JP4353585B2 - カップリング - Google Patents

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JP4353585B2
JP4353585B2 JP15535599A JP15535599A JP4353585B2 JP 4353585 B2 JP4353585 B2 JP 4353585B2 JP 15535599 A JP15535599 A JP 15535599A JP 15535599 A JP15535599 A JP 15535599A JP 4353585 B2 JP4353585 B2 JP 4353585B2
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尚史 吉田
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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、静止側ケーシングの内部で、変速機構のトルク伝達を断続すると共に、伝達トルクを制御するカップリングに関する。
【0002】
【従来の技術】
「ガイア新型車解説書 0−22頁 トヨタ自動車株式会社 編集 同サービス部 発行 1998年 5月 29日」に図6のようなカップリング401が記載されている。
【0003】
このカップリング401は、四輪駆動車の後輪側動力伝達系に配置されている。
【0004】
カップリング401は、回転ケース403、ハブ405、多板式のメインクラッチ407及びコントロールクラッチ409、アーマチャ411、電磁石413、カムリング415、ボールカム417、押圧部材419、コントローラなどから構成されている。
【0005】
カップリング401はデフキャリヤ421の内部に配置されている。デフキャリヤ421はデフキャリヤ本体423の前部にカバー425を固定して構成されており、カップリング401はカバー425に収容され、デフキャリヤ本体423にはリヤデフ(後輪側のデファレンシャル装置)が収容されている。
【0006】
回転ケース403の前部はベアリング427を介してカバー425に支承されており、後部はベアリング429と電磁石413とを介してデフキャリヤ本体423に支承されている。
【0007】
回転ケース403はプロペラシャフト(トルク伝達軸)を介してトランスファからトランスミッション側に連結されている。又、ハブ405にはドライブピニオンシャフト431がセレーション連結されており、これと一体に形成されたドライブピニオンギヤ433はリヤデフ側のリングギヤと噛み合っている。
【0008】
回転ケース403の前部とカバー425との間にはシール435が配置されており、外部からの異物の侵入を防止している。又、回転ケース403の後部とデフキャリヤ本体423との間にはシール437が配置されており、リヤデフ側からのオイルの侵入を防止している。
【0009】
メインクラッチ407は回転ケース403とハブ405との間に配置されており、コントロールクラッチ409は回転ケース403とカムリング415との間に配置されている。
【0010】
又、押圧部材419はハブ405に移動自在に連結されており、ボールカム417はカムリング415と押圧部材419との間に配置されている。
【0011】
コントローラは、電磁石413の励磁、励磁電流の制御、励磁停止などにより、後輪の連結と切り離し、及び、後輪側への伝達トルクの制御を行う。
【0012】
電磁石413は回転ケース403の外部に配置され、デフキャリヤ421の内側に固定されている。又、電磁石413のリード線439はデフキャリヤ425に取り付けられたグロメット441から外部に引き出されている。
【0013】
電磁石413が励磁されると、磁気ループ443が形成されてアーマチャ411が吸引され、コントロールクラッチ409が押圧される。コントロールクラッチ409が締結されると、回転ケース403とハブ405の間のトルクがボールカム417に掛かり、生じたカムスラスト力により押圧部材419を介してメインクラッチ407が押圧される。
【0014】
こうしてカップリング401が連結されると、エンジンの駆動力が後輪に送られて車両は四輪駆動状態になり、悪路の走破性や、車体の安定性が向上する。
【0015】
又、電磁石413の励磁電流を制御すると、コントロールクラッチ409の滑りによってボールカム417のカムスラスト力が変化し、更に、メインクラッチ407の連結力が変化して後輪の駆動力が調整される。このようにして、前後輪間の駆動力配分比を制御すると、例えば、旋回走行中の車両の操縦性や安定性などが向上する。
【0016】
又、電磁石413の励磁を停止すると、コントロールクラッチ409が開放され、ボールカム417のカムスラスト力が消失し、メインクラッチ407が開放されてカップリング401の連結が解除され、車両は二輪駆動状態になる。
【0017】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、カップリング401では、電磁石413がデフキャリヤ421のカバ−425の奥部(カバー425とデフキャリヤ本体423との連結部側)に配置されているから、外気による電磁石413の冷却効果は期待できない。
【0018】
又、カバー425の奥部はリヤデフに隣接しているから、電磁石413はリヤデフからの熱を受け易い。
【0019】
このような理由で、電磁石413は高温になり易く、温度が変動し易い。
【0020】
電磁石413の温度が変わると、励磁電流が変動し、コントロールクラッチ409の制御特性が不安定になり、カップリング401の伝達トルクが不安定になる。
【0021】
又、エンジンの駆動力がプロペラシャフトを経て入力する回転ケース403には充分な強度が必要であるが、磁気ループ443が形成される回転ケース403のロータ445には、強度に加えて、優れた磁気透過性が要求される。
【0022】
このように、材料に対する要求が多いから、材質の選定が難しく、コスト高になる。
【0023】
又、磁気透過性の優れた材料は強度が不足し易いから、回転ケース403(カップリング401)はトルク伝達容量が不充分になる。
【0024】
又、回転ケース403を支承するベアリング427、429用のベアリングハウジングをデフキャリヤ421に形成する必要があるから、それだけデフキャリヤ421の形状が複雑になり、コスト高になる。
【0025】
又、カップリング401の雰囲気を、外気とリヤデフ側のオイルから遮断するシール435、437は回転ケース403側に配置されており、大径である。
【0026】
大径のシール435、437はコスト高であると共に、これらの配置構造が大型になるから、カップリング401はコンパクト化が難しく、車載性が低下する。
【0027】
更に、大径のシール435、437は摺動速度が速いから、摩耗し易く、耐久性が低下する。
【0028】
そこで、この発明は、電磁石によって操作されるカップリングであって、電磁石の温度変化が小さく、安定した伝達トルクの制御特性が得られると共に、トルク伝達容量の大きいカップリングの提供を目的とする。
【0029】
【課題を解決するための手段】
請求項1のカップリングは、ケーシング本体と、これに固定されたカバーとを有し、変速機構を潤滑オイルと共にケーシング本体側に収容する静止側ケーシングに収容されたカップリングであって、前記カバーの前記ケーシング本体と固定されていない開口側に位置する一側の側壁と該一側の側壁より前記変速機構側に位置する中空状のケースとを備えたケース状トルク伝達部材と、このケース状トルク伝達部材の前記一側の側壁に貫入した軸状トルク伝達部材と、これら両トルク伝達部材の間に配置されたクラッチと、前記一側の側壁を挟んで前記クラッチと異なる側の前記カバーの開口側に配置され磁力によってアーマチャを移動させクラッチを押圧して連結させる電磁石とを備え、前記ケース状トルク伝達部材は前記静止側ケーシングの前記カバー側に収容されていると共に、軸状トルク伝達部材が、一側で前記一側の側壁と前記カバーとを貫通し、前記カバーの外部でトルク伝達軸に連結されており、電磁石のコアが、この貫通部付近でカバーに支持されており、ケース状トルク伝達部材が、一側で前記一側の側壁に設けられた凹部に前記電磁石のコアを貫入させ、他側で変速機構側の連結軸に連結されていることを特徴とする。
【0030】
請求項1のカップリングは、電磁石413がデフキャリヤ421の奥に配置されている従来例と異なって、カバーの貫通部(端部)付近に電磁石が配置されているから、放熱効果と、外気による冷却作用によって効果的に冷却される。
【0031】
又、カバーの端部側に配置された電磁石は、リヤデフに隣接配置された従来例と異なって、ケーシング本体側に配置された変速機構(例えば、デファレンシャル装置)からの熱を受けにくい。
【0032】
これらの理由によって、電磁石の温度上昇(温度の変動)が小さくなり、励磁電流が安定するから、カップリングは安定した伝達トルクの制御特性が得られる。
【0033】
又、トルク伝達軸は軸状トルク伝達部材に連結し、ケース状トルク伝達部材には入力しない。
【0034】
又、電磁石はケース状トルク伝達部材の一側に配置されており、ケース状トルク伝達部材は他側で変速機構側の連結軸に連結されている。
【0035】
従って、磁気回路の一部を構成するケース状トルク伝達部材の一側側壁(ロータ)は、トルク伝達経路から除外されており、強度上の要求から解放され、磁気透過性に優れた材料を選択することができる。
【0036】
又、変速機構側の連結軸に連結されたケース状トルク伝達部材の他側部材は、磁気透過性の要求から解放され、充分な強度の部材を選択することができる。
【0037】
こうして、これらの部材は過大な要求から解放され、磁気透過性や強度などの要求に従ってそれぞれの材質を選定することが可能になり、カップリングの性能がそれだけ向上すると共に、高価な材料を用いなくてすむから、低コストに実施できる。
【0038】
又、トルク伝達軸と連結する軸状トルク伝達部材に、強度の高い部材を用いることによって、カップリングは充分なトルク伝達容量が得られる。
【0039】
請求項2のカップリングは、ケーシング本体と、これに固定されたカバーとを有し、変速機構を潤滑オイルと共にケーシング本体側に収容する静止側ケーシングに収容されたカップリングであって、前記カバーの前記ケーシング本体と固定されていない開口側に位置する一側の側壁と該一側の側壁より前記変速機構側に位置する中空状のケースとを備えたケース状トルク伝達部材と、このケース状トルク伝達部材の前記一側の側壁に貫入した軸状トルク伝達部材と、これら両トルク伝達部材の間に配置されたメインクラッチと、前記一側の側壁を挟んで前記クラッチと異なる側の前記カバーの開口側に配置され磁力によってアーマチャを移動させる電磁石と、このアーマチャに押圧されて連結するコントロールクラッチと、コントロールクラッチが連結されると両トルク伝達部材間の伝達トルクを受けて作動しメインクラッチを連結させるカムとを備え、前記ケース状トルク伝達部材は前記静止側ケーシングのカバー側に収容されていると共に、軸状トルク伝達部材が、一側で前記一側の側壁と前記カバーとを貫通し、前記カバーの外部でトルク伝達軸に連結されており、電磁石のコアが、この貫通部付近でカバーに支持されており、ケース状トルク伝達部材が、一側で前記一側の側壁に設けられた凹部に前記電磁石のコアを貫入させ、他側で変速機構側の連結軸に連結されていることを特徴とする。
【0040】
電磁石を励磁すると、その磁気力によってアーマチャが移動し、コントロールクラッチを連結させる。コントロールクラッチが連結されると、両トルク伝達部材間のトルクがカムに掛かり、生じたカムスラスト力により押圧部材を介してメインクラッチが連結され、カップリングが連結される。
【0041】
電磁石の励磁電流を制御すると、コントロールクラッチの滑りによってカムスラスト力が変化し、メインクラッチの連結力及びカップリングの伝達トルクを正確に調整することができる。
【0042】
又、電磁石の励磁を停止すると、コントロールクラッチが開放されてカムのスラスト力が消失し、メインクラッチが開放されて、カップリングの連結が解除される。
【0043】
又、請求項2のカップリングは、電磁石をカバーの端部付近に配置すると共に、トルク伝達部材を軸状トルク伝達部材に連結させることなどによって、請求項1のカップリングと同等の効果を得る。
【0044】
なお、請求項1及び請求項2のカップリングを、四輪駆動車の前輪側、あるいは、後輪側の各動力伝達系に配置し、各側車輪を連結すれば車両は四輪駆動状態になり、切り離せば車両は二輪駆動状態になる。
【0045】
又、このカップリングを四輪駆動車のフロントデフ(エンジンの駆動力を左右の前輪に配分するデファレンシャル装置)やリヤデフ(エンジンの駆動力を左右の後輪に配分するデファレンシャル装置)と各車輪側車軸上に配置することも可能である。
【0046】
この場合も、カップリングを連結すると、車両は四輪駆動状態になり、カップリングの連結を解除すると、各デファレンシャル装置が自由に差動回転することによって、車輪側への駆動力伝達が停止され、車両は二輪駆動状態になる。
【0047】
請求項3の発明は、請求項1又は請求項2記載のカップリングであって、変速機構側の連結軸が、ベアリングを介して静止側ケーシングに支承されており、ケース状トルク伝達部材の他側が、これらの連結軸とベアリングとを介して静止側ケーシングに支承されていることを特徴とし、請求項1又は請求項2のいずれかと同等の効果を得る。
【0048】
これに加えて、請求項3の構成では、ケース状トルク伝達部材の他側端部を、変速機構の連結軸用のベアリングによって静止側ケーシングに支承した。
【0049】
従って、ケース状トルク伝達部材の他側端部を支承するための専用ベアリングが不要になり、部品点数が減って、低コストになる。
【0050】
又、この専用ベアリングのためのベアリングハウジングをデフキャリヤ421に形成する必要がある従来例と較べて、ベアリングハウジングの加工個所が減少しただけ、静止側ケーシングは、形状が簡易になり、低コストになる。
【0051】
更に、連結軸用の容量の大きなベアリングで、カップリングのスラスト力を受けることができるから、カップリングの軸方向位置と性能が安定し、耐久性が向上する。
【0052】
請求項4の発明は、請求項1又は請求項2記載のカップリングであって、ケース状トルク伝達部材の他側が、ベアリングを介して静止側ケーシングに支承されていることを特徴とし、請求項1又は請求項2のいずれかと同等の効果を得る。
【0053】
これに加えて、請求項4の構成では、ケース状トルク伝達部材の他側端部をベアリングを介して静止側ケーシングに支承したことにより、カップリングは、軸方向と径方向の両方で正確に位置決めされるから、性能が更に安定し、耐久性が向上する。
【0054】
請求項5の発明は、請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載のカップリングであって、軸状トルク伝達部材とカバーとの間、及び、変速機構側の連結軸とケーシング本体との間にそれぞれ配置されたシールによって、変速機構側及び大気側の両方から区画された空間が、周囲に形成されていることを特徴とし、請求項1乃至請求項4のいずれかと同等の効果を得る。
【0055】
これに加えて、軸状トルク伝達部材とカバーとの間にシールを配置し、変速機構側の連結軸とケーシング本体との間にシールを配置したことによって、カップリングの周囲に容量の大きな空間を形成し、この空間を大気側と変速機構側の両方から遮断した。
【0056】
そこで、例えば、この空間に冷却流体を封入すれば、その冷却効果によって電磁石の温度変動が小さくなり、カップリングの伝達トルク制御特性が更に安定する。
【0057】
又、空間に磁性流体を封入し、電磁石とケース状トルク伝達部材との間に形成されるエアギャップを、この磁性流体で充填すれば、磁気回路の一部を構成するこのエアギャップ磁気抵抗が大幅に低減される。
【0058】
従って、小型の電磁石でもアーマチャが充分に強く吸引されるから、カップリングは大きなトルク伝達容量が得られると共に、バッテリの負担が軽減され、エンジンの燃費が向上する。
【0059】
又、各シールは、いずれも軸状の部材上に配置されるから小径であり、摺動速度が遅く、摩耗しにくく、耐久性が高い。
【0060】
耐久性が高いから、空間に冷却流体や磁性流体を封入することによる上記のような効果を長期にわたって享受できる。
【0061】
又、各シールが小径であるから、カップリングもそれだけコンパクトで軽量になり、車載性が向上する。
【0062】
請求項6の発明は、請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載のカップリングであって、ケース状トルク伝達部材の他側を閉止する側壁と、ケース状トルク伝達部材と軸状トルク伝達部材の間の一側に配置されたシールとによって形成された密封空間にオイルが封入されており、軸状トルク伝達部材に、他側で前記側壁に向かって開口する容量増大空間が設けられ、連通流路によって容量増大空間を密封空間に連通させたことを特徴とし、請求項1乃至請求項5のいずれかと同等の効果を得る。
【0063】
ケース状トルク伝達部材と軸状トルク伝達部材との間に形成された密封空間にはオイルが封入されており、このオイルによって、クラッチやカムなどが潤滑される。
【0064】
これに加えて、軸状トルク伝達部材に容量増大空間を設け、連通流路によって密封空間に連通させたことにより、密封空間のオイル容量が増加するから、温度上昇や、摩耗粉の蓄積などによるオイルの劣化が抑制され、長期にわたって優れた潤滑性が得られ、それだけカップリングの耐久性が向上する。
【0065】
又、クラッチの作動に伴うカップリングの内圧上昇も、容量増大空間の吸収作用によって、許容限界が高くなるから、カップリングの伝達トルク制御特性が更に安定する。
【0066】
【発明の実施の形態】
図1と図4と図5とによってカップリング1(本発明の第1実施形態)の説明をする。
【0067】
このカップリング1は請求項1、2、4、6の特徴を備えている。図1はカップリング1を示し、図4と図5はカップリング1を用いた四輪駆動車の動力系を示している。又、左右の方向はこれらの車両の左右の方向であり、図1の左方は各車両の前方に相当する。なお、符号を与えていない部材等は図示されていない。
【0068】
図4のように、この動力系は、横置きのエンジン3とトランスミッション5、トランスファ7、フロントデフ9、前車軸11、13、左右の前輪15、17、後輪側のプロペラシャフト19(トルク伝達軸)、カップリング1、リヤデフ21、後車軸23、25、左右の後輪27、29などから構成されている。
【0069】
このように、カップリング1は後輪側の動力伝達系に配置されており、後輪27、29の連結と切り離し及び伝達トルクの制御を行う。
【0070】
エンジン3の駆動力は、トランスミッション5の出力ギヤ31からリングギヤ33を介してフロントデフ9のデフケース35に伝達され、フロントデフ9から前車軸11、13を介して左右の前輪15、17に配分され、更に、デフケース35からトランスファ7を介してプロペラシャフト19を回転させ、カップリング1に伝達される。
【0071】
カップリング1が連結されると、エンジン3の駆動力はプロペラシャフト19を介して、リヤデフ21から後車軸23、25を介して左右の後輪27、29に配分され、車両は四輪駆動状態になる。
【0072】
又、カップリング1の連結が解除されると、リヤデフ21以下の後輪側が切り離されて車両は二輪駆動状態になる。
【0073】
図4のように、リヤデフ21はデフキャリヤ37(静止側のケーシング)に収容されている。このデフキャリヤ37はキャリヤ本体39(静止側ケーシングの本体)とフロントカバー41(静止側ケーシングのカバー)とをボルト43で連結して構成されている。
【0074】
又、ボルト43で固定する前に、キャリヤ本体39とフロントカバー41は、図1のように、ノックピン44によってセンタリングされる。
【0075】
図1と図4のように、カップリング1はフロントカバー41側に収容されており、リヤデフ21(変速機構)はキャリヤ本体39側に収容されている。
【0076】
カップリング1は、回転ケース45(ケース状トルク伝達部材)、インナーシャフト47(軸状トルク伝達部材)、多板式のメインクラッチ49及びコントロールクラッチ51、カムリング53、ボールカム55(カム)、プレッシャプレート57、アーマチャ59、リング状の電磁石61、コントローラなどから構成されている。
【0077】
図1のように、回転ケース45は、前側のロータ63(一側の側壁)と中空状のケース65と後側のフランジ部材67(他側の側壁)とから構成されている。
【0078】
前側ロータ63とケース65はねじ部69で螺着され、後述するコントロールクラッチに適度な隙間を与えるよう、ねじ込み量71を調整位置決めし、更に、ねじ部69に螺着されたナット73により、設計手法としては一般的なダブルナット機能によって固定されている。
【0079】
又、前側ロータ63とケース65の間にはオイル漏れを防止するシールリング75が配置されている。
【0080】
ケース65とフランジ部材67はボルト77で固定されており、これらの間にはオイル漏れを防止するシールリング79が配置されている。
【0081】
回転ケース45は、前端側を両側シールのベアリング81と電磁石61のコア83とを介してデフキャリヤ37のフロントカバー41に支承されており、後端側を両側シールのベアリング85を介してデフキャリヤ37のキャリヤ本体39に支承されている。
【0082】
又、ベアリング85とキャリヤ本体39との間には隙間調整用のワッシャ87が配置されている。
【0083】
回転ケース45は、ワッシャ87と当接するキャリヤ本体39の突き当たり部89により、ベアリング85を介してデフキャリヤ37との間で軸方向後方への移動を規制されるから、ボルト43によってフロントカバー41をキャリヤ本体39に固定するだけで、回転ケース45の軸方向位置決めが完了する。
【0084】
又、このワッシャ87の厚さを変えれば、回転ケース45の軸方向位置を調整できる。
【0085】
回転ケース45のフランジ部材67にはドライブピニオンシャフト91がスプライン連結されている。
【0086】
このように、ケース65にボルト77で固定されたフランジ部材67がドライブピニオンシャフト91に連結され、トルク伝達経路にされていると共に、前側ロータ63はケース65に螺着されているから、前側ロータ63は、下記の非磁性材料のリング161を含めてトルク伝達経路から除外されおり、トルクの伝達には関与しない。
【0087】
又、トルク伝達部材であるフランジ部材67には、静的強度と衝撃強度とを増すために浸炭処理が施されている。
【0088】
図4のように、ドライブピニオンシャフト91(変速機構の連結軸)に形成されたドライブピニオンギヤ93は、リヤデフ21側のリングギヤ95と噛み合ってリヤデフ21を回転駆動する。
【0089】
図1のように、ドライブピニオンシャフト91はベアリング97によってキャリヤ本体39に支承されている。又、ベアリング97とそのロックナット99との間にはワッシャ101とインナープレート103が固定されており、インナープレート103とキャリヤ本体39との間にはオイルシール105が配置されている。
【0090】
両側シールベアリング81とこのオイルシール105とによって、デフキャリヤ37とカップリング1との間に大気室107が形成されている。
【0091】
フロントカバー41には開口109(貫通部)が設けられている。この開口109には電磁石61のコア83の外周圧入部111が圧入されており、回り止めピン113によって回り止めされている。この回り止めピン113は電磁石61のリード線115の取り出し部117に対して周方向に180°反対の位置に配置されており、装着が容易である。
【0092】
このリード線取り出し部117は、大気室107と大気空間とを連通させており、大気室107内の温度上昇による内圧上昇を抑制している。
【0093】
又、電磁石61のコア83は開口109から外部に露出しており、外部に放熱すると共に、大気によって冷却される。
【0094】
又、外周圧入部111の前方にはストッパ部119が形成されており、このストッパ部119で回転ケース45とフロントカバー41とが突き当たることにより、回転ケース45の前方への移動を規制している。
【0095】
インナーシャフト47は前方から回転ケース45に貫入している。その前端部はニードルベアリング123を介して前側ロータ63に支承されており、後端部はベアリング125を介してケース65に支承されている。
【0096】
相対回転するインナーシャフト47と前側ロータ63との間には、断面がX字状のシールであるXリング127が配置され、オイル漏れを防止している。
【0097】
又、インナーシャフト47には、動力伝達軸(トルク伝達軸)129が一体に形成されている。
【0098】
この動力伝達軸129にはコンパニオンフランジ131がスプライン連結され、ねじ部133に締め付けたナットによって固定されている。図4のように、このコンパニオンフランジ131は継ぎ手135側のフランジ137にボルトで連結されており、インナーシャフト47をプロペラシャフト19(トルク伝達軸としてのエンジン側の回転軸)側に連結している。
【0099】
又、回転ケース45の前側ロータ63にはダストカバー139が取り付けられている。このダストカバー139はコンパニオンフランジ131とコア83との間を覆って、走行中に飛来する障害物とベアリング81との衝突を防止し、ベアリング81を保護する。
【0100】
ダストカバー139は、コンパニオンフランジ131をナットで締め付け固定する際に、コンパニオンフランジ131の端面とインナーシャフト47との間で挟持固定される。
【0101】
又、ダストカバー139の外周側は凹凸状に前方に張り出しており、インナーシャフト47と共に回転することによって、外気側の異物がフロントカバー41に入るのを抑制している。
【0102】
回転ケース45は、前側ロータ63とケース65間のシールリング75と、ケース65とフランジ部材67間のシールリング79と、前側ロータ63とインナーシャフト47間のXリング127とによって密封型にされている。
【0103】
デフキャリヤ37のキャリヤ本体39部分には、リヤデフ21側の潤滑用オイルが封入されており、ドライブピニオンギヤ93とリングギヤ95との噛み合い部及びこれらの支持ベアリングや各部材の摺動部などを潤滑している。
【0104】
又、密封型回転ケース45の内部に形成された密封空間にはオイルが封入されている。このオイルにはキャリヤ本体39のオイルと異なった専用のオイルが用いられている。
【0105】
密封空間に封入されたオイルによって、密封空間内部のメインクラッチ49、コントロールクラッチ51、ボールカム55、他の摺動部などが潤滑される。
【0106】
この専用オイルの充填率は、密封空間の全容量に対して50%〜90%のレベル、好ましくは70%〜85%のレベルであり、残りの部分は空気で占められている。
【0107】
この充填率は、回転ケース45が回転している状態で、コントロールクラッチ51の内周側、つまり、カムリング53の外周のスプライン部141が浸るオイルレベルであること、及び、回転ケース45の温度が上昇したときの内圧を吸収できること、などの諸条件を満たすように決定される。
【0108】
又、フロントカバー41側(大気室107)にオイルを封入する場合は、オイルシール105により、キャリヤ本体39側のオイルと混ざり合うことが防止されるから、フロントカバー41とキャリヤ本体39にはそれぞれの用途に適したオイルを選択することができる。
【0109】
メインクラッチ49は、回転ケース45の内周とインナーシャフト47の外周との間に配置されている。又、メインクラッチ49と回転ケース45との間にはプレート143が配置されており、メインクラッチ49の押圧力を受けると共に、厚さの異なるものと交換することによって、各クラッチ板の隙間や、クラッチ板の枚数を調整できる。
【0110】
コントロールクラッチ51は、回転ケース45の内周とカムリング53との間に配置されており、後述のように、アーマチャ59によって回転ケース45の前側ロータ63に押圧されて締結される。
【0111】
ボールカム55は、カムリング53とプレッシャプレート57との間に配置されている。
【0112】
プレッシャプレート57の係合部145はインナーシャフト47の外周に形成されたスプライン部147に軸方向移動自在に連結されている。このスプライン部145にはメインクラッチ49のインナープレートが係合する。
【0113】
又、カムリング53と前側ロータ63との間には、ボールカム55のカム反力を受けるスラストベアリング149及びワッシャ151が配置されている。
【0114】
円板状のアーマチャ59は、コントロールクラッチ51とプレッシャプレート57との間に配置されている。
【0115】
又、アーマチャ59は内周側でプレッシャプレート57に対し微小な所定間隔を隔てて対向しており、コントロールクラッチ51から離れないように位置を規制されていると共に、コントロールクラッチ51とメインクラッチ49のアウタープレートが係合する回転ケース45の内周に形成されたスプライン部153の先端に外周側の位置を規制されており、電磁石61による引き付けコントロール性を高めている。
【0116】
電磁石61のコア83は、上記のように、デフキャリヤ37の開口109に圧入して固定されていると共に、前側ロータ63に設けられている凹部155に貫入して、エアギャップ157を形成している。
【0117】
又、上記のように、コア83は開口109から外部に露出しており、電磁石61のリード線115はコア83から直接外部に引き出されている。
【0118】
コア83に設けられたリード線115の取り出し部117には、固形接着材やゴム製プラグを取り付けて、リード線115の疲労断線を防止し、耐候性を向上させることが可能である。
【0119】
コントローラは、車速、操舵角、横Gなどから旋回走行を検知し、あるいは、路面状態などに応じて、電磁石61の励磁、励磁電流の制御、励磁停止などを行う。
【0120】
電磁石61が励磁されると、磁力のループ159が形成されてアーマチャ59が吸引され、回転ケース45の前側ロータ63との間でコントロールクラッチ51を押圧して締結させる。コントロールクラッチ51が締結されると、回転ケース45とインナーシャフト47の間のトルクがボールカム55に掛かり、生じたカムスラスト力によりプレッシャプレート57を介してメインクラッチ49が押圧され、締結する。
【0121】
又、電磁石61のコア83と回転ケース45とのエアギャップ157は、アーマチャ59が充分な強さで吸引されるように、コア83とベアリング85と前側ロータ63との軸方向の取り付け位置をワッシャ87の厚さを変えることによって、最適値に調整されている。
【0122】
こうしてカップリング1が連結されると、エンジン3の駆動力はインナーシャフト47から回転ケース45に伝達されて後輪27、29を駆動し、車両が四輪駆動状態になり、悪路などの走破性や、車体の安定性が向上する。
【0123】
又、電磁石61の励磁電流を制御すると、コントロールクラッチ51の滑りによってボールカム55のカムスラスト力が変化し、メインクラッチ49の連結力が変化して後輪27、29の駆動力が調整される。
【0124】
このようにして、前後輪間の駆動力配分比を制御すると、例えば、旋回走行中の車両の操縦性や安定性などが向上する。
【0125】
又、電磁石61の励磁を停止すると、コントロールクラッチ51が開放されてボールカム55のカムスラスト力が消失し、メインクラッチ49が開放されてカップリング1の連結が解除され、車両は二輪駆動状態になる。
【0126】
回転ケース45の前側ロータ63にはステンレス鋼のような非磁性材料のリング161が配置されている。又、コントロールクラッチ51の各プレートには開孔163及びブリッジ部が形成され、磁力ループ159からの磁気漏れを防止し、電磁石61の磁力をアーマチャ59に集中させている。
【0127】
又、上記のように、アーマチャ59は隣接部材との間で軸方向と径方向に位置決めされているフリー部材ではあるが、プレッシャプレート57との微小な所定隙間を有する部分は磁力ループ159に対して磁束密度の低い内周側外端部であるから、アーマチャ59の吸引力には実質的に影響を与えない。
【0128】
インナーシャフト47には、大径と小径の同軸孔165、167が設けられており、フランジ部材67に形成された中空のハブ部169は大径の同軸孔165に相対回転自在に貫入している。
【0129】
このハブ部169には、密閉プラグ171が固定されており、同軸孔165、167との間で容量増大空間173を形成している。この容量増大空間173には、封入オイルや空気が収容される。
【0130】
又、インナーシャフト47には、径方向の油路175、177が設けられており、油路175は容量増大空間173とニードルベアリング123とを連通し、油路177は容量増大空間173とスラストベアリング149とを連通している。
【0131】
又、フランジ部材67のハブ部169には、外周に螺旋状の油路179(連通流路)が設けられており、ハブ部169とインナーシャフト47の同軸孔165との摺動面を潤滑している。
【0132】
容量増大空間173のオイルは、カップリング1の遠心力により、各油路175、177からそれぞれニードルベアリング123とスラストベアリング149に送られ、更に、カムリング53の内周とインナーシャフト47の外周との摺動面、ボールカム55、コントロールクラッチ51などに供給され、更に、プレッシャプレート57に設けられた貫通孔181と、インナーシャフト47とプレッシャプレート57の間に設けられたリング状の空間183からメインクラッチ49に送られ、これらを充分に潤滑し、冷却する。
【0133】
このとき、螺旋状油路179は、螺旋の歩みによるポンプ作用によってオイルを容量増大空間173側に押圧し、上記のようなオイルの流れ、つまり、オイル循環作用を促進し、潤滑性と冷却性を大きく向上させる。
【0134】
又、螺旋状油路179は、ベアリング125の隙間を介して、容量増大空間173と回転ケース45の密封空間とを連通しており、密封空間のオイル容量を増加させている。
【0135】
従って、螺旋状油路179が反対方向に回転しても、容量増大空間173から密封空間にオイルが供給され、密封空間内部の潤滑効果と冷却効果とを向上させる。
【0136】
又、プレッシャプレート57の貫通孔181は、プレッシャプレート57が受けるオイルの抵抗を低減してメインクラッチ49の押圧レスポンスを向上させると共に、メインクラッチ49側にオイルを移動し易くし、メインクラッチ49の潤滑性と冷却性を向上させている。
【0137】
又、容量増大空間173は、これを区画する密閉プラグ171が薄いから、それだけ容量が大きい。
【0138】
又、インナーシャフト47には密閉プラグ171に相当する一体の区画壁がないから、同軸孔165、167は、例えば、ドリルによって容易に加工できる。
【0139】
カップリング1は、図4の矢印185が示すように、トランスファ7(変速機構側)とプロペラシャフト19(トルク伝達軸)との間に配置してもよい。
【0140】
この場合、プロペラシャフト19とリヤデフ21との間に配置した場合と同様にして後輪27、29の連結と切り離しとを行う。
【0141】
又、カップリング1は、矢印187、189が示すように、フロントデフ9(変速機構側)と前車軸11、13(トルク伝達軸)との間に配置してもよく、又、矢印191が示すように、トランスファ7内のギヤ機構(軸方向に一方が変速機構側で他方がトルク伝達軸)と組み合わせて配置してもよく、更に、矢印193、195が示すように、リヤデフ21(変速機構側)と後車軸23、25(トルク伝達軸)との間に配置してもよい。
【0142】
矢印185、187、189の位置に配置した場合は、カップリング1を連結すると車両は四輪駆動状態になり、連結を解除すると、フロントデフ9の差動回転が自由になり、前輪15、17への駆動力伝達が停止されて、車両は二輪駆動状態になる。
【0143】
又、矢印191の位置に配置した場合は、上記のようにプロペラシャフト19とリヤデフ21との間に配置した場合と同等の機能が得られる。
【0144】
又、矢印193、195の位置に配置した場合は、カップリング1を連結すると車両は四輪駆動状態になり、連結を解除すると、リヤデフ21の差動回転が自由になり、後輪27、29への駆動力伝達が停止されて、車両は二輪駆動状態になる。
【0145】
なお、この場合には、トランスファ7内に駆動力断続用のクラッチを設ければ、プロペラシャフト19を完全に静止状態に保つことが可能となり、エンジン3の燃費が向上する。
【0146】
又、図5は、図4の四輪駆動車と異なった構成の動力系を持つ四輪駆動車を示している。
【0147】
この動力系は、縦置きのエンジン201及びトランスミッション203、トランスファ205(変速機構側)、前輪側のプロペラシャフト207(トルク伝達軸)、フロントデフ209(変速機構側)、前車軸211、213(トルク伝達軸)、左右の前輪215、217、後輪側のプロペラシャフト219(トルク伝達軸)、リヤデフ221(変速機構側)、後車軸223、225(トルク伝達軸)、左右の後輪227、229などから構成されている。
【0148】
エンジン201の駆動力は、トランスミッション203からトランスファ205を介して、それぞれ前輪側と後輪側の各プロペラシャフト207、219を回転させる。
【0149】
前輪側プロペラシャフト207の回転は、フロントデフ209から前車軸211、213を介して左右の前輪215、217に配分され、後輪側プロペラシャフト219の回転は、カップリング1が連結されると、リヤデフ221から後車軸223、225を介して左右の後輪227、229に配分される。
【0150】
図5の車両では、カップリング1は、矢印231、233が示すように、トランスファ205と後輪側プロペラシャフト219との間、あるいは、プロペラシャフト219とリヤデフ221との間に配置してもよい。
【0151】
又、カップリング1は、矢印235、237が示すように、トランスファ205と前輪側プロペラシャフト207との間、あるいは、プロペラシャフト207とフロントデフ209との間に配置してもよい。
【0152】
図4の動力系と同様に、後輪227、229側に配置した場合は、これらの連結と切り離しとを行い、前輪215、217側に配置した場合は、これらの連結と切り離しとを行う。
【0153】
又、カップリング1を前輪側に配置した場合、前車軸211、213と前輪215、217との間にハブクラッチ239、241を配置し、これらの連結をカップリング1と連動して解除すれば、カップリング1から前輪215、217までの動力伝達系が、エンジン201の回転と前輪215、217による連れ回りの両方から遮断され、回転が停止して騒音、振動、摩耗などが大きく軽減されると共に、エンジン201の燃費が向上する。
【0154】
又、カップリング1は、矢印243、245が示すように、フロントデフ209と前車軸211、213との間に配置してもよく、矢印247、249が示すように、リヤデフ221と後車軸223、225との間に配置してもよい。
【0155】
前車軸211、213上に配置した場合は、カップリング1を連結すると車両は四輪駆動状態になり、連結を解除すると、フロントデフ209の差動回転が自由になり、前輪215、217への駆動力伝達が停止され、車両は二輪駆動状態になる。
【0156】
又、後車軸223、225上に配置した場合は、カップリング1を連結すると車両は四輪駆動状態になり、連結を解除すると、リヤデフ221の差動回転が自由になり、後輪227、229への駆動力伝達が停止され、車両は二輪駆動状態になる。
【0157】
こうして、カップリング1が構成されている。
【0158】
上記のように、カップリング1は、従来例と異なって、電磁石61をフロントカバー41の開口109に配置して外部に露出させたから、放熱効果と、外気による冷却作用によって電磁石61が効果的に冷却される。
【0159】
又、デフキャリヤ37の内部でリヤデフ21、221の反対側に配置された電磁石61は、従来例と異なって、リヤデフ21、221からの熱を受けにくい。
【0160】
これらの理由によって、電磁石61は温度上昇(温度の変動)が小さくなり、コントロールクラッチ51を吸引する励磁電流が安定するから、カップリング1は安定した伝達トルクの制御特性が得られる。
【0161】
従って、車両の悪路走破性、車体の安定性、旋回操縦性などが大きく向上する。
【0162】
又、エンジン3、201の駆動力はインナーシャフト47に入力し、回転ケース45には入力しない。
【0163】
更に、回転ケース45のフランジ部材67をトルク伝達経路にし、磁気回路の一部を構成する前側ロータ63をトルク伝達経路から除外した。
【0164】
従って、前側ロータ63は強度上の要求から解放され、磁気透過性に優れた材料を選択することが可能になり、こうすることによってカップリング1の伝達トルク制御特性が更に向上する。
【0165】
更に、トルク伝達経路から除外された前側ロータ63は、特別に高い静的強度や衝撃強度が要求されないから、例えば、浸炭処理のような表面硬化処理が不要である。
【0166】
このように、浸炭処理をしないから、リング161の内外周や、エアギャップ157を形成する前側ロータ63の凹部155に、磁力ループ159の阻害を抑制するために防炭剤を塗布する必要もなくなり、コストの上昇が防止される。
【0167】
又、磁気透過性の要求から解放されたフランジ部材67には、充分な静的強度と衝撃強度とを持った部材を選定することが可能になり、こうすることによってカップリング1のトルク伝達容量が大きくなる。
【0168】
更に、フランジ部材67は、相手側のドライブピニオンシャフト91との連結形態を、上記のボルト連結の他に、例えば、スプライン連結、セレーション連結、溶接などの中から自由に選択することが可能になる。
【0169】
こうして、前側ロータ63とフランジ部材67は、過大な要求から解放され、磁気透過性や強度などの要求に従ってそれぞれの材質を選定することができるから、カップリング1は性能がそれだけ向上すると共に、高価な材質の部材を用いないですむから、低コストに実施できる。
【0170】
又、エンジンの駆動力が入力するインナーシャフト47に、強度の高い部材を用いることによって、カップリング1は大きなトルク伝達容量が得られる。
【0171】
又、回転ケース45をベアリング85を介してデフキャリヤ37に支承したことにより、カップリング1は、軸方向と径方向の両方で正確に位置決めされるから、更に性能が安定し、耐久性が向上する。
【0172】
又、インナーシャフト47に設けた容量増大空間173を、回転ケース45の密封空間に連通させ、密封空間のオイル容量を増加させたことによって、各クラッチ49、51などで生じる摩耗粉の蓄積や、温度上昇によるオイルの劣化が抑制され、長期にわたって優れた潤滑性が得られ、カップリング1の耐久性が更に向上する。
【0173】
又、各クラッチ49、51の作動に伴う密封空間での内圧上昇も、容量増大空間173の吸収機能によって、許容限界が高くなり、カップリング1の伝達トルク制御特性が更に安定する。
【0174】
次に、図2と図4と図5とによってカップリング301(本発明の第2実施形態)の説明をする。
【0175】
このカップリング301は請求項1、2、3、5、6の特徴を備えている。左右の方向は図4と図5の各四輪駆動車の左右の方向であり、図2の左方はこれらの車両の前方に相当する。なお、符号を与えていない部材等は図示されていない。
【0176】
カップリング301は、上記実施形態のカップリング1と同様に、図4と図5の車両の後輪側プロペラシャフト19(トルク伝達軸)とリヤデフ21、221との間に配置されており、後輪27、29、227、229側の連結と切り離し及び伝達トルクの制御を行う。
【0177】
以下、カップリング1と同機能部材には同一の符号を与えて参照しながら主に相違点を説明する。
【0178】
カップリング301は、回転ケース45、インナーシャフト47、メインクラッチ49、コントロールクラッチ51、カムリング53、ボールカム55、プレッシャプレート57、アーマチャ59、リング状の電磁石61、コントローラなどから構成されている。
【0179】
図2のように、回転ケース45は、前側のロータ63とケース65と後側のフランジ部材303(他側の側壁)とから構成されている。
【0180】
ケース65の後端には側壁部305が形成されており、フランジ部材303はこの側壁部305に重ねた状態で、ボルト77によってケース65に固定されている。
【0181】
又、フランジ部材303と側壁部305は、互いの間に形成されたインロー部306によってセンタリングされている。
【0182】
フランジ部材303のハブ部323にはドライブピニオンシャフト91がスプライン連結され、トルク伝達経路にされている。
【0183】
従って、前側ロータ63は、非磁性材料のリング161を含めてトルク伝達経路から除外されおり、トルクの伝達には関与しない。
【0184】
又、フランジ部材303とドライブピニオンシャフト91はこのスプライン連結によって互いにセンタリングされている。
【0185】
又、トルク伝達部材であるフランジ部材303には、静的強度と衝撃強度とを増すために浸炭処理が施されている。
【0186】
図2のように、ドライブピニオンシャフト91はアンギュラーコンタクトベアリング307、309によってキャリヤ本体39に支承されている。各ベアリング307、309はロックナット99によってそれぞれの径方向の隙間を適正に調整されてセンタリングされていると共に、軸方向の移動を規制されている。
【0187】
このように、回転ケース45は、ドライブピニオンシャフト91を介して容量の大きいアンギュラーコンタクトベアリング307、309に支持されているから、径方向と軸方向の両方で適正に位置決めされる。
【0188】
フロントカバー41の前端側には、圧入孔311が設けられており、この圧入孔311には電磁石61のコア83の外周圧入部111が圧入され、回り止め手段によって回り止めされている。
【0189】
電磁石61のリード線115は、フロントカバー41に取り付けられたグロメット313を介して外部に引き出されている。
【0190】
又、インナーシャフト47に形成された動力伝達軸129にはコンパニオンフランジ131がスプライン連結され、ねじ部133に螺着されたナット315によって固定されており、インナーシャフト47をプロペラシャフト19側に連結している。
【0191】
カップリング301の前端側では、デフキャリヤ37のフロントカバー41に設けられた開口317(貫通部)とコンパニオンフランジ131のハブ部319との間に、オイルシール321が配置されており、後端側では、フランジ部材303のハブ部323とキャリヤ本体39との間に、オイルシール325が配置されている。
【0192】
これらのオイルシール321、325によって、デフキャリヤ37とカップリング301との間に大気室107が形成されており、オイルシール321は大気室107を大気から区画し、オイルシール325は大気室107をキャリヤ本体39の部分に封入されている潤滑用オイルから遮断している。
【0193】
又、コンパニオンフランジ131のハブ部319にはダストカバー327が取り付けられている。ダストカバー327の先端は、フロントカバー41に形成された凹部329に貫入しており、コンパニオンフランジ131とフロントカバー41の先端部との間を覆って、走行中に飛来する障害物とオイルシール321との衝突を防止し、オイルシール321を保護する。
【0194】
シールリング75とXリング127とによって回転ケース45の内部に形成された密封空間には、ケース65の側壁部305に設けられたオイル供給流路331からオイルが注入される。このオイル供給流路331はオイルを注入した後密封ボール333を圧入してシールされている。
【0195】
このオイルによって、ベアリング123、149、カムリング53の内周とインナーシャフト47の外周との摺動面、ボールカム55、コントロールクラッチ51、メインクラッチ49などが潤滑され、冷却される。
【0196】
インナーシャフト47には、同軸孔335によって容量増大空間173が形成されている。この容量増大空間173には、封入オイルや空気が収容される。
【0197】
又、同軸孔335はケース65の側壁部305側に開口しており、この側壁部305との間に回転ケース45の密封空間と容量増大空間173とを連通する連通流路337が形成されている。
【0198】
容量増大空間173のオイルは、カップリング301の遠心力により、この連通流路337からベアリング125の隙間を通って回転ケース45の密封空間に送られ、密封空間のオイル容量を増加させて、密封空間内部の潤滑効果と冷却効果とを大きく向上させる。
【0199】
又、インナーシャフト47の同軸孔335は、上記のように開口しているから、例えば、ドリルによって容易に加工することができる。
【0200】
電磁石61を励磁すると、アーマチャ59によってコントロールクラッチ51が押圧され、ボールカム55によってメインクラッチ49が押圧され、カップリング301が連結される。
【0201】
カップリング301が連結されると車両は四輪駆動状態になり、悪路などの走破性や車体の安定性が向し、励磁電流によってカップリング301から後輪27、29に伝達されるトルクを調整すると、旋回走行中の車両の操縦性や安定性などが向上する。
【0202】
又、電磁石61の励磁を停止すると、カップリング301の連結が解除され、車両は二輪駆動状態になる。
【0203】
こうして、カップリング301が構成されている。
【0204】
カップリング301は、電磁石61をフロントカバー41の開口317付近に配置したから、放熱効果と、外気による冷却作用とによって電磁石61が冷却される。
【0205】
又、デフキャリヤ37の内部でリヤデフ21、221と反対側に配置された電磁石61は、リヤデフ21、221からの熱を受けにくい。
【0206】
これらの理由によって、電磁石61は温度の変動が小さくなり、コントロールクラッチ51を吸引する励磁電流が安定し、カップリング301の伝達トルク制御特性を安定させるから、車両の悪路走破性、車体の安定性、旋回操縦性などが大きく向上する。
【0207】
又、エンジン3、201の駆動力をインナーシャフト47に入力させることによって、回転ケース45側のフランジ部材303をトルク伝達経路にし、前側ロータ63をトルク伝達経路から除外した。
【0208】
こうして、強度上の要求から解放された前側ロータ63と、磁気透過性の要求から解放されたフランジ部材67は、過大な要求から解放され、磁気透過性や強度などの要求に従ってそれぞれの材質を選定することが可能になり、カップリング301は性能がそれだけ向上すると共に、高価な材質の部材を用いないですむから、低コストに実施できる。
【0209】
又、回転ケース45は、アンギュラーコンタクトベアリング307、309に支持されることによって、径方向と軸方向の両方で適正に位置決めされる。
【0210】
又、回転ケース45のスラスト力は、ドライブピニオンシャフト91用の容量の大きなこれらのベアリング307、309に負荷される。
【0211】
従って、カップリング301は、径方向と軸方向の両方で位置が安定し、振動や周辺部材との干渉などが防止され、高い性能が維持されると共に、耐久性が大きく向上する。
【0212】
又、他の位置決め手段が不要であるから、それだけ低コストに構成できる。
【0213】
又、回転ケース45の後端部を支承するための専用ベアリングが不要になり、部品点数がそれだけ減って、低コストになる。
【0214】
又、この専用ベアリングのためにベアリングハウジングをデフキャリヤ321に形成する必要がある従来例に較べて、ベアリングハウジングの加工個所が減少するから、デフキャリヤ37は形状が簡易になり、低コストになる。
【0215】
又、オイルシール321、325によって大気室107を形成し、大気室107を大気から区画すると共に、キャリヤ本体39に封入されているオイルから遮断した。
【0216】
そこで、大気室107に冷却流体を封入すれば、その冷却効果によって電磁石の温度変動が更に小さくなり、カップリング301の伝達トルク制御特性が安定する。
【0217】
又、大気室107に磁性流体を封入し、電磁石61と回転ケース45との間に形成されるエアギャップ157をこの磁性流体で充填すれば、磁気回路の磁気抵抗が大幅に低減される。
【0218】
従って、電磁石61を小型にしてもアーマチャ59が充分に強く吸引されるから、カップリング301は大きなトルク伝達容量が得られると共に、バッテリの負担が軽減され、エンジンの燃費が向上する。
【0219】
又、コンパニオンフランジ131のハブ部319に配置されたオイルシール321と、フランジ部材303のハブ部323に配置されたオイルシール325はいずれも軸状の部材上に配置されているから小径である。
【0220】
従って、摺動速度が小さく、摩耗しにくく、耐久性が高い。
【0221】
耐久性が高いから、大気室107に冷却流体や磁性流体を封入することによる上記のような効果を長期にわたって享受できる。
【0222】
又、オイルシール321、325が小径であることによって、カップリング301はコンパクトで軽量になり、車載性が向上する。
【0223】
又、小径のオイルシール321、325は安価である。
【0224】
又、インナーシャフト47に設けた容量増大空間173を、回転ケース45の密封空間に連通させ、密封空間のオイル容量を増加させたことによって、各クラッチ49、51などで生じる摩耗粉の蓄積や、温度上昇によるオイルの劣化が抑制され、長期にわたって優れた潤滑性が得られ、カップリング301の耐久性が更に向上する。
【0225】
又、各クラッチ49、51の作動に伴う密封空間での内圧上昇も、容量増大空間173の吸収機能によって、許容限界が高くなり、カップリング301の伝達トルク制御特性が更に安定する。
【0226】
なお、カップリング301も、第1実施形態のカップリング1と同様に、図4の矢印185、187、189、191、193、195の各位置に配置可能であり、図5の矢印231、233、235、237、243、245、247、249の各位置に配置可能である。
【0227】
これに加えて、カップリング301は、第1実施形態のカップリング1の特徴を除き、これと同等の効果を得る。
【0228】
次に、図3乃至図5によってカップリング351(本発明の第3実施形態)の説明をする。
【0229】
このカップリング351は請求項1、2、3、5、6の特徴を備えている。左右の方向は図4と図5の各四輪駆動車の左右の方向であり、図3の左方はこれらの車両の前方に相当する。なお、符号を与えていない部材等は図示されていない。
【0230】
以下、第2実施形態のカップリング301との相違点を説明する。
【0231】
図3のように、カップリング351の回転ケース45は、前側ロータ63とケース65と後側のフランジ部材353(他側の側壁)とから構成されている。
【0232】
フランジ部材353は、ケース65の側壁部305に重ねた状態で、ボルト77によってケース65に固定されている。
【0233】
又、フランジ部材353のハブ部355と側壁部305は、互いの間に形成されたインロー部357によってセンタリングされている。
【0234】
フランジ部材353は、ドライブピニオンシャフト91をハブ部355にスプライン連結してトルク伝達経路にされており、前側ロータ63を、非磁性材料のリング161を含めてトルク伝達経路から除外している。
【0235】
フランジ部材353とドライブピニオンシャフト91はこのスプライン連結によって互いにセンタリングされている。
【0236】
又、トルク伝達部材であるフランジ部材353には、静的強度と衝撃強度とを増すために浸炭処理が施されている。
【0237】
又、ドライブピニオンシャフト91をキャリヤ本体39に支承するアンギュラーコンタクトベアリング307、309は、ロックナット99によってそれぞれの径方向の隙間を適正に調整されてセンタリングされていると共に、軸方向の移動を規制されている。
【0238】
このように、回転ケース45は、ドライブピニオンシャフト91を介して容量の大きいアンギュラーコンタクトベアリング307、309に支持されているから、径方向と軸方向の両方で適正に位置決めされる。
【0239】
又、ロックナット99はケース65の側壁部305とフランジ部材353との間に配置されており、大気室107の内部に収容されている。
【0240】
従って、ロックナット99はフランジ部材353のハブ部355を介して各ベアリング307、309にスラスト力を与えて、これらのセンタリングなどを行う。
【0241】
カップリング351の他の構成は、カップリング301と同等である。
【0242】
こうして、カップリング351が構成されている。
【0243】
このカップリング351では、上記のように、回転ケース45が、ロックナット99によりフランジ部材353を介してドライブピニオンシャフト91に固定されている。
【0244】
このように、アンギュラーコンタクトベアリング307、309による回転ケース45の径方向と軸方向の位置決めが更に強固になると共に、回転ケース45のスラスト力は大きなベアリング307、309に効果的に負荷される。
【0245】
従って、カップリング351は、径方向と軸方向の両方で位置が更に安定し、振動や周辺部材との干渉等が防止され、高い性能が維持されると共に、耐久性が大きく向上する。
【0246】
これに加えて、カップリング351は、第1と2実施形態のカップリング1、301のそれぞれの特徴を除き、これらと同等の効果を得る。
【0247】
なお、請求項1の発明は、各実施形態(請求項2の発明)のようにカムによってクラッチの連結操作力を増幅するカップリングではなく、電磁石によって操作されるクラッチで一対のトルク伝達部材の連結を断続するカップリングであり、エンジンの駆動力が軸状トルク伝達部材に入力するように構成したこと及び電磁石を変速機構の反対側に配置したことによって、各実施形態と同様の効果を得る。
【0248】
又、本発明において、変速機構はデファレンシャル装置に限らず、図4と図5に指示されているように、トランスファでもよい。
【0249】
又、変速機構はデファレンシャル装置やトランスファ以外の変速機構(動力伝達装置)でもよい。
【0250】
又、本発明のカップリングは、図4、図5におけるプロペラシャフト19、219(トルク伝達軸)上にこれらを分断するように配置し、静止側ケーシングを、ゴム、バネ、粘性ダンパなどを介して車体フレーム側に取り付け、固定してもよい。
【0251】
又、ケース状トルク伝達部材の側壁部(第2、3実施形態でのケース65の側壁部305)は、ケース状トルク伝達部材と一体に形成せずに、例えば、ケース状トルク伝達部材を閉塞する蓋部材のように、ケース状トルク伝達部材と別体にしてもよい。
【0252】
又、静止側ケーシング(特にカバー)については、プレス成型した板金製のものを用いて軽量化し、更に、波状部のような凹凸部を形成することによって放熱性を向上させることもできる。
【0253】
又、本実施形態における空気室107を、カバー41又はキャリヤ本体39にブリーザパイプを配置し、外気との圧力調整を行うことも可能である。
【0254】
【発明の効果】
請求項1のカップリングは、電磁石がカバーの端部付近に配置されているから、放熱効果と、外気による冷却作用とによって効果的に冷却されると共に、変速機構の反対側に配置された電磁石は、変速機構からの熱を受けにくい。
【0255】
従って、電磁石は温度の変動が小さくなり、励磁電流が安定するから、カップリングは安定した伝達トルクの制御特性が得られる。
【0256】
又、例えばエンジンの駆動力など、トルク伝達軸を軸状トルク伝達部材に連結させることにより、磁気回路の一部になるケース状トルク伝達部材の一側側壁と、トルク伝達経路になるケース状トルク伝達部材の他側部材は、過大な要求から解放され、磁気透過性や強度などの要求に従ってそれぞれの材質を選定することが可能になり、性能がそれだけ向上すると共に、高価な材料を用いなくてすむから、低コストになる。
【0257】
請求項2のカップリングは、電磁石をカバーの端部付近に配置すると共に、エンジンの駆動力を軸状トルク伝達部材に入力させることによって、請求項1のカップリングと同等の効果を得る。
【0258】
請求項3の発明は、請求項1又は請求項2のいずれかと同等の効果を得ると共に、ケース状トルク伝達部材を変速機構の連結軸用のベアリングによって静止側ケーシングに支承したから、ケース状トルク伝達部材の専用ベアリングが不要になり、部品点数が減って、低コストになる。
【0259】
又、専用ベアリングのためのベアリングハウジングを加工しなくてすむから、静止側ケーシングは、加工個所がそれだけ減少して形状が簡易になり、低コストになる。
【0260】
更に、連結軸用の容量の大きなベアリングで、カップリングのスラスト力を受けることができるから、カップリングは軸方向位置と性能が更に安定し、耐久性が向上する。
【0261】
請求項4の発明は、請求項1又は請求項2のいずれかと同等の効果を得ると共に、ケース状トルク伝達部材をベアリングによって静止側ケーシングに支承したことにより、軸方向と径方向の両方で正確に位置決めされるから、カップリングは性能が更に安定し、耐久性が向上する。
【0262】
請求項5の発明は、請求項1乃至請求項4のいずれかと同等の効果を得ると共に、シールによってカップリングの周囲に形成した空間に冷却流体を封入すれば、その冷却効果によって電磁石の温度変動が更に小さくなり、空間に磁性流体を封入すれば、磁気回路の磁気抵抗が大幅に低減される。
【0263】
又、各シールは小径で摺動速度が遅く、耐久性が大きいから、空間に冷却流体や磁性流体を封入することによる効果を長期にわたって享受できる。
【0264】
又、各シールが小径であるから、カップリングもそれだけコンパクトで軽量にになり、車載性が向上する。
【0265】
請求項6の発明は、請求項1乃至請求項5のいずれかと同等の効果を得ると共に、容量増大空間を密封空間に連通させ、密封空間のオイル容量を増加させたことにより、オイルの劣化が抑制され、長期にわたって優れた潤滑性が得られ、カップリングの耐久性が向上する。
【0266】
又、容量増大空間の吸収機能により、クラッチの作動に伴うカップリングの内圧上昇の許容限界が高くなり、カップリングの伝達トルク制御特性が更に安定する。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1実施形態のカップリングを示す断面図である。
【図2】第2実施形態のカップリングを示す断面図である。
【図3】第3実施形態のカップリングを示す断面図である。
【図4】各実施形態のカップリングを用いた四輪駆動車の動力系を示すスケルトン機構図である。
【図5】各実施形態のカップリングを用いた他の四輪駆動車の動力系を示すスケルトン機構図である。
【図6】従来例の断面図である。
【符号の説明】
1、301、351 カップリング
19 プロペラシャフト(トルク伝達軸)
21、221 リヤデフ(変速機構)
37 デフキャリヤ(静止側ケーシング)
39 キャリヤ本体(静止側ケーシングの本体)
41 フロントカバー(静止側ケーシングのカバー)
45 回転ケース(ケース状トルク伝達部材)
47 インナーシャフト(軸状トルク伝達部材)
49 多板式のメインクラッチ
51 多板式のコントロールクラッチ
55 ボールカム(カム)
59 アーマチャ
61 電磁石
63 前側ロータ(ケース状トルク伝達部材の一側の側壁部分:磁気回路の一部を構成し、トルク伝達経路から除外された部分)
67、303、353 フランジ部材(ケース状トルク伝達部材の他側の側壁部分:トルクを伝達し、磁気回路から除外された部分)
81 電磁石のコアを介して回転ケースをデフキャリヤのフロントカバーに支承するベアリング
83 電磁石のコア
85 デフキャリヤとの間で回転ケースを支承するベアリング
91 ドライブピニオンシャフト(変速機構側の連結軸)
109、317 開口(フロントカバーの貫通部)
173 インナーシャフトに設けられた容量増大空間
179 螺旋状の油路(連通流路)
305 側壁部(ケース状トルク伝達部材を閉止する側壁)
307、309 アンギュラーコンタクトベアリング(変速機構の連結軸を介してケース状トルク伝達部材を静止側ケーシングに支承するベアリング)
321、325 小径のオイルシール(シール)
337 連通流路

Claims (6)

  1. ケーシング本体と、これに固定されたカバーとを有し、変速機構を潤滑オイルと共にケーシング本体側に収容する静止側ケーシングに収容されたカップリングであって、前記カバーの前記ケーシング本体と固定されていない開口側に位置する一側の側壁と該一側の側壁より前記変速機構側に位置する中空状のケースとを備えたケース状トルク伝達部材と、
    このケース状トルク伝達部材の前記一側の側壁に貫入した軸状トルク伝達部材と、これら両トルク伝達部材の間に配置されたクラッチと、
    前記一側の側壁を挟んで前記クラッチと異なる側の前記カバーの開口側に配置され磁力によってアーマチャを移動させクラッチを押圧して連結させる電磁石とを備え、前記ケース状トルク伝達部材は前記静止側ケーシングの前記カバー側に収容されていると共に、軸状トルク伝達部材が、一側で前記一側の側壁と前記カバーとを貫通し、前記カバーの外部でトルク伝達軸に連結されており、電磁石のコアが、この貫通部付近でカバーに支持されており、ケース状トルク伝達部材が、一側で前記一側の側壁に設けられた凹部に前記電磁石のコアを貫入させ、他側で変速機構側の連結軸に連結されていることを特徴とするカップリング。
  2. ケーシング本体と、これに固定されたカバーとを有し、変速機構を潤滑オイルと共にケーシング本体側に収容する静止側ケーシングに収容されたカップリングであって、前記カバーの前記ケーシング本体と固定されていない開口側に位置する一側の側壁と該一側の側壁より前記変速機構側に位置する中空状のケースとを備えたケース状トルク伝達部材と、このケース状トルク伝達部材の前記一側の側壁に貫入した軸状トルク伝達部材と、これら両トルク伝達部材の間に配置されたメインクラッチと、前記一側の側壁を挟んで前記クラッチと異なる側の前記カバーの開口側に配置され磁力によってアーマチャを移動させる電磁石と、このアーマチャに押圧されて連結するコントロールクラッチと、コントロールクラッチが連結されると両トルク伝達部材間の伝達トルクを受けて作動しメインクラッチを連結させるカムとを備え、前記ケース状トルク伝達部材は前記静止側ケーシングのカバー側に収容されていると共に、軸状トルク伝達部材が、一側で前記一側の側壁と前記カバーとを貫通し、前記カバーの外部でトルク伝達軸に連結されており、電磁石のコアが、この貫通部付近でカバーに支持されており、ケース状トルク伝達部材が、一側で前記一側の側壁に設けられた凹部に前記電磁石のコアを貫入させ、他側で変速機構側の連結軸に連結されていることを特徴とするカップリング。
  3. 請求項1又は請求項2記載の発明であって、変速機構側の連結軸が、ベアリングを介して静止側ケーシングに支承されており、ケース状トルク伝達部材の他側が、これらの連結軸とベアリングとを介して静止側ケーシングに支承されていることを特徴とするカップリング。
  4. 請求項1又は請求項2記載の発明であって、ケース状トルク伝達部材の他側が、ベアリングを介して静止側ケーシングに支承されていることを特徴とするカップリング。
  5. 請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の発明であって、軸状トルク伝達部材とカバーとの間、及び、変速機構側の連結軸とケーシング本体との間にそれぞれ配置されたシールによって、変速機構側及び大気側の両方から区画された空間が、周囲に形成されていることを特徴とするカップリング。
  6. 請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載の発明であって、ケース状トルク伝達部材の他側を閉止する側壁と、ケース状トルク伝達部材と軸状トルク伝達部材の間の一側に配置されたシールとによって形成された密封空間にオイルが封入されており、軸状トルク伝達部材に、他側で前記側壁に向かって開口する容量増大空間が設けられ、連通流路によって容量増大空間を密封空間に連通させたことを特徴とするカップリング。
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