JP2020050767A - ディップコート用エポキシ樹脂組成物 - Google Patents
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Abstract
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そこで本発明者らは、難燃剤として金属水和物を選択し、これをエポキシ樹脂に所望の難燃性能が得られるまで含有させたところ、樹脂組成物の粘度が高くなりすぎ、電子部品を樹脂組成物中に上手く挿入することができず、ディップコート用の樹脂組成物としては使いものにならないものとなってしまった。
また電子部品を樹脂組成物中に上手く挿入できる程度まで金属水和物の含有量を減らしたところ、所望の難燃性能が得られなくなってしまった。また、ディップコート用樹脂組成物には、液ダレを防止するために通常揺変性付与剤が添加されているが、その揺変性付与剤の含有量を削減したところ、電子部品を樹脂組成物中に挿入し抜き取った後に加熱硬化した際に、液ダレしてしまいディップコート用の樹脂組成物としては使いものにならないものとなってしまった。
このとき、本発明のエポキシ樹脂組成物は、UL94V−0規格に適合する硬化物を形成するためのディップコート用エポキシ樹脂組成物であって、
(A)を含む第1液と、(C)及び(D)を含む第2液と、を有し、
第1液及び第2液の少なくともいずれかに、(B)及び(E)をさらに含み、
100質量部の樹脂分に対する(B)の配合量が2〜8質量部であり、かつ、100質量部の樹脂分に対する(E)の配合量が130〜190質量部であることを特徴とする。
なお、以下の説明で、「樹脂分」と言った場合、それは、(A):常温で液状のエポキシ樹脂、(C):硬化剤、(D):硬化促進剤、及び必要に応じて含まれうる反応性希釈剤の合計成分を意味するものとする。
本発明のディップコート用エポキシ樹脂組成物は、第1液と第2液とから構成され、第1液は、(A)常温で液状のエポキシ樹脂を少なくとも含み、第2液は、(C)硬化剤及び(D)硬化促進剤を含む。(B)シリカ粉及び(E)水和金属系難燃剤は、第1液及び第2液の少なくともいずれかに含まれる。
<(A)>
第1液に用いられる(A)エポキシ樹脂は、常温で液状のものであれば特に制限されることなく用いることができる。そのようなエポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、脂肪族エポキシ樹脂、臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂、フェノール−ノボラック型またはクレゾール−ノボラック型のエポキシ樹脂、臭素化ノボラック型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型もしくはAD型のエポキシ樹脂、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ペンタエリストールポリグリシジルエーテル等の脂肪族系エポキシ樹脂、脂肪族若しくは芳香族アミンとエピクロルヒドリンから得られるグリシジルアミン型エポキシ樹脂、脂肪族若しくは芳香族カルボン酸とエピクロルヒドリンから得られるグリシジルエステル型エポキシ樹脂、複素環エポキシ樹脂、ビフェノール型エポキシ樹脂等を使用することができる。なかでも、耐熱性や機械的強度の観点から、(A1)ビスフェノールA型エポキシ樹脂を含有することが好ましい。(A)のエポキシ樹脂は、それぞれ単独で用いてもよく、また2種以上を混合して用いることもできる。
<(C)及び(D)>
本発明において、第2液に用いられる(C)硬化剤として無水メチルハイミック酸を用い、第2液に用いられる(D)硬化促進剤として1−ベンジル−2−フェニルイミダゾールを用いることが好ましい。
適切な反応速度や均一な硬化物を得るためには、0.85〜1.15当量の範囲がより好ましく、0.9〜1.1当量の範囲が特に好ましい。
<(B)>
本発明に用いられる(B)はシリカ粉であり、これは揺変性付与剤として添加される成分である。本発明において使用するシリカ粉としてはフュームドシリカが挙げられる。このフュームドシリカとしては、親水性シリカや疎水性シリカが挙げられ、本発明においては、2種の疎水性シリカを併用して用いると効果的である。このようなシリカ粉は樹脂組成物の液ダレ防止性と揺変性の向上が期待できる。本発明において、揺変性とは等温状態において剪断変形を与えることによって、見かけ粘度が一時的に低下し、静置して時間が経つと元の見かけ粘度が回復する性質のことをいい、揺変性が向上すると後述する空気抜け性が向上することを意味する。
(B2)の割合が、(B1):1に対して、0.5未満となる質量比で含有される場合、液ダレを生じやすい。一方、4.0超となる質量比で含有される場合、空気抜け性が悪くなりやすい。
なお、エポキシ樹脂組成物のディップ性能(電子部品の挿入容易性と液ダレ防止性)を考慮すると、第1液及び第2液の混合後の粘度は、例えば、25℃での粘度は150〜350Pa・sが好ましく、より好ましくは200〜300Pa・s、特に好ましくは220〜280Pa・sである。
本発明に用いられる(E)は、シラン処理(シランカップリング剤により処理)された水和金属系難燃剤(水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム)からなることが必須である。シラン処理されたものを用いることで、硬化物に優れた耐水性を付与することが期待される。なお、本発明では、(E)として、表面処理のない(表面無処理の)水和金属系難燃剤と、シラン処理された水和金属系難燃剤との、両者を併用してもよい。
シランカップリング剤で表面処理された水酸化マグネシウムとしては、具体的には、キスマ5L(質量平均粒子径0.8μm)、キスマ5N(質量平均粒子径0.7μm)、キスマ5P(質量平均粒子径0.8μm)(以上、協和化学社製)、ファインマグMO−E(TMG社製)などが挙げられる。表面無処理の水酸化マグネシウムとしては、例えば、キスマ5(協和化学社製)、マグニフィンH5(アルベマール社製)などが挙げられる。
エポキシシラン処理された水酸化アルミニウムとしては、例えば、B303STE(質量平均粒子径17μm:日本軽金属社製)、BF013ST(質量平均粒子径1μm:日本軽金属社製)、メタクリロキシ系シラン処理された水酸化アルミニウムとしてB153STM(質量平均粒子径12μm:日本軽金属社製)などが挙げられる。
[実験例1]
(A)常温で液状のエポキシ樹脂としての、エポキシ樹脂(1):80部に、(B)シリカ粉としての(B1)第1のシリカ(1):4部、及び(B2)第2のシリカ(1):7部と、(E)シランカップリング剤で処理された水和金属系難燃剤としての難燃剤(1):300部と、反応性希釈剤(1):20部と、カーボンブラック(三菱化学社製、ミツビシカーボンブラックMA100):2部と、を添加し、その後2時間、攪拌混合して第1液を調製した。第1液の調製には、自公転ミキサーを用い、自転速度1500rpm、で撹拌した。
その後、得られた第1液と第2液を混合してエポキシ樹脂組成物を得た。
・エポキシ樹脂(1): ビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱化学社製、jER828;エポキシ当量189)
・第1のシリカ(1): 疎水性シリカ(アルキル基を有するシランカップリング剤で処理されたフュームドシリカ、日本アエロジル社製、アエロジルR805)
・第2のシリカ(1): 疎水性シリカ(シリコーンオイルで処理されたフュームドシリカ、日本アエロジル社製、アエロジルR202)
・難燃剤(1): 水酸化アルミニウムのエポキシシラン処理物(日本軽金属社製、B303STE;質量平均粒径17μm)
・反応性希釈剤(1): シクロヘキサンジメタノールジグリシジルエーテル(CVCスペシャリティケミカルズ社製、ERISYS GE−22)
・硬化剤(1): 無水メチルハイミック酸(日立化成社製、MHAC−P)
第1液及び第2液の配合成分及び/または配合量を表1及び2に示すように変えた以外は実験例1と同様にして第1液及び第2液を調製し、さらに、これらの第1液及び第2液を混合してエポキシ樹脂組成物を得た。
・エポキシ樹脂(2): テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン型エポキシ樹脂(三菱化学社製、jER604:エポキシ当量120)
・第1のシリカ(2): 疎水性シリカ(アルキル基を有するシランカップリング剤で処理されたフュームドシリカ、日本アエロジル社製、アエロジルR−812)
・第2のシリカ(2): 疎水性シリカ(シリコーンオイルで処理されたフュームドシリカ、キャボット社製、キャボシルTS720)
・難燃剤(2): 水酸化アルミニウムのメタクリロキシ系シラン処理物(日本軽金属社製、B153STM;質量平均粒径12μm)
・難燃剤(3): 水酸化マグネシウムのエポキシシラン処理物(質量平均粒径12μm)
・難燃剤(4): 水酸化アルミニウムの表面無処理物(日本軽金属社製、SB303;質量平均粒径26μm)
・硬化剤(2): メチルヘキサヒドロ無水フタル酸(日立化成社製、HN−5500)
各実験例で得られたエポキシ樹脂組成物について、下記に示す方法で各種特性を評価した。結果を表2及び4に示す。
回転粘度計(東機産業社製、商品名TVE−35形型粘度計)を用いて、第1液及び第2液の混合1分後の粘度(Pa・s)を25℃で測定した。
JIS C2161に準拠した装置を用いて、混合直後のエポキシ樹脂組成物0.4ccが150℃の熱板上でゲル化するまでの時間(秒)を測定し、以下の基準で評価した。
「〇」:600秒未満(硬化性が良好)
「×」:600秒以上(硬化性が不良)※反応性不足による
エポキシ樹脂組成物を150℃、1時間の後、180℃、3時間の条件で加熱し硬化させて得られた硬化物について、示差走査熱量測定(DSC)を行い、次の条件でガラス転移温度・Tg(℃)を測定し、以下の基準で評価した。測定装置:エスアイアイ・ナノテクノロジー社製DSC6220、サンプル量:10mg、測定雰囲気:窒素雰囲気、昇温速度:20℃/分、測定温度:25℃〜200℃
「◎」:Tgが145℃以上(耐熱性が極めて良好)
「〇」:Tgが120℃以上、145℃未満(耐熱性が良好)
「×」:Tgが120℃未満(耐熱性が不良)
エポキシ樹脂組成物を150℃、1時間の後、180℃、3時間の条件で加熱し硬化させて得られた硬化物について、JIS K6911に準拠して、曲げ強さを測定し、以下の基準で評価した。
「〇」:70MPa以上(硬化物特性が良好、信頼性(耐熱衝撃性など)あり)
「×」:70MPa未満(硬化物特性が不良、信頼性(耐熱衝撃性など)なし)
エポキシ樹脂組成物を150℃、1時間の後、180℃、3時間の条件で加熱し硬化させて得られた硬化物について、UL94の垂直燃焼試験方法に準拠して、以下の基準で評価した。
「○」:UL94V−0規格に適合する(難燃性が良好)
「×」:UL94V−0規格に適合しない(難燃性が不良)
φ1.3mm×2本の平行塩化ビニル樹脂絶縁電線を、2液を撹拌混合して得られた混合液中へ挿入する際の電線の様子について、以下の基準で評価した。
「◎」:電線に抵抗を感じることなく垂直に液中へ挿入される(挿入が極めて容易)
「〇」:電線に若干抵抗を感じるが垂直に液中へ挿入される(挿入が容易)
「△」:電線に抵抗を感じるが垂直に液中へ挿入される(挿入が可能)
「×」:電線に大きな抵抗を感じ湾曲して液中へ挿入される(挿入が容易ではない)
2液を撹拌混合して得られた混合液の入った容器に、サーミスタセンサをディッピングし、ディップコート直後と150℃、1時間の条件で加熱させた後の形状を、以下の基準で評価した。
「〇」:サーミスタセンサ下方に液が溜まらず、センサの形状を保持しているもの(液ダレ防止性極めて良好)
「△」:サーミスタセンサより垂れ落ちないが、下方に液が溜まりセンサ形状を保持しきれないもの(液ダレ防止性良好)
「×」:サーミスタセンサより垂れ落ちた状態のもの。(液ダレ防止性不良)
2液を撹拌混合して得られたおよそ10gの混合液の入った容器を減圧装置に入れ、1〜5Torrまで減圧を行う。その際、液面の膨張高さの最高点を保つ時間を計測し、以下の基準で評価した。
「〇」:5秒未満(空気抜け性が極めて良好)
「△」:10秒未満(空気抜け性が良好)
「×」:10秒以上(空気抜け性が不良)
エポキシ樹脂組成物を150℃、1時間の後、180℃、3時間の条件で加熱し硬化させて得られた硬化物を98℃の熱水中に浸漬し、1000時間後に取り出し、室温まで冷却した。熱水への浸漬前と浸漬後の各硬化物について、JIS K6911に準拠した方法で体積抵抗率を測定し、以下の基準で評価した。なお、評価した実験例ごとに、浸漬前硬化物の体積抵抗率の測定値をRM1、浸漬後硬化物の体積抵抗率の測定値をRM2とした。
「〇」:RM1とRM2の桁数の差(RM1−RM2)が5桁未満
「×」:RM1とRM2の桁数の差(RM1−RM2)が5桁以上
表1及び表2で示すように、実験例1〜5、7〜14のエポキシ樹脂組成物は、(B)と、(E)の配合量が適正であり、(B)は2種類の疎水性シリカを用いたものであり、(E)はシラン処理された水和金属系難燃剤を使用したものであった。その結果、挿入容易性と液ダレ防止性を両立させつつ、硬化物に難燃性が付与され、さらに耐水性に優れたものとなった。
中でも、実験例2、3、9のエポキシ樹脂組成物は、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン型エポキシ樹脂を使用したものであった。その結果、実験例1、4、5、7、8、10〜14のエポキシ樹脂組成物と比べると、耐熱性が極めて良好なものとなった。
実験例15のエポキシ樹脂組成物は、100質量部の樹脂分に対する(E)の配合量は適量(165質量部)であったが、実験例6と同様、(E)として難燃剤(1)〜(3)以外を使用したものであった。その結果、実験例1〜5、7、8と比べると、サーミスタセンサの挿入容易性及び空気抜け性が劣っていた。
実験例16のエポキシ樹脂組成物は、100質量部の樹脂分に対する(E)の配合量は適量(165質量部)であったが、(E)として難燃剤(1)〜(3)以外を使用したことに加え、サーミスタセンサを挿入できる程度まで(B)の配合量を少なくし、さらには(B)は2種類の疎水性シリカを用いたものではなかった。その結果、実験例1〜5、7、8と比べると、液ダレ防止性の劣るものとなった。
実験例18のエポキシ樹脂組成物は、(B)として2種類の疎水性シリカを用いたものであり、(E)としてシラン処理された水和金属系難燃剤を使用していたが、100質量部の樹脂分に対する(E)の合計配合量が上限値超(294質量部)であった。その結果、実験例1〜5、7、8と比べて、サーミスタセンサの挿入容易性及び空気抜け性が劣るものとなった。
表3及び表4で示すように、実験例19〜26は、(A)として(A1):ビスフェノールA型エポキシ樹脂と(A2):グリシジルアミン型エポキシ樹脂を用いているものであったが、どの評価項目においても実験例1と同等以上の評価となった。
特に、実験例20〜25は、(A1):1に対して、(A2):0.05以上0.7以下となる質量比で含有されているものであったが、耐熱性又は挿入容易性のどちらかが実験例10以上の評価となった。
Claims (6)
- UL94V−0規格に適合する硬化物を形成するためのディップコート用エポキシ樹脂組成物であって、
下記に示す(A)を含む第1液と、下記に示す(C)及び(D)を含む第2液と、を有し、
第1液及び第2液の少なくともいずれかに、下記に示す(B)及び(E)をさらに含み、
(A)、(C)、(D)及び必要に応じて含まれる反応性希釈剤を樹脂分としたとき、100質量部の樹脂分に対する(B)の配合量が2〜8質量部であり、かつ、100質量部の樹脂分に対する(E)の配合量が130〜190質量部であるエポキシ樹脂組成物。
(A):常温で液状のエポキシ樹脂
(B):シリカ粉
(C):硬化剤
(D):硬化促進剤
(E):シランカップリング剤で処理された水和金属系難燃剤 - (A)は、下記に示す(A1)及び(A2)を含み、全(A)中に、(A1):1に対して、(A2):0.05以上0.7以下となる質量比で含有されている請求項1記載のエポキシ樹脂組成物。
(A1):ビスフェノールA型エポキシ樹脂
(A2):グリシジルアミン型エポキシ樹脂 - (E)は、水酸化アルミニウムで構成してある請求項1または2記載のエポキシ樹脂組成物。
- (B)は、下記に示す(B1)及び(B2)を含み、全(B)中に、(B1):1に対して、(B2):0.5以上4.0以下となる質量比で含有されている請求項1〜3のいずれか記載のエポキシ樹脂組成物。
(B1):アルキル基を有するシランカップリング剤で処理されたフュームドシリカ
(B2):シリコーンオイルで処理されたフュームドシリカ - (C)は下記に示す(C1)を含むとともに、(D)は下記に示す(D1)を含み、100質量部の(C)に対する(D)成分の配合量が0.5〜10質量部である請求項1〜4のいずれか記載のエポキシ樹脂組成物。
(C1):酸無水物系硬化剤
(D1):イミダゾール系硬化促進剤 - 請求項1〜5のいずれか記載のエポキシ樹脂組成物の硬化物で構成されたコート層が少なくとも一部に形成された電気・電子素子。
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