JP4352205B2 - 嚥下食組成物及びその評価方法 - Google Patents
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【産業上の利用分野】
本発明は、咀嚼・嚥下障害者や高齢者のように咀嚼または嚥下機能が低下している者(咀嚼・嚥下困難者)が安全かつ容易に摂食できるように調製された嚥下食組成物に関する。また、本発明はかかる嚥下食組成物の評価方法、処方決定方法、並びに製造方法に関する。
【0002】
さらに本発明は、かかる嚥下食用組成物を簡単に調製するために使用される嚥下食用補助剤、その配合組成や配合量の決定方法、及びその製造方法に関する。
【0003】
【従来の技術】
一般に嚥下の動作は口腔相、咽頭相および食道相の3相に分けられるが、嚥下障害者や高齢者は、特に咽頭相の粘膜が老化し、咽頭蓋も弾力性を失っているため、咽頭相の動作をスムーズに行うことができず、鼻腔への食物の押し出しや誤嚥を起こしやすい。また、嚥下障害者や高齢者などといった嚥下機能が低下した者(嚥下困難者)は同時に咀嚼機能を失調していることが多い。このような咀嚼・嚥下機能低下による摂食障害は、栄養や水分の補給不良に起因する障害だけでなく、誤嚥による肺炎(誤嚥性肺炎)や窒息などを引き起こし、生命の危機にかかわることがあるため、非常に重要な問題となっている。
【0004】
ところで、総務庁の統計調査によると、65才以上の高齢者は毎年70数万人の割合で増加しており、2021年には総人口の約25%を占めるものと予想されている。また75才以上の高齢者のほぼ30%は咀嚼・嚥下機能低下者(咀嚼・嚥下困難者)であると言われており、ますます進行する高齢化社会において、今後、咀嚼・嚥下機能低下者(咀嚼・嚥下困難者)が一層急増すると予測される。
【0005】
このため、かかる将来増大する需要を見越して、近年、咀嚼・嚥下障害者や高齢者などの咀嚼・嚥下機能低下者(咀嚼・嚥下困難者)に適した嚥下食の開発が急務とされている。
【0006】
一般に、口腔相で咀嚼され形成された食塊の多くはゲル状を形成することが多い。従って、嚥下食の開発には、まずゲルの構造および機能特性の基礎的な研究が重要であると考えられている。一般にどのような物性条件を満たす食品が嚥下食に適しているか、その指標となる物性が種々検討されているものの、未だ十分なものが得られていないのが実情である。
【0007】
例えば、厚生労働省が定める規格基準によると、ゾル形状の咀嚼・嚥下困難者用食品はB型回転粘度計による粘度(定常剪断粘度)が1,500mPa・s以上(測定温度:20±2℃)のものとして規定されている(例えば、非特許文献1参照)。
【0008】
しかし、粘度が高くなると、口腔及び咽頭にまとわりつくような粘りある食感となり嚥下に適さなくなることから、粘度(定常剪断粘度)だけで「嚥下のしやすさ」を客観的に表現することは困難である。また、嚥下食に適した素材はいわゆる「弱いゲル」の性状を有するが、試料に大変形を与えてしまうB型回転粘度計による測定では、測定中に試料の構造が破壊され、粘度を過小評価してしまう危険性がある。またこのような試料では、ローターと試料との間に滑りが生じる場合が多く、測定値の再現性が低くなるという問題がある。
【0009】
このため嚥下食の物性評価に際しては、粘性要素だけでなく弾性要素の評価が必要である。厚生労働省が定める規格基準(上述)においても粘度とともに一軸定速圧縮試験による堅さ(一定速度で圧縮したときの抵抗)として10mm/secで圧縮したときに500Pa(N/m2)以下であることが規定されているが、この堅さを上記の粘性と同時に測定することは不可能である。また、市販の測定機器には10mm/secの測定モードを備えていないものがある。
【0010】
一方、動的粘弾性試験から得られる物性が官能的指標である「嚥下のしやすさ」と関連が高いことが報告されている(例えば、非特許文献2〜5参照)。ここで提案されている動的粘弾性試験は、試料の構造を破壊しない微小変形領域での測定であり、弾性要素と粘性要素の同時測定が可能である。また、試験に必要な試料量も少なく、測定の再現性も高いという長所がある。しかしながら、従来の方法では、多種の物性パラメーターを用いなければ「嚥下のしやすさ」を客観的に表現することができない。また、測定周波数(ω)領域が明確に規定されておらず、周波数に依存して物性値が変化するような試料については適応が難しいという問題がある。
【0011】
【非特許文献1】
高齢者用食品の標示許可の取り扱いについて、別紙 高齢者用食品の試験方法(厚生労働省生活衛生局食品保健課新開発食品保健対策室長通知;平成6年2月23日 衛新第15号)
【0012】
【非特許文献2】
New Food Industry 1999, Vol.41 No.2, 71-79
【0013】
【非特許文献3】
New Food Industry 1999, Vol.41 No.11, 1-11
【0014】
【非特許文献4】
食品工業 (2001) Vol.44 No.3, 68-75
【0015】
【非特許文献5】
食品工業 (2001) Vol.44 No.5, 80-93。
【0016】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、咀嚼・嚥下障害者や高齢者等の咀嚼・嚥下機能が低下した者の摂食に適した嚥下食について、共通した物性を明らかにすることを目的とするものである。言い換えれば、本発明は、食品組成物について「嚥下のしやすさ」を表現するための共通した物性パラメーターを提案することを目的とするものである。
【0017】
さらに、本発明は、かかる物性を備える嚥下食組成物、また該物性を備える嚥下食組成物を簡便に調製するために利用される嚥下食用補助剤を提供することを目的とする。また、本発明は上記物性を指標として、嚥下食組成物を評価する方法、また嚥下食組成物を選別する方法、嚥下食組成物の処方を決定する方法、嚥下食組成物を製造する方法、並びに嚥下食用補助剤の配合組成やその配合量を決定する方法を提供することを目的とする。
【0018】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、今後一層市場の需要が高まる嚥下食について、それに共通して求められる物理的性状を明らかにするために鋭意研究を行っていたところ、弱いゲルの性状を有する試料ほど嚥下しやすい傾向にあることを見いだし、このことから弱いゲルを破壊しない領域において物性測定することが必須で、この観点から基準となる物性を規定する必要があることを知るにいたった。そこで、この点からさらに研究を進めた結果、発明者らは動的粘弾性試験によって得られる複素粘性率(η*=(G'2+G"2)1/2/ω)を単一のパラメーターとして利用することによって、「嚥下のしやすさ」といった官能的指標(主観的指標)を客観的に且つ簡単に表現することができることを見出した。本発明は、かかる知見に基づいて完成されたものである。
【0019】
すなわち、本発明は下記の項1.〜項15.に掲げるものである:
項1. 測定周波数(ω)が0.1≦ω≦100(rad/s)のときに、下記の物性値要件を満たしていることを特徴とする嚥下食組成物:
(a)ゼロ周波数外挿値(η*K)が、5≦η*K≦60(Pa・s)、
(b)周波数依存性指数(η*n)が、−0.95≦η*n≦−0.7、
(c)5rad/sの複素粘性率(η* 5rad/s)が、2≦η* 5rad/s≦15(Pa・s)、及び
(d)50rad/sの複素粘性率(η* 50rad/s)が、0.2≦η* 50rad/s≦2.5(Pa・s)。
項2. 対象の食品組成物について、周波数:0.1≦ω≦100(rad/s)における複素粘性率(η*)を測定し、その結果をもとにして対象の食品組成物が下記の物性値要件を満たすか否かを判断することによって当該食品組成物が嚥下食組成物として適しているか否かを評価する方法:
(a)ゼロ周波数外挿値(η*K)が、5≦η*K≦60(Pa・s)、
(b)周波数依存性指数(η*n)が、−0.95≦η*n≦−0.7、
(c)周波数5rad/sの複素粘性率(η* 5rad/s)が、2≦η* 5rad/s≦15(Pa・s)、及び
(d)周波数50rad/sの複素粘性率(η* 50rad/s)が、0.2≦η* 50rad/s≦2.5(Pa・s)。
項3. 対象の食品組成物について周波数:0.1≦ω≦100(rad/s)における複素粘性率(η*)を測定し、その結果からゼロ周波数外挿値(η*K)、周波数依存性指数(η*n)、及び周波数5rad/s及び50rad/sにおける複素粘性率(η* 5ard/s, η* 50ard/s)を求め、下記の物性値要件を満たす食品組成物を選択する、嚥下食組成物の選別方法:
(a)ゼロ周波数外挿値(η*K)が、5≦η*K≦60(Pa・s)、
(b)周波数依存性指数(η*n)が、−0.95≦η*n≦−0.7、
(c)周波数5rad/sの複素粘性率(η* 5rad/s)が、2≦η* 5rad/s≦15(Pa ・s)、及び
(d)周波数50rad/sの複素粘性率(η* 50rad/s)が、0.2≦η* 50rad/s ≦2.5(Pa・s)。
項4. 項3に記載の選別方法によって対象の食品組成物から選別して取得される嚥下食組成物。
項5. 下記の工程(1)〜(3)を有する嚥下食組成物の処方及び/又は処理方法の決定方法:
(1) 対象とする食品組成物について、周波数:0.1≦ω≦100(rad/s)における複素粘性率(η*)を測定し、その結果からゼロ周波数外挿値(η*K)、周波数依存性指数(η*n)、及び周波数5rad/s及び50rad/sにおける複素粘性率(η* 5rad/s、η* 50rad/s)を求める工程、
(2) 最終食品組成物が下記の物性値要件を満たすように、食品組成物の処方及び/又は処理方法を変更して、食品組成物を調製する工程:
(a) ゼロ周波数外挿値(η*K)が、5≦η*K≦60(Pa・s)、
(b) 周波数依存性指数(η*n)が、−0.95≦η*n≦−0.7、
(c) 周波数5rad/sの複素粘性率(η* 5rad/s)が、2≦η* 5rad/s≦15(Pa・s)、及び
(d) 周波数50rad/sの複素粘性率(η* 50rad/s)が、0.2≦η* 50rad/s≦2.5(Pa・s)、並びに
(3) 上記物性値を満たす食品組成物の処方及び/又は処理方法から、嚥下食組成物の処方及び/又は処理方法を決定する工程。
項6. 項5に記載する方法で決定された処方及び/又は処理方法に従って、嚥下食組成物を製造する方法。
項7. 項6に記載する製造方法で得られる嚥下食組成物。
項8. 嚥下食調製のために、水または食品組成物に添加して用いられる嚥下食用補助剤であって、調製される嚥下食組成物が、測定周波数:0.1≦ω≦100(rad/s)の範囲で複素粘性率(η*)を測定して得られる物性値が下記の要件を備えるものである、嚥下食用補助剤:
(a)ゼロ周波数外挿値(η*K)が、5≦η*K≦60(Pa・s)、
(b)周波数依存性指数(η*n)が、−0.95≦η*n≦−0.7、
(c)周波数5rad/sの複素粘性率(η* 5rad/s)が、2≦η* 5rad/s≦15(Pa ・s)、及び
(d)周波数50rad/sの複素粘性率(η* 50rad/s)が、0.2≦η* 50rad/s ≦2.5(Pa・s)。
項9. ゲル化剤及び/又は増粘剤を含有するものである項8に記載の嚥下食用補助剤。
項10.ゲル化剤及び/又は増粘剤が、精製されているかまたは精製されていない、ジェランガム、ネイティブジェランガム、カラギーナン(κ、ι、λ、μ、ν、θ、ζ、π)、ファーセレラン、キサンタンガム、コンニャクマンナン、ローカストビーンガム、タラガム、サイリュームシードガム、アルギン酸及びその塩、ペクチン、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースおよびその塩、タマリンドシードガム、アゾバクタービネランジガム、コンドロイチン硫酸及びその塩、グアガム、アカシアガム、水溶性/水不溶性大豆多糖類、サバクヨモギシードガム、マクロホモプシスガム、澱粉、ゼラチン、ラムザンガム、寒天、カードラン、ウェランガム、プルラン、トラガントガム、カラヤガム、ガティガム、PGA、化工/加工デンプン、澱粉加水分解物、サイクロデキストリン、キチン、キトサン、卵白、乳清たんぱく、ラクトアルブミン、ラクトグロブリン、牛血清アルブミン及び大豆たんぱくよりなる群から選択される少なくとも1種である項9に記載の嚥下食用補助剤。
項11.下記の工程(1)〜(3)を含む嚥下食用補助剤の選別方法:
(1)嚥下食組成物を調製するために、水または対象食品組成物に被験物質を配合する工程、
(2)上記(1)で得られた組成物について、周波数:0.1≦ω≦100(rad/s)における複素粘性率(η*)を測定し、その結果からゼロ周波数外挿値(η*K)、周波数依存性指数(η*n)、及び周波数5rad/s及び50rad/sにおける複素粘性率(η* 5rad/d、η* 50rad/d)を求める工程、
(3)上記(1)で得られた組成物が下記の物性値要件を満たすような被験物質を選別する工程:
(a)ゼロ周波数外挿値(η*K)が、5≦η*K≦60(Pa・s)、
(b)周波数依存性指数(η*n)が、−0.95≦η*n≦−0.7、
(c)周波数5rad/sの複素粘性率(η* 5ard/s)が、2≦η* 5rad/s≦15(Pa・s)、及び
(d)周波数50rad/sの複素粘性率(η* 50rad/s)が、0.2≦η* 50rad/s≦2.5(Pa・s)。
項12.項11に記載の選別方法によって対象の被験物質から選別して取得される嚥下食用補助剤。
項13.下記の工程(1)〜(4)を含む、嚥下食用補助剤の処方及び/又は配合量の決定方法。
(1)嚥下食組成物を調製するために、水または対象食品組成物に被験物質を配合
する工程、
(2)上記(1)で得られた組成物について、周波数:0.1≦ω≦100(rad/s )における複素粘性率(η*)を測定し、その結果からゼロ周波数外挿値(η *K)、周波数依存性指数(η*n)、及び周波数5rad/s及び50rad/sに おける複素粘性率(η* 5rad/d、η* 50rad/d)を求める工程、
(3)上記(1)で得られる組成物が下記の物性値要件を満たすように、被験物質の 処方及び/又は配合量を変更して、食品組成物を調製する工程:
(a)ゼロ周波数外挿値(η*K)が、5≦η*K≦60(Pa・s)、
(b)周波数依存性指数(η*n)が、−0.95≦η*n≦−0.7、
(c)周波数5rad/sの複素粘性率(η* 5ard/s)が、2≦η* 5rad/s≦15(Pa・s)、
(d) 周波数50rad/sの複素粘性率(η* 50rad/s)が、0.2≦η* 50rad/s≦2.5(Pa・s)、及び
(4) 上記物性値を満たす食品組成物を調製するのに用いられる被験物質の処方及び/又は配合量から、嚥下食用補助剤の処方及び/又は配合量を決定する工程。
項14. 項13に記載する方法で決定された処方及び/又は配合量に従って、水または対象食品組成物に添加して嚥下食組成物を調製するために用いられる嚥下食用補助剤を製造する方法。
項15.項14の製造方法で製造される、水または対象食品組成物に添加して嚥下食組成物を調製するために用いられる嚥下食用補助剤。
【0020】
なお、本発明において、「嚥下食」または「嚥下食組成物」とは、咀嚼・嚥下機能の低下等により咀嚼及び/又は嚥下が困難となった患者や高齢者(本明細書において、「咀嚼・嚥下困難者」と総称する場合がある。)の摂食に適した、咀嚼・嚥下困難者用の食品を広く意味するものである。かかる「嚥下食」または「嚥下食組成物」には、例えば厚生労働省規定の咀嚼・嚥下困難者用食品(咀嚼を容易又は不要ならしめるとともに、適当な増粘剤を用いることによって嚥下を容易ならしめ、且つ、誤嚥を防ぐことを目的とするもの)、咀嚼・嚥下困難者に対する介護用または嚥下訓練用の食品、水分補給用ゲル状食品、栄養補給用ゲル状・ペースト状食品等が含まれる。
【0021】
また本発明において「嚥下食用補助剤」とは、上記の嚥下食を調製するために水や食品組成物に添加して用いられる食品添加剤である。「嚥下食用補助剤」には例えば粉末、顆粒、タブレット、カプセル、液体、ペースト等といった使用態様のものがいずれも含まれる。
【0022】
【発明の実施の形態】
(1)嚥下食組成物
咀嚼・嚥下機能が低下した者(咀嚼・嚥下困難者)にとって、摂食しやすい食品(嚥下食)として求められる要件として、一般に
(1) 組織が均一なこと
(2) 適当な粘度があって口腔内でまとまりやすいこと(均一な食塊を形成しやすいこと)
(3) 口腔や咽頭でべたつかないこと
(4) 硬すぎないこと
が知られている(手塚ら:静岡県静岡工業技術センター研究報告 Vol.42, 31-38 (1997))。
【0023】
本発明は、官能的側面から嚥下食に求められる上記要件と動的粘弾性との関連性を研究した結果、0.1〜100rad/sの周波数(ω)領域で測定される複素粘性率(η*)から算出される物性値(ゼロ周波数外挿値[η*K]、周波数依存性指数[η*n])、及び周波数5rad/s及び50rad/sのときの複素粘性率(η* 5rad/s、η* 50rad/s)〔以下、これらを総称して「物性値」ともいう〕が嚥下食としての上記官能的要件を充足するか否かの指標となり、かかる物性値(0.1〜100rad/sの周波数(ω)領域)が下記要件:
(a)ゼロ周波数外挿値(η*K)が、5≦η*K≦60(Pa・s)、
(b)周波数依存性指数(η*n)が、−0.95≦η*n≦−0.7、
(c)周波数5rad/sのときの複素粘性率(η* 5rad/s)が、2≦η* 5rad/s≦15(Pa・s)、
(d)周波数50rad/sのときの複素粘性率(η* 50rad/s)が、0.2≦η* 50rad/s≦2.5(Pa・s)
を満たす食品組成物が、嚥下食として適していることを見出したことに基づくものである。
【0024】
なお、拘束はされないが、食品組成物について0.1〜100rad/sの周波数(ω)領域における複素粘性率(η*)の測定から求められる上記(a)ゼロ周波数外挿値(η*K)、(b)周波数依存性指数(η*n)、及び(c),(d)周波数5rad/sと50 rad/sのときの複素粘性率(η* 5rad/s、η* 50rad/s)といった物性値にもとづいて、それぞれ(2) 適当な粘度があって口腔内でまとまりやすいこと(均一な食塊を形成しやすいこと)、(1)組織が均一なこと、並びに(3)口腔咽頭でべたつかず、(4)硬すぎないことといった、嚥下食に求められる要件を大まかに評価することができる。
【0025】
食品組成物の動的粘弾性値(物性値)は、例えば、ARES(Advanced Rheometric Expansion System)(レオメトリックサイエンティフィック社)を用いて、Takahashiの方法(Nihon Reoroji Gakkaishi Vol.27, 169-172 (1999))に従って測定することができる。
【0026】
具体的には、食品組成物の複素粘性率(η*)、ゼロ周波数外挿値(η*K)、及び周波数依存性指数(η*n)は、下記のようにして求めることができる:
直径50mmのプレート上に被験の食品組成物(試料)をのせた後、コーン型治具(直径50mm、角度0.04rad)により、コーン−プレート間距離(ギャップ)が0.05mmになるように試料を挟み込む。次いで、一定の周波数下で弾性率の歪み依存性を測定することによって予め求めておいた線形歪領域(弾性率が歪みによらず一定の値をとる領域:例えば1%)において、周波数0.1-100rad/sの範囲で複素粘性率の周波数分散を測定する。具体的には、周波数を0.1-100rad/sの間で段階的に変化させ(通常、0.1→100radへと上げていく)、当該領域におけるG’(貯蔵弾性率:歪みと同位相の弾性部分)とG"(損失弾性率:歪みとπ/2位相がずれた成分)を求め、複素粘性率(η*)=(G’2+G" 2)1/2/ω
の関係式から当該周波数領域(0.1-100rad/s)における複素粘性率(η*)を算出する。X軸に周波数(ω)及びY軸に複素粘性率(η*)をとってプロットしたデータ〔周波数(X)−複素粘性率(Y)プロット〕を累乗回帰し、関係式:Y=aXb〔式中、aは(η*K)、bは(η*n)を示す〕から、η*K、η*n、及び周波数5rad/s及び50rad/sにおける複素粘性率(η* 5rad/s、及びη* 50rad/s)を求める。なお、上記の測定データを両対数グラフ上にプロットすれば、回帰直線の傾きが周波数依存性指数(η*n)を、Y切片がゼロ周波数外挿値(η*K)となる。
【0027】
また、回帰式は最小二乗法によって求められる(参考文献 高橋、大越:日本家政学誌 Vol.50, 333-339 (1999)、早川毅:回帰分析の基礎、朝倉書店(1986))。
【0028】
このときの測定温度は特に制限されないが、通常は対象とする食品組成物が通常摂食(喫食)されるときの温度に設定されるのが好ましい。
【0029】
この場合、本発明の嚥下食組成物は、0.1〜100rad/sの周波数(ω)領域の複素粘性率(η*)から求められる(a)ゼロ周波数外挿値(η*K)が5〜60(Pa・s)、及び (b)周波数依存性指数(η*n)が−0.95〜−0.7であって、 (c)周波数5rad/sのときの複素粘性率(η* 5rad/s)が2〜15(Pa・s)、及び(d)周波数50rad/sのときの複素粘性率(η* 50rad/s)が0.2〜2.5(Pa・s)の条件を満たしていることが望ましい。好ましくは0.1〜100rad/sの周波数(ω)領域の複素粘性率(η*)から求められる(a)ゼロ周波数外挿値(η*K)が6〜55(Pa・s)、及び (b)周波数依存性指数(η*n)が−0.93〜−0.7であって、 (c)周波数5rad/sのときの複素粘性率(η* 5rad/s)が2.2〜12.5(Pa・s)及び(d)周波数50rad/sのときの複素粘性率(η* 50rad/s)が0.3〜2.25(Pa・s)の条件を;より好ましくは0.1〜100rad/sの周波数(ω)領域の複素粘性率(η*)から求められる(a)ゼロ周波数外挿値(η*K)が7〜50(Pa・s)、及び(b)周波数依存性指数(η*n)が−0.9〜−0.7であって、 (c)周波数5rad/sのときの複素粘性率(η* 5rad/s)が2.5〜10(Pa・s)、及び(d)周波数50rad/sのときの複素粘性率(η* 50rad/s)が0.4〜2(Pa・s)の条件を満たしていることが望ましい。
【0030】
(2)嚥下食適否の評価方法
本発明は、また官能的側面から嚥下食に求められる要件と動的粘弾性との関連性に基づいて得られた物性条件を指標として用いて、対象とする食品組成物が嚥下食として適しているかどうかを評価する方法を提供する。
【0031】
対象とする食品組成物について嚥下食適否を評価する本発明の方法は、評価する対象の食品組成物について、周波数:0.1≦ω≦100(rad/s)の領域における複素粘性率(η*)を測定し、得られた複素粘性率(η*)から、ゼロ周波数外挿値(η*K)、周波数依存性指数(η*n)、及び周波数5rad/sと50rad/sにおける複素粘性率(η* 5rad/s、η* 50rad/s)を算出し、これらが下記の物性値の要件:
(a)ゼロ周波数外挿値(η*K)が、5≦η*K≦60(Pa・s)、
(b)周波数依存性指数(η*n)が、−0.95≦η*K≦−0.7、
(c)周波数5rad/sにおける複素粘性率(η* 5rad/s)が、2≦η* 5rad/s≦15(Pa・s)、及び
(d)周波数50rad/sにおける複素粘性率(η* 50rad/s)が、0.2≦η* 50rad/s≦2.5(Pa・s)
を満たすか否かを基準として行われる。対象の食品組成物が上記(a)〜(d)の全ての要件を充足する場合は、当該食品組成物について嚥下食として適すると判断され、いずれか少なくとも1つを満たさない場合は適さない(否)として判断される。
【0032】
上記(a)〜(d)の好適な物性値範囲としては:
(a')ゼロ周波数外挿値(η*K)が、6≦η*K≦55(Pa・s)、
(b')周波数依存性指数(η*n)が、−0.93≦η*K≦−0.7、
(c')周波数5rad/sにおける複素粘性率(η* 5rad/s)が、2.2≦η* 5rad/s≦12.5(Pa・s)、及び
(d')周波数50rad/sにおける複素粘性率(η* 50rad/s)が、0.3≦η* 50rad/s≦2.25(Pa・s)
を、またより好適な物性値範囲としては:
(a")ゼロ周波数外挿値(η*K)が、7≦η*K≦50(Pa・s)、
(b")周波数依存性指数(η*n)が、−0.9≦η*K≦−0.7、
(c")周波数5rad/sにおける複素粘性率(η* 5rad/s)が、2.5≦η* 5rad/s≦10(Pa・s)、
(d")周波数50rad/sにおける複素粘性率(η* 50rad/s)が、0.4≦η* 50rad/s≦2(Pa・s)
を挙げることができる。
【0033】
なお、評価する対象の食品組成物は、咀嚼・嚥下困難者に適用されることを予定した食品組成物であればよく、その素材、用途および食品の種類などによって特に制限されるものではない。具体的には、食品組成物としては、例えばアイスクリーム、アイスミルク、ラクトアイス、シャーベット、氷菓等の冷菓類;牛乳、乳飲料、乳酸菌飲料、果汁入り清涼飲料、炭酸飲料、果汁飲料、菜汁飲料、茶飲料、イオン飲料、スポーツ飲料、機能性飲料、ビタミン補給飲料、栄養補給バランス飲料、粉末飲料等の飲料類;カスタードプリン,ミルクプリン及び果汁入りプリン等のプリン類、ゼリー、ババロア及びヨーグルト等のデザート類;チューインガムや風船ガム等のガム類(板ガム、糖衣状粒ガム);マーブルチョコレート等のコーティングチョコレートの他、イチゴチョコレート、ブルーベリーチョコレート及びメロンチョコレート等の風味を付加したチョコレート等のチョコレート類;ソフトキャンディー(キャラメル、ヌガー、グミキャンディー、マシュマロ等を含む)、タフィ等のキャラメル類;ソフトビスケット、ソフトクッキー等の菓子類;セパレートドレッシングやノンオイルドレッシングなどのドレッシング、ケチャップ、たれ、ソースなどのソース類;ストロベリージャム、ブルーベリージャム、マーマレード、リンゴジャム、杏ジャム、プレザーブ等のジャム類;赤ワイン等の果実酒;シロップ漬のチェリー、アンズ、リンゴ、イチゴ等の加工用果実;ハム、ソーセージ、焼き豚等の畜肉加工品;魚肉ハム、魚肉ソーセージ、魚肉すり身、蒲鉾、竹輪、はんぺん、薩摩揚げ、伊達巻き、鯨ベーコン等の水産練り製品;うどん、冷麦、そうめん、ソバ、中華そば、スパゲッティ、マカロニ、ビーフン、はるさめ及びワンタン等の麺類;コンソメスープ、ポタージュスープ、クリームスープ、中華スープ等の各種スープ、味噌汁、清汁、シチュウ、カレー、グラタンなどのスープ類;その他、各種総菜及び蒲鉾、麩、田麩等、種々の食品及びこれらの食品を更に加工した、加工食品等も挙げることができる。また、このような一般食品に加えて、蛋白質・リン・カリウム調整食品、塩分調整食品、油脂調整食品、整腸作用食品、カルシウム・鉄・ビタミン強化食品、低アレルギー食品、濃厚流動食、ミキサー食、及びキザミ食等の特殊食品や治療食を挙げることができる。
【0034】
なお、これらの食品組成物には、通常の素材に加えてゲル化剤及び/又は増粘剤などの食品添加剤または嚥下食用補助剤を配合することにより、咀嚼・嚥下困難者向けに調製された食品組成物も包含される。
【0035】
動的粘弾性値(物性値)〔複素粘性率(η*)、ゼロ周波数外挿値(η*K)、周波数依存性指数(η*n)〕は、例えば、ARES(Advanced Rheometric Expansion System)(レオメトリックサイエンティフィック社)を用いて、Takahashiの方法(Nihon Reoroji Gakkaishi Vol.27, 169-172 (1999))に従って測定することができる。具体的には、上記(1)において記載する方法に従って測定することができる。
【0036】
(3)嚥下食組成物の選別方法、及び該方法によって得られる食品組成物
本発明は、また官能的側面から嚥下食に求められる要件と動的粘弾性との関連性に基づいて得られた物性条件を指標として用いて、食品組成物の中から嚥下食に適している咀嚼・嚥下困難者用の食品組成物(嚥下食組成物)を選別する方法を提供する。
【0037】
対象とする食品組成物(被験食品組成物)の中から嚥下食組成物を選別する本発明の方法は、被験食品組成物について、周波数:0.1≦ω≦100(rad/s)の領域における複素粘性率(η*)を測定し、得られた複素粘性率(η*)から、ゼロ周波数外挿値(η*K)、周波数依存性指数(η*n)、及び周波数5rad/sと50rad/sにおける複素粘性率(η* 5rad/s、η* 50rad/s)を算出し、これらが下記の物性値の要件:
(a)ゼロ周波数外挿値(η*K)が、5≦η*K≦60(Pa・s)、
(b)周波数依存性指数(η*n)が、−0.95≦η*K≦−0.7、
(c)周波数5rad/sにおける複素粘性率(η* 5rad/s)が、2≦η* 5rad/s≦15(Pa・s)、
(d)周波数50rad/sにおける複素粘性率(η* 50rad/s)が、0.2≦η* 50rad/s≦2.5(Pa・s)
を満たすか否かを基準として行われる。被験食品組成物の中から上記(a)〜(d)の全ての要件を充足する組成物を嚥下食組成物として選別する。
【0038】
上記(a)〜(d)の好適な物性値の範囲としては:
(a')ゼロ周波数外挿値(η*K)が、6≦η*K≦55(Pa・s)、
(b')周波数依存性指数(η*n)が、−0.93≦η*K≦−0.7、
(c')周波数5rad/sにおける複素粘性率(η* 5rad/s)が、2.2≦η* 5rad/s≦12.5(Pa・s)、
(d')周波数50rad/sにおける複素粘性率(η* 50rad/s)が、0.3≦η* 50rad/s≦2.25(Pa・s)
を、またより好適な物性値範囲としては:
(a")ゼロ周波数外挿値(η*K)が、7≦η*K≦50(Pa・s)、
(b")周波数依存性指数(η*n)が、−0.9≦η*K≦−0.7、
(c")周波数5rad/sにおける複素粘性率(η* 5rad/s)が、2.5≦η* 5rad/s≦10(Pa・s)、
(d")周波数50rad/sにおける複素粘性率(η* 50rad/s)が、0.4≦η* 50rad/s≦2(Pa・s)
を挙げることができる。
【0039】
なお、選別する対象の食品組成物(被験食品組成物)は、咀嚼・嚥下困難者に適用されることを予定または求められる食品組成物であればよく、その素材、用途および食品の種類などによって特に制限されるものではない。具体的には、被験食品組成物としては、例えばアイスクリーム、アイスミルク、ラクトアイス、シャーベット、氷菓等の冷菓類;牛乳、乳飲料、乳酸菌飲料、果汁入り清涼飲料、炭酸飲料、果汁飲料、菜汁飲料、茶飲料、イオン飲料、スポーツ飲料、機能性飲料、ビタミン補給飲料、栄養補給バランス飲料、粉末飲料等の飲料類;カスタードプリン,ミルクプリン及び果汁入りプリン等のプリン類、ゼリー、ババロア及びヨーグルト等のデザート類;チューインガムや風船ガム等のガム類(板ガム、糖衣状粒ガム);マーブルチョコレート等のコーティングチョコレートの他、イチゴチョコレート、ブルーベリーチョコレート及びメロンチョコレート等の風味を付加したチョコレート等のチョコレート類;ソフトキャンディー(キャラメル、ヌガー、グミキャンディー、マシュマロ等を含む)、タフィ等のキャラメル類;ソフトビスケット、ソフトクッキー等の菓子類;セパレートドレッシングやノンオイルドレッシングなどのドレッシング、ケチャップ、たれ、ソースなどのソース類;ストロベリージャム、ブルーベリージャム、マーマレード、リンゴジャム、杏ジャム、プレザーブ等のジャム類;赤ワイン等の果実酒;シロップ漬のチェリー、アンズ、リンゴ、イチゴ等の加工用果実;ハム、ソーセージ、焼き豚等の畜肉加工品;魚肉ハム、魚肉ソーセージ、魚肉すり身、蒲鉾、竹輪、はんぺん、薩摩揚げ、伊達巻き、鯨ベーコン等の水産練り製品;うどん、冷麦、そうめん、ソバ、中華そば、スパゲッティ、マカロニ、ビーフン、はるさめ及びワンタン等の麺類;コンソメスープ、ポタージュスープ、クリームスープ、中華スープ等の各種スープ、味噌汁、清汁、シチュウ、カレー、グラタンなどのスープ類;その他、各種総菜及び蒲鉾、麩、田麩等、種々の食品及びこれらの食品を更に加工した、加工食品等も挙げることができる。また、このような一般食品に加えて、蛋白質・リン・カリウム調整食品、塩分調整食品、油脂調整食品、整腸作用食品、カルシウム・鉄・ビタミン強化食品、低アレルギー食品、濃厚流動食、ミキサー食、及びキザミ食等の特殊食品や治療食を挙げることができる。
【0040】
なお、これらの被験食品組成物には、通常の素材に加えてゲル化剤及び/又は増粘剤などの食品添加剤または嚥下食用補助剤を配合することにより、咀嚼・嚥下困難者向けに調製された食品組成物も包含される。
【0041】
被験食品組成物の動的粘弾性値(物性値)〔複素粘性率(η*)、ゼロ周波数外挿値(η*K)、周波数依存性指数(η*n)〕は、例えば、ARES(Advanced Rheometric Expansion System)(レオメトリックサイエンティフィック社)を用いて、Takahashiの方法(Nihon Reoroji Gakkaishi Vol.27, 169-172 (1999))に従って測定することができる。具体的には、上記(1)において記載する方法に従って測定することができる。
【0042】
本発明はまた、上記の選別方法によって被験食品組成物の中から選別された食品組成物を嚥下食用組成物(咀嚼・嚥下困難者用の食品組成物)として提供するものである。本発明の範囲には、被験食品組成物の中から直接選別された食品組成物(嚥下食用組成物)だけでなく、嚥下食用組成物として用いる以上、当該選別された食品組成物と同一組成物を有する食品組成物も含まれる。
【0043】
(4)嚥下食組成物の処方及び/又は処理方法の決定方法
また本発明は、官能的側面から嚥下食に求められる要件と動的粘弾性との関連性に基づいて得られた物性条件を指標として用いて、嚥下食組成物の処方及び/又は処理方法を決定する方法を提供するものである。なお、ここで処方には素材の選択とその組合せ、配合割合等が含まれ、また処理方法には嚥下食組成物を調製するために用いられる、例えば各成分の配合順序、加熱処理の有無またはその温度等の各種の処理条件が含まれる。
【0044】
本発明の嚥下食組成物の処方及び/又は処理方法は、まず、対象とする食品組成物について周波数:0.1≦ω≦100(rad/s)の領域における複素粘性率(η*)を測定し、得られた結果からゼロ周波数外挿値(η*K)、周波数依存性指数(η*n)、及び周波数5rad/sと50rad/sにおける複素粘性率(η* 5rad/s、η* 50rad/s)を算出し、それらが下記の要件:
(a)ゼロ周波数外挿値(η*K)が、5≦η*K≦60(Pa・s)、
(b)周波数依存性指数(η*n)が、−0.95≦η*n≦−0.7、
(c)周波数5rad/sにおける複素粘性率(η* 5rad/s)が、2≦η* 5rad/s≦15(Pa・s)、及び
(d)周波数50rad/sにおける複素粘性率(η* 50rad/s)が、0.2≦η* 50rad/s≦2.5(Pa・s)
を満たすように処方及び/又加熱等の処理方法を変更して、嚥下食に適した食品組成物を調製する。そして、当該食品組成物の処方及び/又は処理方法から、嚥下食組成物の処方及び/又は処理方法を決定する。
【0045】
この場合、対象とする食品組成物について処方及び/又処理方法をモディファイする方法の他、複数の食品組成物を対象として物性値を測定して、これらの組成物の中から上記(a)〜(d)の物性値要件を満たす食品組成物を選別し、当該選別された食品組成物の処方及び/又処理方法から、嚥下食に適した食品組成物の処方及び/又処理方法を決定することもできる。
【0046】
上記(a)〜(d)の好適な物性値範囲としては:
(a')ゼロ周波数外挿値(η*K)が、6≦η*K≦55(Pa・s)、
(b')周波数依存性指数(η*n)が、−0.93≦η*K≦−0.7、
(c')周波数5rad/sにおける複素粘性率(η* 5rad/s)が、2.2≦η* 5rad/s≦12.5(Pa・s)、
(d')周波数50rad/sにおける複素粘性率(η* 50rad/s)が、0.3≦η* 50rad/s≦2.25(Pa・s)
を、またより好適な物性値範囲としては:
(a")ゼロ周波数外挿値(η*K)が、7≦η*K≦50(Pa・s)、
(b")周波数依存性指数(η*n)が、−0.9≦η*K≦−0.7、
(c")周波数5rad/sにおける複素粘性率(η* 5rad/s)が、2.5≦η* 5rad/s≦10(Pa・s)、
(d")周波数50rad/sにおける複素粘性率(η* 50rad/s)が、0.4≦η* 50rad/s≦2(Pa・s)
を挙げることができる。
【0047】
なお、処方する対象の食品組成物は、咀嚼・嚥下困難者に適用されることを予定または希望する食品組成物であればよく、その素材、用途および食品の種類などによって特に制限されるものではない。具体的には、食品組成物としては、例えばアイスクリーム、アイスミルク、ラクトアイス、シャーベット、氷菓等の冷菓類;牛乳、乳飲料、乳酸菌飲料、果汁入り清涼飲料、炭酸飲料、果汁飲料、菜汁飲料、茶飲料、イオン飲料、スポーツ飲料、機能性飲料、ビタミン補給飲料、栄養補給バランス飲料、粉末飲料等の飲料類;カスタードプリン,ミルクプリン,及び果汁入りプリン等のプリン類、ゼリー、ババロア及びヨーグルト等のデザート類;チューインガムや風船ガム等のガム類(板ガム、糖衣状粒ガム);マーブルチョコレート等のコーティングチョコレートの他、イチゴチョコレート、ブルーベリーチョコレート及びメロンチョコレート等の風味を付加したチョコレート等のチョコレート類;ソフトキャンディー(キャラメル、ヌガー、グミキャンディー、マシュマロ等を含む)、タフィ等のキャラメル類;ソフトビスケット、ソフトクッキー等の菓子類;セパレートドレッシングやノンオイルドレッシング等のドレッシング、ケチャップ、たれ、ソースなどのソース類;ストロベリージャム、ブルーベリージャム、マーマレード、リンゴジャム、杏ジャム、プレザーブ等のジャム類;赤ワイン等の果実酒;シロップ漬のチェリー、アンズ、リンゴ、イチゴ等の加工用果実;ハム、ソーセージ、焼き豚等の畜肉加工品;魚肉ハム、魚肉ソーセージ、魚肉すり身、蒲鉾、竹輪、はんぺん、薩摩揚げ、伊達巻き、鯨ベーコン等の水産練り製品;うどん、冷麦、そうめん、ソバ、中華そば、スパゲッティ、マカロニ、ビーフン、はるさめ及びワンタン等の麺類;コンソメスープ、ポタージュスープ、クリームスープ、中華スープ等の各種スープ、味噌汁、清汁、シチュウ、カレー、グラタンなどのスープ類;その他、各種総菜及び蒲鉾、麩、田麩等の種々の食品及びこれらの食品を更に加工した加工食品等も挙げることができる。また、このような一般食品に加えて、蛋白質・リン・カリウム調整食品、塩分調整食品、油脂調整食品、整腸作用食品、カルシウム・鉄・ビタミン強化食品、低アレルギー食品、濃厚流動食、ミキサー食、及びキザミ食等の特殊食品や治療食を挙げることができる。
【0048】
なお、これらの食品組成物には、通常の素材に加えてゲル化剤及び/又は増粘剤などの食品添加剤または嚥下食用補助剤を配合することにより、咀嚼・嚥下困難者向けに調製される食品組成物も包含される。
【0049】
また、ゲル化剤及び/又は増粘剤などの食品添加剤または嚥下食用補助剤を用いて咀嚼・嚥下困難者用の食品組成物を調製する場合、当該食品組成物に配合される食品添加剤や嚥下食用補助剤の処方及び配合割合の決定も本発明の範疇に含まれる。なお、嚥下食用補助剤としては、広くゲル化剤及び/又は増粘剤が利用されており、かかるゲル化剤及び/又は増粘剤としては、ジェランガム、ネイティブジェランガム、カラギーナン(κ、ι、λ、μ、ν、θ、ζ、π)、ファーセレラン、キサンタンガム、コンニャクマンナン、ローカストビーンガム、タラガム、サイリュームシードガム、アルギン酸及びその塩、ペクチン、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースおよびその塩、タマリンドシードガム、アゾバクタービネランジガム、コンドロイチン硫酸及びその塩、グアーガム、アカシアガム、水溶性/水不溶性大豆多糖類、サバクヨモギシードガム、マクロホモプシスガム、澱粉、ゼラチン、ラムザンガム、寒天、カードラン、ウェランガム、プルラン、トラガントガム、カラヤガム、ガティガム、PGA、化工/加工デンプン、澱粉加水分解物、サイクロデキストリン、キチン、キトサン、卵白、乳清たんぱく、ラクトアルブミン、ラクトグロブリン、牛血清アルブミン及び大豆たんぱく等を挙げることができ、これらのゲル化剤及び/又は増粘剤は、精製したものでもよいし、未精製であってもよい。
【0050】
対象とする食品組成物の物性値(0.1≦ω≦100(rad/s)の領域における複素粘性率(η*)、ゼロ周波数外挿値(η*K)、周波数依存性指数(η*n)、及び周波数5rad/sと50rad/sにおける複素粘性率(η* 5rad/s、η* 50rad/s))は、例えば、ARES(Advanced Rheometric Expansion System)(レオメトリックサイエンティフィック社)を用いて、Takahashiの方法(Nihon Reoroji Gakkaishi Vol.27, 169-172 (1999))に従って測定することができる。これらの物性の具体的な測定方法及び算出方法は、上記(1)において記載した通りである。
【0051】
(5)嚥下食組成物の製造方法
嚥下食組成物は、上記方法で一旦処方(素材、組成及びその配合割合)が決定すると、次からはその処方に従って、各食品組成物の常法に従って工業的に製造することができる。本発明はかかる上記方法によって決定された処方に従って、嚥下食組成物を製造する方法を提供するものである。
【0052】
なお、嚥下食組成物の製造方法は、決定された処方に従う以外は、対象とする食品の種類や用途に応じて、常法に従って実施することができる。
【0053】
本発明の嚥下食組成物の製造方法には、下記(1)〜(4)の工程を有する方法が含まれる。
(1)食品組成物を調製する工程、
(2) 上記食品組成物について、周波数:0.1≦ω≦100(rad/s)における複素粘性率(η*)を測定し、その結果からゼロ周波数外挿値(η*K)、周波数依存性指数(η*n)、並びに周波数5rad/s及び50rad/sにおける複素粘性率(η* 5rad/s、η* 50rad/s)を求める工程、
(3) 下記の物性値の要件を満たすように、上記食品組成物の配合組成及び/又は加熱等の処理方法を変更しする工程:
(a) ゼロ周波数外挿値(η*K)が、5≦η*K≦60(Pa・s)、
(b) 周波数依存性指数(η*n)が、−0.95≦η*n≦−0.7、
(c) 周波数5rad/sの複素粘性率(η* 5rad/s)が、2≦η* 5rad/s≦15(Pa・s)、及び
(d) 周波数50rad/sの複素粘性率(η* 50rad/s)が、0.2≦η* 50rad/s≦2.5(Pa・s)、及び
(4) 上記物性値要件を満たす食品組成物の配合組成及び/又は処理方法に基づいて、嚥下食組成物を調製する工程。
上記(a)〜(d)の好適な物性値範囲としては:
(a') ゼロ周波数外挿値(η*K)が、6≦η*K≦55(Pa・s)、
(b') 周波数依存性指数(η*n)が、−0.93≦η*K≦−0.7、
(c') 周波数5rad/sにおける複素粘性率(η* 5rad/s)が、2.2≦η* 5rad/s≦12.5(Pa・s)、及び
(d') 周波数50rad/sにおける複素粘性率(η* 50rad/s)が、0.3≦η* 50rad/s≦2.25(Pa・s)
を、またより好適な物性値範囲としては:
(a") ゼロ周波数外挿値(η*K)が、7≦η*K≦50(Pa・s)、
(b") 周波数依存性指数(η*n)が、−0.9≦η*K≦−0.7、
(c") 周波数5rad/sにおける複素粘性率(η* 5rad/s)が、2.5≦η* 5rad/s≦10(Pa・s)、及び
(d") 周波数50rad/sにおける複素粘性率(η* 50rad/s)が、0.4≦η* 50rad/s≦2(Pa・s)
を挙げることができる。
【0054】
対象食品組成物としては、上記(4)において具体的に記載する食品組成物を挙げることができる。
【0055】
(6)嚥下食用補助剤
本発明は、水または食品組成物に添加することによって簡単に嚥下食が調製できる嚥下食用補助剤を提供する。
【0056】
本発明が対象とする嚥下食用補助剤は、それを水または食品組成物に添加して調製される嚥下食(嚥下食組成物)が、周波数:0.1≦ω≦100(rad/s)の範囲で複素粘性率(η*)を測定して得られる物性が下記の物性値の要件を備えるものである:
(a) ゼロ周波数外挿値(η*K)が、5≦η*K≦60(Pa・s)、
(b) 周波数依存性指数(η*n)が、−0.95≦η*n≦−0.7、
(c) 周波数5rad/sの複素粘性率(η* 5rad/s)が、2≦η* 5rad/s≦15(Pa・s)、及び
(d) 周波数50rad/sの複素粘性率(η* 50rad/s)が、0.2≦η* 50rad/s≦2.5(Pa・s)。
【0057】
上記(a)〜(d)の好適な物性値範囲としては:
(a') ゼロ周波数外挿値(η*K)が、6≦η*K≦55(Pa・s)、
(b') 周波数依存性指数(η*n)が、−0.93≦η*K≦−0.7、
(c') 周波数5rad/sにおける複素粘性率(η* 5rad/s)が、2.2≦η* 5rad/s≦12.5(Pa・s)、及び
(d') 周波数50rad/sにおける複素粘性率(η* 50rad/s)が、0.3≦η* 50rad/s≦2.25(Pa・s)を、
またより好適な物性値範囲としては:
(a") ゼロ周波数外挿値(η*K)が、7≦η*K≦50(Pa・s)、
(b") 周波数依存性指数(η*n)が、−0.9≦η*K≦−0.7、
(c") 周波数5rad/sにおける複素粘性率(η* 5rad/s)が、2.5≦η* 5rad/s≦10(Pa・s)、及び
(d") 周波数50rad/sにおける複素粘性率(η* 50rad/s)が、0.4≦η* 50rad/s≦2(Pa・s)
を挙げることができる。
【0058】
具体的には、嚥下食用補助剤としてはゲル化剤及び/又は増粘剤を含有する組成物を挙げることができる。
【0059】
ここでゲル化剤及び/又は増粘剤としては、例えば、精製されているかまたは精製されていないジェランガム、ネイティブジェランガム、カラギーナン(κ、ι、λ、μ、ν、θ、ζ、π)、ファーセレラン、キサンタンガム、コンニャクマンナン、ローカストビーンガム、タラガム、サイリュームシードガム、アルギン酸及びその塩、ペクチン、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースおよびその塩、タマリンドシードガム、アゾバクタービネランジガム、コンドロイチン硫酸及びその塩、グアガム、アカシアガム、水溶性/水不溶性大豆多糖類、サバクヨモギシードガム、マクロホモプシスガム、澱粉、ゼラチン、ラムザンガム、寒天、カードラン、ウェランガム、プルラン、トラガントガム、カラヤガム、ガティガム、PGA、化工/加工デンプン、澱粉加水分解物、サイクロデキストリン、キチン、キトサン、卵白、乳清たんぱく、ラクトアルブミン、ラクトグロブリン、牛血清アルブミン及び大豆たんぱく等のたんぱく素材等を挙げることができる。これらは1種単独で使用してもまた2種以上を任意に組み合わせて使用することもできる。好ましくは、キサンタンガム、ネイティブジェランガム、タマリンドシードガム、ローカストビーンガム、グアガム、タラガム、澱粉であり、組み合せて使用する場合の好適な態様としては、キサンタンガム+タマリンドシードガム、キサンタンガム+グアガム、キサンタンガム+タラガム、キサンタンガム+ローカストビーンガム、澱粉+キサンタンガム、澱粉+グアガム、澱粉+タラガム、澱粉+ローカストビーンガム、ネイティブジェランガム+ιカラギーナンを例示することができるが、特に限定されるものではない。より好ましい組合せ態様は、キサンタンガム+グアガム、キサンタンガム+タマリンドシードガム、澱粉+キサンタンガム、及び澱粉+グアガムである。
【0060】
いずれも組み合わせの比率は95:5〜5:95、好ましくは90:10〜10:90、より好ましくは85:15〜15:85であるか、または10:90〜90:10、好ましくは20:80〜80:20、より好ましくは30:70〜70:30である。
【0061】
より具体的には、これらのゲル化剤及び/又は増粘剤を組み合わせて使用する場合の各ゲル化剤及び/又は増粘剤の配合割合(重量比)として、例えばキサンタンガムとタマリンドシードガムとを組み合わせる場合95:5〜5:95、好ましくは90:10〜10:90、より好ましくは85:15〜15:85であり、例えば、ネイティブジェランガムとιカラギーナンとを組み合わせる場合10:90〜90:10、好ましくは20:80〜80:20、より好ましくは30:70〜70:30を例示することができる。
【0062】
また、本発明の嚥下食用補助剤は、上記物性を充足し本発明の効果を妨げないことを限度として、上記ゲル化剤及び/又は増粘剤に加えて、さらにビタミン・ミネラル等の各種栄養補強素材、ショ糖、液糖、果糖、オリゴ糖の糖類、エリスリトール、マルチトール等の糖アルコール類、スクラロース、アスパルテーム、ネオテーム、アリテーム、ステビア、ソーマチン等の高甘度甘味料、乳糖等の賦型剤等を含有していてもよい。
【0063】
本発明の嚥下食用補助剤は、その形状を特に制限されることなく、液状(例えば、液体、懸濁液、乳濁液、ゾルやペースト等の半固体状)や固形状(例えば、粉末、錠剤(タブレット)、丸剤、カプセル、顆粒など)の任意の形状に調製することができる。かかる調製方法も特に制限されず、例えば、▲1▼複数の素材を粉体で混合する方法、▲2▼複数の素材を水中で加熱することによって溶解、均一分散させ液状とする方法、▲3▼別々に溶液を調製し、使用時に混合する方法、▲4▼溶液化したものをスプレードライ等を利用して分散粉末化する方法、▲5▼複数の素材を粉体で混合し、プレス機で圧縮することにより打錠し錠剤状にする方法、▲6▼溶液化したものを造粒機により、顆粒化して使用する方法等を例示することができる。
【0064】
かくして調製される本発明の嚥下食用補助剤は、その使用方法を特に制限するものではなく、適用する食品組成物や調製する嚥下食組成物の種類及びその性状や形状に応じて適宜調整して使用することができる。例えば、適用する食品組成物が、水や比較的粘度の低い液状の食品(液体食品)である場合は、本発明の嚥下食用補助剤を該食品組成物に攪拌しながら直接添加し、混合することによって嚥下食組成物(嚥下食)を調製することができる。また、適用する食品組成物が例えばペースト状を有した半流動体食品である場合は、該食品の半流動化工程で、または半流動化状態になった食品に、本発明の嚥下食用補助剤を攪拌しながら添加し混合することによって嚥下食用組成物(嚥下食)を調製することができる。後者の場合、具体的には、半流動体食品の調製において固形食品をミキサーにかける際に本発明の嚥下食用補助剤を添加混合するか、あるいはミキサーを用いてペースト化した食品に本発明の嚥下食用補助剤を添加混合する方法を例示することができる。
【0065】
なお、本発明の嚥下食用補助剤が粉末状を有する場合、その対象食品組成物への適用方法としては、限定はされないが、粉末状の嚥下食用補助剤に水分を加えて液状に調製したものを対象食品組成物に配合する方法、粉末状の嚥下食用補助剤を対象食品組成物の一成分であるだし汁や煮汁中に溶いて使用する方法を例示することができる。
【0066】
例えば、キサンタンガム、タマリンドシードガム、及びローカストビーンガムから調製される粉末状の嚥下食用補助剤を用いて、嚥下用のお茶(液体食品)を調製する方法としては、例えばキサンタンガム、タマリンドシードガム、及びローカストビーンガムを重量比でそれぞれ75〜85部、10〜20部、及び10〜20部、好ましくは75〜80部、10〜15部、及び10〜15部、より好ましくは78:11:11(重量比)の割合で粉体混合し粉末状の嚥下食用補助剤とし、これをお茶に撹拌しながら最終濃度が1重量%以上になるように添加する方法を例示することができる。
【0067】
なお、このとき、嚥下食用補助剤を配合するお茶は冷えていても暖かくてもよい。かかる粉末状嚥下食用補助剤をお茶に添加すると直ちに粘度発現し、良好な飲み心地で嚥下困難者にも飲みやすい増粘したお茶(咀嚼・嚥下困難者用のお茶)ができる。
【0068】
(7)嚥下食用補助剤の選別方法、及び該方法によって得られる嚥下食用補助剤
本発明は、また水または食品組成物に添加することによって簡単に嚥下食が調製できる嚥下食用補助剤を、調製する嚥下食の物性値を指標として用いて、食品組成物の中から選別する方法を提供する。
【0069】
対象とする被験物質(被験食品組成物)の中から嚥下食用補助剤を選別する本発明の方法は、下記の工程を経ることによって実施することができる:
(1) 嚥下食組成物を調製するために、水や食品組成物に被験物質を配合する工
程、
(2) 上記(1)で得られる組成物について、周波数:0.1≦ω≦100(rad/s)の領域における複素粘性率(η*)を測定し、得られた結果からゼロ周波数外挿値(η*K)、周波数依存性指数(η*n)、及び周波数5rad/sと50rad/sにおける複素粘性率(η* 5rad/s、η* 50rad/s)を求める工程、及び
(3) 上記(1)で得られる食品組成物が下記(a)〜(d)の物性値の要件を満たすような被験物質を選別する工程:
(a) ゼロ周波数外挿値(η*K)が、5≦η*K≦60(Pa・s)、
(b) 周波数依存性指数(η*n)が、−0.95≦η*n≦−0.7、
(c) 周波数5rad/sにおける複素粘性率(η* 5rad/s)が、2≦η* 5rad/s≦15(Pa・s)、及び
(d) 周波数50rad/sにおける複素粘性率(η* 50rad/s)が、0.2≦η* 50rad/s≦2.5(Pa・s)。
【0070】
斯くして上記(a)〜(d)の全ての物性値要件を充足する被験物質(食品組成物)を選択することにより、嚥下食用補助剤が取得できる。
【0071】
上記(a)〜(d)の好適な物性値の範囲としては:
(a')ゼロ周波数外挿値(η*K)が、6≦η*K≦55(Pa・s)、
(b')周波数依存性指数(η*n)が、−0.93≦η*K≦−0.7、
(c')周波数5rad/sにおける複素粘性率(η* 5rad/s)が、2.2≦η* 5rad/s≦12.5(Pa・s)、
(d')周波数50rad/sにおける複素粘性率(η* 50rad/s)が、0.3≦η* 50rad/s≦2.25(Pa・s)
を、またより好適な物性値範囲としては:
(a")ゼロ周波数外挿値(η*K)が、7≦η*K≦50(Pa・s)、
(b")周波数依存性指数(η*n)が、−0.9≦η*K≦−0.7、
(c")周波数5rad/sにおける複素粘性率(η* 5rad/s)が、2.5≦η* 5rad/s≦10(Pa・s)、
(d")周波数50rad/sにおける複素粘性率(η* 50rad/s)が、0.4≦η* 50rad/s≦2(Pa・s)
を挙げることができる。
【0072】
なお、選別する対象の被験物質(被験食品組成物)は、水または対象とする食品組成物に添加されることによって、当該水または食品組成物が咀嚼・嚥下困難者に適した食品組成物(嚥下食組成物)として調製できるものであればよく、その素材や用途等によって特に制限されるものではない。
【0073】
一例を挙げると、ゲル化剤及び/又は増粘剤を一部または全て含む組成物である。ここでゲル化剤及び/又は増粘剤としては、例えば、精製されているかまたは精製されていないジェランガム、ネイティブジェランガム、カラギーナン(κ、ι、λ、μ、ν、θ、ζ、π)、ファーセレラン、キサンタンガム、コンニャクマンナン、ローカストビーンガム、タラガム、サイリュームシードガム、アルギン酸及びその塩、ペクチン、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースおよびその塩、タマリンドシードガム、アゾバクタービネランジガム、コンドロイチン硫酸及びその塩、グアガム、アカシアガム、水溶性/水不溶性大豆多糖類、サバクヨモギシードガム、マクロホモプシスガム、澱粉、ゼラチン、ラムザンガム、寒天、カードラン、ウェランガム、プルラン、トラガントガム、カラヤガム、ガティガム、PGA、化工/加工デンプン、澱粉加水分解物、サイクロデキストリン、キチン、キトサン、卵白、乳清たんぱく、ラクトアルブミン、ラクトグロブリン、牛血清アルブミン及び大豆たんぱく等のたんぱく素材等を挙げることができる。これらは1種単独で使用してもまた2種以上を任意に組み合わせて使用することもできる。好ましくは、キサンタンガム、ネイティブジェランガム、タマリンドシードガム、ローカストビーンガム、グアガム、タラガム、澱粉であり、組み合せて使用する場合の好適な態様としては、キサンタンガム+タマリンドシードガム、キサンタンガム+グアガム、キサンタンガム+タラガム、キサンタンガム+ローカストビーンガム、澱粉+キサンタンガム、澱粉+グアガム、澱粉+タラガム、澱粉+ローカストビーンガム、ネイティブジェランガム+ιカラギーナンを例示することができるが、特に限定されるものではない。より好ましい組み合わせ態様は、キサンタンガム+グアガム、キサンタンガム+タマリンドシードガム、澱粉+キサンタンガム、及び澱粉+グアガムである。
【0074】
いずれも組み合わせの比率は95:5〜5:95、好ましくは90:10〜10:90、より好ましくは85:15〜15:85であるか、または10:90〜90:10、好ましくは20:80〜80:20、より好ましくは30:70〜70:30である。
【0075】
より具体的には、これらのゲル化剤及び/又は増粘剤を組み合わせて使用する場合の各ゲル化剤及び/又は増粘剤の配合割合(重量比)として、例えばキサンタンガムとタマリンドシードガムとを組み合わせる場合95:5〜5:95、好ましくは90:10〜10:90、より好ましくは85:15〜15:85であり、例えば、ネイティブジェランガムとιカラギーナンとを組み合わせる場合10:90〜90:10、好ましくは20:80〜80:20、より好ましくは30:70〜70:30を例示することができる。
【0076】
また、選別する対象の被験物質として、上記ゲル化剤及び/又は増粘剤に加えて、さらにビタミン・ミネラル等の各種栄養補強素材、ショ糖、液糖、果糖、オリゴ糖の糖類、エリスリトール、マルチトール等の糖アルコール類、スクラロース、アスパルテーム、ネオテーム、アリテーム、ステビア、ソーマチン等の高甘度甘味料、乳糖等の賦型剤等を含有するものであってもよい。
【0077】
また、対象の被験物質は、その形状を特に制限されることなく、液状(例えば、液体、懸濁液、乳濁液、ゾルやペースト等の半固体状)や固形状(例えば、粉末、錠剤(タブレット)、丸剤、カプセル、顆粒など)の任意の形状を有するものであってもよい。
【0078】
なお、食品組成物の物性値〔複素粘性率(η*)、ゼロ周波数外挿値(η*K)、周波数依存性指数(η*n)〕は、例えば、ARES(Advanced Rheometric Expansion System)(レオメトリックサイエンティフィック社)を用いて、Takahashiの方法(Nihon Reoroji Gakkaishi Vol.27, 169-172 (1999))に従って測定することができる。具体的には、上記(1)において記載する方法に従って測定することができる。
【0079】
本発明はまた、上記の選別方法によって被験物質(食品組成物)の中から選別された食品組成物を、水や対象とする食品組成物に添加して嚥下食組成物(咀嚼・嚥下困難者用の食品組成物)を調製するために用いられる、嚥下食用補助剤として提供するものである。本発明の範囲には、被験物質の中から直接選別された食品組成物(嚥下食用補助剤)だけでなく、嚥下食用補助剤として用いる以上、当該選別された被験物質(食品組成物)と同一組成物を有する食品組成物も含まれる。
【0080】
(8)嚥下食用補助剤の処方及び/または配合量の決定方法
また本発明は、嚥下食に求められる官能的要件(嚥下しやすさ)と動的粘弾性との関連性に基づいて得られた物性条件を指標として用いて、水や食品組成物に添加することによって該水や食品組成物を嚥下食用組成物(嚥下食、咀嚼・嚥下困難者用の食品組成物)として簡便に調製することのできる嚥下食用補助剤の処方及び/又は配合量を決定する方法を提供するものである。ここで嚥下食用補助剤の処方には、素材の選択とその組合せ、それらの配合比など、並びに処理方法(処理条件)が含まれる。また配合量とは処方からなる嚥下食用補助剤について水や対象食品組成物に対する配合量(配合割合)を意味する。
【0081】
本発明の嚥下食用補助剤の処方及び/配合量の決定方法は、下記の工程を経ることによって実施することができる:
(1) 嚥下食組成物を調製するために、水や食品組成物に被験物質を配合する工程、
(2) 上記(1)得られる組成物について、周波数:0.1≦ω≦100(rad/s)の領域における複素粘性率(η*)を測定し、得られた結果からゼロ周波数外挿値(η*K)、周波数依存性指数(η*n)、及び周波数5rad/sと50rad/sにおける複素粘性率(η* 5rad/s、η* 50rad/s)を算出する工程、及び
(3) 上記(1)で得られる組成物が下記の物性値の要件を満たすように、被験物質の処方及び/又は配合量を変更して、食品組成物を調製する工程:
(a) ゼロ周波数外挿値(η*K)が、5≦η*K≦60(Pa・s)、
(b) 周波数依存性指数(η*n)が、−0.95≦η*n≦−0.7、
(c) 周波数5rad/sにおける複素粘性率(η* 5rad/s)が、2≦η* 5rad/s≦15(Pa・s)、及び
(d) 周波数50rad/sにおける複素粘性率(η* 50rad/s)が、0.2≦η* 50rad/s≦2.5(Pa・s)。
【0082】
そして得られた上記物性値を満たす水や食品組成物に対して用いられる被験物質の処方、及び/又は、水や食品組成物に対して用いられる被験物質の配合量から、嚥下食用補助剤の処方及び/又は配合量を決定する。
【0083】
この場合、対象とする被験物質について処方をモディファイしたり、水や食品組成物への配合量をモディファイする方法の他、複数の被験物質を用いて(1)の工程で複数の食品組成物を調製し、これらの組成物の中から上記(a)〜(d)の物性値要件を満たす食品組成物を選別し、次いで当該選別された食品組成物の調製に用いられた被験物質の処方及び/又配合量から、嚥下食用補助剤に適した被験物質(食品組成物)の処方及び/又配合量を決定することもできる。
【0084】
ここで被験物質としては、食品にゲル化剤及び/又は増粘剤として用いられるものを挙げることができ、具体的には精製されているかもしくは精製されていないジェランガム、ネイティブジェランガム、カラギーナン(κ、ι、λ、μ、ν、θ、ζ、π)、ファーセレラン、キサンタンガム、コンニャクマンナン、ローカストビーンガム、タラガム、サイリュームシードガム、アルギン酸及びその塩、ペクチン、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースおよびその塩、タマリンドシードガム、アゾバクタービネランジガム、コンドロイチン硫酸及びその塩、グアガム、アカシアガム、水溶性/水不溶性大豆多糖類、サバクヨモギシードガム、マクロホモプシスガム、澱粉、ゼラチン、ラムザンガム、寒天、カードラン、ウェランガム、プルラン、トラガントガム、カラヤガム、ガティガム、PGA、化工/加工デンプン、澱粉加水分解物、サイクロデキストリン、キチン、キトサン、卵白、乳清たんぱく、ラクトアルブミン、ラクトグロブリン、牛血清アルブミン及び大豆たんぱく等のたんぱく素材等を挙げることができる。これらは1種単独で使用してもまた2種以上を任意に組み合わせて組成物として使用することもできる。好ましくは、キサンタンガム、ネイティブジェランガム、タマリンドシードガム、ローカストビーンガム、グアガム、タラガム、澱粉である。組み合せて使用する場合の好適な態様としては、キサンタンガム+タマリンドシードガム、キサンタンガム+グアガム、キサンタンガム+タラガム、キサンタンガム+ローカストビーンガム、澱粉+キサンタンガム、澱粉+グアガム、澱粉+タラガム、澱粉+ローカストビーンガム、及びネイティブジェランガム+ιカラギーナンであり、より好適にはキサンタンガム+グアガム、キサンタンガム+タマリンドシードガム、澱粉+キサンタンガム、及び澱粉+グアガムを例示することができる。しかし、これらに特に限定されるものではない。また、被験物質は上記ゲル化剤及び/又は増粘剤に加えて、さらにビタミン・ミネラル等の各種栄養補強素材、ショ糖、液糖、果糖、オリゴ糖の糖類、エリスリトール、マルチトール等の糖アルコール類、スクラロース、アスパルテーム、ネオテーム、アリテーム、ステビア、ソーマチン等の高甘度甘味料、乳糖等の賦型剤等を含有していてもよい。
【0085】
上記(a)〜(d)の好適な物性値範囲としては:
(a') ゼロ周波数外挿値(η*K)が、6≦η*K≦55(Pa・s)、
(b') 周波数依存性指数(η*n)が、−0.93≦η*K≦−0.7、
(c') 周波数5rad/sにおける複素粘性率(η* 5rad/s)が、2.2≦η* 5rad/s≦12.5(Pa・s)、及び
(d') 周波数50rad/sにおける複素粘性率(η* 50rad/s)が、0.3≦η* 50rad/s≦2.25(Pa・s)を、
またより好適な物性値範囲としては:
(a") ゼロ周波数外挿値(η*K)が、7≦η*K≦50(Pa・s)、
(b") 周波数依存性指数(η*n)が、−0.9≦η*K≦−0.7、
(c") 周波数5rad/sにおける複素粘性率(η* 5rad/s)が、2.5≦η* 5rad/s≦10(Pa・s)、及び
(d") 周波数50rad/sにおける複素粘性率(η* 50rad/s)が、0.4≦η* 50rad/s≦2(Pa・s)
を挙げることができる。
【0086】
前述するように、上記処方決定の工程を実施することによって、個々の嚥下食用補助剤について水やある特定の対象食品組成物に対する配合割合も同時に決定することができる。従って、上記の処方決定方法は、嚥下食用補助剤の対象食品組成物に対する配合割合(配合量)の決定方法として規定することができる。
【0087】
実際には、嚥下食用補助剤の対象食品組成物に対する配合割合(配合量)の決定方法は、上記方法によって処方が決定された嚥下食用補助剤について用いることができ、具体的には下記の方法を挙げることができる;
(1)嚥下食を調製するために、水や食品組成物に嚥下食用補助剤を配合する工程
:
(2)得られる組成物について、周波数:0.1≦ω≦100(rad/s)の領域に おける複素粘性率(η*)を測定し、得られた結果からゼロ周波数外挿値(η *K)、周波数依存性指数(η*n)、及び周波数5rad/sと50rad/sにお ける複素粘性率(η* 5rad/s、η* 50rad/s)を算出する工程、
(3)下記(a)〜(d)の物性要件:
(a) ゼロ周波数外挿値(η*K)が、5≦η*K≦60(Pa・s)、
(b) 周波数依存性指数(η*n)が、−0.95≦η*n≦−0.7、
(c) 周波数5rad/sにおける複素粘性率(η* 5rad/s)が、2≦η* 5rad/s≦15(Pa・s)、及び
(d) 周波数50rad/sにおける複素粘性率(η* 50rad/s)が、0.2≦η* 50rad/s≦2.5(Pa・s)
を満たすように嚥下食用補助剤の配合割合を決定する工程。
【0088】
(9)嚥下食用補助剤の製造方法
嚥下食用補助剤は、上記方法で一旦処方(素材、組成)が決定すると、次からはその処方に従って製造することができる。本発明はかかる上記方法によって決定された処方に従って、嚥下食用補助剤を製造する方法を提供するものである。
【0089】
具体的には、嚥下食用補助剤は、決定した処方(素材、組成)に基づいて▲1▼複数の素材を粉体で混合する方法、▲2▼複数の素材を水中で加熱することによって溶解、均一分散させ液状とする方法、▲3▼別々に溶液を調製し、使用時に混合する方法、▲4▼溶液化したものをスプレードライ等を利用して分散粉末化する方法、▲5▼複数の素材を粉体で混合し、プレス機で圧縮することにより打錠し錠剤状にする方法、▲6▼溶液化したものを造粒機により、顆粒化して使用する方法等によって調製することができる。
【0090】
また、本発明の嚥下食用補助剤においては、その効果を妨げない範囲において、ビタミン・ミネラル等の各種栄養補強素材、ショ糖、液糖、果糖、オリゴ糖の糖類、エリスリトール、マルチトール等の糖アルコール類、スクラロース、アスパルテーム、ネオテーム、アリテーム、ステビア、ソーマチン等の高甘度甘味料、乳糖等の賦型剤等を添加することができる。
【0091】
【実施例】
以下に実施例を示し、本発明を詳しく説明する。ただしこれらの実施例は本発明をなんら限定もしくは制限するものではない。また、下記の実施例中、特に言及しない限り、部は重量部を、また%は重量%を意味するものとする。
【0092】
実施例1
キサンタンガム(商品名:サンエースC、三栄源エフ・エフ・アイ(株)製)、タマリンドシードガム(ビストップD-2038:三栄源エフ・エフ・アイ(株)製)、および粉砕ローカストビーンガム(商品名:ビストップD-2213、三栄源エフ・エフ・アイ(株)製)を表1に示す配合割合(重量部)で混合し、粉末製剤(製剤#1-1、#1-2、#1-3、#1-4、#1-5、及び#1-6)を調製した。
【0093】
【表1】
【0094】
これを最終濃度が0.5%または1%となるように脱イオン水に配合して、20℃で10分間、約2,000rpmで攪拌しながら分散溶解し、減圧下で脱気した後、官能評価および物性測定(動的粘弾性、定常剪断粘度)に供した。
【0095】
(1)官能評価
官能評価は10名のパネラーに、上記各製剤(#1-1、#1-2、#1-3、#1-4、#1-5、及び#1-6)の0.5%調製物および1%調製物のそれぞれについて、口腔内での「まとまり感(保形性)」(赤羽:栄養日本 Vol.35, 178-180 (1992)、大越:食品流通技術 Vol.22, 9-12 (1993))、「べとつき感(付着性)」(高橋、大越:日本家政学会誌 Vol. 50, 333-339 (1999)、丸山ら:栄養学雑誌 Vol.58, 23-28 (2000))、および「喉ごし」(赤羽:栄養日本 Vol.35, 178-180 (1992)、大越:食品流通技術 Vol.22, 9-12 (1993))に関して、各々5段階(1:悪い、2:やや悪い、3:やや良い、4:良い、5:非常に良い)で評価してもらった。官能評価の結果を表2に示す。なお、表中、−は、評価を実施していないことを意味する。
【0096】
【表2】
【0097】
この結果から、水中濃度を1%に調整した場合、特に製剤#1-3(キサンタンガム:タマリンドシードガム:粉砕ローカストビーンガム=80:11:9), 製剤#1-4(同78:11:11), および製剤#1-5(同74:10:16)が適度な堅さ・保形性を有し、べとつきも少なく、咽頭相で均一な食塊を形成する等、嚥下に適した素材であることが確認できた。一方、水中濃度を0.5%に調整した場合、測定したいずれの試料も口腔内でのまとまり感に乏しく、均一な食塊を形成することができなかった。
【0098】
(2)物性測定
(2-1)動的粘弾性測定
上記各製剤(#1-1、#1-2、#1-3、#1-4、#1-5、及び#1-6)の0.5%調製物および1%調製物のそれぞれについて、動的粘弾性測定装置ARES(レオメトリックサイエンティフィック社)を用いて、測定温度20℃、周波数ω:0.1〜100rad/sの領域で複素粘性率(η*)を求めた。具体的には、直径50mmのプレート上に試料をアプライした後、コーン型治具(直径50mm、角度0.04rad)により、ギャップが0.05mmになるように試料をはさみこんだ。歪みを1%に固定し、この線形歪領域で、周波数を0.1〜100rad/sの範囲で段階的に上昇させることにより、周波数ω:0.1〜100rad/sの全領域におけるG’(貯蔵弾性率:歪みと同位相の弾性部分)とG"(損失弾性率:歪みとπ/2位相がずれた成分)から、当該領域について複素粘性率(η*)を求めた。
【0099】
得られた測定データに基づいてX軸に周波数(ω:0.1〜100rad/s)、Y軸に複素粘性率(η*)をプロットしてグラフを作成し、得られたグラフから累乗回帰法により回帰式を算出した(Y=Xη*n×η*K)。回帰式の係数部(η*K)及び指数部(η*n)からそれぞれ、ゼロ周波数外挿値(η*K)及び周波数依存性指数(η*n)を求めた。なお、両対数グラフに周波数(ω)(X軸:0.1〜100rad/s)と複素粘性率(η*)をプロットした場合には、y切片がゼロ周波数外挿値(η*K)、直線の傾きが周波数依存性指数(η*n)に相当する。さらに、上記グラフまたは計算から、周波数5rad/sと50rad/sのときの複素粘性率(η* 5rad/s、η* 50rad/s)をそれぞれ求めた。
【0100】
各製剤(#1-1、#1-2、#1-3、#1-4、#1-5、及び#1-6)の0.5%調製物および1%調製物について得られた物性(ゼロ周波数外挿値[η*K]、周波数依存性指数[η*n]、周波数5rad/sと50rad/sのときの複素粘性率[η* 5rad/s]、[η* 50rad/s])を、下記の物性値の基準:
(a)ゼロ周波数外挿値(η*K)が、5≦η*K≦60(Pa・s)、
(b)周波数依存性指数(η*n)が、−0.95≦η*n≦−0.7、
(c)5rad/sの複素粘性率(η*)が、2≦η* 5rad/s≦15(Pa・s)、及び
(d)50rad/sの複素粘性率(η*)が、0.2≦η* 50rad/s≦2.5(Pa・s)。
の適否評価と合わせて表3に示す。なお、物性基準の適否評価は、上記物性基準を満たす場合を○、満たさない場合を×として示す。また総合評価は、上記全ての基準を充足する場合を◎、いずれか一つでも満たさない場合を×として示した。なお、表中、−は評価を実施していないことを意味する。
【0101】
【表3】
【0102】
以上の結果から、製剤#1-3、#1-4、および#1-5の1%調製物が本発明で規定したの物性基準を充足しており、これは(1)の官能評価の結果と一致した。
【0103】
本発明の物性基準を満たす製剤#1-3、#1-4、及び#1-5の1%調製物と、物性基準を満たさない製剤#1-1、及び#1-2の1%調製物と製剤#1-6の0.5%調製物のそれぞれについて、周波数(ω)0.1〜100rad/sにおける複素粘性率(η*:図中、「Eta*」と示す。以下の図においても同じ。)(測定温度:20℃)とその回帰式(Y=η*K×Xη*n)を図1〜図6に示す。
【0104】
併せて、図に貯蔵弾性率(G')、損失弾性率(G'')、損失正接(tanδ:図中、「tand」とも示す。以下の図においても同じ。)及び動的粘性率(η':図中、「Eta'」と示す。以下の図においても同じ。)の値をプロットする。ここで、貯蔵弾性率(G')は、複素弾性率(G*= G'+iG")の実数部に相当するエネルギー貯蔵に関する部分であり、損失弾性率(G")は複素弾性率(G*= G'+i G")の虚数部に相当するエネルギー損失に関する部分である。また、位相差δから損失正接(tanδ=G"/G')が求められる。また、複素粘性率(η*)、周波数(ω)、貯蔵弾性率(G')及び損失弾性率(G")には、η*=(G'2+G" 2)1/2/ωの関係がある。なお、複素弾性率(G*)は、応力pと変形量eとの間にフックの法則を適用して弾性率を表現したものである(p= G*e)。
【0105】
一方、動的粘性率(η')は、複素粘性率(η*=η'−iη")の実数部に相当する部分である。なお、複素粘性率(η*)は、応力pと変形速度(de/dt=ё)をニュートンの法則を適用して粘度を表現したものである(p=η*ё)。
【0106】
図1〜3からわかるように、製剤#1-3、#1-4、及び#1-5の1%調製物は、いずれも貯蔵弾性率(G':○)および損失弾性率(G":●)は周波数に依存して増加したが、測定した周波数範囲(ω:0.1〜100rad/s)内で常にG'>G"の関係が成り立ち、いわゆる「弱いゲル」の性状に近似した物性を有していた。また、測定周波数範囲(0.1〜100rad/s)においてtan δ(△)は殆ど変化せず(変動係数CV<20%)、このことから試料の均一性が高く、咀嚼および嚥下時においても物性の質的変化が少ないことが示唆された。
【0107】
食塊は咽頭相を陰圧によって限られたスペースを限られた時間で通過できるように小さな応力で大変形しなくてはならない。そのとき、食塊が咽頭相でバラバラになったり堅くて咽頭相に詰まったりしないことが肝要である。また、咽頭相の粘膜や咽頭蓋などを滑らかに落下するためには、食塊が均質で溶媒が均質に分布していることが重要である(New Food Industry 1999, Vol.41 No.11 p1-10)。 製剤#1-3、#1-4、及び#1-5の1%調製物は、上述するように均質でかつ弱いゲル性状を有するため、咽頭相を限られた時間で滑らかに落下するのに適した、すなわち嚥下食に適した物性を備えていると判断できる。
【0108】
(2-2) 定常剪断粘度測定
比較のため、各製剤(#1-1、#1-2、#1-3、#1-4、#1-5、及び#1-6)の0.5%調製物および1%調製物について、B型回転粘度計を用いて定常剪断粘度(η)を測定した(温度:20℃、回転数12rpm、使用機器 BL型Viscometer(トキメック社)、せん断開始2分後の粘度を測定。いずれの製剤とも、0.5%の場合、ローター#2、1%の場合、ローター#3を使用した。)。結果を表4に示す。なお、厚生労働省が定める高齢者用食品の規格基準によれば、ゾル形状の咀嚼・嚥下困難者用食品については、B型回転粘度計(温度:20±2℃、回転数12rpm、使用機器 BL型Viscometer(トキメック社)、せん断開始2分後の粘度を測定)による粘度として1500mPa・s以上が規定されている。表4には、各製剤の調製物がこの厚生労働省告示の規格基準(1,500mPas以上)を満たすか否かの評価(○、×)も合わせて示す。
【0109】
【表4】
【0110】
表4からわかるように、上記実施例1で調製した製剤#1-1〜#1-5の1%調製物は全て1500mPa・sを満足してしまい、定常剪断粘度から嚥下食の適否を明確に差別化して判断することは困難であった。
【0111】
一方、嚥下のしやすさを客観的に判別する指標として、従来より動的粘弾性測定から数種の物性条件が提唱されている(参考資料:New Food Industry, 41 (11), 1 (1999)等)。しかし、測定周波数領域が明確に規定されておらず、周波数に依存して物性値が変化するような試料についてはその適応が難しいという問題があった。
【0112】
これに対して、本発明の方法によれば、上記のような周波数に依存して物性値が変化する試料であっても、特定の周波数ポイント(例えば、0rad/s(ゼロ周波数外挿), 5 rad/s, 50rad/s)を指定することにより、η*という単一のパラメーターで「嚥下のしやすさ」を簡単に評価することができる。
【0113】
すなわち、本発明は、簡単且つ客観的な嚥下食品の評価方法として有用であり、ゆえに各種食品の「嚥下のしやすさ」評価の自動化(機械化)に応用可能である。
【0114】
なお、本発明の物性を満足する組成物としては、下記のものを例示することができる:
▲1▼キサンタンガム+タマリンドシードガム(90-70:10-30、濃度2%)
▲2▼ キサンタンガム+タマリンドシードガム+ローカストビーンガム(75-85:10 -20:10-20、濃度1%)
▲3▼ キサンタンガム+グアガム(30-70:70-30、濃度0.7%)
▲4▼ カラギーナン+ローカストビーンガム(70-90:30-10、濃度1%)
▲5▼ カラギーナン+ネイティブジェランガム(30-50:70-50、濃度0.5%)。
【0115】
実施例2
ネイティブ型ジェランガム(ケルコゲルLT-100:ケルコ社製)およびι型カラギーナン(カラギニンCS-552、三栄源エフ・エフ・アイ(株)製)を表5に示す配合割合(重量部)で混合し、粉末製剤(製剤#2-1、#2-2、#2-3)を調製した。
【0116】
【表5】
【0117】
これらをゲル化剤の最終濃度が0.5%および1% となるように脱イオン水に配合して、20℃で10分間、約2,000rpmで攪拌しながら分散溶解し、減圧下で脱気した後、実施例1と同様に官能評価と物性測定(動的粘弾性、定常せん断粘度)に供した。なお、官能評価、動的粘弾性および定常せん断粘度の測定は、いずれも20℃と50℃の両条件下で行った。
【0118】
(1)官能評価
20℃と50℃の両条件下での官能評価の結果を表6に示す。なお、各評価及びその基準も実施例1に従って行った。
【0119】
【表6】
【0120】
(2) 物性評価
(2-1) 動的粘弾性測定
各製剤の0.5%調製物及び1%調製物について、周波数0.1〜100rad/sの範囲で、複素粘性率(η*)を求め、その結果から各動的粘弾性値(η*K、η*n、η* 5rad/s、η* 50rad/s)を算出した。結果を表7に示す。
【0121】
【表7】
【0122】
この動的粘弾性の結果から、常温(20℃)では、製剤#2-2(ネイティブ型ジェランガム:ι型カラギーナン=50:50)および製剤#2-3(同70:30)の0.5%調製物が、本発明で規定する物性基準を充足していた。この結果は、(1)の官能評価の結果と一致しており、かかる調製物が常温(20℃)で喫食する際の嚥下食として適当であると判断された。
【0123】
また、加温条件(50℃)では、製剤#2-2(ネイティブ型ジェランガム:ι型カラギーナン=50:50)の1%調製物、並びに製剤#2-3(同70:30)の0.5%調製物と1%調製物が、本発明で規定する物性基準を充足していた。この結果は、(1)の官能評価の結果と一致しており、かかる調製物が加温状態(50℃)で喫食する際の嚥下食として適当であると判断された。
【0124】
以上のことから、製剤#2-3(ネイティブ型ジェランガム:ι型カラギーナン=70:30)の0.5%調製物は喫食温度に関係なく、嚥下食として適していることが示唆された。
【0125】
また、図7、図8及び図9に、それぞれ製剤#2-1、製剤#2-2及び製剤#2-3の0.5%調製物の測定温度20℃(左図)および50℃(右図)における、複素粘性率(η*)(周波数:0.1〜100rad/s)及びその回帰式を示す。また、併せて貯蔵弾性率(G')、損失弾性率(G")、損失正接(tanδ)及び動的粘性率(η')の値をプロットする。
【0126】
本発明の物性基準を満たす、製剤#2-2の0.5%調製物(20℃)(図8の左)及び製剤#2-3の0.5%調製物(20℃)(図9の左)、並びに製剤#2-3の0.5%調製物(50℃)(図9の右)については、G'(○)およびG"(●)は周波数に依存して増加したが、測定した周波数範囲において常にG'>G"が成り立ち、「弱いゲル」の性状に近似した物性を有することが示された。また、測定周波数範囲(0.1〜100rad/s)においてtan δ(△)は殆ど変化せず、このことから試料の均一性が高く、咀嚼および嚥下時においても物性の質的変化が少ないことが示唆された。一方、本発明の物性基準を満たさない、製剤#2-1の0.5%調製物(20℃)(図7の左)、並びに製剤#2-1の0.5%調製物(50℃)(図7の右)及び 製剤#2-2の0.5%調製物(50℃)(図8の右)については、測定周波数範囲内でG'とG"とがクロスするいわゆる高濃度溶液型の力学的スペクトルを示すか、tanδ(△)の変化が認められた。
【0127】
(2-2) 定常剪断粘度測定
比較のため、各製剤(#2-1、#2-2、#2-3)の0.5%調製物および1%調製物について、それぞれ20℃及び50℃においてB型回転粘度計を用いて定常剪断粘度(η)を測定した(回転数12rpm、使用機器BL型Viscometer トキメック社、ローター:20℃のとき、0.5%の場合#2または#3、1%の場合#4、50℃のとき、0.5%の場合#1または#2、1%の場合#2または#3を使用。)。結果を、厚生労働省告示の規格基準(1,500mPas以上)を満たすか否かの評価(○、×)と合わせて、表8に示す。
【0128】
【表8】
【0129】
厚生労働省が定める高齢者用食品の規格基準に適合する嚥下食は、常温(20℃)喫食の場合は製剤#2-3の0.5%調製物、および製剤#2-1, #2-2, #2-3の1%調製物が、加温(50℃)状態では製剤#2-2および製剤#2-3の1%調製物であった。
【0130】
しかし、厚生労働省告示の高齢者用食品の規格基準を満足する試料でも、製剤#2-2や #2-3の1%調製物(20℃)のように粘度が極端に高い場合(例えば10,000mPa・s以上)は、(1)の官能評価で示されるように、口腔および咽頭相にまとわりつくような強い付着性を有しており、必ずしも嚥下しやすいものではなかった。逆に、例えば製剤#2-2の0.5%調製物(20℃)や製剤#2-3の0.5%調製物(50℃)のように粘度が1,500mPa・sに満たない試料でも、(1)の官能評価で示されるように、嚥下補助に適した適度な堅さ(保形性)と均一性を有するものもあり、B型回転粘度計による測定値(定常剪断粘度)だけで嚥下のしやすさを判断することは困難であることが判明した。
【0131】
本発明により嚥下しやすいと判断された調製物は、従来から提唱されている動的粘弾性の物性条件を満足しないものであったが〔例えば、50℃測定時の製剤#2-2(ネイティブ型ジェランガム:ι型カラギーナン=50:50)の1%溶液, 製剤#2-3(同70:30)の1%溶液〕でも、実際は食感的にも適度な堅さのある喉ごしのよいものであり、嚥下に適していた。
【0132】
なお、本発明の物性を満足する組成物としては、下記のものを例示することができる:
▲1▼ネイティブ型ジェランガム+ι型カラギーナン(50-70:50-30、濃度0.5%、20℃)
▲2▼ネイティブ型ジェランガム+ι型カラギーナン(70:30、濃度0.5%、50℃)
▲3▼ネイティブ型ジェランガム+ι型カラギーナン(50-70:50-30、濃度1%、50℃)
実施例3
実施例2で調製した粉末製剤(#2-1, 2-2, 2-3)を、濃度が0.25%および0.5%となるように市販のトマトジュース(商品名:まるごとトマト(濃縮トマト還元)、カゴメ株式会社製)に添加して、20℃、10分間、約2,000rpmで攪拌溶解(分散)し、減圧下で脱気して食品組成物を調製し、実施例1と同様に、官能評価および物性測定(動的粘弾性および定常剪断粘度)に供した(試料温度、測定温度20℃)。
(1) 官能評価
官能評価の結果を表9に示す。評価項目及び基準は実施例1に準じた。
【0133】
【表9】
【0134】
表9に示すように、いずれの製剤も、添加濃度0.25%および0.5%で優れた呑込み特性を有したが、特に濃度0.25%のときべとつきが少なく、喉ごしのよい食感であった。
(2) 物性測定
(2-1) 動的粘弾性測定
各粉末製剤(#2-1, 2-2, 2-3)を0.25%または0.5%の割合で添加したトマトジュースについて、実施例1に準じて周波数0.1〜100rad/sの範囲で複素粘性率(η*)を測定し、その結果から各種の動的粘弾性値(η*K, η*n, η*5rad/s, η*50rad/s)を算出した。結果を表10に示す。
【0135】
【表10】
【0136】
表10に示すように、粉末製剤(#2-1, 2-2, 2-3)を0.25%または0.5%の割合で添加したトマトジュースはいずれも本発明で規定する物性基準を充足していた。この結果は、(1)の官能評価と一致していた。このことから、粉末製剤(#2-1, 2-2, 2-3)〔ネイティブ型ジェランガム+ι型カラギーナン(30-70:70-30)含有組成物〕は常温(20℃)で喫食する際の嚥下食用補助剤として、濃度0.25-0.5%の範囲で使用可能であることが示唆された。
【0137】
製剤#2-2〔ネイティブ型ジェランガム+ι型カラギーナン(50:50)含有組成物〕をそれぞれ0.25%及び0.5%の割合で添加したトマトジュース(測定温度:20℃)の力学的スペクトルを図10左及び図10右に示す。
【0138】
この結果からわかるように、いずれの添加濃度においても、G'(○)およびG"(●)は周波数に依存して増加したが、測定した周波数範囲において常にG'>G"が成り立ち、「弱いゲル」の性状に近似した物性を有することが示された。また、測定周波数範囲(0.1〜100rad/s)においてtan δ(△)は殆ど変化せず、このことから調製したトマトジュースの均一性は高く、咀嚼および嚥下時においても物性の質的変化が少ないことが示唆された。
【0139】
(2-2) 定常剪断粘度測定
比較のため、(2-1)で調製した試料(トマトジュース)について、B型回転粘度計を用いて定常剪断粘度を測定した(温度:20℃、回転数12rpm、使用機器BL型Viscometerトキメック社、ローター#2)。結果を表11に示す。
【0140】
【表11】
【0141】
表11に示すように、いずれのトマトジュースも厚生労働省告示の規格基準(1,500mPas以上)を満足していないことが示され、B型回転粘度計による粘度(定常剪断粘度)と官能評価からの嚥下食適性との間に明確な相関は認められなかった。ゲル的および固体的性状の強い試料(トマトジュース)では、粘度測定時に滑りが生じ、物性値を過少評価している可能性が示唆された。
【0142】
以上の結果から、定常剪断粘度が1,500mPa・sに満たないような食品組成物でも、嚥下に適した適度な堅さ(保形性)と均一性を有するものがあり、B型回転粘度計による測定値(定常剪断粘度)だけで嚥下のしやすさを判断することは困難であることが判明した。また同時に、本発明の物性値は官能評価と一致しており、嚥下のしやすさを客観的に示す指標として有効であることが示された。
【0143】
実施例4
ネイティブ型ジェランガム(商品名:ケルコゲルLT-100:ケルコ社製)および寒天(商品名:寒天S−6S:伊那寒天(株)製)を表12に示す配合割合(重量部)で混合し、粉末製剤(製剤#3-1、#3-2、#3-3)を調製した。
【0144】
【表12】
【0145】
これを90℃に加熱した脱イオン水中で10分間、約2,000rpmで攪拌しながら溶解し、脱イオン水で最終製剤濃度が0.25%あるいは0.5% となるように重量を補正しながら調整した。これを室温まで冷却した後、減圧下で脱気して、これを食品組成物として、官能評価と物性測定(動的粘弾性、定常剪断粘度)に供した。なお、官能評価と物性測定は、実施例1の方法に従って、常温(20℃)と加温(50℃)の両条件下において行った。
【0146】
(1) 官能評価
20℃と50℃の両条件下での官能評価の結果を表13に示す。なお、各評価及びその基準も実施例1に従って行った。
【0147】
【表13】
【0148】
(2) 物性評価
(2-1) 動的粘弾性測定
各製剤の0.25%調製物及び0.5%調製物について、周波数0.1〜100rad/sの範囲で、複素粘性率(η*)を求め、その結果から各動的粘弾性値(η*K、η*n、η* 5rad/s、η* 50rad/s)を算出した。結果を表14に示す。
【0149】
【表14】
【0150】
この動的粘弾性の結果から、常温(20℃)では、製剤#3-1〔ネイティブ型ジェランガム+寒天(30:70)含有組成物〕および製剤#3-3〔ネイティブ型ジェランガム+寒天(70:30)含有組成物〕の0.25%調製物が、本発明で規定する物性基準を充足していた。この結果は、(1)の官能評価の結果と一致しており、かかる調製物が常温(20℃)で喫食する際の嚥下食として適当であると判断された。
【0151】
また、加温条件(50℃)では、製剤#3-2〔ネイティブ型ジェランガム+寒天(50:50)含有組成物〕および製剤#3-3〔ネイティブ型ジェランガム+寒天(70:30)含有組成物〕の0.5%調製物が、本発明で規定する物性基準を充足していた。この結果は、(1)の官能評価の結果と一致しており、かかる調製物が加温状態(50℃)で喫食する際の嚥下食として適当であると判断された。
【0152】
以上のことから、粉末製剤#3-3は、水や食品組成物に対する使用濃度を変えることにより、温度に無関係に嚥下食用補助剤として使用できることが示唆された。
【0153】
図11に製剤#3-3を用いた調製物(濃度:0.25%;測定温度:20℃(左図)、および濃度:0.5%;測定温度:50℃(右図))の力学的スペクトル及びその回帰式を示す。また、図12、図13及び図14にそれぞれ製剤#3-3を用いた調製物(濃度:0.5%;測定温度:20℃(左図)、および濃度:0.25%;測定温度:50℃(右図))、製剤#3-1を用いた調製物(濃度:0.25%;測定温度:20℃(左図)、および濃度:0.25%;測定温度:50℃(右図))、及び製剤#3-2を用いた調製物(濃度:0.5%;測定温度:20℃(左図)、および濃度:0.5%;測定温度:50℃(右図))の力学的スペクトル及びその回帰式を示す。
【0154】
製剤#3-1の0.25%調製物(20℃)(図13、左)は、G'およびG"は周波数に依存して増加したが、測定した周波数範囲において常にG'>G"が成り立ち、「弱いゲル」の性状に近似した物性を有することが示された。
【0155】
製剤#3-2の0.5%調製物(50℃)(図14、左)、製剤#3-3の0.25%調製物(20℃)(図11、左)と0.5%調製物(50℃)(図11、右)については、測定周波数領域(0.1〜100rad/s)で、G"は周波数に依存して増加したが、G'は周波数に殆ど依存せず、典型的な「弱いゲル」の性状を有することが示された。
【0156】
(2-2)定常剪断粘度測定
比較のため、各製剤(#3-1、#3-2、#3-3)の0.25%調製物および0.5%調製物について、それぞれ20℃及び50℃においてB型回転粘度計を用いて定常剪断粘度(η)を測定した(回転数12rpm、使用機器BL型Viscometer トキメック社、ローター:20℃、50℃のいずれも、0.25%の場合#2または#3、0.5%の場合#3または#4を使用した。)。結果を、厚生労働省告示の規格基準(1,500mPas以上)を満たすか否かの評価(○、×)と合わせて、表15に示す。
【0157】
【表15】
【0158】
この結果は、(1)の官能評価の結果と一致しておらず、B型回転粘度計による粘度(定常剪断粘度)と官能的評価からの嚥下食適性との間には明確な相関は認められなかった。これは、ゲル的性状が強い試料(特に製剤#3-1で調製した食品組成物)では、粘度測定時に滑りが生じるため、物性値を過少評価していることによると考えられた。
【0159】
本発明により嚥下しやすいと判断された調製物(食品組成物)は、従来から提唱されている動的粘弾性の物性条件を完全に満足するものではなかったが、常温喫食時(20℃)の製剤#3-1〔ネイティブ型ジェランガム+寒天(30:70)含有組成物〕および製剤#3-3〔ネイティブ型ジェランガム+寒天(70:30)含有組成物〕の0.25%水溶液、加温喫食時(50℃)の製剤#3-2〔ネイティブ型ジェランガム+寒天(50:50)含有組成物〕および製剤#3-3〔ネイティブ型ジェランガム+寒天(70:30)含有組成物〕の0.5%水溶液は、適度な堅さのある喉ごしのよい食感を有し、嚥下に適したものであった。
【0160】
実施例5
キサンタンガム+グアガム(30:70)の混合製剤(製剤#4)を用いた。
【0161】
本製剤の濃度が2%となるように、20℃および80℃の脱イオン水中で10分間、約2,000rpm攪拌溶解・分散し、減圧下で脱気して、これを被験の食品組成物1として官能評価および物性測定(動的粘弾性)に供した。なお、80℃溶解の場合は、脱イオン水により重量を補正し、20℃まで冷却後、脱気を行った。
【0162】
また、本製剤の濃度が3%となるように、20℃の市販牛乳(商品名:森永牛乳、森永乳業株式会社製)中で10分間、約2,000rpm攪拌溶解・分散し、減圧下で脱気して、これを被験の食品組成物2として官能評価および物性測定(動的粘弾性)に供した。
【0163】
官能評価及び物性(動的粘弾性)はいずれも実施例1に準じ、試料温度及び測定温度はいずれの場合も20℃とした。また、製剤#4が食品組成物の外観に及ぼす影響について検討するため、食品組成物1について、分光光度計(機種名:V-560、JASCO社製)を用い、試料を石英セル(光路長1cm)に注入し、温度20℃、波長720nmにおける透過率を測定した。
【0164】
(1) 官能評価
結果を表16に示す。評価項目及び基準は実施例1に準じた。
【0165】
【表16】
【0166】
表16に示すように、いずれの食品組成物も、適度に保形性があって付着性の少ない優れた呑込み特性を有した。また、製剤#4添加による風味の劣化は認められなかった。
【0167】
(2) 物性測定
(2-1) 動的粘弾性測定
本製剤#4を2%添加した脱イオン水溶液(溶解・分散温度:20℃および80℃)、および本製剤#4を3%添加した牛乳(溶解・分散温度:20℃)について、実施例1に準じて周波数0.1〜100rad/sの範囲で複素粘性率(η*)を求め、その結果から各動的粘弾性値(η*K、η*n、η* 5rad/s、η* 50rad/s)を算出した。結果を表17に示す。
【0168】
【表17】
【0169】
表17に示すようにいずれの食品組成物も本発明で規定する物性基準を充足していた。この結果は(1)の官能評価と一致していた。このことから、本製剤#4を用いることにより、その溶解温度に関係なく、安定して嚥下に適した物性を有する食品組成物を調製できることが示された。また、本製剤#4が嚥下食用補助剤として、水だけに限らず牛乳のような複雑な食品組成物にも適応可能であることが示唆された。
【0170】
この場合、共存物質の影響により製剤の溶解、分散が抑制される傾向にあるため、水のような単純系に比べてより多くの添加量を必要とする場合がある。しかし、本製剤#4等の嚥下食用補助剤をこうした牛乳または牛乳以外の複雑な食品組成物に適用して嚥下食を調製する場合でも、本発明で規定する物性基準を指標にすることにより、簡単に嚥下食用補助剤の添加量を決定することが可能である。
【0171】
(2-2) 透過率測定
本製剤#4を2%添加した脱イオン水(溶解温度:20℃および80℃)について、試料の透過率を測定した結果を表18に示す。
【0172】
【表18】
【0173】
本製剤#4を添加した試料は、溶解温度に関係なく非常に高い透明性を示した。この結果は、本製剤#4を添加しても食品の外観を損ねることがないことを示唆する。風味の面と総合して、本製剤#4の添加は食品の嗜好性を低下させず、嚥下食用補助剤として有用であることが示された。
【0174】
【発明の効果】
本発明によれば、口腔内で纏まりやすく、ベタツキ感がなく、さらに喉ごしのよい、嚥下食に求められている物性を満たす、咀嚼・嚥下困難者に適した食品組成物、また咀嚼・嚥下困難者にとって摂食が困難な飲食物を簡便に増粘もしくは凝固させることによって上記物性を満たす飲食物に簡便に調製することのできる嚥下食用補助剤を提供することができる。これにより、咀嚼・嚥下困難な摂食障害者が容易に飲食できるようになり、またこれによりリハビリテーションの促進、介護者の負担の軽減などを図ることができる。
【0175】
また、本発明は咀嚼・嚥下困難者に適した嚥下食が共通して充足する物性パラメーターを客観的な判断指標として提供するものである。かかる物性パラメーターを指標にすることにより、食品組成物の中から咀嚼・嚥下困難者に適した食品組成物(咀嚼・嚥下困難者用の食品組成物)を選択することができるとともに、嚥下食及び嚥下食を調製するための補助剤の処方や製造方法を容易に決定することができる。これによって多くの食材について咀嚼・嚥下困難者に適した食品組成物(嚥下食)を調製することができ、嚥下食に多種多様性をもたせることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の物性基準を満たす製剤#1-3の1%調製物について、力学的スペクトル(測定温度:20℃))とその回帰式を示す図である。
【図2】本発明の物性基準を満たす製剤#1-4の1%調製物について、力学的スペクトル(測定温度:20℃))とその回帰式を示す図である。
【図3】本発明の物性基準を満たす製剤#1-5の1%調製物について、力学的スペクトル(測定温度:20℃))とその回帰式を示す図である。
【図4】本発明の物性基準を満たさない製剤#1-1の1%調製物について、力学的スペクトル(測定温度:20℃))とその回帰式を示す図である。
【図5】本発明の物性基準を満たさない製剤#1-2の1%調製物について、力学的スペクトル(測定温度:20℃))とその回帰式を示す図である。
【図6】本発明の物性基準を満たさない製剤#1-6の0.5%調製物について、力学的スペクトル(測定温度:20℃))とその回帰式を示す図である。
【図7】製剤#2-1の0.5%調製物の測定温度20℃(左図)および50℃(右図)における力学的スペクトル及び回帰式を示す図である。
【図8】製剤#2-2の0.5%調製物の測定温度20℃(左図)および50℃(右図)における力学的スペクトル及び回帰式を示す図である。
【図9】製剤#2-3の0.5%調製物の測定温度20℃(左図)および50℃(右図)における力学的スペクトル及び回帰式を示す図である。
【図10】製剤#2-2をトマトジュースに添加した0.25%調製物の測定温度20℃(左図)、および0.5%調製物の測定温度20℃(右図)における力学的スペクトル及び回帰式を示す図である。
【図11】製剤#3-3(濃度:0.25%;測定温度:20℃(左図)、および濃度:0.5%;測定温度:50℃(右図))の力学的スペクトル及びその回帰式を示す図である。
【図12】製剤#3-3(濃度:0.5%;測定温度:20℃(左図)、および濃度:0.25%;測定温度:50℃(右図))の力学的スペクトル及びその回帰式を示す図である。
【図13】製剤#3-1(濃度:0.25%;測定温度:20℃(左図)、および濃度:0.25%;測定温度:50℃(右図))の力学的スペクトル及びその回帰式を示す図である。
【図14】製剤#3-2(濃度:0.5%;測定温度:20℃(左図)、および濃度:0.5%;測定温度:50℃(右図))の力学的スペクトル及びその回帰式を示す図である。
Claims (7)
- 対象の食品組成物について、周波数:0.1≦ω≦100(rad/s)における複素粘性率(η*)を測定し、その結果をもとにして対象の食品組成物が下記の物性値要件を満たすか否かを判断することによって当該食品組成物が嚥下食組成物として適しているか否かを評価する方法:(a)ゼロ周波数外挿値(η*K)が、5≦η*K≦60(Pa・s)、(b)周波数依存性指数(η*n)が、−0.95≦η*n≦−0.7、(c)周波数5rad/sの複素粘性率(η* 5rad/s)が、2≦η* 5rad/s≦15(Pa ・s)、及び(d)周波数50rad/sの複素粘性率(η* 50rad/s)が、0.2≦η* 50rad/s ≦2.5(Pa・s)。
- 対象の食品組成物について周波数:0.1≦ω≦100(rad/s)における複素粘性率(η*)を測定し、その結果からゼロ周波数外挿値(η*K)、周波数依存性指数(η*n)、及び周波数5rad/s及び50rad/sにおける複素粘性率(η* 5ard/s, η* 50ard/s)を求め、下記の物性値要件を満たす食品組成物を選択する、嚥下食組成物の選別方法:(a)ゼロ周波数外挿値(η*K)が、5≦η*K≦60(Pa・s)、(b)周波数依存性指数(η*n)が、−0.95≦η*n≦−0.7、(c)周波数5rad/sの複素粘性率(η* 5rad/s)が、2≦η* 5rad/s≦15(Pa ・s)、及び(d)周波数50rad/sの複素粘性率(η* 50rad/s)が、0.2≦η* 50rad/s ≦2.5(Pa・s)。
- 下記の工程(1)〜(3)を有する嚥下食組成物の処方及び/又は処理方法の決定方法:(1) 対象とする食品組成物について、周波数:0.1≦ω≦100(rad/s)における複素粘性率(η*)を測定し、その結果からゼロ周波数外挿値(η*K)、周波数依存性指数(η*n)、及び周波数5rad/s及び50rad/sにおける複素粘性率(η* 5rad/s、η* 50rad/s)を求める工程、(2) 最終食品組成物が下記の物性値要件を満たすように、食品組成物の処方及び/又は処理方法を変更して、食品組成物を調製する工程:(a) ゼロ周波数外挿値(η*K)が、5≦η*K≦60(Pa・s)、(b) 周波数依存性指数(η*n)が、−0.95≦η*n≦−0.7、(c) 周波数5rad/sの複素粘性率(η* 5rad/s)が、2≦η* 5rad/s≦15(Pa・s)、及び(d) 周波数50rad/sの複素粘性率(η* 50rad/s)が、0.2≦η* 50rad/s≦2.5(Pa・s)、並びに(3) 上記物性値を満たす食品組成物の処方及び/又は処理方法から、嚥下食組成物の処方及び/又は処理方法を決定する工程。
- 請求項3に記載する方法で決定された処方及び/又は処理方法に従って、嚥下食組成物を製造する方法。
- 下記の工程(1)〜(3)を含む嚥下食用補助剤の選別方法:(1)嚥下食組成物を調製するために、水または対象食品組成物に被験物質を配合する工程、(2)上記(1)で得られた組成物について、周波数:0.1≦ω≦100(rad/s)における複素粘性率(η*)を測定し、その結果からゼロ周波数外挿値(η*K)、周波数依存性指数(η*n)、及び周波数5rad/s及び50rad/sにおける複素粘性率(η* 5rad/d、η* 50rad/d)を求める工程、(3)上記(1)で得られた組成物が下記の物性値要件を満たすような被験物質を選別する工程:(a)ゼロ周波数外挿値(η*K)が、5≦η*K≦60(Pa・s)、(b)周波数依存性指数(η*n)が、−0.95≦η*n≦−0.7、(c)周波数5rad/sの複素粘性率(η* 5ard/s)が、2≦η* 5rad/s≦15(Pa・s)、及び(d)周波数50rad/sの複素粘性率(η* 50rad/s)が、0.2≦η* 50rad/s≦2.5(Pa・s)。
- 下記の工程(1)〜(4)を含む、嚥下食用補助剤の処方及び/又は配合量の決定方法。
(1) 嚥下食組成物を調製するために、水または対象食品組成物に被験物質を配合する工程、(2)上記(1)で得られた組成物について、周波数:0.1≦ω≦100(rad/s )における複素粘性率(η*)を測定し、その結果からゼロ周波数外挿値(η *K)、周波数依存性指数(η*n)、及び周波数5rad/s及び50rad/sに おける複素粘性率(η* 5rad/d、η* 50rad/d)を求める工程、(3)上記(1)で得られる組成物が下記の物性値要件を満たすように、被験物質の処方及び/又は配合量を変更して、食品組成物を調製する工程:(a)ゼロ周波数外挿値(η*K)が、5≦η*K≦60(Pa・s)、(b)周波数依存性指数(η*n)が、−0.95≦η*n≦−0.7、(c) 周波数5rad/sの複素粘性率(η* 5ard/s)が、2≦η* 5rad/s≦15(Pa・s)、(d)周波数50rad/sの複素粘性率(η* 50rad/s)が、0.2≦η* 50rad/s≦2.5(Pa・s)、及び(4)上記物性値を満たす食品組成物を調製するのに用いられる被験物質の処方及び/又は配合量から、嚥下食用補助剤の処方及び/又は配合量を決定する工程。 - 請求項6に記載する方法で決定された処方及び/又は配合量に従って、水または対象食品組成物に添加して嚥下食組成物を調製するために用いられる嚥下食用補助剤を製造する方法。
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