JP4332295B2 - 定着装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は電磁(磁気)誘導加熱方式の定着装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
電磁誘導加熱方式の定着装置は、固定もしくは移動する導電部材(電磁誘導発熱性部材、誘導磁性材、磁界吸収導電材)に磁場を作用させて、前記導電部材に発生する渦電流による発熱により画像を担持する記録材の加熱を行うものであり、たとえば、電子写真方式、静電記録方式、磁気記録方式等の画像形成装置において未定着トナー画像を形成担持させた記録材を加熱して未定着トナー画像を固着画像として加熱定着させる。
【0003】
一般に画像加熱定着装置においては、固定もしくは移動する導電部材に磁場を作用させて導電部材に発生する渦電流による発熱により、導電部材に直接もしくは間接に接して搬送される被加熱材である記録材を加熱するために、コイルとコアによる磁場発生手段を記録材の搬送方向と交差する方向にて構成する。
【0004】
前記コアは、トランスやチョークコイルに多用されるフェライトコアを使用するのが一般的である。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
焼結品であるフェライトコアは、厚みを薄く成型することが困難であり、通常薄いものとして3〜5mm程度の厚みを持っている。ある程度の厚みを持っているため、このコアを保持するための機構として複雑なものは通常必要としない。ただし、電気的な特性から考えた場合、必要な磁束密度に対して有効断面積に充分な余裕があるにも関わらず、逆に成型上で決定してしまう最低限の厚みを持ったまま使用しなければならないという弊害を持っている。すなわち、コアの厚みは、必要とする磁束密度から考えた実効断面積よりも厚く形成されており、不要な空間を増やしていたとともに使用材料が増すことによりコスト面でもアップする方向に作用していた。
【0006】
また、フェライトコアは、前にも述べたように焼結品であるため、衝突や落下などの衝撃に弱く、割れや欠けが発生する恐れがある。割れや欠けが生じたまま使用すると、特性劣化や発熱などの原因となるため、製造工程にて取り扱いに注意が必要となってしまう。
【0007】
そして、上記したような問題の解消に有効な強磁性体金属材料としては、例えばアモルファス合金や珪素鋼板が挙げられるが、成型上薄板となってしまうため必要な厚みを得るためには必要な厚みまで積層して使用することになる。ここで、前記薄板を積層しコアとして使用するには、ガタツキやばらけ等に起因する性能低下を防止するため確実に保持しなければならない。
【0008】
そこで本発明は、簡易な手段にて積層した薄板をコアとして保持することができるとともに、薄板の材質によりコイルの巻幅を広げることができ、導電部材及びコイルの過昇温を押さえるとともに、コア材の強度を増すことのできるようにした電磁(磁気)誘導加熱方式の定着装置を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は下記の構成を特徴とする定着装置である。
【0010】
(1)導電層を有し画像を担持する記録材と接触する定着用回転体と、前記定着用回転体の導電層に渦電流を発生させて発熱させるための励磁コイルと、前記励磁コイルにより発生する磁束を前記導電層に導く磁性コアと、前記励磁コイルと前記磁性コアを保持するホルダーと、を有する定着装置において、前記磁性コアは薄板を2枚以上積層したもので、且つ前記定着用回転体の母線方向に沿って配置されており、前記装置は前記磁性コアを挟み込んで保持するクランプ部を有する積層コア保持部材を有し、前記磁性コアを前記積層コア保持部材に保持した状態で前記ホルダーの保持部に挿入し前記積層コア保持部材と前記ホルダーの保持部を嵌合させることで前記磁性コアが前記ホルダーに保持される構造となっていることを特徴とする定着装置。
(2)画像を担持する記録材と接触する定着用回転体と、固定配置されており前記定着用回転体を加熱する導電部材と、前記導電部材に渦電流を発生させて発熱させるための励磁コイルと、前記励磁コイルにより発生する磁束を前記導電部材に導く磁性コアと、前記励磁コイルと前記磁性コアを保持するホルダーと、を有する定着装置において、
前記磁性コアは薄板を2枚以上積層したもので、且つ前記定着用回転体の母線方向に沿って配置されており、前記装置は前記磁性コアを挟み込んで保持するクランプ部を有する積層コア保持部材を有し、前記磁性コアを前記積層コア保持部材に保持した状態で前記ホルダーの保持部に挿入し前記積層コア保持部材と前記ホルダーの保持部を嵌合させることで前記磁性コアが前記ホルダーに保持される構造となっていることを特徴とする定着装置。
(3)前記磁性コアを形成する前記薄板はアモルファス合金または珪素鋼板であり、その1枚の厚みは300μm以下であることを特徴とする(1)または(2)に記載の定着装置。
(4)前記ホルダーのクランプ形状部は前記磁性コアの前記薄板の平らな面を押すように前記磁性コアを挟み込んでいることを特徴とする(1)または(2)に記載の定着装置。
【0011】
【0012】
【0013】
【0014】
【0015】
【0016】
【0017】
【0018】
【0019】
【0020】
【0021】
【0022】
【0023】
【0024】
【0025】
[作 用]
本発明は、従来に比べてコアの形状及び材質を変える。すなわち強磁性材料であり機械的な強度もあるアモルファス合金や珪素鋼板を適用することで、薄板の磁性体板の積層により形成された積層コアを実現することができる。そしてこれらの1枚が薄い板を、複数枚積層し磁性コアとして使用することは、実使用上での磁束密度より算出される必要な磁性コアの実効断面積に対し、最小限の厚みに設定することができる。また、機械的な強度のある材料で磁性コアを形成するため取り扱いが容易になるという優位性もある。そして、これらの材質は1枚が薄く積層することで必要な断面積を得るため、複数枚にしたものを安定して使用するためにはホルダーにて保持することが不可欠であり、ホルダーに保持する機構を持たせる事が簡易で有効な手段である。また、保持するための強度が足りない場合、別途保持部材を備えることが効果的である。
【0026】
また定着装置にあっては、定着用回転体及び励磁コイルの過昇温対策として、磁場発生手段に必要な磁性コアを、アモルファス合金または珪素鋼板による薄板を複数枚積層しホルダーにおいて保持する構成をとることで、無駄に発生してしまう熱を減少させることができるとともに、定着用回転体及び励磁コイルにおける熱伝導や電流増加を改善することができるなど、簡易な手段にて定着用回転体及び励磁コイルの過昇温対策が行える。
【0027】
【発明の実施の形態】
(1)画像形成装置例
図1は本実施例における画像形成装置の概略構成模型図である。本例の画像形成装置は転写式電子写真プロセスを用いたプリンタもしくは複写機である。
【0028】
11は像担持体としての感光ドラムであり、OPC、アモルファスSe、アモルファスSi等の感光材料がアルミニウムやニッケルなどのシリンダ状の基体上に形成されている。この感光ドラム11は矢印の反時計方向に所定の周速度(プロセススピード)をもって回転駆動される。
【0029】
帯電工程:回転感光ドラム11は、まず、帯電装置としての、所定の帯電バイアス電圧が印加された帯電ローラ12によってその表面が所定の極性・電位に一様帯電される。
【0030】
露光工程:次に、回転感光ドラム11の帯電処理面に不図示の像露光手段、例えばレーザビームスキャナにより画像情報に応じてON/OFF制御されたレーザビーム13による走査露光が施される。これにより、回転感光ドラム11面に走査露光パターンに対応した静電潜像が形成される。
【0031】
現像工程:その静電潜像は現像装置14でトナー像として現像される。現像方法としては、ジャンピング現像法、2成分現像法、FEED現像法などが用いられ、イメージ露光と反転現像とを組み合わせて用いられることが多い。
【0032】
転写工程:回転感光ドラム11面のトナー像は、転写装置としての転写ローラ15と感光ドラム11との当接部である転写ニップ部において記録材P上に転写される。
【0033】
転写ローラ15は感光ドラム11に所定の加圧力で当接させてあり、感光ドラム11の周速度と略同じ周速度で感光ドラムの回転方向に順方向に回転する。また所定の転写バイアス電圧が印加される。記録材Pは不図示の給紙機構側から所定の制御タイミングで転写ニップ部に給紙され、感光ドラム11と転写ローラ15とで形成される転写ニップ部の一定の加圧力で挟持搬送される。
【0034】
ここで、感光ドラム11上のトナー像の画像形成位置と記録材の先端の書き出し位置が合致するように、給紙機構側から転写ニップ部に搬送された記録材の先端をセンサ18にて検知し、タイミングを合わせている(レジストレーション)。
【0035】
定着工程:転写ニップ部でトナー像の転写を受けた記録材Pは回転感光ドラム11の面から分離されて定着装置16へと搬送され、記録材に担持されている未定着画像であるトナー像が固着画像として定着される。
【0036】
クリーニング工程:一方、感光ドラム11上に残存する転写残りの残留トナーは、クリーニング装置17により感光ドラム11表面より除去される。感光ドラム11は繰り返して作像に供される。
【0037】
(2)定着装置16
A)装置の全体的な概略構成
図2の(a)は参考例の定着装置16の拡大横断面模式図である。この定着装置16は電磁誘導加熱方式の定着装置である。
【0038】
1は画像を担持する記録材と接触する定着用回転体としての円筒状の定着ローラであり、磁場の作用で発生する渦電流により発熱する導電部材(導電層)を有する。具体的には、鉄やニッケル、ステンレスなどの磁性特性をもつ導電部材で形成されている。この定着ローラ1はその両端部側を軸受(不図示)を介して装置のシャーシ側板(不図示)間に回転自由に支持させて配設してある。
【0039】
2はコイルアセンブリであり、上記の円筒状の定着ローラ1内に配設してあり、磁場を発生して定着ローラ1を電磁誘導発熱させる。このコイルアセンブリについては後に詳述する。
【0040】
7は加圧ローラであり、芯金7aと、この芯金周りに同心一体にローラ状に被覆した耐熱性弾性体層7bとからなる。この加圧ローラ7は定着ローラ1の下側において定着ローラ1と並行に配列して芯金7aの両端部を軸受(不図示)を介して装置のシャーシ側板(不図示)間に回転自由に支持させて配設するとともに、付勢部材(不図示)で定着ローラ1の下面に対して弾性体層7bの弾性に抗して所定の押圧力をもって圧接させて、所定幅の定着ニップ部Nを形成させてある。
【0041】
上記の定着ローラ1と加圧ローラ7のローラ対は駆動系(不図示)により矢印の方向に所定の回転速度にて回転駆動される。前記したように転写ニップ部で未定着トナー画像tの転写を受けた記録材Pは上記の定着ニップ部Nに導入されて挟持搬送され、その挟持搬送過程で電磁誘導加熱された定着ローラ1の熱とニップ圧により未定着トナー画像tが記録材P面に加熱定着される。定着ニップ部Nを通った記録材はローラ1の面から分離されて搬送される。
【0042】
B)コイルアセンブリ2
円筒状の定着ローラ1内に配設したコイルアセンブリ2は、磁場発生手段を構成する励磁コイル3と磁性コア4、および該磁場発生手段3・4を保持させたホルダー5等で構成されている。
【0043】
ホルダー5は、横断面略半円弧状樋形で、例えば液晶ポリマー・フェノール樹脂等で成形された耐熱性・断熱性・剛性を有する部材である。
【0044】
励磁コイル3は上記ホルダー5の内面形状に略対応させてリッツ線等を船形に巻いて構成したもので、ホルダー5の内側に嵌入させて配設保持させてある。被加熱材である記録材Pの搬送方向と交差する方向にて構成される。
【0045】
磁性コア4は、図2の(b)の部分拡大模型図のように、磁性体の薄板を2枚以上積層した積層コアである。この積層コア4を、ホルダー5の内側中央部に上向きに具備させたクランプ形保持部(クランプ形状部)6に差し込んで保持させている。積層コア4は被加熱材である記録材Pの搬送方向と交差する方向にて構成される。即ち、クランプ形保持部6は定着用回転体である定着ローラ1の母線方向に沿って配置されており、磁性体薄板の積層コアである磁性コア4を挟みこむ。
【0046】
磁性体薄板4aの積層により積層コア4を構成し使用するには、ホルダー5による保持が不可欠である。ホルダー5は、上記のように積層コア4を間に挟むとともに抑え込む機構としてのクランプ形保持部6を備えており、これが積層コア4を保持する。この機構6をホルダー5に備えることで、積層コア4を簡易な構成にて確実に固定できる。
【0047】
積層コア4を間に挟むとともに抑え込む機構6は樹脂やガラスなどの耐熱素材で構成される。本実施例ではホルダー5と同じ材質で一体成形で具備させている。ホルダー5と同じあるいは別の材質で構成したものをホルダー5に後付あるいは一体モールド成形で具備させることもできる。
【0048】
上記のコイルアセンブリ2は円筒状の定着ローラ1内に円弧外面側を下向きにして挿入され、ホルダー5の両端部を不動の保持部材(不図示)に固定保持させて配設してある。
【0049】
C)定着ローラ1の温調
磁場発生手段3・4の励磁コイル3に励磁回路9から交番電流を印加することによって磁場が発生し、発生した磁場が導電部材で形成された定着ローラ1を通過することで定着ローラ1が電磁誘導発熱する。
【0050】
定着ローラ1・加圧ローラ7を回転駆動させ、励磁コイル3に交番電流を印加することで定着ローラ1を電磁誘導発熱させる。その定着ローラ1の温度状態が温度検知素子としてのサーミスタ8によって検知され、検知温度情報が制御回路10に入力する。制御回路10は定着ローラ1の温度(定着ニップ部Nの温度)が所定の定着温度に温調維持されるように、励磁回路9から励磁コイル3への交番電流の印加を制御する。
【0051】
そして前記したように転写ニップ部で未定着トナー画像tの転写を受けた記録材Pは上記の定着ニップ部Nに導入されて挟持搬送され、その挟持搬送過程で電磁誘導加熱された定着ローラ1の熱とニップ圧により未定着トナー画像tが記録材P面に加熱定着される。
【0052】
サーミスタ8は本実施例ではホルダー5の下面部に固定配設させて感温面を回転する定着ローラ1の内面に接触させている。定着ローラ1の温度検知手段構成は任意である。
【0053】
D)積層コア保持構造の実施例
図3は本発明に従う積層コア保持構造の実施例を示したものである。6Aはホルダー5とは別個の積層コア保持部材であり、樹脂やガラスなどの耐熱素材にて構成されている。この保持部材6Aは積層コア4を間に挟むとともに抑え込む機構部(クランプ部)61を備えており、積層コア4を保持する。そして、保持部材6Aに積層コア4を保持したまま、前記ホルダー5側のクランプ形保持部6に積層コア4を挿入することで磁場を発生させる手段とする。
【0054】
上記以外の装置構成は図2の装置と同様であるから,再度の説明は省略する。
【0055】
この例は積層コア保持部材6Aがホルダー5から独立していることで形状と強度の設計に自由度が大きい。
【0056】
また、コイルアセンブリ2として使用するためには、積層コア保持部材6Aとホルダー5側のクランプ形保持部6とに嵌合部62を備えることが更に有効である。
【0057】
よって、積層コア4を保持するために、ホルダー6とは別個の積層コア保持部材6Aを備え、ホルダー6とともに使用することで、簡易な構成にて確実に固定できる。
【0058】
E)積層コア4について
E−1:積層コア4は薄板4aが2枚以上の複数にて構成されている。前記コイルアセンブリ2として組み立てる時に、積層コア4は薄板4a複数枚により構成されるためバラバラになり易い。
【0060】
E−2:励磁コイル3と定着ローラ1及び積層コア4は構成により異電位(高電圧)となることがある。このため、安全性の問題から、ホルダー5と積層コア保持部材6Aが絶縁部材となり、異電位間の部分に対し互いに規定の距離を離せることが望まれる。
【0061】
本実施例では、ホルダー5と積層コア保持部材6Aは、異電位となる部材に相対する部位全てにおいて0.4mm以上の厚みを確保する。
【0062】
また、ホルダー5及び積層コア保持部材6Aの材料としてはUL認可品や電取認可品を使用する。
【0063】
これらを行うことで、国内外の規制による必要な空間距離は、条件として沿面距離に置き換えることも可能となり設計上の制約が緩和される。
【0064】
よって、安全規制の考え方から異電位となる各部材5・6A間において、ホルダー5及び積層コア保持部材6Aに0.4mm以上の厚みを確保することで絶縁部材とすることができ、安全な距離を保つことができる。
【0065】
E−3:薄板4aを積層して積層コア4として使用した場合、従来の1枚が3〜5mm厚であるフェライトコアに対し同じ断面積となるように形成した積層コア4での効果として、高周波(20kHz以上)におけるコアの表皮効果による影響が小さくなることが挙げられる。
【0066】
薄板4aを形成するためには、特定の金属材料を使用する必要性があり、Fe、Ni、Coなどの強磁性体の金属を主成分とし非結晶であるアモルファス合金により構成される薄板が有効である。アモルファス合金は、鉄損が小さく磁束密度が大きいこと、温度特性に優れていること、キュリー点の高いことが特徴であるため、加熱装置による環境温度の高温下では有効な材料であると言える。
【0067】
よって従来に比べて、磁場発生手段におけるコア4をアモルファス合金による薄板にて積層しコアを形成することで、定着ローラ1内にて励磁コイル3の巻き幅を増やすことができ、励磁コイル3の自己発熱を減少させるとともに、励磁コイル3の定着ローラ1への対向面積を増やし励磁コイル3の自己発熱による熱を定着ローラ1とともに均熱化することができ、コア断面積を小さくできることによるコストダウンや定着ローラ1内の有効な空間を増やすことができるなど、簡易な手段にて定着ローラ1及び励磁コイル3の過昇温対策を行うことができる。
【0068】
E−4:上記E−3と同様に薄板材としては、珪素鋼板により構成されるコアが有効である。珪素鋼板は、磁束密度が大きいこと、加工が容易であること、機械的強度があること、コスト的に有利であることが特徴であるため、上記E−3と同様加熱装置による環境温度の高温下では有効な材料であると言える。そして、加工が容易であるため打ち抜きによる一体成型が行えることや、寸法精度の高い成型ができるため最適な寸法のホルダー5が実現できるなどの利点も挙げられる。
【0069】
よって従来に比べて、磁場発生手段3・4におけるコア4を珪素鋼板にて積層し形成することで、励磁コイル3の定着ローラ1への対向面積を増やし励磁コイル3の自己発熱による熱を定着ローラ1とともに均熱化することができ、安価な材料を使うことによるコストダウンや熱による変形率が低いため設計が容易となるなど、簡易な手段にて定着ローラ1及び励磁コイル3の過昇温対策を行うことができる。
【0070】
E−5:積層コア4を構成する薄板4aの厚みd(図2の(b))は、薄いほど表皮効果の影響が少なくコアにおける渦電流による損失が減る。従来使用してきたフェライトではE−3・E−4でも述べた通り、製造上の問題から厚みを薄くすることが困難である。薄くするためにはE−3・E−4で述べたアモルファス金属や珪素鋼鈑が有効であり、これらの材料にて、前記薄板4aを複数枚にて積層し積層コア4として形成することが効果的である。
【0071】
必要なコア断面積に対し薄板4aにより積層コア4として形成し得ることは、コアにおける磁束を薄板4aの1枚1枚に分散し、表皮効果の影響を少なくするともに渦電流損を減少させる。表皮効果の影響から考えると、300μm以下の厚みの薄板4aを使用することが望ましい。
【0072】
よって従来に比べて、磁場を発生させる手段として必要なコアを、薄板4aを複数枚にて積層コア4として形成し無駄な熱を減少させることで、積層コア4から励磁コイル3に伝わる無駄な熱を減らすことができ、励磁コイル3に流す電流を減らすことができるなど、簡易な手段にて定着ローラ1及び励磁コイル3の過昇温対策を行うことができる。
【0073】
(3)その他
1)上記の実施例においては磁場発生手段3・4を含むコイルアセンブリ2を定着ローラ1の内部に配設した場合にて説明しているが、定着ローラ1の外部にコイルアセンブリ2を配設し定着ローラ外部から誘導加熱を行う場合においても同様の効果が得られる。
【0074】
2)また、本実施例では、電磁誘導発熱する導電層を有する定着用回転体として金属の定着ローラ1を記載しているが、電磁誘導発熱する定着用回転体が同様の磁気特性をもつ金属フィルムにて構成された定着装置においても同様の効果が得られる。
【0075】
図4にその装置例を示した。1Aは電磁誘導発熱する定着用回転体としての、円筒状のフレキシブルな金属フィルム或いは金属層(導電層)を含む複合層フィルムである。この複合層フィルムを、図2の装置のように磁場発生手段3・4を含む固定のコイルアセンブリ2にルーズに外嵌させてある。加圧ローラ7はコイルアセンブリ2の下面に対して上記フィルム1Aを挟んで所定の押圧力で圧接させて所定幅の定着ニップ部Nを形成させてある。
【0076】
加圧ローラ7は駆動系Mにより矢印の方向に回転駆動される。これに従動してフィルム1Aがコイルアセンブリ2の外周りを矢印の方向に回転状態になる(加圧ローラ駆動方式)。励磁コイル3に交番電流を印加することでフィルム1Aを電磁誘導発熱させる。定着ニップ部Nの温度状態が温度検知素子としてのサーミスタ8によって検知され、検知温度情報が制御回路10に入力する。制御回路10は定着ニップ部Nの温度が所定の定着温度に温調維持されるように、励磁回路9から励磁コイル3への交番電流の印加を制御する。
【0077】
そして前記したように転写ニップ部で未定着トナー画像tの転写を受けた記録材Pは上記の定着ニップ部Nに導入されて挟持搬送され、その挟持搬送過程で電磁誘導加熱されたフィルム1Aの熱とニップ圧により未定着トナー画像tが記録材P面に加熱定着される。
【0078】
3)電磁誘導発熱させる導電部材は固定配置の部材にすることもできる。図5にその装置例を示した。1Bは電磁誘導発熱する導電部材である。この導電部材1Bは、図2の装置のように磁場発生手段3・4を含む固定のコイルアセンブリ2の下面中央部に固定して配設(固定配置)してある。1Cは、画像を担持する記録材と接触する定着用回転体としての円筒状のフレキシブルな単層または複合層の耐熱性フィルムであり、磁場発生手段3・4、導電部材1Bを含む固定のコイルアセンブリ2にルーズに外嵌させてある。加圧ローラ7はコイルアセンブリ2の下面の導電部材1Bに対して上記フィルム1Cを挟んで所定の押圧力で圧接させて所定幅の定着ニップ部Nを形成させてある。
【0079】
加圧ローラ7は駆動系Mにより矢印の方向に回転駆動される。これに従動してフィルム1Cがコイルアセンブリ2の外周りを矢印の方向に回転状態になる(加圧ローラ駆動方式)。励磁コイル3に交番電流を印加することで導電部材1Bを電磁誘導発熱させる。導電部材1Bの温度状態(定着ニップ部Nの温度)が温度検知素子としてのサーミスタ8によって検知され、検知温度情報が制御回路10に入力する。制御回路10は定着ニップ部Nの温度が所定の定着温度に温調維持されるように、励磁回路9から励磁コイル3への交番電流の印加を制御する。
【0080】
そして前記したように転写ニップ部で未定着トナー画像tの転写を受けた記録材Pは上記の定着ニップ部Nに導入されて挟持搬送され、その挟持搬送過程で電磁誘導加熱された導電部材1Bのフィルム1Cを介した熱とニップ圧により未定着トナー画像tが記録材P面に加熱定着される。
【0081】
【0082】
【発明の効果】
以上説明したように本発明によれば、磁性コアを構成する薄板を接着しなくても磁性コアの取り扱いが容易になり、定着装置を組み立て易くできるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】 実施例における画像形成装置の概略構成模型図である。
【図2】 (a)は参考例の加熱装置(画像加熱定着装置)の横断面模型図、(b)は積層コアの一部の拡大模型図である。
【図3】 実施例の加熱装置(画像加熱定着装置)の横断面模型図である。
【図4】 他の構成の加熱装置(画像加熱定着装置)の横断面模型図(その1)である。
【図5】 他の構成の加熱装置(画像加熱定着装置)の横断面模型図(その2)である。
【符号の説明】
1:定着ローラ
2:コイルアセンブリ
3:励磁コイル
4:積層コア
4a:薄板
5:ホルダー
6:積層コア挟み込み保持機構
6A:積層コア保持部材
7:加圧ローラ
P:記録材(被加熱材)
Claims (4)
- 導電層を有し画像を担持する記録材と接触する定着用回転体と、前記定着用回転体の導電層に渦電流を発生させて発熱させるための励磁コイルと、前記励磁コイルにより発生する磁束を前記導電層に導く磁性コアと、前記励磁コイルと前記磁性コアを保持するホルダーと、を有する定着装置において、
前記磁性コアは薄板を2枚以上積層したもので、且つ前記定着用回転体の母線方向に沿って配置されており、前記装置は前記磁性コアを挟み込んで保持するクランプ部を有する積層コア保持部材を有し、前記磁性コアを前記積層コア保持部材に保持した状態で前記ホルダーの保持部に挿入し前記積層コア保持部材と前記ホルダーの保持部を嵌合させることで前記磁性コアが前記ホルダーに保持される構造となっていることを特徴とする定着装置。 - 画像を担持する記録材と接触する定着用回転体と、固定配置されており前記定着用回転体を加熱する導電部材と、前記導電部材に渦電流を発生させて発熱させるための励磁コイルと、前記励磁コイルにより発生する磁束を前記導電部材に導く磁性コアと、前記励磁コイルと前記磁性コアを保持するホルダーと、を有する定着装置において、
前記磁性コアは薄板を2枚以上積層したもので、且つ前記定着用回転体の母線方向に沿って配置されており、前記装置は前記磁性コアを挟み込んで保持するクランプ部を有する積層コア保持部材を有し、前記磁性コアを前記積層コア保持部材に保持した状態で前記ホルダーの保持部に挿入し前記積層コア保持部材と前記ホルダーの保持部を嵌合させることで前記磁性コアが前記ホルダーに保持される構造となっていることを特徴とする定着装置。 - 前記磁性コアを形成する前記薄板はアモルファス合金または珪素鋼板であり、その1枚の厚みは300μm以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の定着装置。
- 前記ホルダーのクランプ形状部は前記磁性コアの前記薄板の平らな面を押すように前記磁性コアを挟み込んでいることを特徴とする請求項1または2に記載の定着装置。
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