JP6983500B2 - テトラアルコキシシラン加水分解組成物、及び、その製造方法 - Google Patents
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Description
しかしながら、アルコキシシランの加水分解物は、安定性に乏しく、縮合反応が容易に進行してシロキサン化合物が形成されてしまう。
このようなシロキサン化合物が形成されると、溶解性が悪く加工等が困難となるため、アルコキシシランの加水分解物を安定して保存する技術が求められていた。
しかしながら、このような方法で製造されるアルコキシシラン加水分解物は、重縮合触媒を不活性化又は除去してさえも、縮合反応が容易に進行してしまい、保存安定性が悪いといった課題があり、アルコキシシラン加水分解物を貯蔵又は移送する際に、大きな問題となり得た。
具体的には、アルコキシシランを加水分解した後にアルコールを添加することで、アルコキシシランの加水分解物を安定化する方法が開示されている(特許文献1参照)。
また、アルコキシシランを加水分解に用いる溶媒を、一定範囲の比誘電率を有する比較的分極の小さい極性溶剤とし、縮合反応の進行を遅らせることで、アルコキシシランの加水分解物を安定化させる方法が開示されている(特許文献2参照)。
しかしながら、特許文献1及び2で開示された方法であっても、アルコキシシラン加水分解物の保存安定性が充分であるとは言い難く、より安定化させる他の方法が求められていた。
ここで、本明細書において、上記「保存安定性に優れた」とは、アルコキシシラン加水分解組成物を40℃の条件で保存した場合に、粘度計(東機産業社製、RE100L型)を用いて測定した上記アルコキシシラン加水分解組成物の粘度が、100mPa・sを超えるまでに15日間以上要することを意味する。
なお、上記アルコキシシラン加水分解組成物の増粘は、アルコキシシランの加水分解物の縮合反応が進行することにより起こるものである。
(式1) WA/WB=3.5/96.5〜50/50
(式1中、WAは、上記混合物中の上記スルホン酸基含有ポリマーの配合量(質量)を表し、WBは、上記混合物中の上記アルコキシシランの配合量(質量)を表す。)
また、上記スルホン酸基含有ポリマーは、スルホン酸基変性ポリビニルアルコールであることが好ましい。
また、上記アルコキシシランは、テトラアルコキシシランの加水分解物であることが好ましい。
また、本発明は、スルホン酸基含有ポリマーとアルコキシシランとを混合した混合物を調製する工程と、上記混合物中で上記アルコキシシランを加水分解させる工程を有し、以下の式1を満足することを特徴とするアルコキシシラン加水分解組成物の製造方法でもある。
(式1) WA/WB=3.5/96.5〜50/50
(式1中、WAは、上記混合物中の上記スルホン酸基含有ポリマーの配合量(質量)を表し、WBは、上記混合物中の上記アルコキシシランの配合量(質量)を表す。)
以下、本発明のアルコキシシラン加水分解組成物について詳細に説明する。
(式1) WA/WB=3.5/96.5〜50/50
(式1中、WAは、上記混合物中の上記スルホン酸基含有ポリマーの配合量(質量)を表し、WBは、上記混合物中の上記アルコキシシランの配合量(質量)を表す。)
本発明によって奏される優れた保存安定性は、スルホン酸基含有ポリマーの存在下で、アルコキシシランを加水分解することにより、加水分解反応に対しては優れた触媒作用を有する一方で、アルコキシシランの加水分解物の縮合反応を抑制するという、スルホン酸基含有ポリマーの特徴によりもたらされたものであると考えられる。また、アルコキシシランの加水分解物は、上述したように、縮合反応が容易に進行してしまうので、単離して構造や特性を特定することが極めて困難であり、本発明のアルコキシシラン加水分解組成物の構造や特性を特定することも極めて困難である。
なお、従来の方法によりアルコキシシランを加水分解した後に、スルホン酸基含有ポリマーを添加したとしても、上述した優れた保存安定性を得ることはできない。
上記スルホン酸基含有ポリマーを得る方法としては、例えば、酢酸ビニル系モノマーとスルホン酸基含有モノマーを共重合し、その後ケン化して得られるものや、酢酸ビニル系モノマーとスルホン酸塩含有モノマーを共重合し、その後ケン化及びイオン交換によってスルホン酸塩をスルホン酸基に変換して得られるもの等が挙げられる。
なお、上記ケン化する際のケン化度としては、80%以上であることが好ましく、85%以上であることがより好ましい。
上記スルホン酸基含有モノマーとしては、ビニルスルホン酸、アクリルアミドターシャリーブチルスルホン酸、オルトスチレンスルホン酸、メタスチレンスルホン酸、パラスチレンスルホン酸等が挙げられる。
上記スルホン酸塩含有モノマーとしては、上記スルホン酸基含有モノマーの塩等が挙げられる。
なかでも、水系の溶媒中において比較的安定であることから、テトラアルコキシシラン類が好ましい。
なかでも、加水分解速度が大きく、また、加水分解によって発生するアルコールの乾燥性が適切であることから、テトラエトキシシランがより好ましい。
これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
上記溶媒(溶剤)としては、上記スルホン酸基含有ポリマーを溶解し得るものであれば、水性及び非水性のどちらの溶剤でも使用できる。
上記溶媒(溶剤)としては、水と低級アルコールとの混合溶剤を用いることが好ましい。
具体的には、水と、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、iso−プロピルアルコール、n−ブチルアルコール、iso−ブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、tert−ブチルアルコール等の炭素数2〜4の低級アルコールの少なくとも1種を15〜70質量%含む混合溶剤であることが好ましい。
上記混合溶剤を使用すると、スルホン酸基含有ポリマーの溶解性が良好となり、適度な固形分を維持するためにも好適である。
上記混合溶剤中の炭素数2〜4の低級アルコールの含有量が上記範囲外であると、スルホン酸基含有ポリマーが析出、若しくは、保存安定性が低下することがある。
(式1) WA/WB=3.5/96.5〜50/50
(式1中、WAは、上記混合物中の上記スルホン酸基含有ポリマーの配合量(質量)を表し、WBは、上記混合物中の上記アルコキシシランの配合量(質量)を表す。)
上記WA/WBが3.5/96.5未満であると、保存安定性が低下し、WA/WBが50/50を超えると、樹脂が析出もしくは保存安定性が低下する。
上記WA/WBは、4/96〜15/85であることが好ましい。
本発明は、スルホン酸基含有ポリマーとアルコキシシランとを混合した混合物を調製する工程と、上記混合物中で上記アルコキシシランを加水分解させる工程を有し、以下の式1を満足することを特徴とするアルコキシシラン加水分解組成物の製造方法でもある。
(式1) WA/WB=3.5/96.5〜50/50
(式1中、WAは、上記混合物中の上記スルホン酸基含有ポリマーの配合量(質量)を表し、WBは、上記混合物中の上記アルコキシシランの配合量(質量)を表す。)
上記アルコキシシラン加水分解組成物を製造する方法としては、上記構成要件を満たせば従来公知の方法を用いることができ、例えば、テトラアルコキシシランに溶媒及びスルホン酸基含有ポリマーを加え、攪拌装置や分散装置を利用して各成分を混合する方法等を挙げることができる。
CKS−50(商品名:ゴーセネックスL CKS−50、スルホン酸ナトリウム塩含有ポリビニルアルコール、ケン化度>99%、日本合成化学社製)
L−3266(商品名:ゴーセネックスL L−3266、スルホン酸ナトリウム塩含有ポリビニルアルコール、ケン化度86.5〜89%、日本合成化学社製)
精製水85質量部にCKS−50の15質量部を加え、90℃で1時間撹拌して、CKS−50水溶液(固形分15%)を得た。これを室温でMonosphere 650C(カチオン交換樹脂、ダウ・ケミカル社製)の10質量部に送液し、脱塩CKS−50水溶液(固形分15%)を得た。
精製水85質量部にL−3266の15質量部を加え、90℃で1時間撹拌して、L−3266水溶液(固形分15%)を得た。これを室温でMonosphere 650C(カチオン交換樹脂、ダウ・ケミカル社製)の10質量部に送液し、脱塩L−3266水溶液(固形分15%)を得た。
TEOS(商品名:高純度正珪酸エチル、多摩化学工業社製)
TEOS43.3質量部にエタノール18.6質量部を加え撹拌し、そこにイオン交換水24.8質量部及び脱塩CKS−50水溶液13.3質量部を加え、50℃で1時間加熱して、TEOS加水分解物水溶液(1)を得た。
TEOS43.3質量部にエタノール18.1質量部を加え撹拌し、そこにイオン交換水21.9質量部及び脱塩CKS−50水溶液16.7質量部を加え、50℃で1時間加熱して、TEOS加水分解物水溶液(2)を得た。
TEOS43.3質量部にエタノール18.6質量部を加え撹拌し、そこにイオン交換水24.8質量部及び脱塩L−3266水溶液13.3質量部を加え、50℃で1時間加熱して、TEOS加水分解物水溶液(3)を得た。
TEOS43.3質量部にエタノール19.3質量部を加え撹拌し、そこにイオン交換水27.4質量部及び脱塩CKS−50水溶液10.0質量部を加え、50℃で1時間加熱して、TEOS加水分解物水溶液(4)を得た。
TEOS43.3質量部にエタノール16.8質量部を加え撹拌し、そこにイオン交換水13.3質量部及び脱塩CKS−50水溶液26.7質量部を加え、50℃で1時間加熱して、TEOS加水分解物水溶液(5)を得た。
TEOS43.3質量部にエタノール14.7質量部を加え撹拌し、そこにイオン交換水22.3質量部及びスノーテックスPS−SO(コロイダルシリカ、固形分15%、日産化学工業社製)19.7質量部を加え、50℃で1時間加熱して、TEOS加水分解物水溶液(6)を得た。
TEOS加水分解物水溶液(1)56.0質量部、エタノール44.0質量部を撹拌混合し、室温で10分撹拌して、実施例1のアルコキシシラン加水分解組成物を得た。
表1の配合に従い、実施例1と同様の操作によって、実施例2〜4、及び、比較例1〜2のアルコキシシラン加水分解組成物を得た。
(保存安定性)
実施例1〜4、及び、比較例1〜2のアルコキシシラン加水分解組成物を40℃にて保存し、粘度計(東機産業社製、RE100L型)を用いて測定した粘度が、100mPa・sを超えるまでの日数を測定した。結果を表1に示す。
一方、WA/WBの値が小さい比較例1、及び、テトラアルコキシシランを加水分解させる工程において、スルホン酸基含有ポリマーが存在しない比較例2においては、保存安定性に優れたものは得られなかった。
Claims (2)
- スルホン酸基含有ポリマーとテトラアルコキシシランとを混合した混合物を調製し、
前記スルホン酸基含有ポリマーは、スルホン酸基変性ポリビニルアルコールであり、ケン化度が80%以上であり、かつ、スルホン酸塩含有ポリマーを脱塩したものであり、
前記混合物中で前記テトラアルコキシシランを加水分解させてなり、
以下の式1を満足する
ことを特徴とするテトラアルコキシシラン加水分解組成物。
(式1) WA/WB=3.5/96.5〜50/50
(式1中、WAは、前記混合物中の前記スルホン酸基含有ポリマーの配合量(質量)を表し、WBは、前記混合物中の前記テトラアルコキシシランの配合量(質量)を表す。) - スルホン酸基含有ポリマーとテトラアルコキシシランとを混合した混合物を調製する工程と、
前記混合物中で前記テトラアルコキシシランを加水分解させる工程を有し、
前記スルホン酸基含有ポリマーは、スルホン酸基変性ポリビニルアルコールであり、ケン化度が80%以上であり、かつ、スルホン酸塩含有ポリマーを脱塩したものであり、
以下の式1を満足する
ことを特徴とするテトラアルコキシシラン加水分解組成物の製造方法。
(式1) WA/WB=3.5/96.5〜50/50
(式1中、WAは、前記混合物中の前記スルホン酸基含有ポリマーの配合量(質量)を表し、WBは、前記混合物中の前記テトラアルコキシシランの配合量(質量)を表す。)
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