JP4352934B2 - 反射防止膜及びそれを有する画像表示装置,光記録媒体,太陽発電モジュール並びに反射防止膜形成方法 - Google Patents

反射防止膜及びそれを有する画像表示装置,光記録媒体,太陽発電モジュール並びに反射防止膜形成方法 Download PDF

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Description

本発明は基板上に形成される反射防止膜及びそれを用いた各種製品に関する。
光の反射とは一媒質中を進行する光が、他の媒質との境界面で方向を変え、もとの媒質中を進行する現象をいう。そして反射はこれら媒質の屈折率の差が率密接に関係している。例えば透明で画像表示装置などに用いられるガラス,アクリル樹脂,ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂,単結晶サファイア等は空気との屈折率の差が大きく、これらの間で反射が起こりやすいことが知られている。
そして反射は時として我々の日常使用する物に様々な問題を発生させる。例えば、動植物の鑑賞を目的とする水槽においては、ガラスと空気との間で反射が起こり、周囲が明るい環境にあると周囲の物体が写り込み、水槽内部の視認性を著しく低下させてしまうという問題があり、特にストロボ等の光源を用いて水槽の内部を撮影しようとする場合には、撮影者自身が水槽に写り込んでしまうといった問題がある。
また例えば、植物等の安定的で急速な成長を図るために透明な壁や屋根を配置した温室などを利用する場合、これら壁や屋根と温室外部の空気との境界において反射が起こり、温室内部に入射する太陽光の量が減少し、温室効果が不十分となる場合もある。例えば壁材がガラスである場合は約8%、アクリル樹脂の場合でも約10%程度の太陽光が表面で反射されてしまうこととなる。
更に例えば、パソコンモニタやテレビなどの画像表示装置では、上記の水槽の例と同じく、基板と空気との間で反射が起こり、周囲が明るい環境にあると周囲の物体が写り込むため表示画像と重なり、視認性を著しく低下させてしまうという問題がある。
ここで、上記視認性の低下を防止するための技術として、画像表示装置における視認性の低下を防止する技術がある。これは、その干渉効果を利用するものであり、簡単にいえば画像表示装置に反射防止用のコート層を設け、画像表示装置における基板の屈折率を
1 、反射防止用のコート層の屈折率をn2 とした場合において、n2=√n1が満たされれば理論的に反射率を0とできる、という技術である。詳細は下記特許文献1に開示されている。
なお、この式と実際に用いられる材料との関係について考慮すると、基板としてガラスを用いた場合、ガラスの屈折率は1.5〜1.7であるため、理論的に反射率を0とするには反射防止膜の屈折率を1.22〜1.30とすることが望ましく、基板としてアクリル樹脂を用いた場合、アクリル樹脂の屈折率は1.5〜1.6であるため、反射防止膜の屈折率としては1.22〜1.26が望ましく、基板としてPET樹脂を用いた場合、PET樹脂の屈折率は約1.6であるため、反射防止膜の屈折率としては約1.26が望ましく、基板として単結晶サファイアを用いた場合、単結晶サファイアの屈折率は約1.8 であるため、反射防止膜の屈折率としては約1.33が望ましいことが導きだされる。
しかしながら、現状の材料では、比較的屈折率の低いといわれるフッ素系の樹脂であっても約1.34程度、無機材料のうち特に低屈折率で知られるフッ化マグネシウムでも約1.38程度であり、単層で十分な反射防止を得ることは極めて困難であった。
そこで、画像表示装置の反射を抑える方法として、異なる屈折率を有する膜を複数重ねることで反射防止膜の機能を向上させることが下記非特許文献1に記載されている。
また近年、低屈折率の膜としてエアロゲル薄膜が提案されており、下記特許文献2乃至6に記載がある。エアロゲル薄膜は内部に空洞のある微粒子(中空微粒子)と、この中空微粒子を保持するマトリクスを有した薄膜である。このエアロゲル薄膜の内部の空洞は、実質的に空気と同じ屈折率(屈折率1.0 )であるため、その中空微粒子の材質や中空微粒子を保持するマトリクスの屈折率が大きくても、膜としてみれば結果的に空気に近い屈折率となる。即ち、この膜を基板に形成することで反射率を低減できるというものである。
特開2002−14381号公報 特開2003−149642号公報 特開2002−278479号公報 特開2002−321910号公報 特開2003−119052号公報 特開2003−201443号公報 日本印刷学会誌 第40巻 250頁、2003年
しかし、エアロゲルの層は空孔率が高いため機械的強度が非常に低くなってしまうおそれがある。これは中空微粒子が屈折率を低下させるための空隙を持たせるため、つまり内部の空間を大きくするためには、粒子の殻の厚さを薄くする必要があるためである。またエアロゲルに入射した光の透過を妨げないように中空微粒子の粒子径を小さくする必要もある。そのため、中空微粒子の添加割合,膜厚等の制御が必要であった。更に、超臨界乾燥という製造プロセス上の特殊性もあり、コストや実現性に課題を有しており、より簡易なプロセスで形成できることが望ましい。
更に屈折率を基板の屈折率の1/2乗にすることで反射率を低減するという方法は光の干渉効果を利用するため、反射光の位相条件を合わせこむ必要がある。そのため、反射防止膜の厚さは精度良く均一に形成する必要がある。また反射防止性を発揮できる光の波長域も狭い。
また、上記非特許文献1のように複数の層を用いて積層する場合、屈折率の異なる複数の層が存在するため、それぞれにおいて反射を抑える構成とする必要があり、プロセスの増加や設計の複雑化が課題となる。
膜厚に比べて非常に薄い殻を持った中空微粒子を用いずにバインダー内部に空隙を形成する方法で膜を形成することができれば、機械的強度は大きく向上すると考えられるが、現在までそのような膜を形成する方法は提案されていなかった。
また空隙も膜中に均一に存在するのではなく、基板表面よりも反射防止膜表面近傍に局在化することができれば、基板近傍の屈折率が大きくなり、反射防止膜表面近傍が小さくなるため、膜厚に多少の差があっても反射防止機能が発揮されるとともに、その機能は広い波長域の光に対して得られるのであるが、現状ではその種の空隙を持った反射防止膜を形成する方法は提案されていない。
以上本発明の目的は、中空微粒子を用いずに簡便な構成でマトリクス内部に空隙を有する低屈折率の反射防止膜を形成すること、より簡便な方法で反射防止膜を形成することにある。さらにはこれを用いた温室,水槽,画像形成装置,太陽電池パネル等のデバイスを作製することにある。
我々は種々の製膜材料・方法を検討した結果、無機酸化物微粒子とバインダーから形成される膜において、バインダーに、或いはバインダーと無機酸化物微粒子の間に5〜200nmの大きさの空隙を持たせる方法を見出した。この膜はマトリクスであるバインダーの屈折率より小さな値を示すと同時に、膜内部に空隙を有しているにもかかわらず空隙を有しているにもかかわらず中空でない無機酸化物微粒子を用いているため物理的強度に優れていることもわかった。
また空隙も膜中に均一に存在するのではなく、基板表面よりも反射防止膜表面近傍に局在化しているため、膜厚に多少の差があっても反射防止機能が発揮されるとともに、その機能は広い波長域の光に対して得られることがわかった。
更に無機酸化物微粒子として酸化ケイ素微粒子を用い、バインダーとして加水分解性残基を有するケイ素化合物(シリカゾル)を用いた膜は、バインダーである酸化ケイ素の屈折率よりもかなり小さな値(具体的には屈折率1.33 以下)を示すと同時に、内部に空隙を有しているにもかかわらず物理的強度に優れていることもわかった。
加えてこの膜は表面抵抗が非常に小さいため、冬のように低湿度条件でもチリ等の埃が付着しにくいという効果も発揮することがわかった。
上記目的を達成するための一手段は下記の通りである。
(1)無機酸化物微粒子とバインダーとを有して構成され、厚さが60〜190nmであり、5〜200nmの大きさの空隙を有することを特徴とする反射防止膜とする。
なおこの場合において、屈折率は1.33以下が望ましい。
(2)(1)において、無機酸化物微粒子は酸化ケイ素微粒子であることを特徴とする。
(3)(1)において、反射防止膜は、酸化ケイ素微粒子と加水分解性残基を有するケイ素化合物から形成されてなることを特徴とする。
(4)(1)において、表面抵抗率が1011Ω以下であることを特徴とする。
(5)(1)において、含フッ素化合物からなる層を表面に有し、該表面における水との接触角が100°以上180°以下であることを特徴とする。
(6)(1)において、含フッ素化合物からなる層は下記構造であることを特徴とする。
(化3)
[F{CF(CF 3 )−CF 2 O} n −CF(CF 3 )]−X−Si(OR) 3 (14≦n≦21)
{F(CF 2 CF 2 CF 2 O) n }−X−Si(OR) 3 (14≦n≦21)
{H(CF 2 ) n }−Y−Si(OR) 3 (n=6,8)
{(CF 2 ) n }−Y−Si(OR) 3 (n=6,8)
Xはパーフルオロポロエーテル鎖とアルコキシシラン残基との結合部位でCONH−(CH 2 ) 3
Yはパーフルオロアルキル基とアルコキシシラン残基との結合部位でCONH−(CH 2 ) 3 ,(CH 2 ) 2
Rはアルキル基。
(7)(1)において、酸化ケイ素微粒子が鎖状の酸化ケイ素微粒子であることを特徴とする。
(8)(1)において、無機酸化微粒子は酸化ケイ素微粒子であって、形状は鎖状であり、酸化ケイ素微粒子は膜の固形分に対して75重量%以上であることを特徴とする。
(9)画像表示部位の最表面に反射防止膜を有する画像表示装置において、反射防止膜が(1)における反射防止膜であることを特徴とする。
(10)記録部分の光の反射率の違いにより記録を行う光記録媒体において、最表面に
(1)における反射防止膜を有することを特徴とする。
(11)少なくとも透明な壁面を1面以上有する温室において、透明な壁面が(1)における反射防止膜を有していることを特徴とする温室。
(12)入力部位,画像表示部位を有する携帯画像表示端末であって、画像表示部位は透明基板と、透明基板の表面に形成される反射防止膜とを有し、反射防止膜は(1)における反射防止膜である携帯画像表示端末。
(13)絶縁性光透過基板,表面電極,光電変換層,中間透明電極,裏面電極を備えた太陽光発電モジュールであって、前記絶縁性光透過基板の表面に(1)における反射防止膜が形成されていることを特徴とする。
(14)透明性を有する室内建材用基板であって(1)における反射防止膜を有していることを特徴とする。
(15)無機酸化物微粒子,バインダー、及び溶剤からなる塗料を塗布する工程と、
該塗料を加熱する工程と、を有する反射防止膜の形成方法。
(16)(15)において、過熱する工程における加熱温度は、前記塗料の沸点以上で沸点+150℃以下で行うことを特徴とする。
(17)(15)において、無機酸化物微粒子は酸化ケイ素であることを特徴とする。
(18)(15)において、バインダーは加水分解性残基を有するケイ素化合物を有することを特徴とする。
(19)(15)において、塗料を加熱する工程の後に、含フッ素化合物を溶解した溶液を塗布した後加熱する工程と、を有することを特徴とする。
(20)(15)において、含フッ素化合物は下記含フッ素化合物であることを特徴とする。
Figure 0004352934
(21)(15)において、無機酸化物微粒子は、鎖状の酸化ケイ素微粒子であることを特徴とする。
非常に低屈折率で反射防止機能を持つ単層型反射防止膜が塗布,熱硬化という容易な方法で形成可能になった。またこれを用いた画像表示装置やDVDディスク等の光学装置、部材は映り込みが抑制されると同時に高感度で記録再生を行うことができるようになった。更に画像表示面が偏光板であるため、衝撃に対して弱い液晶表示パネルにおいては、表面に反射防止膜を形成した透明基板(アクリル樹脂、或いはガラス等)を設けることで、映り込みの低減と、耐衝撃性を高めるという効果も発揮できることが明らかになった。
加えて反射が小さい故、太陽光を有効利用できるため、太陽光発電モジュールへの適用や、この膜を有する部材で作製した温室は植物の成長を促進させる効果も果たすことがわかった。
膜の抵抗も低いので防埃性の高い基板が形成できるため、室内用建材としても有効であることがわかった。
以下、本発明の実施形態及び実施例について、図面を用いて詳細に説明するが、本発明を用いた種々の変更は可能であり、実施形態,実施例に限定されることは無い。
本実施形態に係る反射防止膜は無機酸化物微粒子とバインダーから形成されている。また基本的にこの膜は少なくとも無機酸化物微粒子、及びバインダーと溶媒を混合した塗料を基板に塗布・加熱によって製膜する。バインダーがシリカゾル,エポキシ樹脂モノマー,メラミン樹脂モノマー等の熱硬化性物質の場合は重合、即ち塗膜の熱硬化を促進するための触媒も塗料に極少量添加される。
本実施形態に係る反射防止膜の形成方法の概略について図1を用いて説明する。
まず基板1に塗料2を塗布し塗膜を形成する。そして速やかに加熱する。このとき塗膜内では溶媒が急激に気化し、膜に気泡3を生じさせる。この状態で塗膜を固化させると気泡部分が空隙4として保持され、本実施形態に係る反射防止膜5が形成されることとなる。
図2は本実施形態の反射防止膜の一例についての断面写真であり、アクリル基板上に反射防止膜が形成されたものである。無機酸化物は酸化ケイ素の微粒子であり、バインダーとしてはシリカゾルを用いている。アクリル基板上には低屈折率膜が形成されており、更にその上にはカーボンが形成されている。なおここでカーボンは測定における断面のサンプルを作成する際、断面が破断しないようにするためにのみ形成したものであり、本実施形態に係る反射防止膜の効果には影響を与えていない。
図2では低屈折率膜の内部に幾つかの空隙が存在していることが確認できる。空隙の形状は不定形ではあるが、大きさはおおよそ5〜150nmとなっている。なおここでいう空隙の大きさとはそれぞれの空隙の断面において最も長く取れる距離であり、この距離に沿った直線を長軸とする。
ここで、空隙であることを確認するため空隙と空隙でない部分の元素の存在強度について測定した。この結果を図3に示す。
図3の結果、空隙は空隙でない部分に比べて炭素,酸素,ケイ素等の存在強度が小さいことがわかった。このことからも空隙の存在を確認できた。
膜のマトリクスである酸化ケイ素(屈折率は約1.5)と空隙(屈折率は約1.0)の膜中に占める割合を変えることで屈折率が制御できる。具体的には空隙の割合が大きくなるほど屈折率が小さくなる。
また熱硬化中の塗膜中での溶媒の気化が空隙形成に寄与することから用いる溶媒の沸点、及び基板に塗料を塗布後の熱硬化温度によっても空隙の形成は制御できる。
更に図2にその傾向が見出せるが、空隙は膜の比較的上部(最表面に近い部分)に多く形成している。これは熱硬化、即ち加熱によって基板上の塗料内部で形成を始めた気泡が、表面近傍に上がってくるためと考えられる。即ちこれは、基板側から徐々に屈折率が低くなる傾向を有すること、一層であってもその層内に屈折率の傾きを有していることを意味する。この結果基板側ではより基板に近い屈折率を有することを意味し、基板側でない表面側ではより空気に近い屈折率を有していることとなる。この結果、基板と反射防止膜との界面での反射、空気と反射防止膜界面での各反射を簡便な方法により一層でも低減させることができるのである。
また、この性質により、同じ組成の塗料を用いて厚さの異なる膜を形成した場合、熱硬化条件が同じ時は薄い膜ほど屈折率が低い傾向がある。これは表面近傍に多くの空隙が形成しやすいためである。
もし、空隙を表面近傍だけではなく内部にも多く形成させるためには、複層化する方法も考えられる。これにより、空隙が表面近傍だけでなく内部にも形成されるので、膜の物理的強度がいっそう向上する。
以下に塗料材料の説明、及び製膜の詳細を記述する。
(1)塗料材料
塗料材料はバインダー,無機酸化物微粒子,溶媒からなる。これらに関して下記に記述する。
(1−1)バインダー
塗膜材料としては、透明性の高い有機系或いは無機系の高分子材料,高分子化可能な材料が挙げられる。有機系の材料の場合、基板が樹脂の場合、用いる溶媒によって基板が膨潤,変形或いは溶解することがある。また硬度も無機系のものの方が高い傾向がある。そのため無機系の材料が好適である。無機系の材料の場合、低屈折率の材料の方が反射防止膜を形成する際には有利となる。低屈折率の材料としてはケイ素系の材料が好適である。
有機系の高分子材料としては、熱可塑性の高分子材料が挙げられる。具体的にはアクリル樹脂,ポリスチレン,スチレン−アクリル共重合体,ポリエステル樹脂,ポリ塩化ビニル,エチレン−酢酸ビニル共重合体,ポリエチレンテレフタレート樹脂,ポリ塩化ビニリデン樹脂,ポリカーボネート樹脂等が挙げられる。有機系の高分子化可能な材料としては、熱硬化性の高分子材料が挙げられる。具体的には脂肪族骨格のポリアミック酸誘導体等が挙げられる。
無機系の高分子材料としては、加水分解性残基を有するケイ素化合物(一般名はシリカゾル),加水分解性残基を有するチタン化合物(一般名はチタニアゾル)等が挙げられる。これらはアルコキシシラン、あるいはアルコキシチタンが分子量数千程度に重合した化合物であり、アルコール系の溶媒に可溶の状態である。これらを加熱することにより酸化ケイ素、或いは酸化チタンのバインダーを形成できる。
無機系の高分子化可能な材料としてはアミノ基やクロル基,メルカプト基等各種置換基を有するアルコキシシラン等が挙げられる。具体的な材料は後述する加水分解性残基を有するケイ素化合物の記述の中で示す。
上述したようにバインダーとしてはケイ素系の材料が好適である。具体的には加水分解性残基を有するケイ素化合物が好適である。これについて下記に詳細を記述する。
加水分解性残基を有するケイ素化合物の一つとしてシリカゾルが挙げられる。これは加熱によって酸化ケイ素に変化する物質である。形成される酸化ケイ素の透明性が高いため、光透過性が高く、温室,水槽,画像形成装置等に好適である。またアクリルやポリカーボネート等の樹脂よりも酸化ケイ素微粒子を膜内部に分散させやすい。酸化ケイ素微粒子を膜内部で分散させられない場合、即ち凝集すると、膜が濁ってしまい、入射光が散乱し、光の透過率を低下させてしまうため好ましくない。次にシリカゾルの一般的な調製方法は以下の通りである。テトラアルコキシシランを弱酸性条件で加温するとアルコキシ基が加水分解して水酸基となり、これが近傍のアルコキシシラン基と反応しケイ素−酸素−ケイ素の結合を形成しながら高分子量化したものを示す。一般に平均分子量は数千にする。平均分子量が低すぎると(分子量数百の場合)、その後の加熱で酸化ケイ素の膜を形成する際、一部が揮発する問題が生じる。また平均分子量が高すぎると(分子量数万以上の場合)用いる溶媒に不溶となるため塗料化したとき、析出するという問題を生じる。
シリカゾルを作製する際用いられるテトラアルコキシシランとしてはテトラメトキシシラン,テトラエトキシシラン,テトラプロポキシシラン,テトライソプロポキシシラン,テトライソブトキシシラン,テトラブトキシシラン等が挙げられる。これ以外にはアルコキシシラン基の代わりに塩素基を有するケイ素化合物、例えば四塩化ケイ素等も挙げられる。
シリカゾル以外に加水分解性残基を有するケイ素化合物としては、テトラアルコキシシラン以外に、アミノ基やクロル基,メルカプト基等を有する化合物を含まれる。具体的には3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルメチルジメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン,ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
(1−2)無機酸化物微粒子
無機酸化物微粒子としては酸化ケイ素,酸化アルミニウム,酸化チタン,酸化セリウム等の無色、或いは白色の微粒子が挙げられる。大きさとしては膜を平坦性を高める点で、粒子の短軸が平均膜厚以下になることが望ましい。また上記の中では低屈折率の膜が得やすいという点で、比較的屈折率の低い酸化ケイ素(屈折率は約1.5〜1.7),酸化アルミニウム(屈折率は約1.7〜1.9)等が好適である。そこで特に酸化ケイ素微粒子について詳細を記述する。
酸化ケイ素微粒子は球形の場合、膜に入射した可視光(波長としては380〜760
nm)が散乱しないよう平均粒子径は190nm以下が望ましい。これ以上になると入射した光が散乱するため膜が濁って見え、ディスプレイ関係への適用に不具合を生じる場合がある。また酸化ケイ素微粒子が鎖状の場合も上記と同様の理由で太さ(延伸方向に対して垂直な断面における太さ)を190nm以下にすることが望ましい。なお酸化ケイ素微粒子の粒子径は小さいほど透明性が向上する。そのため望ましくは平均粒子径が100
nm以下が好適である。また本発明で酸化ケイ素微粒子の大きさの下限は入手可能なサイズの関係で9nm程度であるが、膜中に良好に分散するのであればこれより小さくても問題は無い。
ところで用いるマトリクスである加水分解性残基を有するケイ素化合物、及び溶媒への分散性も不十分であると、凝集により大きな二次粒子になってしまい、やはり膜が濁って見えてしまうという問題がある。そこで、できれば酸化ケイ素微粒子を良好に分散できる溶媒を使用するのが良いのであるが、基板の種類によってはそのような溶媒を使用できない場合も考えられる。そこでそのような場合には分散剤を添加する。具体的には非イオン性の分散剤が好適である。イオン性の分散剤の一部は加水分解性残基を有するケイ素化合物の重合を促進してしまう場合があり、基板への塗布前に塗料の粘度が著しく高まり、場合によってはゲル状、或いは完全に固体まで硬化してしまい、塗布できなくなってしまうこともあるので使用にあたってはこのような現象を生じないか否か確認することが望まれる。また分散剤を用いた場合、膜の強度が低下する傾向があるので、分散剤は可能な限り使用しないか、使用するとしてもなるべく少量にするよう検討することが望まれる。
酸化ケイ素微粒子としてはコロイダルシリカが好適である。コロイダルシリカとしては例えば日産化学製オルガノシリカゾル,スノーテックス等が挙げられる。これら微粒子は表面に水酸基を多数有しているため親水性が高い。またこれらを部材として形成した反射防止膜は親水性であると同時に極めて抵抗が低い。具体的には1×1010〜10×1010Ω程度である。この値はガラス,アクリル樹脂,ポリカーボネート樹脂,PET樹脂等の1万分の1〜百万分の1と非常に小さい。そのため、チリ等の埃が付着しにくい。そのため、本発明の膜を透明な面に設けた温室等では光の入射量が増え、植物の発育時間の短縮につながる。画像形成装置の場合は乾燥した室内でも長時間表面にチリが付着しないため鮮明な画像を楽しむことが可能になる。また本発明の膜を設けた透明な基板はチリ等の埃が付着しにくいので、クリーンルーム等の壁,パーティション等、室内建材として有効である。
更に表面に水酸基が多く存在するため、通常のガラス板等に比べてアルコキシシラン基を有する化合物を多くの割合結合できる。そのため後述するアルコキシシラン基を有するパーフルオロポリエーテル化合物系、或いはパーフルオロアルキル化合物系の撥液剤を通常のガラス等の基板に比べて多くの割合結合させることができる。そのため通常のガラス板等に比べて撥液性を向上できる点で好適である。
コロイダルシリカのうち反射防止膜の構成部材として好適な酸化ケイ素微粒子は鎖状のものである。膜の存在割合が同じ場合、球状のものに比べて形成される膜の屈折率を低減しやすい。膜のバインダー、いわゆる保持体はシリカゾルであり、酸化ケイ素は膜の保持体としての機能は極めて低い。そのためシリカゾルが無ければ膜としての形状を保つことは難しく、単なる粉体状態となる。そのため膜の物理的強度を高めるためには、酸化ケイ素の膜中での存在割合は小さい方が好適である。球状の酸化ケイ素を用いた場合に比べて鎖状の酸化ケイ素を用いた方が屈折率の低い膜を形成できる理由は定かではないが、膜中では球状のものに比べて空隙を形成しやすい形態を採っているのではないかと推定される。鎖状の酸化ケイ素微粒子の例としては日産化学製オルガノシリカゾルIPA−ST−
UPが挙げられる。
酸化ケイ素以外に屈折率が小さく好適な酸化アルミニウムに関しても表面に水酸基を多数有するアルミナゾルは低抵抗率の膜を形成する点で好適である。
(1−3)溶媒
塗料の溶媒はバインダーを溶解、或いは一様に分散できるものが有効である。但し、基板が樹脂の場合、ケトン系,エーテル系、或いはエステル系溶媒は基板を膨潤,変形,溶解する場合があるので、注意を要する。前述のバインダーとして好適の加水分解性残基を有するケイ素化合物と、無機酸化物微粒子として好適である酸化ケイ素微粒子を有する塗料の場合はアルコール系の溶媒が好適である。具体的にはエタノール、n−プロパノール,イソプロパノール、n−ブタノール,イソブタノール、tert−ブタノール、n−ペンタノール、イソペンタノール、tert−ペンタノール等が挙げられる。アルコール系溶媒はポリカーボネート,アクリル等で形成される基板を膨潤,変形,溶解させにくいので好適である。またアルコール系溶媒については炭素数の大きなアルコールは沸点が高くなる傾向がある。また枝分かれが多くなるほど沸点は低くなる傾向がある。後述する製膜の際、熱硬化の温度より沸点が若干低い方が屈折率の低い膜が形成しやすい。これは膜内部に溶媒の気化に伴って発生する空隙の膜に占める体積が増えるためである。
(2)製膜方法
本実施形態の低屈折率膜は基板の前処理,塗布,加熱によって形成される。更に耐擦性を向上させるため、加熱後の後処理を行うこともある。これらの詳細について記述する。
(2−1)前処理
前処理では塗料を均一に付着させるため、基板の洗浄,基板の濡れ性向上を行う。
(i)基板の洗浄
基板の洗浄では基板に付着している汚れを良く溶かす、或いは良く除去できる溶媒,洗浄剤等を用いる。但し基板が樹脂の場合、例えばアクリルやポリカーボネートの場合は表面を溶解することによる曇りを発生させるような溶媒(テトラヒドロフラン,ジオキサン等)よりもメタノール,エタノール,プロパノール,ブタノール等のアルコール系溶媒が望ましい。基板がガラスの場合は塩基性の溶液(例えば水酸化ナトリウム水溶液等)に浸漬して表面を薄くエッチングすることで汚れも一緒に除去することも可能であり、浸漬時に加熱を併用するとエッチングが敏速に進行し好適である。しかし長時間これを行うとエッチングが進行しすぎて表面に曇りを生じることもあるので、注意を要する。
(ii)基板の濡れ性向上
基板の濡れ性を向上することで塗料が均一に塗布されるため、膜厚にばらつきが少なくなり、光学特性が良好となる。基板の濡れ性を向上させるには、プラズマ照射装置等の機器による表面改質方法と、酸,塩基溶液等を用いて表面を化学的に改質する方法が挙げられる。
・機器による表面改質方法
この範疇の方法としては酸素プラズマ照射,オゾン雰囲気に放置,UV照射等が挙げられる。いずれも活性な酸素が基板表面に作用し、水酸基やカルボキシル基等を生成する。これらの基は親水性なので、これらの基が生成した表面は濡れ性が向上する。そのため塗布により均一な厚さの膜を得やすくなる。なおUV照射はUVによって空気中の酸素が活性な状態に変化し、これが表面を改質するものであるから、酸素プラズマ照射,オゾン雰囲気に放置と類似の効果が得られるものである。これ以外の方法としてはアルゴンプラズマが挙げられる。アルゴンプラズマを照射しても濡れ性は向上する。ただプラズマ発生装置の高周波電源の出力が同じ場合は酸素プラズマより照射時間を長めにする必要がある。
・化学的に改質する方法
ガラスは水酸化ナトリウム水溶液に浸漬すると表面のケイ素−酸素の結合が切断し水酸基を生成するため濡れ性が向上する。アクリル板もガラスと同様塩基に浸漬すると濡れ性が向上するがこの原理は表面のエステル基が加水分解し、水酸基、或いはカルボキシル基が露出することによって親水性が向上するというものである。
(2−2)塗布方法
塗布はスピンコート,ディップコート,バーコート,アプリケーターによるコート,スプレーコート,フローコート等特に限定は無い。適切な膜厚に制御するために塗料の濃度、及びそれぞれ個別の塗布方法の条件を適正化する必要がある。スピンコートの場合は回転数と回転時間が膜厚に影響を与える。特に回転数の影響が大きく、回転数を高めるほど膜は薄くなる傾向がある。ディップコートの場合は浸漬時間と引き上げ速度が膜厚に影響を与える。特に引き上げ速度の影響が大きく、引き上げ速度を小さくするほど膜は薄くなる傾向がある。バーコートの場合は適切な番数,アプリケーターによるコートの場合はギャップの大きさ,スプレーコートの場合はスプレーの移動速度,フローコートの場合は基板を保持する際の角度と用いる塗料の使用量などが個別の塗布条件である。
塗布の際の目標膜厚は60〜190nmが望ましい。理論的に膜厚tは入射する光の波長λ、光が入射する媒体(透明基板、及び本発明の反射防止膜の屈折率)をnとしたとき、t=λ/4nとなる場合に反射率が最小になる。
入射する光が可視光領域(380〜760nm)で、媒体の屈折率が空気(屈折率が約1.0)から比較的高屈折率の透明ガラス基板(屈折率が約1.7)までを部材の使用範囲と考えた場合、望ましい最小膜厚は380/(4×1.7)=56nmである。56nm未満の場合は可視光領域の光が入射した場合、十分に反射率に影響を与えることができなくなる。塗膜を製膜する場合の膜厚分布も考慮すると最小膜厚は56nmよりやや大きめの60nmを狙うことが望ましい。一方最大膜厚は760/(4×1.0)=190 より、190nmが望ましい。以上の条件より本発明の膜厚は60〜190nmが適切と考えられる。
(2−3)加熱
塗布工程後、溶媒を揮発させる、或いはバインダーによっては重合を進行させるために加熱を行う。加熱温度を溶媒の沸点以上にすることで膜内に気泡が発生し、最終的に空隙として膜中に残り、結果として膜の屈折率を低減する。
ところで、加熱温度は溶媒の沸点以外に基板の耐熱温度以下にする必要があり、またバインダーとして熱硬化性の材料を用いた場合は熱硬化温度以上にする必要がある。そのためこれら要求を満たすよう溶媒の選定,基板の選定,バインダー材料の選定を行う必要がある。更に加熱後の冷却で膜と基板の体積収縮率に差があると、膜の剥離,基板の変形等の問題が起こる可能性があるので、基板と膜は材質の似通ったもの、或いは線膨張率の近いものを選択することが望ましい。この観点で考えていくと、バインダーとして好適なシリカゾル,無機酸化物微粒子として好適な酸化ケイ素微粒子を用いた場合、加熱により形成される膜は酸化ケイ素になるので、線膨張率が近いガラス、或いは石英が基板材料として好適といえる。
(2−4)後処理概要
熱硬化によって本発明の反射防止膜は形成されるが、これに撥液性を有する含フッ素化合物からなる層が形成されることによって、表面の防汚性が向上する。ただし撥液性を有する含フッ素化合物からなる層の厚さは形成された反射防止膜の反射防止効果を低下させることがないよう、極めて薄く製膜する必要がある。具体的には(2−2)のところで述べたよう56nm未満にすることで反射率への影響を逃れることができる。
なお撥液性を有する含フッ素化合物からなる層の形成形態は下記2種類挙げられる。
・撥液性を有する含フッ素化合物からなる塗膜
撥液性を有する含フッ素化合物からなる塗膜を形成する方法である。表面を塗膜で被覆することにより撥液性を発揮するものである。そのため、反射防止膜が低抵抗の場合、撥液性の含フッ素化合物が被覆されるため、表面抵抗が高まり、結果的にチリ等の埃を付着しやすくなる。
この膜を形成する材料としては、サイトップ(旭硝子社製),INT304VC(INTスクリーン社製)等が挙げられる。これらを溶媒で希釈後、塗布し、加熱することにより溶媒を揮発させ、場合によっては熱硬化させることにより製膜する。
・パーフルオロポリエーテル化合物、或いはパーフルオロアルキル化合物を結合
末端に水酸基等と結合可能なアルコキシシラン基を有するパーフルオロポリエーテル化合物、或いはパーフルオロアルキル化合物を反射防止膜に結合させる方法である。具体的には下記で示されるような化合物を反射防止膜に結合される。
Figure 0004352934
この場合、反射防止膜表面を完全に被覆するのではなく、反射防止膜上に草のようにパーフルオロポリエーテル鎖、或いはパーフルオロアルキル鎖が生えているような状況になる。反射防止膜の表面が完全に被覆されているわけではないので膜が1011Ω以下の低抵抗の場合、この方法を行った後も膜は低抵抗性を維持することが可能となる。
更にこれらパーフルオロポリエーテル鎖、或いはパーフルオロアルキル鎖を表面に形成することで、表面の潤滑性も向上する。そのため、擦れによる表面の物理的ダメージを緩和し、耐擦性の高い表面を形成することができる。
以上より、防汚性以外に表面の低抵抗の維持,耐擦性向上を図れる点で、撥液層を形成する際は、末端にアルコキシシラン基を有するパーフルオロポリエーテル化合物、或いはパーフルオロアルキル化合物を用いる方法が有利である。
(2−5)後処理で用いる撥液剤
(2−4)で記述したように撥液剤としては末端にアルコキシシラン基を有するパーフルオロポリエーテル化合物、或いはパーフルオロアルキル化合物が有効である。下記に撥液剤、及び撥液膜形成方法を示す。
(a)撥液剤
末端にアルコキシシラン基を有するパーフルオロポリエーテル化合物、或いはパーフルオロアルキル化合物としては具体的には以下の化合物1〜12があげられる。
Figure 0004352934
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Figure 0004352934
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Figure 0004352934
このうち化合物1〜8は以下に示す合成方法を実行することで得られる。化合物9〜
12は化合物名がそれぞれ1H,1H,2H,2H−パーフルオロオクチルトリメトキシシラン、1H,1H,2H,2H−パーフルオロオクチルトリエトキシシラン、1H,
1H,2H,2H−パーフルオロデシルトリメトキシシラン、1H,1H,2H,2H−パーフルオロデシルトリエトキシシランとしてヒドラス化学社より上市されている。またその他の市販材料としてはダイキン工業社製オプツールDSXが挙げられる。また化合物1〜4はフッ素鎖がパーフルオロポリエーテルであり、このフッ素鎖を有する化合物から形成される撥液膜は水以外にエンジンオイルやガソリン等に長期(1000時間)にわたって浸漬しても撥水性が殆ど低下しない(低下量は5°以下)という特徴がある。これら化合物を一般式で表すと以下のようになる。
Figure 0004352934
上記化合物を用いることで、エンジンオイルやガソリン等の汚染が懸念される環境においても防汚性の高い反射防止膜が形成可能となる。
化合物5〜12はエンジンオイルやガソリンに長期(1000時間)にわたって浸漬すると、水との接触角が浸漬前(約110°)から基材の接触角とほぼ同じレベルまで低下する。
(化合物1の合成)
デュポン社製クライトックス157FS−L(平均分子量2500)(25重量部)を3M社製PF−5080(100重量部)に溶解し、これに塩化チオニル(20重量部)を加え、攪拌しながら48時間還流する。塩化チオニルとPF−5080をエバポレーターで揮発させクライトックス157FS−Lの酸クロライド(25重量部)を得る。これにPF−5080(100重量部),チッソ(株)製サイラエースS330(3重量部),トリエチルアミン(3重量部)を加え、室温で20時間攪拌する。反応液を昭和化学工業製ラジオライト ファインフローAでろ過し、ろ液中のPF−5080をエバポレーターで揮発させ、化合物1(20重量部)を得た。
(化合物2の合成)
チッソ(株)製サイラエースS330(3重量部)の代わりにチッソ(株)製サイラエースS360(3重量部)を用いる以外は化合物1の合成と同様にして化合物2(20重量部)を得た。
(化合物3の合成)
デュポン社製クライトックス157FS−L(平均分子量2500)(25重量部)の代わりにダイキン工業社製デムナムSH(平均分子量3500)(35重量部)を用いる以外は化合物1の合成と同様にして化合物3(30重量部)を得た。
(化合物4の合成)
チッソ(株)製サイラエースS330(3重量部)の代わりにチッソ(株)製サイラエースS360を用い、デュポン社製クライトックス157FS−L(平均分子量2500)(25重量部)の代わりにダイキン工業社製デムナムSH(平均分子量3500)(35重量部)を用いる以外は化合物1の合成と同様にして化合物4(30重量部)を得た。
(化合物5の合成)
デュポン社製クライトックス157FS−L(平均分子量2500) (25重量部) の代わりにダイキン工業社製7H−ドデカフルオロヘプタン酸(分子量346.06)(3.5重量部)を用いる以外は化合物1の合成と同様にして化合物5(3.5重量部)を得た。
(化合物6の合成)
デュポン社製クライトックス157FS−L(平均分子量2500) (25重量部) の代わりにダイキン工業社製7H−ドデカフルオロヘプタン酸(分子量346.06)(3.5重量部)を用い、チッソ(株)せいサイラエースS310(2重量部)の代わりにチッソ(株)社サイラエースS320(2重量部)を用いる以外は化合物1の合成と同様にして化合物6(3.5重量部)を得た。
(化合物7の合成)
デュポン社製クライトックス157FS−L(平均分子量2500)(25重量部)の代わりにダイキン工業社製9H−ヘキサデカフルオロノナン酸(分子量446.07)
(4.5重量部)を用いる以外は化合物1の合成と同様にして化合物7(4.5重量部)を得た。
(化合物8の合成)
デュポン社製クライトックス157FS−L(平均分子量200)(25重量部)の代わりにダイキン工業社製9H−ヘキサデカフルオロノナンサン(分子量446.07)
(4.5重量部 )を用い、チッソ(株)製サイラエースS310(2重量部)の代わりにチッソ(株)サイラエースS320(2重量部)を用いる以外は化合物1の合成と同様にして化合物8(4.5重量部)を得た。
(b)撥液膜形成方法
末端にアルコキシシラン基を有するパーフルオロポリエーテル化合物、或いはパーフルオロアルキル化合物を用いる撥液膜形成方法は以下の通りである。
まず末端にアルコキシシラン基を有するパーフルオロポリエーテル化合物、或いはパーフルオロアルキル化合物を溶媒に溶解する。濃度は塗布方法によっても異なってくるが、概ね0.01〜1.0重量%程度である。アルコキシシラン基は溶媒中の水分、或いは空気中から溶媒に入り込んでくる水分によっても徐々に加水分解されるので、溶媒は脱水するか、フッ素系の溶媒のように水を溶解しにくいものを選択することが望ましい。フッ素系の溶媒として具体的には3M社のFC−72,FC−77,PF−5060,PF−5080,HFE−7100,HFE−7200,デュポン社製バートレルXF等が挙げられる。こうしてパーフルオロポリエーテル化合物、或いはパーフルオロアルキル化合物を溶解した液(以後撥液処理剤と記述)を調製する。
次に反射防止膜表面に撥液処理剤を塗布する。塗布の方法はディップコート,スピンコート等通常の塗布方法を用いる。次に加熱する。加熱はアルコキシシラン残基が表面の水酸基等と結合を形成するのに必要な条件であり、通常120℃では10分間程度、100℃では30分間程度行うことで完了する。90℃では1時間程度である。常温でも進行するがかなりの時間を要する。
最後にフッ素系の溶媒で表面をリンスし、余分な撥液剤を除去することで撥液処理が完了する。リンスの際使用する溶媒は撥液処理剤の説明で提示した溶媒が使用できる。
(3)用途
本実施形態の反射防止膜はガラス基板やポリカーボネート樹脂基板,アクリル樹脂基板等の透明基板上に形成できる。
そのため太陽光を反射せず効率良く取り込むことが望まれる用途に有効である。例えば植物等の安定的で急速な成長を図るため温室等の透明壁への適用が挙げられる。或いは反射(映り込み)を抑制し、視認性を向上させるため動植物,昆虫,魚介類等の観察・鑑賞等を目的とする水槽等の透明壁への適用が挙げられる。
また同様に反射(映り込み)を抑制し、視認性を向上させるため本発明はテレビジョンや携帯電話,ナビシステム,車両の速度や回転数等の表示等で用いられる液晶ディスプレイ,プラズマディスプレイ,有機発光(有機EL)ディスプレイといった画像表示装置への適用が挙げられる。具体的にはそれら表示装置の表示部位の最表面に形成するのが好適である。
加えて太陽光の発電効率を向上させるため太陽電池パネル表面に形成される反射防止膜への適用が挙げられる。太陽光以外にレーザー等の光も効率良く入射できるので光記録媒体の最表面に対しても有効である。
反射防止以外に膜が低抵抗のため、チリ等の埃がつきにくい特徴もあるので、湿度が低い冬や、粉塵の多い環境下でも光透過性は向上し、視認性も向上する。加えて撥液性を付与することで、防汚性も向上するので、この効果も結果として光透過性は向上し、視認性も向上する。これら特徴を有するので本発明の膜を有する透明基板はクリーンルームの壁、或いはパーティション等室内建材としても有効である。
〔実施例〕
以下、実施例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。
初めにガラス板への反射防止膜作成方法を示す。
(1)反射防止膜塗料塗布の前処理
縦100mm,横100mm,厚さ1.1mm,屈折率1.50のガラス板に低圧水銀ランプで紫外光を照射した。照射光量は10mW、照射時間は5分間である。これにより紫外光照射を受けたガラス板表面の水との接触角が10°以下となった。なお紫外光照射前のガラス板表面の水との接触角は30〜35°であった。
(2)反射防止塗料調製
バインダーとしてシリカゾル溶液(リン酸酸性,溶媒は水:エタノール=1:4、アルコキシシラン重合物は2.5 重量%含有)(3重量部)、無機酸化物微粒子として酸化ケイ素の分散液(日産化学製IPA−ST、固形分は30重量%)(4重量部)、これにエタノール(60重量部)を混合することで反射防止膜を形成するための塗料(以後反射防止塗料と記述)が調製される。なおこの塗料の沸点は80℃であった。
またIPA−STは粒子径が10〜15nmの球状コロイダルシリカ系の酸化ケイ素を分散した液である。
(3)反射防止塗料塗布
この塗料を(1)の前処理を施したガラス板にスピンコートで塗布する。なおスピンコート条件は最初回転数350rpmで5秒間、引き続き回転数1200rpmで回転時間20秒間である。塗布された塗料は目視ではガラス板上にほぼ均一に広がった。
(4)加熱
スピンコート後、速やかにガラス板を160℃に制御した恒温槽中にいれ、10分間加熱する。これによりシリカゾルが酸化ケイ素に変化し、熱硬化が完了する。こうして表面に反射防止膜の形成されたガラス板が完成する。
(5)裏面への処理
表面に反射防止膜の形成されたガラス板を裏返し、上記(1),(3),(4)の処理を行い、裏面へも表面と同様の反射防止膜を形成した。
(6)評価実験
ガラス板に形成された反射防止膜の膜厚と屈折率を測定したところ、それぞれ120
nmと1.327 であった。なお膜厚と屈折率は溝尻光学工業所製エリプソメーター(型式DHA−OLX)を用いて測定した。ただし、この方法で得られる屈折率は、膜全体の屈折率である。
反射防止膜を形成したガラス板の反射率を測定した。測定波長は人間の視感度が最も高いと言われる550nmでの反射率を測定した。その結果、反射防止膜を設けたガラス板の反射率は3.1% であった。反射防止膜が無いガラス板の反射率は8%であり、膜が反射防止機能を有していることを確認した。
形成した反射防止膜の断面をTEMで観察したところ、図2に示すように大きさが5〜150nmの空隙が確認された。また、膜断面を観察すると、基板側では空隙が少なく、表面側へ行くに従い空隙の割合が増加していた。これにより、基板側では膜素材の屈折率に近く、表面側では空気に近い屈折率の膜を得ることができた。これにより各界面における屈折率差少なくし、それぞれの界面における反射を防止できると推測される。なお以下の実施例においても膜中の空隙の分布は同様であった。
形成した反射防止膜の表面抵抗率を測定したところ、温度20℃,湿度50%の条件において2×1010Ωであった。なお測定はASTM D−257に準拠して行った。
ところで、加熱温度を160℃ではなく230℃(塗料の沸点より150℃高い温度)にしても形成される膜は目視確認で無色透明であった。ところが加熱温度を240℃(塗料の沸点より160℃高い温度)にすると形成される膜は極僅か濁りを生じた。これは加熱温度が高すぎ、気泡が大型化するため、結果として気泡が濁りとして見えるようになるためと推定される。このことから加熱温度は塗料の沸点+150℃以下が望ましいことが示された。
ガラス板の代わりに単結晶サファイア板(屈折率1.768)を用いる以外は実施例1の(1)〜(5)と同様にして反射防止膜を単結晶サファイア板上に形成した。
次に実施例1の(6)と同様にこの膜の評価をした。その結果、単結晶サファイア板に形成された反射防止膜の膜厚と屈折率を測定したところ、それぞれ120nm と1.327であった。
反射防止膜を形成した単結晶サファイア板の550nmでの反射率を測定した。その結果、反射防止膜を設けた単結晶サファイア板の反射率は0.3%未満であった。反射防止膜が無い単結晶サファイア板の反射率は16%であり、膜が反射防止機能を有していることを確認した。
形成した反射防止膜の断面をTEMで観察したところ、実施例1の膜と同様に大きさが5〜150nmの空隙が確認された。
形成した反射防止膜の表面抵抗率を測定したところ、温度20℃,湿度50%の条件において2×1010Ωであった。
用いる反射防止塗料を調製する際において、用いる酸化ケイ素分散液を日産化学製IPA−ST(4重量部)に代えて日産化学製IPA−ST−ZL、(4重量部)にする以外は実施例1の(1)〜(5)と同様にして反射防止膜をガラス板の上に形成した。なおIPA−ST−ZLは粒子径が約100nmの球状コロイダルシリカ系の酸化ケイ素を分散した液であり、液中の固形分は30重量%である。また、この実施例で調製した塗料の沸点は80℃であった。
次に実施例1の(6)と同様にこの膜を評価した。その結果、ガラス板に形成された反射防止膜の膜厚と屈折率を測定したところ、それぞれ190nmと1.295であった。
反射防止膜を形成したガラス板の550nmでの反射率を測定した。その結果、反射防止膜を設けたガラス板の反射率は2.1% であった。反射防止膜が無いガラス板の反射率は8%であり、この膜が反射防止機能を有していることを確認した。
形成した反射防止膜の断面をTEMで観察したところ、実施例1の膜と同様に大きさが5〜200nmの空隙が確認された。
形成した反射防止膜の表面抵抗率を測定したところ、温度20℃,湿度50%の条件において5×1010Ωであった。
用いる反射防止塗料を調製する際において、用いる酸化ケイ素分散液を日産化学製IPA−ST(4重量部)に代えて日産化学製MT−ST、(4重量部)にする以外は実施例1の(1)〜(5)と同様にして反射防止膜をガラス板の上に形成した。なおMT−STは粒子径が10〜15nmの球状コロイダルシリカ系の酸化ケイ素を分散した液であり、液中の固形分は30重量%である。また、この実施例で調製した塗料の沸点は79℃であった。
次に実施例1の(6)と同様にこの膜を評価した。その結果、ガラス板に形成された反射防止膜の膜厚と屈折率を測定したところ、それぞれ130nmと1.328であった。
反射防止膜を形成したガラス板の550nmでの反射率を測定した。その結果、反射防止膜を設けたガラス板の反射率は5.1% であった。反射防止膜が無いガラス板の反射率は8%であり、この膜が反射防止機能を有していることを確認した。
形成した反射防止膜の断面をTEMで観察したところ、実施例1の膜と同様に大きさが5〜200nmの空隙が確認された。
形成した反射防止膜の表面抵抗率を測定したところ、温度20℃,湿度50%の条件で2×1010Ωであった。
用いる反射防止塗料を調製する際において、用いる酸化ケイ素分散液を日産化学製IPA−ST(4重量部)に代えて日産化学製IPA−ST−UP、(4重量部)にする以外は実施例1の(1)〜(5)と同様にして反射防止膜をガラス板の上に形成した。なおIPA−ST−UPは太さが9〜30nmの鎖状コロイダルシリカ系の酸化ケイ素を分散した液であり、液中の固形分は15重量%である。なお、この実施例で調製した塗料の沸点は
80℃であった。
次に実施例1の(6)と同様にこの膜を評価した。その結果、ガラス板に形成された反射防止膜の膜厚と屈折率を測定したところ、それぞれ76nmと1.241であった。
反射防止膜を形成したガラス板の550nmでの反射率を測定した。その結果、反射防止膜を設けたガラス板の反射率は0.3% 未満であった。反射防止膜が無いガラス板の反射率は8%であり、この膜が反射防止機能を有していることを確認した。
形成した反射防止膜の断面をTEMで観察したところ、実施例1の膜と同様に大きさが5〜200nmの空隙が確認された。
形成した反射防止膜の表面抵抗率を測定したところ、温度20℃,湿度50%の条件で3×1010Ωであった。
ところで、加熱温度を160℃ではなく230℃(塗料の沸点より150℃高い温度)にしても形成される膜は目視確認で無色透明であった。ところが加熱温度を240℃(塗料の沸点より160℃高い温度)にすると形成される膜は極僅か濁りを生じた。これは加熱温度が高すぎ、気泡が大型化するため、結果として気泡が濁りとして見えるようになるためと推定される。このことから本実施例においても加熱温度は塗料の沸点+150℃以下が望ましいことが示された。
用いる反射防止塗料を調製する際において、用いる酸化ケイ素分散液である日産化学製IPA−ST−UPの添加量を4重量部から8重量部にする以外は実施例5の(1)〜
(5)と同様にして反射防止膜をガラス板の上に形成した。なお、この実施例で調製した塗料の沸点は80℃であった。
次に実施例1の(6)と同様にこの膜を評価した。その結果、ガラス板に形成された反射防止膜の膜厚と屈折率を測定したところ、それぞれ98nmと1.200であった。
反射防止膜を形成したガラス板の550nmでの反射率を測定した。その結果、反射防止膜を設けたガラス板の反射率は0.6% であった。反射防止膜が無いガラス板の反射率は8%であり、この膜が反射防止機能を有していることを確認した。
形成した反射防止膜の断面をTEMで観察したところ、実施例1の膜と同様に大きさが5〜150nmの空隙が確認された。
形成した反射防止膜の表面抵抗率を測定したところ、温度20℃,湿度50%の条件で2×1010Ωであった。
実施例1,3、及び本実施例において、用いた酸化ケイ素微粒子の膜中での存在割合はいずれも94%である。形成される膜の屈折率は実施例1の場合1.327 、実施例3の場合は1.255、本実施例は1.200であり、本実施例の膜の屈折率が低い。実施例1,3において酸化ケイ素微粒子の形状は球状であり、本実施例は鎖状である。実施例5において鎖状酸化ケイ素添加量が半分の場合でも屈折率が1.241 と、実施例1,3において形成した膜より低屈折率を達成した。本発明の膜は保持体であるシリカゾルの存在割合が低くなるほど、言い換えれば酸化ケイ素の存在割合が大きくなるほど膜の物理的強度が低くなるため、なるべく少量で屈折率低減が可能な鎖状酸化ケイ素を用いることで物理的強度の低下を極力抑えた低屈折率膜が形成できることになる。よって同じ存在割合でも屈折率を低減しやすい点で酸化ケイ素微粒子の形状は鎖状が好適であることが示された。
用いる反射防止塗料を調製する際において、用いる酸化ケイ素分散液である日産化学製IPA−ST−UPの添加量を4重量部から1.5 重量部、或いは2重量部にする以外は実施例5の(1)〜(5)と同様にして反射防止膜をガラス板の上に形成した。なお、この実施例で調製した塗料の沸点はどちらも80℃であった。
次に実施例1の(6)と同様にこの膜を評価した。その結果、ガラス板に形成された反射防止膜の膜厚と屈折率を測定したところ、IPA−ST−UPの添加量が1.5 重量部の膜はそれぞれ60nmと1.326 であった。またIPA−ST−UPの添加量が2重量部の膜はそれぞれ67nmと1.281 であった。用いた酸化ケイ素微粒子の膜中での存在割合は1.5 重量部の膜では75%、2重量部の膜では80%である。実施例5で
IPA−ST−UPの添加量が4重量部の膜の膜厚と屈折率はそれぞれ76nmと1.241であり、用いた酸化ケイ素微粒子の膜中での存在割合は89%である。実施例6でIPA−ST−UPの添加量が8重量部の膜の膜厚と屈折率はそれぞれ98nmと1.200であり、用いた酸化ケイ素微粒子の膜中での存在割合は94%である。
以上より鎖状の酸化ケイ素を用いた場合、形成される膜の屈折率が1.33以下になるためには鎖状の酸化ケイ素の膜中での存在割合が75%以上必要であることが示された。
ガラス板の代わりにアクリル板上に反射防止膜を形成する方法を示す。
(1)反射防止膜塗料塗布の前処理
厚さ5mmのアクリル板(アズワン社製)を縦100mm,横100mmに切り出した。この基板上に以下の方法で反射防止膜を形成する。なおこの基板の屈折率は1.52 であった。
まず上記アクリル板を80℃に加熱したホットプレート上においた後、低圧水銀ランプで紫外光を照射した。照射光量は10mW、照射時間は10分間である。これにより紫外光照射を受けたアクリル板表面の水との接触角が40°以下となった。なお紫外光照射前のアクリル板表面の水との接触角は90〜92°であった。
(2)反射防止塗料調製
シリカゾル溶液(リン酸酸性,溶媒は水:エタノール=1:4、アルコキシシラン重合物は2.5重量%含有)(3重量部),酸化ケイ素の分散液(日産化学製IPA−ST−UP、固形分は15重量%)(4重量部),エタノール(60重量部)を混合することで反射防止膜を形成するための塗料(以後反射防止塗料と記述)が調製される。また、この実施例で調製した塗料の沸点は80℃であった。
(3)反射防止塗料塗布
この塗料を(1)の前処理を施したアクリル板にスピンコートで塗布する。なおスピンコート条件は最初回転数350rpmで5秒間、引き続き回転数1200rpmで回転時間20秒間である。塗布された塗料は目視ではアクリル板上にほぼ均一に広がった。
(4)熱硬化
スピンコート後、速やかにアクリル板を95℃に制御した恒温槽中にいれ、30分間加熱する。これによりシリカゾルが酸化ケイ素に変化し、熱硬化が完了する。こうして表面に反射防止膜の形成されたアクリル板が完成する。
(5)裏面への処理
表面に反射防止膜の形成されたアクリル板を裏返し、上記(1),(3),(4)の処理を行い、裏面へも表面と同様の反射防止膜を形成した。
(6)評価実験
次に実施例1の(6)と同様にこの膜を評価した。その結果、アクリル板に形成された反射防止膜の膜厚と屈折率を測定したところ、それぞれ86nmと1.245であった。
反射防止膜を形成したアクリル板の550nmでの反射率を測定した。その結果、反射防止膜を設けたアクリル板の反射率は0.3% 未満であった。反射防止膜が無いアクリル板の反射率は8.2%であり、この膜が反射防止機能を有していることを確認した。
形成した反射防止膜の断面をTEMで観察したところ、実施例1の膜と同様に大きさが5〜150nmの空隙が確認された。
形成した反射防止膜の表面抵抗率を測定したところ、温度20℃,湿度50%の条件で3×1010Ωであった。
本実施例、及び実施例1〜5より、基板の材質はガラスであってもアクリルであっても反射防止膜は形成可能であることが示された。
ガラス板の代わりにポリカーボネート板上に反射防止膜を形成する方法を示す。
(1)反射防止膜塗料塗布の前処理
厚さ0.5mmのポリカーボネート板(藤本化学社製)を縦200mm,横200mmに切り出した。この基板上に以下の方法で反射防止膜を形成する。なおこの基板の屈折率は1.54であった。
まず上記ポリカーボネート板を80℃に加熱したホットプレート上においた後、低圧水銀ランプで紫外光を照射した。照射光量は10mW、照射時間は10分間である。これにより紫外光照射を受けたポリカーボネート板表面の水との接触角が30°以下となった。なお紫外光照射前のポリカーボネート板表面の水との接触角は88〜90°であった。
(2)反射防止塗料調製
シリカゾル溶液(リン酸酸性,溶媒は水:エタノール=1:4、アルコキシシラン重合物は2.5 重量%含有)(3重量部),酸化ケイ素の分散液(日産化学製IPA−ST−UP、固形分は15重量%)(4重量部),エタノール(60重量部)を混合することで反射防止膜を形成するための塗料(以後反射防止塗料と記述)が調製される。なお、この実施例で調製した塗料の沸点は80℃であった。
(3)反射防止塗料塗布
この塗料を(1)の前処理を施したポリカーボネート板にスピンコートで塗布する。なおスピンコート条件は最初回転数350rpmで5秒間、引き続き回転数1200rpmで回転時間20秒間である。塗布された塗料は目視ではポリカーボネート板上にほぼ均一に広がった。
(4)熱硬化
スピンコート後、速やかにポリカーボネート板を120℃に制御した恒温槽中にいれ、20分間加熱する。これによりシリカゾルが酸化ケイ素に変化し、熱硬化が完了する。こうして表面に反射防止膜の形成されたポリカーボネート板が完成する。
(5)裏面への処理
表面に反射防止膜の形成されたポリカーボネート板を裏返し、上記(1),(3),
(4)の処理を行い、裏面へも表面と同様の反射防止膜を形成した。
(6)評価実験
次に実施例1の(6)と同様にこの膜を評価した。その結果、ポリカーボネート板に形成された反射防止膜の膜厚と屈折率を測定したところ、それぞれ82nmと1.243 であった。
反射防止膜を形成したポリカーボネート板の550nmでの反射率を測定した。その結果、反射防止膜を設けたポリカーボネート板の反射率は0.3% 未満であった。反射防止膜が無いポリカーボネート板の反射率は8.4% であり、この膜が反射防止機能を有していることを確認した。
形成した反射防止膜の断面をTEMで観察したところ、実施例1の膜と同様に大きさが5〜150nmの空隙が確認された。
形成した反射防止膜の表面抵抗率を測定したところ、温度20℃,湿度50%の条件で3×1010Ωであった。
本実施例、及び実施例1〜5,8より、基板の材質はガラスであってもアクリルやポリカーボネートといった樹脂であってもこの反射防止膜は形成可能であることが示された。
実施例1〜6、及び実施例8,9で作製した反射防止膜を形成した板に撥液処理を行う。
(1)撥液処理液調製
始めに化合物1〜12の0.5 重量%溶液 (溶媒は3M社製フロリナートPF−5080)を調製する。これらを撥液処理液とする。また化合物1の0.1重量%PF−5080溶液を撥液処理液[1]、化合物2の0.1重量%PF−5080溶液を撥液処理液[2]、……化合物12の0.1重量%PF−5080溶液を撥液処理液[12]とする。
次に比較のため、旭硝子社製サイトップCTL−107Mの0.1%溶液を撥液処理剤[13]として用いた。
(2)撥液処理方法
・撥液処理液[1]〜[12]を用いた場合
撥液処理液中にそれぞれの基板を3分間浸漬する。基板を取り出し、内部を95℃に加熱された恒温漕に30分間放置する。基板を取り出し、PF−5080で表面をリンスし、余分な撥液処理液を除去することで処理が完了する。
・撥液処理液[13]を用いた場合
撥液処理液中にそれぞれの基板を3分間浸漬する。基板を取り出し、内部を95℃に加熱された恒温漕に90分間放置する。基板を取り出し、処理が完了する。
(3)撥液性評価
撥液処理の完了した基板の表面の撥液性を水との接触角で評価した。結果を表1〜8に示す。
Figure 0004352934
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また撥液処理前の水との接触角、及び撥液処理前後の屈折率と反射率,鉛筆硬度も併記する。
撥液処理前はいずれも反射防止膜も水に対する接触角は10°未満であった。しかし、撥液処理をすることにより、いずれの膜も接触角が大きくなった。屈折率,反射率も撥液処理前後で変化が無いことから、撥液処理はこれらに関わる性能を低下することがないことが示された。
ただし、サイトップCTL−107Mの0.1% 溶液で処理したものは抵抗が高くなった。これはサイトップCTL−107Mが反射防止膜表面をほぼ完全に被覆するのに対して、化合物1〜12は反射防止膜表面の所々にアルコキシシラン基を介して撥液性のフッ素系鎖が結合するため、結果的に反射防止膜を完全に被覆しなくなるためと考えられる。膜抵抗が上昇すると、結果的に帯電しやすい膜になるため、チリや埃が付着しやすい問題が出てくるので、膜抵抗を高めない化合物1〜12は膜にチリや埃付着しにくい状態を維持できる点で好適である。
以上より撥液性を付与されても膜抵抗を高めない点で末端にアルコキシシラン基を有するフッ素系化合物が好適であることが示された。
次に膜の鉛筆硬度を見てみると、化合物1〜12により撥液処理した膜は処理しない膜に比べて鉛筆硬度が高くなったが、サイトップCTL−107Mで処理したものは撥液処理前のものと同レベルの耐擦性であった。以上より本撥液処理によって耐擦性も向上することが明らかになった。
なお撥液処理に用いる化合物で比べてみると、化合物1〜4を用いた場合に接触角が高い傾向があり、最低でも実施例2の膜に化合物1、あるいは2で処理した場合の88°であった。特に化合物3,4を用いた場合は接触角が高く、いずれの膜でも接触角100°以上を示した。化合物1〜4はパーフルオロポリエーテル鎖を有する化合物であり、他はパーフルオロアルキル鎖、あるいはフルオロアルキル鎖を有する化合物である。このことからパーフルオロポリエーテル鎖を有する化合物で撥液処理する方が撥液性が優れた膜を形成することが可能であることが示された。
用いる反射防止塗料を調製する際、用いるエタノールを60重量部ではなく、30重量部にして、基板の大きさを縦500mm,横500mmにする以外は実施例8の(1)〜(5)と同様にして反射防止膜をアクリル板の両面に形成した。
次に実施例1の(6)と同様にこの膜の膜厚と屈折率を測定したところ、それぞれ140nmと1.245であった。
次に反射防止膜を形成したアクリル板の700nmでの反射率を測定した。植物の光合成において葉の中にあるクロロフィルの一種のP700は光合成サイクルの電子伝達サイクルを動かす重要な因子であり、波長700nm、及びその近傍の波長の光を照射されると光合成のサイクルを活発に進行させる。そのため植物の葉に波長700nm、及びその近傍の波長の光が多く照射されるほど光合成が進行する。
その結果、反射防止膜を設けたアクリル板の反射率は0.3%未満であった。反射防止膜が無いアクリル板の反射率は8.1%であり、この膜が反射防止機能を有していることを確認した。
次に上記反射防止膜を形成したアクリル板を数枚作製する。これを用いて図4に示す温室を作製する。
温室6の中には植木鉢7にトマト苗8が植えてある。また反射防止膜を形成しないアクリル板で同じ大きさの温室を作製する。5月初旬これら温室内に、ほぼ同程度に成長したトマト苗(品種:プチトマト)を植えた鉢を置き、これら温室に太陽光がほぼ同程度照射されるよう設置した。その結果、反射防止膜を形成したアクリル板で作製した温室に置いた方のトマトの苗は6月15日に赤い実を付けたが、反射防止膜を形成していないアクリル板で作製した温室に置いたトマトの苗は7月3日になってから赤い実をつけた。このことから、この反射防止膜は植物の成長を促進する効果のあることが確認された。
縦500mm,横500mm,厚さ5mmのアクリル板を2枚用意する。このうち1枚に実施例11と同様の方法で片面に反射防止膜を形成する。これら2枚を45°に傾けて家屋の寝室内に設置する。寝室は12畳、布団は2組あり、2人が毎日睡眠をとるため使用される。布団は部屋の中央、アクリル板は部屋の端に設置する。設置後30日経ってから積もっている埃が飛散しないよう注意してアクリル板の重量を測定し、その後埃を除去し、再度アクリル板の重量を測定した。埃の除去前後の重量差から堆積した埃の重量を求めた。その結果、反射防止膜を形成していないアクリル板の場合は22mgの埃が堆積した。しかし反射防止膜を形成しているアクリル板の場合は堆積した埃は5mgであった。反射防止膜を形成していないアクリル板の表面抵抗率は1×1016Ω以上であったが、反射防止膜を形成しているアクリル板の表面抵抗率は3×1010Ωであり、反射防止膜により表面抵抗が低減され帯電による埃の付着が抑制されることを示している。以上よりこの反射防止膜を有する基板は防埃性に優れることから、この基板は通常の生活を行う室内建材、更にはクリーンルームの壁やパーティションを作製する際の室内建材として有効であることが示された。
用いる反射防止塗料を調製する際、用いるエタノールを60重量部ではなく、80重量部にする以外は実施例9の(1)〜(4)と同様にして反射防止膜をポリカーボネート板の表面のみに形成した。
次に反射防止膜を形成したポリカーボネート板の405nmでの反射率を測定した。
DVDの記録再生においては最近記録密度の向上を狙って405nmの光が使われ始めている。そのためこの波長の光の反射率が高い基板を用いてディスクを作製すると、記録・再生時の光の強度を大きくする必要が出てくる。レーザーの出力を変えないで照射強度を高めるにはそれぞれのピットへの光の照射時間を長くすれば良いが、高速での記録・再生にとってはマイナスである。そのため、この波長の光の反射率を低減することが高速で記録・再生を可能にする技術の一つとなる。
本実施例の反射防止膜を設けた側のポリカーボネート板の反射率は0.3%未満であった。また反射防止膜が無い側の反射率は4.2%であり、この膜が反射防止機能を有していることを確認した。
次にこの基板をもう一枚作製する。更にこれら基板を直径120mmの円形に切断後、この2枚のポリカーボネート板の裏面で保護層,記録層を挟むように形成し、DVDディスクを作製する。このDVDディスクの断面模式図を図5に示す。
このDVDディスクにはこの反射防止膜9を形成したポリカーボネート基板10に保護層11,記録層12が形成されている。このディスクにテストデータを書き込んだ後、再生する際、光の強度を従来の半分の0.5mW で再生を行ったが、読み出したデータは正確であった。通常のディスクで同様の再生を行うと読み出しエラーが生じる。これは表面の反射が大きいため、再生装置の受光部に達する読み出し光が弱まるからである。通常は1mWの光を用いているため読み出しに支障は無いが、読み出し光を半分の強度にすることで上記障害が起こる。この反射防止膜を設けたDVDディスクは反射が非常に小さいため、読み出し光のほとんどを再生装置の受光部に入力することが可能になることで、上記障害が起こりにくくなるものと考えられる。
以上より、この膜を用いることで、DVDの読み出し光強度が半分になっても読み出しが可能である高感度光記録媒体を作製することが可能であることを確認した。
縦100mm,横100mm,厚さ1.1mm,屈折率1.50のガラス板の代わりに縦460mm,横770mm,厚さ4mm,屈折率1.52 のガラス板を用いる以外は実施例5と同様にして、両面に反射防止膜を形成したガラス板を作製する。
次に32型プラズマテレビのモニター(日立製作所製W32−P5000)を2台用意し、1台の最表面のガラス板を外して、代わりに両面に反射防止膜を形成したガラス板を装着する。このモニターが画像表示装置の一つになる。
ガラス板を交換したモニターと交換しないモニターを窓際で、且つ太陽光が画面に同レベル照射されるよう設置した。その結果、ガラス板を交換しないモニターに比べて、ガラス板を交換したモニターは反射防止膜が入射した太陽光が表面で反射することを抑制するため、画面への周囲の映りこみはほとんど気にならないレベルになった。
以上より、この反射防止膜を設けたプラズマテレビのモニターは強い太陽光が差し込んでも、画面への周囲の映りこみはほとんど抑制され、鮮明な画像を表示できることが示された。
用いるアクリル板の大きさを縦100mm,横100mmではなく縦460mm,横770mmに変更する以外は実施例8と同様にして、両面に反射防止膜を形成したアクリル板を作製する。
次に32型液晶テレビのモニター(日立製作所製W32−L5000)を2台用意し、1台のパネルの最表面に両面に反射防止膜を形成したアクリル板を図6のように貼付する。
これが画像表示装置の一つになる。モニター13に高さ1mmのスペーサー14を介して両面に反射防止膜を形成したアクリル板15を設ける。なおモニターの最表面には偏光板16があり、この表面は粗化され、反射光が散乱するようになっている。
次に反射防止膜を形成していないアクリル板を同様に貼付する。
反射防止膜を形成したアクリル板を貼付したモニターと反射防止膜を形成しないアクリル板を貼付したモニターを窓際で、且つ太陽光が画面に同レベル照射されるよう設置した。その結果、反射防止膜を形成しないアクリル板を貼付したモニターに比べて、反射防止膜を形成したアクリル板を貼付したモニターは反射防止膜が入射した太陽光が表面で反射することを抑制するため、画面への周囲の映りこみはほとんど気にならないレベルになった。
以上より、この反射防止膜を設けた液晶テレビのモニターは強い太陽光が差し込んでも、画面への周囲の映りこみはほとんど抑制され、鮮明な画像を表示できることが示された。
実施例13、及び本実施例より、この反射防止膜は画像表示装置の反射防止膜として機能することが示された。
実施例14で用意した32型液晶テレビのモニター、及び実施例14で製作した反射防止膜を形成したアクリル板を貼付した32型液晶テレビモニターの画像表示面の耐衝撃性を調べるため、以下の実験を試みた。
まず上記2つのモニターの画像表示面を上にして床に固定する。次にモニターの画像表示面から高さ1mのところに直径50mmの鉄球を保持する。この位置から鉄球の保持を解除することで、鉄球が落下し、画像表示面に衝突する。その後、液晶テレビモニターのスイッチを入れ、画像表示を試みた。
すると、通常の液晶テレビは画像表示面の偏光板に衝突すると、その内部のガラスが割れ、画像を正常に表示できなくなってしまった。しかしこの反射防止膜を形成したアクリル板を貼付した32型液晶テレビモニターは正常に画像を表示した。また鉄球の衝突部分は若干傷はついていたが、画像を見る上での支障は感じられない程度であった。
以上よりこの反射防止膜を有する透明基板を有する画像表示装置は耐衝撃性にも優れることが確認された。
縦100mm,横100mm,厚さ1.1mm,屈折率1.50のガラス板の代わりに縦43mm,横34mm,厚さ0.3mm,屈折率1.50のガラス板を用い、反射防止塗料として実施例5の塗料を用いる以外は実施例1の(1),(3),(4)と同様の方法を用いてこのガラス板の片面に反射防止膜を形成する。
続いて携帯電話の画像表示部の最表面に設けられているアクリル板を外す。次にその下にある偏光板の上に接着剤としてポリイソブチレンを用いて上記反射防止膜を有するガラス板を貼付する。
引き続き縦100mm,横100mm,厚さ5mmのアクリル板の代わりに携帯電話から外したアクリル板を用いる以外は実施例8の(1)〜(5)と同様の方法を用いてこのアクリル板の両面に反射防止膜を形成した。このアクリル板を再び携帯電話に装着する。こうして反射防止処理の施された携帯電話が作製される。図7にこの携帯電話の構成の一例を示す。
画像表示部分17の最表面にアクリル板18があり、その内部に反射防止膜を形成したガラス板19が偏光板20に貼付されている。この携帯電話は操作部分21によって操作される。
この携帯電話、及び反射防止処理の施されていない携帯電話の画像表示部分を直射日光にかざすと、反射防止処理を施されていない携帯電話は周囲の景色の映りこみが強く影響し、画像認識が困難であった。しかし反射防止処理を施されている携帯電話は周囲の景色の映りこみが弱いため、画像認識が容易であった。以上よりこの反射防止膜を有する携帯電話は画像表示部分に直射日光が当たっても周囲の景色の映りこみが弱いので、画像の認識が容易に行えることが示された。
ここでアクリル板に反射防止処理が施されていない場合、若干写り込みは気になるものの、偏光板に反射防止膜を有するガラス板が貼付されている分、反射は抑制された。
なお携帯電話に限らず、PDA等も同様の構成の画像表示部分を有するので、本実施例と同様の効果が得られる。
以上より、この反射防止膜を有する携帯画像表示端末は直射日光の強い野外において映り込みが少なく視認性の高い画像表示部位を有することが示された。
太陽光発電モジュールを2個用意し、1個はガラス基板を外す。縦100mm,横100mm,厚さ1.1mm,屈折率1.50のガラス板の代わりに太陽光発電モジュールから外したガラス基板を用いる以外は実施例5と同様の方法で反射防止膜を形成する。その後、反射防止膜を形成したガラス基板を太陽光発電モジュールに再度装着する。この太陽光発電モジュールの構成の模式図を図8に示す。
反射防止膜を形成したガラス基板22の下に表面電極23,上部光電変換層24,中間透明電極25,下部光電変換層26,裏面電極27が形成されている。
次に上記2個の太陽光発電モジュールを同程度太陽光が照射されるように配置した後、発電量を測定した。その結果、反射防止膜を形成したガラス板に代えたモジュールは、代えないモジュールに比べて約10%発電量が大きかった。
反射防止膜を形成したガラス基板と形成していないガラス基板の波長400〜700
nmにおける反射率の平均を求めたところ、反射防止膜を形成していないガラス基板は
10%であったが、反射防止膜を形成したガラス基板は0.5% であった。このことから太陽光を反射せず光電変換層に取り込める点で、発電量が向上したものと考えられる。
以上より、この反射防止膜を有する太陽光発電モジュールはガラス基板表面での反射が少ないため高効率で発電を行えることが示された。
反射防止塗料調製の際、シリカゾル溶液(3重量部)の代わりに、アミノプロピルトリエトキシシラン(チッソ社製S330)(0.1 重量部)、酸化ケイ素の分散液を日産化学製IPA−ST(4重量部)の代わりに日産化学製IPA−ST−UP(4重量部)に代える以外は、実施例1と同様にして反射防止塗料を調製する。
また反射防止塗料調製以外は実施例1の(1),(3)〜(5)と同様にして反射防止膜を形成したガラス板を作製した。実施例1の(6)と同様の評価試験を行ったところ、ガラス板に形成された反射防止膜の膜厚と屈折率はそれぞれ80nmと1.251 であった。550nmでの反射率は0.3% 未満であった。形成した反射防止膜の断面をTEMで観察したところ、図2に示すように大きさが5〜150nmの空隙が確認された。
形成した反射防止膜の表面抵抗率を測定したところ、温度20℃,湿度50%の条件において2×1010Ωであった。
反射防止塗料調製の際、シリカゾル溶液(3重量部)の代わりに、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン(チッソ社製S320)(0.1重量部)、酸化ケイ素の分散液を日産化学製IPA−ST(4重量部)の代わりに日産化学製IPA−ST−UP(4重量部)に代える以外は、実施例1と同様にして反射防止塗料を調製する。
また反射防止塗料調製以外は実施例1の(1),(3)〜(5)と同様にして反射防止膜を形成したガラス板を作製した。実施例1の(6)と同様の評価試験を行ったところ、ガラス板に形成された反射防止膜の膜厚と屈折率はそれぞれ81nmと1.252 であった。550nmでの反射率は0.3%未満であった。形成した反射防止膜の断面をTEMで観察したところ、図2に示すように大きさが5〜160nmの空隙が確認された。
形成した反射防止膜の表面抵抗率を測定したところ、温度20℃,湿度50%の条件において2×1010Ωであった。
反射防止塗料調製の際、シリカゾル溶液(3重量部)の代わりに、3−クロロプロピルトリメトキシシラン(チッソ社製S620)(0.1 重量部),酸化ケイ素の分散液を日産化学製IPA−ST(4重量部)の代わりに日産化学製IPA−ST−UP(4重量部)に代える以外は、実施例1と同様にして反射防止塗料を調製する。
また反射防止塗料調製以外は実施例1の(1),(3)〜(5)と同様にして反射防止膜を形成したガラス板を作製した。実施例1の(6)と同様の評価試験を行ったところ、ガラス板に形成された反射防止膜の膜厚と屈折率はそれぞれ78nmと1.246 であった。550nmでの反射率は0.3% 未満であった。形成した反射防止膜の断面をTEMで観察したところ、図2に示すように大きさが5〜160nmの空隙が確認された。
形成した反射防止膜の表面抵抗率を測定したところ、温度20℃,湿度50%の条件において3×1010Ωであった。
反射防止塗料調製の際、シリカゾル溶液(3重量部)の代わりに、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン(チッソ社製S810)(0.1 重量部),酸化ケイ素の分散液を日産化学製IPA−ST(4重量部)の代わりに日産化学製IPA−ST−UP(4重量部)に代える以外は、実施例1と同様にして反射防止塗料を調製する。
また反射防止塗料調製以外は実施例1の(1),(3)〜(5)と同様にして反射防止膜を形成したガラス板を作製した。実施例1の(6)と同様の評価試験を行ったところ、ガラス板に形成された反射防止膜の膜厚と屈折率はそれぞれ82nmと1.252 であった。550nmでの反射率は0.3%未満であった。形成した反射防止膜の断面をTEMで観察したところ、図2に示すように大きさが5〜180nmの空隙が確認された。
形成した反射防止膜の表面抵抗率を測定したところ、温度20℃,湿度50%の条件において2×1010Ωであった。
本実施例、及び実施例19〜21より、この反射防止膜を形成するためのバインダーとしてはシリカゾル以外の加水分解性残基を有するケイ素化合物も有効であることが示された。
反射防止塗料調製の際、シリカゾル溶液(3重量部)の代わりに、チタニアゾル溶液
(固形分2.5% )(3重量部)、酸化ケイ素の分散液を日産化学製IPA−ST(4重量部)の代わりに日産化学製IPA−ST−UP(4重量部)に代える以外は、実施例1と同様にして反射防止塗料を調製する。
また反射防止塗料調製以外は実施例1の(1),(3)〜(5)と同様にして反射防止膜を形成したガラス板を作製した。実施例1の(6)と同様の評価試験を行ったところ、ガラス板に形成された反射防止膜の膜厚と屈折率はそれぞれ80nmと1.263 であった。550nmでの反射率は0.5%であった。形成した反射防止膜の断面をTEMで観察したところ、図2に示すように大きさが5〜170nmの空隙が確認された。
形成した反射防止膜の表面抵抗率を測定したところ、温度20℃,湿度50%の条件において2×1010Ωであった。
本実施例より、この反射防止膜を形成するためのバインダーとしてはケイ素化合物以外にチタン化合物も有効であることが示された。
反射防止塗料調製の際、酸化ケイ素の分散液を日産化学製IPA−ST(4重量部)の代わりに酸化アルミニウムの分散液(日産化学製アルミナゾル−520,固形分20%)(4重量部)に代える以外は、実施例1と同様にして反射防止塗料を調製する。
また反射防止塗料調製以外は実施例1の(1),(3)〜(5)と同様にして反射防止膜を形成したガラス板を作製した。実施例1の(6)と同様の評価試験を行ったところ、ガラス板に形成された反射防止膜の膜厚と屈折率はそれぞれ102nmと1.315 であった。550nmでの反射率は2.8% であった。形成した反射防止膜の断面をTEMで観察したところ、図2に示すように大きさが5〜150nmの空隙が確認された。
形成した反射防止膜の表面抵抗率を測定したところ、温度20℃,湿度50%の条件において2×1010Ωであった。
本実施例より、この反射防止膜を形成するための無機酸化物微粒子の材質としては酸化ケイ素以外の無機酸化物も有効であることが示された。
反射防止塗料調製の際、シリカゾル溶液(3重量部)の代わりに、アクリル樹脂のエマルション(日立化成製ヒタロイドSW6011,固形分50%)(0.15 重量部)を用い、酸化ケイ素の分散液を日産化学製IPA−ST(4重量部)の代わりに日産化学製スノーテックスC(固形分20%)(4重量部)を用い、エタノール(60重量部)の代わりに水(60重量部)を用い、実施例1と同様にして反射防止塗料を調製する。なお本実施例の塗料の沸点は100℃であった。
また反射防止塗料調製、及び加熱温度を120℃に代える以外は実施例1の(1),
(3)〜(5)と同様にして反射防止膜を形成したガラス板を作製した。実施例1の(6)と同様の評価試験を行ったところ、ガラス板に形成された反射防止膜の膜厚と屈折率はそれぞれ90nmと1.320であった。550nmでの反射率は2.9%であった。形成した反射防止膜の断面をTEMで観察したところ、図2に示すように大きさが5〜80nmの空隙が確認された。
形成した反射防止膜の表面抵抗率を測定したところ、温度20℃,湿度50%の条件において8×1010Ωであった。
本実施例より、この反射防止膜を形成するためのバインダーとしてはケイ素化合物,チタン化合物等の無機系高分子材料以外にアクリル樹脂のような有機系高分子材料も有効であることが示された。
反射防止塗料調製の際、酸化ケイ素の分散液を日産化学製IPA−ST(4重量部)の代わりに日産化学製IPA−ST−UP(2重量部)と日産化学製IPA−ST−ZL
(2重量部)を用いる以外は、実施例1と同様にして反射防止塗料を調製する。
また反射防止塗料調製以外は実施例1の(1),(3)〜(5)と同様にして反射防止膜を形成したガラス板を作製した。実施例1の(6)と同様の評価試験を行ったところ、ガラス板に形成された反射防止膜の膜厚と屈折率はそれぞれ102nmと1.250 であった。550nmでの反射率は0.9% であった。形成した反射防止膜の断面をTEMで観察したところ、図2に示すように大きさが5〜150nmの空隙が確認された。
形成した反射防止膜の表面抵抗率を測定したところ、温度20℃,湿度50%の条件において4×1010Ωであった。
本実施例より、この反射防止膜を形成するための無機酸化物微粒子は粒子形状,大きさが異なっていても有効であることが示された。
本発明の反射防止膜の形成方法の一例の概略。 樹脂上に形成される親水膜の断面写真。 (A)親水膜の島状の領域における元素の存在強度、(B)親水膜の島状の領域以外における元素の存在強度。 反射防止膜を形成した温室。 反射防止膜を設けたDVDディスク。 画像表示装置を上から見た概略図。 携帯電話の構成の概略図。 太陽光発電モジュールの構成の模式図。
符号の説明
1…基板、2…塗料、3…気泡、4…空隙、5,9…本発明の反射防止膜、6…本発明の反射防止膜を形成した温室、7…植木鉢、8…トマト苗、10…ポリカーボネート基板、11…保護層、12…記録層、13…モニター、14…スペーサー、15…両面に反射防止膜を形成したアクリル板、16,20…偏光板、17…画像表示部分、18…アクリル板、19…反射防止膜を形成したガラス板、21…操作部分、22…反射防止膜を形成したガラス基板、23…表面電極、24…上部光電変換層、25…中間透明電極、26…下部光電変換層、27…裏面電極。

Claims (12)

  1. 無機酸化物微粒子とケイ素化合物とを有して構成され、
    厚さが60〜190nmであり、
    5〜200nmの大きさの空隙を有し、
    前記無機酸化物微粒子の形状は鎖状であり、
    屈折率は1.295未満であり、
    前記無機酸化物微粒子は酸化ケイ素微粒子であり、
    前記無機酸化物微粒子の表面に水酸基が存在し、
    含フッ素化合物からなる層を表面に有し、
    前記含フッ素化合物は下記含フッ素化合物であり、
    前記含フッ素化合物からなる層は化学結合により結合していることを特徴とする反射防止膜。
    (化1)
    [F{CF(CF3)−CF2O}n―CF(CF3)]−X−Si(OR)3(14≦n≦21)
    {F(CF2CF2CF2O)n−(CF 2 ) 2 −X―Si(OR)3(14≦n≦21)
    {H(CF2)n}− 1 ―Si(OR)3(n=6,8)
    (CF2)n}− 2 ―Si(OR)3(n=6,8)
    Xはパーフルオロポロエーテル鎖とアルコキシシラン残基との結合部位でCONH−(CH2)3
    1 ,Y 2 はパーフルオロアルキル基とアルコキシシラン残基との結合部位で、Y 1 CONH−(CH2)3 、Y 2 (CH2)2
    Rはアルキル基。
  2. 塗料を塗布することによって形成され、前記塗料の沸点以上前記塗料の沸点+150℃以下で加熱されることを特徴とする請求項1に記載の反射防止膜。
  3. 前記無機酸化微粒子は酸化ケイ素微粒子であって、
    形状は鎖状であり、
    前記酸化ケイ素微粒子は膜の固形分に対して75重量%以上であることを特徴とする請求項1に記載の反射防止膜。
  4. 画像表示部位の最表面に反射防止膜を有する画像表示装置において、
    該反射防止膜が請求項1に記載の反射防止膜である画像表示装置。
  5. 記録部分の光の反射率の違いにより記録を行う光記録媒体において、
    最表面に請求項1に記載の反射防止膜を有することを特徴とする光記録媒体。
  6. 少なくとも透明な壁面を1面以上有する温室において、
    前記透明な壁面が請求項1に記載の反射防止膜を有していることを特徴とする温室。
  7. 入力部位,画像表示部位を有する携帯画像表示端末であって、
    前記画像表示部位は透明基板と、該透明基板の表面に形成される反射防止膜とを有し、
    該反射防止膜は請求項1に記載の反射防止膜である携帯画像表示端末。
  8. 絶縁性光透過基板,表面電極,光電変換層,中間透明電極,裏面電極を備えた太陽光発電モジュールであって、
    前記絶縁性光透過基板の表面に請求項1に記載の反射防止膜が形成されていることを特徴とする太陽光発電モジュール。
  9. 透明性を有する室内建材用基板であって請求項1に記載の反射防止膜を有していることを特徴とする室内建材用基板。
  10. 鎖状の無機酸化物微粒子、ケイ素化合物であるバインダー、及び溶剤からなる塗料を塗布する工程と、
    該塗料を加熱する工程と、
    前記塗料を加熱する工程の後に、含フッ素化合物を溶解した溶液を塗布した後加熱する工程とを有し、
    前記無機酸化物微粒子は酸化ケイ素微粒子であり、
    前記含フッ素化合物は下記含フッ素化合物であることを特徴とする屈折率が1.295未満の反射防止膜の形成方法。
    (化2)
    [F{CF(CF3)−CF2O}n―CF(CF3)]−X−Si(OR)3(14≦n≦21)
    {F(CF2CF2CF2O)n−(CF 2 ) 2 −X―Si(OR)3(14≦n≦21)
    {H(CF2)n}− 1 ―Si(OR)3(n=6,8)
    (CF2)n}− 2 ―Si(OR)3(n=6,8)
    Xはパーフルオロポロエーテル鎖とアルコキシシラン残基との結合部位でCONH−(CH2)3
    1 ,Y 2 はパーフルオロアルキル基とアルコキシシラン残基との結合部位で、Y 1 CONH−(CH2)3 、Y 2 (CH2)2
    Rはアルキル基。
  11. 前記加熱する工程における加熱温度は、前記塗料の沸点以上前記塗料の沸点+150℃以下で行うことを特徴とする請求項10に記載の反射防止膜の形成方法。
  12. 前記溶媒はアルコール系であることを特徴とする請求項10に記載の反射防止膜の形成方法。
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