JP4332324B2 - ダイナミックダンパ及びその取付構造 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はダイナミックダンパ及びその取付構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
ダイナミックダンパは、質量体を振動体に弾性体を介して支持して副振動系を構成することにより、振動体の所定振動数における振動レベルを低減させるものとして知られている。このダイナミックダンパの一例が特開2000−337431号公報に記載されている。これは、内筒と外筒とを弾性体によって連結し、外筒に円筒状の質量体を嵌めたものであり、その内筒が軸心を上下方向に配向してエンジン支持用の車体側メンバーにねじ部材によって固定されている。また、弾性体に上下方向の貫通孔が形成されて、該弾性体に水やほこりが溜まる不都合を回避するようになされている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、自動車においては、パワープラント(エンジン及び変速機)の設計及び該パワープラントのエンジンルームへのレイアウト設計が終わった段階で、該パワープラントの振動対策が講じられる、つまり、ダイナミックダンパの設置が検討されることが多い。しかし、最近はエンジンルーム内に種々のエンジン部品ないしは補機類、その他の機器が所狭しと配置される傾向にあり、エンジンルーム内の基本的な設計が終わった段階では、ダイナミックダンパをパワープラントへ取り付けるスペースを確保することができないことがある。
【0004】
本発明の課題の一つは、このダイナミックダンパの配置スペースの問題に対策することにある。
【0005】
この問題の解決のために、本発明者は、ドーナツ型のダイナミックダンパを採用し、その軸心が垂直になるように設けることを検討した。すなわち、このドーナツ型ダンパは、中心にねじ挿入孔を有する取付部材の上面に、該ねじ挿入孔を巡るように環状になった質量体が同じく環状になった弾性体を介して取り付けられたものである。
【0006】
このドーナツ型ダンパでは、その中央部に、底面が上記取付部材によって形成され周囲が上記環状の質量体及び弾性体で囲まれた凹部ができることになる。そのため、この凹部に水が溜まって取付部材やねじ部材の腐食を招くおそれがあるとともに、エンジンルームの点検の際に凹部に溜まった水が目に付いてドライバーの気に障る懸念もある。
【0007】
しかし、このドーナツ型ダンパの場合、凹部の底面は取付部材によって構成されていて、取付部材の下側は振動体(例えばパワープラント)になっているから、上記従来技術のダイナミックダンパとは違って、上下方向の貫通孔を凹部底面に設けることはできない。
【0008】
すなわち、本発明の他の課題は、上述の如きドーナツ型ダンパの凹部に溜まる水に対策することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記ダイナミックダンパの配置スペースの問題に対処するために、上記ドーナツ型ダンパを採用し、これをパワープラント本体ではなく、このパワープラント本体から延びるブラケットを介してパワープラント本体のマウント装置に取り付けるようにした。
【0010】
また、本発明は、上記水の溜まりに対処するために、ドーナツ型ダンパの取付部材又は弾性体に横方向の水抜き通路を形成するようにした。
【0011】
まず、請求項1に係る発明は、自動車のパワープラントの振動を抑制するダイナミックダンパの取付構造であって、
上記ダイナミックダンパは、中心にねじ挿入孔を有する取付部材と、該取付部材のねじ挿入孔を巡るように設けられ且つ弾性体を介して該取付部材の上面に取付けられた環状の質量体とを備えてなり、
上記弾性体は、上記ねじ挿入孔を巡る環状に形成されているとともに、この弾性体には、上記ねじ挿入孔を巡る上記質量体の内側の凹部と外側とを結ぶ横方向の水抜き通路が、上記ダイナミックダンパの軸心と直交する方向に相対する2箇所に形成されており、
上記パワープラントより延設されたブラケットの上面に、軸心を上下方向にして上記ダイナミックダンパの取付部材が重ねられ、該取付部材がブラケットと共に、車体に固定されたマウント装置の上部にねじ部材によって固定されていることを特徴とする。
【0012】
すなわち、パワープラントから延設されたブラケットをマウント装置の上部にねじ止めする構造の場合、マウント装置の上方に当該ねじ止めのためのスペースが形成される。本発明はこのスペースを利用してダイナミックダンパを設けるようにしたものであり、従って、ダンパ配置のための専用のスペースを確保する必要がなくなる。
【0013】
そうして、上記マウント装置上方のスペースが上下に狭い場合でも、当該ダイナミックダンパは軸心を上下方向にしたドーナツ型であるから、この上下に狭いスペースに配置する上で有利になる。
【0014】
また、上記ブラケットはパワープラントからマウント装置を介して車体に振動を伝える伝達部材であり、この振動伝達部材にダイナミックダンパを取り付けてその振動を抑制するようにしたから、車体への振動伝達防止に有利になる。
【0015】
また、上記質量体内側の凹部に雨水や自動車洗滌水が入っても、上記水抜き通路によって排水され、取付部材、該取付部材をマウント装置に固定するねじ部材、或いは質量体の腐食を招くことが避けられるとともに、凹部に水が溜まらないから、エンジンルームを開けたときに気に障ることもなくなる。また、上記取付部材や弾性体は、パワープラントの振動に伴って振動するから、仮に上記水抜き通路の入口部位に埃が舞い降りてもその部位に付着することが避けられ、水抜き通路の目詰まりが防がれる。
【0016】
請求項2に係る発明は、中心にねじ挿入孔を有し、該ねじ挿入孔を上下方向に配向して振動体にねじ部材によって固定される取付部材と、
上記取付部材のねじ挿入孔を巡るように設けられ且つ弾性体を介して上記取付部材の上面に取付けられた環状の質量体とを備え、
上記弾性体は、上記ねじ挿入孔を巡る環状に形成されているとともに、この弾性体には、上記ねじ挿入孔を巡る上記質量体の内側の凹部と外側とを結ぶ横方向の水抜き通路が、上記ダイナミックダンパの軸心と直交する方向に相対する2箇所に形成されていることを特徴するダイナミックダンパである。
【0017】
従って、このようなダイナミックダンパであれば、上記パワープラントのブラケットと共に上記マウント装置に取り付けてスペース上の問題に対策することができ、また、質量体内側の凹部に水が溜まることを避けることができる。
【0018】
【発明の効果】
以上のように、請求項1に係る発明によれば、中心にねじ挿入孔を有する取付部材の上面に、該ねじ挿入孔を巡るように弾性体を介して環状の質量体を取り付けることによってドーナツ型のダイナミックダンパを構成し、且つ上記弾性体は上記ねじ挿入孔を巡る環状に形成するとともに、この弾性体には、上記ねじ挿入孔を巡る上記質量体の内側の凹部と外側とを結ぶ横方向の水抜き通路を、上記ダイナミックダンパの軸心と直交する方向に相対する2箇所に形成し、このダンパをパワープラントのブラケットと共にマウント装置の上部に軸心を上下方向にしてねじ部材によって固定するようにしたから、マウント装置上方のブラケットをねじ止めするためのスペースを利用して(ダンパ専用のスペースを確保することを要さずに)ダイナミックダンパを設けることができ、エンジンルーム内の各種機器のレイアウトに有利になるとともに、ダイナミックダンパによって上記ブラケットの振動を抑制するようにしたから、パワープラントから車体への振動伝達防止に有利になる。しかも、質量体内側の凹部に水が溜まることがなくなり、取付部材やねじ部材或いは質量体の腐食が防止されるとともに、エンジンルームを開けたときの見映えを損なうこともなくなり、さらに、水抜き通路の目詰まりも生じ難いものとなる。
【0019】
請求項2に係る発明によれば、中心のねじ挿入孔が上下方向に配向される取付部材の上面に、該ねじ挿入孔を巡るように弾性体を介して環状の質量体が取り付けられ、その弾性体は上記ねじ挿入孔を巡る環状に形成されているとともに、この弾性体には、上記ねじ挿入孔を巡る上記質量体内側の凹部と外側とを結ぶ横方向の水抜き通路が、上記ダイナミックダンパの軸心と直交する方向に相対する2箇所に形成されているから、パワープラントのブラケットと共にマウント装置の上部に取り付けてスペース上の問題に対策することができ、また、質量体内側の凹部に水が溜まることを避けることができる。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0021】
図1に示すダイナミックダンパ取付構造において、1はダイナミックダンパ、2はパワープラントを車体に支持するマウント装置、3はパワープラントから延設されたブラケットである。ダイナミックダンパ1は、マウント装置2の上部にブラケット3を介して取り付けられている。
【0022】
マウント装置2は、図2にも示すように、金属製外套5で補強したゴム製容器の中に液体を封入した上下2つの室を設け、この両室をオリフィスでつないだものであり、外套5には車体に取り付けるための車体ブラケット6〜8が設けられている。また、上側の液封室を形成する上側ラバーに金属製支持部材9が結合されていて、この支持部材9の上面に上記ブラケット3が重ねられ、このブラケット3のダンパ取付面4にダイナミックダンパ1の後述する取付部材11が重ねられ、この取付部材11とブラケット3とが支持部材9にねじ部材12によって共締めされている。
【0023】
ダイナミックダンパ1は、上記取付部材11の上面に金属製の質量体13がゴム製の弾性体14を介して取付けられたものである。取付部材11は、図3及び図4に示すように円板状の金属製プレートによって形成されていて、その中心に上記ねじ部材12のためのねじ挿通孔15が形成されている。質量体13は、上記取付部材11のねじ挿通孔15を巡る環状に形成されており、弾性体14も同じく環状に形成されている。但し、図4に示すように、質量体13はその内周面、上面及び外周面が弾性体14に連なるゴム皮膜によって覆われている。
【0024】
そうして、上記取付部材11と質量体13とによって形成された質量体内側の凹部19とその外側とが、上記弾性体14を横方向に貫通する水抜き通路16によって結ばれている。この水抜き通路16の最も低くなった底は取付部材11の上面によって形成されている。また、水抜き通路16は、ダイナミックダンパ1の軸心と直交する方向に相対するように2箇所に形成されている。
【0025】
従って、上述の如きダイナミックダンパ取付構造であれば、ブラケット3をマウント装置2の上部にねじ止めするためのスペースがダイナミックダンパ配設スペースとなり、ダイナミックダンパ専用のスペースを確保する必要がなくなる。また、ダイナミックダンパ1は軸心を上下方向にしたドーナツ型であって、上下に広いスペースをとらないから、上記マウント装置2の上方のスペースが上下に狭い場合でも、その配置が容易になる。そうして、パワープラントの振動は、ブラケット3からマウント装置2を介して車体に伝わるが、この振動伝達経路上に存するブラケット3にダイナミックダンパ1を取り付けたから、パワープラントから車体への振動伝達の抑制に有利になる。
【0026】
また、上記ダイナミックダンパ1の弾性体14に横方向の水抜き通路16が形成されているから、上記質量体13の内側の凹部19に雨水や自動車洗滌水が入っても、上記水抜き通路16によって排水され、取付部材11や、該取付部材11をマウント装置2に固定するねじ部材12の腐食を招くことが避けられる。しかも、当該凹部19に水が溜まらないから、エンジンルームを開けたときにドライバー等の気に障ることもなくなる。また、上記取付部材11及び弾性体14は、パワープラントの振動に伴って振動するから、仮に上記水抜き通路16の入口部位に埃が舞い降りてもその部位に付着することが避けられ、水抜き通路16の目詰まりを生じ難い。
【0027】
図5はダイナミックダンパ1の他の実施形態を示す。すなわち、このダンパ1では、質量体13の下面に軸心と直交するように延びる切欠き17を形成することにより、弾性体14から質量体に跨る大径の水抜き通路16が形成されている。水抜き通路16の底は取付部材11の上面によって形成されている。
【0028】
このような構造であれば、弾性体14の厚さが小さい場合でも、該弾性体14の厚さよりも大径の水抜き通路16が得られ、質量体内側の凹部19からの排水性を高める上で有利になる。
【0029】
図6はダイナミックダンパ1のさらに他の実施形態を示す。すなわち、このダンパ1では、弾性体14を貫通する貫通孔が形成されているとともに、該貫通孔に対応するように、取付部材11に、質量体内側の凹部の部位から取付部材11の周縁まで延びる切欠き18が形成されて、この弾性体14の貫通孔と取付部材11の切欠き18とによって、弾性体14の厚さよりも深い水抜き通路16が形成されている。この場合、水抜き通路16の底は振動体(例えば上述のブラケット3)の上面によって形成されることになる。
【0030】
従って、本例の場合も、弾性体14の厚さが小さいときに、該弾性体14の厚さよりも深い水抜き通路16が得られ、質量体内側の凹部からの排水性を高める上で有利になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施形態に係るダイナミックダンパ取付構造を示す一部断面にした正面図。
【図2】 同ダイナミックダンパ取付構造の分解斜視図。
【図3】 同実施形態のダイナミックダンパを示す一部切り欠いた平面図。
【図4】 同ダイナミックダンパを示す縦断面図。
【図5】 他の実施形態に係るダイナミックダンパの平面図(a)と側面図(b)。
【図6】 さらに他の実施形態に係るダイナミックダンパの底面図(a)と側面図(b)。
【符号の説明】
1 ダイナミックダンパ
2 マウント装置
3 ブラケット
11 取付部材
12 ねじ部材
13 質量体
14 弾性体
15 ねじ挿通孔
16 水抜き通路

Claims (2)

  1. 自動車のパワープラントの振動を抑制するダイナミックダンパの取付構造であって、
    上記ダイナミックダンパは、中心にねじ挿入孔を有する取付部材と、該取付部材のねじ挿入孔を巡るように設けられ且つ弾性体を介して該取付部材の上面に取付けられた環状の質量体とを備えてなり、
    上記弾性体は、上記ねじ挿入孔を巡る環状に形成されているとともに、この弾性体には、上記ねじ挿入孔を巡る上記質量体の内側の凹部と外側とを結ぶ横方向の水抜き通路が、上記ダイナミックダンパの軸心と直交する方向に相対する2箇所に形成されており、
    上記パワープラントより延設されたブラケットの上面に、軸心を上下方向にして上記ダイナミックダンパの取付部材が重ねられ、該取付部材がブラケットと共に、車体に固定されたマウント装置の上部にねじ部材によって固定されていることを特徴とするダイナミックダンパの取付構造。
  2. 中心にねじ挿入孔を有し、該ねじ挿入孔を上下方向に配向して振動体にねじ部材によって固定される取付部材と、
    上記取付部材のねじ挿入孔を巡るように設けられ且つ弾性体を介して上記取付部材の上面に取付けられた環状の質量体とを備え、
    上記弾性体は、上記ねじ挿入孔を巡る環状に形成されているとともに、この弾性体には、上記ねじ挿入孔を巡る上記質量体の内側の凹部と外側とを結ぶ横方向の水抜き通路が、上記ダイナミックダンパの軸心と直交する方向に相対する2箇所に形成されていることを特徴するダイナミックダンパ。
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