであるものが示される。このような形状のスポット配置具においては、スタンピングピンの往復動によって、比較的高濃度の界面活性剤であっても、スポット配置具における狭窄の流路内に、容易かつ確実に界面活性剤を供給することができるものである。
【0014】
また、本発明のマイクロアレイ作製方法の一実施形態においては、界面活性剤濃度が、5%以上であることを特徴とするものである。界面活性剤濃度として、このように比較的高濃度のものを適用することによって、その洗浄効果が大きく向上することが期待できるものである。
【0015】
本発明のマイクロアレイ作製方法の別の実施形態においては、前記水洗工程は、順に超音波洗浄、流水洗浄、および物理的水分除去からなる一連の操作を、単回ないしは複数回繰り返して行うことが示されるものである。このような水洗工程を経ることによって、洗浄に使用された界面活性剤を迅速かつ確実に除去することができるものである。
【0016】
本発明のマイクロアレイ作製方法の一実施形態においては、前記界面活性剤溶液に使用される界面活性剤が、非イオン性界面活性剤または両性界面活性剤である、より好ましくは、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、であることを特徴とする。このような界面活性剤を使用することによって、用いられる生体試料に対する界面活性剤の影響性をなくすことができるものである。
【0017】
さらに、本発明のマイクロアレイ作製方法の好ましい実施形態においては、先のスポット形成時に用いられた生体試料含有溶液の、後のスポット中へのキャリーオーバー率が、1%以下となるものである。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について実施形態に基づき詳細に説明する説明する。
【0019】
本発明のマイクロアレイ作製方法は、基板上に複数種の生体試料含有溶液のスポットを、スポット配置具を用いて、複数形成するマイクロアレイ製作方法であって、各スポットの形成間に行われるスポット配置具の洗浄が、界面活性剤溶液を用いて行われることを特徴とする。
【0020】
本発明において、前記スポット配置具の洗浄に使用される界面活性剤としては、特に限定されるものではなく、公知のいずれのものを使用することは可能であるが、生体試料含有溶液中に含まれるDNA,RNA等の生体高分子に及ぼす影響性の点から、非イオン性界面活性剤および両性界面活性剤であることが望ましい。
【0021】
非イオン界面活性剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、脂肪酸グリセリンエステル、ソルビタン脂肪酸エステル、スクロース脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、高級アルコールエチレンオキシド付加物、単長鎖ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル、ポリオキシエチレンラノリンアルコール、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸、ポリオキシエチレンプロピレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンヒマシ油若しくは硬化ヒマシ油誘導体、ポリオキシエチレンラノリン誘導体、ポリオキシエチレン脂肪酸アミド、ポリオキシエチレンアルキルアミン、アルキルピロリドン、グルカミド、アルキルポリグルコシド、モノ若しくはジアルカノールアミド、ポリオキシエチレンアルコールモノ若しくはジアミドおよびアルキルアミンオキシドなどを挙げることができる。このうち、好ましい一例としては、1〜10のオキシエチレン部分とC10−C20の直鎖若しくは分岐アルキル鎖を含むポリオキシエチレンエーテル、および1〜20のオキシエチレンのモノ−、ジ−またはトリ−脂肪酸エステルを挙げることができ、具体的には例えば、ポリオキシエチレン(8)オクチルフェニルエーテル(Triton X−114)、ポリオキシエチレン(9)オクチルフェニルエーテル(NP−40)、ポリオキシエチレン(10)オクチルフェニルエーテル(Triton X−100)、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレート(Tween20)、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノパルミテート(Tween40)、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノステアレート(Tween60)、ポリオキシエチレン(20)ソルビタントリオレエートなどを挙げることができる。特に、ポリオキシエチレンソルビタンモノ脂肪酸エステル、代表的には、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレートを好ましく用いることができる。
【0022】
両性界面活性剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、アルキルジメチルアミノ酢酸ベタイン、アルキルジメチルアミンオキシド、アルキルカルボキシメチルヒドロキシエチルイミダゾリウムベタイン、アルキルアミドプロピルベタインなどが挙げられる。
【0023】
界面活性剤としては、上記に例示した非イオン性界面活性剤および両性界面活性剤を単独にて用いることができるが、必要に応じてこれらのものを複数組み合わせて用いることも、また、これらをさらに、各種アニオン界面活性剤および/またはノニオン界面活性剤と組み合わせて用いることもできる。
【0024】
マイクロアレイの作製においては、前記したように数千〜数十万種という非常に多くの種類の生体試料含有溶液のスポットを形成するため、同時に複数のスポット配置具を用いることが一般的であるが、そのスポット配置具の数は、形成しようとするスポットの生体試料含有溶液の全種類に対応する程に多数設けることは限界があり、通常は、各スポット配置具が、いくつかの種類の生体試料含有溶液のスポット形成に兼用されることになる。
【0025】
このため、1つの種類の生体試料含有溶液のスポット形成が終了後、次の種類の生体試料含有溶液のスポット形成に先立ち、スポット配置具に付着残留する前の生体試料含有溶液による、後の生体試料含有溶液のコンタミネーションを防止するため、従来、水による洗浄操作が行われている。本発明においては、これに代えて、上記したような当該スポット配置具の接触面の洗浄に界面活性剤溶液を用いることにより、水のみを用いた場合と比較して、より短時間で効率的にスポット配置具に付着残留する生体試料含有溶液を除去することができ、生体試料含有溶液のコンタミネーションを効果的に防止できる。
【0026】
このような界面活性剤を用いて、スポット配置具の生体試料含有溶液との接触面を洗浄する方法としては、特に限定されるものではないが、好ましくは、まず、当該スポット配置具の接触面に界面活性剤を供給し、その後水洗し、乾燥するという工程によって行われることが望ましい。
【0027】
界面活性剤の再使用という面から考えれば、スポット形成後のスポット配置具を洗浄するに際し、残存試料が残ったままのスポット配置具に界面活性剤溶液を適用する前に、先に、水洗を行い、大方の残存試料を除去するといった手法の方が有利であると思われる。しかしながら、このようにして、一旦、スポット配置具内部に、水が入った状態となると、その後に、スポット配置具内部に界面活性剤溶液を送り込もうとしても、存在する水によってこれが阻害され、特に、後述するように好適である比較的高濃度の導入は困難となり、有効な洗浄作用が得なれなくなる虞れが生じる。また、水を除去するために乾燥処理を行った場合には、スポット配置具内の溶液が乾燥し、壁面に固着してしまうため、その後に界面活性剤を用いてもこれを洗浄除去することが困難となる。従って、上記したように、先に界面活性剤溶液を供給する手法を採ることが望ましい。
【0028】
また、当該スポット配置具の接触面に界面活性剤を供給し、水でリンスして過剰分を除去することによって、スポット配置具の接触面に適用される界面活性剤溶液の濃度等は、特に限定されるものではなく、また使用する界面活性剤の種類によってもある程度左右されるものであるが、例えば、界面活性剤の濃度が5%以上、好ましくは20〜60容量%、より好ましくは30〜50容量%というように比較的高濃度のものであることが望ましい。界面活性剤の濃度が極端に低いものであると、スポット配置具の接触面への界面活性剤溶液の供給は容易となるものの、残存する生体試料含有溶液を良好に除去するという洗浄効果が期待できなくなる虞れがあり、一方、界面活性剤の濃度を極端に高いものとしても、上記した範囲内における濃度を使用した場合と、残留溶液の洗浄除去作用において顕著な差異が見られず、経済性等の面から不利となるためである。
【0029】
スポット配置具の接触面に界面活性剤を供給する際には、この界面活性剤による洗浄作用を高めるため、必要に応じ、超音波振動等の従来行われているような付加的な洗浄操作を加えても良い。
【0030】
上記したように、スポット配置具の接触面に界面活性剤溶液を供給した後、接触面より遊離した残留物および使用した界面活性剤溶液を除去するために、水での洗浄を行う。
【0031】
使用される水としては、純水、脱イオン水、蒸留水などの不純物の少ないものを用いる。
【0032】
洗浄に使用される水の量としては、残留物を十分に除去できる量であれば、特に限定されるものではなく、また、水洗時における、例えば、超音波振動やスポット配置具の揺動操作などの適用の有無によっても左右されるが、使用した界面活性剤の量に対し、100容量倍以上の水を使用することが望ましい。水の量が極端に少なすぎると、残留物を十分に洗い流すことができなかったり、また、余剰の界面活性剤がスポット配置具中に残ってしまうため、続いて生体試料含有溶液のスポットを形成した場合に、このスポット中に界面活性剤が多く流出し、場合によっては、得られるマイクロアレイの特性を低下させてしまう虞れが生じるためである。一方、使用した界面活性剤の量に対して必要以上に多くの水の量を用いても、残留物の除去率はそれほど向上せず、処理時間が長期化して不経済となるのみである。さらに、本発明者らが得た知見によれば、界面活性剤がスポット配置具壁面にわずかに残って壁面を被覆した状態となると、このような界面活性剤が、次のスポット形成の際に、スポット中に流出するような虞れはないばかりか、このように壁面に残った界面活性剤によって、スポット配置具壁面の親水性が改善され、その後のスポット形成が安定化するものとなる。従って、洗浄に使用される水の量としては、使用した界面活性剤の量に対し、好ましくは100〜1000容量倍、より好ましくは100〜300容量倍程度とし、スポット配置具壁面に界面活性剤がわずかに残るようなものとすることが望ましい。
【0033】
このようにしてスポット配置具の生体試料含有溶液との接触面が、界面活性剤によって親水化される場合、特に限定されるわけではないが、当該被覆部分の水に対する接触角が、当該部位の顕微鏡による断面観察における任意の3の平均値として、界面活性剤による洗浄処理前と比較して、その角度が10%以上低減され、例えば、40〜65°、より好ましくは55〜65°の範囲内となる程度に改質される。
【0034】
このように、水による洗浄を行った後に、スポット配置具内に残る水分を除去するために、風乾、加熱乾燥等の処理を行う。
【0035】
なお、本発明において、生体試料含有溶液のスポットを形成するのに用いられるスポット配置具の形状としては特に限定されず、従来公知の各種のものを用いることができる。例えば、QUILL方式、ピン&リング方式、スプリングピン方式、圧電/電歪素子をマイクロポンプとして使用したマイクロピペット方式、その他のいずれの形態のものであってもよい。
【0036】
ここで、QUILL方式は、ピン先に形成した凹部に試料を貯め、ピン先を基板に接触させることで凹部内の試料を基板上に移して微小スポットを形成する方法であり、ピン&リング方式は、試料溶液をリング内でリザーブした後、溶液がリザーブされたリング内側を貫通するようにしてピン先でリング内の試料を捉え、基板上にスポットを形成していく方法であり、スプリングピン方式は、スプリングを内蔵した二重ピン構造で、ピン先に付着した試料を、ピン先を基板に押付けることで基板上に移して微小スポットを形成する方法であり、また、圧電/電歪素子をマイクロポンプとして使用したマイクロピペット方式は、一般にインクジェット記録方式において広く応用されている技術におけるものと同様の方式である。
【0037】
いずれの形態のスポット配置具においても、生体試料含有溶液に対する接触面、特に、微小孔路となる内面部を、界面活性剤溶液を用いて洗浄処理することが望ましい。
【0038】
次に、本発明のマイクロアレイ作製方法につき、具体的なマイクロアレイ作製装置において適用する場合を例にとり説明するが、本発明のマイクロアレイ作製方法は、上記したように、マイクロアレイ作製装置におけるスポット配置具の生体試料含有溶液に対する接触面を、界面活性剤溶液を用いた洗浄操作を行うものである限りにおいて、何ら限定されるものではない。
【0039】
図1はマイクロアレイ作製装置の一実施形態を示す平面図、図2は図1におけるII−II線方向から見たこの装置の正面図、図3は図2におけるIII−III線方向から見たこの装置の右側面図、図4は図2におけるIV−IV線方向から見たこの装置の左側面図、図5は図1におけるV−V線方向から見たこの装置の断面図である。
【0040】
この装置は、スライドガラスやシリコン等からなる基板に、あらかじめ調製したDNA断片やオリゴヌクレオチド等の生体試料の溶液のスポットを多数配列する。一般的な基板の大きさは1〜数十cm2で、この領域に多数のDNA断片のスポットを配列する。スポットの径は例えば数十ミクロンから数百ミクロンのサイズを有する。
【0041】
図1に示すように、マイクロアレイ作製装置は二つの領域を有する。一つは、溶液を保持するマイクロアレイ作製用ヘッド51(以下単にヘッドという)を基板に打ち付け、基板上に生体試料の溶液のスポットを配列させるスタンピング領域1である。もう一つはスポットを形成した後のヘッド51を洗浄し、洗浄したヘッド51に種類の異なる次の溶液を保持させる洗浄領域2である。ヘッドの構成については後述する。
【0042】
まず、スタンピング領域について説明する。作業台4上には多数の基板3…がマトリクス状に載置される。基板3はスライドガラスやシリコン等からなり、基板3の表面には生体試料を付着できるように表面処理がなされている。
【0043】
作業台4上にはヘッド51を搬送し、ヘッド51に二次元座標を与える第2の搬送手段としてのXY2軸搬送機構6が取り付けられる。このXY2軸搬送機構6は後述する受け渡し位置104までヘッド51を受け取りにいき、スポットの形成が終了した後のヘッド51を再び受け渡し位置104まで搬送する。
【0044】
図1及び図4に示すように、XY2軸搬送機構6は、X軸搬送機構6XとY軸搬送機構6Yとから構成される。X軸移動機構6XはX軸方向に延設された長手固定フレーム8と、この固定フレームにX軸方向に伸長して装着されたレール9,9及び該レール9,9に対して移動自在に組まれたスライダ10,10からなるリニアガイドと、このリニアガイドによって案内されるテーブル11と、該テーブル11を駆動するリニアモータ12とを備える。X軸搬送機構6Xの、基板を挟んで反対側にはX軸方向に延設された長手固定フレーム13と、固定フレーム13にX軸方向に伸長して装着されたレール14及び該レール14に対して移動自在に組み込まれたスライダ15からなるリニアガイドが設けられる。
【0045】
図1及び図2に示すように、Y軸駆動機構6Yは、X軸駆動機構6Xによって駆動されるテーブル11とスライダ15との間に架設された長手可動フレーム17と、この可動フレーム17にX軸方向に伸長して装着されたレール18,18及び該レール18,18に対して移動自在に組み込まれたスライダ19,19からなるリニアガイドと、このリニアガイドによって案内されるテーブル20と、該テーブル20を駆動するリニアモータ21とを備える。
【0046】
XY2軸搬送機構6には、移動手段としてのZ軸駆動機構23が支持される。このZ軸駆動機構23が上記X軸及びY軸に直交するZ軸方向、すなわち基板3に対して近接・離間する方向にヘッド51を移動する。Z軸駆動機構23は、ヘッド51全体を昇降させるためにZ1軸駆動機構23Z1を有し、ヘッド51の液溜め部材からニードルを突出させるためにZ2軸駆動機構23Z2を有する。
【0047】
Z1軸駆動機構23Z1は、送りねじ及び電動モータを用いてスライダを移動させる電動アクチュエータからなる。
【0048】
図1、図2及び図5に示すように、Z1軸駆動機構23Z1のスライダには、テーブル41が取り付けられ、このテーブル41にZ2軸移動機構23Z2が取り付けられている。Z2軸駆動機構23Z2は、Z1軸駆動機構23Z1と同様な構成を有する電動アクチュエータからなり、Z1軸駆動機構23Z1よりも小型化されている。このZ2軸移動機構23Z2のスライダにはヘッド51のニードルを昇降させるためのL形アーム42が取り付けられる。L形アーム42は図示しないエアシリンダによってヘッド51に差し込み可能にされている(図7参照)。L形アーム42の先端をヘッド51に差し込み、この差し込んだL形アーム42をZ2軸移動機構23Z2によって降下させることによってヘッド51の液溜め部材からニードルが突出する。
【0049】
Z1軸駆動機構23Z1のテーブル41には、ヘッド51の姿勢を変化させる姿勢変化手段としてのΘ軸回転機構43が取り付けられる。このΘ軸回転機構43はヘッド51を水平面内で旋回させる。Θ軸回転機構43は、テーブル41に取り付けられた電動モータ44と、テーブル41にZ軸周りにおいて回転自在に支持された略円筒状のチャック部45とを備える。チャック部45は電動モータ44に継ぎ手を介して連結されている。このチャック部45がヘッド51を着脱自在に把持する。
【0050】
図6及び図7は、保持手段としてのヘッド51を示す。ヘッド51はチャック部45に取り付けられる円筒状の被チャック部54と、この被チャック部54の下面に固定される略矩形状の上部プレート55と、この上部プレート55に複数本の支柱56…を介して結合される基体部としての略矩形状の下部プレート57とを概略備える。
【0051】
下部プレート57には、基板3…に供給すべき溶液が保持される液溜め部としての液溜め部材52…が互いに平行にして縦横に取り付けられる。この液溜め部材52…内にはスポット配置具としてのニードル53…(あるいはピンとも呼ばれる)が収納されている。このニードル53は、下部プレート57に固定された複数のニードル用ブッシュ66によって上下方向へ往復運動可能に案内されている。この実施形態では縦4列横12列の合計48本の液溜め部材52…及びニードル53…が取り付けられているが、勿論液溜め部材52…及びニードル53…の本数はひとつの基板3に同時にスポットを形成できるスポット数によって種々設定し得る。
【0052】
また、下部プレート57には、複数のニードル53…全体にわたる洗浄液等供給用空間58が設けられる。そして、この洗浄液等供給用空間58は図8にも示すように、縦横に配列された複数の液溜め部材52…全てに連通している。
【0053】
上部プレート55と下部プレート57との間には、支柱に対してスライド可能に中間プレート59が設けられる。中間プレート59の下面には連結部60を介してニードル支持プレート61が固定され、複数本のニードル53…はこのニードル支持プレート61に支持されている。ニードル53…の上部にはニードル支持プレート61の上面に載せられるフランジ53d…が形成され、このフランジ53d…と中間プレート59との間には、コイルスプリング62…が介在されている。このコイルスプリング62…は、ニードル53が基板3に当接するとき圧縮変形し、ニードル53から基板3に加わる荷重を調整する。また、中間プレート59には支柱56に対する中間プレート59のスライド運動を案内するブッシュ63が設けられる。中間プレート59と下部プレート57との間にはニードル53を上昇させ、液溜め部材52内に待避させるためのコイルスプリング64が設けられる。
【0054】
図9は、ニードル53…が降下した状態を示す。この図に示すように中間プレート59を降下すると、ニードル53…も中間プレート59と共に降下し、液溜め部材52…の下端からニードル53…が突出する。ニードル53…が基板3…に当接すると、ニードル53…から基板3…に過度の荷重がかからないようにコイルスプリング62…が圧縮変形する。
【0055】
各駆動機構によるヘッド51の動作について説明する。まず、ヘッド51はXY2軸搬送機構6によって基板3上方のX方向及びY方向に位置決めされる。次に、Z1軸移動機構23Z1によってヘッド51全体が降下され、ヘッド51が基板からZ方向に所定距離離して位置決めされる。次に、Z2軸移動機構23Z2のL形アーム42がヘッド51内の中間プレート59上方に進出される。Z2軸移動機構23Z2によってL形アーム42を降下すると、中間プレート59がL形アーム42によって押し下げられ、これによりニードル53が液溜め部材52から突出する。一方、Z2軸移動機構23Z2によってL形アーム42を上昇すると、コイルスプリング64の復元力によって中間プレート59が上昇し、これによりニードル53が液溜め部材52内に退避する。
【0056】
図10は、溶液を保持する液溜め部材52及びニードル53を示す。液溜め部材52は先細りのテーパ管形状に形成され、そのテーパ状の内部空間には溶液と共にニードル53が収納されている。最も幅が狭くなっている液溜め部材52の下部でもニードル53の上下運動を案内している。
【0057】
ニードル53の先端部53aも外周面が先細りのテーパ形状に形成されている。また、基板3に接触するニードル53の先端面53bは円形又は多角形の平坦面に形成される。先端部53aの外周面は、ストレート部53cの外周面及びニードル53の先端面53bに比べ、溶液を保持できるようにその表面粗さが粗くされている。この表面粗さは、ニードル53が液溜め部材52から所定量突出し、ニードル53の先端面53bが基板3に接触するとき、先端面53bに保持される溶液と液溜め部材52内の溶液とがつながるように設定される。また、この表面粗さは砥石加工又は放電加工によって形成される。例えば砥石加工の場合、砥石をニードル53の長手方向に移動することで、先端部53aの外周面が粗くされる。
【0058】
図11(a)〜(e)は、液溜め部材52内に溜められた溶液を基板3上に配置する方法を示す工程図である。この図(a)〜(e)は、液溜め部材52に対してニードル53がZ軸方向(すなわち上下方向)に移動する場合の溶液の様子を示している。
【0059】
まず、図中(a)に示すように、基板3の上方に液溜め部材52が位置決めされる。次に図中(b),(c)に示すように、液溜め部材52に対してニードル53を除々に下降させる。次に図中(d)に示すように、ニードル53を液溜め部材52から突出させる。このとき、溶液のニードルへの付着によって、液溜め部材52内の溶液が引っ張り出される。そして、ニードル53の先端面53bを基板3に接触させる。ニードル53の先端面53bが基板3に機械的に接触すると、ニードル53の先端面53bから基板3に溶液が移動し、基板3上に溶液が配置される。このとき、ニードル53の先端に保持される溶液と液溜め部材52内の溶液とがつながっている。そして、図中(e)に示すように、ニードル53を基板3から退避させると、基板3上に溶液のスポットが形成される。
【0060】
このように、液溜め部材52に保持される溶液とニードル53の先端に保持される溶液とを一体にし、溶液のニードルへの付着を利用して液溜め部材52から溶液を引っ張り出して基板3に配置することで、基板3に配置するスポットの大きさや形状を一定に保つことができる。また、ニードル53の外周面を粗くすることで、ニードル53の外周面に保持される溶液の量が安定する。このため、基板3に配置するスポットの大きさや形状をより一定に保つことができる。
【0061】
次に、洗浄領域について説明する。この洗浄領域ではスポットを形成した後のヘッド51を、界面活性剤溶液で洗浄し、次いで、超音波洗浄し、すすぎ洗浄し、その後乾燥する。洗浄後のヘッド51は新しい次の生体試料の溶液を保持する。
【0062】
図1に示すように、洗浄台96上には、ヘッド51を超音波洗浄する洗浄等施工部としての超音波洗浄部71と、ヘッド51を界面活性剤溶液にて処理する界面活性剤溶液処理部72aと、ヘッド51をすすぎ洗浄する洗浄等施工部としてのすすぎ洗浄部72bと、ヘッド51を乾燥する乾燥部73と、生体試料を含む溶液を貯える溶液貯留部74とが設けられる。
【0063】
また、洗浄台96上には、これら超音波洗浄部71、界面活性剤溶液処理部72a、すすぎ洗浄部72b、乾燥部73及び溶液貯留部74の間でヘッド51を搬送し、ヘッド51に2次元座標を与える第1の搬送手段としてのXY2軸搬送機構75が設けられる。
【0064】
このXY2軸搬送機構75は、X軸搬送機構75XとY軸搬送機構75Yとから構成される。
【0065】
図1及び図3に示すように、X軸移動機構75XはX軸方向に延設された長手固定フレーム81と、この固定フレーム81にX軸方向に伸長して装着されたレール82,82及び該レール82,82に対して移動自在に組まれたスライダ83,83からなるリニアガイドと、このリニアガイドによって案内されるテーブル84と、該テーブル84を駆動する送りねじ85とを備える。
【0066】
Y軸駆動機構75Yは、X軸駆動機構75Xによって駆動されるテーブル84上に固定された長手可動フレーム87と、この可動フレーム87にY軸方向に伸長して装着されたレール88及び該レール88に対して移動自在に組み込まれたスライダ89からなるリニアガイドと、このリニアガイドによって案内されるテーブル90と、該テーブル90を駆動する送りねじ91とを備える。
【0067】
図1及び図2に示すように、XY2軸搬送機構75には移動手段としてのZ軸駆動機構95が取り付けられる。Z軸駆動機構95は、ヘッド51をX軸及びY軸に直交するZ軸方向、すなわち洗浄台96に対して直交する方向に移動する。このZ軸駆動機構95は、スタンピング領域におけるZ軸駆動機構23と同様に、Z1軸駆動機構95Z1及びZ2軸駆動機構95Z2を有する。そして、超音波洗浄部71、界面活性剤溶液処理部72a、すすぎ洗浄部72b、乾燥部73及び溶液貯留部74のどの位置でも液溜め部材52に対してニードル53を突出できるようになっている。
【0068】
Z1軸駆動機構95Z1は、スタンピング領域におけるZ1軸駆動機構23Z1と同様に、送りねじ及び電動モータを用いてブロックを移動させる電動アクチュエータからなる。
【0069】
Z1軸駆動機構95Z1のテーブル97には、Z2軸移動機構95Z2が取り付けられる。Z2軸駆動機構95Z2は、Z1軸駆動機構95Z1と同様な構成を有する電動アクチュエータからなり、Z1軸駆動機構95Z1よりも小型化されている。このZ2軸移動機構95Z2のテーブル98にはヘッド51のニードル53を昇降させるためのL形アーム99が取り付けられる。L形アーム99は図示しないエアシリンダによってヘッド51に差し込み可能にされている。L形アーム99の先端をヘッドに差し込み、この差し込んだL形アーム99をZ2軸移動機構95Z2によって降下させることによってヘッド51の液溜め部材52からニードル53が突出する。
【0070】
また、Z1軸駆動機構のテーブル97には旋回部としての旋回用モータ100が取り付けられ、この旋回用モータ100の出力軸には水平面内を旋回する円板101が取り付けられる。円板101の下面には180度間隔を開けてヘッド51を把持可能な把持部としての一対のクランプ102,102が取り付けられる。クランプ102,102は図示しないエアシリンダ等によって開閉され、ヘッド51の外周に形成された平坦部103(図6及び図7参照)を挟む。
【0071】
洗浄領域のXY2軸搬送機構75によって搬送されるヘッド51は、上記スタンピング領域の2軸搬送機構6によって搬送されるヘッド51と同一の構成を有するので、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0072】
旋回用モータ100は180度ずつ旋回し、これによりスタンピング領域のXY2軸搬送機構6から洗浄領域のXY2軸搬送機構75へのヘッド51の受け渡し、並びに洗浄領域のXY2軸搬送機構75からスタンピング領域のXY2軸搬送機構6へのヘッド51の受け渡しが行われる。
【0073】
具体的には、図1及び図2に示すように、まずスタンピング領域のXY2軸搬送機構6がスポットを形成した後のヘッド51を受け渡し位置104まで搬送する。一方、洗浄領域のXY2軸搬送機構75が新しい溶液を保持したヘッド51を受け渡し位置104から180度位置をずらした控え位置105まで搬送する。このとき、受け渡し位置104にはヘッドを把持していない空のクランプが位置する。次に洗浄領域のXY2軸搬送機構75のクランプ102が受け渡し位置104に搬送されたスポット形成後のヘッド51を把持する。これによりスタンピング領域のXY2軸搬送機構6から洗浄領域のXY2軸搬送機構75にヘッドが受け渡される。次に旋回用モータ100が円板101を180度旋回させ、スポット形成後のヘッド51を控え位置105に位置させ且つ新たな溶液を保持したヘッド51を受け渡し位置104に位置させる。次にスタンピング領域のXY2軸搬送機構75のチャック部45が新たな溶液を保持したヘッド51を把持する。これにより、洗浄領域のXY2軸搬送機構75からスタンピング領域のXY2軸搬送機構6にヘッドが受け渡される。
【0074】
このように、スタンピング領域のXY2軸搬送機構6と洗浄領域のXY2軸搬送機構75とで互いにヘッド51を受け渡せるようにしたので、一方のヘッド51で基板3上にスポットを形成している間に、他方のヘッド51を洗浄等することができる。
【0075】
次に、マイクロアレイ作製装置において、生体試料含有溶液を供給してスポットを形成する毎に、これに先立ち、当該スポット配置具の接触面を界面活性剤溶液を用いて洗浄する操作につき説明する。
【0076】
まず、スポット形成後のヘッド51は、XY2軸搬送機構75によって界面活性剤溶液処理部72aに搬送される。界面活性剤溶液処理部72aは、界面活性剤溶液槽を有しており、この上部にヘッド51を移動させ、ヘッド51に取り付けられたスポット配置具の液溜め部材52の先端部を、界面活性剤溶液槽中の界面活性剤溶液中に浸漬させる。この状態で、ニードル53を上下動させる、例えば、0.5〜2回/秒程度の速さで、1〜10回、好ましくは3〜5回程度上下動させると、この動きによって、比較的高濃度の界面活性剤溶液であっても、液溜め部材52の内部へと容易に運ばれ、液溜め部材52の内側、及びニードル53の外面に界面活性剤溶液を付与することができる。
【0077】
次いで、洗浄領域のXY2軸搬送機構75によってヘッド51が、超音波洗浄部71に搬送される。超音波洗浄部71では、超音波振動をかけた純水中に液溜め部材52を浸して、その外側を洗浄する。なお、この超音波洗浄部71では、液溜め部材52からニードル53を突出させた状態でニードル53の外側も洗浄するのが望ましい。
【0078】
さらに、ヘッド51は、XY2軸搬送機構75によってすすぎ洗浄部72bに搬送される。すすぎ洗浄部72bにおいては、洗浄液としての超純水が貯えられる純水槽にヘッド51を組み込み、液溜め部材52を超純水に漬けることによって、液溜め部材52の外側が洗浄される。また、ヘッド51を純水槽に組み込むことによって、純水槽に設けた、前記図6における純水供給管108がヘッド51に接続され、純水供給管と洗浄液等供給用空間58とが連通する。ヘッド51の下部プレート57には、液溜め部材52の後端に対応して洗浄液等供給用空間58が設けられる。該洗浄液等供給用空間58は各液溜め部材52にわたる広範な単一空間とされている。純水供給管108から圧力をもった純水が供給されると、純水がこの単一空間内で拡がる。単一空間を充満した純水は各液溜め部材52に供給される。
【0079】
液溜め部材52の内側に圧力をかけて水を供給することで、付着残留試料の除去ないし界面活性剤の除去のための洗浄時間を短くすることができる。また、複数の液溜め部材52…にわたる単一空間を形成することで、複数の液溜め部材52…内に供給される純水の圧力損失が低減し、且つ各液溜め部材52間で圧力損失が略均等になる。したがって、複数の液溜め部材52…の内側及び複数のニードル53…の外側に略均等な圧力をかけて洗浄することができる。
【0080】
図1に示すように、すすぎ洗浄後のヘッド51は、XY2軸搬送機構75によって乾燥部73に搬送される。
【0081】
乾燥部73の乾燥槽の中で、前記図6における純水供給管108と同様な配置構成を有する真空吸引管(図示せず)がヘッド51に接続され、乾燥槽につながっているこの真空吸引管と洗浄液等供給用空間58とが連通する。この状態で、洗浄液等供給用空間58を真空吸引し、液溜め部材52空間内に残る水分等を吸引除去する。
【0082】
なお、界面活性剤の除去が、十分でないときは、必要に応じて、この乾燥部での水分の真空吸引の後に、ヘッド51を再度、前記超音波洗浄部71へと、さらにすすぎ洗浄部72b、乾燥部73へと送り、超音波洗浄部71およびすすぎ洗浄部72bでの洗浄および真空吸引の工程を複数回繰り返すことができる。
【0083】
その後、この乾燥部73では、液溜め部材52の内側及び外側、及びニードル53の外側を、例えば乾燥圧縮エアー、真空吸引等を用いて十分に乾燥させる。
【0084】
上記したように、使用される界面活性剤の汚れ性という面から考えれば、スポット形成後のヘッド51を、界面活性剤溶液槽へと浸漬させる前に、先に、超音波洗浄部71ないしすすぎ洗浄部72bで一旦水洗し、大方の残存試料を除去するという手法も考えられるが、このようにして、一旦、液溜め部材52内部に、水が入った状態となると、その後に、上記したような操作にて、液溜め部材52内部に界面活性剤溶液を送り込もうとしても、存在する水によってこれが阻害され、結局、十分な量ないし濃度の界面活性剤を液溜め部材52内部等と接触させることが困難となる虞れがあるので、上記したように、先に界面活性剤を供給する手法を採ることが望ましい。
【0085】
その後、図1及び図2に示すように、乾燥後のヘッド51は、XY2軸搬送機構75によって溶液貯留部74に搬送される。溶液貯留部74は、溶液を貯える複数枚の溶液保持材としてのタイタープレート121…が収納されるカセット122と、このカセット122からタイタープレート121を取り出し、ロード位置132に搬送するプレート搬送機構123とを備える。この溶液貯留部74では、洗浄後のヘッド51に新しい生体試料の溶液を充填する。溶液にヘッド51を漬けて溶液を吸引する動作はロードと呼ばれる。
【0086】
各タイタープレート121には複数の(例えば384個の)凹部が配列され、この凹部に生体試料の溶液が溜められている。例えばヘッドが48本の液溜め部材を有するとすると、一枚のタイタープレートで8回ロードすることができる。複数の凹部には同種類の溶液が充填される場合もあるし、異種の溶液が充填される場合もある。
【0087】
複数枚(例えば10枚)のタイタープレート121…は、Z軸方向(すなわち上下方向)に均等間隔を開けてカセット122に収納されている。カセット122は洗浄台96の上下に2組設けられ、この装置では合計20枚のタイタープレート121を収納している。カセット122の搬送機構123側にはタイタープレート121を出し入れするための開口が形成されている。また、カセット122の上面には人手でつかむための把手125が設けられる。
【0088】
カセット122は装置にスライド可能に取り付けられたカセット支持台124上に載置される。このカセット支持台124を人手で引き出し、カセット支持台124の上にカセット122を載せ、カセット支持台124を人手で再び元の位置に戻すことで、カセット122が装置に組み込まれる。
【0089】
プレート搬送機構123は、Z軸駆動機構123ZとY軸駆動機構123YとX軸駆動機構123Xとから構成される。Z軸駆動機構123Zは、送りねじ及び電動モータを用いてスライダを移動させる上述の電動アクチュエータと同じ構成を有する。Z軸駆動機構123Zは、上端のタイタープレート121と下端のタイタープレート121との間でタイタープレート121を支持する支持板126を上下動させる。
【0090】
Z軸駆動機構123Zのテーブル127にはX軸移動機構123Xが取り付けられる。このX軸移動機構123Xは、所謂ロッドレスシリンダからなる。ロッドレスシリンダは、X軸方向に伸長する軌道レール128と、該軌道レール128をスライド可能なテーブル129とを備える。
【0091】
X軸移動機構123Xのテーブル129にはY軸移動機構123Yが取り付けられる。このY軸移動機構123Yも、所謂ロッドレスシリンダからなり、テーブル130をY軸方向に移動させると共にテーブル130をY軸方向の2つの位置で位置決めする。
【0092】
タイタープレート121がロード位置132まで搬送された後、洗浄・乾燥後のヘッド51も2軸搬送機構75によってロード位置まで搬送される。このロード位置132では、生体試料の溶液に液溜め部材52を漬けて溶液が吸引される。
【0093】
溶液の吸引方法について説明する。まず液溜め部材52をタイタープレート121内の凹部に差込み、液溜め部材52の先端を溶液に浸ける。次に液溜め部材52の位置を固定したままニードル53を上昇させると、ニードル53の上昇に合わせて溶液が引き上げられ、液溜め部材52内に溶液が充填される。この状態から液溜め部材52及びニードル53を引き上げると、液溜め部材に充填された溶液がそのまま保持される。
【0094】
洗浄台96上には、ヘッド置場135が設けられる。ヘッド51は最初にこのヘッド置場135におかれる。洗浄領域のXY2軸搬送機構75がヘッド置場135に置かれた、ヘッド51を取りに行くことから装置の動作が始まる。
【0095】
次に、マイクロアレイを作製する手順に則して、本実施形態のマイクロアレイ作製装置の全体動作について説明する。なお、以下の工程では、スタンピング領域のXY2軸搬送機構6及びZ軸駆動機構23、及び洗浄領域のXY2軸搬送機構75及びZ軸駆動機構95を適宜動作させることにより、ヘッド51を所定の位置に順次位置決めする。このような制御は不図示の制御装置により実行される。
【0096】
まず、準備段階としてスタンピング領域に複数の基板3…を配列し、真空装置を作動させて基板3…を吸引・固定する。テスト台5には試験的にマイクロアレイを形成するための基板あるいはダミー基板を固定する。一方、洗浄領域の溶液貯留部74のカセット122内に複数枚のタイタープレート121…を収納する。タイタープレート121…の各凹部には例えば複数種のDNA断片の溶液が入れられる。
【0097】
次に、洗浄領域のXY2軸搬送機構75がヘッド置場135に置かれているヘッド51を取りに行く。ここでは、一対のクランプ102,102の内、一方のクランプ102のみがヘッド51を把持する。
【0098】
次に、XY2軸搬送機構75は把持したヘッド51をロード位置132に搬送する。ここでは、液溜め部材52内に溶液を吸引するロード工程が行われる。プレート搬送機構123は、ヘッド51がロード位置132に搬送される前に、必要な溶液が入れられたタイタープレート121をロード位置132に搬送する。XY2軸搬送機構75がヘッド51をロード位置132まで搬送した後、洗浄領域のZ軸駆動機構123Zは、液溜め部材52が溶液を吸引するように液溜め部材52及びニードル53を昇降する。
【0099】
次に、洗浄領域のXY2軸搬送機構75は、溶液を保持したヘッド51を受け渡し位置104まで搬送する。
【0100】
次に、スタンピング領域のXY2軸搬送機構6は、空のチャック部45を受け渡し位置104まで搬送する。そして、スタンピング領域のZ1軸駆動機構がチャック部45を降下し、チャック部45で溶液を保持しているヘッドを把持する。これにより、洗浄領域のXY2軸搬送機構75からスタンピング領域のXY2軸搬送機構6へヘッドが受け渡される。
【0101】
次に、スタンピング領域のXY2軸搬送機構6は、ヘッド51をテスト台5に搬送する。このテスト台5では、ニードル53に付着する溶液の量を調整するテスト工程が行われる。
【0102】
テスト工程が終了した後、基板3にスポットを形成するスタンピング工程が行われる。このスタンピング工程では、まずスタンピング領域のXY2軸搬送機構6がヘッド51を基板3上のスポット形成位置に移動する。そして、スタンピング領域のZ1軸駆動機構23Z1がヘッド51を降下し、基板3の僅か上方にヘッド51を位置させる。次に、スタンピング領域のZ2軸駆動機構23Z2が液溜め部材52からニードル53を突出させ、基板3にニードル53を打ち付ける。
【0103】
所定の基板にスポットを形成した後、スタンピング領域のXY2軸搬送機構はヘッドを次の基板に移動する。そして再び上述のスタンピング工程を繰り返す。
【0104】
スタンピング領域のXY2軸搬送機構6がスタンピング工程を繰り返している間、洗浄領域のXY2軸搬送機構75は、ヘッド置場135に置かれた残りのヘッド51を把持し、ロード位置132に搬送する。このロード位置132では液溜め部材52内に溶液を吸引するロード工程が行われる。そして、洗浄領域のXY2軸搬送機構75は、溶液を保持したヘッド51を控え位置105まで搬送する。このとき受け渡し位置104にはヘッドを把持していない空のクランプ102が位置する。
【0105】
作業台4上の全ての基板3…にスポットを形成した後、スタンピング領域のXY2軸搬送機構6はスポットを形成した後のヘッド51を受け渡し位置104に搬送する。そして、スタンピング領域のXY2軸搬送機構6と洗浄領域のXY2軸搬送機構75との間で把持しているヘッド51,51を互いに受け渡す。
【0106】
受け渡し工程を終えたスタンピング領域のXY2軸搬送機構6は、再びヘッド51を基板上に搬送する。そして、上記テスト工程及びスタンピング工程を実行する。
【0107】
受け渡し工程を終えた洗浄領域のXY2軸搬送機構75は、スタンピング領域のXY2軸搬送機構6がテスト工程及びスタンピング工程を実行するのと同時に、洗浄工程を実行する。この洗浄工程では、まずスポットを形成した後のヘッド51を前記したようにまず、界面活性剤溶液処理部72aに搬送し、液溜め部材52の内面および外面、並びにニードル53の外面に界面活性剤を適用する。次いで、ヘッド51を超音波洗浄部71に搬送し、液溜め部材52の外側を超音波洗浄する。次いで、ヘッド51をすすぎ洗浄部72に搬送し、液溜め部材52の内側、外側及びニードル53をすすぎ洗浄する。その後ヘッド51を乾燥部73に搬送し、液溜め部材52及びニードル53を乾燥する。
【0108】
洗浄領域のXY2軸搬送機構75は洗浄後のヘッド51をロード位置132に再び搬送する。このロード位置では、洗浄後のヘッド51に新しい溶液を吸引させるロード工程が再び行われる。
【0109】
これ以降、スタンピング領域のXY2軸搬送機構6は、上記ヘッド受け渡し工程、上記テスト工程、及び上記スタンピング工程を順次実行する。一方、洗浄領域のXY2軸搬送機構75は、上記ヘッド受け渡し工程、上記洗浄工程、及びロード工程を順次実行する。
【0110】
なお、上記実施形態では、保持手段(ヘッド)として、ニードルと液溜め部材を具備したものを示したが、ニードルのみを有する保持手段も適用可能である。
【0111】
【実施例】
次に本発明を実施例に基づき具体的に説明する。
実施例1
図1に示すような構成を有する装置において、16本のスポット配置具(液溜め部材52およびニードル53)を有するヘッドを用い、第1試料のスタンピングの後、界面活性剤溶液を用いた洗浄操作を行い、引きつづき第2試料のスタンピングを行い、第2試料のスタンピングスポットにおける第1試料のキャリーオーバー率を測定した。
【0112】
なお、用いたニードルの先端直径は75μmであった。第1試料としては、3xSSCバッファ中に、(1)蛍光色素(ローダミン)を10pmol/μLの割合で添加したもの、(2)蛍光標識されたオリゴDNA(21mer)を10pmol/μLの割合で添加したもの、(3)蛍光標識されたオリゴDNA(45mer)を10pmol/μLの割合で添加したもの、および(4)蛍光標識されたcDNA(400mer)を1pmol/μLの割合で添加したものを用い、また第2試料としては3xSSCバッファのみを用いた。そして、キャリーオーバー率は、第1試料の各スポットの蛍光強度と、第2試料(キャリーオーバーが全くなければ蛍光しない)の各スポットの蛍光強度とを測ることにより算出した。
【0113】
また、界面活性剤としては、40容量%濃度の界面活性剤(Tween20)を用い、界面活性剤使用後に超純水で約30秒の洗浄を行った。
【0114】
なお、比較対照のために、界面活性剤を用いず、超純水で約30秒の洗浄のみを行ったものについても同様にキャリーオーバー率を測定した。
【0115】
得られた結果を以下に示す。
【0116】
【表1】
このように、界面活性剤溶液を使用した洗浄を行った場合、キャリーオーバー率は大幅に低減された。
【0117】
また、別途、このような界面活性剤を使用した洗浄を行った後に、上記したようなオリゴDNA(21mer)、オリゴDNA(45mer)およびcDNA(400mer)をはじめとする各種の生体試料を含有する溶液のスタンピングを行い、得られた各スポット中に含まれる生体試料の異常の有無を調べたが、いずれにおいても生体試料の分解、変性等の異状は見られなかった。
実施例2
16本のスポット配置具(液溜め部材52およびニードル53)を有するヘッドを用いて、第1試料のスタンピングの後、以下に示すような各種濃度の界面活性剤溶液を用いて洗浄操作を行い、引きつづき第2試料のスタンピングを行い、第2試料のスタンピングスポットにおける第1試料のキャリーオーバー率を測定し、界面活性剤濃度の違いによる洗浄効果の差異を調べた。なお、この実施例2における界面活性剤溶液での洗浄操作は、実施例1におけるものよりも処理時間および使用液量を増加させた条件下にて行なわれた。
【0118】
また、用いたニードルの先端直径は75μmで、第1試料としては、3xSSCバッファ中に、蛍光色素(ローダミン)を10pmol/μLの割合で添加したものを用い、第2試料としては3xSSCバッファのみを用いた。キャリーオーバー率は、実施例1におけると同様に、第1試料の各スポットの蛍光強度と、第2試料(キャリーオーバーが全くなければ蛍光しない)の各スポットの蛍光強度とを測ることにより算出した。
【0119】
また、界面活性剤としては、Tween20を用い、その濃度を20、30、40、50、容量%としたものをそれぞれ準備した。そして、界面活性剤使用後に超純水で約30秒の洗浄を行った。得られた結果を以下に示す。
【0120】
【表2】
実施例3
図1に示すような構成を有する装置において、16本のスポット配置具(液溜め部材52およびニードル53)を有するヘッドを用い、100回の試料のスタンピングを行った。なお、試料としては、3xSSCバッファー中に蛍光色素(ローダミン、)に10pmol/μL添加したものを用い、各スポットの蛍光強度を測ることにより、各スポットの相対的液量を求めた。
【0121】
各スポットのスタンピング操作の後には、スポット配置具は、40容量%濃度の界面活性剤(Tween20)溶液およびその後の超純水での洗浄という処理を行われた。なお、比較対照のため、界面活性剤を使用せず同量の水のみにて洗浄操作を行ったものについても同様に測定した。
【0122】
その結果、界面活性剤による被覆を行った場合には、各スポットのばらつき(標準偏差)は、0.076であり、一方、水のみで洗浄したものにおいては、0.117であり、また界面活性剤による被覆を行った場合と水のみで洗浄した場合における蛍光強度比は、水のみで洗浄した場合を1とした場合に、界面活性剤による被覆を行った場合は1.8であった。これらの点から、界面活性剤を用いた洗浄操作を行うことにより、液溜め部材52およびニードル53の表面状態が安定(濡れ性が安定)し、スポットのばらつきが少なくなり、またスポット量が増加した。
実施例4
界面活性剤洗浄による濡れ性の変化を測定した。円筒形の液溜め部材52内面上での測定は困難であるため、この液溜め部材52と同じステンレス鋼製のプレートを、同様の面粗度(Ra=0.1 #600番研磨)としたものを使用し、界面活性剤(Tween20)被覆前後の接触角を測定することで、濡れ性の変化を測定した。なお、Tween20溶液としては、40容量%濃度のものを用い、これをプレート上に塗布後、実際のリンス工程と同様となるように30秒ほどの流水洗浄をおこなった後に、試験を行った。
【0123】
なお、測定においては、水滴量は12μLとし、顕微鏡による断面観察における任意の3点の平均値として界面活性剤被覆前後による接触角を求めた。
【0124】
この結果、界面活性剤被覆前においては、接触角は74.95°であったのに対し、被覆後においては64.49°となり、その差が10.46°と、大きく濡れ性が変化した。
【0125】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、基板上に複数種の生体試料含有溶液のスポットを、スポット配置具を用いて複数形成するにおいて、各スポットの形成間に行われるスポット配置具の洗浄が、界面活性剤溶液を用いて行うものであるので、各試料溶液間のコンタミネーションを有効に抑制することがで、い、またスポット形成作業後に、次のスポット形成に先立ち行われる洗浄操作を確実かつ迅速なものとし、マイクロアレイ作製の効率化を図ると共に品質の高いマイクロアレイを提供しすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施形態において使用されるマイクロアレイ作製装置を示す平面図。
【図2】図1におけるII−II線方向から見たマイクロアレイ作製装置の正面図。
【図3】図2におけるIII−III線方向から見たマイクロアレイ作製装置の右側面図。
【図4】図2におけるIV−IV線方向から見たマイクロアレイ作製装置の左側面図。
【図5】図1におけるV−V線方向から見たマイクロアレイ作製装置の断面図。
【図6】ヘッドの正面図。
【図7】図6におけるIX−IX線方向から見たヘッドの右側面図。
【図8】図6におけるX−X線方向から見たヘッドの底面図。
【図9】ニードルが液溜め部材から突出している状態を示すヘッドの正面図。
【図10】液溜め部材及びニードルを示す詳細図。
【図11】液溜め部材内に溜められた溶液を基板上に配置する方法を示す工程図。
【符号の説明】
3…基板
4…作業台
6…スタンピング領域のXY2軸搬送機構(搬送手段)
23,95…Z軸駆動機構(移動手段)
51…ヘッド(保持手段)
52…液溜め部材(液溜め部)
53…ニードル(スポット配置具)
57…下部プレート(基体部)
58…洗浄液等供給用空間
71…超音波洗浄部(洗浄等施工部)
71a…界面活性剤処理部(洗浄等施工部)
72b…すすぎ洗浄部(洗浄等施工部)
74…溶液貯留部(洗浄等施工部)
75…洗浄領域のXY2軸搬送機構(搬送手段)
【発明の属する技術分野】
本発明は、DNA断片やオリゴヌクレオチド等の生体試料を基板上に多数配列させるマイクロアレイ作製方法およびマイクロアレイ作製装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
現在、多彩な生物の全遺伝子機能を効率的に解析するための技術開発が進んでいる。DNAマイクロアレイ(すなわちDNAチップ)は、スライドガラスやシリコンの基板にDNA断片等を含むスポットを多数整列させたものであり、遺伝子の発現や変異、多様性などの解析に非常に有効である。
【0003】
一般的な基板の大きさは1〜数十cm2で、この領域に数千〜数十万種のDNA断片のスポットが整列されている。基板上のDNA断片は、相補性を有する蛍光標識DNAを用いて調べられる。基板上のDNA断片と蛍光標識DNAとでハイブリタイゼーションが生じると蛍光が発する。この蛍光が生じるスポットを蛍光スキャナ等で検出し、蛍光イメージを解析することで遺伝子の発現や変異、多様性などを解析することができる。
【0004】
このDNAマイクロアレイの技術を発展させるためには、基板上に密集したDNA断片のスポットを精度良く配列させるマイクロアレイ作製技術が必要になる。
【0005】
例えば特許文献1には、あらかじめ調整したDNA断片を基板に配列させるマイクロアレイ作製装置が開示されている。この装置は、細長い一対の部材間に形成された開放毛管流路に試料を保持するとともに、細長い一対の部材で構成されるヘッドの先端を基板に軽く打ち付けることにより、基板上にスポットを配置している。また、ヘッドにはこれ以外にも、溶液を保持する液溜め部、及び該液溜め部から突出し、基板にスポットを配置するスポット配置具(例えばピン又はニードル)で構成されるものも知られている。
【0006】
なお、このようなマイクロアレイ作製装置にあっては、スポットの形成作業を終えたヘッドに種類の異なる次の溶液を保持させる際、前の溶液が混濁しないようにヘッドを洗浄する必要がある。ヘッドには、ひとつの基板に同時に複数のスポットを形成するために複数のスポット配置具(例えばピン又はニードル)が設けられることが多いが、溶液の混濁を防止するためには、これら複数のスポット配置具全てを確実に洗浄しなければならない。従来、このようなマイクロアレイ作製装置のスポット配置具の洗浄は、生体試料への影響性を考慮して、水のみを用いて行われていた。そして、その洗浄作用を高める上で、例えば特許文献2、3におけるような医療用分析機の分注ノズルの洗浄の場合と同様に、洗浄部に超音波振動をかけることが行われていた。しかしながら、前の溶液によるコンタミネーションを防止する上での洗浄操作には、このような超音波振動を併用しても水のみでは十分な洗浄が行えず、先の試料が後の試料中へと持ち越されてしまうキャリーオーバーが発生し、問題となっていた。特に、試料中に含まれる生体高分子が高分子量、例えば、鎖長1000mer以上となるようなものにおいては、そのキャリーオーバーが顕著となる傾向が見られ、改良が求められていた。また、水のみを用いて洗浄を行った場合、その洗浄処理に相当の時間を要し、この洗浄工程が、マイクロアレイ作製における律速となっているところがあった。
【特許文献1】
特表平10−503841号公報
【特許文献2】
特開平1−254871号公報
【特許文献3】
特開平8−21840号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明は、基板上に複数のスポットを配置するにおいて、前に使用された生体試料含有溶液による、後の生体試料含有溶液のスポットのコンタミネーションを有効に防止することのできるマイクロアレイ作製方法およびマイクロアレイ作製装置を提供することを課題とする。本発明はまた、スポット形成作業後に、次のスポット形成に先立ち行われる洗浄操作を確実かつ迅速なものとし、マイクロアレイ作製の効率化を図ると共に品質の高いマイクロアレイを提供し得るマイクロアレイ作製方法およびマイクロアレイ作製装置を提供することを課題とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決する本発明は、基板上に複数種の生体試料含有溶液のスポットを、スポット配置具を用いて、複数形成するマイクロアレイ製作方法であって、各スポットの形成間に行われるスポット配置具の洗浄が、界面活性剤溶液を用いて行われることを特徴とするマイクロアレイ作製方法である。
【0009】
このように本発明においては、各スポットの形成間に行われるスポット配置具の洗浄操作を界面活性剤を用いておこなうため、水のみを用いた場合と比較してより良好にかつ迅速に行うことができ、各試料間のコンタミネーションが防止できると共に、マイクロアレイ作製時間の短縮化が可能となる。
【0010】
なお、従来、生体試料への影響性を考慮して、水のみを用いた洗浄が行われていたが、使用する界面活性剤として適当なものを選択すれば、本発明におけるように界面活性剤を使用することによっても、生体試料に悪影響を及ぼすことなく、確実な洗浄操作が行えることを、本発明者らは見出したものである。
【0011】
さらに、このように界面活性剤を用いた洗浄を行うことで、このようなスポット配置具を構成する部材表面の親水性が改善され、スポット配置具における狭窄の流路においても生体試料含有溶液が液滴等を形成することなくスムーズに流れ、結果的に、形成する各スポットの大きさを均等に保つことができるという、さらなる効果も見出されたものである。
【0012】
さらに本発明のマイクロアレイ作製方法の一実施形態においては、前記スポット配置具の洗浄が、スポット配置具への界面活性剤溶液の供給、水洗および乾燥という工程で行われるものであるものが示される。このように、洗浄において、スポット配置具へ界面活性剤を最初に供給することによって、より効果的な洗浄効果が得られるものである。
【0013】
さらに本発明のマイクロアレイ作製方法の一実施形態においては、前記スポット配置具が、ノズルと、その内部に配されたノズル軸線方向に往復動可能とされたスタンピングピンとを有してなるものであり、このスポット配置具への界面活性剤溶液の供給が、少なくともこのノズル先端部を界面活性剤溶液に接触させた状態で、前記スタンピングピンを往復動させることにより行われるものであるものが示される。このような形状のスポット配置具においては、スタンピングピンの往復動によって、比較的高濃度の界面活性剤であっても、スポット配置具における狭窄の流路内に、容易かつ確実に界面活性剤を供給することができるものである。
【0014】
また、本発明のマイクロアレイ作製方法の一実施形態においては、界面活性剤濃度が、5%以上であることを特徴とするものである。界面活性剤濃度として、このように比較的高濃度のものを適用することによって、その洗浄効果が大きく向上することが期待できるものである。
【0015】
本発明のマイクロアレイ作製方法の別の実施形態においては、前記水洗工程は、順に超音波洗浄、流水洗浄、および物理的水分除去からなる一連の操作を、単回ないしは複数回繰り返して行うことが示されるものである。このような水洗工程を経ることによって、洗浄に使用された界面活性剤を迅速かつ確実に除去することができるものである。
【0016】
本発明のマイクロアレイ作製方法の一実施形態においては、前記界面活性剤溶液に使用される界面活性剤が、非イオン性界面活性剤または両性界面活性剤である、より好ましくは、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、であることを特徴とする。このような界面活性剤を使用することによって、用いられる生体試料に対する界面活性剤の影響性をなくすことができるものである。
【0017】
さらに、本発明のマイクロアレイ作製方法の好ましい実施形態においては、先のスポット形成時に用いられた生体試料含有溶液の、後のスポット中へのキャリーオーバー率が、1%以下となるものである。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について実施形態に基づき詳細に説明する説明する。
【0019】
本発明のマイクロアレイ作製方法は、基板上に複数種の生体試料含有溶液のスポットを、スポット配置具を用いて、複数形成するマイクロアレイ製作方法であって、各スポットの形成間に行われるスポット配置具の洗浄が、界面活性剤溶液を用いて行われることを特徴とする。
【0020】
本発明において、前記スポット配置具の洗浄に使用される界面活性剤としては、特に限定されるものではなく、公知のいずれのものを使用することは可能であるが、生体試料含有溶液中に含まれるDNA,RNA等の生体高分子に及ぼす影響性の点から、非イオン性界面活性剤および両性界面活性剤であることが望ましい。
【0021】
非イオン界面活性剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、脂肪酸グリセリンエステル、ソルビタン脂肪酸エステル、スクロース脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、高級アルコールエチレンオキシド付加物、単長鎖ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル、ポリオキシエチレンラノリンアルコール、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸、ポリオキシエチレンプロピレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンヒマシ油若しくは硬化ヒマシ油誘導体、ポリオキシエチレンラノリン誘導体、ポリオキシエチレン脂肪酸アミド、ポリオキシエチレンアルキルアミン、アルキルピロリドン、グルカミド、アルキルポリグルコシド、モノ若しくはジアルカノールアミド、ポリオキシエチレンアルコールモノ若しくはジアミドおよびアルキルアミンオキシドなどを挙げることができる。このうち、好ましい一例としては、1〜10のオキシエチレン部分とC10−C20の直鎖若しくは分岐アルキル鎖を含むポリオキシエチレンエーテル、および1〜20のオキシエチレンのモノ−、ジ−またはトリ−脂肪酸エステルを挙げることができ、具体的には例えば、ポリオキシエチレン(8)オクチルフェニルエーテル(Triton X−114)、ポリオキシエチレン(9)オクチルフェニルエーテル(NP−40)、ポリオキシエチレン(10)オクチルフェニルエーテル(Triton X−100)、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレート(Tween20)、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノパルミテート(Tween40)、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノステアレート(Tween60)、ポリオキシエチレン(20)ソルビタントリオレエートなどを挙げることができる。特に、ポリオキシエチレンソルビタンモノ脂肪酸エステル、代表的には、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレートを好ましく用いることができる。
【0022】
両性界面活性剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、アルキルジメチルアミノ酢酸ベタイン、アルキルジメチルアミンオキシド、アルキルカルボキシメチルヒドロキシエチルイミダゾリウムベタイン、アルキルアミドプロピルベタインなどが挙げられる。
【0023】
界面活性剤としては、上記に例示した非イオン性界面活性剤および両性界面活性剤を単独にて用いることができるが、必要に応じてこれらのものを複数組み合わせて用いることも、また、これらをさらに、各種アニオン界面活性剤および/またはノニオン界面活性剤と組み合わせて用いることもできる。
【0024】
マイクロアレイの作製においては、前記したように数千〜数十万種という非常に多くの種類の生体試料含有溶液のスポットを形成するため、同時に複数のスポット配置具を用いることが一般的であるが、そのスポット配置具の数は、形成しようとするスポットの生体試料含有溶液の全種類に対応する程に多数設けることは限界があり、通常は、各スポット配置具が、いくつかの種類の生体試料含有溶液のスポット形成に兼用されることになる。
【0025】
このため、1つの種類の生体試料含有溶液のスポット形成が終了後、次の種類の生体試料含有溶液のスポット形成に先立ち、スポット配置具に付着残留する前の生体試料含有溶液による、後の生体試料含有溶液のコンタミネーションを防止するため、従来、水による洗浄操作が行われている。本発明においては、これに代えて、上記したような当該スポット配置具の接触面の洗浄に界面活性剤溶液を用いることにより、水のみを用いた場合と比較して、より短時間で効率的にスポット配置具に付着残留する生体試料含有溶液を除去することができ、生体試料含有溶液のコンタミネーションを効果的に防止できる。
【0026】
このような界面活性剤を用いて、スポット配置具の生体試料含有溶液との接触面を洗浄する方法としては、特に限定されるものではないが、好ましくは、まず、当該スポット配置具の接触面に界面活性剤を供給し、その後水洗し、乾燥するという工程によって行われることが望ましい。
【0027】
界面活性剤の再使用という面から考えれば、スポット形成後のスポット配置具を洗浄するに際し、残存試料が残ったままのスポット配置具に界面活性剤溶液を適用する前に、先に、水洗を行い、大方の残存試料を除去するといった手法の方が有利であると思われる。しかしながら、このようにして、一旦、スポット配置具内部に、水が入った状態となると、その後に、スポット配置具内部に界面活性剤溶液を送り込もうとしても、存在する水によってこれが阻害され、特に、後述するように好適である比較的高濃度の導入は困難となり、有効な洗浄作用が得なれなくなる虞れが生じる。また、水を除去するために乾燥処理を行った場合には、スポット配置具内の溶液が乾燥し、壁面に固着してしまうため、その後に界面活性剤を用いてもこれを洗浄除去することが困難となる。従って、上記したように、先に界面活性剤溶液を供給する手法を採ることが望ましい。
【0028】
また、当該スポット配置具の接触面に界面活性剤を供給し、水でリンスして過剰分を除去することによって、スポット配置具の接触面に適用される界面活性剤溶液の濃度等は、特に限定されるものではなく、また使用する界面活性剤の種類によってもある程度左右されるものであるが、例えば、界面活性剤の濃度が5%以上、好ましくは20〜60容量%、より好ましくは30〜50容量%というように比較的高濃度のものであることが望ましい。界面活性剤の濃度が極端に低いものであると、スポット配置具の接触面への界面活性剤溶液の供給は容易となるものの、残存する生体試料含有溶液を良好に除去するという洗浄効果が期待できなくなる虞れがあり、一方、界面活性剤の濃度を極端に高いものとしても、上記した範囲内における濃度を使用した場合と、残留溶液の洗浄除去作用において顕著な差異が見られず、経済性等の面から不利となるためである。
【0029】
スポット配置具の接触面に界面活性剤を供給する際には、この界面活性剤による洗浄作用を高めるため、必要に応じ、超音波振動等の従来行われているような付加的な洗浄操作を加えても良い。
【0030】
上記したように、スポット配置具の接触面に界面活性剤溶液を供給した後、接触面より遊離した残留物および使用した界面活性剤溶液を除去するために、水での洗浄を行う。
【0031】
使用される水としては、純水、脱イオン水、蒸留水などの不純物の少ないものを用いる。
【0032】
洗浄に使用される水の量としては、残留物を十分に除去できる量であれば、特に限定されるものではなく、また、水洗時における、例えば、超音波振動やスポット配置具の揺動操作などの適用の有無によっても左右されるが、使用した界面活性剤の量に対し、100容量倍以上の水を使用することが望ましい。水の量が極端に少なすぎると、残留物を十分に洗い流すことができなかったり、また、余剰の界面活性剤がスポット配置具中に残ってしまうため、続いて生体試料含有溶液のスポットを形成した場合に、このスポット中に界面活性剤が多く流出し、場合によっては、得られるマイクロアレイの特性を低下させてしまう虞れが生じるためである。一方、使用した界面活性剤の量に対して必要以上に多くの水の量を用いても、残留物の除去率はそれほど向上せず、処理時間が長期化して不経済となるのみである。さらに、本発明者らが得た知見によれば、界面活性剤がスポット配置具壁面にわずかに残って壁面を被覆した状態となると、このような界面活性剤が、次のスポット形成の際に、スポット中に流出するような虞れはないばかりか、このように壁面に残った界面活性剤によって、スポット配置具壁面の親水性が改善され、その後のスポット形成が安定化するものとなる。従って、洗浄に使用される水の量としては、使用した界面活性剤の量に対し、好ましくは100〜1000容量倍、より好ましくは100〜300容量倍程度とし、スポット配置具壁面に界面活性剤がわずかに残るようなものとすることが望ましい。
【0033】
このようにしてスポット配置具の生体試料含有溶液との接触面が、界面活性剤によって親水化される場合、特に限定されるわけではないが、当該被覆部分の水に対する接触角が、当該部位の顕微鏡による断面観察における任意の3の平均値として、界面活性剤による洗浄処理前と比較して、その角度が10%以上低減され、例えば、40〜65°、より好ましくは55〜65°の範囲内となる程度に改質される。
【0034】
このように、水による洗浄を行った後に、スポット配置具内に残る水分を除去するために、風乾、加熱乾燥等の処理を行う。
【0035】
なお、本発明において、生体試料含有溶液のスポットを形成するのに用いられるスポット配置具の形状としては特に限定されず、従来公知の各種のものを用いることができる。例えば、QUILL方式、ピン&リング方式、スプリングピン方式、圧電/電歪素子をマイクロポンプとして使用したマイクロピペット方式、その他のいずれの形態のものであってもよい。
【0036】
ここで、QUILL方式は、ピン先に形成した凹部に試料を貯め、ピン先を基板に接触させることで凹部内の試料を基板上に移して微小スポットを形成する方法であり、ピン&リング方式は、試料溶液をリング内でリザーブした後、溶液がリザーブされたリング内側を貫通するようにしてピン先でリング内の試料を捉え、基板上にスポットを形成していく方法であり、スプリングピン方式は、スプリングを内蔵した二重ピン構造で、ピン先に付着した試料を、ピン先を基板に押付けることで基板上に移して微小スポットを形成する方法であり、また、圧電/電歪素子をマイクロポンプとして使用したマイクロピペット方式は、一般にインクジェット記録方式において広く応用されている技術におけるものと同様の方式である。
【0037】
いずれの形態のスポット配置具においても、生体試料含有溶液に対する接触面、特に、微小孔路となる内面部を、界面活性剤溶液を用いて洗浄処理することが望ましい。
【0038】
次に、本発明のマイクロアレイ作製方法につき、具体的なマイクロアレイ作製装置において適用する場合を例にとり説明するが、本発明のマイクロアレイ作製方法は、上記したように、マイクロアレイ作製装置におけるスポット配置具の生体試料含有溶液に対する接触面を、界面活性剤溶液を用いた洗浄操作を行うものである限りにおいて、何ら限定されるものではない。
【0039】
図1はマイクロアレイ作製装置の一実施形態を示す平面図、図2は図1におけるII−II線方向から見たこの装置の正面図、図3は図2におけるIII−III線方向から見たこの装置の右側面図、図4は図2におけるIV−IV線方向から見たこの装置の左側面図、図5は図1におけるV−V線方向から見たこの装置の断面図である。
【0040】
この装置は、スライドガラスやシリコン等からなる基板に、あらかじめ調製したDNA断片やオリゴヌクレオチド等の生体試料の溶液のスポットを多数配列する。一般的な基板の大きさは1〜数十cm2で、この領域に多数のDNA断片のスポットを配列する。スポットの径は例えば数十ミクロンから数百ミクロンのサイズを有する。
【0041】
図1に示すように、マイクロアレイ作製装置は二つの領域を有する。一つは、溶液を保持するマイクロアレイ作製用ヘッド51(以下単にヘッドという)を基板に打ち付け、基板上に生体試料の溶液のスポットを配列させるスタンピング領域1である。もう一つはスポットを形成した後のヘッド51を洗浄し、洗浄したヘッド51に種類の異なる次の溶液を保持させる洗浄領域2である。ヘッドの構成については後述する。
【0042】
まず、スタンピング領域について説明する。作業台4上には多数の基板3…がマトリクス状に載置される。基板3はスライドガラスやシリコン等からなり、基板3の表面には生体試料を付着できるように表面処理がなされている。
【0043】
作業台4上にはヘッド51を搬送し、ヘッド51に二次元座標を与える第2の搬送手段としてのXY2軸搬送機構6が取り付けられる。このXY2軸搬送機構6は後述する受け渡し位置104までヘッド51を受け取りにいき、スポットの形成が終了した後のヘッド51を再び受け渡し位置104まで搬送する。
【0044】
図1及び図4に示すように、XY2軸搬送機構6は、X軸搬送機構6XとY軸搬送機構6Yとから構成される。X軸移動機構6XはX軸方向に延設された長手固定フレーム8と、この固定フレームにX軸方向に伸長して装着されたレール9,9及び該レール9,9に対して移動自在に組まれたスライダ10,10からなるリニアガイドと、このリニアガイドによって案内されるテーブル11と、該テーブル11を駆動するリニアモータ12とを備える。X軸搬送機構6Xの、基板を挟んで反対側にはX軸方向に延設された長手固定フレーム13と、固定フレーム13にX軸方向に伸長して装着されたレール14及び該レール14に対して移動自在に組み込まれたスライダ15からなるリニアガイドが設けられる。
【0045】
図1及び図2に示すように、Y軸駆動機構6Yは、X軸駆動機構6Xによって駆動されるテーブル11とスライダ15との間に架設された長手可動フレーム17と、この可動フレーム17にX軸方向に伸長して装着されたレール18,18及び該レール18,18に対して移動自在に組み込まれたスライダ19,19からなるリニアガイドと、このリニアガイドによって案内されるテーブル20と、該テーブル20を駆動するリニアモータ21とを備える。
【0046】
XY2軸搬送機構6には、移動手段としてのZ軸駆動機構23が支持される。このZ軸駆動機構23が上記X軸及びY軸に直交するZ軸方向、すなわち基板3に対して近接・離間する方向にヘッド51を移動する。Z軸駆動機構23は、ヘッド51全体を昇降させるためにZ1軸駆動機構23Z1を有し、ヘッド51の液溜め部材からニードルを突出させるためにZ2軸駆動機構23Z2を有する。
【0047】
Z1軸駆動機構23Z1は、送りねじ及び電動モータを用いてスライダを移動させる電動アクチュエータからなる。
【0048】
図1、図2及び図5に示すように、Z1軸駆動機構23Z1のスライダには、テーブル41が取り付けられ、このテーブル41にZ2軸移動機構23Z2が取り付けられている。Z2軸駆動機構23Z2は、Z1軸駆動機構23Z1と同様な構成を有する電動アクチュエータからなり、Z1軸駆動機構23Z1よりも小型化されている。このZ2軸移動機構23Z2のスライダにはヘッド51のニードルを昇降させるためのL形アーム42が取り付けられる。L形アーム42は図示しないエアシリンダによってヘッド51に差し込み可能にされている(図7参照)。L形アーム42の先端をヘッド51に差し込み、この差し込んだL形アーム42をZ2軸移動機構23Z2によって降下させることによってヘッド51の液溜め部材からニードルが突出する。
【0049】
Z1軸駆動機構23Z1のテーブル41には、ヘッド51の姿勢を変化させる姿勢変化手段としてのΘ軸回転機構43が取り付けられる。このΘ軸回転機構43はヘッド51を水平面内で旋回させる。Θ軸回転機構43は、テーブル41に取り付けられた電動モータ44と、テーブル41にZ軸周りにおいて回転自在に支持された略円筒状のチャック部45とを備える。チャック部45は電動モータ44に継ぎ手を介して連結されている。このチャック部45がヘッド51を着脱自在に把持する。
【0050】
図6及び図7は、保持手段としてのヘッド51を示す。ヘッド51はチャック部45に取り付けられる円筒状の被チャック部54と、この被チャック部54の下面に固定される略矩形状の上部プレート55と、この上部プレート55に複数本の支柱56…を介して結合される基体部としての略矩形状の下部プレート57とを概略備える。
【0051】
下部プレート57には、基板3…に供給すべき溶液が保持される液溜め部としての液溜め部材52…が互いに平行にして縦横に取り付けられる。この液溜め部材52…内にはスポット配置具としてのニードル53…(あるいはピンとも呼ばれる)が収納されている。このニードル53は、下部プレート57に固定された複数のニードル用ブッシュ66によって上下方向へ往復運動可能に案内されている。この実施形態では縦4列横12列の合計48本の液溜め部材52…及びニードル53…が取り付けられているが、勿論液溜め部材52…及びニードル53…の本数はひとつの基板3に同時にスポットを形成できるスポット数によって種々設定し得る。
【0052】
また、下部プレート57には、複数のニードル53…全体にわたる洗浄液等供給用空間58が設けられる。そして、この洗浄液等供給用空間58は図8にも示すように、縦横に配列された複数の液溜め部材52…全てに連通している。
【0053】
上部プレート55と下部プレート57との間には、支柱に対してスライド可能に中間プレート59が設けられる。中間プレート59の下面には連結部60を介してニードル支持プレート61が固定され、複数本のニードル53…はこのニードル支持プレート61に支持されている。ニードル53…の上部にはニードル支持プレート61の上面に載せられるフランジ53d…が形成され、このフランジ53d…と中間プレート59との間には、コイルスプリング62…が介在されている。このコイルスプリング62…は、ニードル53が基板3に当接するとき圧縮変形し、ニードル53から基板3に加わる荷重を調整する。また、中間プレート59には支柱56に対する中間プレート59のスライド運動を案内するブッシュ63が設けられる。中間プレート59と下部プレート57との間にはニードル53を上昇させ、液溜め部材52内に待避させるためのコイルスプリング64が設けられる。
【0054】
図9は、ニードル53…が降下した状態を示す。この図に示すように中間プレート59を降下すると、ニードル53…も中間プレート59と共に降下し、液溜め部材52…の下端からニードル53…が突出する。ニードル53…が基板3…に当接すると、ニードル53…から基板3…に過度の荷重がかからないようにコイルスプリング62…が圧縮変形する。
【0055】
各駆動機構によるヘッド51の動作について説明する。まず、ヘッド51はXY2軸搬送機構6によって基板3上方のX方向及びY方向に位置決めされる。次に、Z1軸移動機構23Z1によってヘッド51全体が降下され、ヘッド51が基板からZ方向に所定距離離して位置決めされる。次に、Z2軸移動機構23Z2のL形アーム42がヘッド51内の中間プレート59上方に進出される。Z2軸移動機構23Z2によってL形アーム42を降下すると、中間プレート59がL形アーム42によって押し下げられ、これによりニードル53が液溜め部材52から突出する。一方、Z2軸移動機構23Z2によってL形アーム42を上昇すると、コイルスプリング64の復元力によって中間プレート59が上昇し、これによりニードル53が液溜め部材52内に退避する。
【0056】
図10は、溶液を保持する液溜め部材52及びニードル53を示す。液溜め部材52は先細りのテーパ管形状に形成され、そのテーパ状の内部空間には溶液と共にニードル53が収納されている。最も幅が狭くなっている液溜め部材52の下部でもニードル53の上下運動を案内している。
【0057】
ニードル53の先端部53aも外周面が先細りのテーパ形状に形成されている。また、基板3に接触するニードル53の先端面53bは円形又は多角形の平坦面に形成される。先端部53aの外周面は、ストレート部53cの外周面及びニードル53の先端面53bに比べ、溶液を保持できるようにその表面粗さが粗くされている。この表面粗さは、ニードル53が液溜め部材52から所定量突出し、ニードル53の先端面53bが基板3に接触するとき、先端面53bに保持される溶液と液溜め部材52内の溶液とがつながるように設定される。また、この表面粗さは砥石加工又は放電加工によって形成される。例えば砥石加工の場合、砥石をニードル53の長手方向に移動することで、先端部53aの外周面が粗くされる。
【0058】
図11(a)〜(e)は、液溜め部材52内に溜められた溶液を基板3上に配置する方法を示す工程図である。この図(a)〜(e)は、液溜め部材52に対してニードル53がZ軸方向(すなわち上下方向)に移動する場合の溶液の様子を示している。
【0059】
まず、図中(a)に示すように、基板3の上方に液溜め部材52が位置決めされる。次に図中(b),(c)に示すように、液溜め部材52に対してニードル53を除々に下降させる。次に図中(d)に示すように、ニードル53を液溜め部材52から突出させる。このとき、溶液のニードルへの付着によって、液溜め部材52内の溶液が引っ張り出される。そして、ニードル53の先端面53bを基板3に接触させる。ニードル53の先端面53bが基板3に機械的に接触すると、ニードル53の先端面53bから基板3に溶液が移動し、基板3上に溶液が配置される。このとき、ニードル53の先端に保持される溶液と液溜め部材52内の溶液とがつながっている。そして、図中(e)に示すように、ニードル53を基板3から退避させると、基板3上に溶液のスポットが形成される。
【0060】
このように、液溜め部材52に保持される溶液とニードル53の先端に保持される溶液とを一体にし、溶液のニードルへの付着を利用して液溜め部材52から溶液を引っ張り出して基板3に配置することで、基板3に配置するスポットの大きさや形状を一定に保つことができる。また、ニードル53の外周面を粗くすることで、ニードル53の外周面に保持される溶液の量が安定する。このため、基板3に配置するスポットの大きさや形状をより一定に保つことができる。
【0061】
次に、洗浄領域について説明する。この洗浄領域ではスポットを形成した後のヘッド51を、界面活性剤溶液で洗浄し、次いで、超音波洗浄し、すすぎ洗浄し、その後乾燥する。洗浄後のヘッド51は新しい次の生体試料の溶液を保持する。
【0062】
図1に示すように、洗浄台96上には、ヘッド51を超音波洗浄する洗浄等施工部としての超音波洗浄部71と、ヘッド51を界面活性剤溶液にて処理する界面活性剤溶液処理部72aと、ヘッド51をすすぎ洗浄する洗浄等施工部としてのすすぎ洗浄部72bと、ヘッド51を乾燥する乾燥部73と、生体試料を含む溶液を貯える溶液貯留部74とが設けられる。
【0063】
また、洗浄台96上には、これら超音波洗浄部71、界面活性剤溶液処理部72a、すすぎ洗浄部72b、乾燥部73及び溶液貯留部74の間でヘッド51を搬送し、ヘッド51に2次元座標を与える第1の搬送手段としてのXY2軸搬送機構75が設けられる。
【0064】
このXY2軸搬送機構75は、X軸搬送機構75XとY軸搬送機構75Yとから構成される。
【0065】
図1及び図3に示すように、X軸移動機構75XはX軸方向に延設された長手固定フレーム81と、この固定フレーム81にX軸方向に伸長して装着されたレール82,82及び該レール82,82に対して移動自在に組まれたスライダ83,83からなるリニアガイドと、このリニアガイドによって案内されるテーブル84と、該テーブル84を駆動する送りねじ85とを備える。
【0066】
Y軸駆動機構75Yは、X軸駆動機構75Xによって駆動されるテーブル84上に固定された長手可動フレーム87と、この可動フレーム87にY軸方向に伸長して装着されたレール88及び該レール88に対して移動自在に組み込まれたスライダ89からなるリニアガイドと、このリニアガイドによって案内されるテーブル90と、該テーブル90を駆動する送りねじ91とを備える。
【0067】
図1及び図2に示すように、XY2軸搬送機構75には移動手段としてのZ軸駆動機構95が取り付けられる。Z軸駆動機構95は、ヘッド51をX軸及びY軸に直交するZ軸方向、すなわち洗浄台96に対して直交する方向に移動する。このZ軸駆動機構95は、スタンピング領域におけるZ軸駆動機構23と同様に、Z1軸駆動機構95Z1及びZ2軸駆動機構95Z2を有する。そして、超音波洗浄部71、界面活性剤溶液処理部72a、すすぎ洗浄部72b、乾燥部73及び溶液貯留部74のどの位置でも液溜め部材52に対してニードル53を突出できるようになっている。
【0068】
Z1軸駆動機構95Z1は、スタンピング領域におけるZ1軸駆動機構23Z1と同様に、送りねじ及び電動モータを用いてブロックを移動させる電動アクチュエータからなる。
【0069】
Z1軸駆動機構95Z1のテーブル97には、Z2軸移動機構95Z2が取り付けられる。Z2軸駆動機構95Z2は、Z1軸駆動機構95Z1と同様な構成を有する電動アクチュエータからなり、Z1軸駆動機構95Z1よりも小型化されている。このZ2軸移動機構95Z2のテーブル98にはヘッド51のニードル53を昇降させるためのL形アーム99が取り付けられる。L形アーム99は図示しないエアシリンダによってヘッド51に差し込み可能にされている。L形アーム99の先端をヘッドに差し込み、この差し込んだL形アーム99をZ2軸移動機構95Z2によって降下させることによってヘッド51の液溜め部材52からニードル53が突出する。
【0070】
また、Z1軸駆動機構のテーブル97には旋回部としての旋回用モータ100が取り付けられ、この旋回用モータ100の出力軸には水平面内を旋回する円板101が取り付けられる。円板101の下面には180度間隔を開けてヘッド51を把持可能な把持部としての一対のクランプ102,102が取り付けられる。クランプ102,102は図示しないエアシリンダ等によって開閉され、ヘッド51の外周に形成された平坦部103(図6及び図7参照)を挟む。
【0071】
洗浄領域のXY2軸搬送機構75によって搬送されるヘッド51は、上記スタンピング領域の2軸搬送機構6によって搬送されるヘッド51と同一の構成を有するので、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0072】
旋回用モータ100は180度ずつ旋回し、これによりスタンピング領域のXY2軸搬送機構6から洗浄領域のXY2軸搬送機構75へのヘッド51の受け渡し、並びに洗浄領域のXY2軸搬送機構75からスタンピング領域のXY2軸搬送機構6へのヘッド51の受け渡しが行われる。
【0073】
具体的には、図1及び図2に示すように、まずスタンピング領域のXY2軸搬送機構6がスポットを形成した後のヘッド51を受け渡し位置104まで搬送する。一方、洗浄領域のXY2軸搬送機構75が新しい溶液を保持したヘッド51を受け渡し位置104から180度位置をずらした控え位置105まで搬送する。このとき、受け渡し位置104にはヘッドを把持していない空のクランプが位置する。次に洗浄領域のXY2軸搬送機構75のクランプ102が受け渡し位置104に搬送されたスポット形成後のヘッド51を把持する。これによりスタンピング領域のXY2軸搬送機構6から洗浄領域のXY2軸搬送機構75にヘッドが受け渡される。次に旋回用モータ100が円板101を180度旋回させ、スポット形成後のヘッド51を控え位置105に位置させ且つ新たな溶液を保持したヘッド51を受け渡し位置104に位置させる。次にスタンピング領域のXY2軸搬送機構75のチャック部45が新たな溶液を保持したヘッド51を把持する。これにより、洗浄領域のXY2軸搬送機構75からスタンピング領域のXY2軸搬送機構6にヘッドが受け渡される。
【0074】
このように、スタンピング領域のXY2軸搬送機構6と洗浄領域のXY2軸搬送機構75とで互いにヘッド51を受け渡せるようにしたので、一方のヘッド51で基板3上にスポットを形成している間に、他方のヘッド51を洗浄等することができる。
【0075】
次に、マイクロアレイ作製装置において、生体試料含有溶液を供給してスポットを形成する毎に、これに先立ち、当該スポット配置具の接触面を界面活性剤溶液を用いて洗浄する操作につき説明する。
【0076】
まず、スポット形成後のヘッド51は、XY2軸搬送機構75によって界面活性剤溶液処理部72aに搬送される。界面活性剤溶液処理部72aは、界面活性剤溶液槽を有しており、この上部にヘッド51を移動させ、ヘッド51に取り付けられたスポット配置具の液溜め部材52の先端部を、界面活性剤溶液槽中の界面活性剤溶液中に浸漬させる。この状態で、ニードル53を上下動させる、例えば、0.5〜2回/秒程度の速さで、1〜10回、好ましくは3〜5回程度上下動させると、この動きによって、比較的高濃度の界面活性剤溶液であっても、液溜め部材52の内部へと容易に運ばれ、液溜め部材52の内側、及びニードル53の外面に界面活性剤溶液を付与することができる。
【0077】
次いで、洗浄領域のXY2軸搬送機構75によってヘッド51が、超音波洗浄部71に搬送される。超音波洗浄部71では、超音波振動をかけた純水中に液溜め部材52を浸して、その外側を洗浄する。なお、この超音波洗浄部71では、液溜め部材52からニードル53を突出させた状態でニードル53の外側も洗浄するのが望ましい。
【0078】
さらに、ヘッド51は、XY2軸搬送機構75によってすすぎ洗浄部72bに搬送される。すすぎ洗浄部72bにおいては、洗浄液としての超純水が貯えられる純水槽にヘッド51を組み込み、液溜め部材52を超純水に漬けることによって、液溜め部材52の外側が洗浄される。また、ヘッド51を純水槽に組み込むことによって、純水槽に設けた、前記図6における純水供給管108がヘッド51に接続され、純水供給管と洗浄液等供給用空間58とが連通する。ヘッド51の下部プレート57には、液溜め部材52の後端に対応して洗浄液等供給用空間58が設けられる。該洗浄液等供給用空間58は各液溜め部材52にわたる広範な単一空間とされている。純水供給管108から圧力をもった純水が供給されると、純水がこの単一空間内で拡がる。単一空間を充満した純水は各液溜め部材52に供給される。
【0079】
液溜め部材52の内側に圧力をかけて水を供給することで、付着残留試料の除去ないし界面活性剤の除去のための洗浄時間を短くすることができる。また、複数の液溜め部材52…にわたる単一空間を形成することで、複数の液溜め部材52…内に供給される純水の圧力損失が低減し、且つ各液溜め部材52間で圧力損失が略均等になる。したがって、複数の液溜め部材52…の内側及び複数のニードル53…の外側に略均等な圧力をかけて洗浄することができる。
【0080】
図1に示すように、すすぎ洗浄後のヘッド51は、XY2軸搬送機構75によって乾燥部73に搬送される。
【0081】
乾燥部73の乾燥槽の中で、前記図6における純水供給管108と同様な配置構成を有する真空吸引管(図示せず)がヘッド51に接続され、乾燥槽につながっているこの真空吸引管と洗浄液等供給用空間58とが連通する。この状態で、洗浄液等供給用空間58を真空吸引し、液溜め部材52空間内に残る水分等を吸引除去する。
【0082】
なお、界面活性剤の除去が、十分でないときは、必要に応じて、この乾燥部での水分の真空吸引の後に、ヘッド51を再度、前記超音波洗浄部71へと、さらにすすぎ洗浄部72b、乾燥部73へと送り、超音波洗浄部71およびすすぎ洗浄部72bでの洗浄および真空吸引の工程を複数回繰り返すことができる。
【0083】
その後、この乾燥部73では、液溜め部材52の内側及び外側、及びニードル53の外側を、例えば乾燥圧縮エアー、真空吸引等を用いて十分に乾燥させる。
【0084】
上記したように、使用される界面活性剤の汚れ性という面から考えれば、スポット形成後のヘッド51を、界面活性剤溶液槽へと浸漬させる前に、先に、超音波洗浄部71ないしすすぎ洗浄部72bで一旦水洗し、大方の残存試料を除去するという手法も考えられるが、このようにして、一旦、液溜め部材52内部に、水が入った状態となると、その後に、上記したような操作にて、液溜め部材52内部に界面活性剤溶液を送り込もうとしても、存在する水によってこれが阻害され、結局、十分な量ないし濃度の界面活性剤を液溜め部材52内部等と接触させることが困難となる虞れがあるので、上記したように、先に界面活性剤を供給する手法を採ることが望ましい。
【0085】
その後、図1及び図2に示すように、乾燥後のヘッド51は、XY2軸搬送機構75によって溶液貯留部74に搬送される。溶液貯留部74は、溶液を貯える複数枚の溶液保持材としてのタイタープレート121…が収納されるカセット122と、このカセット122からタイタープレート121を取り出し、ロード位置132に搬送するプレート搬送機構123とを備える。この溶液貯留部74では、洗浄後のヘッド51に新しい生体試料の溶液を充填する。溶液にヘッド51を漬けて溶液を吸引する動作はロードと呼ばれる。
【0086】
各タイタープレート121には複数の(例えば384個の)凹部が配列され、この凹部に生体試料の溶液が溜められている。例えばヘッドが48本の液溜め部材を有するとすると、一枚のタイタープレートで8回ロードすることができる。複数の凹部には同種類の溶液が充填される場合もあるし、異種の溶液が充填される場合もある。
【0087】
複数枚(例えば10枚)のタイタープレート121…は、Z軸方向(すなわち上下方向)に均等間隔を開けてカセット122に収納されている。カセット122は洗浄台96の上下に2組設けられ、この装置では合計20枚のタイタープレート121を収納している。カセット122の搬送機構123側にはタイタープレート121を出し入れするための開口が形成されている。また、カセット122の上面には人手でつかむための把手125が設けられる。
【0088】
カセット122は装置にスライド可能に取り付けられたカセット支持台124上に載置される。このカセット支持台124を人手で引き出し、カセット支持台124の上にカセット122を載せ、カセット支持台124を人手で再び元の位置に戻すことで、カセット122が装置に組み込まれる。
【0089】
プレート搬送機構123は、Z軸駆動機構123ZとY軸駆動機構123YとX軸駆動機構123Xとから構成される。Z軸駆動機構123Zは、送りねじ及び電動モータを用いてスライダを移動させる上述の電動アクチュエータと同じ構成を有する。Z軸駆動機構123Zは、上端のタイタープレート121と下端のタイタープレート121との間でタイタープレート121を支持する支持板126を上下動させる。
【0090】
Z軸駆動機構123Zのテーブル127にはX軸移動機構123Xが取り付けられる。このX軸移動機構123Xは、所謂ロッドレスシリンダからなる。ロッドレスシリンダは、X軸方向に伸長する軌道レール128と、該軌道レール128をスライド可能なテーブル129とを備える。
【0091】
X軸移動機構123Xのテーブル129にはY軸移動機構123Yが取り付けられる。このY軸移動機構123Yも、所謂ロッドレスシリンダからなり、テーブル130をY軸方向に移動させると共にテーブル130をY軸方向の2つの位置で位置決めする。
【0092】
タイタープレート121がロード位置132まで搬送された後、洗浄・乾燥後のヘッド51も2軸搬送機構75によってロード位置まで搬送される。このロード位置132では、生体試料の溶液に液溜め部材52を漬けて溶液が吸引される。
【0093】
溶液の吸引方法について説明する。まず液溜め部材52をタイタープレート121内の凹部に差込み、液溜め部材52の先端を溶液に浸ける。次に液溜め部材52の位置を固定したままニードル53を上昇させると、ニードル53の上昇に合わせて溶液が引き上げられ、液溜め部材52内に溶液が充填される。この状態から液溜め部材52及びニードル53を引き上げると、液溜め部材に充填された溶液がそのまま保持される。
【0094】
洗浄台96上には、ヘッド置場135が設けられる。ヘッド51は最初にこのヘッド置場135におかれる。洗浄領域のXY2軸搬送機構75がヘッド置場135に置かれた、ヘッド51を取りに行くことから装置の動作が始まる。
【0095】
次に、マイクロアレイを作製する手順に則して、本実施形態のマイクロアレイ作製装置の全体動作について説明する。なお、以下の工程では、スタンピング領域のXY2軸搬送機構6及びZ軸駆動機構23、及び洗浄領域のXY2軸搬送機構75及びZ軸駆動機構95を適宜動作させることにより、ヘッド51を所定の位置に順次位置決めする。このような制御は不図示の制御装置により実行される。
【0096】
まず、準備段階としてスタンピング領域に複数の基板3…を配列し、真空装置を作動させて基板3…を吸引・固定する。テスト台5には試験的にマイクロアレイを形成するための基板あるいはダミー基板を固定する。一方、洗浄領域の溶液貯留部74のカセット122内に複数枚のタイタープレート121…を収納する。タイタープレート121…の各凹部には例えば複数種のDNA断片の溶液が入れられる。
【0097】
次に、洗浄領域のXY2軸搬送機構75がヘッド置場135に置かれているヘッド51を取りに行く。ここでは、一対のクランプ102,102の内、一方のクランプ102のみがヘッド51を把持する。
【0098】
次に、XY2軸搬送機構75は把持したヘッド51をロード位置132に搬送する。ここでは、液溜め部材52内に溶液を吸引するロード工程が行われる。プレート搬送機構123は、ヘッド51がロード位置132に搬送される前に、必要な溶液が入れられたタイタープレート121をロード位置132に搬送する。XY2軸搬送機構75がヘッド51をロード位置132まで搬送した後、洗浄領域のZ軸駆動機構123Zは、液溜め部材52が溶液を吸引するように液溜め部材52及びニードル53を昇降する。
【0099】
次に、洗浄領域のXY2軸搬送機構75は、溶液を保持したヘッド51を受け渡し位置104まで搬送する。
【0100】
次に、スタンピング領域のXY2軸搬送機構6は、空のチャック部45を受け渡し位置104まで搬送する。そして、スタンピング領域のZ1軸駆動機構がチャック部45を降下し、チャック部45で溶液を保持しているヘッドを把持する。これにより、洗浄領域のXY2軸搬送機構75からスタンピング領域のXY2軸搬送機構6へヘッドが受け渡される。
【0101】
次に、スタンピング領域のXY2軸搬送機構6は、ヘッド51をテスト台5に搬送する。このテスト台5では、ニードル53に付着する溶液の量を調整するテスト工程が行われる。
【0102】
テスト工程が終了した後、基板3にスポットを形成するスタンピング工程が行われる。このスタンピング工程では、まずスタンピング領域のXY2軸搬送機構6がヘッド51を基板3上のスポット形成位置に移動する。そして、スタンピング領域のZ1軸駆動機構23Z1がヘッド51を降下し、基板3の僅か上方にヘッド51を位置させる。次に、スタンピング領域のZ2軸駆動機構23Z2が液溜め部材52からニードル53を突出させ、基板3にニードル53を打ち付ける。
【0103】
所定の基板にスポットを形成した後、スタンピング領域のXY2軸搬送機構はヘッドを次の基板に移動する。そして再び上述のスタンピング工程を繰り返す。
【0104】
スタンピング領域のXY2軸搬送機構6がスタンピング工程を繰り返している間、洗浄領域のXY2軸搬送機構75は、ヘッド置場135に置かれた残りのヘッド51を把持し、ロード位置132に搬送する。このロード位置132では液溜め部材52内に溶液を吸引するロード工程が行われる。そして、洗浄領域のXY2軸搬送機構75は、溶液を保持したヘッド51を控え位置105まで搬送する。このとき受け渡し位置104にはヘッドを把持していない空のクランプ102が位置する。
【0105】
作業台4上の全ての基板3…にスポットを形成した後、スタンピング領域のXY2軸搬送機構6はスポットを形成した後のヘッド51を受け渡し位置104に搬送する。そして、スタンピング領域のXY2軸搬送機構6と洗浄領域のXY2軸搬送機構75との間で把持しているヘッド51,51を互いに受け渡す。
【0106】
受け渡し工程を終えたスタンピング領域のXY2軸搬送機構6は、再びヘッド51を基板上に搬送する。そして、上記テスト工程及びスタンピング工程を実行する。
【0107】
受け渡し工程を終えた洗浄領域のXY2軸搬送機構75は、スタンピング領域のXY2軸搬送機構6がテスト工程及びスタンピング工程を実行するのと同時に、洗浄工程を実行する。この洗浄工程では、まずスポットを形成した後のヘッド51を前記したようにまず、界面活性剤溶液処理部72aに搬送し、液溜め部材52の内面および外面、並びにニードル53の外面に界面活性剤を適用する。次いで、ヘッド51を超音波洗浄部71に搬送し、液溜め部材52の外側を超音波洗浄する。次いで、ヘッド51をすすぎ洗浄部72に搬送し、液溜め部材52の内側、外側及びニードル53をすすぎ洗浄する。その後ヘッド51を乾燥部73に搬送し、液溜め部材52及びニードル53を乾燥する。
【0108】
洗浄領域のXY2軸搬送機構75は洗浄後のヘッド51をロード位置132に再び搬送する。このロード位置では、洗浄後のヘッド51に新しい溶液を吸引させるロード工程が再び行われる。
【0109】
これ以降、スタンピング領域のXY2軸搬送機構6は、上記ヘッド受け渡し工程、上記テスト工程、及び上記スタンピング工程を順次実行する。一方、洗浄領域のXY2軸搬送機構75は、上記ヘッド受け渡し工程、上記洗浄工程、及びロード工程を順次実行する。
【0110】
なお、上記実施形態では、保持手段(ヘッド)として、ニードルと液溜め部材を具備したものを示したが、ニードルのみを有する保持手段も適用可能である。
【0111】
【実施例】
次に本発明を実施例に基づき具体的に説明する。
実施例1
図1に示すような構成を有する装置において、16本のスポット配置具(液溜め部材52およびニードル53)を有するヘッドを用い、第1試料のスタンピングの後、界面活性剤溶液を用いた洗浄操作を行い、引きつづき第2試料のスタンピングを行い、第2試料のスタンピングスポットにおける第1試料のキャリーオーバー率を測定した。
【0112】
なお、用いたニードルの先端直径は75μmであった。第1試料としては、3xSSCバッファ中に、(1)蛍光色素(ローダミン)を10pmol/μLの割合で添加したもの、(2)蛍光標識されたオリゴDNA(21mer)を10pmol/μLの割合で添加したもの、(3)蛍光標識されたオリゴDNA(45mer)を10pmol/μLの割合で添加したもの、および(4)蛍光標識されたcDNA(400mer)を1pmol/μLの割合で添加したものを用い、また第2試料としては3xSSCバッファのみを用いた。そして、キャリーオーバー率は、第1試料の各スポットの蛍光強度と、第2試料(キャリーオーバーが全くなければ蛍光しない)の各スポットの蛍光強度とを測ることにより算出した。
【0113】
また、界面活性剤としては、40容量%濃度の界面活性剤(Tween20)を用い、界面活性剤使用後に超純水で約30秒の洗浄を行った。
【0114】
なお、比較対照のために、界面活性剤を用いず、超純水で約30秒の洗浄のみを行ったものについても同様にキャリーオーバー率を測定した。
【0115】
得られた結果を以下に示す。
【0116】
【表1】
このように、界面活性剤溶液を使用した洗浄を行った場合、キャリーオーバー率は大幅に低減された。
【0117】
また、別途、このような界面活性剤を使用した洗浄を行った後に、上記したようなオリゴDNA(21mer)、オリゴDNA(45mer)およびcDNA(400mer)をはじめとする各種の生体試料を含有する溶液のスタンピングを行い、得られた各スポット中に含まれる生体試料の異常の有無を調べたが、いずれにおいても生体試料の分解、変性等の異状は見られなかった。
実施例2
16本のスポット配置具(液溜め部材52およびニードル53)を有するヘッドを用いて、第1試料のスタンピングの後、以下に示すような各種濃度の界面活性剤溶液を用いて洗浄操作を行い、引きつづき第2試料のスタンピングを行い、第2試料のスタンピングスポットにおける第1試料のキャリーオーバー率を測定し、界面活性剤濃度の違いによる洗浄効果の差異を調べた。なお、この実施例2における界面活性剤溶液での洗浄操作は、実施例1におけるものよりも処理時間および使用液量を増加させた条件下にて行なわれた。
【0118】
また、用いたニードルの先端直径は75μmで、第1試料としては、3xSSCバッファ中に、蛍光色素(ローダミン)を10pmol/μLの割合で添加したものを用い、第2試料としては3xSSCバッファのみを用いた。キャリーオーバー率は、実施例1におけると同様に、第1試料の各スポットの蛍光強度と、第2試料(キャリーオーバーが全くなければ蛍光しない)の各スポットの蛍光強度とを測ることにより算出した。
【0119】
また、界面活性剤としては、Tween20を用い、その濃度を20、30、40、50、容量%としたものをそれぞれ準備した。そして、界面活性剤使用後に超純水で約30秒の洗浄を行った。得られた結果を以下に示す。
【0120】
【表2】
実施例3
図1に示すような構成を有する装置において、16本のスポット配置具(液溜め部材52およびニードル53)を有するヘッドを用い、100回の試料のスタンピングを行った。なお、試料としては、3xSSCバッファー中に蛍光色素(ローダミン、)に10pmol/μL添加したものを用い、各スポットの蛍光強度を測ることにより、各スポットの相対的液量を求めた。
【0121】
各スポットのスタンピング操作の後には、スポット配置具は、40容量%濃度の界面活性剤(Tween20)溶液およびその後の超純水での洗浄という処理を行われた。なお、比較対照のため、界面活性剤を使用せず同量の水のみにて洗浄操作を行ったものについても同様に測定した。
【0122】
その結果、界面活性剤による被覆を行った場合には、各スポットのばらつき(標準偏差)は、0.076であり、一方、水のみで洗浄したものにおいては、0.117であり、また界面活性剤による被覆を行った場合と水のみで洗浄した場合における蛍光強度比は、水のみで洗浄した場合を1とした場合に、界面活性剤による被覆を行った場合は1.8であった。これらの点から、界面活性剤を用いた洗浄操作を行うことにより、液溜め部材52およびニードル53の表面状態が安定(濡れ性が安定)し、スポットのばらつきが少なくなり、またスポット量が増加した。
実施例4
界面活性剤洗浄による濡れ性の変化を測定した。円筒形の液溜め部材52内面上での測定は困難であるため、この液溜め部材52と同じステンレス鋼製のプレートを、同様の面粗度(Ra=0.1 #600番研磨)としたものを使用し、界面活性剤(Tween20)被覆前後の接触角を測定することで、濡れ性の変化を測定した。なお、Tween20溶液としては、40容量%濃度のものを用い、これをプレート上に塗布後、実際のリンス工程と同様となるように30秒ほどの流水洗浄をおこなった後に、試験を行った。
【0123】
なお、測定においては、水滴量は12μLとし、顕微鏡による断面観察における任意の3点の平均値として界面活性剤被覆前後による接触角を求めた。
【0124】
この結果、界面活性剤被覆前においては、接触角は74.95°であったのに対し、被覆後においては64.49°となり、その差が10.46°と、大きく濡れ性が変化した。
【0125】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、基板上に複数種の生体試料含有溶液のスポットを、スポット配置具を用いて複数形成するにおいて、各スポットの形成間に行われるスポット配置具の洗浄が、界面活性剤溶液を用いて行うものであるので、各試料溶液間のコンタミネーションを有効に抑制することがで、い、またスポット形成作業後に、次のスポット形成に先立ち行われる洗浄操作を確実かつ迅速なものとし、マイクロアレイ作製の効率化を図ると共に品質の高いマイクロアレイを提供しすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施形態において使用されるマイクロアレイ作製装置を示す平面図。
【図2】図1におけるII−II線方向から見たマイクロアレイ作製装置の正面図。
【図3】図2におけるIII−III線方向から見たマイクロアレイ作製装置の右側面図。
【図4】図2におけるIV−IV線方向から見たマイクロアレイ作製装置の左側面図。
【図5】図1におけるV−V線方向から見たマイクロアレイ作製装置の断面図。
【図6】ヘッドの正面図。
【図7】図6におけるIX−IX線方向から見たヘッドの右側面図。
【図8】図6におけるX−X線方向から見たヘッドの底面図。
【図9】ニードルが液溜め部材から突出している状態を示すヘッドの正面図。
【図10】液溜め部材及びニードルを示す詳細図。
【図11】液溜め部材内に溜められた溶液を基板上に配置する方法を示す工程図。
【符号の説明】
3…基板
4…作業台
6…スタンピング領域のXY2軸搬送機構(搬送手段)
23,95…Z軸駆動機構(移動手段)
51…ヘッド(保持手段)
52…液溜め部材(液溜め部)
53…ニードル(スポット配置具)
57…下部プレート(基体部)
58…洗浄液等供給用空間
71…超音波洗浄部(洗浄等施工部)
71a…界面活性剤処理部(洗浄等施工部)
72b…すすぎ洗浄部(洗浄等施工部)
74…溶液貯留部(洗浄等施工部)
75…洗浄領域のXY2軸搬送機構(搬送手段)
Claims (8)
- 基板上に複数種の生体試料含有溶液のスポットを、スポット配置具を用いて、複数形成するマイクロアレイ製作方法であって、各スポットの形成間に行われるスポット配置具の洗浄が、界面活性剤溶液を用いて行われることを特徴とするマイクロアレイ作製方法。
- 前記スポット配置具の洗浄が、スポット配置具への界面活性剤溶液の供給、水洗および乾燥という工程を含んで行われるものである請求項1に記載のマイクロアレイ作製方法。
- 前記スポット配置具が、ノズルと、その内部に配されたノズル軸線方向に往復動可能とされたスタンピングピンとを有してなるものであり、このスポット配置具への界面活性剤溶液の供給が、少なくともこのノズル先端部を界面活性剤溶液に接触させた状態で、前記スタンピングピンを往復動させることにより行われるものである請求項2に記載のマイクロアレイ作製方法。
- 前記界面活性剤溶液における界面活性剤濃度が、5%以上であることを特徴とする請求項2に記載のマイクロアレイ作製方法。
- 前記水洗工程は、順に超音波洗浄、流水洗浄、および物理的水分除去からなる一連の操作を、単回ないしは複数回繰り返して行うことによりなされるものである請求項2〜4のいずれか1つに記載のマイクロアレイ作製方法。
- 前記界面活性剤溶液に使用される界面活性剤が、非イオン性界面活性剤または両性界面活性剤であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1つに記載のマイクロアレイ作製方法。
- 前記界面活性剤溶液に使用される界面活性剤が、ポリオキシエチレン脂肪酸エステルであることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1つに記載のマイクロアレイ作製方法。
- 先のスポット形成時に用いられた生体試料含有溶液の、後のスポット中へのキャリーオーバー率が、1%以下となるものである請求項1〜7のいずれか1に記載のマイクロアレイ作製方法。
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