JP4099289B2 - カップリング - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、電磁クラッチを用いて伝達トルクを制御するカップリングと、電磁クラッチを用いて差動制限力を制御するデファレンシャル装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
「ガイア新型車解説書 0−22頁 トヨタ自動車株式会社 編集 同サ−ビス部 発行 1998年 5月 29日」に図9のようなカップリング501が記載されている。
【0003】
このカップリング501は、四輪駆動車の後輪側動力伝達系に配置されており、回転ケ−ス503、ハブ505、多板式のメインクラッチ507及びコントロ−ルクラッチ509、ア−マチャ511、電磁石513、カムリング515、ボ−ルカム517、押圧部材519、コントロ−ラなどから構成されている。
【0004】
カップリング501はデフキャリヤ521の内部に配置されており、このデフキャリヤ521はキャリヤ本体523の前部にカバ−525を固定して構成されている。
【0005】
電磁石513のコア527はキャリヤ本体523との間に設けられた軸方向の嵌合部529でキャリヤ本体523に嵌合され、センタリングされている。又、コア527の係合溝531とカバ−525の係合孔533に廻り止めピン535を差し込んで、コア527をカバ−525に廻り止めしている。
【0006】
又、電磁石513のリ−ド線537は、デフキャリヤ521に取り付けられたグロメット539から外部に引き出されており、コア527の廻り止めによって破損が防止されている。
【0007】
回転ケ−ス503は前部をベアリング541によってカバ−525に支承されており、後部を電磁石513のコア527とベアリング543とを介してキャリヤ本体523に支承されている。
【0008】
回転ケ−ス503はプロペラシャフトを介してトランスファからトランスミッション側に連結されている。又、ハブ505にはドライブピニオンシャフト545がセレ−ション連結されており、これと一体に形成されたドライブピニオンギヤ547はリヤデフ側のリングギヤと噛み合っている。
【0009】
ハブ505は回転ケ−ス503に貫入し、ボ−ルベアリング549とニ−ドルベアリング551によって回転ケ−ス503に支承されている。
【0010】
メインクラッチ507は回転ケ−ス503とハブ505との間に配置されており、コントロ−ルクラッチ509は回転ケ−ス503とカムリング515との間に配置されている。
【0011】
又、押圧部材519はハブ505に移動自在に連結されており、ボ−ルカム517はカムリング515と押圧部材519との間に配置されている。
【0012】
コントロ−ラは、電磁石513の励磁、励磁電流の制御、励磁停止などにより、後輪の連結と切り離し、及び、後輪側への伝達トルクの制御を行う。
【0013】
電磁石513が励磁されると、磁気ル−プ553が形成されてア−マチャ511が吸引され、コントロ−ルクラッチ509が締結される。コントロ−ルクラッチ509が締結されると、回転ケ−ス503とハブ505の間のトルクがボ−ルカム517に掛かり、生じたカムスラスト力により押圧部材519を介してメインクラッチ507が押圧される。
【0014】
こうしてカップリング501が連結されると、エンジンの駆動力が後輪に送られて車両は四輪駆動状態になり、悪路の走破性や、車体の安定性が向上する。
【0015】
又、電磁石513の励磁電流を制御すると、コントロ−ルクラッチ509の滑りによってボ−ルカム517のカムスラスト力が変化し、更に、メインクラッチ507の連結力が変化して後輪の駆動力が調整される。
【0016】
又、電磁石513の励磁を停止すると、コントロ−ルクラッチ509が開放され、ボ−ルカム517のカムスラスト力が消失し、メインクラッチ507が開放されてカップリング501の連結が解除され、車両は二輪駆動状態になる。
【0017】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、カップリング501では、電磁石513のリ−ド線537をグロメット539を介して外部に引き出している上に、このグロメット539がデフキャリヤ521に取り付けられているから、リ−ド線537を引き出す部分の構造がそれだけ複雑であり、コスト高である。
【0018】
又、グロメット539を用いただけ部品点数が多くなり、コストが上昇する。
【0019】
又、デフキャリヤ521に取り付けられたグロメット539を介することによって、リ−ド線537の引き出し方向が制約される。
【0020】
カップリング501では、この制約によってリ−ド線537が軸方向に引き出されており、例えば、周辺部材との干渉を避けるためにリ−ド線537を径方向に引き出したくても、これに対応できない。
【0021】
このように、リ−ド線の引き出し性や、引き出し方向の自由度が低く、それだけ周辺部材との干渉が生じ易い。
【0022】
又、カップリング501は、電磁石513を含めて、デフキャリヤ521に収容されており、外気による冷却効果が期待できない。
【0023】
従って、カップリング501の内部に封入されているオイルが高温になって劣化し易く、メインクラッチ507、コントロ−ルクラッチ509、ボ−ルカム517、ボ−ルベアリング549、ニ−ドルベアリング551などの摩耗が促進され、耐久性が低下する。
【0024】
又、デフキャリヤ521に収容されたカップリング501は、組付け性が悪い。
【0025】
又、冷却が不充分であると、電磁石513は温度変化によって励磁電流とア−マチャ511の吸引力が不安定になり、伝達トルクの制御機能が低下する。
【0026】
又、コア527を嵌合部529で嵌合した電磁石513には、廻り止め機構(係合溝531と係合孔533と廻り止めピン535)が必要であり、それだけ構造が複雑になり、コスト高になる。
【0027】
又、廻り止め機構を設けると、リ−ド線537の引出し部との干渉を避けるための配慮が必要になり、設計上の課題が増える。
【0028】
又、嵌合部529は軸方向のインロ−部であるから、カップリング501が、それだけ軸方向に大きくなり、重くなり、車載性が低下する。
【0029】
そこで、この発明は、電磁石のリ−ド線を任意の方向に引き出すことが可能であると共に、引き出し部の構造が簡単で低コストであり、装置の冷却性と耐久性が高く、組付け性に優れると共に、電磁石の温度変化が抑制されて伝達トルクや差動制限力の制御機能が向上するカップリング及びデファレンシャル装置の提供を目的とする。
【0030】
【課題を解決するための手段】
請求項1のカップリングは、ケ−ス状トルク伝達部材と、このケ−ス状トルク伝達部材に貫入した軸状トルク伝達部材と、これら両トルク伝達部材の間に配置されたクラッチと、ケ−ス状トルク伝達部材の外部からア−マチャを移動させてクラッチを押圧し連結させる電磁石と、静止側のケ−シングとを備え、電磁石のコアが外部に露出した固定部にてこの静止側ケ−シングに固定されており、両トルク伝達部材のいずれか一方がこのコアに回転可能に支承されていると共に、電磁石のリード線が、コアに設けられた引出し部から直接外部に引き出され、
前記静止側のケーシングにベアリングを介して支承された連結軸が、前記電磁石と前記ケース状トルク伝達部材の後端と軸状トルク伝達部材を貫通し、前記連結軸が前記軸状トルク伝達部材と連結し、前記ケース状トルク伝達部材の先端が前記連結軸の先端部にベアリングを介して支承されており、ケース状トルク伝達部材の内部にオイルが封入されており、前記ケース状トルク伝達部材と前記コアとの間には、微小な隙間を形成するダストカバー又は接触型のシールが配置されていることを特徴とする。
【0031】
このように、請求項1のカップリングでは、デフキャリヤ521に取り付けられたグロメット539を経由してリ−ド線537を引き出している従来例と異なって、電磁石のリ−ド線がコアの引出し部から直接引き出されているから、リ−ド線を引き出す部分の構造がそれだけ簡素であり、低コストである。
【0032】
又、グロメットの使用は任意であり、グロメットを用いる場合でも、引出し部の開口にグロメットを装着すればよいから、グロメット539をデフキャリヤ521に取り付けた従来例と異なって、静止側ケ−シングにグロメットの取り付け部を加工しなくてすみ、静止側ケ−シングの形状がそれだけ簡素になり、低コストになる。
【0033】
又、グロメットを用いなければ、部品点数が減り、更に低コストになる。
【0034】
又、コアの引出し部から直接リ−ド線を引き出すことによって、リ−ド線の引き出し性と、引き出し方向の自由度が大きく向上する。
【0035】
又、引き出した後のリ−ド線の接続上の自由度も大きく向上する。
【0036】
従って、継ぎ手やサスペンション部材のような周辺部材とリ−ド線との干渉が避け易くなり、リ−ド線の破損が防止されると共に、リ−ド線と周辺部材のレイアウトに関する設計上の自由度が大きく向上する。
【0037】
又、リ−ド線をコアの引出し部から外部に引き出したことによって、少なくとも、この引出し部が外部に露出するから、外気によってコアが冷却される。
【0038】
更に、電磁石のコアが外部に露出した固定部にてこの静止側ケ−シングに固定されているから、コアの熱が熱伝導によって静止側ケ−シングから外部に放出され、コアが冷却される。
【0039】
これらの冷却効果によって電磁石の温度変化が防止されるから、励磁電流とア−マチャの吸引力が安定し、伝達トルクの制御機能が向上する。
【0040】
又、コアが冷却されるから、コアに近接して配置されるケ−ス状トルク伝達部材の冷却効果も期待できる。
これに加えて、ケ−ス状トルク伝達部材と軸状トルク伝達部材を貫通した連結軸の先端部に、いずれか一方のトルク伝達部材をベアリングで支承し、連結軸を静止側ケ−シングで支承したことにより、一方のトルク伝達部材がこの連結軸を介して静止側ケ−シングに支承される。
このように、静止側ケ−シングから遠い方の端部を静止側ケ−シングで支承することにより、支持強度が大きく向上する。
又、静止側ケ−シングから遠い方の端部では軸ブレが生じ易いが、この端部を連結軸で支承したことによって、極めて高い軸ブレの抑制効果が得られるから、カップリングは正常な機能が長期にわたって保たれる。
又、連結軸に支承されたトルク伝達部材は、静止側ケ−シングで支承する必要がなくなるから、外周側の静止側ケ−シングを取り去ることによって、カップリングを外部に露出させることが実施し易くなり、冷却効果をさらに得ることができる。
又、特に、ケ−ス状トルク伝達部材が外部に露出した構成では、ケ−ス状トルク伝達部材を介して外気に冷却されたオイルが循環することにより、内部温度が均等になり、例えば、クラッチ、ベアリング、他の摺動個所などの発熱部が効果的に冷却されるから、冷却効果と潤滑効果が更に向上する。
又、ダストカバー又は接触型のシールを設けることにより、外部からの泥水や塵のような異物の侵入を防止することができる。
【0058】
請求項2の発明は、請求項1に記載の発明であって、電磁石のコアが、ボルトによって静止側ケ−シングに固定されていると共に、コアに設けられたリ−ド線の引出し部が、ボルトの周方向の間に設けられていることを特徴とする。
【0059】
これに加えて、電磁石のコアをボルトによって静止側ケ−シングに固定したから、係合溝531と係合孔533と廻り止めピン535からなる廻り止め機構が必要な従来例と異なって、それだけ構造が簡素になり、低コストになる。
【0060】
又、コアをボルト止めにしたことによって、従来例の嵌合部529のような軸方向のインロ−部が不要になるから、カップリングはそれだけ軸方向にコンパクトになり、軽量になり、車載性が向上する。
【0061】
又、軸方向にコンパクトになったことにより、軸ブレ(軸方向の振動)が大幅に低減される。
【0062】
又、リ−ド線の引出し部とボルトの取り付け部とを互いの周方向の間に設けたから、引出し部とボルト孔との干渉が防止され、ボルトを締めつける際の作業性が大きく向上する。
【0063】
請求項3の発明は、請求項1に記載の発明であって、リ−ド線の引出し部が、コアの外周側に設けられていることを特徴とする。
【0064】
これに加えて、リ−ド線の引出し部をコアの外周側に設けたから、従来例と異なって、リ−ド線を径方向に引き出して、周辺部材との干渉を避けることができ、リ−ド線の破損が防止される。
【0065】
又、引き出したリ−ド線の接続上の自由度も大きく向上する。
【0074】
請求項4の発明は、請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の発明であって、連結軸の先端部でトルク伝達部材を支承するベアリングが、電磁石のコアにトルク伝達部材を支承するベアリングより小径であることを特徴とする。
【0075】
これに加えて、連結軸の先端部でトルク伝達部材を支承するベアリングを、電磁石のコアにトルク伝達部材を支承するベアリングより小径にしたことによって、カップリングの先端を小径にし、慣性モ−メントを小さくすることができる。
【0076】
このように、先端の慣性モ−メントを小さくすれば、カップリングの軸ブレが更に小さくなる。
【0077】
又、カップリングの先端側を小径にすれば、例えば、継ぎ手やサスペンション部材のような周辺部材との干渉を防止し易くなり、カップリングと周辺部材のレイアウトに関する設計上の自由度が大きく向上する。
請求項5の発明は、請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の発明であって、前記ケース状トルク伝達部材に設けられたボス部と前記静止側のケーシングとの間にはシールが配置され、前記コアと前記静止側のケーシングとの間にはシールが配置され、前記ダストカバー又は前記接触型のシールと共に、前記コアと前記ケース状トルク伝達部材の一部であるロータとの間に形成されたエアギャップを一空間内に収容することを特徴とする。
請求項5の発明によれば、ボス部と静止側のケーシングとの間、コアと静止側のケーシングとの間からの泥水や塵のような異物の侵入を防止することができる。
【0078】
【発明の実施の形態】
[第1実施形態]
図1乃至図4によって第1実施形態のカップリング1の説明をする。
【0079】
図1はカップリング1を示し、図4はカップリング1を用いた四輪駆動車の動力系を示している。又、左右の方向はこの車両の左右の方向であり、図1と図2の左方はこの車両の前方に相当する。なお、符号を与えられていない部材等は図示されていない。
【0080】
図4のように、この動力系は、横置きのエンジン3とトランスミッション5、トランスファ7、フロントデフ9、前車軸11、13、左右の前輪15、17、後輪側のプロペラシャフト19、カップリング1、リヤデフ21、後車軸23、25、左右の後輪27、29などから構成されている。
【0081】
エンジン3の駆動力は、トランスミッション5の出力ギヤ31からリングギヤ33を介してフロントデフ9のデフケ−ス35に伝達され、フロントデフ9から前車軸11、13を介して左右の前輪15、17に配分され、更に、デフケ−ス35からトランスファ7を介してプロペラシャフト19を回転させ、カップリング1に伝達される。
【0082】
カップリング1が連結されると、エンジン3の駆動力は、リヤデフ21から後車軸23、25を介して左右の後輪27、29に配分され、車両は四輪駆動状態になる。
【0083】
又、カップリング1の連結が解除されると、リヤデフ21以下の後輪側が切り離されて車両は二輪駆動状態になる。
【0084】
このように、カップリング1は後輪側の動力伝達系に配置されており、後輪27、29の連結と切り離し、及び、後輪側に伝達される駆動力の制御を行う。
【0085】
図1と図4のように、リヤデフ21はデフキャリヤ37(静止側のケ−シング)に収容されており、カップリング1はこのデフキャリヤ37の前端側に配置され、外部に露出している。
【0086】
図1のように、カップリング1は、回転ケ−ス39(ケ−ス状トルク伝達部材)、ハブ41(軸状トルク伝達部材)、多板式のメインクラッチ43及びコントロ−ルクラッチ45、カムリング47、ボ−ルカム49(カム)、プレッシャプレ−ト51、ア−マチャ53、リング状の電磁石55、コントロ−ラなどから構成されている。
【0087】
回転ケ−ス39は、ケ−ス57と後側のロ−タ59とから構成されている。
【0088】
ケ−ス57は非磁性材料で作られており、ロ−タ59は磁性材料で作られている。
【0089】
ケ−ス57とロ−タ59はねじ部61で螺着され、互いの間に設けられた突き当たり部63によって位置決めされており、更に、ねじ部61に螺着されたナット65により、設計手段としては一般的であるダブルナット機能によって固定されている。
【0090】
ケ−ス57とロ−タ59との間にはシ−ルリング67が配置され、オイル漏れと、水分や塵のような異物の侵入とを防止している。
【0091】
ハブ41は、回転ケ−ス39の内部に配置されており、その後端側はニ−ドルベアリング69によって回転ケ−ス39に支承されている。
【0092】
ケ−ス57の前側には壁部71が設けられており、ハブ41とこの壁部71との間、又、ハブ41とロ−タ59との間には断面がX字状のシ−ルであるXリング73、74がそれぞれ配置され、オイル漏れと、水分や塵のような異物の侵入とを防止している。
【0093】
ハブ41には、ドライブピニオンシャフト75(静止側ケ−シングに支承され両トルク伝達部を貫通する連結軸)がセレ−ション部76によって連結されている。ハブ41の前端部とドライブピニオンシャフト75との間にはシ−ルリング77が配置され、オイル漏れと、水分や塵のような異物の侵入とを防止している。
【0094】
ドライブピニオンシャフト75はアンギュラ−コンタクトベアリング80、81を介してデフキャリヤ37に支承されている。
【0095】
図3のように、電磁石55のコア79には露出したフランジ部83(固定部、径方向の延長部)が設けられ、このフランジ部83には8個のボルト孔85が設けられている。コア79は各ボルト孔85にボルト87を通してデフキャリヤ37の前端に固定されている。
【0096】
図2と図3のように、デフキャリヤ37とコア79にはそれぞれピン孔89、91が各2箇所に設けられており、コア79とデフキャリヤ37は、固定される前にノックピン93をこれらのピン孔89、91に差し込んでセンタリングされる。
【0097】
図3のように、2個のピン孔91は周方向等間隔(軸心に対して点対称の位置)に配置されている。
【0098】
又、ノックピン93を中空にし、更に、ボルト87より充分に大径にして、ボルト87をノックピン93に貫通させてもよい。
【0099】
又、コア79のフランジ部83とデフキャリヤ37の各合わせ面の間には、液体シ−ル材やガスケットが配置されて流体密性が保たれており、オイル漏れと、水分や塵のような異物の侵入とを防止している。
【0100】
回転ケ−ス39の前端部は、ケ−ス57の前側壁部71で両側シ−ルのボ−ルベアリング95(小径のベアリング)によってドライブピニオンシャフト75の先端側に支承されており、後端部は、ロ−タ59で両側シ−ルのボ−ルベアリング97によりコア79を介してデフキャリヤ37に支承されている。
【0101】
図1のように、ドライブピニオンシャフト75の先端側(回転ケ−ス39の先端側)のボ−ルベアリング95は、回転ケ−ス39の後端側のボ−ルベアリング97より小径である。
【0102】
このように、ボ−ルベアリング95を小径にしたことによって、回転ケ−ス39は先端側が小径になり、先端側の慣性モ−メントが小さくなっている。
【0103】
各アンギュラ−コンタクトベアリング80、81は、ドライブピニオンシャフト75の先端に螺着されたロックナット99により、ボ−ルベアリング95のインナ−レ−ス101とハブ41とを介して与圧され、それぞれの径方向の隙間を適正に調整されてセンタリングされていると共に、軸方向の移動を規制されている。
【0104】
このように、ドライブピニオンシャフト75は大容量のアンギュラ−コンタクトベアリング80、81によってデフキャリヤ37に支承されており、ハブ41はロックナット99によってドライブピニオンシャフト75に強固に連結されている。更に、回転ケ−ス39はベアリング95、97によってドライブピニオンシャフト75とコア79に支承されている。
【0105】
こうして、カップリング1は、径方向と軸方向の両方で適正に位置決めされている。
【0106】
ドライブピニオンシャフト75に形成されたドライブピニオンギヤ103はリヤデフ21側のリングギヤ105と噛み合っており、ハブ41をリヤデフ21側に連結している。
【0107】
ケ−ス57の前側壁部71には複数個のボルト孔107が設けられている。図4のように、前側壁部71(回転ケ−ス39)はこれらのボルト孔107に螺着されるボルト109によって継ぎ手111側のフランジ113に連結されており、回転ケ−ス39をプロペラシャフト19側に連結している。
【0108】
電磁石55のコア79とフランジ部83には、軸方向から径方向に曲がった引出し路117(リ−ド線の引出し部)が設けられており、その開口にはグロメット119が装着されている。
【0109】
リ−ド線115はこの引出し路117とグロメット119を通って径方向に引き出されており、コネクタ−121によって車載バッテリ側のコネクタ−に接続されている。
【0110】
図3のように、フランジ部83の引出し路117は、ボルト孔85の周方向の間に配置されており、ボルト孔85との干渉を防止している。
【0111】
メインクラッチ43は、回転ケ−ス39とハブ41との間に配置されている。
【0112】
コントロ−ルクラッチ45は、回転ケ−ス39とカムリング47との間に配置されており、後述のように、ア−マチャ53によって回転ケ−ス39のロ−タ59に押圧され、締結される。
【0113】
ボ−ルカム49は、カムリング47とプレッシャプレ−ト51との間に配置されている。
【0114】
又、カムリング47とロ−タ59との間には、ボ−ルカム49のカム反力を受けるスラストベアリング123とワッシャ125とが配置されている。
【0115】
ア−マチャ53は円板状であり、コントロ−ルクラッチ45とプレッシャプレ−ト51との間に配置され、メインクラッチ43とコントロ−ルクラッチ45の各アウタ−プレ−トが係合する回転ケ−ス39内周のスプライン127に軸方向移動自在に連結されている。
【0116】
又、ア−マチャ53は内周側をプレッシャプレ−ト51に対し微小な所定間隔を隔てて対向し、コントロ−ルクラッチ45から離れないように位置を規制されていると共に、スプライン127に連結されることによって外周側の位置を規制され、電磁石55による引き付けコントロ−ル性を高めている。
【0117】
電磁石55のコア79はロ−タ59に設けられている凹部129に貫入して、エアギャップ131を形成している。
【0118】
又、このエアギャップ131は、ア−マチャ53が充分な強さで吸引されるように、ベアリング97によるコア79とロ−タ59との軸方向取り付け位置を変えることによって、最適値に調整されている。
【0119】
回転ケ−ス39は、ケ−ス57とロ−タ59の間のシ−ルリング67と、ハブ41と回転ケ−ス39の間のXリング73、74とによって密封状態にされ、内部に密封空間が形成されている。
【0120】
この密封空間には、回転ケ−ス39の前側壁部71に設けられたオイル供給流路133からオイルが注入される。このオイル供給流路133はオイルを注入した後密封ボ−ル135を圧入してシ−ルされている。又、このオイルにはデフキャリヤ37のオイルと異なった専用のオイルが用いられている。
【0121】
この専用オイルの充填率は、密封空間の全容量に対して50%〜90%のレベルであり、好ましくは70%〜85%のレベルである。又、密封空間の残りの部分は空気で占められている。
【0122】
この充填率は、回転ケ−ス39が回転している状態で、コントロ−ルクラッチ45の内周側、つまり、カムリング47の外周のスプライン部137が浸るオイルレベルであること、及び、回転ケ−ス39の温度が上昇したときの内圧を吸収できること、などの諸条件を満たすように決定される。
【0123】
カップリング1が回転すると、封入されたオイルは密封空間の内部を循環し、メインクラッチ43及びコントロ−ルクラッチ45の各プレ−トの摺動面、カムリング47とハブ41との摺動面、ボ−ルカム49、スラストベアリング123とワッシャ125などを潤滑し、冷却する。
【0124】
カップリング1の遠心力はこのオイルの流れと拡散、つまり、オイル循環作用を促進し、潤滑性と冷却性を大きく向上させる。
【0125】
又、メインクラッチ43のインナ−プレ−トには開口139が設けられており、プレッシャプレ−ト51には貫通孔141が設けられている。
【0126】
これらの開口139と貫通孔141によってオイルの移動が促進され、潤滑と冷却の効果を更に向上させている。
【0127】
又、プレッシャプレ−ト51の貫通孔141は、プレッシャプレ−ト51が受けるオイルの抵抗を低減してメインクラッチ43の押圧レスポンスを向上させると共に、メインクラッチ43側にオイルを移動し易くし、メインクラッチ43の潤滑性と冷却性を向上させている。
【0128】
電磁石55のコア79には、円筒状のダストカバ−143が固定されている。このダストカバ−143の先端部とケ−ス57の外周との間には微小な隙間が形成されており、外部からの泥水や塵のような異物の侵入を防止している。
【0129】
なお、ダストカバ−143を凹凸状にし、ケ−ス57との間にラビリンスシ−ルを形成しても、あるいは、ブラシ状にしてもよい。
【0130】
このように、ダストカバ−143とケ−ス57との間に微小な隙間を設けておけば、内外の圧力差が防止され、異物の吸入が防止されて、シ−ル性を更に高めることができる。
【0131】
又、ケ−ス57とコア79の間に接触型のシ−ルを配置してもよい。
【0132】
回転ケ−ス39のボス部145とデフキャリヤ37との間にはオイルシ−ル147が配置されている。
【0133】
このオイルシ−ル147は、デフキャリヤ37に封入されているオイルが外部に漏れることを防止している。
【0134】
又、Xリング74とオイルシ−ル147によってデフキャリヤ37のオイルが回転ケ−ス39の密封空間に侵入することが防止され、デフキャリヤ37側のオイルと回転ケ−ス39の封入オイルとが混ざり合うことが防止されるから、これらのオイルにはそれぞれの用途に適したオイルを選択することができる。
【0135】
デフキャリヤ37側のオイルは、リヤデフ21の摺動部、ドライブピニオンギヤ103とリングギヤ105の噛み合い部、アンギュラ−コンタクトベアリング80、81、ニ−ドルベアリング69などを潤滑し、冷却する。
【0136】
又、デフキャリヤ37にはオイルの抜き溝149が設けられており、ニ−ドルベアリング69やアンギュラ−コンタクトベアリング80、81を潤滑したオイルはこの抜き溝149からオイル溜りに戻って循環が促進され、潤滑効果と冷却効果とを向上させる。
【0137】
ハブ41の内周には空間151が設けられている。そこで、ハブ41の後端側とドライブピニオンシャフト75との間にオイルシ−ルを配置してデフキャリヤ37側のオイルを遮断すると共に、破線で描いたように、ハブ41に径方向の油路153を設ければ、密封空間のオイル容量が増加し、潤滑と冷却の効果が向上する。
【0138】
空間151のオイルは、遠心力により油路153を通ってメインクラッチ43側に流出し、メインクラッチ43の潤滑と冷却の効果を向上させる。
【0139】
デフキャリヤ37には、オイルシ−ル147によってデフキャリヤ37側のオイルから遮断された空気室155(空気容量増大空間)が設けられている。
【0140】
この空気室155は、エアギャップ131からダストカバ−143側に連通しており、外部と内部の圧力差を吸収し、圧力差の緩和効果を大幅に向上させている。
【0141】
又、外部に露出したカップリング1において、ドライブピニオンシャフト75などの潤滑条件を満たしながら、圧力差を緩和する空間の容量が、空気室155によって最大限に確保されている。
【0142】
又、オイルシ−ル147は、回転ケ−ス39のボス部145以外に、例えば、ドライブピニオンシャフト75、ベアリングのアウタ−レ−ス、ナットなどの部とデフキャリヤ37との間に配置してもよい。
【0143】
コントロ−ラは、車速、操舵角、横Gなどから旋回走行を検知し、あるいは、路面状態などに応じて、電磁石55の励磁、励磁電流の制御、励磁停止などを行う。
【0144】
電磁石55が励磁されると、磁力のル−プ157が形成されてア−マチャ53が吸引され、ロ−タ59との間でコントロ−ルクラッチ45を押圧して締結させる。コントロ−ルクラッチ45が締結されると、回転ケ−ス39とハブ41の間のトルクがボ−ルカム49に掛かり、生じたカムスラスト力によりプレッシャプレ−ト51を介してメインクラッチ43が押圧され、締結する。
【0145】
こうしてカップリング1が連結されると、エンジンの駆動力が後輪に送られて車両は四輪駆動状態になり、悪路などの走破性や、車体の安定性が向上する。
【0146】
又、電磁石55の励磁電流を制御すると、コントロ−ルクラッチ45の滑りに応じてボ−ルカム49のカムスラスト力が変化し、メインクラッチ43の連結力(カップリング1の伝達トルク)が変化して後輪の駆動力が調整される。
【0147】
このようにして、前後輪間の駆動力配分比を制御すると、例えば、旋回走行中の車両の操縦性や安定性などが向上する。
【0148】
又、電磁石55の励磁を停止すると、コントロ−ルクラッチ45が開放されてボ−ルカム49のカムスラスト力が消失し、メインクラッチ43が開放されてカップリング1の連結が解除され、車両は二輪駆動状態になる。
【0149】
回転ケ−ス39のロ−タ59にはステンレス鋼のような非磁性材料のリング159が配置されており、後側ロ−タ59をリング159の外側と内側で磁気的に絶縁している。更に、コントロ−ルクラッチ45の各プレ−トには開孔161及びブリッジ部が形成されている。
【0150】
これらのリング159と開孔161によって、磁力ル−プ157からの磁気漏れが防止され、電磁石55の磁力がア−マチャ53に集中する。
【0151】
又、上記のように、ア−マチャ53は隣接部材との間で軸方向と径方向に位置決めされているフリ−部材ではあるが、プレッシャプレ−ト51との微小な所定隙間を有する部分は磁力ル−プ157に対して磁束密度の低い内周側外端部であるから、ア−マチャ53の吸引力には実質的に影響を与えない。
【0152】
カップリング1が連結されたとき、エンジン3の駆動力は回転ケ−ス39のケ−ス57からメインクラッチ43を通ってハブ41に伝達され、又、ケ−ス57からコントロ−ルクラッチ45、ボ−ルカム49、プレッシャプレ−ト51を通ってハブ41に伝達される。
【0153】
このように、回転ケ−ス39のロ−タ59は、非磁性材料のリング159を含めてトルク伝達経路から除外されており、トルクの伝達には関与しない。
【0154】
こうして、ロ−タ59は強度上の要求から解放され、磁気透過性に優れた材料を選択することができる。
【0155】
一方、ケ−ス57はトルク伝達経路になって磁気回路から除外され、磁気透過性上の要求から解放されるから、強度に優れた材料を選択することが可能になる。
【0156】
このように、ケ−ス57とロ−タ59は、それぞれが過大な要求から解放され、強度や磁気透過性などの要求に従って材質を選定することができるから、カップリング1の性能がそれだけ向上すると共に、高価な材料を用いなくてすみ、低コストになる。
【0157】
なお、カップリング1は、図4の矢印163が示すように、トランスファ7とプロペラシャフト19との間に配置してもよい。
【0158】
この場合、プロペラシャフト19とリヤデフ21との間に配置した場合と同様に、後輪27、29の連結と切り離しとトルク制御を行う。
【0159】
又、カップリング1は、矢印165、167が示すように、フロントデフ9と前車軸11、13との間に配置してもよく、又、矢印169が示すように、トランスファ7内のギヤ機構と組み合わせて配置してもよく、更に、矢印171、173が示すように、リヤデフ21と後車軸23、25との間に配置してもよい。
【0160】
矢印165、167の位置に配置した場合は、カップリング1を連結すると車両は四輪駆動状態になり、連結を解除すると、フロントデフ9の差動回転が自由になり、前輪15、17への駆動力伝達が停止されて、車両は二輪駆動状態になる。
【0161】
又、矢印169の位置に配置した場合は、上記のようにプロペラシャフト19とリヤデフ21との間に配置した場合と同等の機能が得られる。
【0162】
又、矢印171、173の位置に配置した場合は、カップリング1を連結すると車両は四輪駆動状態になり、連結を解除すると、リヤデフ21の差動回転が自由になり、後輪27、29への駆動力伝達が停止されて、車両は二輪駆動状態になる。
【0163】
なお、この場合には、トランスファ7に後輪27、29側に伝達する駆動力を遮断する駆動力断続用のクラッチ(2−4切り換え装置)を設ければ、プロペラシャフト19以下の動力伝達系を完全に静止状態に保つことが可能となり、エンジン3の燃費が向上する。
【0164】
こうして、カップリング1が構成されている。
【0165】
上記のように、カップリング1は、電磁石55のリ−ド線115がコア79の引出し路117に取り付けられたグロメット119から引き出されており、グロメット539をデフキャリヤ521のカバ−525に装着した従来例と異なって、リ−ド線115を引き出す部分の構造が簡素であり、それだけ低コストに構成できる。
【0166】
又、リ−ド線115をコア79の引出し路117から直接引き出すことによって、リ−ド線115の引き出し性と、引き出し方向の自由度が大きく向上する。
【0167】
更に、引出し路117をコア79の外周側に設けたから、リ−ド線115を径方向に無理なく引き出すことが可能になると共に、引き出したリ−ド線115の接続上の自由度も向上する。
【0168】
これらの理由で、リ−ド線115と、継ぎ手やサスペンション部材のような周辺部材との干渉が避け易くなるから、リ−ド線115の破損が防止されると共に、リ−ド線115と周辺部材との干渉を避けるためのレイアウトに関する設計上の自由度が向上する。
【0169】
又、電磁石55のコア79をデフキャリヤ37の開口部に固定して外部に露出させたから、外気によってコア79が充分に冷却される。
【0170】
更に、コア79のフランジ部83が広い面積でデフキャリヤ37と接触しているから、コア79の熱が熱伝導によってデフキャリヤ37から外部に放出され、コア79が冷却される。
【0171】
これらの冷却効果によって電磁石55は過度の温度上昇が防止され、励磁電流とア−マチャ53の吸引力が安定し、伝達トルクの制御機能が向上する。
【0172】
又、電磁石55のコア79をボルト87によってデフキャリヤ37に固定したから、係合溝531と係合孔533と廻り止めピン535からなる廻り止め機構が必要な従来例と異なって、それだけ構造が簡素であり、低コストである。
【0173】
又、コア79をボルト止めにしたことによって、従来例の嵌合部529のような軸方向のインロ−部が不要になる。
【0174】
従って、カップリング1は、それだけ軸方向にコンパクトになり、軽量になって車載性が向上すると共に、軸ブレが低減される。
【0175】
又、コア79に設けられたリ−ド線115の引出し路117とボルト87の取り付け部(ボルト孔85)とを互いに周方向に設けたから、引出し路117とボルト孔85との干渉が防止され、ボルト87を締め付ける際の作業性が大きく向上する。
【0176】
又、コア79をデフキャリヤ37の開口部に固定して外部に露出させ、回転ケ−ス39をベアリング97でコア79に支承したことにより、回転ケ−ス39を外部に露出させている。
【0177】
従って、回転ケ−ス39が外気によって充分に冷却され、内部の密封空間に封入されているオイルの温度上昇による劣化が防止されるから、メインクラッチ43、コントロ−ルクラッチ45、ボ−ルカム49、スラストベアリング123、ワッシャ125、その他の摺動部、などの潤滑効果と冷却効果が高く保たれ、耐久性が向上する。
【0178】
又、回転ケ−ス39を介して外気に冷却されるオイルが循環することにより、内部温度が均等になり、例えば、各クラッチ43、45やベアリング123などの発熱部が効果的に冷却されるから、潤滑効果と冷却効果が更に向上する。
【0179】
又、外部に露出させたことによって、広いスペ−スで作業を行うことができると共に、デフキャリヤ37との支持構造がないから、カップリング1は極めて組付け性がよい。
【0180】
又、回転ケ−ス39は、ハブ41を貫通したドライブピニオンシャフト75の先端部にベアリング95を介して支承されたことにより、ドライブピニオンシャフト75を介してデフキャリヤ37に支承されている。
【0181】
デフキャリヤ37から遠い方の端部では軸ブレが生じ易いが、この端部がデフキャリヤ37に支承されることによって、回転ケ−ス39の支持強度が大きく向上するから、軸ブレの抑制効果が極めて高く、長期にわたって正常な機能が保たれる。
【0182】
又、ドライブピニオンシャフト75で支承された回転ケ−ス39は、デフキャリヤ37で支承する必要がなくなるから、カップリング1を覆う部分のケ−シング部分を取り去ることによって、カップリング1を外部に露出させる構成が実施し易くなり、カップリング1を外部に露出させたことによる上記のような効果が容易に得られる。
【0183】
又、ドライブピニオンシャフト75の先端部で回転ケ−ス39を支承するベアリング95を、電磁石55のコア79に回転ケ−ス39をを支承するベアリング97より小径にしたことによって、カップリング1の先端を小径にし、先端部の慣性モ−メントを小さくすることができる。
【0184】
従って、カップリング1の軸ブレが更に小さくなり、振動が抑制される。
【0185】
又、カップリング1の先端を小径にしたことによって、継ぎ手やサスペンション部材のような周辺部材との干渉が防止され、カップリング1の損傷が防止されると共に、カップリング1と周辺部材との干渉を避けるためのレイアウトの自由度が向上する。
【0186】
なお、上記のように、カップリング1は支持強度が高いから、例えば、プレス成型した板金のカバ−や樹脂のカバ−のように、カップリングの支持を目的にしない薄くて軽量のカバ−を静止側ケ−シングに取り付けてカップリングを覆い、このカバ−とカップリングとの間に流体空間を形成してもよい。
【0187】
こうすれば、走行中に飛来する障害物からこのカバ−によってカップリングが保護されると共に、流体空間に冷却流体を封入すれば、更に大きな冷却効果が得られる。
【0188】
[第2実施形態]
次ぎに、図5、図6によって参考例としての第2実施形態のカップリング201の説明をする。
【0189】
。図5はカップリング201を示し、図6はカップリング201を用いた四輪駆動車の動力系を示している。又、左右の方向はこの車両の左右の方向であり、図5の左方はこの車両の前方に相当する。なお、符号を与えられていない部材等は図示されていない。
【0190】
カップリング201は、上記実施形態のカップリング1と同様に、図6の車両の後輪側プロペラシャフト19とリヤデフ21との間に配置されており、後輪27、29側の連結と切り離し、及び、伝達トルクの制御を行う。
【0191】
以下、カップリング1と同機能部材には同一の符号を与えて引用しながら主に相違点を説明する。
【0192】
カップリング201は、回転ケ−ス39、ハブ41、メインクラッチ43、コントロ−ルクラッチ45、カムリング47、ボ−ルカム49、プレッシャプレ−ト51、ア−マチャ53、電磁石55、コントロ−ラなどから構成されている。
【0193】
カップリング201は、ボルト87によってデフキャリヤ37に固定されたフロントカバ−203(静止側ケ−シング)に収容されている。
【0194】
電磁石55のコア79は、デフキャリヤ37とフロントカバ−203との間に露出したフランジ部83(固定部)を挟んで固定されている。
【0195】
上記のように、デフキャリヤ37とコア79は、固定される前にノックピン93によってセンタリングされており、フロントカバ−203はコア79との間に設けられた嵌合部205によってコア79に嵌合され、センタリングされている。
【0196】
回転ケ−ス39の前端部は、両側シ−ルのボ−ルベアリング207によってフロントカバ−203に支承されている。
【0197】
又、回転ケ−ス39の前端部には、ダストカバ−209が取り付けられている。ダストカバ−209の先端は、フロントカバ−203の軸方向端面まで延びており、回転ケ−ス39とフロントカバ−203との間を覆って、走行中に飛来する障害物とボ−ルベアリング207との衝突を防止し、ボ−ルベアリング207を保護する。
【0198】
ハブ41は、前端側をニ−ドルベアリング211(小径のベアリング)により、又、後端側をニ−ドルベアリング69によって、それぞれ回転ケ−ス39に支承されている。
【0199】
更に、ハブ41は、ロックナット99とアンギュラ−コンタクトベアリング80との間でドライブピニオンシャフト75に固定されている。
【0200】
又、ドライブピニオンシャフト75を支承するアンギュラ−コンタクトベアリング80、81は、ドライブピニオンシャフト75の先端に螺着されたロックナット99により、ハブ41を介して与圧され、それぞれの径方向の隙間を適正に調整されてセンタリングされ、軸方向の移動を規制されている。
【0201】
回転ケ−ス39とフロントカバ−203との間には、オイルシ−ル147によってリヤデフ21側のオイルから遮断された空気室213が設けられている。
【0202】
なお、カップリング201も、第1実施形態のカップリング1と同様に、図6の矢印163、165、167、169、171、173の各位置に配置可能であり、いずれの場合もカップリング1と同等の機能によって、前輪や後輪への駆動力伝達を断続し、伝達される駆動力を制御する。
【0203】
こうして、カップリング201が構成されている。
【0204】
上記のように、カップリング201では、回転ケ−ス39が、前端部をベアリング207によってフロントカバ−203に支承され、後端部をベアリング97によってコア79に支承されており、ハブ41はドライブピニオンシャフト75を介してデフキャリヤ37に支承されている。
【0205】
このように、回転ケ−ス39とハブ41は、いずれもが径方向と軸方向の両方で適正に位置決めされており、これらには互いの間に軸方向の力が掛からないから、互いの間のベアリングにニ−ドルベアリング69、211を用いることが可能になる。
【0206】
カップリング201は、ニ−ドルベアリング69、211を用いたことによってそれだけ小径になり軽量化されるから、周辺部材との干渉が避けられると共に、車載性が向上する。
【0207】
又、フロントカバ−203に収容したことによって、走行中に飛来する障害物からカップリング201が保護される。
【0208】
又、回転ケ−ス39とフロントカバ−203の間の空気室213に冷却流体を封入すれば、カップリング201が充分に冷却され、電磁石55の温度変化が防止されてア−マチャ53の吸引力が安定し、伝達トルクの制御機能が向上する。
【0209】
又、この冷却効果によって封入オイルの劣化が防止され、メインクラッチ43、コントロ−ルクラッチ45、ボ−ルカム49、スラストベアリング123、ワッシャ125などの潤滑効果と冷却効果が高く維持され、耐久性が向上する。
【0210】
これに加えて、カップリング201は、第1実施形態のカップリング1の特徴を除き、これと同等の効果を得る。
【0211】
[第3実施形態および第4実施形態]
次に、図7によって第3実施形態の説明をし、図8によって第4実施形態の説明をする。なお、符号を与えられていない部材等は図示されていない。
【0212】
これらの実施形態は、上記実施形態のカップリング1において、電磁石55のリ−ド線115の引出し方向を変えたものであり、それぞれ請求項1、2、4、5、7、8の特徴を備えている。
【0213】
図7の第3実施形態では、電磁石55のコア79と露出したフランジ部83(固定部)を通して、互いに連通した引出し路251、253(リ−ド線の引出し部)が設けられている。引出し路251は軸方向に設けられ、引出し路253は軸方向斜めに設けられており、その開口にはグロメット119が装着されている。
【0214】
リ−ド線115はこれらの引出し路251、253を通り、グロメット119から軸方向斜めに引き出されており、コネクタ−121によって車載バッテリ側のコネクタ−に接続されている。
【0215】
図8の第4実施形態では、コア79と露出したフランジ部83(固定部)を通して、軸方向の引出し路255(リ−ド線の引出し部)が設けられており、その開口にはグロメット119が装着されている。
【0216】
又、デフキャリヤ37には、引出し路255と連通する貫通孔257が設けられている。
【0217】
リ−ド線115はこれらの引出し路255と貫通孔257とを通り、グロメット119から軸方向に引き出されており、コネクタ−121によって車載バッテリ側のコネクタ−に接続されている。
【0218】
第3と第4の各実施形態のように、本発明では、リ−ド線115の引き出し方向が自由であり、引き出したリ−ド線115の接続上の自由度も大きい。
【0219】
これらの理由で、リ−ド線115は、継ぎ手やサスペンション部材のような周辺部材との干渉が避け易くなり、リ−ド線115の破損が防止されると共に、カップリングのレイアウトに関する設計上の自由度が大きく向上する。
【0220】
【発明の効果】
請求項1のカップリングは、電磁石のリ−ド線を引き出す部分の構造が簡素で、低コストである。
【0221】
グロメットの使用は任意であり、用いなければ、部品点数が減って、更に低コストになる。
【0222】
又、グロメットを用いる場合でも、コアの引出し部にグロメットを装着できるから、従来例と異なって、静止側ケ−シングにグロメットの取り付け部を加工しなくてすみ、静止側ケ−シングの形状がそれだけ簡素になり、低コストになる。
【0223】
又、リ−ド線の引き出し性と、引き出し方向の自由度が大きく向上すると共に、引き出したリ−ド線の接続上の自由度が大きく向上するから、リ−ド線と周辺部材との干渉が避け易くなり、リ−ド線の破損が防止されると共に、リ−ド線と周辺部材のレイアウトに関する設計上の自由度が大きく向上する。
【0224】
又、リ−ド線の引出し部が外部に露出し、外気によってコアが冷却されると共に、熱伝導によってコアの熱が静止側ケ−シングから外部に放出されるから、電磁石の温度変化が軽減され、伝達トルクの制御機能が向上する。
トルク伝達部材の先端側が連結軸を介して静止側ケ−シングに支承されることにより、カップリングの支持強度が大きく向上するから、軸ブレの抑制効果が極めて高く、長期にわたって機能が正常に保たれる。
又、連結軸に支承されたトルク伝達部材は、静止側ケ−シングで支承する必要がないから、周囲の静止側ケ−シングを取り去ることによって、カップリングを外部に露出させる請求項4の構成が実施し易くなり、請求項4の効果が容易に得られる。
又、ケ−ス状トルク伝達部材が外部に露出する構成では、外気で冷却された封入オイルが循環して内部温度が均等になり、クラッチのような発熱部が効果的に冷却され、冷却効果と潤滑効果が更に向上する。
【0225】
請求項2のカップリングは、電磁石のリ−ド線をコアの引出し部から直接引き出すことにより、請求項1のカップリングと同等の効果を得る。
【0229】
請求項2の発明は、請求項1と同等の効果を得ると共に、コアの廻り止め機構が不要であるから、構造が簡素で、低コストである。
【0230】
又、軸方向のインロ−部が不要であるから、それだけ軸方向にコンパクトで軽量になり、車載性が向上する。
【0231】
又、軸方向にコンパクトになったことにより、軸ブレがそれだけ低減される。
【0232】
又、引出し部とボルト孔との干渉が防止され、ボルトを締めつける際の作業性が大きく向上する。
【0233】
請求項3の発明は、請求項1と同等の効果を得ると共に、径方向に引き出したリ−ド線は、周辺部材との干渉が避け易くなり、破損が防止されると共に、リ−ド線と周辺部材のレイアウトに関する設計上の自由度が大きく向上する。
【0234】
又、引き出したリ−ド線の接続上の自由度も大きく向上する。
【0238】
請求項4の発明は、請求項1乃至請求項4の構成と同等の効果を得ると共に、連結軸の先端部でトルク伝達部材を支承するベアリングを小径にしたことにより、カップリングの先端を小径にして慣性モ−メントを小さくできる。
【0239】
先端の慣性モ−メントを小さくすれば、カップリングの軸ブレが更に小さくなり、振動が抑制される。
【0240】
又、カップリングの先端を小径にすれば、周辺部材との干渉を防止し易くなり、カップリングと周辺部材のレイアウトに関する設計上の自由度が大きく向上する。
請求項5の発明によれば、ボス部と静止側のケーシングとの間、コアと静止側のケーシングとの間からの泥水や塵のような異物の侵入を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1実施形態のカップリングを示す断面図である。
【図2】図1の要部断面図である。
【図3】図1のA−A断面図である。
【図4】第1実施形態のカップリングを用いた四輪駆動車の動力系を示すスケルトン機構図である。
【図5】第2実施形態のカップリングを示す断面図である。
【図6】第2実施形態のカップリングを用いた四輪駆動車の動力系を示すスケルトン機構図である。
【図7】第3実施形態の要部を示す断面図である。
【図8】第4実施形態の要部を示す断面図である。
【図9】従来例の断面図である。
【符号の説明】
1 外部に露出したカップリング
37 デフキャリヤ(静止側ケ−シング)
39 回転ケ−ス(ケ−ス状トルク伝達部材)
41 ハブ(軸状トルク伝達部材)
43 多板式のメインクラッチ
45 多板式のコントロ−ルクラッチ
49 ボ−ルカム(カム)
53 ア−マチャ
55 電磁石
75 ドライブピニオンシャフト(連結軸)
79 電磁石のコア
87 コアをデフキャリヤに固定するボルト
95 ドライブピニオンシャフトの先端側で回転ケ−スを支承するベアリング(小径のベアリング)
97 コアを介して回転ケ−スをデフキャリヤに支承するベアリング
115 電磁石のリ−ド線
117 コアの外周側に設けられたリ−ド線の引出し路(引出し部)
201 カップリング
207 ベアリング(回転ケ−スをデフキャリヤに支承する)
211 ニ−ドルベアリング(小径のベアリング)
Claims (5)
- ケ−ス状トルク伝達部材と、このケ−ス状トルク伝達部材に貫入した軸状トルク伝達部材と、これら両トルク伝達部材の間に配置されたクラッチと、ケ−ス状トルク伝達部材の外部からア−マチャを移動させてクラッチを押圧し連結させる電磁石と、静止側のケ−シングとを備え、電磁石のコアが外部に露出した固定部にてこの静止側ケ−シングに固定されており、両トルク伝達部材のいずれか一方がこのコアに回転可能に支承されていると共に、電磁石のリード線が、コアに設けられた引出し部から直接外部に引き出され、
前記静止側のケーシングにベアリングを介して支承された連結軸が、前記電磁石と前記ケース状トルク伝達部材の後端と軸状トルク伝達部材を貫通し、前記連結軸が前記軸状トルク伝達部材と連結し、前記ケース状トルク伝達部材の先端が前記連結軸の先端部にベアリングを介して支承されており、ケース状トルク伝達部材の内部にオイルが封入されており、前記ケース状トルク伝達部材と前記コアとの間には、微小な隙間を形成するダストカバー又は接触型のシールが配置されていることを特徴とするカップリング。 - 請求項1に記載の発明であって、電磁石のコアが、ボルトによって静止側ケ−シングに固定されていると共に、コアに設けられたリ−ド線の引出し部が、ボルトの周方向の間に設けられていることを特徴とするカップリング。
- 請求項1に記載の発明であって、リ−ド線の引出し部が、コアの外周側に設けられていることを特徴とするカップリング。
- 請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の発明であって、連結軸の先端部でトルク伝達部材を支承するベアリングが、電磁石のコアにトルク伝達部材を支承するベアリングより小径であることを特徴とするカップリング。
- 請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の発明であって、
前記ケース状トルク伝達部材に設けられたボス部と前記静止側のケーシングとの間にはシールが配置され、前記コアと前記静止側のケーシングとの間にはシールが配置され、前記ダストカバー又は前記接触型のシールと共に、前記コアと前記ケース状トルク伝達部材の一部であるロータとの間に形成されたエアギャップを一空間内に収容することを特徴とするカップリング。
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