JP4340050B2 - ガスバリア性フィルム - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ガスバリア性に優れた塗膜を形成するガスバリア性コーティング樹脂組成物及びそれを用いてガスバリア層を形成したガスバリア性フィルムに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、透明なガスバリア性フィルムとしては、ガスバリア性に優れたポリビニルアルコールの溶液をプラスチックフィルムにコートしたフィルムが知られている。ポリビニルアルコールの塗膜は、プラスチックフィルムからなる基材との密着が不十分であるので、通常ポリビニルアルコールと基材との間にアンカー層が設けられて、このアンカー層上にポリビニルアルコールの塗膜がコートされている。また、ポリビニルアルコールは、湿度依存性が高く、通常2層または3層構成のラミネートフィルムとして、ポリビニルアルコールフィルムが湿度の影響を受けないようにしている。
【0003】
例えば、特許文献1には、ポリエステル成形物に、ポリビニルアルコール系樹脂の溶液をコートするにあたり、アンカーコート層を形成したガスバリア性成形物が開示されている。
【0004】
しかし、上記技術では、ポリエステル成形物の耐湿性を考慮すると、ポリエステル成形物にアンカーコート層とポリビニルアルコール系樹脂層とが積層され、さらに、耐湿性を改善するために、一層を追加した多層構成とする必要があり、その製造工程が増す欠点がある。
【0005】
一方、アンカーコート層を形成しないガスバリア性フィルムとして、特許文献2には、ポリオレフィンフィルムの表面処理にポリビニルアルコールと水性アンカー剤とを所定の割合で混合した水性コーティング剤を塗布して形成したバリア性ポリオレフィンフィルムが開示されており、水性アンカー剤として、水性イソシアネート、ポリエチレンイミンが記載されている。
【0006】
しかし、上記技術は、ポリオレフィンフィルムにおけるガスバリア性に関するものであり、他のプラスチックフィルムに該技術を適用できるか否かは明確にされていない。
【0007】
更に、ガスバリア性フィルムは、通常、基材(/アンカー層)/ガスバリア層(/印刷層)/ヒートシール層という積層構造よりなり、このフィルムをヒートシールして形成された袋が、食品包装等に使用されている。しかし、この袋を開封した場合に、図1(a)の様な開封状態になると(図1(a)において、基材はPET、ガスバリア層はPVA、ヒートシール層はCPP)、ポリビニルアルコール及び/又は印刷層がむき出しとなり、食品衛生上好ましくないという問題もあった。
【0008】
【特許文献1】
特公平5−19580号公報
【特許文献2】
特開平8−245816号公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記従来の問題点に鑑みてなされたもので、ポリビニルアルコール本来の透明性と高いガスバリア性を維持し、しかも基材がポリエステルである場合でも、アンカー層を必要とせずに密着性がよく、かつ高湿度下であっても密着性を維持でき、高いガスバリア性を有する塗膜を大量生産でき、しかも保存性に優れ、更には、食品衛生上問題のない開封性を有し、かつ高湿度下であってもその開封性を維持できるガスバリア性コーティング組成物及び該組成物の塗膜を有するガスバリア性フィルムを提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
すなわち、本発明は、下記A,B,C成分からなり、B成分の配合量が、A成分100重量部に対し0.1重量部以上10重量部未満であるガスバリア性コーティング組成物の塗膜を、ポリエステルの基材上に有することを特徴とするガスバリア性フィルムを提供するものである。
A:アセトアセチル基変性ポリビニルアルコールと未変性ポリビニルアルコールを含有し、A成分におけるアセトアセチル基変性ポリビニルアルコールの含有量が14重量%〜100/3重量%であるポリビニルアルコール。
B:下記一般式(1)で示されるアミノ基及び/又はイミノ基を有するアルコキシシラン。
【0011】
【化2】
【0012】
(式中、R1は炭素数1〜4のアルキレン基、R2およびR3は炭素数1〜4のアルキル基、Xは水素原子またはアミノアルキル基であり、nは1または0である。)
C:水、又は低級アルコールを添加した水。
【0013】
また、上記本発明は、A成分におけるアセトアセチル基変性ポリビニルアルコールの含有量が14重量%以上25重量%未満であること、A成分におけるアセトアセチル基変性ポリビニルアルコールの含有量が25重量%以上75重量%以下であり、B成分の配合量が、A成分100重量部に対し0.1重量部以上5重量部未満であること、A成分が、未変性ポリビニルアルコールを含有することを、その好ましい態様として含むものである。また、B成分が、アミノ基及び/又はイミノ基を有するアルコキシシランと、その(部分)加水分解物及び/又は(部分)縮合物との混合物であってもよい。
【0016】
【発明の実施の形態】
本発明第一のガスバリア性コーティング組成物は、基本的には下記A,B,C成分からなる。
A:アセトアセチル基変性ポリビニルアルコールを含有するポリビニルアルコール。
B:下記一般式(1)で示されるアミノ基及び/又はイミノ基を有するアルコキシシラン。
【0017】
【化3】
【0018】
(式中、R1は炭素数1〜4のアルキレン基、R2およびR3は炭素数1〜4のアルキル基、Xは水素原子またはアミノアルキル基であり、nは1または0である。)
C:水、又は低級アルコールを添加した水。
【0019】
A成分としては市販のポリビニルアルコールを用いることができる。A成分として用いるポリビニルアルコールは、従来のガスバリア性コーティング組成物で用いられるポリビニルアルコールと同様に、重合度が100〜5000、ケン化度70%以上のものが好ましい。重合度が低過ぎると基材に対する密着性が低下しやすく、重合度が高過ぎると粘度が高くなり過ぎて塗工性が悪くなりやすい。また、ケン化度が低過ぎるとガスバリア性が不十分となりやすい。
【0020】
A成分はアセトアセチル基変性ポリビニルアルコールを含有する。ここで、アセトアセチル基変性ポリビニルアルコールとは、分子内にアセトアセチル基を有するものをいう。
【0021】
アセトアセチル基変性ポリビニルアルコールの製造方法は特に限定されないが、例えば、ポリビニルアルコールとジケテンとを公知の方法で反応して製造することができる。具体的には、ポリビニルアルコールを酢酸溶媒中に分散させておき、これにジケテンを添加する方法、ポリビニルアルコールをジメチルホルムアミド、またはジオキサンなどの溶媒にあらかじめ溶解しておき、これにジケテンを添加する方法、ポリビニルアルコールにジケテンガスまたは液状ジケテンを直接接触させる方法、ポリビニルアルコールのアルコール溶剤のケン化スラリーに硫酸などの酸触媒を加えてアセト酢酸エステルをエステル交換させる方法等が挙げられる。
【0022】
アセトアセチル基変性ポリビニルアルコールの原料となるポリビニルアルコールとしては、ポリ酢酸ビニルなどポリビニルエステルの部分又は完全ケン化物のほか、酢酸ビニルを主体とし、これと他の共重合可能なモノマー、例えば不飽和カルボン酸またはその部分又は完全エステル・塩・無水物・アミド・ニトリル、不飽和スルホン酸又はその塩、炭素数2〜30のα−オレフィン、ビニルエーテルなどとの共重合体をケン化した共重合変性ポリビニルアルコールやポリビニルアルコールをアセタール化、ウレタン化、エーテル化、グラフト化、リン酸エステル化などした後変性ポリビニルアルコールも用いることができる。
【0023】
原料ポリビニルアルコールの平均ケン化度は、30〜100モル%であることが好ましく、より好ましくは60〜100モル%、更に好ましくは80〜100モル%である。また、平均重合度は、50〜3000であることが好ましく、より好ましくは200〜3000、更に好ましくは400〜2600である。
【0024】
アセトアセチル基変性量は、0.1〜40モル%であることが好ましく、より好ましくは0.2〜20モル%、更に好ましくは1〜10モル%である。
【0025】
A成分には、組成物の保存性の観点から未変性ポリビニルアルコールを含有することが好ましい。この場合、塗膜と基材との密着性及び高湿度保存後の開封性の観点より、アセトアセチル基変性ポリビニルアルコールの含有量が14重量%〜75重量%であることが好ましい。
【0026】
また、例えば、シリル基、アミノ基、疎水基、イソシアネート基、オキサゾリン基、メチロール基、ニトリル基、アセトアセチル基、カチオン基、カルボキシル基、スルホン基、燐酸基等によるアセトアセチル基変性以外の変性ポリビニルアルコールを含有してもよい。この場合も、アセトアセチル基変性ポリビニルアルコールの含有量が上記範囲であることが好ましい。
【0027】
B成分として用いる上記一般式(1)で示されるアミノ基及び/又はイミノ基を有するアルコキシシランとしては、例えばアミノメチルトリエトキシシラン、2−アミノエチルトリメトキシシラン、2−アミノエチルトリエトキシシラン、2−アミノエチルトリプロポキシシラン、2−アミノエチルトリブトキシシラン、1−アミノエチルトリメトキシシラン、1−アミノエチルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリプロポキシシラン、3−アミノプロピルトリブトキシシラン、2−アミノプロピルトリメトキシシラン、2−アミノプロピルトリエトキシシラン、2−アミノプロピルトリプロポキシシラン、2−アミノプロピルトリブトキシシラン、1−アミノプロピルトリメトキシシラン、1−アミノプロピルトリエトキシシラン、1−アミノプロピルトリプロポキシシラン、1−アミノプロピルトリブトキシシラン、N−アミノメチルアミノメチルトリメトキシシラン、N−アミノメチルアミノメチルトリプロポキシシラン、N−アミノメチル−2−アミノエチルトリメトキシシラン、N−アミノメチル−2−アミノエチルトリエトキシシラン、N−アミノメチル−2−アミノエチルトリプロポキシシラン、N−アミノメチル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−アミノメチル−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−アミノメチル−3−アミノプロピルトリプロポキシシラン、N−アミノメチル−2−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−アミノメチル−2−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−アミノメチル−2−アミノプロピルトリプロポキシシラン、N−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−2−アミノエチルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−2−アミノエチルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−2−アミノエチルトリプロポキシシラン、N−(2−アミノエチル)−1−アミノエチルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−1−アミノエチルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−1−アミノエチルトリプロポキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリプロポキシシラン、N−(3−アミノプロピル)−2−アミノエチルトリメトキシシラン、N−(3−アミノプロピル)−2−アミノエチルトリエトキシシラン、N−(3−アミノプロピル)−2−アミノエチルトリプロポキシシラン、N−メチル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−ジエチレントリアミンプロピルトリエトキシシラン、3−〔2−(2−アミノエチルアミノエチルアミノ)プロピル〕トリメトキシシラン、トリメトキシシリルプロピルジエチレントリアミンなどを挙げることができる。
【0028】
B成分としては、上記のようなアミノ基及び/又はイミノ基を有するアルコキシシランの1種又は2種以上を用いることができる。B成分として特に好ましいのはγ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシランである。
【0029】
C成分中の水(蒸留水)は溶剤であり、更にこれに低級アルコールを添加して用いることができ、これにより、塗膜乾燥時のピンホールの発生を防止しやすくなる。水に添加する低級アルコールとしては、例えばメチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコールなどを挙げることができる。低級アルコールと水を混合する場合の配合比率は、重量比(低級アルコール/水)で10/90〜30/70であることが好ましい。低級アルコールの添加量が少な過ぎると塗膜の乾燥時にピンホールが発生しやすくなり、逆に低級アルコールの添加量が多過ぎると塗工性が悪くなりやすくなる。
【0030】
次に、上記A,B,C成分の配合比率について説明する。
【0031】
A成分はガスバリア性を得るためのベースとなる成分で、B成分は得られる塗膜と基材との密着性を向上させる成分である。B成分の配合量は、A成分100重量部に対し0.1重量部以上10重量部未満である。B成分の配合量が0.1重量部未満では、塗膜と基材との密着性、特に高湿度保存後の密着性が低下する。逆にB成分の配合量が10重量部以上では、得られる塗膜のガスバリア性が不十分となる、組成物が白濁、ゲル化、固化等を起こし、保存性が不十分となる、高湿度保存後の開封性が不十分となる等の問題を生じる。
【0032】
B成分の配合量は、特に、組成物の保存性及び高湿度保存後の開封性の観点から、A成分中のアセトアセチル基変性ポリビニルアルコールの含有量に合わせて、適宜設定することが好ましい。具体的には、A成分中のアセトアセチル基変性ポリビニルアルコールの含有量が14重量%未満の場合には、組成物の保存性の観点からは10重量部以上配合してもよいが、高湿度保存後の開封性の観点から0.1重量部以上10重量部未満であることが好ましい。また、組成物の保存性の観点から、A成分中のアセトアセチル基変性ポリビニルアルコールの含有量が、14重量%以上25重量%未満の場合には0.1重量部以上10重量部未満、25重量%以上75重量%以下の場合には、0.1重量部以上5重量部未満、75重量%を越える場合には、0.1重量部以上3重量部未満であることが好ましい。
【0033】
C成分の配合比率は塗工条件などに応じて適宜選択すれば足るが、得られるガスバリア性コーティング組成物の固形分が1〜20重量%となるようにするのが好ましく、この範囲で塗工方法等に合わせて適宜選択することができる。C成分の配合量が多過ぎると必要な厚みの塗膜が得にくくなり、逆にC成分の配合量が少な過ぎると塗工性が悪くなりやすい。
【0034】
ところで、本発明においては、溶剤として水を用いていることから、前記B成分であるアミノ基及び/又はイミノ基を有するアルコキシシランの一部がゆっくりと加水分解してその(部分)加水分解物へと変化する場合があり、この加水分解物が更に(部分)縮合物へと変化する場合もある。このような変化を生じた場合においても本発明の効果は同様に得ることができる。従って、B成分は、アミノ基及び/又はイミノ基を有するアルコキシシランと、その(部分)加水分解物及び/又は(部分)縮合物との混合物であってもよい。
【0035】
次に、本発明第二のガスバリア性コーティング組成物は、基本的には下記A,C成分からなる。
A:アセトアセチル基変性ポリビニルアルコールを10重量%〜80重量%含有するポリビニルアルコール。
C:水、又は低級アルコールを添加した水。
【0036】
本発明第二のガスバリア性コーティング組成物は、B成分を含まないため、本発明第一のガスバリア性コーティング組成物に比べて、高湿度保存性(高湿度保存後の塗膜と基材の密着性)が多少劣るものの、組成物の調製が容易であり、更に保存性に優れる。
【0037】
A成分、C成分としては、上記本発明第一のガスバリア性コーティング組成物と同様のものを使用できるが、A成分は、塗膜の密着性、高湿度保存性及びガスバリア性の観点から、アセトアセチル基変性ポリビニルアルコールを10重量%〜80重量%、好ましくは20重量%〜50重量%含有する必要があり、また、ガスバリア性の観点から、未変性ポリビニルアルコールを含有することが好ましい。
【0038】
C成分の配合比率は塗工条件などに応じて適宜選択すれば足るが、得られるガスバリア性コーティング組成物の固形分が1〜20重量%となるようにするのが好ましく、この範囲で塗工方法等に合わせて適宜選択することができる。C成分の配合量が多過ぎると必要な厚みの塗膜が得にくくなり、逆にC成分の配合量が少な過ぎると塗工性が悪くなりやすい。
【0039】
本発明に係るガスバリア性コーティング組成物は、基本的には、上述のA,B,C成分、またはA,C成分からなるものであるが、これら成分の合計量100重量部に対して10重量部以下の範囲で、本発明の効果を損わず塗布性を向上させるために、増粘剤、消泡剤、硬化触媒、濡れ性改良剤、可塑剤等を添加して用いることができる。
【0040】
本発明に係るガスバリア性コーティング組成物は、基材に塗布され、ガスバリア性の塗膜を形成するものである。
【0041】
基材への塗布は、例えばディップコート、スプレーコート、フローコート、ロールコート、バーコート、スピンコート、グラビアコートなど、従来行われている手法で行うことができる。塗膜の厚みは、塗工作業を繁雑にすることなく、また基材との密着強度を実用レベルに保ちながら良好なガスバリア性が得られるようにする上で、0.2〜7μm、望ましくは0.3〜1.5μmであることが好ましい。
【0042】
塗布後の塗膜の乾燥硬化は、塗膜の表面温度が50℃以上となる加熱雰囲気下で行うことが好ましい。この乾燥硬化時の雰囲気温度が低すぎると、得られるガスバリア性フィルムを特に高湿度下で保存した場合に、基材と塗膜の密着力が低下しやすくなる。上記乾燥硬化時の塗膜表面の温度の上限は、基材の耐熱性にもよるが、一般的には120℃程度である。
【0043】
基材としては、例えばポリエステル、ポリプロピレン、ポリカーボネイトなどの合成樹脂が好ましく、基材上に本発明のガスバリア性コーティング組成物による塗膜を形成したフィルム又はシートや、この塗膜付フィルムやシートにヒートシール層やその他の層を更に積層したフィルム又はシートは、ガスバリア性の包装用に好適に用いることができる。特に本発明に係るガスバリア性コーティング組成物は、包装用途に多用されているポリエステルの基材上に密着性よく塗膜を形成することができ、ガスバリア性包装用途に適したフィルム又はシートが得やすい利点がある。
【0044】
【実施例】
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明する。評価は、以下の方法で行った。
【0045】
(1)組成物粘度
ブルックフィールド社製デジタル回転粘度計「LV DV−2t」を用いて、測定した。
【0046】
(2)組成物保存性
組成物を1日間(条件A)または1ヶ月(条件B)室温保存し、状態を目視により評価した。状態に変化のないものを○、ゲル化しているものを△、固化しているものを×とした。
【0047】
(3)塗膜付基材の評価
▲1▼透明性
塗膜形成前の基材と塗膜付基材を肉眼で比較することで評価した。両者の透明度にほとんど差が認められなかった場合を○、塗膜付基材の方がやや透明性が劣っている場合を△とした。
【0048】
▲2▼ガスバリア性
酸素の透過性を、23℃、0%RH雰囲気下で酸素透過度測定装置(MOCON社製「OX−TRAN 2/20」)を用いて測定した。
【0049】
▲3▼密着性
得られた塗膜付基材の塗膜面に、ポリウレタン系接着剤を用いたドライラミネートにより厚み25μmのCPP(未延伸ポリプロピレン)フィルムを貼り合わせ、40℃で養生した後、15mm幅に切断し、CPPフィルムと塗膜付基材のT形剥離により剥離強度を求めた。全てのサンプルで剥離強度が490mN/15mm以下のものを×とし、一部のサンプルで剥離強度が490mN/15mm以下となるものがあったものを△とし、全てのサンプルで基材が破断してしまった又は剥離強度が1960mN/15mm以上となったものを○とした。
【0050】
▲4▼高湿度保存性
密着性の評価と同様のドライラミネートを施したラミネートフィルムを温度40℃、湿度90%RHの雰囲気下に2週間(条件A)、1ヶ月(条件B)または6ヶ月(条件C)放置した後、15mm幅に切断し、CPPフィルムと塗膜付基材のT形剥離により剥離強度を求めた。全てのサンプルで剥離強度が490mN/15mm以下のものを×とし、一部のサンプルで剥離強度が490mN/15mm以下となるものがあったものを△とし、全てのサンプルで基材が破断してしまった又は剥離強度が1960mN/15mm以上となったものを○とした。
【0051】
▲5▼開封性
密着性の評価と同様のドライラミネートを施したラミネートフィルムを、ヒートシーラーにてCPP同士を貼り合わせて袋を作成し、温度40℃、湿度90%RHの雰囲気下に3日間放置した後、開封して、その状態を観察した。図1(a)の様に開封したものを×とし、図1(b)の様に開封したものを○とした。
【0052】
<実施例1〜3、比較例1〜4>
AA−PVA(A1成分:アセトアセチル基変性PVA:日本合成化学工業(株)製「Z−200」)と、PVA(A2成分:未変性PVA:(株)クラレ製「ポバール103」)と、C−PVA(A3成分:カルボキシル基変性PVA:(株)クラレ製「KM−118」)と、APTES(B成分:γ−アミノプロピルトリエトキシシラン:信越化学工業(株)製「KBE−903」)と、IPAとH2O(C成分:イソプロピルアルコールと水)を用い、表1〜表2に示される配合比率でガスバリア性コーティング樹脂組成物の調製を行った。
【0053】
まず、AA−PVA、PVA、C−PVAを表1〜表2の配合割合でIPA/H2O=20/80(重量比)の溶媒に溶解して6重量%溶液とし、このPVA溶液100gにAPTESを表1〜表2の配合割合で加え、1時間撹拌してガスバリア性コーティング組成物を調製した。
【0054】
得られたガスバリア性コーティング組成物を厚み12μmのPET(ポリエステル)フィルム(東洋紡績(株)製「E5100」)の基材上に約1μmの厚みでバーコートし、80℃のオーブン中で15秒間乾燥した。
【0055】
評価結果を表1〜表2に示す。
【0056】
【表1】
【0057】
【表2】
【0058】
<比較例5〜8>
実施例1で用いたAA−PVA、PVAを表3の配合割合でIPA/H2O=20/80(重量比)の溶媒に溶解してガスバリア性コーティング組成物を調製した。
【0059】
得られたガスバリア性コーティング組成物を厚み12μmのPET(ポリエステル)フィルム(東洋紡績(株)製「E5100」)の基材上に約1μmの厚みでグラビアコートし、80℃のオーブン中で15秒間乾燥した。
【0060】
評価結果を表3に示す。
【0061】
また、本発明第一の組成物(実施例1)とその比較例(比較例1)の評価結果を、併せて表3に示す。表3より明らかなように、本発明第一の組成物はB成分を含むため、本発明第二の組成物に比べて高湿度保存性に優れ、6ヶ月以上の高湿度保存後でも塗膜と基材の密着性に優れる。
【0062】
【表3】
【0063】
【発明の効果】
本発明は、以上説明したとおりのものであり、次の効果を奏するものである。
【0064】
(1)ポリエステルの基材に対しても、アンカー層なしで密着性よくガスバリア性塗膜を形成することができる。しかも、この塗膜は、高湿度下であっても密着性を維持できる。ポリエステルは包装材料に多用されていることから、ガスバリア性に富む包装材料が得やすい。
【0065】
(2)透明性及び耐湿性に優れる。
【0066】
(3)基材上に乾燥硬化した塗膜を形成する際の乾燥条件を緩やかにした場合にも、高湿度下での保存による基材との密着性の低下を生じにくく、耐熱性に劣る基材へのガスバリア層の形成が容易となり、また乾燥硬化時の温度設定が容易となる。
【0067】
(4)ヒートシールして形成した袋を開封する際、ポリビニルアルコール及び/又は印刷層がむき出しとなることがなく、良好な開封性を示し、高湿度下であってもその開封性を維持できる。
【0068】
(5)長期保存においても、ゲル化が発生せず保存性に優れる。
【図面の簡単な説明】
【図1】開封性試験の評価方法を説明する図である。
Claims (4)
- 下記A,B,C成分からなり、B成分の配合量が、A成分100重量部に対し0.1重量部以上10重量部未満であるガスバリア性コーティング組成物の塗膜を、ポリエステルの基材上に有することを特徴とするガスバリア性フィルム。
A:アセトアセチル基変性ポリビニルアルコールと未変性ポリビニルアルコールを含有し、A成分におけるアセトアセチル基変性ポリビニルアルコールの含有量が14重量%〜100/3重量%であるポリビニルアルコール。
B:下記一般式(1)で示されるアミノ基及び/又はイミノ基を有するアルコキシシラン。
C:水、又は低級アルコールを添加した水。 - 前記ガスバリア性コーティング組成物のA成分におけるアセトアセチル基変性ポリビニルアルコールの含有量が14重量%以上25重量%未満であることを特徴とする請求項1に記載のガスバリア性フィルム。
- 前記ガスバリア性コーティング組成物のA成分におけるアセトアセチル基変性ポリビニルアルコールの含有量が25重量%以上100/3重量%以下であり、B成分の配合量が、A成分100重量部に対し0.1重量部以上5重量部未満であることを特徴とする請求項1に記載のガスバリア性フィルム。
- 前記ガスバリア性コーティング組成物のB成分が、アミノ基及び/又はイミノ基を有するアルコキシシランと、その(部分)加水分解物及び/又は(部分)縮合物との混合物であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のガスバリア性フィルム。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2002278478A JP4340050B2 (ja) | 2001-09-27 | 2002-09-25 | ガスバリア性フィルム |
Applications Claiming Priority (3)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
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