JP4359800B2 - ダクトおよびその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、ダクトおよびその製造方法に関し、更に詳細には、例えば車両のエアコンユニットからの調温空気をインストルメントパネルの空気吹出口へ案内するダクトを別のダクトに嵌合させて連結するダクトと、該ダクトを製造する方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
例えば乗用車等の車両では、図11に示す如く、インストルメントパネル10の内側に搭載したエアコンユニット12の空気送出口14と、該パネル10の空気吹出口16とは空気案内ダクト18を介して接続されている。またフロントガラス20に近接した部位に開設したデフロスタ用空気吹出口16は、別の空気案内ダクト18によって前記エアコンユニット12の空気送出口14に接続されている。なお車両の種類によっては、図示しないがフロアコンソールや天井パネル等に空気吹出口が開設され、この空気吹出口と車両搭載のエアコンユニットとを内装の空気案内ダクトにより接続する構成も採用されている。
【0003】
この空気案内ダクトは、前述の如くインストルメントパネル等の内部に配設される横断面が円筒形状その他異形状をなす中空筒体である。この空気案内ダクトは、ポリエチレン(PE)等の材質からなる中空パリソンをブロー成形して製造する方法が一般に知られている。また例えば図8に示すように、発泡ポリプロピレン(PP)のシート22を真空成形した後にトリミングすることで、長手方向の両端縁に鍔部24,24を外方へ延出させた溝状半体26を成形し、得られた溝状半体26を2つ対向させて各対応の鍔部24,24を接合することでダクト28を製造する方法も実施されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
この空気案内ダクト28に関しては、図9に示す如く、例えば或るダクト28の先端を別のダクト28の後端へ内挿的に嵌合させることで、両ダクト28,28を接続する場合がある。すなわちダクト28は、その先端側を一段絞って縮径部28aとすると共に後端側を一段分だけ拡大させて拡径部28bとし、一方のダクト28における縮径部28aを他方のダクト28における拡径部28bへ強制的に内挿することで嵌合接続を行なうものである。
【0005】
この場合に、図8に示した2つの溝状半体26,26を向き合わせて接合する構造のダクト28では、該ダクト28の半径方向外方へ鍔部24,24がフィン状に延出している。このため図9のように一方のダクト28の縮径部28aを他方のダクト28の拡径部28bへ内挿嵌合するには、前記鍔部24に対する逃がし部を該拡径部28bの内側に設ける必要があり、嵌合構造が複雑化する難点があった。またスペース上の制約から、拡径部28bの内側に逃がし部を設けることが設計的に困難な場合もある。後者の場合は、ダクト28の縮径部28aから外側へ延出する鍔部24,24を切除して対応することが考えられるが、該ダクト28は鍔部24,24において接着されているので、当該部分を切除すると、図10に示すように接着面積が大幅に減少して接合強度が低下したり、微小な隙間から空気が漏出したりする難点がある。
【0006】
【発明の目的】
本発明は、前述した空気案内ダクトの嵌合構造に内在している前記欠点に鑑み提案されたもので、内挿嵌合がなされる側のダクトに複雑な逃がし構造を設ける必要がなく、また余剰の鍔部を切除しても当該部分における接合強度が低下したりすることのないダクトと、該ダクトを好適に製造する方法を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決し、所期の目的を達成するため本発明は、2つの溝状半体が互いに向き合わされ、各溝状半体の長手方向に沿った両端縁から延出されて当接し合う鍔部を接合することで形成されるダクトであって、該ダクトの長手方向の一端に形成されて、別のダクトの端部または各種機器の開口端部に内挿嵌合させる縮径部を備えるダクト(28)において、
前記各溝状半体の長手方向において前記縮径部となる部分に対応する両端縁に、該縮径部となる部分の外面からダクト内方へ折り込まれると共に反転して該縮径部となる部分の外面まで延在する折り返し部を備え、
前記2つの溝状半体を向き合わせた際に当接し合う前記折り返し部が接合されていることを特徴とする。
同じく、前記課題を解決し、所期の目的を達成するため別の発明は、2つの溝状半体を互いに向き合わせ、各溝状半体の長手方向に沿った両端縁から延出されて当接し合う鍔部を接合することで形成され、別のダクトの端部または各種機器の開口端部に内挿嵌合させる縮径部を長手方向の一端に備えるダクトの製造方法であって、
真空成形型のキャビティにおける長手方向の一方端部に膨隆部を設けると共に、前記キャビティの膨隆部を挟む両側に該キャビティへ延出すると共に前記長手方向へ延在する板状のスペーサを設け、
加熱させた熱可塑性樹脂シートを、前記キャビティおよび膨隆部に密着させると共に前記スペーサに巻込ませ、キャビティにより前記溝状半体を成形し、膨隆部により前記縮径部となる部分を成形し、前記キャビティの長手方向に沿った部位で前記鍔部を成形すると共に、前記縮径部となる部分に沿った両端縁に、前記スペーサにより、該縮径部となる部分の外面から溝状半体内方へ折り込まれると共に反転して該縮径部となる部分の外側まで延在する折り返し部を成形し、
成形された2つの溝状半体を互いに向き合わせ、当接し合う前記鍔部および当接し合う前記折り返し部を各々接合し、
前記折り返し部に連設されて前記縮径部から外方へ延出している鍔部を切除することを特徴とする。
【0008】
【発明の実施の形態】
次に、本発明に係るダクトおよびその製造方法について、好適な実施例を挙げて、添付図面を参照しながら以下説明する。なお、図8および図9に関連して既出の部材と同一または同等の部材については、同じ符号を付して説明を省略する。
【0009】
図1は、本発明の好適な実施例に係るダクトを部分的に内部透視して示すものであって、該ダクト28は基本的に前述した2つの溝状半体26,26を合体させることで製造されている。このダクト28は、その先端側を一段絞って縮径部28aとすると共に、後端側を一段分だけ拡大させて拡径部28bとしてある。図2は図1のA−A線断面図であって、前記ダクト28の先端側すなわち縮径部28aとなる部分には、前記溝状半体26における長手方向に沿った両端縁を内側へ僅かに折り込んだ後に外側へ反転させた折り返し部30が一体的に設けられている。ちなみに前記溝状半体26は、例えば発泡ポリエチレンや発泡ポリプロピレンの如き発泡系の熱可塑性樹脂シートを材質としている。
【0010】
前記ダクト28を構成する何れの溝状半体26にも、前記縮径部28aとなる部分にこの折り返し部30が形成してあるから、2つの溝状半体26,26を向き合わせた際には、図2に示すように、対向し合う折り返し部30,30が相互に当接することになる。従って両折り返し部30,30を、接着剤その他融着手段により接合することで前記ダクト28が構成される。なおダクト28の製造工程では、後述する如く、前記折り返し部30,30から外側へ前記鍔部24,24が延出しているが、この折り返し部30,30に対応する鍔部24,24はカッターによりダクト外表面の基部まで切除される。このように折り返し部30,30を接合することで製造されたダクト28は、その折り返し部30,30に充分な接合面積が確保されているので、前記の如く余剰の鍔部24,24を切除しても接合強度の低下や空気漏出等の不都合を来すことがない。
【0011】
得られたダクト28の前記縮径部28aとなる先端側には、半径方向外方へ延出する鍔部はトリミングされて存在しないから、図9に関して説明した如く、その縮径部28aを他方のダクト28の拡径部28bとなる後端側へそのまま内挿させて嵌合接続することが可能となる。従って他方のダクト28における拡径部28bにも、前記鍔部24,24を逃すための複雑な構造を必要としない大きな利点がある。
【0012】
(溝状半体の成形工程について)
次に、実施例に係るダクト28の製造方法につき、該ダクト28の構成部材をなす溝状半体26の成形工程から説明する。図3は、溝状半体26を真空成形するための真空成形型32を示すものであって、この真空成形型32には溝状半体26の外部輪郭に対応するキャビティ34が凹設されている。すなわちキャビティ34の先端側(図3の左側)には、前記ダクト28における縮径部28aに対応する膨隆部34aが一段高く成形されると共に、該キャビティ34の後端側(図3の右側)には、該ダクト28における拡径部28bに対応する沈降部34bが一段低く形成されている。そして前記キャビティ34の長手方向に延在する2つの稜部36,36で、かつ前記膨隆部34aに臨む部位には、所要厚みの板材からなるスペーサ38,38が水平に配設されて相互に対向している。
【0013】
このスペーサ38は、前記真空成形型32によって溝状半体26を成形する際に、該溝状半体26に図2に示す折り返し部30を同時成形するためのものである。従ってスペーサ38の厚みは、溝状半体26の基材となる熱可塑性樹脂シートを内側へ折り込んでから外側へ反転させ得る程度の寸法であれば足りる。また図4に示す2枚のスペーサ38,38における開放端部の対向間隔は、図2に示す寸法Lに合致するよう予め設定してある。なお夫々のスペーサ38の平面形状は、図3に示すように、前記キャビティ34の後端側(右側)に向かうにつれて緩く傾斜するテーパ38aを付しておくのが好ましい。これは、スペーサ38の当該部位がストレートになっていると、熱可塑性樹脂シートに真空成形を付すに際して、その部分に急激な変形が加わるために肉薄部や破孔を生じたりして、円滑な成形を妨げる可能性があるからである。
【0014】
このような構造に係る真空成形型32を使用して、前記熱可塑性樹脂シートに真空成形を施すことで、前記折り返し部30が同時成形された溝状半体26が得られる。すなわち発泡ポリエチレンの如き発泡素材からなる熱可塑性樹脂シートを所要温度にまで加熱してから、該シートを図3に示す真空成形型32のキャビティ上に載置して真空引きを行なう。これにより熱可塑性樹脂シートは前記キャビティ34に密着されて、前記溝状半体26の真空成形がなされる。このときキャビティ34の膨隆部34aに臨む部位に2枚のスペーサ38,38が配設されているので、熱可塑性樹脂シートの一部は該スペーサ38に接触して内側へ巻込まれて、図5の(1)に示すように折り返し部30が一体的に成形される。
【0015】
このように折り返し部30を同時成形した溝状半体26を真空成形型32から脱型するには、図5の(2)に示す如く、当該折り返し部30を強制的に矢印方向へ押圧して僅かに変形させることで前記スペーサ38から離脱させる。次いで図5の(3)に示すように、溝状半体26を真空成形型32から引き上げて前記キャビティ34から完全に離脱させる。なお、溝状半体26の基材である熱可塑性樹脂シートの硬度が高く変形し難い場合は、前記スペーサ38を真空成形型32に対してスライド自在に構成し、脱型時に該スペーサ38を退避させるようにするのが好ましい。また図6に示すようにスペーサ38をヒンジ状に構成し、常には該スペーサ38が水平に前記キャビティ34上に延出しているが、脱型時には該スペーサ38が上方へ折り曲げられ、前記折り返し部30の離脱を容易化するようにした構造としてもよい。
【0016】
真空成形型32から脱型された溝状半体26は、図7の(1)に示すように、2つの溝状半体26,26を向き合わせ、その当接し合う鍔部24,24を融着等により接合することで前記ダクト28が構成される。またダクト28における縮径部28aでは、前記折り返し部30,30においても接合がなされている。しかしこの状態では、前記縮径部28aから鍔部24,24が半径方向外方へ延出しているので、図7の(2)に示す如く、該ダクト28の外部表面に近接する部位で鍔部24,24を切除する。これによりダクト28の縮径部28aには鍔部は存在しなくなるので、その縮径部28aを他方のダクト28の拡径部28bへ容易に内挿嵌合することが可能となる。また前記縮径部28aの内側では、折り返し部30,30で確実な接合がなされているので、この部位において接合強度が低下することもない。
【0017】
なお図示の実施例では、1基の真空成形型32により溝状半体26を個別に成形した後に、2つの溝状半体26,26を合体させることでダクト28を製造する例を示したが、これに限定されるものではない。すなわち2基の真空成形型を対向させて2枚の熱可塑性樹脂シートを間に介在させ、両成形型を閉じて真空成形を施すことで一挙に2つの溝状半体(および折り返し部)を成形すると共に、同時に両溝状半体を接合させることでダクトを製造するようにしてもよい。また実施例では、2つのダクトを相互に接続する場合について示したが、或るダクトの端部と、例えばエアコンユニットの空気送出口の如き車載機器の開口端部とを内挿嵌合して接続する場合であってもよい。
【0018】
【発明の効果】
以上に説明したように本発明に係るダクトによれば、内挿嵌合がなされる側のダクトや各種機器の開口端部に複雑な逃がし構造を設ける必要がなく、また縮径部における余剰の鍔部を切除しても、折り返し部で確実に接合されているために当該縮径部での接合強度の低下を来したりすることもない。
また、別の発明に係るダクトの製造方法によれば、ダクトの縮径部となる部分の両側に折り返し部を成形し得るので、各溝状半体の折り返し部を接合することで、縮径部においても両溝状半体の接合強度が低下しないようにし得る。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の好適な実施例に係るダクトを部分的に内部透視して示す斜視図である。
【図2】図1のA−A線断面図である。
【図3】溝状半体を真空成形するための真空成形型の概略斜視図である。
【図4】真空成形型を、その膨隆部において縦断した断面図である。
【図5】図3に示す真空成形型により折り返し部が同時成形された溝状半体を、該真空成形型から脱型する手順を示す概略工程図である。
【図6】図3に示す真空成形型に配設されるスペーサに関して、その別例を示す概略説明図である。
【図7】図3に示す真空成形型により成形した2つの溝状半体を接合した後に、鍔部を切除して最終製品としてのダクトを得ることを示す概略説明図である。
【図8】空気案内ダクトをシート材から真空成形して製造する工程を示す概略説明図である。
【図9】2つの溝状半体を接合してなる空気案内ダクトに関して、特定のダクトの端部を別のダクトの端部に内挿嵌合する状態を示す説明斜視図である。
【図10】ダクトの外側へ延出する鍔部の切除により、接合面積が低減している状態を示す部分断面図である。
【図11】インストルメントパネルの要部縦断面図であって、エアコンユニットと空気吹出口とを空気案内ダクトで連通した状態を示している。
【符号の説明】
24 鍔部
26 溝状半体
28 ダクト
28a 縮径部
30 折り返し部
32 真空成形型
34 キャビティ
34a 膨隆部
38 スペーサ
Claims (3)
- 2つの溝状半体(26)が互いに向き合わされ、各溝状半体(26,26)の長手方向に沿った両端縁から延出されて当接し合う鍔部(24,24)を接合することで形成されるダクト(28)であって、該ダクト(28)の長手方向の一端に形成されて、別のダクト(28)の端部または各種機器の開口端部に内挿嵌合させる縮径部(28a)を備えるダクト(28)において、
前記各溝状半体(26)の長手方向において前記縮径部(28a)となる部分に対応する両端縁に、該縮径部(28a)となる部分の外面からダクト内方へ折り込まれると共に反転して該縮径部(28a)となる部分の外面まで延在する折り返し部(30)を備え、
前記2つの溝状半体(26,26)を向き合わせた際に当接し合う前記折り返し部(30,30)が接合されている
ことを特徴とするダクト。 - 2つの溝状半体(26)を互いに向き合わせ、各溝状半体(26,26)の長手方向に沿った両端縁から延出されて当接し合う鍔部(24,24)を接合することで形成され、別のダクト(28)の端部または各種機器の開口端部に内挿嵌合させる縮径部(28a)を長手方向の一端に備えるダクト(28)の製造方法であって、
真空成形型(32)のキャビティ(34)における長手方向の一方端部に膨隆部(34a)を設けると共に、前記キャビティ(34)の膨隆部(34a)を挟む両側に該キャビティ(34)へ延出すると共に前記長手方向へ延在する板状のスペーサ(38,38)を設け、
加熱させた熱可塑性樹脂シートを、前記キャビティ(34)および膨隆部(34A)に密着させると共に前記スペーサ(38,38)に巻込ませ、キャビティ(34)により前記溝状半体(26)を成形し、膨隆部(34A)により前記縮径部(38a)となる部分を成形し、前記キャビティ(34)の長手方向に沿った部位で前記鍔部(24)を成形すると共に、前記縮径部(28a)となる部分に沿った両端縁に、前記スペーサ(38,38)により、該縮径部(28a)となる部分の外面から溝状半体(26)内方へ折り込まれると共に反転して該縮径部(28a)となる部分の外側まで延在する折り返し部(30)を成形し、
成形された2つの溝状半体(26,26)を互いに向き合わせ、当接し合う前記鍔部(24,24)および当接し合う前記折り返し部(30,30)を各々接合し、
前記折り返し部(30,30)に連設されて前記縮径部(28a)から外方へ延出している鍔部(24,24)を切除する
ことを特徴とするダクトの製造方法。 - 前記溝状半体(26)は、発泡素材からなる熱可塑性樹脂シートである請求項2記載のダクトの製造方法。
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