JP6357089B2 - 2液型注形用エポキシ樹脂組成物、該エポキシ樹脂組成物の製造方法、及びコイル部品 - Google Patents
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Description
このようなエポキシ樹脂組成物において、絶縁信頼性を付与する手法としては、樹脂の不純物を低減することや、特定の機能性樹脂粉末を添加することなどが提案されている(例えば、特許文献1乃至2参照)。また、分散剤の添加により作業性や注形性を改良することも提案されている(例えば、特許文献3参照)。
本発明は、かかる知見に基づいて完成したものである。
[1](A)エポキシ樹脂、(B)平均粒径5〜30μmのシリカ粒子、及び(C)平均粒径5〜40nmの微粉末シリカを含有する主剤と、(D)酸無水物、及び(E)硬化促進剤を含有する硬化剤とを含む、2液型注形用エポキシ樹脂組成物。
[2]前記微粉末シリカが、親水性のフュームドシリカである、上記[1]に記載の2液型注形用エポキシ樹脂組成物。
[3]上記[1]又は[2]に記載の2液型注形用エポキシ樹脂組成物をコイルに注形し、硬化させてなる、コイル部品。
[4](B)平均粒径5〜30μmのシリカ粒子の表面に、(C)平均粒径5〜40nmの微粉末シリカを被覆させ被覆体としたのち、該被覆体を(A)エポキシ樹脂に混合して主剤を製造する工程(1)と、(D)酸無水物と、(E)硬化促進剤とを混合して硬化剤を製造する工程(2)とを有する、2液型注形用エポキシ樹脂組成物の製造方法。
本発明で用いる(A)成分のエポキシ樹脂は、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するものであれば、分子構造、分子量などは特に制限されるものではなく、一般に用いられているものを用いることができ、例えば、ビスフェノール型、ノボラック型、ビフェニル型等の芳香族系エポキシ樹脂、ポリカルボン酸のグリシジルエーテル型、シクロヘキサン誘導体等のエポキシ化によって得られる脂環族系エポキシ樹脂等が挙げられ、これらは単独又は2種以上混合して使用することができる。
また、これらの他に、樹脂組成物の粘度を調製するために必要に応じて液状のモノエポキシ樹脂等を併用成分として使用することができ、さらに、難燃性を付与しようとする場合には、ハロゲン化合物やリン化合物などで変性したエポキシ樹脂を使用することもできる。
樹脂組成物中の(A)成分の配合量は、良好な硬化性や硬化物特性が得られるという観点から、好ましくは10〜35質量%、より好ましくは10〜30質量%、更に好ましくは15〜25質量%である。
なお、上記平均粒径は、レーザ回折式粒子径分布測定装置(たとえば、堀場製作所製、装置名:LA-920)を用いて、レーザ回折法による50%平均粒径(D50)を算出することにより、求めることができる。
溶融破砕シリカの市販品としては、例えば、(株)龍森製のヒューズレックスRD−8(商品名)等が挙げられる。
上記微粉末シリカは、平均粒径が5〜40nm、好ましくは5〜20nmである。5nm未満では上記シリカ粒子の表面を十分に被覆することができないおそれがある。40nm超過では、硬化物の耐クラック性向上が不十分になるおそれがある。
なお、上記平均粒径は、(B)成分のシリカ粒子の平均粒径の測定と同様の方法により求めた値である。
親水性のフュームドシリカは、例えば、四塩化ケイ素の火炎加水分解法により得ることができる。中でも、表面に親水性のシラノール基(Si−OH)を有し、比表面積が60〜450m2/gのものが好ましい。また、疎水性のフュームドシリカは、上記親水性のフュームドシリカを、シラン、シロキサン等で化学的に処理し、疎水化することによって得ることができる。中でも、比表面積が60〜200m2/gのものが好ましい。
親水性のフュームドシリカの市販品としては、例えば、アエロジル#200、#300、#380(以上、日本アエロジル(株)製、商品名)等が挙げられ、疎水性のフュームドシリカの市販品としては、例えば、RX200、RY200、R805(以上、日本アエロジル(株)製、商品名)等が挙げられる。
本発明で用いる(D)成分の酸無水物は、通常、エポキシ樹脂の硬化剤として用いられる分子中に酸無水物基を有するものであれば特に制限なく用いることができ、例えば、ヘキサヒドロ無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、無水ハイミック酸、無水メチルハイミック酸等が挙げられる。
これらは、1種を単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。
上記アミノシラン系カップリング剤としては、例えば、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−アミノエチルアミノプロピルトリメトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−3−(4−(3−アミノプロポキシ)ブトキシ)プロピル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン等が挙げられ、これらは単独又は2種以上併用してもよい。
また、本発明によれば、上記樹脂組成物中のシリカ((B)成分及び(C)成分)の沈降性は、好ましくは4%以下、より好ましくは、0〜1%とすることができる。
本発明の2液型注形用エポキシ樹脂組成物は、このような特性を有するため、コイル作製時の作業性に優れたものである。
また、本発明の2液型注形用エポキシ樹脂組成物を硬化してなる硬化物の機械強度(曲げ強さ)は、好ましくは145MPa以上、より好ましくは148MPa以上とすることができる。
本工程では、まず、(B)平均粒径5〜30μmのシリカ粒子の表面に、(C)平均粒径5〜40nmの微粉末シリカを被覆させ被覆体とする。該被覆体とする方法は、特に限定されず、例えば、公知のゾルゲル法、粉体/粉体混合法等により行うことができる。このように被覆体とすることにより、得られる硬化物の耐クラック性、及び機械強度を向上させることができる。
なお、上記微粉末シリカは、上記シリカ粒子の表面全体を被覆していてもよいし、シリカ粒子表面の一部を被覆していてもよい。
次に、(A)エポキシ樹脂に、上記被覆体を混合し、主剤を製造する。混合方法は、特に限定されず、例えば、ニーダー、ルーダー、ミキシングロール、プラネタリーミキサー、ディゾルバー等を用いて、従来よく知られた方法を採用することができる。
なお、上記主剤は、(A)成分のエポキシ樹脂と、(B)成分の平均粒径5〜30μmのシリカ粒子と、(C)成分の平均粒径5〜40nmの微粉末シリカとを、通常の混合方法により、均一に混合することにより製造してもよい。
本工程では、(D)酸無水物と、(E)硬化促進剤とを通常の混合方法により、均一に混合して硬化剤を製造する。
なお、工程(1)で得られた主剤と、工程(2)で得られた硬化剤とは、注形直前に両者を混合するのが好ましい。
また、(B)成分の平均粒径5〜30μmのシリカ粒子の一部と、(C)成分の平均粒径5〜40nmの微粉末シリカの一部とを、硬化剤に配合してもよく、その場合には、主剤と硬化剤とを混合した後の(B)成分の配合量及び(C)成分の配合量が、それぞれ上記で説明した(B)成分の配合量及び(C)成分の配合量となるように調製すればよい。
従来、コイル用の樹脂組成物としては、その含浸性から、十分な特性を有するものがなかった。また、該樹脂組成物を用いた硬化物は、クラックが発生してしまい、製品として使用することが難しかった。
これに対し、本発明のコイル部品は、上述した2液型注形用エポキシ樹脂組成物をコイルに注形し、硬化させてなるものなので、優れた耐クラック性、及び機械強度を有する。
(実施例1)
シリカ粒子〔(株)龍森製、商品名:ヒューズレックスRD−8、平均粒径15μm〕258質量部を500mlの攪拌機付きフラスコに入れ、更に微粉末シリカ〔日本アエロジル(株)製、商品名:アエロジル#200、平均粒径12nm〕2質量部を追加して30分攪拌し、表面に微粉末シリカを被覆させたシリカ粒子を作成した。
次いで、ビスフェノールAジグリシジルエーテル型エポキシ樹脂〔三菱化学(株)製、商品名:R140P、エポキシ当量190〕80質量部、可とう性エポキシ樹脂〔旭電化工業(株)製、商品名:EP4000、エポキシ当量320〕20質量部、消泡剤〔モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ(株)製、商品名:TSA720〕0.1質量部、シランカップリング剤〔モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ(株)製、商品名:A−187〕0.5質量部を配合した混合液に、前記表面に微粉末シリカを被覆させたシリカ粒子260質量部を加え、真空下、万能混合機を用いて1時間攪拌、混合することにより主剤を調製した。
一方、3−メチル−1,2,3,6−テトラヒドロ無水フタル酸と4−メチル−1,2,3,6−テトラヒドロ無水フタル酸との混合物〔日立化成(株)製、商品名:HN2000〕100質量部、硬化促進剤〔花王(株)製、商品名:カオーライザーNo.20〕1質量部を配合して1時間、真空下、万能混合機を用いて混合することにより硬化剤を調製した。
次いで、上記主剤と上記硬化剤とを、万能混合機を用いて混合して2液型注形用エポキシ樹脂組成物を調製した。
表3に示す成分の各質量部を配合することにより実施例1と同様に2液型注形用エポキシ樹脂組成物および比較用のエポキシ樹脂組成物を調製した。
実施例1〜6、及び比較例1〜5で得られたエポキシ樹脂組成物を100℃で3時間、次いで150℃で3時間加熱硬化させて、硬化物を得た。
直径0.5mmの被覆銅線をポリカーボネート製のボビン(幅:10mm、直径5mm)に100回巻きつけたものをモデルコイルとし、該コイルに実施例1〜6、及び比較例1〜5で得られたエポキシ樹脂組成物を注形し、100℃で3時間、次いで130℃で3時間加熱硬化させ、コイル装置を得た。
<評価項目>
(1)主剤/硬化剤の混合液の粘度
主剤と硬化剤とを均一に混合した直後の混合液粘度を、B型粘度計を用いて、25℃、12rpmの条件で測定した。12Pa・s以下を合格とする。
(2)主剤/硬化剤の混合液中のシリカ((B)成分及び(C)成分)の沈降性
主剤と硬化剤とを均一に混合した後、混合液を硬化物作成用金型(10×10×100mm)に注形し、100℃で3時間、次いで130℃で3時間加熱硬化させて、硬化物を得た。該硬化物の上部10mm、下部10mmを切り取り、それぞれの硬化物比重を測定し、下記式により沈降性を求めた。4%以下を合格とする。
(下部比重−上部比重)/理論比重=沈降性(%)
(3)硬化物のガラス転移点
得られた硬化物について、TMA法により、昇温温度を15℃/minとして室温から185℃まで昇温させて、測定した。
(4)硬化物の曲げ強さ
得られた硬化物について、JIS C 2105に準じ、温度25℃において測定した。
(5)長期信頼性試験後の硬化物の耐クラック性
硬化物が直径40mm、高さ70mmの円柱状になるようにM16のボルトとナットを埋め込んだサンプルを5個ずつ作製し、冷熱サイクル試験を行った。表1に示した条件に従い、上限温度で20分放置し、次いで、下限温度で20分放置した後のサンプルを目視にて観測した。サンプルにクラックが観測されたサイクル数を該サンプルのクラック指数とし、5個のサンプルのクラック指数の平均値を求めた。なお、クラック指数が21以上を合格とする。
(6)長期信頼性試験後のコイル装置の耐クラック性
実施例1〜6、及び比較例1〜5で得られたエポキシ樹脂組成物を用いて、上記コイル装置の製造に従い、それぞれコイル装置を5個作成した。表2に示した条件に従い、130℃で15分放置し、次いで、−40℃で15分放置した後のコイル装置を目視にて観測した。コイル装置にクラックが観測されたサイクル数を該コイル装置のクラック指数とし、コイル装置5個のクラック指数の平均値を求めた。なお、クラック指数が30以上を合格とする。
表3から、実施例1〜6の成分(C)の微粉末シリカを含む主剤と、硬化剤との混合液の粘度は、6〜10Pa・sであり、粘度の上昇はみられず、また、該混合液中のシリカ((B)成分及び(C)成分)の沈降性は0.1〜3.6%と低く、作業性に優れることがわかった。また、実施例1〜6では、硬化物の曲げ強さは148〜150MPaであり、成分(C)を含まない樹脂組成物を用いた比較例1〜3と比較して、値が高いことから、硬化物の機械強度が向上したといえる。更に、実施例1〜6では、硬化物の耐クラック性(クラック指数)が22〜43.2であり、比較例1〜3と比較して値が高く、コイルの耐クラック性(クラック指数)が30〜65と高いことから、耐クラック性が向上したといえる。
Claims (4)
- (A)エポキシ樹脂、(B)平均粒径5〜30μmのシリカ粒子、及び(C)親水性のフュームドシリカである、平均粒径5〜40nmの微粉末シリカを含有する主剤と、(D)酸無水物、及び(E)硬化促進剤を含有する硬化剤とを含む、2液型注形用エポキシ樹脂組成物。
- 前記(B)成分のシリカ粒子と前記(C)成分の微粉末シリカとの質量比((B)/(C))が40/1〜300/1である、請求項1に記載の2液型注形用エポキシ樹脂組成物。
- 請求項1又は2に記載の2液型注形用エポキシ樹脂組成物をコイルに注形し、硬化させてなる、コイル部品。
- (B)平均粒径5〜30μmのシリカ粒子の表面に、(C)親水性のフュームドシリカである、平均粒径5〜40nmの微粉末シリカを被覆させ被覆体としたのち、該被覆体を(A)エポキシ樹脂に混合して主剤を製造する工程(1)と、(D)酸無水物と、(E)硬化促進剤とを混合して硬化剤を製造する工程(2)とを有する、2液型注形用エポキシ樹脂組成物の製造方法。
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