JP5843124B2 - コアの製造方法 - Google Patents
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モータのエネルギー変換効率を向上させるための手段として、高飽和磁束密度の軟磁性材料がコア材として用いられる。電磁鋼板は高い飽和磁束密度を持つが1.5T程度の飽和磁束密度しか持たない。それに比してFeSiB系等の非晶質の軟磁性合金薄帯は1.6T程度の飽和磁束密度を持つため、将来的な環境改善のさらなる厳格化を想定すると有望な材料として注目されている。さらに、非晶質の軟磁性合金薄帯は厚さが50μm以下と薄いため、通常100μmを越す電磁鋼板の積層品と比較すると渦電流損失が格段に小さくできるという利点がある。モータ用途では上記のように薄帯を複数層重ねて使用するため、この非晶質金属軟磁性薄帯からなるコアを用いたモータは今後市場が拡大される分野として注目されている。
一体の厚肉の環状体からなるコア部材を用いた場合と異なり、別体の環状コアをそれぞれ変形させて組み合わせることで占積率の高いコアを得ることができる。つまり、各コア部材の屈曲部では内側と外側で曲率が変わるためにその屈曲部同士の間で隙間ができるものの、図2(b)、図5(b)に示すように屈曲部の曲率、特に扇状の外側の円弧と径方向の辺との間の角における屈曲部の曲率が小さくなり、占積率を高くすることができる。
前記屈曲部は軟磁性合金薄帯の積層体や巻き回した環状体を変形させる際に形成される部分である。
屈曲部の内周側の曲率R2は軟磁性合金薄帯の厚さt0に対してR2≧2t0にすることが好ましい。これは、軟磁性合金薄帯としてFe系非晶質薄帯(厚さ15〜50μm)を使用した場合、その機械的強度と扇状に変形させるための応力を考慮した場合、実際に施工可能でかつ占積率を高めることができる軟磁性合金薄帯の厚さt0とコア部材の屈曲部の曲率を規定したものである。
外周側の曲率R1は、内周側の局率R2に巻磁心部材や外周磁心部材の積層方向の各厚みtを足した値とほぼ等しい。実際には軟磁性合金薄帯の間に絶縁層などが形成されるため、外周側の曲率R1は内周側の局率R2と巻磁心部材や外周磁心部材における積層方向の各厚みtの和よりも若干大きいが、その差は僅である。外周側の曲率R1が大きいと、屈曲部の隙間が大きくなってコアの占積率を上げることができなくなる。このため巻磁心部材や外周磁心部材の積層方向の各厚みtは小さい方が好ましいが、これは必要となるコアの厚みや、外周側磁心部材の分割数Nなどで適宜決める必要が有る。
環状のコア部材と積層体とを組み合わせることで、積層体のみのコアよりも簡単かつ低コストで製造が可能であり、かつ、複数のコアを組み合わせることで占積率の高いコアとすることができる。軟磁性合金薄帯は各々矩形状であると積層体を形成しやすい。
コアの大きさ、コアの形状、巻磁心部材の厚さ、巻磁心部材の分割数などにより適宜決定される。
複数の巻磁心部材を同芯状に組み合わせてから所望形状に変形させているため、従来のように一体肉厚の巻磁心を変形させるよりも各巻磁心部材が変形しやすく、かつ変形させるための機械的応力も小さくできる。変形量が大きいために必要なコア形状に近づけやすく、環状の巻磁心部材における周囲の一部を鋭角な形状にもできるため、従来では空隙部となっていたコアの角部などにも軟磁性材料を配置させることができるので占積率を高めることができる。本発明では、第2の巻磁心部材の外周側から応力を与える方法として、例えばボビンなどの中に巻磁心部材を入れて変形させるものも含む。
これは第二の巻磁心部材における内周の長さが第一の巻磁心部材における外周の周長よりも大きいため、巻磁心部材を変形させた際にその両者の長さの差が屈曲部に隙間となって表れるためである。
図5に示すように円環状の巻磁心部材の周囲に積層体を巻き、その周囲から応力を付与することで所望の形状にすることができる。前記と同様に、複数の部材に分割しているので各巻磁心部材が変形しやすく、かつ変形させるための機械的応力も小さくできる。よって、占積率が高いコアを製造することが可能になる。
この本発明の製造方法で得られたコアを用いることでモータ効率が高いアキシャルギャップモータを構成することが出来る。
また、Feの代わりに、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Ru、Ni、Pd、Cu、Zn、Y、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dyのうちの少なくとも1種以上からなる元素を3原子%以下の範囲で添加しても良い。
また、この外にもCo基非晶質合金薄帯、ナノ結晶合金薄帯などを用いることができる。
なお、回転子は、固定子の両側もしくは片側のいずれかに配置される。コアは、基本的には扇形の状態で配置される。本実施例では複数の磁心部材を組み合わせて配置することで扇形に近い形状のコアを製造した。
複数個の巻磁心部材を用いる場合、中心軸側から第N番目(Nは2以上の整数)の巻磁心部材は、第N−1目の巻磁心部材の外径よりも大きい内径持つ。
第N番目の内周部と第N−1番目の巻磁心部材における外周部の間には隙間ができるように設計する。この隙間は、当然巻磁心部材内の巻かれて隣接する軟磁性薄帯同士の隙間よりも大きな値である。巻かれて隣接する軟磁性合金薄帯同士の隙間は、薄帯間を絶縁するための非磁性の微粉末を薄帯表面に吹きつけたためにできたり、軟磁性合金薄帯の表面粗さによってできたりするものであり、巻磁心部材の変形を考慮して設けるものではない。第N番目の内周部と第N−1番目の巻磁心部材の外周部との間の隙間により、両者を変形させる際に摩擦などによって互いが干渉せずに塑性変形できる。その隙間は、第N−1番目の巻磁心部材磁性材厚t(n−1)に対して、10%以上50%以下の幅が好ましい。
このN個の鉄心を同心円状に組み合わせて、扇状に成形することで、占積率を高めた鉄心を得ることが出来る。
積層体の厚さは巻磁心部材よりも厚くすることが好ましい。高い占積率をもつコアを得ることができる。
積層体の各軟磁性合金薄帯の間には絶縁性のある塗料を塗布することが好ましい。薄帯間の絶縁を保つことで磁心の鉄損を低くすることが出来る。膜厚は0.2μm以上1μm以下の膜厚で塗布することが望ましい。0.2μm未満であると絶縁性を確保することが難しく、1μmを超えると占積率が低下する。
以下、本発明の実施例について図1、図2を用いて説明する。
図1に本発明の金属薄帯を利用したコアを示す。コアは軟磁性合金薄帯にメトグラス社製のFe基非晶質合金薄帯(製品名:SA1)を用いた。Fe基非晶質合金薄帯の平均厚さは20.2μmである。この軟磁性合金薄帯の表面に絶縁コーティングを施した。絶縁コーティング材として、スピンオングラス材を用い、厚さを平均1μmとして塗布した。
固定子鉄心となるコア101は、Fe基金属薄帯を巻き回した巻磁心部材114と111〜113のFe基金属薄帯を巻き回した複数の環状体111〜113から主に構成され、それらの隙間は磁粉を含む樹脂を充填されている。図2は、図1に示した固定子鉄心の製造方法を説明するためのものである。非晶質合金薄帯を巻いて、肉厚が2mmの巻磁心部材を製造した。また、その外周側に配置する環状体の外周側磁心部材(以後、環状体)を同様に製造した。巻磁心部材114の内径は4.62mm、外径は8.62mmである。環状体113の内径は9.4mm、外径は13.4mmである。環状体112の内径は14.32mm、外径は18.32mmである。環状体111の内径は19.32mm、外径は23.32mmである。各々隣接する部材は周に沿って、環状体の厚さ2mmに対して0.15%〜0.3%程度の隙間ができる。また、環状体111と環状体112、環状体112と環状体113の間も同じ隙間ができるように外径、内径の寸法を決めた。
巻磁心部材114と環状体111〜113を図2(a)のように同軸上に重ね、図2(b)に示すような扇状の金型に入れて成形を行った。図2(b)上で左右から開閉する横型と上下から開閉する上型、下型によって環状体111の外周側から応力を付与する。付与された応力は、環状体111、環状体112、環状体113の順に環状体を変形させ、最後に巻磁心部材114を変形させる。環状の各部材を扇状の形に変形するにつれ、屈曲部となる部分以外で巻磁心部材114および環状体111〜113の周囲が平行に隣接し、逆に屈曲部では離間して隙間が大きくなる。
巻磁心部材114の屈曲部の外周側は、巻磁心部材の積層厚さによってなだらかな弧を描き、曲率R1は比較的大きく2.1mmである。対して、環状体113の屈曲部の内周側は極めて小さい弧を描き、曲率R2は0.5mm以下である。
隙間は金型からの圧縮応力によって大きさを変えるが、なるべく小さくなるように各部材の寸法を幾何学的に決定する。
この実施例1の扇形状に対する隙間とコアの面積比は6.5:93.5であり、巻磁心部材、外周側磁心部材自体の占積率を考慮すると、扇形状に換算した時の軟磁性合金薄帯の占積率は85.3%である。
図8は比較例である従来のコアの一例である。一体の環状コアで、積層部の厚さが8mmものを扇状に変形したコアである。コア131は、肉厚の分だけ外周部の角部にRが設けられるため、本来の扇形の形状と比較すると角部が丸まった形状となり、図3(b)に示すような角部の空白部分が発生している。その扇形状に対する隙間とコアの面積比は18.4:81.6であり、本発明実施例1のコアの占積率に比べて低い値しか得られていない。
図4は本発明の製造方法で得られる別のコアの形態を示す図である。コア140は軟磁性合金薄帯にメトグラス社製のFe基非晶質合金薄帯(製品名:SA1)を用いている。Fe基非晶質合金薄帯の平均厚さは20.2μmである。軟磁性合金薄帯の表面には絶縁コーティングは施さず、そのまま後述の巻磁心部材および積層体として用いた。
コア140は、Fe基金属薄帯を巻き回した巻磁心部材142とFe基金属薄帯を積層した積層体141から主に構成され、それらの隙間は磁粉を含む樹脂を充填されている。図5は、図4に示した固定子鉄心の製造方法を説明するための図である。非晶質合金薄帯を巻いて、肉厚が2mmの巻磁心部材を製造した。また、その外周側に配置する積層体からなる外周側磁心部材(以後、積層体)を製造した。積層体141は図6に示すように、積層面の一端が垂直に揃っており、多端は積層方向に向かって徐々に短くなるように形成されている。
巻磁心部材142の外径は4.8mmである。積層体の積層方向の厚さは5.5mmであり、図面下側の長手方向の長さは58.8mmであり、図面上側の長手方向の長さは39.8mmとした。
積層体141を巻磁心部材142の周囲に沿って曲げた後、巻磁心部材142と積層体141を図5(b)に示す扇状の金型に入れて成形を行った。図5(b)上で左右から開閉する横型と上下から開閉する上型、下型によって環状体114の外周側から応力を付与した。付与された応力は、積層体142を介して巻磁心部材141を変形させる。各部材が扇状の形に変形するにつれ、屈曲部では隙間が大きくなり、また巻磁心部材141および積層体142の周囲の大部分が平行に隣接する。
積層体の非晶質合金薄帯は、最も短いものは金属薄帯が巻磁心部材141の外周長さにほぼ等しい長さである。積層体の厚さ方向に徐々に非晶質合金薄帯の長さが変わるが、20枚以下なら同じ長のものが連続して積層されていてもよい効率よく切断するには複数の金属薄帯を一括で切断することが好ましい。金属薄帯の長さは、送り長さがプログラムによりコントロールされた送り装置により測定される。非晶質合金薄帯は順次短い長さに切断され、突き当てによって型内で整列されて金属薄帯片の集合体141を得る。型内で整列された金属薄帯片141は、突き当てした側が仮固定された状態で金属片部材として得られる。
金型122内で成形した後、熱処理を350℃×1時間施し、ワニス処理でリボン切断面の保護を行うと共に外周面の塗装を行い、エッジ部の保護を行った。このようにして得られたコアの扇形状に対する隙間とコアの面積比は、9.8:90.2であった。巻磁心部材、外周側磁心部材自体の占積率を考慮すると、扇形状に換算した時の軟磁性合金薄帯の占積率は82.3%である。
また、本実施例では、扇形のコアとしていたが、固定子鉄心の形状は扇型に限ったものではなく、金型で成形可能な形状であれば、どのような形状でも対応可能である。
140:コア、142:積層体(外周側磁心部材)、141:巻磁心部材、122:金型、
130:コア
150:固定子、151:コイル,ボビン
Claims (15)
- 軟磁性合金薄帯が巻かれた環状の内側巻磁心部材と、前記内側巻磁心部材の外周側を包む、軟磁性合金薄帯を用いた外周側磁心部材を少なくとも備えた扇状のコアの製造方法であって、
前記軟磁性合金薄帯がFe基非晶質合金であり、
前記内側巻磁心部材となる円環状の巻磁心部材と、前記外周側磁心部材となる円環状の巻磁心部材、又は積層体とを扇状に変形させ、
前記変形により形成された屈曲部において、前記内側巻磁心部材の前記屈曲部の外側の側面と外周側磁心部材の内側の側面との間に形成された隙間に、樹脂とFe基非晶質合金の磁性粉末からなる混合物を充填し、前記内側巻磁心部材と前記外周側磁心部材とを固定したことを特徴とするコアの製造方法。 - 請求項1に記載のコアの製造方法であって、
前記外周側磁心部材は軟磁性合金薄帯を厚み方向に曲げた少なくとも一つの屈曲部を持ち、前記隙間は前記内側巻磁心部材の屈曲部外側と前記外周側磁心部材の屈曲部内側の間に形成されることを特徴とするコアの製造方法。 - 請求項1または2に記載のコアの製造方法であって、
前記外周側磁心部材は、前記内側巻磁心部材が軸平行の状態で内包されるように軟磁性合金薄帯が巻かれた少なくとも一つの環状体であり、前記内側巻磁心部材が軸平行の状態で内包されるように配置されることを特徴とするコアの製造方法。 - 請求項3に記載のコアの製造方法であって、
前記内側巻磁心部材と前記外周側磁心部材はそれぞれ屈曲部を持ち、
屈曲部の外周側の曲率R1はコアの最大径をLとした場合、R1=0.7L/2以下であることを特徴とするコアの製造方法。 - 請求項3または請求項4に記載のコアの製造方法であって、
前記内側巻磁心部材と前記環状体の外周側磁心部材が相似形に形成されていることを特徴とするコアの製造方法。 - 請求項1または請求項2に記載のコアの製造方法であって、
前記外周側磁心部材は、前記内側巻磁心部材を囲むように軟磁性合金薄帯が曲げられた少なくとも一つの積層体であることを特徴とするコアの製造方法。 - 請求項6に記載のコアの製造方法であって、
前記積層体は積層方向に向かって長さが徐々に長くなる軟磁性合金薄帯を積層させたものであることを特徴とするコアの製造方法。 - 請求項6または請求項7に記載のコアの製造方法であって、
前記外周側磁心部材の輪郭形状が扇状であることを特徴とするコアの製造方法。 - 請求項8に記載のコアの製造方法であって、
前記外周側磁心部材は、積層体の長手方向端部の積層面がどちらも扇状の断面形状の中心側に向くように配置され、その間の積層部が前記内側巻磁心部材を囲むように形成されることを特徴とするコアの製造方法。 - 請求項1乃至請求項9のいずれかに記載のコアの製造方法であって、
前記磁性粉末がFe基非晶質合金薄帯を粉砕したものであることを特徴とするコアの製造方法。 - 請求項1乃至請求項10のいずれかに記載のコアの製造方法であって、
前記内側巻磁心部材の中央空隙部に、少なくとも磁性粉末もしくは軟磁性合金薄帯の積層体が配置されていることを特徴とするコアの製造方法。 - 請求項1乃至5のいずれかに記載のコアの製造方法であって、
前記内側巻磁心部材となる円環状の第一の巻磁心部材と、前記外周側磁心部材となる前記巻磁心部材の外径よりも内径が大きい円環状の第二の巻磁心部材を少なくとも製造する第一工程と、
前記第二の巻磁心部材の内側に前記第一の巻磁心部材を軸平行になるように成形用の金型内に配置する第二工程と、前記第二の巻磁心部材の外周側から金型により応力を与えて第一及び第二の巻磁心部材を所望の形状に変形させた状態で前記金型とともに熱処理して扇状のコアとする第三工程を有することを特徴とするコアの製造方法。 - 請求項12に記載のコアの製造方法であって、
前記第三工程は、前記第一の巻磁心部材の屈曲部外側と第二の巻磁心部材の屈曲部内側との間に隙間が形成されるように行い、
更に前記隙間に樹脂と磁性粉末からなる混合物を充填し、前記第一の巻磁心部材と前記第二の巻磁心部材とを固定する第四工程を有することを特徴とするコアの製造方法。 - 請求項1、2、6乃至9のいずれかに記載のコアの製造方法であって、
前記内側巻磁心部材となる円環状の巻磁心部材と、前記外周側磁心部材となる積層体を製造する工程と、前記積層体を曲げて前記内側巻磁心部材の外周側を囲む工程と、前記積層体の外周側から金型により応力を与えて前記積層体と内側巻磁心部材を所望の形状に変形させた状態で前記金型とともに熱処理して扇状のコアとする工程と有することを特徴とするコアの製造方法。 - 請求項14に記載のコアの製造方法であって、
前記積層体と内側巻磁心部材を変形させた状態で前記金型とともに熱処理して扇状のコアとする工程は、前記巻磁心部材の屈曲部外側と積層体の屈曲部内側の間に隙間が形成されるように行い、
更に、前記隙間に樹脂と磁性粉末からなる混合物を充填し、前記内側巻磁心部材と前記積層部材とを固定する工程を有することを特徴とするコアの製造方法。
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