JP2021005645A - 積層鉄心およびその製造方法、その積層鉄心を用いた電気デバイス - Google Patents

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Abstract

【課題】渦電流が抑制され、高周波スイッチング動作の回路にも使用できる積層鉄心と、その製造方法を提供する。【解決手段】この積層鉄心1を構成する強磁性体の薄板10の板厚dは、浸透深さδ以下の所定の厚さである。この積層鉄心1の製造方法には、対向させた鉄の薄板10の表面に、二酸化珪素などの電気絶縁物61を塗布し、塗布された電気絶縁物61を挟むように鉄の薄板10同士を重ね合わせて圧延し、薄板10を薄く延ばすとともに、薄板10同士を接合させる極薄圧延工程P20を有する。第一の極薄圧延工程P20により形成された第一圧延板材40に含まれる鉄の薄板10が、所定の厚さよりも厚いときには、第一圧延板材40同士を対向させて、第一圧延板材40の対向する表面に電気絶縁物61を塗布し、塗布された電気絶縁物61を挟むように第一圧延板材40同士を重ね合わせて圧延する第二の極薄圧延工程P20が行われる。【選択図】図4

Description

この発明は、交流電圧が印加される導電性コイルに巻回されて磁心となる積層鉄心と、その製造方法、そして、その積層鉄心を用いた電気デバイスに関するものである。
電力用半導体素子を用いてスイッチング動作を行うことにより、電力変換や制御を行うパワーエレクトロニクスでは、小型軽量化や制御特性向上および大電力化などのため、スイッチング動作周波数を高周波化および高耐圧化することが求められている。高周波化および高耐圧化にともなう小型化のために、パワーエレクトロニクス回路のリアクトル、変圧器、モータに使用される磁心には、積層鉄心が使用される。それはフェライトより飽和磁化が高く鉄粉より透磁率が高いためである。積層鉄心は、鉄などの強磁性体の薄板が、電気絶縁層を間に挟んで多数積層された構造をしている。強磁性体の薄板の使用により、積層鉄心に交流磁界が印加されたときに発生する渦電流損が小さくなり、高いスイッチング周波数で回路を動作させることができる。
例えば、特許文献1には、積層磁心と、その製造方法が記載されている。この積層磁心は、ナノ結晶薄帯が接着層を挟んで積層されており、ナノ結晶薄帯の一面に、接着剤を含む接着層を設け、他のナノ結晶薄帯を重ね合わせて、圧着ローラで圧着することにより製造される。
特開2018−49921号公報
特許文献1に記載されている積層磁心は、単ロール法で作製されたアモルファス薄帯に熱処理を施して作製したナノ結晶薄帯が、フェノール樹脂やアクリル樹脂などにより接着され、積層された構成になっている。このナノ結晶薄帯の厚さは25マイクロメートル(μm)程度である。このため、20キロヘルツ(kHz)から100(kHz)程度のスイッチング動作の回路にも使用できる(特許文献1の段落[0089]、[0127]参照)。
しかしながら、小型軽量化に向けて、さらなる高周波化が要求されている。そのためには、より高いスイッチング周波数で動作するパワーエレクトロニクス回路に使用しても、渦電流損が大きくならない磁心の開発が不可欠である。さらに市場拡大のための大容量化は大量な磁性体を使用するために量産技術をも同時に必要とする。
そこで、本発明の課題は、渦電流が抑制され、高周波スイッチング動作の回路にも使用できる積層鉄心と、その製造方法を提供することである。特に量産化を実現するために、圧延技術を駆使することにした。
かかる課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、交流電圧が印加される導電性コイルに巻回されて磁心となる積層鉄心であって、板厚dの強磁性体の薄板と、電気絶縁物により形成される絶縁層とを有し、前記強磁性体の薄板と前記絶縁層とが交互に積み重ねられるように構成され、前記導電性コイルに印加される交流電圧の周波数f、前記強磁性体の導電率σ、前記強磁性体の前記周波数fでの等価な磁気透磁率μ、円周率πとすると、前記周波数fは、200キロヘルツ以上であり、前記強磁性体の薄板の前記板厚dは、(πfμσ)-1/2として求められる浸透深さδ以下の所定の厚さである積層鉄心としたことを特徴とする。
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の構成の積層鉄心の周囲に、前記導電性コイルが巻回されている電気デバイスとしたことを特徴とする。
請求項3に係る発明は、強磁性体の薄板と、電気絶縁物により形成される絶縁層とを有し、前記強磁性体の薄板と前記絶縁層とが交互に積み重ねられるように構成される積層鉄心の製造方法であって、対向させた前記強磁性体の薄板の表面に、前記電気絶縁物を塗布し、塗布された前記電気絶縁物を挟むように前記強磁性体の薄板同士を重ね合わせて圧延し、前記強磁性体の薄板を薄く延ばすとともに、前記強磁性体の薄板同士を接合させる極薄圧延工程を含む積層鉄心の製造方法としたことを特徴とする。
請求項4に係る発明は、強磁性体の薄板と、電気絶縁物により形成される絶縁層とを有し、前記強磁性体の薄板と前記絶縁層とが交互に積み重ねられるように構成される積層鉄心の製造方法であって、対向させた前記強磁性体の薄板の表面に、前記電気絶縁物を塗布し、塗布された前記電気絶縁物を挟むように前記強磁性体の薄板同士を重ね合わせて圧延し、前記強磁性体の薄板を薄く延ばすとともに、前記強磁性体の薄板同士を接合させる第一の極薄圧延工程を有し、前記第一の極薄圧延工程により形成された第一圧延板材に含まれる前記強磁性体の薄板が、あらかじめ定められた板厚よりも厚いときには、前記第一圧延板材同士を対向させて、前記第一圧延板材の対向する表面に前記電気絶縁物を塗布し、塗布された前記電気絶縁物を挟むように前記第一圧延板材同士を重ね合わせて圧延する第二の極薄圧延工程を有し、前記第二の極薄圧延工程により形成された第二圧延板材に含まれる前記強磁性体の薄板が、前記あらかじめ定められた板厚よりも厚いときには、前記第二圧延板材同士を対向させて、前記第二圧延板材の対向する表面に前記電気絶縁物を塗布し、塗布された前記電気絶縁物を挟むように前記第二圧延板材同士を重ね合わせて圧延する第三の極薄圧延工程を有するように、圧延により形成された圧延板材に含まれる前記強磁性体の薄板が、前記あらかじめ定められた板厚以下になるまで、前記圧延板材同士を対向させて、前記圧延板材の対向する表面に前記電気絶縁物を塗布し、塗布された前記電気絶縁物を挟むように前記圧延板材同士を重ね合わせて圧延する極薄圧延工程を順次繰り返すことを含む積層鉄心の製造方法としたことを特徴とする。
請求項5に係る発明は、強磁性体の薄板と、電気絶縁物により形成される絶縁層とを有し、前記強磁性体の薄板と前記絶縁層とが交互に積み重ねられるように構成される積層鉄心の製造方法であって、対向させた前記強磁性体の薄板の表面に、珪素を塗布し、続けてさらに、前記電気絶縁物を重ねるように塗布し、塗布された前記電気絶縁物を挟むように前記強磁性体の薄板同士を重ね合わせて圧延し、前記強磁性体の薄板を薄く延ばすとともに、前記強磁性体の薄板同士を接合させる極薄圧延工程を含む積層鉄心の製造方法としたことを特徴とする。
請求項6に係る発明は、強磁性体の薄板と、電気絶縁物により形成される絶縁層とを有し、前記強磁性体の薄板と前記絶縁層とが交互に積み重ねられるように構成される積層鉄心の製造方法であって、対向させた前記強磁性体の薄板の表面に、珪素を塗布し、続けてさらに、前記電気絶縁物を重ねるように塗布し、塗布された前記電気絶縁物を挟むように前記強磁性体の薄板同士を重ね合わせて圧延し、前記強磁性体の薄板を薄く延ばすとともに、前記強磁性体の薄板同士を接合させる第一の極薄圧延工程を有し、前記第一の極薄圧延工程により形成された第一圧延板材に含まれる前記強磁性体の薄板が、あらかじめ定められた板厚よりも厚いときには、前記第一圧延板材同士を対向させて、前記第一圧延板材の対向する表面に珪素を塗布し、続けてさらに、前記電気絶縁物を重ねるように塗布し、塗布された前記電気絶縁物を挟むように前記第一圧延板材同士を重ね合わせて圧延する第二の極薄圧延工程を有し、前記第二の極薄圧延工程により形成された第二圧延板材に含まれる前記強磁性体の薄板が、前記あらかじめ定められた板厚よりも厚いときには、前記第二圧延板材同士を対向させて、前記第二圧延板材の対向する表面に珪素を塗布し、続けてさらに、前記電気絶縁物を重ねるように塗布し、塗布された前記電気絶縁物を挟むように前記第二圧延板材同士を重ね合わせて圧延する第三の極薄圧延工程を有するように、圧延により形成された圧延板材に含まれる前記強磁性体の薄板が、前記あらかじめ定められた板厚以下になるまで、前記圧延板材同士を対向させて、前記圧延板材の対向する表面に珪素を塗布し、続けてさらに、前記電気絶縁物を重ねるように塗布し、塗布された前記電気絶縁物を挟むように前記圧延板材同士を重ね合わせて圧延する極薄圧延工程を順次繰り返すことを含む積層鉄心の製造方法としたことを特徴とする。
請求項7に係る発明は、請求項4または6に記載の構成に加えて、前記積層鉄心に巻回する導電コイルに印加される交流電圧の周波数f、前記強磁性体の導電率σ、前記強磁性体の前記周波数fでの等価な磁気透磁率μ、円周率πとすると、前記周波数fが、200キロヘルツ以上であり、前記強磁性体の薄板の前記あらかじめ定められた板厚が、(πfμσ)-1/2として求められる浸透深さδ以下の所定の厚さである積層鉄心の製造方法としたことを特徴とする。
請求項8に係る発明は、強磁性体の薄板と、電気絶縁物により形成される絶縁層とを有し、前記強磁性体の薄板と前記絶縁層とが交互に積み重ねられるように構成される積層鉄心の製造方法であって、対向させた前記強磁性体の薄板の表面に、前記電気絶縁物を塗布した後、前記強磁性体の薄板を加熱して、塗布された前記電気絶縁物を挟むように、加熱された前記強磁性体の薄板同士を重ね合わせて圧延し、前記強磁性体の薄板を薄く延ばすとともに、前記強磁性体の薄板同士を接合させる極薄圧延工程と、前記極薄圧延工程により形成された圧延板材に含まれる加熱された前記強磁性体の薄板を急冷して、前記強磁性体の薄板をアモルファス状にする急冷工程とを含む積層鉄心の製造方法としたことを特徴とする。
請求項9に係る発明は、強磁性体の薄板と、電気絶縁物により形成される絶縁層とを有し、前記強磁性体の薄板と前記絶縁層とが交互に積み重ねられるように構成される積層鉄心の製造方法であって、対向させた前記強磁性体の薄板の表面に、珪素を塗布し、続けてさらに、前記電気絶縁物を重ねるように塗布した後、前記強磁性体の薄板を加熱して、塗布された前記電気絶縁物を挟むように、加熱された前記強磁性体の薄板同士を重ね合わせて圧延し、前記強磁性体の薄板を薄く延ばすとともに、前記強磁性体の薄板同士を接合させる極薄圧延工程と、前記極薄圧延工程により形成された圧延板材に含まれる加熱された前記強磁性体の薄板を急冷して、前記強磁性体の薄板をアモルファス状にする急冷工程とを含む積層鉄心の製造方法としたことを特徴とする。
請求項10に係る発明は、請求項3、4、または、8に記載の構成に加えて、前記極薄圧延工程が終了した後に、珪素またはアルミニウムを前記強磁性体の薄板に含侵させる含侵工程を含む積層鉄心の製造方法としたことを特徴とする。
請求項11に係る発明は、請求項5、6、または、9に記載の構成に加えて、前記極薄圧延工程が終了した後に、前記強磁性体の薄板と塗布された前記電気絶縁物との間に挟まれている塗布された珪素を前記強磁性体の薄板内に拡散させる拡散工程を含む積層鉄心の製造方法としたことを特徴とする。
請求項1の発明によれば、積層鉄心を構成する強磁性体の薄板の板厚dが、周波数fを200(kHz)以上とするときの浸透深さδ以下になっている。このため、高周波スイッチング動作の回路に使用しても、この積層鉄心で発生する渦電流が小さく抑えられる。このように、この積層鉄心を用いることにより、パワーエレクトロニクス回路を高周波化することができ、これに伴い、装置の小型軽量化や制御特性の向上が実現される。
また、この積層鉄心は、圧延によって製造することができるため、量産性に優れている。このため、効率よく大量に製造でき、低コスト化が可能になる。
請求項2の発明によれば、渦電流損の小さい積層鉄心に導電性コイルを巻回した電気デバイスであるため、スイッチング動作が高周波となる回路にも効率を低下させることなく使用することができる。
この電気デバイスは、リアクトル、変圧器、モータなどに使用することができる。
請求項3及び4の発明によれば、対向させた強磁性体の薄板の表面に、電気絶縁物を塗布し、塗布された電気絶縁物を挟むように強磁性体の薄板同士を重ね合わせて圧延し、強磁性体の薄板を薄く延ばすとともに、強磁性体の薄板同士を接合させる極薄圧延工程を有している。この極薄圧延工程では、渦電流を低減するために強磁性体の薄板を薄くする加工と、強磁性体の薄板同士を電気絶縁層を間に挟んで接合する加工とを、同一の工程で行うことができる。このように、効率よく積層鉄心を製造することができる。
請求項4の発明によれば、この極薄圧延工程により形成された圧延板材に含まれる強磁性体の薄板が、あらかじめ定められた板厚以下になるまで、圧延板材同士を対向させて、圧延板材の対向する表面に電気絶縁物を塗布し、塗布された電気絶縁物を挟むように圧延板材同士を重ね合わせて圧延するこの極薄圧延工程を順次繰り返して積層鉄心が製造される。このため、この極薄圧延工程を経る毎に、積層される強磁性体の薄板の数が、例えば、2枚、4枚、8枚、16枚となるように、2倍ずつ増加する。このように、高い量産性が実現される。
請求項5及び6の発明によれば、対向させた強磁性体の薄板の表面に、珪素を塗布し、続けてさらに、電気絶縁物を重ねるように塗布し、塗布された電気絶縁物を挟むように強磁性体の薄板同士を重ね合わせて圧延し、強磁性体の薄板を薄く延ばすとともに、強磁性体の薄板同士を接合させる極薄圧延工程を有している。この極薄圧延工程では、渦電流を低減するために強磁性体の薄板を薄くする加工と、強磁性体の薄板同士を電気絶縁層を間に挟んで接合する加工とを、同一の工程で行うことができる。このように、効率よく積層鉄心を製造することができる。
請求項6の発明によれば、この極薄圧延工程により形成された圧延板材に含まれる強磁性体の薄板が、あらかじめ定められた板厚以下になるまで、圧延板材同士を対向させて、圧延板材の対向する表面に珪素を塗布し、続けてさらに、電気絶縁物を重ねるように塗布し、塗布された電気絶縁物を挟むように圧延板材同士を重ね合わせて圧延するこの極薄圧延工程を順次繰り返して積層鉄心が製造される。このため、この極薄圧延工程を経る毎に、積層される強磁性体の薄板の数が、例えば、2枚、4枚、8枚、16枚となるように、2倍ずつ増加する。このように、高い量産性が実現される。
また、対向させた強磁性体の薄板の表面に、珪素を塗布し、続けてさらに、電気絶縁物を重ねるように塗布し、塗布された電気絶縁物を挟むように強磁性体の薄板同士を重ね合わせて圧延するため、圧延後には、強磁性体の薄板の上に珪素の層があり、その上に電気絶縁物の層があり、その上に珪素の層と強磁性体の薄板が配置される構成になる。その後、高温に保持することにより、珪素を強磁性体の薄板の内部に拡散させることができる。このように、表面に塗布された珪素を、薄板内部に拡散させるようにすることで、積層される薄板の枚数が増加しても、効率よく、珪素が添加できるようになっている。
珪素の添加により、強磁性体の薄板の電気抵抗率が高くなり、発生する渦電流を低減することができる。
強磁性体の薄板が珪素を含有すると、電気抵抗率が大きくなる一方で、硬くなり加工しにくくなる。このため、薄板に珪素が含有していない状態で圧延し、圧延加工が終了した後、薄板に珪素を拡散させて渦電流の発生を抑制するようになっている。
請求項7の発明によれば、周波数fを200(kHz)以上とするときの浸透深さδ以下の板厚の積層鉄心が製造される。このため、発生する渦電流が小さく、高周波化したパワーエレクトロニクス回路を高効率に動作させることができる。
請求項8の発明によれば、対向させた強磁性体の薄板の表面に、電気絶縁物を塗布した後、強磁性体の薄板を加熱して、塗布された電気絶縁物を挟むように、加熱された強磁性体の薄板同士を重ね合わせて圧延し、強磁性体の薄板を薄く延ばすとともに、強磁性体の薄板同士を接合させる極薄圧延工程を有している。この極薄圧延工程では、渦電流を低減するために強磁性体の薄板を薄くする加工と、強磁性体の薄板同士を電気絶縁層を間に挟んで接合する加工とを、同一の工程で行うことができる。このように、効率よく積層鉄心を製造することができる。
請求項9の発明によれば、対向させた強磁性体の薄板の表面に、珪素を塗布し、続けてさらに、電気絶縁物を重ねるように塗布した後、強磁性体の薄板を加熱して、塗布された電気絶縁物を挟むように、加熱された強磁性体の薄板同士を重ね合わせて圧延し、強磁性体の薄板を薄く延ばすとともに、強磁性体の薄板同士を接合させる極薄圧延工程を有している。この極薄圧延工程では、渦電流を低減するために強磁性体の薄板を薄くする加工と、強磁性体の薄板同士を電気絶縁層を間に挟んで接合する加工とを、同一の工程で行うことができる。このように、効率よく積層鉄心を製造することができる。
請求項8及び9の発明によれば、極薄圧延工程により形成された圧延板材に含まれる加熱された強磁性体の薄板を急冷して、強磁性体の薄板をアモルファス状にする急冷工程を有している。強磁性体の薄板をアモルファス状にすることで、電気抵抗率が高くなり、発生する渦電流を低減することができる。
請求項10の発明によれば、全ての極薄圧延工程が終了した後に、珪素またはアルミニウムを強磁性体の薄板に含侵させる含侵工程を含むため、薄板は、珪素またはアルミニウムを含有する。このため、強磁性体の薄板の電気抵抗率が高くなり、発生する渦電流を低減することができる。
請求項11の発明によれば、全ての極薄圧延工程が終了した後に、強磁性体の薄板に塗布された珪素を強磁性体の薄板内に拡散させる拡散工程を含んでいる。薄板は、珪素を含有するため、電気抵抗率が高くなり、発生する渦電流を低減することができる。
この発明の実施の形態に係る積層鉄心の概略斜視図(図(a))と、この積層鉄心の周囲に導電性コイルを巻回した電気デバイスの概略斜視図(図(b))である。 同実施の形態に係る積層鉄心の概略斜視図(図(a)、図(b))と、この積層鉄心の周囲に導電性コイルを巻回した電気デバイスの概略斜視図(図(c))である。 同実施の形態に係る積層鉄心の製造工程全体の流れを示す図である。 同実施の形態に係る積層鉄心の極薄圧延装置の概略モデル図である。 同実施の形態に係る積層鉄心の極薄圧延装置により圧延された圧延板材の圧延方向に沿う概略断面図を示す図であり、(a)は、第一の極薄圧延工程により形成された第一圧延板材、(b)は、第二の極薄圧延工程により形成された第二圧延板材、(c)は、第三の極薄圧延工程により形成された第三圧延板材を示す図である。 同実施の形態に係る積層鉄心の極薄圧延装置の概略モデル図である。 同実施の形態に係る積層鉄心の成型工程を説明する図であり、(a)は、複数の積層部材の表面に樹脂を塗布する工程、(b)は、複数の積層部材を重ね合わせて、圧着して接合する工程を示す図である。 同実施の形態に係る積層鉄心の製造工程全体の流れを示す図である。 同実施の形態に係る積層鉄心の極薄圧延装置の概略モデル図である。 同実施の形態に係る積層鉄心の極薄圧延装置により圧延された圧延板材の圧延方向に沿う概略断面図を示す図であり、(a)は、第一の極薄圧延工程により形成された第一圧延板材、(b)は、第二の極薄圧延工程により形成された第二圧延板材を示す図である。 同実施の形態に係る電気デバイスを使用した電気回路を示す図である。
この発明の実施の形態について、図1から図11を用いて説明する。
<積層鉄心とそれを用いた電気デバイス>
図1(a)には、本発明に係る積層鉄心1の概略斜視図が示されている。
この積層鉄心1は、交流電圧が印加される導電性コイル20に巻回されて磁心となる積層鉄心1であって、板厚dの強磁性体の薄板10と、電気絶縁物61により形成される絶縁層11とを有し、強磁性体の薄板10と絶縁層11とが交互に積み重ねられるように構成されている。この強磁性体の薄板10の板厚dは、導電性コイル20に印加される交流電圧の周波数f、強磁性体の導電率σ、強磁性体の周波数fでの等価な磁気透磁率μ、円周率πとすると、周波数fを200(kHz)以上としたときに、(πfμσ)-1/2として求められる浸透深さδ以下の所定の厚さとなっている。
浸透深さδとは、この薄板10に渦電流が流れる際、表面に流れる電流の大きさに対して、自然対数eの逆数(1/e)である約0.368倍となる大きさの電流が流れる深さのことである。
浸透深さδは、周波数f(Hz)、強磁性体の導電率σ(S/m)、強磁性体の周波数fでの等価な磁気透磁率μ(H/m)から算出され、円周率πとすると、(πfμσ)-1/2となる。
ここで、強磁性体の周波数fでの等価な磁気透磁率μは、強磁性体の周波数fでの比透磁率μと、真空の透磁率μとの積として求められる。
鉄の周波数fに対する浸透深さδを表1に示す。
Figure 2021005645
鉄の浸透深さδは、周波数fが、100(kHz)のとき7(μm)程度、1000(kHz)のとき4(μm)程度となる。また、周波数fが、200(kHz)のときの浸透深さδは、5(μm)程度となる。
上述したように、この積層鉄心1を構成している強磁性体の薄板10の板厚dは、浸透深さδ以下の所定の厚さになっているため、約5(μm)以下になるように製造される。
所定の厚さとして、この薄板10の板厚dを、どのように設定し、製造するかは、この積層鉄心1が使用される回路のスイッチング動作周波数によって決定される。例えば、1メガヘルツ(MHz)以上のスイッチング動作をさせるためには、この薄板10の板厚dを、1(μm)以下にすることが望ましい。
このように、強磁性体の薄板10の板厚dを薄くすることにより、発生する渦電流が小さくなり、渦電流損が低減する。これにより、高周波化が可能になる。
この積層鉄心1を構成している強磁性体の薄板10は、平面視長方形であり、板厚dの薄板形状をしている。この薄板10の形状は、どのような形状をしていてもよく、例えば、薄板10の幅を、板厚dの10倍以下となる寸法にして、長さ方向に細く長い線状となるようにしてもよいし、薄板10の幅を、板厚dの100倍以上となる寸法にして、板状となるようにしてもよい。
この強磁性体の薄板10は、鉄や珪素鋼などにより形成されている。珪素鋼は、強磁性体である鉄に珪素を含有させた合金である。珪素を含ませることにより、電気抵抗率が増加するため、印加される交流磁界により発生する渦電流が小さくなり、渦電流損が低減される。珪素鋼に含有する珪素の量は、重量割合で2%以上であることが好ましい。特に、珪素を6.5%含有する珪素鋼は、磁歪定数がほぼ0になり、応力感受性が低く、さらに好ましい。
また、強磁性体として、多結晶体、アモルファス材、ナノ結晶材を使用することができ、結晶状態などによって、材料が限定されることはない。
この積層鉄心1は、多数の強磁性体の薄板10が板厚方向に積み重ねられるように構成されているが、積層される薄板10の間で導通が生じないように、薄板10の間に絶縁層11が配置されている。
この絶縁層11を形成する電気絶縁物61として、二酸化珪素(SiO)、酸化マグネシウム(MgO)、酸化アルミニウム(Al)などが使用される。
また、この積層鉄心1を成型する際に、まず、強磁性体の薄板10が多数積層された積層部材を複数製造して、その後、それら複数の積層部材を、樹脂等で接着するようにしてもよい。このようにして、成型する場合、積層鉄心1には、これら複数の積層部材間を接着する樹脂層12が、含まれるようになる。
接着には、電気絶縁性を有するフェノール樹脂やアクリル樹脂等を使用することができる。
図1(b)には、この積層鉄心1に導電性コイル20を巻回した電気デバイスの概略斜視図が示されている。この導電性コイル20は、銅などによって形成されている。
このコイル20に電流が流れると、薄板10の板厚dを含む断面と直交する方向に磁界が生じ、この積層鉄心1が磁化される。また、この積層鉄心1が交流励磁される場合には、薄板10の板厚dを含む断面内を渦電流が流れるが、板厚dが薄いため、小さく抑えられるようになっている。
この電気デバイスは、リアクトルなどとして使用することができる。また、図1(a)に示されているような積層鉄心1を、モータに含まれるコイルの磁心として使用することもできる。
本発明に係る積層鉄心や、それを用いた電気デバイスは、図1に示されているような形態に限定されず、その他の形状にすることができる。例えば、図2のような形態にしてもよい。
図2(a)には、中央に円形の孔を有する板厚dの円板形状の強磁性体の薄板10が、板厚方向に積み重ねられている積層鉄心100の概略斜視図が示されている。薄板10の間に、電気絶縁物61で形成されている絶縁層11が配置されているなど、構造は、図1(a)に示されている積層鉄心1と同様である。
また、図2(b)には、板厚dの円筒形状をした強磁性体の薄板10が、円筒の半径方向に積層されている積層鉄心101の概略斜視図が示されている。
図1(a)に示されている積層鉄心1と同様に、積層鉄心100、101を構成する薄板10の板厚dは、浸透深さδ以下の所定の厚さになっている。このように、薄板10の板厚dを薄くすることにより、交流励磁に伴って発生する渦電流が小さく抑えられるようになっている。
図2(c)には、積層鉄心100、101に、2本の導電性コイル20が巻回されている電気デバイス200の概略斜視図が示されている。コイル20に電流が流れると、磁界が生じ、その磁界によって積層鉄心100、101が磁化される。また、この積層鉄心100、101が交流励磁される場合、薄板10の板厚dを含む断面内を渦電流が流れるが、板厚dが薄く、発生が抑制されるようになっている。
この電気デバイス200は、変圧器などとして使用することができる。
<積層鉄心の製造方法>
図3には、この積層鉄心1の製造工程全体の流れが示されている。
この製造工程は、積層鉄心1を構成する強磁性体の薄板10の材料となる鉄を溶融して薄板10に成形する鋳造・圧延工程P10と、その薄板10を複数重ね合わせて圧延して、接合するとともに極薄に加工する極薄圧延工程P20と、圧延後のこの薄板10に珪素などを含有させる含侵工程P30と、含侵後に積層鉄心1の形状に成型加工する積層鉄心成型工程P40を含むように構成されている。
鋳造・圧延工程P10は、溶融した鉄を型に流し込み厚い板状の素材に成形する鋳造工程と、この鋳造工程で製造された素材を、熱間圧延と、それに続く冷間圧延によって、板厚が100(μm)程度以下になるまで薄く延ばす圧延工程とにより構成されている。
極薄圧延工程P20は、鋳造・圧延工程P10で製造された厚さ100(μm)程度以下の鉄の薄板10を、複数枚、重ね合わせて冷間圧延して、複数の鉄の薄板10を接合するとともに、板厚を極薄にする工程である。
この工程P20は、圧延後の薄板10の板厚が、所定の厚さになるまで繰り返し行われる。この際、繰り返される2回目以降の極薄圧延工程P20では、その直前の極薄圧延工程P20で圧延された圧延板材を、複数枚、重ね合わせて圧延するようにして加工が行われる。このように、この極薄圧延工程P20が繰り返される毎に、積層される鉄の薄板10の層数が増加するとともに、積層されている薄板10の板厚が薄くなっていく。
図4には、この極薄圧延工程P20で使用される極薄圧延装置3の概略モデル図が示されている。
この極薄圧延装置3は、鉄の薄板10が取り付けられる送出ロール30と、ゼンジミアミル圧延機31と、圧延後の圧延板材を巻き取る巻取ロール32と、圧延前に鉄の薄板10の表面に溶融した電気絶縁物61を吹き付ける電気絶縁物塗布部33などにより構成されている。
送出ロール30は、2個備えられており、鋳造・圧延工程P10で製造された鉄の薄板10が対向するように配置される。ただし、極薄圧延工程P20が繰り返される場合、この送出ロール30には、その直前の極薄圧延工程P20で圧延された圧延板材が取り付けられ、それら圧延板材同士が重ね合わされて圧延が行われる。
これらの送出ロール30から送り出される2枚の鉄の薄板10の対向する表面には、電気絶縁物塗布部33によって、溶融した二酸化珪素などの電気絶縁物61が吹き付けられて塗布される。この塗布される電気絶縁物61が、積層鉄心1の強磁性体の薄板10間に絶縁層11を形成する(図1(a)参照)。なお、電気絶縁物61を塗布する方法は、吹き付け以外にも、ブラシなどで塗りつけるなどその他の方法であってよい。また、溶融した電気絶縁物61を塗布する方法以外にも、粉末状の電気絶縁物61を吹き付けて塗布するようにしてもよいし、シート状の電気絶縁物61を鉄の薄板10の表面に接合させるようにしてもよい。また、二酸化珪素に代えて、酸化マグネシウムや酸化アルミニウムなどを塗布するようにしてもよい。
対向する2枚の鉄の薄板10は、塗布された電気絶縁物61を挟むように重ね合わされて、ゼンジミアミル圧延機31に送られて、圧延される。
ゼンジミアミル圧延機31は、薄板の冷間圧延に使用される多段圧延機であり、小径のワークロールを有している。
この圧延機31による圧延により、2枚の鉄の薄板10が接合されるとともに、板厚が薄くなるように加工される。
そして、この圧延機31で圧延された圧延板材は、巻取ロール32に巻き取られるように構成されている。
図5(a)には、この極薄圧延装置3で圧延された圧延板材の圧延方向に沿う概略断面図が示されている。これは、1回目の極薄圧延工程P20(第一の極薄圧延工程P20)により形成された第一圧延板材40の断面図であり、2枚の鉄の薄板10の間に、電気絶縁物61が挟まった構成になっている。
この第一圧延板材40に含まれる鉄の薄板10の板厚が、所定の厚さ以下になっている場合には、この極薄圧延工程P20が終了し、次の含侵工程P30に進む。一方、この薄板10の板厚が、所定の厚さよりも厚いときには、この第一圧延板材40を、図4に示されている極薄圧延装置3の2個の送出ロール30に、取り付けて、2回目の極薄圧延工程P20(第二の極薄圧延工程P20)が行われる。
図5(b)には、2回目の極薄圧延工程P20(第二の極薄圧延工程P20)により形成された第二圧延板材41の概略断面図が示されている。2枚の第一圧延板材40の対向する表面に電気絶縁物61が塗布されて、それらが重ね合わされるように圧延されているため、4枚の鉄の薄板10と、それら薄板10の間に電気絶縁物61が挟まった構成になっている。
この第二圧延板材41に含まれる鉄の薄板10の板厚が、所定の厚さ以下になっていない場合には、この第二圧延板材41を、極薄圧延装置3の2個の送出ロール30に、取り付けて、3回目の極薄圧延工程P20(第三の極薄圧延工程P20)が行われる。
図5(c)には、3回目の極薄圧延工程P20(第三の極薄圧延工程P20)により形成された第三圧延板材42の概略断面図が示されている。2枚の第二圧延板材41の間に電気絶縁物61が塗布されて、重ね合わせるように圧延されているため、8枚の鉄の薄板10と、それら薄板10の間に電気絶縁物61が挟まった構成になっている。
このように、この極薄圧延工程P20によって形成される圧延板材に含まれる薄板10が、所定の厚さ以下になるまで、この極薄圧延工程P20が繰り返される。そして、この極薄圧延工程P20が繰り返される毎に、圧延板材に含まれる薄板10の層数が2倍ずつ増加していく。
なお、極薄圧延装置3の送出ロール30の数は、2個に限らず、それ以上であってもよい。送出ロール30の数を増加させることにより、1回の工程P20で同時に圧延される鉄の薄板10の枚数が増え、効率よく製造できるようになる。
また、ゼンジミアミル圧延機31を複数台、連続して配置するようにしてもよい。こうすることにより、1回の工程P20で、複数回の圧延が連続して行われるため、製造効率が向上する。
また、この極薄圧延工程P20によって形成される圧延板材は、圧延によって、薄板10の一部が破れたり、薄板10に孔が空いたりしていてもよい。このように、破れや孔などを許容することにより、不良率を低く抑えることができる。
積層鉄心1を構成する強磁性体の薄板10の板厚dであって、極薄圧延工程P20を繰り返すかどうかの判定に用いられるあらかじめ定められた板厚としては、上述した浸透深さδ以下の所定の厚さとすることができる。
周波数fが、200(kHz)のときの鉄の浸透深さδは、5(μm)程度である。例えば、1(MHz)以上の高周波動作を想定して、この薄板10の板厚dを、1(μm)以下として定めることができる。
ここで、鋳造・圧延工程P10で製造される鉄の薄板10の板厚を、約16(μm)と仮定して、1回の極薄圧延工程P20を経る毎に、この薄板10の板厚が約1/2ずつ薄くなると想定する。
この場合、1回目の極薄圧延工程P20(第一の極薄圧延工程P20)により形成される第一圧延板材には、2枚の鉄の薄板10が含まれ、それぞれの板厚が約8(μm)となる。これは、所定の板厚である1(μm)より厚いため、2回目の極薄圧延工程P20(第二の極薄圧延工程P20)が行われる。そして、第二圧延板材には、鉄の薄板10が4枚含まれ、それぞれの板厚が約4(μm)となる。
このようにして、この極薄圧延工程P20を4回繰り返すと、圧延板材に含まれる鉄の薄板10が16枚となり、それぞれの板厚が約1(μm)となる。
圧延板材に含まれる薄板10の板厚が、所定の板厚以下になると、次工程に送られる。
なお、圧延板材に含まれる薄板10の板厚が、所定の板厚に近づいたとき、最終の極薄圧延工程P20として、図6に示されるような極薄圧延装置400を使用することもできる。
図6には、この極薄圧延装置400の概略モデル図が示されている。この極薄圧延装置400は、図4に示されている極薄圧延装置3に数点の要素を追加した構成になっている。このため、図4の極薄圧延装置3と同一の要素には、同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
この極薄圧延装置400には、ゼンジミアミル圧延機31の直前に、板材を加熱する加熱装置35が設けられており、また、この圧延機31の直後に、圧延板材を急冷する冷却ロール36が設けられている。
この加熱装置35は、圧延する板材に含まれる鉄の薄板10を融点温度直前まで加熱するために使用される。加熱方法は、誘導加熱などを用いることができる。
また、冷却ロール36は、加熱装置35で加熱された薄板10を急冷して、この鉄の薄板10をアモルファス状にするために使用される。
薄板10をアモルファス状にすることで、多結晶体の場合と比較して電気抵抗率が高くなり、発生する渦電流が小さく抑えられる。
上述のような図4の極薄圧延装置3を用いた極薄圧延工程P20が繰り返し行われた後で、薄板10の板厚が、所定の板厚に近づいたとき、最終の極薄圧延工程P20を次のように行うことができる。
まず、この最終の極薄圧延工程P20で圧延される被圧延板材(最終被圧延板材48)を、図6の極薄圧延装置400の2個の送出ロール30に取り付ける。そして、送り出される2枚のこの最終被圧延板材48の対向する表面に、電気絶縁物塗布部33によって、電気絶縁物61を塗布する。それに続く加熱装置35によって、これらの板材48に含まれる鉄の薄板10を、融点付近まで加熱する。加熱したこれら2枚の板材48を重ね合わせて、ゼンジミアミル圧延機31に送り、圧延する。この圧延機31で圧延した最終圧延板材49を、冷却ロール36に送り、この板材49に含まれる薄板10を、急冷してアモルファス状する(急冷工程P50)。最後に、この最終圧延板材49を、巻取ロール32に巻き取る。
このような工程P20で、鉄の薄板10の板厚を、所定の板厚以下にするとともに、最終被圧延板材48同士を接合することができる。そして、最終圧延板材49に含まれる薄板10をアモルファス状にすることができる。
さらに、この最終の極薄圧延工程P20で作製された最終圧延板材49を、高温に保持してナノ結晶を析出させ、アモルファス状からナノ結晶材としてもよい。
鉄の薄板10をナノ結晶材にすることで、アモルファス状の場合と比較して、鉄損が低下する。鉄損は、交流励磁の際に発生するヒステリシス損と渦電流損などで構成される損失である。
ただし、図6の極薄圧延装置400を使用するかしないかは、任意である。
以上のような極薄圧延工程P20を経て、圧延板材に含まれる薄板10の板厚が、所定の板厚以下になると、次の含侵工程P30に送られる。
この含侵工程P30は、極薄圧延工程P20で圧延された圧延板材を、高温の珪素の雰囲気に保持することにより、圧延板材に含まれる鉄の薄板10に珪素を添加する工程である。
この工程P30により、鉄の薄板10が珪素鋼の薄板10になる。鉄が珪素を含有する珪素鋼は、電気抵抗率が高く、渦電流を小さくすることができる。珪素の含有率は、上述のように磁歪定数がほぼ0になる6.5%としてもよい。
珪素鋼は、硬く加工しにくいため、極薄圧延工程P20では、鉄の薄板10の状態で圧延し、圧延加工が終了した後に、この含侵工程P30にて、鉄に珪素を添加して珪素鋼の薄板10にしている。
また、珪素に代えてアルミニウムなどを添加するようにしてもよい。この場合には、極薄圧延工程P20で圧延された圧延板材を、高温のアルミニウムの雰囲気に保持して含侵させる。
なお、ここまでの説明では、鉄の薄板10を極薄圧延工程P20で圧延する製造方法について述べたが、例えば、珪素の含有率が低い珪素鋼の薄板10などを圧延するようにしてもよい。このような場合で、含侵が不要であれば、この含侵工程P30に代えて、焼鈍工程にすることもできる。焼鈍工程では、圧延板材を、高温に保持することにより、応力解放や結晶粒制御などが行われる。
この含侵工程P30によって、強磁性体である珪素鋼の薄板10が、電気絶縁物61からなる絶縁層11を挟み、積層された積層板材が完成する。この積層板材の厚さは、数10(μm)程度の場合もあり、積層鉄心1の厚さに比べて薄いこともある。このため、この積層板材をさらに積み重ねることによって、積層鉄心1を製造する必要も出てくる。
次の積層鉄心成型工程P40では、この積層板材を用いて、積層鉄心1を成型する。
この工程P40では、まず、積層板材から、積層鉄心1の形状の積層部材70を作製する。加工法は、打抜き加工、レーザ加工、放電加工などを用いることができる。
図7には、このように作製された複数の積層部材70を積み重ねて積層鉄心1を成型する工程が示されている。これら複数の積層部材70の接合には、積層部材70間を電気絶縁する必要がある。
図7(a)に示されているように、複数の積層部材70の表面に、接着剤となる電気絶縁性の樹脂71を塗布し、図7(b)のように、重ね合わせた後、上下方向から外力を加え圧着して接合することにより、積層鉄心1を成型することができる。
このように塗布される樹脂71が積層鉄心1に含まれる樹脂層12を形成する(図1(a)参照)。樹脂としては、フェノール樹脂等を用いることができる。
なお、複数の積層部材70を接合して積層鉄心1を成型する方法は、これ以外の方法であってもよい。例えば、二酸化珪素、酸化アルミニウム、酸化マグネシウムなどの無機物質を対向する積層部材70の表面に塗布して、その後、接着剤となる樹脂をその無機物質の上に塗布し、積層部材70同士を重ね合わせるようにして接合してもよい。
また、この積層部材70の表面には、鉄酸化物が生成されているため、その鉄酸化物を電気絶縁物として用いて、複数の積層部材70を重ね合わせ、その周囲を電気絶縁樹脂で覆い固定して、銅などの導電性コイルを巻き付けるようにしてもよい。
<積層鉄心の他の製造方法>
次に、この積層鉄心1の他の製造方法について図8〜10を用いて説明する。なお、図3〜5と同一の工程や要素には、同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
この製造方法では、極薄圧延工程P21において、対向する鉄の薄板10の表面間に、珪素62と電気絶縁物61と珪素62からなる3層が挟まれるように塗布される。そして、鉄の薄板10の表面に塗布される珪素62が、その後の拡散工程P31において、鉄の薄板10中に拡散される。
図8には、この積層鉄心1の他の製造方法についての製造工程全体の流れが示されている。
極薄圧延工程P21は、鋳造・圧延工程P10で製造された鉄の薄板10を、複数枚、重ね合わせて冷間圧延して、複数の鉄の薄板10を接合するとともに、板厚を極薄にする工程である。
この工程P21は、圧延後の鉄の薄板10の板厚が、所定の厚さになるまで繰り返し行われる。この際、繰り返される2回目以降の極薄圧延工程P21では、その直前の極薄圧延工程P21で圧延された圧延板材を、複数枚、重ね合わせて圧延するようにして加工が行われる。このように、この極薄圧延工程P21が繰り返される毎に、積層される鉄の薄板10の層数が増加するとともに、積層されている薄板10の板厚が薄くなっていく。
図9には、この極薄圧延工程P21で使用される極薄圧延装置300の概略モデル図が示されている。
この極薄圧延装置300には、圧延前に鉄の薄板10の表面に溶融した珪素62を吹き付ける珪素塗布部34が設けられている。
送出ロール30から送り出される2枚の鉄の薄板10の対向する表面には、まず、珪素塗布部34によって、溶融した珪素62が吹き付けられて塗布され、続いて、電気絶縁物塗布部33によって、溶融した二酸化珪素などの電気絶縁物61が吹き付けられて塗布される。
なお、溶融した珪素62や溶融した電気絶縁物61を吹き付けて塗布する方法以外にも、粉末状の珪素62や電気絶縁物61を吹き付けて塗布するようにしてもよいし、シート状の珪素62や電気絶縁物61を表面に接合させるようにしてもよい。
その後、対向する2枚の薄板10は、塗布された電気絶縁物61を挟むように重ね合わされて、ゼンジミアミル圧延機31に送られて、圧延される。
図10(a)には、この極薄圧延装置300で圧延された圧延板材の圧延方向に沿う概略断面図が示されている。これは、1回目の極薄圧延工程P21(第一の極薄圧延工程P21)により形成された第一圧延板材50の断面図であり、2枚の鉄の薄板10の間に、珪素62と電気絶縁物61と珪素62が挟まった構成になっている。
この第一圧延板材50に含まれる鉄の薄板10の板厚が、所定の厚さ以下になっている場合には、この極薄圧延工程P21が終了し、次の拡散工程P31に進む。一方、この薄板10の板厚が、所定の厚さよりも厚いときには、この第一圧延板材50を、図9に示されている極薄圧延装置300の2個の送出ロール30に、取り付けて、2回目の極薄圧延工程P21(第二の極薄圧延工程P21)が行われる。
図10(b)には、2回目の極薄圧延工程P21(第二の極薄圧延工程P21)により形成された第二圧延板材51の概略断面図が示されている。2枚の第一圧延板材50の対向する表面に珪素62と電気絶縁物61が塗布されて、それらが重ね合わされるように圧延されているため、4枚の鉄の薄板10と、それら薄板10の間に珪素62と電気絶縁物61と珪素62が挟まった構成になっている。
この第二圧延板材51に含まれる鉄の薄板10の板厚が、所定の厚さ以下になっていない場合には、この第二圧延板材51を、極薄圧延装置300の2個の送出ロール30に、取り付けて、3回目の極薄圧延工程P21(第三の極薄圧延工程P21)が行われる。
このように、この極薄圧延工程P21によって形成される圧延板材に含まれる鉄の薄板10が、所定の厚さ以下になるまで、この極薄圧延工程P21が繰り返される。
積層鉄心1を構成する強磁性体の薄板10の板厚dであって、極薄圧延工程P21を繰り返すかどうかの判定に用いられるあらかじめ定められた板厚としては、上述した浸透深さδ以下の所定の厚さとすることができる。周波数fを200(kHz)以上として求められる浸透深さδ以下の所定の厚さとしてもよい。例えば、1(MHz)以上の高周波動作を想定して、所定の厚さを、1(μm)以下として定めることができる。
この極薄圧延工程P21により、圧延板材に含まれる鉄の薄板10の板厚が、所定の板厚以下になると、次工程に送られる。
なお、圧延板材に含まれる薄板10の板厚が、所定の板厚に近づいたとき、最終の極薄圧延工程P21として、図6に示されるような極薄圧延装置400を使用することもできる。そして、この極薄圧延装置400に設けられている電気絶縁物塗布部33より前の送出ロール30側に、図9の極薄圧延装置300に設けられているような珪素塗布部34を追加して設けてもよい。
この極薄圧延装置400では、最終の極薄圧延工程P21において圧延される被圧延板材(最終被圧延板材48)の対向する表面に、珪素塗布部34により、溶融した珪素62が塗布され、続いて、電気絶縁物塗布部33により、溶融した電気絶縁物61が塗布される。それに続く加熱装置35によって、これらの最終被圧延板材48に含まれる鉄の薄板10が融点温度直前まで加熱され、続くゼンジミアミル圧延機31で圧延される。この圧延機31で圧延された最終圧延板材49は、冷却ロール36に送られて、その板材49に含まれる薄板10が急冷され、アモルファス状にされる(急冷工程P50)。
この工程P21で、鉄の薄板10の板厚を、所定の板厚以下にし、最終被圧延板材48同士を接合し、最終圧延板材49に含まれる薄板10をアモルファス状にすることができる。
さらに、この最終の極薄圧延工程P21で作製された最終圧延板材49を、高温に保持してナノ結晶を析出させ、アモルファス状からナノ結晶材としてもよい。
ただし、図6の極薄圧延装置400を使用するかしないかは、任意である。
以上のような極薄圧延工程P21を経て、圧延板材に含まれる薄板10の板厚が、所定の板厚以下になると、次の拡散工程P31に送られる。
この拡散工程P31は、極薄圧延工程P21で圧延された圧延板材を、高温に保持することにより、圧延板材に含まれる鉄の薄板10の表面に塗布された珪素62を、鉄の薄板10に拡散して珪素62を添加する工程である。この工程P31により、鉄の薄板10が珪素鋼の薄板10になる。
このように、表面に塗布された珪素62を、薄板10内部に拡散させるようにすることで、薄板10が多数積層されていても、効率よく、珪素62の添加が行えるようになっている。
この拡散工程P31によって、強磁性体である珪素鋼の薄板10が、電気絶縁物61からなる絶縁層11を挟み、積層された積層板材が完成する。
そして、次の積層鉄心成型工程P40において、この積層板材から、積層鉄心1が成型される。
<積層鉄心を用いた電気デバイスを含む電気回路>
図11には、積層鉄心1、100、101に導電性コイル20を巻回した電気デバイス2、200を使用した電気回路が示されている。電気自動車などに使用される、この電気回路は、直流電源80、リアクトル81、電気モータ82、高周波変圧器83、双方向チョッパー回路84、インバータ回路85、86、負荷87などにより構成されている。
図1(b)に示されている電気デバイス2は、リアクトル81として使用され、図2(c)に示されている電気デバイス200は、高周波変圧器83として使用されている。また、図1(a)に示されている積層鉄心1は、電気モータ82の磁心として使用されている。
電気モータ82としては、埋込み式永久磁石型同期モータ(IPMSM:Interior Permanent Magnet Synchronous Motor)などが用いられる。この電気モータ82を駆動するための電圧は、直流電源80の電圧よりも高いため、双方向チョッパー回路84の電力用半導体をスイッチング動作させることにより、昇圧している。また、この電気モータ82に接続されているインバータ回路85の電力用半導体をスイッチング動作させることによって、三相交流を発生させて、電気モータ82を動作させるようになっている。
一方、CPU(Central Processing Unit)やメモリなどで構成される情報機器や、補機モータなどの負荷87の電源電圧は、この回路の直流電源80の電圧よりも低いため、降圧する必要がある。このため、高周波変圧器83の1次コイルに接続されているインバータ回路86をスイッチング動作させて交流電圧を発生させて、2次コイル側から降圧された電圧を取り出すようになっている。
このように、積層鉄心1、100、101をリアクトル81、電気モータ82、高周波変圧器83などの磁心に用いることで、スイッチング動作を高周波化しても、低損失で回路が動作するようになっている。
<積層鉄心とその製造方法、その積層鉄心を用いた電気デバイスの効果>
本発明に係る積層鉄心1によれば、この積層鉄心1を構成する鉄や珪素鋼などの強磁性体の薄板10の板厚dが、周波数fを200(kHz)以上とするときの浸透深さδ以下になっている。このため、高周波スイッチング動作の回路に使用しても、この積層鉄心1で発生する渦電流が小さく抑えられる。このように、この積層鉄心1を用いることにより、パワーエレクトロニクス回路を高周波化することができ、これに伴い、装置の小型軽量化や制御特性の向上が実現される。
また、この積層鉄心1は、圧延によって製造することができるため、量産性に優れている。このため、効率よく大量に製造でき、低コスト化が可能になる。
また、本発明に係る電気デバイス2によれば、渦電流損の小さい積層鉄心1に導電性コイル20を巻回した電気デバイス2であるため、スイッチング動作が高周波となる回路にも効率を低下させることなく使用することができる。
また、本発明に係る積層鉄心1の製造方法によれば、対向させた強磁性体である鉄の薄板10の表面に、二酸化珪素などの電気絶縁物61を塗布し、塗布された電気絶縁物61を挟むように鉄の薄板10同士を重ね合わせて圧延し、鉄の薄板10を薄く延ばすとともに、鉄の薄板10同士を接合させる極薄圧延工程P20を有している。この極薄圧延工程P20では、渦電流を低減するために鉄の薄板10を薄くする加工と、鉄の薄板10同士を電気絶縁層11を間に挟んで接合する加工とを、同一の工程P20で行うことができる。このように、効率よく積層鉄心1を製造することができる。
また、この極薄圧延工程P20により形成された圧延板材に含まれる鉄の薄板10が、あらかじめ定められた板厚以下になるまで、圧延板材同士を対向させて、圧延板材の対向する表面に電気絶縁物61を塗布し、塗布された電気絶縁物61を挟むように圧延板材同士を重ね合わせて圧延するこの極薄圧延工程P20を順次繰り返して積層鉄心1が製造される。このため、この極薄圧延工程P20を経る毎に、積層される鉄の薄板10の数が、例えば、2枚、4枚、8枚、16枚となるように、2倍ずつ増加する。このように、高い量産性が実現される。
また、本発明に係る積層鉄心1の他の製造方法によれば、対向させた強磁性体である鉄の薄板10の表面に、珪素62を塗布し、続けてさらに、二酸化珪素などの電気絶縁物61を重ねるように塗布し、塗布された電気絶縁物61を挟むように鉄の薄板10同士を重ね合わせて圧延し、鉄の薄板10を薄く延ばすとともに、鉄の薄板10同士を接合させる極薄圧延工程P21を有している。この極薄圧延工程P21では、渦電流を低減するために鉄の薄板10を薄くする加工と、鉄の薄板10同士を電気絶縁層11を間に挟んで接合する加工とを、同一の工程P21で行うことができる。このように、効率よく積層鉄心1を製造することができる。
また、この極薄圧延工程P21により形成された圧延板材に含まれる鉄の薄板10が、あらかじめ定められた板厚以下になるまで、圧延板材同士を対向させて、圧延板材の対向する表面に珪素62を塗布し、続けてさらに、電気絶縁物61を重ねるように塗布し、塗布された電気絶縁物61を挟むように圧延板材同士を重ね合わせて圧延するこの極薄圧延工程P21を順次繰り返して積層鉄心1が製造される。このため、この極薄圧延工程P21を経る毎に、積層される鉄の薄板10の数が、例えば、2枚、4枚、8枚、16枚となるように、2倍ずつ増加する。このように、高い量産性が実現される。
また、対向させた鉄の薄板10の表面に、珪素62を塗布し、続けてさらに、電気絶縁物61を重ねるように塗布し、塗布された電気絶縁物61を挟むように鉄の薄板10同士を重ね合わせて圧延するため、圧延後には、鉄の薄板10の上に珪素62の層があり、その上に電気絶縁物61の層があり、その上に珪素62の層と鉄の薄板10が配置される構成になる。その後、高温に保持することにより、珪素62を鉄の薄板10の内部に拡散させることができる。このように、表面に塗布された珪素62を、薄板10内部に拡散させるようにすることで、積層される薄板10の枚数が増加しても、効率よく、珪素62が添加できるようになっている。
珪素62の添加により、鉄の薄板10の電気抵抗率が高くなり、発生する渦電流を低減することができる。
鉄の薄板10が珪素62を含有すると、電気抵抗率が大きくなる一方で、硬くなり加工しにくくなる。このため、薄板10に珪素62が含有していない状態で圧延し、圧延加工が終了した後、薄板10に珪素62を拡散させて渦電流の発生を抑制するようになっている。
また、本発明に係る積層鉄心1の製造方法によれば、周波数fを200(kHz)以上とするときの浸透深さδ以下の板厚の積層鉄心1が製造される。このため、発生する渦電流が小さく、高周波化したパワーエレクトロニクス回路を高効率に動作させることができる。
また、本発明に係る積層鉄心1の製造方法によれば、対向させた鉄の薄板10の表面に、二酸化珪素などの電気絶縁物61を塗布した後、鉄の薄板10を加熱して、塗布された電気絶縁物61を挟むように、加熱された鉄の薄板10同士を重ね合わせて圧延し、鉄の薄板10を薄く延ばすとともに、鉄の薄板10同士を接合させる極薄圧延工程P20を有している。この極薄圧延工程P20では、渦電流を低減するために鉄の薄板10を薄くする加工と、鉄の薄板10同士を電気絶縁層11を間に挟んで接合する加工とを、同一の工程P20で行うことができる。このように、効率よく積層鉄心1を製造することができる。
また、本発明に係る積層鉄心1の他の製造方法によれば、対向させた鉄の薄板10の表面に、珪素62を塗布し、続けてさらに、二酸化珪素などの電気絶縁物61を重ねるように塗布した後、鉄の薄板10を加熱して、塗布された電気絶縁物61を挟むように、加熱された鉄の薄板10同士を重ね合わせて圧延し、鉄の薄板10を薄く延ばすとともに、鉄の薄板10同士を接合させる極薄圧延工程P21を有している。この極薄圧延工程P21では、渦電流を低減するために鉄の薄板10を薄くする加工と、鉄の薄板10同士を電気絶縁層11を間に挟んで接合する加工とを、同一の工程P21で行うことができる。このように、効率よく積層鉄心1を製造することができる。
また、本発明に係る積層鉄心1の製造方法によれば、極薄圧延工程P20、P21により形成された圧延板材に含まれる加熱された鉄の薄板10を急冷して、鉄の薄板10をアモルファス状にする急冷工程P50を有している。鉄の薄板10をアモルファス状にすることで、結晶粒がなく粒界における磁極の発生もなく磁気特性が向上し電気抵抗率が高くなり、発生する渦電流および鉄損を低減することができる。さらにアモルファス状の薄板を高温にしてナノ結晶粒を析出させ、更なる磁気特性向上を図る。
また、本発明に係る積層鉄心1の製造方法によれば、全ての極薄圧延工程P20が終了した後に、珪素またはアルミニウムを鉄の薄板10に含侵させる含侵工程P30を含むため、薄板10は、珪素またはアルミニウムを含有する。このため、鉄の薄板10の電気抵抗率が高くなり、発生する渦電流を低減することができる。
また、本発明に係る積層鉄心1の他の製造方法によれば、全ての極薄圧延工程P21が終了した後に、鉄の薄板10に塗布された珪素62を鉄の薄板10内に拡散させる拡散工程P31を含んでいる。薄板10は、珪素62を含有するため、電気抵抗率が高くなり、発生する渦電流を低減することができる。
1,100,101 積層鉄心
2,200 電気デバイス
3,300,400 極薄圧延装置
10 強磁性体の薄板
11 絶縁層
12 樹脂層
20 導電性コイル
30 送出ロール
31 ゼンジミアミル圧延機
32 巻取ロール
33 電気絶縁物塗布部
34 珪素塗布部
35 加熱装置
36 冷却ロール
40,50 第一圧延板材
41,51 第二圧延板材
42 第三圧延板材
48 最終被圧延板材
49 最終圧延板材
61 電気絶縁物
62 珪素
70 積層部材
71 樹脂
80 直流電源
81 リアクトル
82 電気モータ
83 高周波変圧器
84 双方向チョッパー回路
85,86 インバータ回路
87 負荷
d 積層鉄心を構成する強磁性体の薄板の板厚
P10 鋳造・圧延工程
P20,P21 極薄圧延工程
P30 含侵工程
P31 拡散工程
P40 積層鉄心成型工程
P50 急冷工程

Claims (11)

  1. 交流電圧が印加される導電性コイルに巻回されて磁心となる積層鉄心であって、
    板厚dの強磁性体の薄板と、
    電気絶縁物により形成される絶縁層とを有し、
    前記強磁性体の薄板と前記絶縁層とが交互に積み重ねられるように構成され、
    前記導電性コイルに印加される交流電圧の周波数f、前記強磁性体の導電率σ、前記強磁性体の前記周波数fでの等価な磁気透磁率μ、円周率πとすると、
    前記周波数fは、200キロヘルツ以上であり、
    前記強磁性体の薄板の前記板厚dは、(πfμσ)-1/2として求められる浸透深さδ以下の所定の厚さであることを特徴とする積層鉄心。
  2. 請求項1に記載の積層鉄心の周囲に、前記導電性コイルが巻回されていることを特徴とする電気デバイス。
  3. 強磁性体の薄板と、電気絶縁物により形成される絶縁層とを有し、前記強磁性体の薄板と前記絶縁層とが交互に積み重ねられるように構成される積層鉄心の製造方法であって、
    対向させた前記強磁性体の薄板の表面に、前記電気絶縁物を塗布し、
    塗布された前記電気絶縁物を挟むように前記強磁性体の薄板同士を重ね合わせて圧延し、前記強磁性体の薄板を薄く延ばすとともに、前記強磁性体の薄板同士を接合させる極薄圧延工程を含むことを特徴とする積層鉄心の製造方法。
  4. 強磁性体の薄板と、電気絶縁物により形成される絶縁層とを有し、前記強磁性体の薄板と前記絶縁層とが交互に積み重ねられるように構成される積層鉄心の製造方法であって、
    対向させた前記強磁性体の薄板の表面に、前記電気絶縁物を塗布し、
    塗布された前記電気絶縁物を挟むように前記強磁性体の薄板同士を重ね合わせて圧延し、前記強磁性体の薄板を薄く延ばすとともに、前記強磁性体の薄板同士を接合させる第一の極薄圧延工程を有し、
    前記第一の極薄圧延工程により形成された第一圧延板材に含まれる前記強磁性体の薄板が、あらかじめ定められた板厚よりも厚いときには、
    前記第一圧延板材同士を対向させて、前記第一圧延板材の対向する表面に前記電気絶縁物を塗布し、
    塗布された前記電気絶縁物を挟むように前記第一圧延板材同士を重ね合わせて圧延する第二の極薄圧延工程を有し、
    前記第二の極薄圧延工程により形成された第二圧延板材に含まれる前記強磁性体の薄板が、前記あらかじめ定められた板厚よりも厚いときには、
    前記第二圧延板材同士を対向させて、前記第二圧延板材の対向する表面に前記電気絶縁物を塗布し、
    塗布された前記電気絶縁物を挟むように前記第二圧延板材同士を重ね合わせて圧延する第三の極薄圧延工程を有するように、
    圧延により形成された圧延板材に含まれる前記強磁性体の薄板が、前記あらかじめ定められた板厚以下になるまで、
    前記圧延板材同士を対向させて、前記圧延板材の対向する表面に前記電気絶縁物を塗布し、
    塗布された前記電気絶縁物を挟むように前記圧延板材同士を重ね合わせて圧延する極薄圧延工程を順次繰り返すことを含むことを特徴とする積層鉄心の製造方法。
  5. 強磁性体の薄板と、電気絶縁物により形成される絶縁層とを有し、前記強磁性体の薄板と前記絶縁層とが交互に積み重ねられるように構成される積層鉄心の製造方法であって、
    対向させた前記強磁性体の薄板の表面に、珪素を塗布し、続けてさらに、前記電気絶縁物を重ねるように塗布し、
    塗布された前記電気絶縁物を挟むように前記強磁性体の薄板同士を重ね合わせて圧延し、前記強磁性体の薄板を薄く延ばすとともに、前記強磁性体の薄板同士を接合させる極薄圧延工程を含むことを特徴とする積層鉄心の製造方法。
  6. 強磁性体の薄板と、電気絶縁物により形成される絶縁層とを有し、前記強磁性体の薄板と前記絶縁層とが交互に積み重ねられるように構成される積層鉄心の製造方法であって、
    対向させた前記強磁性体の薄板の表面に、珪素を塗布し、続けてさらに、前記電気絶縁物を重ねるように塗布し、
    塗布された前記電気絶縁物を挟むように前記強磁性体の薄板同士を重ね合わせて圧延し、前記強磁性体の薄板を薄く延ばすとともに、前記強磁性体の薄板同士を接合させる第一の極薄圧延工程を有し、
    前記第一の極薄圧延工程により形成された第一圧延板材に含まれる前記強磁性体の薄板が、あらかじめ定められた板厚よりも厚いときには、
    前記第一圧延板材同士を対向させて、前記第一圧延板材の対向する表面に珪素を塗布し、続けてさらに、前記電気絶縁物を重ねるように塗布し、
    塗布された前記電気絶縁物を挟むように前記第一圧延板材同士を重ね合わせて圧延する第二の極薄圧延工程を有し、
    前記第二の極薄圧延工程により形成された第二圧延板材に含まれる前記強磁性体の薄板が、前記あらかじめ定められた板厚よりも厚いときには、
    前記第二圧延板材同士を対向させて、前記第二圧延板材の対向する表面に珪素を塗布し、続けてさらに、前記電気絶縁物を重ねるように塗布し、
    塗布された前記電気絶縁物を挟むように前記第二圧延板材同士を重ね合わせて圧延する第三の極薄圧延工程を有するように、
    圧延により形成された圧延板材に含まれる前記強磁性体の薄板が、前記あらかじめ定められた板厚以下になるまで、
    前記圧延板材同士を対向させて、前記圧延板材の対向する表面に珪素を塗布し、続けてさらに、前記電気絶縁物を重ねるように塗布し、
    塗布された前記電気絶縁物を挟むように前記圧延板材同士を重ね合わせて圧延する極薄圧延工程を順次繰り返すことを含むことを特徴とする積層鉄心の製造方法。
  7. 前記積層鉄心に巻回する導電コイルに印加される交流電圧の周波数f、前記強磁性体の導電率σ、前記強磁性体の前記周波数fでの等価な磁気透磁率μ、円周率πとすると、
    前記周波数fが、200キロヘルツ以上であり、
    前記強磁性体の薄板の前記あらかじめ定められた板厚が、(πfμσ)-1/2として求められる浸透深さδ以下の所定の厚さであることを特徴とする請求項4または6に記載の積層鉄心の製造方法。
  8. 強磁性体の薄板と、電気絶縁物により形成される絶縁層とを有し、前記強磁性体の薄板と前記絶縁層とが交互に積み重ねられるように構成される積層鉄心の製造方法であって、
    対向させた前記強磁性体の薄板の表面に、前記電気絶縁物を塗布した後、前記強磁性体の薄板を加熱して、塗布された前記電気絶縁物を挟むように、加熱された前記強磁性体の薄板同士を重ね合わせて圧延し、前記強磁性体の薄板を薄く延ばすとともに、前記強磁性体の薄板同士を接合させる極薄圧延工程と、
    前記極薄圧延工程により形成された圧延板材に含まれる加熱された前記強磁性体の薄板を急冷して、前記強磁性体の薄板をアモルファス状にする急冷工程とを含むことを特徴とする積層鉄心の製造方法。
  9. 強磁性体の薄板と、電気絶縁物により形成される絶縁層とを有し、前記強磁性体の薄板と前記絶縁層とが交互に積み重ねられるように構成される積層鉄心の製造方法であって、
    対向させた前記強磁性体の薄板の表面に、珪素を塗布し、続けてさらに、前記電気絶縁物を重ねるように塗布した後、前記強磁性体の薄板を加熱して、塗布された前記電気絶縁物を挟むように、加熱された前記強磁性体の薄板同士を重ね合わせて圧延し、前記強磁性体の薄板を薄く延ばすとともに、前記強磁性体の薄板同士を接合させる極薄圧延工程と、
    前記極薄圧延工程により形成された圧延板材に含まれる加熱された前記強磁性体の薄板を急冷して、前記強磁性体の薄板をアモルファス状にする急冷工程とを含むことを特徴とする積層鉄心の製造方法。
  10. 前記極薄圧延工程が終了した後に、珪素またはアルミニウムを前記強磁性体の薄板に含侵させる含侵工程を含むことを特徴とする請求項3、4、または、8に記載の積層鉄心の製造方法。
  11. 前記極薄圧延工程が終了した後に、前記強磁性体の薄板と塗布された前記電気絶縁物との間に挟まれている塗布された珪素を前記強磁性体の薄板内に拡散させる拡散工程を含むことを特徴とする請求項5、6、または、9に記載の積層鉄心の製造方法。
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