JP4358429B2 - フランジボビン用タレット型巻取装置 - Google Patents

フランジボビン用タレット型巻取装置 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、光ファイバー、糸類などの線条体を、線条体同士の摩擦による擦れ傷を生じさせることなく、又はフランジボビンに設けた巻始め把持部と摩擦して傷を生じさせることがない、安全且つ自動的に連続して巻き取ることができるタレット型巻取装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
タレット盤に複数のフランジボビンを装着し、これらに線条体を連続して巻取る装置においては、線条体の巻始め端部を把持するする手段として、フランジの巻芯部側に渓谷形溝を設けたり、フランジの外周にスリットを設けて線条体の端部を把持するものが知られている(実用新案登録第2537184号公報)。
【0003】
しかし、前記装置では、線条体の始端を把持させるとき手作業で扱うため、渓谷形溝やスリットの鋭利な縁部に手が触れたり、線条体の鋭利な切断端部に手が触れるおそれがある。また前記の渓谷形溝を設けたものは、その縁部で後続する部分に傷が発生するおそれがあり、スリットで把持させるものは、線条体の、スリットの内端部から巻芯部までフランジ内側面に沿って張り渡された部分と、巻芯部に巻かれる部分が略直角に交差するため、巻き付け時に両部分に摩擦が生じて傷が発生する原因となる。このため、特に光ファイバーのように、表面の傷が致命的になるものに使用するのは好ましくない。更に、フランジにスリットを設けるものは、スリットによるフランジの強度低下を補償するためにフランジを厚くする必要があり、重量が増加する不都合がある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、線条体の巻き始め部分をフランジボビンの巻芯部に自動的に把持させることができ、且つ線条体の表面に傷を付けないで巻き取る装置を得ることを課題とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決するための手段のうち請求項1の手段は、互いに軸線を平行させてタレット盤に配設した少なくとも一対のスピンドルによりフランジボビンをそれぞれ保持し、前記タレット盤の回転によってスピンドル上の各フランジボビンを、トラバース手段に対向する巻取位置と待機位置との間で順次位置を転換させ、巻取位置でフランジボビンの巻芯部外周に線条体を巻き取るタレット型巻取装置において、前記フランジボビンに、フランジ部の外側面から巻芯部外周にわたる把持穴を設け、前記タレット盤に保持された複数のフランジボビンの内、空ボビンが巻取位置に到達し、満巻ボビンが待機位置に到達し、且つ空ボビンの巻芯部の周速が線条体の巻取速度にほぼ到達し、線条把持手段が線条体に内接する位置に来たとき、この線条把持手段が把持動作を行なうようにしたことを特徴とする。
【0006】
この手段によれば、線条体の把持が線条把持手段によって自動的に行なわれる。また線条体を巻芯部に設けた把持穴内で把持するので、把持に続いて巻かれる部分は、把持された巻き始め部分に巻き重なるだけであり、巻き付け時に摩擦が生じることはなく傷は発生しない。
【0007】
また、この手段によれば、線条体と線条把持手段の速度が同期するから、線条体の表面に傷が付くことが防止され、線条体が撓んだり過度の張力が作用するのが防止される。
【0008】
請求項2の手段は、請求項1において、線条把持手段の受け部における線条体の流れの下流側の位置にカッタを有し、受け部とチャック片で線条体を把持すると共に線条体の下流側を切断するようにしたことを特徴とする。この手段によれば、線条体の巻き終わり部分の切断と巻き始め部分の把持が同時に行なわれる。
【0009】
【発明の実施の形態】
図1において、1は回転自在に支持されたタレット盤であり、その背後の直径線上にモータM1 ,M2 が取り付けられ、このモータM1 ,M2 の軸4にスピンドル2a,2bが連設され、これにフランジボビン3、3が嵌められ、後述するトラバース装置Tに近い位置にあるフランジボビン3を回転して線条体Yを巻き取る。モータM1 とM2 、スピンドル2aと2b及びこれらに付属する部材は、同一構造であって、タレット盤1に180°位相を変えて設けてあり、巻取りをする位置Aと、ボビンの脱着及び待機をする位置Bにある点に違いがあるだけであるから、モータM1 、M2 、スピンドル2a、2b以外の同一構造の部材については、原則として一方の部材のみに符号を付し、他方の部材の符号の図示は省略する。
【0010】
スピンドル2a,2bと一体のモータ軸4には円板5が固定され、これに線条把持手段6とボビン回り止めのピン7が設けられる。フランジボビン3は、直径が50〜100mmの巻芯部3aの両端に外径が200〜300mmのフランジ部3bを合成樹脂で一体に形成したものであり、円板5側を向くフランジボビン3の外側面には、線条把持手段6に対向して把持穴8とピン穴9が開けられている。把持穴8は、フランジ部3bの外側面から内側面を越え巻芯部3aの周面の一部にわたって開けられている。線条把持手段6は、シリンダー10、スライダ11と一体のピストン12、バネ13と、把持のための後記する機構を備えており、円板5におけるこれと直径方向反対側にバランスウエイト14が設けられている。
【0011】
タレット盤1は、機枠15の段部15aに設けた4個のローラ16(図2)で支持されるが、背後に延長した支持部1aも図外の軸受で支持されている。支持部1aの端部にはギヤ17が固定され、モータM3 で駆動されるピニオン18を介して減速駆動される。ギヤ17、支持部1a、モータM1 、M2 中には通路19、20が穿設されてパイプ21、回転継ぎ手22で接続され、通路19のギヤ17側の部分は、回転継ぎ手23、パイプ24、電磁切替弁25を介して空圧源26に接続されており、通路20の終端は、パイプ20a(図3)でシリンダー10におけるバネ13と反対側の部分に接続され、バネ13の弾力に打ち勝つ空気圧でピストンを移動させるようになっている。
【0012】
図3は線条把持手段6の詳細図で、スピンドル2a,2bと一体の部材である円板5、5には、リニアブッシュ27を挿入したハウジング28がネジ28aで固定され、更にネジ28bで中間筒29が固定されてシリンダー10が接続されている。リニアブッシュ27内には、前記スライダ11が挿入され、このスライダ11の前部にはコ字形の凹部30が形成されて前端がチャック片31となっており、スライダ11の後部にはピストンロッド10aがネジ止めされている。
【0013】
ハウジング28の左端の段穴内には、ストッパ板34とカッタホルダ35がネジ36で固定され、カッタホルダ35の一部分は前記凹部30内に伸び、この部分に図4に示す横方向の長さが異なる3枚の刃37a,37b,37cを重ねた段付きのカッタ37がネジ38で固定されており、これらによって線条把持手段6の受け部32を構成し、前記チャック片31と共同して線条体Yを切断し把持する。
【0014】
図1において、タレット盤1には光電式の回転センサ40が固定され、モータ軸4に、回転センサ40を横切って回転するスリット付き円板41が固定され、フランジボビン3の回転位相及び回転周期が検出される。またタレット盤1の裏側には、その回転位相を検出するためにカム42が突設され、これと共同する定点リミットスイッチ43が機枠15に設置されている。
【0015】
トラバース装置Tは、モータM4 で駆動されるボールネジ45と直線運動するボールナット46を備え、ボールナット46から伸びるスライドロッド47にガイドローラ48が固定されている。49、50は、ボールナット45の定点45aの位置を検出するための光電式のセンサで、センサ49によってトラバース幅の原点が設定され、センサ50によってボールナット45が原点位置を越えてシフト位置に移動したことを検出する。モータM4 は、図外の制御装置で制御され、スピンドル2a,2b駆動用のモータM1 ,M2 と所定比率を保って正逆回転してガイドローラ48を所定のトラバース幅T1 で往復運動させる。そして満巻ボビンから空ボビンへの線条体Yの掛け替え時には、ガイドローラ48を通常のトラバース幅T1 を越えて、約5mmのシフト幅T2 だけフランジ部3bの内側面から外側へシフトさせ、線条体Yをフランジ部3bの内側面に沿わせてからチャック片31を作動させて線条体Yを把持する。
【0016】
図3に示すようにチャック片31は、常時はバネ13の弾力で押されてカッタ37の刃先との間に隙間W1 があり、フランジ部3bの内側面との間に隙間W2 がある。隙間W2 は、線条体Yの直径よりやや大きく、隙間W1 は、チャック片31が仮想線で示すようにカッタ37の刃先に当接したとき、チャック片31の左端がフランジ部3bの厚さ内に納まる広さとされる。したがって線条体Yは、隙間W2 内に入り込むことができ、入り込んだ状態でシリンダ10に空気圧を導入すると、チャック片31は、矢印V方向に移動して線条体Yを切断すると共に把持し、フランジ部3bの下に隠れるから、続いて巻き付けられる線条体Yと干渉することがない。
【0017】
図2において、線条体Yは、ダンサーローラ51とガイドローラ48を経て位置Aにあるフランジボビン3に巻き取られ、満巻になるとタレット盤1は矢印X方向に回転して位置Bに移動し、位置Aにあるスピンドル2aに嵌めた空ボビン3に巻き取られることになるが、まず、空ボビン3が位置Aに近付くと、巻芯部3aの周速が線条体Yの巻取速度に一致するようにモータM1 が増速され、巻付け角度範囲θ1 内でチャック片31によって把持される。θ2 は動作遅れ角度で、電磁弁24に指令した後チャック片31が移動するまでの時間に相当する。把持後は通常の巻取速度を保って回転し、巻き層が5〜10mm形成されたとき電磁弁25が開いてチャック片31は復元可能になる。更に通常の巻取速度で回転を続けて満巻状態になると、ボビンは位置Bまで公転し、同位置に到達したときは、位置Aにある空ボビンの切替動作中は巻取速度に見合う回転速度で線条体Yを巻き続け、切替動作が完了した時点で満巻ボビンの回転を停止させる。
【0018】
なお、前記モータM1,M2 としては、可変速モータ又はトルクモータを使用でき、また一個のモータを使用してタイミングベルトとクラッチ機構を介して並列的に駆動し、クラッチを電磁クラッチとして外部から電気的に制御するか、又はタレット盤の回転に連動させて機械的に断続又は加減速をコントロールすることも可能である。
【0019】
次に前記装置の作用を順を追って説明する。まず、図1、2に示すように一方のスピンドル2bに担持されたフランジボビン3が満巻状態になり、タレット盤1がモータM3 の作用で回転し、満巻ボビンが位置Bに公転移動し、且つスピンドル2aに担持された空ボビン3が巻取位置Aに向かって公転移動しているときは、トラバース装置TのモータM4 が動作し、ガイドローラ48を通常のトラバース幅の原点方向に移動させ、空ボビンが巻取位置Aに到達する直前には、ガイドローラ48を、通常のトラバース幅T1 を約5mmのシフト幅T2 だけ越えて図1の仮想線位置までシフトして待機させ、線条体Yを空ボビンのフランジ3bの内側面に沿わせて隙間W2 内に進入可能の位置に誘導すると共に、モータM1 を増速させて巻芯部3aの周速度を線条体Yの巻取速度とほぼ等しくなるように制御する。
【0020】
そしてタレット盤1の回転が進み、リミットスイッチ43が空ボビン3が位置Aに到達したことを検知すると、電磁弁25が作動し、二つの線条把持手段6のシリンダー10、10に同時に圧縮空気が送り込まれ、チャック片31が図3の矢印V方向に移動し、満巻ボビンから空ボビンにわたる線条体Yを加圧してカッタ37の最長の刃37aで切断し、短い刃37b,37cで上流側部分を巻き始め部分としてチャッキングし把持する。このとき位置BにあるモータM2 は停止する。そしてトラバース装置TのモータM4 が動作してガイドローラ48を通常のトラバース幅T1 内に戻してトラバースさせ、通常の巻取速度で回転しているモータM1 によって巻取りが始まり、前記のように巻層が5〜10mmになったとき電磁弁25が開いてチャッキング作用を解除する。位置Bにある満巻ボビンにおいてもチャック片31は同じく解除の動作をし、スピンドル2bからの抜き取りを可能にする。
【0021】
なお、前記の装置において、カッタ37に替えて、切り込みが浅いか又は切り込みができないチャッキング用部材を用いて、チャッキング点の回転と満巻きボビンの回転によって、両ボビン3、3間で線条体Yに張力を作用させて切断するようにしてもよく、また両ボビン3、3間に別の切断機構を設けて切断してもよい。
【0022】
【発明の効果】
以上の説明から明らかなとおり、請求項1の手段によれば、線条体の巻始め部分をフランジボビンに把持させる作業が、スピンドルと一体回転するように設けた線条把持手段によって自動的に行なわれるので、人手を煩わすことなく安全で迅速になされ、且つこの巻始め部分を巻芯部に設けた把持穴内で把持するので、線条体がフランジ内側面に沿って張り渡されることはなく、把持部近傍の線条体と続いて巻かれる線条体との間で、摩擦による傷が発生することは有り得ないという効果がある。
【0023】
また、線条体と線条把持手段の速度が同期するから、線条体の表面に傷が付くことが防止され、線条体が撓んだり過度の張力が作用するのが防止される効果があり、請求項2の手段によれば、線条体の巻き終わり部分の切断と巻き始め部分の把持が同時に行なわれ、巻取りの切り替えが迅速、円滑になされる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明のタレット型巻取装置の一例を示す概要図
【図2】 同装置の正面図
【図3】 線条把持手段の詳細図
【図4】 線条把持手段の受け部の詳細図
【符号の説明】
1 タレット 2a,2b スピンドル
3 フランジボビン 3a 巻芯部
3b フランジ 4 モータ軸
5 円板 6 線条把持手段
8 把持穴 10 シリンダ
11 スライダ 12 ピストン
13 バネ 26 空圧源
31 チャック片 32 受け部
37 カッタ 48 ガイドローラ
M1〜M4 モータ T トラバース装置
Y 線条体

Claims (2)

  1. 互いに軸線を平行させてタレット盤に配設した少なくとも一対のスピンドルによりフランジボビンをそれぞれ保持し、前記タレット盤の回転によってスピンドル上の各フランジボビンを、トラバース手段に対向する巻取位置と待機位置との間で順次位置を転換させ、巻取位置でフランジボビンの巻芯部外周に線条体を巻き取るタレット型巻取装置において、前記フランジボビンに、フランジ部の外側面から巻芯部外周にわたる把持穴を設け、スピンドルにフランジボビンを装着した状態で把持穴に臨む位置に、スピンドルと一体の部材に設けた受け部と、外向きのチャック片をもち把持穴内で進退して線条体を受け部に向けて押し付けるスライダとからなる線条把持手段を設け
    前記タレット盤に保持された複数のフランジボビンの内、空ボビンが巻取位置に到達し、満巻ボビンが待機位置に到達し、且つ空ボビンの巻芯部の周速が線条体の巻取速度にほぼ到達し、線条把持手段が線条体に内接する位置に来たとき、この線条把持手段が把持動作を行なうようにしたことを特徴とする、フランジボビン用タレット型巻取装置。
  2. 請求項1において、線条把持手段の受け部における線条体の流れの下流側の位置にカッタを有し、受け部とチャック片で線条体を把持すると共に線条体の下流側をカッタで切断するようにしたことを特徴とする、フランジボビン用タレット型巻取装置。
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