JP4103303B2 - 加熱加圧装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、未定着像を加熱及び加圧して記録媒体に少なくとも定着させる加熱加圧装置に係り、主に、画像情報に応じた未定着像を形成して記録媒体に定着することにより画像形成を行う画像形成装置において、その形成される未定着像を記録媒体に定着させる定着装置又はその未定着像を記録媒体に転写及び定着させる転写同時定着装置として利用可能な加熱加圧装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、電子写真方式のプリンタ、複写機等に代表される画像形成装置として、電磁誘導加熱方式を利用した定着装置や転写同時定着装置を使用するものが提案されている(特開平10−254263号公報、特開平10−301415号公報など)。ちなみに本出願人も、例えば、電磁誘導加熱方式を利用した転写同時定着装置を装備する画像記録装置についての提案を行っている(特開平11−352804号公報)。
【0003】
このような電磁誘導加熱方式を利用した定着装置又は転写同時定着装置はいずれも、基本的には、金属等の導電性材料からなる導電層を少なくとも有する加熱用ベルト部材を支持ロール等の支持体に周回移動可能に支持させて使用するとともに、その加熱用ベルトの加熱対象とする部位の付近に導電層を貫く変動磁界を発生する励磁コイルを対向配置し、その励磁コイルに交流電圧を印加することにより励磁コイルから発生する変動(交番)磁界が貫かれる導電層部分を渦電流により電磁誘導加熱させ、そのときの熱を加熱用ベルト表面に伝えて定着時や転写同時定着時における未定着像(トナー像)を加熱するようにしている。
【0004】
より具体的には、定着装置にあっては、その加熱用ベルトを記録用紙等の記録媒体に未定着像を熱定着させるための加熱定着ベルトとして使用し、その加熱定着ベルトの前記励磁コイル等により電磁誘導加熱される部位に対して、未定着像が転写された記録媒体を押し付けるような状態で通過させるための加圧ロール等の加圧体を配置している。また、転写同時定着装置にあっては、その加熱用ベルトを記録媒体に転写させるまで未定着像を一時的に担持して搬送する加熱中間転写ベルトとして使用し、その中間転写部ベルトの前記励磁コイル等により電磁誘導加熱される部位に対して、その中間転写体上の未定着像を転写定着すべき記録媒体を押し付けるような状態で通過させる加圧体を配置している。
【0005】
そして、このような電磁誘導加熱方式の定着装置及び転写同時定着装置は、前記した加熱定着ベルトや加熱中間転写ベルトの加熱対象部位(その部位にある導電層部分)を素早く加熱できるとともに、少量の電力でもって加熱できるという利点を有している。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、この電磁誘導加熱方式を利用した定着装置や転写同時定着装置のような加熱加圧装置は、特に図25に示すように、加熱用ベルト100を前記支持体110に押し付けてそのベルト外周面と加圧体120との間で形成されるニップ部(圧接域)Nよりも手前側の位置において電磁誘導加熱装置等の加熱手段130により加熱するように構成した場合、次のような課題があった。
【0007】
まず、加熱用ベルト100自体はそのニップ部Nの手前側となる位置で加熱手段130によって所定の温度まで加熱されているにもかかわらず、加熱用ベルト100によって未定着像が十分に加熱されない場合があり、この結果、かかる未定着像の良好な定着や転写同時定着ができないという問題があった。この十分な加熱ができない場合とは、本発明者の研究によれば、加熱用ベルトが未定着像を加熱する前に支持体などに触れて熱を奪われてしまうことがその主な発生原因になっていることが判明した。
【0008】
また、加熱手段130として電磁誘導加熱装置を使用した場合には、その加熱装置130により加熱用ベルト100をニップ部に達する前に効率よく電磁誘導加熱することが必要である。その対策として、例えば、励磁コイル(130)からより大きな変動磁界を生成させるように構成したり、あるいは、加熱用ベルト100を薄くして熱伝導率がより優れたものとなるように構成する手段が考えられる。しかし、このような手段を採用した場合にはいずれも、その励磁コイルから生成される変動磁界の磁束が加熱用ベルト100を突き抜けて励磁コイルとは反対側の空間内に容易に洩れやすくなり、この結果、その空間内に導体が存在すると、その導体に対して洩れ出た変動磁界による電磁誘導作用を及ぼしてしまうという不具合がある。また、このような洩れ出る変動磁界による不具合は、加熱用ベルト100をニップ部に達する前に電磁誘導加熱する場合に限らず、ニップ部において加熱用ベルト100を電磁誘導加熱する場合であっても、起こる可能性があると予想される。
【0009】
さらに、加熱用ベルト100がその周回移動速度を例えば記録媒体の種類や条件等に応じて高速又は低速に変更できるように構成されている場合には、図26に例示するように、加熱用ベルト100の電磁誘導加熱装置(厳密には励磁コイル)130を通過するときの速度が異なることになるため、その加熱装置130によって電磁誘導加熱されて最高温度に到達するときのベルト領域が存在する位置がずれるようになる。すなわち、特に加熱用ベルト100の速度が高速側に変更された場合には、その最高温度到達領域100aが励磁コイル(130)から前記ニップ部N寄りの位置にずれて存在するようになり、反対に低速側に変更された場合には、その最高温度到達領域が励磁コイル(130)とほぼ同等の位置に止まるようにずれるようになる。これにより、未定着像を加熱する条件(加熱温度又は加熱タイミング)が微妙に変化してしまい、一定の加熱ができなくなる。図20中のグラフ部において実線は通常のベルト速度であるときの状態、一点鎖線は高速側のベルト速度であるときの状態、二点鎖線は低速側のベルト速度であるときの状態をそれぞれ示す。
【0010】
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであり、その第1の目的とするところは、加熱用ベルトをニップ部より手前側の位置で加熱する加熱加圧装置として、その加熱用ベルトにより未定着像を少なくともニップ部において十分にかつ安定して加熱することができる加熱加圧装置を提供することにある。また、その第2の目的は、加熱用ベルトをニップ部より手前側の位置で電磁励磁加熱する加熱加圧装置として、その加熱用ベルトからの磁束洩れによる不具合を発生させることなく、加熱用ベルトを効率よく安定して電磁誘導加熱することができる加熱加圧装置を提供する。さらに、その第3の目的は、加熱用ベルトをニップ部の位置で電磁励磁加熱する加熱加圧装置として、その加熱用ベルトからの磁束洩れによる不具合を発生させることなく、加熱用ベルトを効率よく安定して電磁誘導加熱することができる加熱加圧装置を提供する。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記第1の目的を達成し得る本発明(第1発明)は、未定着像を加熱及び加圧して記録媒体に少なくとも定着させる装置であって、周回移動する加熱用ベルトと、この加熱用ベルトをそのベルト内周面側から支持する支持体と、この支持体に前記加熱用ベルトを押し付けてそのベルト外周面との間で前記未定着像と記録媒体とを圧接させるニップ部を形成する加圧体と、前記加熱用ベルトを前記ニップ部に達する手前側の位置で加熱する加熱手段とを備えた加熱加圧装置において、前記加圧体を、前記ニップ部に達する前記加熱用ベルトがその加圧体に接触してから前記支持体に接触する状態となる位置関係を満たすように配置したことを特徴とするものである。
【0012】
ここで、上記加圧体の配置に関する位置関係は、ニップ部に達する加熱用ベルトが支持体よりも先に加圧体に接触する状態を形成できる加圧体の配置条件であり、加圧体の(加熱用ベルトを介在させた状態での)支持体に対する配置関係で定まるものである。したがって、この位置関係を満たすように加圧体を配置することが可能であれば、その配置の仕方については特に制約されるものではない。例えば、加圧体を設置しない無加圧状態において加熱用ベルトを支持体に自然に支持させたときに、その加圧用ベルトが支持体と初めて接触する無加圧時接触点(位置)を基準にした場合、加圧体と加熱用ベルトが初めて接触する加圧体側接触点(位置)が上記無加圧時接触点よりも少なくとも上記加熱手段寄りにずれた位置となるように、加圧体を配置するとよい。ただし、上記位置関係については、その位置関係を満たすように配置されるときの加圧体と加熱用ベルトの外周面との間で形成されるニップ部が、特に記録媒体のスムーズな通過(搬送性)を損なわない形態となるようにすることが望ましい。
【0013】
また、上記加熱手段は、少なくとも加熱用ベルトの幅方向の所要領域であって外周面側を、上記ニップ部での未定着像と記録媒体との圧接時までに所定の温度まで加熱することができるものであればよい。例えば、加熱用ベルトとして少なくとも電磁誘導加熱の対象となる導電層を有するベルトを使用してその導電層を電磁誘導加熱する電磁誘導加熱装置や、自らが発熱しその熱により加熱用ベルトを接触又は非接触の状態で加熱するための発熱体を有する自己発熱式の加熱装置などである。
【0014】
この第1発明の加熱加圧装置によれば、加熱用ベルトは、支持体により支持されるとともに加圧体により支持体に押し付けられた状態でニップ部を形成するように周回移動し、また、ニップ部において未定着像と記録媒体が圧接される際には加熱手段により加熱された後にニップ部に達するように周回移動する。そして、未定着像は、ニップ部に達する直前及び達した時点で加熱された加熱用ベルトにより加熱されるとともにそのニップ部に達した時点で加圧体により記録媒体に加圧され、もって記録媒体に少なくとも定着される。そして、加熱用ベルトは、特にそのニップ部に達する際に、加圧体の配置により、加圧体に先に接触してから支持体に接触することになる。これにより、その加熱された加熱用ベルトは、加圧体と接してニップ部を形成し始める際には支持体に接触していないため、その熱が支持体との接触により奪われることはない。したがって、ニップ部に達する直前及び達した時点で未定着像を、加熱された加熱用ベルトによりロス(熱損失)なく十分に加熱することができる。
【0015】
次に、上記第1及び第2の目的を達成し得る本発明(第2発明)は、未定着像を加熱及び加圧して記録媒体に少なくとも定着させる装置であって、少なくとも導電層を有し周回移動する加熱用ベルトと、この加熱用ベルトをそのベルト内周面側から支持する支持体と、この支持体に前記加熱用ベルトを押し付けてそのベルト外周面との間で前記未定着像と記録媒体とを圧接させるニップ部を形成する加圧体と、前記加熱用ベルトと対向するように配設される励磁コイルとこの励磁コイルに交流電圧を印加する交流電源からなり、そのベルトを前記ニップ部に達する上流側の位置で電磁誘導加熱する電磁誘導加熱手段とを備えた加熱加圧装置において、前記加熱用ベルトを挟んで前記励磁コイルと対向する側の位置に非電磁誘導加熱性の磁束収集部材を配設したことを特徴とするものである。
【0016】
ここで、上記加熱用ベルトは、少なくとも導電層を有し、上記のように電磁加熱時に磁束が洩れ出る特性を有するものであり、そのベルトの層構造、材質、厚さ等の構成については特に制約されるものではない。この加熱用ベルトにおける磁束の洩れは、電磁誘導加熱装置の励磁コイルから生成されて加熱用ベルトに及ぶ変動(交番)磁界とそのベルトの導電層内で発生するうず電流による反作用磁界によって決定される磁束(分布)が洩れることにより発生しているものと考えられる。特に、加熱用ベルトにおける磁束の洩れ出る特性は、その洩れ出た磁束が周囲にある導体部品に電磁誘導作用を及ぼして悪影響のあるレベルのものをいい、例えば、後述する磁束密度の測定装置及び測定方法で測定した場合に1.5G(ガウス)以上の測定値が得られるような特性である。
【0017】
また、上記非電磁誘導加熱性の磁束収集部材とは、少なくとも、磁束を集めやすい性質と磁束によるうず電流が発生しにくい(電磁誘導加熱しにくい)性質とを兼ね備えた部材である。この磁束収集部材の形態等については、基本的に発明の目的を達成し得る範囲のものであればよく、特に制約されるものではない。このような磁束収集体としては、具体的には、強磁性体フェライト等の強磁性体、パーロマイ(Fe-Ni-Mo等からなる合金)、希土類遷移金属化合物(Nd-Fe-B等)、金属を含まない有機化合物の結晶(P−NPNN,TDAE−C60など)等の材料が挙げられる。また、このような磁束収集部材としては、一般に、透磁率が高くかつ抵抗率が高いものが好ましいが、これに限定されず、例えば電気鉄板(代表的にはけい素鋼板)のように鉄等からなる薄い金属板を複数枚接合して重ね合わせた積層集合体であってもよい。さらに、この磁束収集部材は、磁化履歴におけるヒステリシス損の少ないものであることがより好ましい。また、電気抵抗が高くうず電流損失が少ないこと、大量生産に適していることなどを併せて考えた場合には、ソフトフェライト(Fe2O3を主成分とするフェリ磁性酸化物)などが好適である。
【0018】
この第2発明の加熱加圧装置によれば、第1発明の装置と対比した場合、加熱用ベルトの加熱が電磁誘導加熱される点で相違するのみで、それ以外については同様にして未定着像が記録媒体に少なくとも定着される。そして、特にその電磁誘導加熱時に加熱用ベルトから洩れ出る磁束が、その洩れ出る側に配接された磁束収集部材によって集められるような磁路を形成するようになる。この際、磁束収集部材は、集められる磁束によってうず電流が発生しにくいため電磁誘導加熱されていない状態にある。これにより、加熱用ベルトから洩れ出た磁束がその周辺にある導体に及ぶことがなくなる。また、みかけ上励磁コイルの高インダクタンス化が可能となり、励磁コイルと加熱用ベルトの導電層との磁気的結合度が高められて高い力率が得られる。この結果、加熱用ベルトは、磁束洩れによる不具合が発生することなく、効率よく的確に電磁誘導加熱されるようになる。また、このように十分に電磁誘導加熱された後の加熱用ベルトによって未定着像が安定して加熱されるようになる。
【0019】
また、第2発明の加熱加圧装置においては、前記磁束収集部材の加熱用ベルトの移動方向に沿う幅を、前記励磁コイルの加熱用ベルトの移動方向に沿う幅と同等以上の寸法に設定するとよい。この場合には、少なくとも励磁コイルの幅に相応した幅で加熱用ベルトを的確にかつ効率よく電磁誘導加熱することができるとともに、その磁束収集部材による磁束遮蔽が十分に得られるようになる。反対に磁束収集部材の幅が励磁コイルの幅よりも狭い場合には、加熱用ベルトの電磁誘導加熱される領域(幅)が励磁コイルの幅よりも狭くなる。なお、より狭い領域を電磁誘導加熱する場合には、磁束収集部材の上記幅を励磁コイルのそれよりも狭くし、そのコイルで生成される磁束を狭めの磁束収集部材に集中させて狭い領域での加熱を実現することができるが、その一方で、磁束収集部材による磁束遮蔽が十分ではなくなる可能性が高くなる。
【0020】
また、第2発明の上記各加熱加圧装置においては、前記磁束収集部材を、前記加熱用ベルトに対して10mm以下の間隔、より好ましくは1〜5mmの間隔をあけた非接触状態で配設するとよい。この場合には、磁束収集部材による前記磁路の形成が確実になされるようになる。この間隔が10mmを超えて広くなるにつれて磁束収集部材による前記した磁路の形成が困難になり、洩れ出る磁束を遮蔽する作用が十分に得られなくなる。
【0021】
また、第2発明の上記各加熱加圧装置においては、前記加熱用ベルトが、その周回移動速度を切り替え変更するように構成されている場合、前記磁束収集部材を、その加熱用ベルトの周回移動速度に応じて加熱用ベルト移動方向の前後側に変位調整可能に設けるとよい。例えば、その速度が通常速度から高速側に変更されるときには磁束収集部材をニップ部側から遠ざける方向に変位させ、その速度が通常速度から低速側に変更されるときには磁束収集部材をニップ部側に近づける方向に変位させて調整すればよい。このように構成した場合には、加熱用ベルトの周回移動速度が変更された際に発生するベルトの最高温度到達領域の位置的ずれを防止することができ、そのときの加熱条件についてもほぼ一定に保つことが可能になるベルトによる加熱条件をほぼ一定に維持することができる。
【0022】
さらに、第2発明の上記各加熱加圧装置においては、前記加圧体を、前記ニップ部に達する前記加熱用ベルトがその加圧体に接触してから前記支持体に接触する状態となる位置関係を満たすように配置するとよい。すなわち、第2発明の上記各加熱加圧装置においては、その加圧体を前記した第1発明のような特定の位置関係を満たすように配置するようにしてもよい。この場合には、前記した第2発明による作用効果に加えて、前記した第1発明による作用効果が同時に得られるようになり、特に未定着像の加熱をより十分にかつ安定して行うことが可能となる。
【0023】
次に、上記第3の目的を達成し得る本発明(第3発明)は、未定着像を加熱及び加圧して記録媒体に少なくとも定着させる装置であって、少なくとも導電層を有し周回移動する加熱用ベルトと、この加熱用ベルトをそのベルト内周面側から支持する支持体と、この支持体に前記加熱用ベルトを押し付けてそのベルト外周面との間で前記未定着像と記録媒体とを圧接させるニップ部を形成する加圧体と、前記加熱用ベルトと対向するように前記支持体又は加圧体側に配設される励磁コイルとこの励磁コイルに交流電圧を印加する交流電源からなり、そのベルトを前記ニップ部の位置で電磁誘導加熱する電磁誘導加熱手段とを備えた加熱加圧装置において、前記加熱用ベルトを挟んで前記励磁コイルと対向する側の位置に非電磁誘導加熱性の磁束収集部材を配設したことを特徴するものである。
【0024】
ここで、上記電磁誘導加熱手段(特にその励磁コイル)は、支持体又は加圧体の上記ニップ部に対向する位置に配設するとよい。例えば支持体及び加圧体が中空ロールである場合には、その励磁コイルをそのロール中空内に上記ニップ部と対向するような状態で配設すればよい。なお、この電磁誘導加熱手段により加熱する加熱用ベルトの領域は、ニップ部となる領域のみに止まるものではなく、そのニップ部の前後方向にある領域もわずかながら含むものである。また、加熱用ベルトをニップ部の位置で電磁誘導加熱するように構成する場合、その加熱用ベルトと励磁コイルの間に位置(介在)する支持体又は加圧体は、励磁コイルから生成される磁束を透過させることが可能でかつその磁束によって自らが電磁誘導加熱することが殆どない材料(例えばセラミックス、ガラスなど)で構成する必要がある。一方、上記磁束収集部材は、第2発明における磁束収集部材と同じものであり、その各構成についても同様にするとよい。
【0025】
この第3発明の加熱加圧装置によれば、第2発明の装置と対比した場合、加熱用ベルトがニップ部の位置で電磁誘導加熱されて未定着像もニップ部の位置で常に加熱される点で相違するのみで、それ以外については同様にして未定着像が記録媒体に少なくとも定着される。そして、特にその電磁誘導加熱時に加熱用ベルトから洩れ出る磁束が、その洩れ出る側に配接された磁束収集部材によって集められるような磁路を形成するようになる。この際、磁束収集部材は、集められる磁束によってうず電流が発生しにくいため電磁誘導加熱されていない状態にある。これにより、加熱用ベルトから洩れ出た磁束がその周辺にある導体に及ぶことがなくなる。但し、この場合には、支持体及び加圧体の材質によっては加熱用ベルトから洩れ出る磁束により少し電磁誘導加熱されることになるが、特に支障とはならない。
【0026】
また、第3発明の上記加熱加圧装置においては、前記磁束収集部材を配設することに代えて又はその磁束収集部材を配設することに加えて、前記加熱用ベルトを挟んで前記励磁コイルと対向する側に位置する前記加圧体又は支持体を、少なくとも前記磁束収集部材にて構成してもよい。この場合には、その該当する加圧体又は支持体をその磁束収集部材のみで構成することが好ましいが、発明の目的を達成できる範囲であれば、その加圧体及び支持体の一部のみを(例えば層状に)その磁束収集部材で構成すればよい。この加圧体又は支持体の少なくとも一部を構成する磁束収集部材としては、前記した磁束収集部材を適宜選択して使用することができる。
【0027】
このように構成した場合には、前記第3の発明による同じ作用効果が得られることに加えて、励磁コイルと対向する側に位置する支持体及び加圧体が加熱用ベルトから洩れ出る磁束により少し電磁誘導加熱されるということがなくなるという利点がある。しかも、磁束収集部材を配設することと加圧体又は支持体の少なくとも一部を磁束収集部材で構成することを併用した場合には、加熱用ベルトから洩れ出る磁束がより一層確実に収集されて遮蔽されるようになる。
【0028】
以上の第1発明、第2発明及び第3発明に係る各加熱加圧装置はいずれも、未定着像(主に現像して得られるトナー像)を加熱して、記録用紙、OHPシート、封筒、はがきを含む厚紙等の記録媒体に少なくとも定着させる技術分野に広く利用できるものであり、特に、プリンタ、複写機、ファクシミリ等に代表される画像形成装置の定着装置や転写同時定着装置として利用すると有効である。
【0029】
例えば、以上の各加熱加圧装置を定着装置として利用する場合には、前記加熱用ベルトを加熱定着ベルトとし、かつ、前記記録媒体をその表面に前記未定着像を担持させた状態で前記ニップ部に送り込み、その未定着像をニップ部で記録媒体に定着させるように構成するとよい。一方、以上の各加熱加圧装置を転写同時定着装置として利用する場合には、前記加熱用ベルトを加熱中間転写ベルトとし、かつ、前記未定着像をその加熱中間転写ベルトに担持させた状態で前記ニップ部に送り込み、その未定着像をニップ部で記録媒体に転写及び定着させるように構成するとよい。
【0030】
また、第1発明〜第3発明における上記加熱用ベルトは、上記加熱手段により所定の温度まで素早く加熱されるものであればよく、その加熱手段の種類(方式)に適合した構成のものであればよい。例えば、一般的には、素早い加熱を実現する観点からは熱容量を小さくするように構成したベルト部材が好ましく、また、第1発明〜3発明において電磁誘導加熱方式を採用する場合には少なくとも電磁誘導加熱の対象となる導電層を形成したベルト部材が使用される。この場合、その導電層は厚さが2〜15μmの銅であることが好ましい。さらに、第1発明〜第3発明における上記支持体及び加圧体はいずれも、通常はロール又はドラム状の回転体であるが、特にこれに限定されるものではなく、例えば固定配置されるパット状の部材であっても構わない。しかも、この支持体及び加圧体の数は、支持体にあっては通常複数であるが1つであってもよく、加圧体にあっては通常1つであるが複数であってもよい。
【0031】
【発明の実施の形態】
[実施の形態1]
図1は、本発明の実施の形態1に係る加熱加圧装置を示す概要図である。
【0032】
この実施の形態1に係る加熱加圧装置1は、図示しない作像手段により画像情報に応じて形成される未定着トナー像Tを担持する記録用紙Pが搬送され、その未定着トナー像Tを加熱及び加圧して記録用紙Pに定着するための、電磁誘導加熱方式を利用した定着装置10として構成したものである。そして、この定着装置10は、基本的に、周回移動して前記未定着トナー像Tを加熱する加熱用ベルト2としての加熱定着ベルト11と、加熱用ベルト2をその内周面側から支持する支持体3としてのバックアップ支持ロール12と、同じく支持体3としての駆動ロール13と、加熱用ベルト2をバックアップ支持ロール12に押し付けて前記未定着トナー像Tと記録用紙Pとを圧接させるニップ部Nを形成する加圧体4としての加圧ロール14と、加熱用ベルト2を前記ニップ部Nの上流側の位置で加熱する加熱手段5としての電磁誘導加熱装置15とを備えている。
【0033】
上記加熱定着ベルト11は、図2に示すように、基層11a上に導電層である電磁誘導発熱層11bを形成するとともに、この発熱層11b上に弾性層11cと表面離型層11dをこの順に積層形成した4層構造からなるものである。このうち基層11aは、厚さが10〜100μm程度の耐熱性の高いフィルム材料が好ましく、例えばポリエステル、ポリエチレンテレフタレート、ポリエーテルサルフォン、ポリエーテルケトン、ポリサルファン、ポリイミド、ポリアミド、ポリイミドアミド等の耐熱性の高い合成樹脂に、必要に応じてカーボンブラック等の導電性材料を分散させてフィルム成形したものである。また、電磁誘導発熱層11bは、鉄、ニッケル、コバルト、銅、銀、アルミニウム若しくはこれらの合金又はこれに相当する耐熱性有機導電体等を用いて金属蒸着法やめっき法等により厚さが1〜50μm程度になるように単層又は多層の薄膜状に形成したものである。ちなみに、この発熱層11bは厚さが2〜15μmの銅であるものが好ましく、例えば厚さが5μm、10μmの銅層を適用できる。これは、銅は固有抵抗値が小さく、薄くすることで電磁誘導発熱に適した抵抗値とすることができるためである。また、その厚さが2μm未満であると加熱定着ベルト11の製造が困難であり、反対に15μmを超えると有効なうず電流損が得られなくなるからである。また、弾性層11cは、柔軟性に富み耐熱性及び熱伝導率に優れた厚さが5〜300μmの層であることが好ましく、例えばフッ素ゴム、シリコーンゴム、フルオロシリコーンゴム等を用いて形成される。さらに、表面離型層11dは、離型性に優れた厚さが0.1〜100μm程度のフィルム又はコーティング層であることが好ましく、例えば、シリコーン系樹脂、フッ素系樹脂、シリコーンゴム、フッ素ゴム等を用いて形成される。
【0034】
この加熱定着ベルト11は、バックアップ支持ロール12と駆動ロール13に張架されて矢印A方向に周回移動(回転)するようになっている。バックアップ支持ロール12は、アルミニウム、鉄、セラミックス等からなるロール基材に、摩擦係数を調整する調整層などを形成した構造になっている。
【0035】
また、上記電磁誘導加熱装置15は、図3に示すように、加熱定着ベルト11の内周面側にそのベルト11と非接触状態で対向するように配置される、断面がE型形状のコア(例えば鉄芯)16aにコイル線材16bを巻きつけてなる励磁コイル16と、この励磁コイル16に所定の交流電流を印加する電源装置17とでその主要部が構成されたものである。励磁コイル16は、加熱定着ベルト11の幅方向にわたって配置されている。この加熱装置15は、定着すべき未定着トナー像Tが担持された記録用紙Pが搬送されるタイミングに合わせて作動するものであり、電源装置17から励磁コイル16に周波数が10k〜500kHzの交流電圧が印加される。そして、この加熱装置15は、励磁コイル16に交流電圧が印加されると、図3に示すように、その励磁コイル16から交流電圧の周波数に応じて生成消滅する変動磁界(磁力線)Hが生成され、その磁界Hが加熱定着ベルト11の電磁誘導発熱層11bの厚さ方向に沿うように発生させることによってその発熱層11b内に渦電流Icを発生させ、この渦電流Icによって発熱層42を発熱させる、いわゆる電磁誘導加熱するようになっている。
【0036】
さらに、上記加圧ロール14は、ロール基材とその表面に弾性層を形成した構造からなるものであり、次のような特定の位置関係を満たすように配置されている。すなわち、この加圧ロール14は、図4に示すように、ニップ部Nに達する加熱定着ベルト11がその加圧ロール14に接触してからバックアップ支持ロール12に接触する状態となる位置関係を満たすように配置されている。図中のK1は加圧ロール14の加熱定着ベルト11との接触点、K2は加圧ロール14の加熱定着ベルト11との接触点を示し、Fは加圧ロール14の加圧力を示す。
【0037】
この実施の形態1では、上記したような位置関係を満たす加圧ロール16の配置を次のように行っている。
【0038】
まず、図5aに示すように、加圧ロール14を設置せず、加熱定着ベルト11をバックアップ支持ロール12と駆動ロール13に張架しただけの状態にしたとき、そのベルト11が支持ロール12と自然に接触する接触点K0が得られる。この接触点K0は、支持ロール12及び駆動ロール13の径の大きさに関係なく、支持ロール12の接線(ベルトに相当)とそのロール表面の接点となる。図5a中の二点鎖線で示す加圧ロール14は、その接触点K0において加熱定着ベルト11を支持ロール12に押し付けるような状態で配置した場合を示しており、この場合には、加熱定着ベルト11は支持ロール12と加圧ロール14に同時に接触する状態になる。そして、上記位置関係を成立させるためには、このような状態に対して、図5bに示すように加圧ロール14を上記接触点K0(基準点)から加熱装置(15)のある側に少しずらした位置に配置する。同図中の符号mはこのときの接触点K0からずらした距離、Oは各ロールの中心点を示す。これにより、加圧ロール14と加熱定着ベルト11との接触点K1は、支持ロール12と加熱定着ベルト11との新たな接触点K2よりも加熱装置(15)側にずれた状態となる。同図中の符号δは、接触点K1と接触点K2のずれ量である。したがって、このように配置した場合には、加熱装置で加熱された後にニップNに達するときの加熱定着ベルト11は、先に加圧ロール14に接触点K1で接してから支持ロール12に接触点K2で接触するようになる。
【0039】
次に、この定着装置10の動作について説明する。
【0040】
はじめに、定着時期が到来すると、駆動ロール13の回転駆動力により加熱定着ベルト11が一定の速度で矢印A方向に回転し始める。そして、この定着装置定着対象である未定着トナー像Tを担持する記録用紙Pが、加熱定着ベルト11の外周面と加圧ロール14との間に形成されるニップ部Nに送り込まれるように所定の用紙搬送手段にて搬送されてくると、通常は、その搬送タイミングに合わせて電磁誘導加熱装置15が前述したように作動して加熱定着ベルト11(の電磁誘電発熱層11b)を電磁誘電加熱する。これにより、加熱定着ベルト11は、その外周面が発熱層11bからの熱伝導により所定の温度(定着温度)まで素早く加熱された状態となって前記ニップ部Nに達するようになる。このときの電磁誘導加熱は、加熱定着ベルト11がニップ部Nに達する直前までに少なくとも最高加熱温度に達しているように行われる。各図中の矢付一点鎖線は、記録用紙Pの搬送経路を示している。
【0041】
そして、記録用紙Pは、その未定着トナー像Tを有する面が加熱定着ベルト11と接するような姿勢でニップ部Nに送り込まれるが、この際、加熱された加熱定着ベルト11は、先に加圧ロール14に接触点K1で接してから支持ロール12に接触点K2で接触した状態で周回移動する。これにより、記録用紙Pに担持された未定着トナー像は、そのニップ部Nを通過するとき、はじめにニップ部N入り口にも相当する接触点K1で加熱定着用ベルト11の外周面と接して加熱され(厳密にはその接触点K1に至る上流側から加熱され始める)、しかる後、ニップ部Nの出口にも相当する接触点K2で加圧ロール12により加熱定着ベルト11の外周面に最も強く押し付けられて加圧される。特にニップ部Nに進入する際、加熱定着ベルト11は、支持ロール12と接触する前に未定着トナー像Tと接するようになるため、そのベルト11の熱が支持ロール12との接触により奪われてしまうことがなく、この結果、その未定着トナー像Tを熱損失がなく十分に加熱することができる。
【0042】
したがって、この定着装置10においては、記録用紙Pがニップ部Nを上記したように通過することにより、未定着トナー像Tが十分かつ的確に加熱及び加圧されて溶融圧着される結果、記録用紙Pに良好に定着される。そして、この定着に際しては、加熱定着ベルト11の電磁誘導加熱された加熱領域は、そのベルト自体の熱容量が小さいことと相俟って、ニップ部Nを通過し終わる頃にはその熱がトナー像や記録用紙P及び支持ロール12に奪われて冷却される。これにより、トナー像Tのトナーもニップ部Nの出口付近においてその軟化点温度以下の温度まで冷やされる。この結果、トナーの凝集力が増大するため、記録用紙Pがニップ部Nの通過後に加熱定着ベルト11から剥がれる際、トナーがベルト11側に転移付着するオフセットが発生しにくくなり、記録用紙Pは加熱定着ベルト11から良好に剥がれてニップ部Nから排出される。以上のようにして定着動作が完了する。
【0043】
なお、この定着装置10では、加熱定着ベルト11が電磁誘導加熱装置15の直下(加熱開始領域)に突入する前におけるベルト外周面の温度を温度センサ等により測定し、その測定温度の情報に基づいて電源17から励磁コイル16に印加する交流電圧の条件(例えば印加タイミング、印加時間、印加電圧の大きさ又は周波数など)を適宜制御するようにしている。これにより、電磁誘導加熱された加熱定着ベルト11の熱が支持ロール12に伝わって次第に蓄熱され、その支持ロール12の蓄熱により加熱定着ベルト11が上記加熱開始領域以外でも加熱されるようになってそのベルトの温度状態が一定しない場合であっても、上記交流電圧の条件を適宜変更制御することにより加熱定着ベルト11を常にほぼ一定した温度に加熱することが可能となり、ひいては一定の加熱温度下での安定した定着を行うことができる。
【0044】
[実施の形態2]
図7は、本発明の実施の形態2に係る加熱加圧装置を示すものであり、電磁誘導加熱方式の定着装置10として構成した場合の他の形態例を示すものである。すなわち、この定着装置10は、加熱定着ベルト11をその内周面から支持する支持体3として1つの回転支持ロール18を使用するとともに、この回転支持ロール18の周長より少し長めの周長からなる加熱定着ベルト11を使用し、その加熱定着ベルト11を回転支持ロール18の表面から一時的に離間させるような状態で支持し、その離間領域で加熱定着ベルト11を電磁誘導加熱するようにしたことを特徴とするものである。他の点については、実施の形態1に係る定着装置とほぼ同様の構成を採用している。
【0045】
加熱定着ベルト11は、矢印A方向に回転駆動する回転支持ロール18に対して加圧ロール14と補助ロール19とによって押し付けられており、加圧ロール14から補助ロール19までの間において支持ロール18に接触した状態となり、補助ロール19から加圧ロール14までの間において支持ロール18から離間した状態となるように支持されている。特にその離間領域では、定着ベルト11は湾曲した形状をなすような状態で通過移動する。この離間領域となる定着ベルト11の両端部は、例えば、図示しないガイド部材により湾曲した状態での通過移動が可能なように支持されている。そして、補助ロール19から加圧ロール14までの離間領域における加熱定着ベルト11の内周面側に電磁誘導加熱装置15の励磁コイル16を配置し、その定着ベルト11を電磁誘導加熱させるようになっている。図6中の符号30は、定着後の定着ベルト11を清掃するクリーニング装置(例えばクリーニングブレード)である。
【0046】
また、励磁コイル16については、図7に示すように、そのコア16aの少なくともベルトとの対向面が加熱定着ベルト11の離間領域における湾曲形状に相応して湾曲する形状に形成されている。また、加熱定着ベルト11は、実施の形態1における加熱定着ベルトと同様の4層構造であってもよいが、その弾性層11cを除いた基層11a、電磁誘導発熱層11b及び表面離型層11dの3層構造としてもよい(図7参照)。さらに、回転支持ロール18は加熱定着ベルト11のほぼ全体(前記離間部分を除く)を確実に支持できるように構成されたものであり、補助ロール19は熱容量が可能な限り小さくなるよう構成されたものである。
【0047】
そして、この定着装置10においては、図8に示すように、加圧ロール14が実施の形態1と同様に、加熱定着ベルト11を回転支持ロール18に押し付けてそのベルト外周面との間でニップ部Nを形成するとともに、そのニップ部Nに達する加熱定着ベルト11がその加圧ロール14に接触してから回転支持ロール18に接触する状態となる位置関係を満たすように配置されている。図8中の符号K0は加圧ロール14による加圧がないときの定着ベルト11の回転支持ロール18との最初の無加圧時接触点、K1は加圧ロール14の加熱定着ベルト11との最初の接触点、K2は回転支持ロール18の加熱定着ベルト11との最初の接触点を示す。
【0048】
このような定着装置10による定着動作は、基本的に、実施の形態1の定着装置とほぼ同様に行われる。
【0049】
特に、この定着装置10にあっては、加熱定着ベルト11は回転支持ロール18が矢印A方向に回転駆動することにより、その動力を加圧ロール14と補助ロール19の間となる接触領域で受けて同じ矢印A方向に回転するとともに、補助ロール19から加圧ロール14にかけては回転支持ロール19から離間した状態で回転する。そして、この加熱定着ベルト11は、未定着トナー像Tを担持する記録用紙Pの定着装置10への搬送タイミングに合わせて電磁誘導加熱装置15が作動することにより、その離間領域において(電磁誘導発熱層11aが)電磁誘導加熱されるが、この際、加熱定着ベルト11は回転支持ロール18から離間しているため、その支持ロール11に熱を奪われることなく所定の温度まで素早く加熱される。次いで、この電磁誘導加熱された加熱定着ベルト11は、ニップ部Nを通過する際、実施の形態1における定着ベルトの場合と同様に、先に加圧ロール14に接触点K1で接してから回転支持ロール18に接触点K2で接触した状態で周回移動する。これにより、ニップ部Nを通過する記録用紙P上の未定着像Tは、特にそのニップ部Nに進入する際、実施の形態1の場合と同様に、加熱定着ベルト11によって熱損失もなく十分に加熱されるようになる。
【0050】
[実施の形態3]
図9は、本発明の実施の形態3に係る加熱加圧装置を示すものであり、その加熱加圧装置を画像形成装置に適用した状態を示している。
【0051】
この実施の形態3に係る加熱加圧装置1は、画像形成装置の後述する作像ユニット31側で形成される未定着トナー像Tを加熱及び加圧して記録用紙Pに転写と同時に定着するための、電磁誘導加熱方式を利用した転写同時定着装置20として構成したものである。この転写同時定着装置20は、基本的に、周回移動して前記未定着トナー像Tを担持して加熱する加熱用ベルト2としての加熱中間転写ベルト21と、この加熱中間転写ベルト21をその内周面側から支持する支持体3としてのバックアップ支持ロール22と、同じく支持体3としての駆動ロール23及びテンションロール24と、加熱中間転写ベルト21をバックアップ支持ロール22に押し付けて前記未定着トナー像Tと記録用紙Pとを圧接させるニップ部Nを形成する加圧体4としての加圧ロール25と、加熱中間転写ベルト21を前記ニップ部Nの上流側の位置で加熱する加熱手段5としての電磁誘導加熱装置26とを備えている。
【0052】
上記加熱中間転写ベルト21は、図10に示すように、基層21a上に導電層である電磁誘導発熱層21bを形成するとともに、この発熱層21b上に表面離型層11cをこの順に積層形成した3層構造からなるものである。この基層21a、電磁誘導発熱層21b及び表面離型層21cは、実施の形態1における加熱定着ベルト11を構成する基層11a、電磁誘導発熱層11b及び表面離型層11dとほぼ同じ構成からなるものであり、表面離型層21cが弾性を有するように構成されて転写同時加熱時のトナー像と用紙Pとの接触時における追従性が良好となるように工夫されている点で異なるのみである。この加熱中間転写ベルト21は、バックアップ支持ロール22と駆動ロール23に主に掛け回され、しかもテンションロール24により所定の張力が付与された状態で矢印A方向に周回移動(回転)するようになっている。
【0053】
また、上記バックアップ支持ロール22は、実施の形態1におけるバックアップ支持ロール12とほぼ同じ構成からなるものであり、そのロール径が少し大きい寸法に設定されている点で異なるのみである。上記加圧ロール25は、実施の形態1における加圧ロール14とほぼ同じ構成からなるものである。
【0054】
さらに、電磁誘導加熱装置26は、実施の形態1における電磁誘導加熱装置15とほぼ同じ構成からなるものであり、図10に示すように加熱中間転写ベルト21の電磁誘電発熱層21bを貫く変動磁界Hを発生する励磁コイル27(前記励磁コイル16に相当)とこのコイル27に交流電圧を印加する電源28(前記電源17に相当)とでその主要部が構成されている。励磁コイル27については実施の形態1のコイル16と同様にコア27aとコイル線材27bとで構成されている。ちなみに、この実施形態における電源28から励磁コイル27へは、周波数が15kHz〜100kHzの交流を印加している。この周波数が15kHzよりも小さい場合には十分な電磁誘導作用を発生させることができず、反対に100kHzを超えた場合には放射ノイズが大きくなってしまう。
【0055】
一方、画像形成装置は、上記転写同時加熱装置20における加熱中間転写ベルト21の駆動ロール23から電磁誘導加熱装置26(励磁コイル27)までの間となる領域に対し、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各色成分のトナー像(未定着像)を個別に形成する4つの作像ユニット31Y,31M、31C,31Kを並列状態に配設したものである。
【0056】
各作像ユニット31(Y,M,C,K)は、そのいずれもほぼ同様の構成からなるものであり、矢印B方向に回転して表面に静電潜像が形成される感光ドラム32と、この感光ドラム32の表面をほぼ一様に帯電する帯電装置33と、この帯電後の感光ドラム32の表面に各色信号に応じた光像(レーザー光など)(図中の矢付点線)を照射して静電潜像を形成する像露光装置34と、感光ドラム32上の静電潜像をその潜像と対応する色のトナーにより現像してトナー像を形成する現像装置35とを備えている。図中の符号36は、中間転写ベルト40を挟んで各作像ユニット31の感光ドラム32と対向するように配置され、感光ドラム32と中間転写ベルト40との間にニップ域を形成して感光ドラム32上の各色のトナー像を中間転写ベルト40側に一次的に転写させる一次転写ロールである。また、符号37は、加熱中間転写ベルト21の両端部に露出するように形成した電磁誘導発熱層21bに接触するように配設され、一次転写用のバイアス電圧を印加するためのバイアス印加部材(ロール、ブラシなど)ある。記録用紙Pは、図示しない給紙機構により加圧ロール48と中間転写ベルト40の間を通過するように搬送される。図中の一点鎖線は記録用紙の搬送経路を示す。
【0057】
そして、この転写同時定着装置30では、加熱中間転写ベルト21が、図10に示すように磁誘導加熱装置26による電磁誘導加熱時にそのベルト21の励磁コイル27とは反対側の空間に磁束Hが洩れ出る特性を有するものであるため、加熱中間転写ベルト21を挟んで励磁コイル27と対向する側の位置に強磁性体からなる磁束収集体40を配設している。この磁束収集体40を構成する強磁性体は、ソフトフェライトからなる厚さが5mm程度の板状のものである。また、磁束収集体40は、その加熱中間転写ベルト21の移動方向Aに沿う幅Wが励磁コイル27の加熱用ベルトの移動方向Aに沿う幅Lとほぼ同じ寸法に設定されており、しかも、ベルト21の幅方向に対してもほぼ同じ寸法に設定されている。さらに、この磁束収集体40は、加熱中間転写ベルト21と1mm程度の間隔Dをあけた非接触状態に配設されている。
【0058】
加熱中間転写ベルト21から洩れ出る磁束については、次のような測定装置及び測定方法にて測定した。すなわち、磁束密度を計測する測定器(F.W.BELL社製:Gauss/Teslameter,Model9950)を用い、図12に示すように、その検出素子であるプローブ45を非検出対象物である加熱中間転写ベルト21の表面から1mm以内の範囲内に近づけることにより測定する。ベルト21は静止固定させた状態とする。このときの測定は、そのベルト21の厚さ方向の磁束密度を測定する場合(図中の45Aで示す状態)とベルト21の表面と並行する方向の磁束密度を測定する場合(図中の45Bで示す状態)との2種にわけて行い、それぞれの場合について10地点ほど測定し、そのときの最大値、最小値及び平均値を求めた。そして、このときの2種の測定値が1、5G以上であるときを、磁束収集体40の設置が必要な磁束の洩れがあるベルト21とした。このときの判断閾値を1.5Gとしたのは、その測定時において地磁気や周囲に存在する磁場や電磁波の影響から0.5G程度の磁束が測定環境に存在していることと、ベルト21を貫いて洩れた磁束以外のまわりこみ磁束が測定されることなどの測定誤差を排除する観点から定めたものである。
【0059】
また、この転写同時定着装置20では、加圧ロール25を実施の形態1における加圧ロール14の場合と同様に、図11に示すように、ニップ部Nに達する加熱中間転写ベルト21がその加圧ロール25に接触してからバックアップ支持ロ−ル22に接触する状態となる位置関係を満たすように配置されている。図11中の符号K0は加圧ロール25による加圧がないときの中間転写ベルト21の支持ロール22との最初の無加圧時接触点、K1は加圧ロール25の中間転写ベルト21との最初の接触点、K2は支持ロール22の中間転写ベルト21との最初の接触点を示す。
【0060】
次に、この転写同時定着装置20の動作について説明する。
【0061】
はじめに、作像ユニット31においてトナー像Tの形成動作が行われるとともにそのトナー像Tの加熱中間転写ベルト21への転写が行われる。すなわち、原稿読取装置又は外部機器から入力される画像情報が前記4色の色成分の像に分解され、各作像ユニット31(Y〜K)において帯電装置33による帯電、像露光装置34による像露光(潜像形成)及び現像装置35による現像が実行されることにより、その各色成分に相応する色のトナー像が回転する各感光ドラム32上でそれぞれ形成される。次いで、この各作像ユニット31(Y〜K)で各感光ドラム32上に形成された各トナー像は、矢印A向に周回移動する加熱中間転写ベルト21(表面離型層21C)上に、一次転写ロール36による転写作用(転写電界など)をうけて重ね合わせられるように一次転写される。
【0062】
次いで、この4つの作像ユニット31から加熱中間転写ベルト21に多重転写されたトナー像Tは、転写同時定着装置20により記録用紙Pに転写されると同時に定着される。
【0063】
すなわち、そのトナー像Tが加熱中間転写ベルト21の周回移動により電磁誘導加熱装置26の励磁コイル27と対向する加熱領域を通過する際、そのタイミングに合わせて電磁誘導加熱装置26が作動することにより加熱中間転写ベルト21の発熱層21bが電磁誘導加熱される。その電磁誘導加熱の原理は実施の形態1の場合と同様である。これにより、発熱層21bの熱が表面離型層21c側に伝わるため加熱中間転写ベルト21上のトナー像Tが加熱され始める。
【0064】
続いて、この加熱され始めた中間転写ベルト21上のトナー像Tが、加圧ロール25との間で形成されるニップ部(二次転写部に相当する)に達するタイミングに合わせて、記録用紙Pもニップ部Nに送り込まれる。これにより、そのトナー像Tは加熱及び加圧されて記録用紙P側に転写されると同時に定着される。その後、トナー像が転写された記録用紙Pは、加熱中間転写ベルト21から剥がれてニップ部Nから排出される。以上の工程により、記録用紙Pへのカラー画像の形成が行われる
【0065】
そして、この転写同時加熱装置20では、電磁誘導加熱装置26により加熱中間転写ベルト21が電磁誘導加熱される際、その励磁コイル27から生成される変動磁界や渦電流による反作用磁界で決定される磁束が中間転写ベルト21から励磁コイル27のある側とは反対側の空間内に洩れ出るが、図10に示すように、その洩れる側に強磁性体からなる磁束収集体40が設けられているため、その洩れた磁束は磁束収集体40を超えて周囲に広がることが抑えられて遮蔽される。また、この際、磁束収集体40そのものは、その磁束によって電磁誘導加熱されることはない。
【0066】
図13aは、このときの加熱中間転写ベルト21から洩れ出る磁束密度について前記した測定装置により測定した結果を示す。この測定は、磁束収集体40(図中では「強磁性体」と表示する)がない場合とある場合に分けて行い、プルーブをベルト21表面(又は磁束収集体40表面)から10mm離した状態で近づけ、10地点について調べた平均値として求めた。この図表に示す結果から、磁束収集体40を設けることにより洩れ出る磁束が確実に減少することがわかる。この結果、その磁束の洩れる空間内に導体が存在しても、電磁誘導作用がおよぶおそれがない。また、この磁束収集体40の配設により、ベルト21が励磁コイル27から生成される変動磁界によって効率よく電磁誘導加熱されることが推認される。しかも、この効率のよい電磁誘導加熱は、磁束収集体40の幅Wを励磁コイル27の幅Lとほぼ同じ寸法にしていることにより、励磁コイル27から生成される変動磁界の磁束がそのコイル27の幅Lに相応した幅で磁束収集体40に集められることによっても実現されているものと認められる。
【0067】
また、この転写同時加熱装置20では、磁束収集体40を加熱中間転写ベルト21との間隔Dが1mm程度という接近させた状態で配設しているため、より効率のよい的確な電磁誘導加熱が可能となる。図13bは、このときの磁束収集体40を加熱中間転写ベルト21から1〜10mmの範囲内で選定した5つの間隔Dでもって設置したときの力率について測定した結果を示す。その力率は、皮相電力に対する有効電力の比を測定して得たものである。この図表に示す結果から、磁束収集体40を間隔Dが1〜5mmの範囲内となるように設置することにより0.5を超える高い力率が得られることがわかる。
【0068】
さらに、この転写同時加熱装置20では、加圧ロール25の配置により、電磁誘導加熱された後の加熱中間転写ベルト21は、図11に示すようにニップ部Nを通過する際、実施の形態1における定着ベルト11の場合と同様に、先に加圧ロール25に接触点K1で接してから支持ロール22に接触点K2で接触した状態で周回移動する。これにより、ニップ部Nに至るまでのベルト21上の未定着トナー像Tは、加熱中間転写ベルト21によって熱損失もなく十分に加熱されるようになる。このため、未定着トナー像Tは先の磁束収集体40による効率のよい電磁誘導加熱の実現と合わせて、ニップ部Nに至る直前及び至る時点で十分に加熱されるため、記録用紙Pに確実に定着されるようになる。
【0069】
[実施の形態4]
図14は、本発明の実施の形態4に係る加熱加圧装置を示すものであり、電磁誘導加熱方式の転写同時定着装置20として構成した場合の他の形態例を示すものである。
【0070】
すなわち、この転写同時定着装置20は、実施の形態2の定着装置と似た構成を採用するものであって、加熱中間転写ベルト21をその内周面から支持する支持体3として1つの回転支持ロール29を使用するとともに、この回転支持ロール29の周長より少し長めの周長からなる加熱中間転写ベルト21を使用し、その中間転写ベルト21を回転支持ロール29の表面から一時的に離間させるような状態で支持し、その離間領域で加熱中間転写ベルト21を電磁誘導加熱するようにしたことを特徴とするものである。これら以外の他の点については、実施の形態3に係る転写同時定着装置とほぼ同様の構成を採用している。また、この転写同時定着装置20を適用した画像形成装置に関しては、その作像ユニット31として1つの感光ドラム32で前記4色のトナー像Tを形成し得るものを使用し、また、その現像装置35として4色の現像剤をそれぞれ収容する4つの現像器35(Y,M,C,K)を1つの回転支持体35aの周囲に配した回転式現像装置を用いた以外は実施の形態3における作像ユニット31とほぼ同様の構成を採用している。なお、感光ドラム32と加熱中間転写ベルト21の間におけるトナー像の一次転写は、その中間転写ベルト21の両端部に露出するように形成した電磁誘導発熱層21bに接触して一次転写用のバイアス電圧を印加する図示しないバイアス印加部材(図9の符号37参考)により、上記両者の間に一次転写電界を形成して行うように構成している。
【0071】
加熱中間転写ベルト21は、矢印C方向に回転駆動する回転支持ロール29に対して加圧ロール25と作像ユニット31の感光ドラム32とによって押し付けられており、加圧ロール25から感光ドラム32までの間において支持ロール29に接触した状態となり、感光ドラム32から加圧ロール25までの間において支持ロール29から離間した状態となるように支持されている。特にその離間領域では、中間転写ベルト21は湾曲した形状をなすような状態で通過移動する。そして、感光ドラム32から加圧ロール25までの離間領域における加熱中間転写ベルト21の内周面側に電磁誘導加熱装置26の励磁コイル27を配置し、その中間転写ベルト21を電磁誘導加熱させるようになっている。
【0072】
また、励磁コイル27については、図15に示すように、そのコア27aの少なくともベルトとの対向面が加熱中間転写ベルト21の離間領域における湾曲形状に相応して湾曲する形状に形成されている。また、加熱中間転写ベルト21は、実施の形態3における加熱中間転写ベルトと同様の3層構造からなるものである。さらに、回転支持ロール29は熱容量が可及的に小さくなるように構成されたものである。
【0073】
そして、この転写同時定着装置20においては、図14や図15に示すように、実施の形態3の場合と同様に、加熱中間転写ベルト21を挟んで励磁コイル27と対向する側の位置に磁束収集体40を配設している。この磁束収集体40は、中間転写ベルト21の湾曲形状に相応して少なくともベルト対向面が湾曲面となるように形成されている以外は、実施の形態3における磁束収集体と同じ構成からなるものである。
【0074】
また、この転写同時定着装置20においては、図16に示すように、加圧ロール25を実施の形態3における加圧ロールと同様に、ニップ部Nに達する加熱中間転写ベルト21がその加圧ロール25に接触してから回転支持ロール29に接触する状態となる位置関係を満たすように配置されている。さらに、この加圧ロール25は、作像ユニット31で複数の色のトナー像Tを形成する場合、その各トナー像が加熱中間転写ベルト21に重ね合わせられるように転写される間はベルト21から離間した位置に退避する一方、そのトナー像Tが記録用紙Pに転写されるときにだけベルト21に当接する位置に移動するよう変位可能に設けられている。図16中の符号K0は加圧ロール25による加圧がないときの中間転写ベルト21の支持ロール29との最初の無加圧時接触点、K1は加圧ロール25の中間転写ベルト21との最初の接触点、K2は支持ロール29の中間転写ベルト21との最初の接触点を示す。
【0075】
このような転写同時定着装置20による転写同時定着動作は、基本的に、実施の形態3の転写同時定着装置とほぼ同様に行われる。また、作像ユニット31による画像形成動作については、実施の形態3における作像ユニット31の動作と比べた場合、感光ドラム32が矢印E方向に一回転するごとに静電潜像の色に該当する現像器35(Y,M,C,K)がドラム32と対向する位置に回転移動して現像を行って1色のトナー像Tが順次形成されるとともに、加熱中間転写ベルト21に順次重ね合わされるように転写される点で異なるのみで、それ以外については同様に行われる。なお、上記画像形成動作中において加圧ロール25は、すべてのトナー像Tが感光ドラム32から中間転写ベルト21に転写されるまでの間はそのベルト21から離れた退避位置に移動しており、最後のトナー像が転写された後にベルト21に当接する位置に移動する。
【0076】
特に、この転写同時定着装置20にあっては、実施の形態2における加熱定着ベルト11と同様に、加熱中間転写ベルト21は回転支持ロール29が矢印C方向に感光ドラム32と同期して回転駆動することにより、その動力を加圧ロール25と感光ドラム32の間となる接触領域で受けて同じ矢印C方向に回転するとともに、感光ドラム32から加圧ロール25にかけては回転支持ロール29から離間した状態で回転する。そして、この加熱中間転写ベルト21は、すべての未定着トナー像Tが転写されてニップ部Nに達する前のタイミングに合わせて電磁誘導加熱装置15が作動することにより、その離間領域において(電磁誘導発熱層21aが)電磁誘導加熱されるが、この際、中間転写ベルト21は回転支持ロール29から離間しているため、その支持ロール29に熱を奪われることなく所定の温度まで素早く加熱される。また、トナー像Tのニップ部Nへの進入タイミングに合わせて記録用紙Pもそのニップ部Nへ送り込まれる。これにより、ニップ部Nにおいて中間転写ベルト21上のトナー像Tが記録用紙Pに転写されると同時に定着される。
【0077】
また、この転写同時定着装置20においても、実施の形態3の場合と同様に、電磁誘導加熱装置26により加熱中間転写ベルト21を電磁誘導加熱する際、その中間転写ベルト21から磁束が洩れるが、図15に示すように、その洩れる側に磁束収集体40が設けられているため、その洩れた磁束は磁束収集体40を超えて周囲に広がることが抑えられる。また、この強磁性体40の幅Wについても、実施の形態3の場合と同様に、励磁コイル27の幅Lとほぼ同じ寸法にしていることにより、励磁コイル27から生成される変動磁界の磁束がそのコイル27の幅Lに相応した幅で強磁性体40に集められる。さらに、磁束収集体40を加熱中間転写ベルト21との間隔Dが1mm程度という接近させた状態で配設しているため、より効率のよい的確な電磁誘導加熱が可能となる。
【0078】
さらに、この転写同時加熱装置20においても、やはり実施の形態3の場合と同様に、電磁誘導加熱された加熱中間転写ベルト21がニップ部Nを通過する際、先に加圧ロール25に接触点K1で接してから回転支持ロール29に接触点K2で接触した状態で周回移動する。これにより、ニップ部Nを通過するベルト21上の未定着像Tは、特にそのニップ部Nに進入する際、加熱中間転写ベルト21によって熱損失もなく十分に加熱されるようになる。
【0079】
[実施の形態5]
図17は、実施の形態3に係る転写同時定着装置20において、加熱中間転写ベルト21の周回移動(回転)速度が記録用紙Pの厚さや種類等に応じて通常速度(S1)とその通常速度よりも少し速い高速度(S2)に切り替えられる場合に、磁束収集体40を変位調整可能に設けた形態例を示すものである。なお、実施の形態4に係る転写同時定着装置における磁束収集体についても、この実施形態の場合と同様に構成することができるのは言うまでもない。
【0080】
この実施の形態では、加熱中間転写ベルト21が通常速度S1であるときには、図17aに示すように磁束収集体40をそのベルト21を挟んで励磁コイル27と真正面に向き合う位置(基準位置Q)におき、一方、加熱中間転写ベルト20が高速度S2にあるときには、図17bに示すように磁束収集体40を上記基準位置Qからベルト21の周回移動方向Aとは反対側の方向(ニップ部Nから離れる方向)にずらした位置に変位させた。図中の符号Jは基準位置Qからの変位量である。この磁束収集体40の変位は、例えばベルト21の速度変動の制御信号により同期して作動するソレノイド等の変位機構により行うことができる。
【0081】
図18は、磁束収集体40を加熱中間転写ベルト21の速度の変更(通常速度S1と高速度S2の間での変更)にかかわらず、磁束収集体40を上記基準位置Q(図17a)にしている場合に、電磁誘導加熱をしてからの中間転写ベルト21の表面温度の経時的変化を測定した結果を示すものである。ちなみに、このときの基準位置Qからニップ部Nの入り口(加圧ロール25との接触点)までの離間距離は約10mmである。この図18に示す結果から、高速度S2になるとベルトの表面温度の最高温度に達するときの位置が通常速度S1に対して異なることがわかる。これに対し、中間転写ベルト21の移動速度が高速度S2に変更されるのに合わせて強磁性体40を図17bに示すように変位させた場合には、そのベルト21の表面温度の経時的変化は、通常速度S1の場合とほぼ同じ軌跡を描く変化となった。このような効果が得られるのは、励磁コイル27から生成されてベルト21の厚さ方向に沿う変動磁界の磁束が磁束収集体40のずれた方向に合わせて集められことにより、発熱層内のうず電流が主に流れる位置が変化したことに起因するものと考えられる。
【0082】
この結果、中間転写ベルト21の周回移動速度が変更された際に発生するベルト21の最高温度到達領域の位置的ずれを防止することができ、そのときの加熱条件についてもほぼ一定に保つことが可能になるため、未定着トナー像Tを常にほぼ一定した温度条件下で加熱することができ、ひいては良好な転写同時定着を安定して行うことができるようになる。ちなみに、加熱中間転写ベルト21の速度が通常速度S1よりも遅くなる場合には、強磁性体40をニップ部Nに近づける方向に変位させればよい。
【0083】
[実施の形態6]
図19は、本発明の実施の形態6に係る加熱加圧装置を示すものであり、電磁誘導加熱方式の定着装置10として構成した場合の他の実施形態例を示すものである。
【0084】
すなわち、この定着装置10は、加熱定着ベルト11をニップ部Nの位置で電磁誘導加熱するように電磁誘導加熱装置15を設置するとともに、バックアップ支持ロール12及び加圧ロール14として磁束透過性があり電磁誘導加熱しない(又はしにくい)材料により形成した中空構造の円筒ロールを使用し、また、加圧ロール14の中空内に強磁性体からなる磁束収集体40を配設したことを特徴とするものである。他の点については、実施の形態1に係る定着装置とほぼ同様の構成を採用している。なお、加熱定着ベルト11は、実施の形態3における加熱中間転写ベルト21等と同様に、電磁誘導加熱装置15による電磁誘導加熱時にそのベルト15の励磁コイル16とは反対側の空間に磁束Hが洩れ出る特性を有するものである。また、加圧ロール14は実施の形態1のような特定の位置関係を満たすようには配置していない点で相違している。
【0085】
電磁誘導加熱装置15については、その励磁コイル17が、図20に示すように、そのコア17aの少なくともバックアップ支持ロール12の内壁面との対向面をその内壁面の曲面形状に相応して湾曲する形状に形成してある以外は実施の形態1における電磁誘導加熱装置と同じ構成になっている。また、バックアップ支持ロール12及び加圧ロール14については、その全体をセラミックスにて形成している。これにより、図20に例示するように励磁コイル17から生成される磁束Hがセラミックス製の支持ロール12を通過して加熱定着ベルト11の発熱層11bに達し、もってベルト14が電磁誘導加熱されるようになっている。そして、磁束収集体40については、加圧ロール14の内壁面の曲面形状に相応して湾曲した形態となるように構成している以外は実施の形態3における磁束収集体と同じ構成からなるものである。
【0086】
このような定着装置10による定着動作は、加圧ロール14が加熱定着ベルト11をバックアップ支持ロール12に押し付けているニップ部Nの位置において、その加熱定着ベルト11が電磁誘導加熱装置15の励磁コイル17から生成される磁束により電磁誘導加熱される点で相違する他は、基本的に、実施の形態1の定着装置とほぼ同様に行われる。
【0087】
特に、この定着装置10にあっては、電磁誘導加熱装置15により加熱定着ベルト11が電磁誘導加熱される際、その励磁コイル17から生成される変動磁界や渦電流による反作用磁界で決定される磁束が加熱定着ベルト11から励磁コイル17のある側とは反対側の加圧ロール14及びその中空内部などに主に洩れ出るが、図20に示すように、その洩れる側に強磁性体からなる磁束収集体40が設けられているため、その洩れた磁束は磁束収集体40を超えて周囲に広がることが抑えられて遮蔽される。この際、加熱定着ベルト11から洩れ出た磁束が加圧ロール14を鎖交するが、この加圧ロール14そのものは、セラミックス製であるためベルト11から洩れ出た磁束によって電磁誘導加熱されることは殆どない。
【0088】
図21は、この実施の形態6に係る定着装置10の他の実施形態(変形例)を示すものである。
【0089】
この図21aに示す定着装置10は、前記した定着装置(図19)において前記磁束収集部材40を加圧ロール14の中空内部に別個独立したものとして配設したことに代えて、加圧ロール14そのもののを磁束収集部材40により構成したものである。すなわち、この加圧ロール14は、例えばセラミックスからなるロール基材と、そのロール基材の表面に鉄、ニッケル等の強磁性材料からなる磁束収集部材40を薄い層状に形成した構造からなるものである。そして、この定着装置10にあっては、特に電磁誘導加熱装置15により加熱定着ベルト11がニップ部Nの位置で電磁誘導加熱される際、その加熱定着ベルト11から加圧ロール14側に洩れ出る磁束が、その加圧ロール14の一部を構成する磁束収集部材40によって収集されて遮蔽される。ちなみに、この定着装置10においては、加圧ロール14における磁束収集部材40の層厚を厚くすると(例えば20〜40μm以上)、その磁束収集部材40が電磁誘導加熱しやすい抵抗値を有するものにすることができるため、この磁束収集部材40を定着時において電磁誘導加熱装置15により積極的に電磁誘導加熱させるように構成し、その熱を定着加熱用の熱として利用するようにしてもよい。
【0090】
一方、図21bに示す定着装置10は、電磁誘導加熱装置15の励磁コイル16をセラミックス製の加圧ロール14の中空内部に配設し、バックアップ支持ロール12を磁束収集部材40により構成した以外は前記した定着装置(図19)と同じ構成のものである。バックアップ支持ロール12は、前記加圧ロ0ル14の場合とほぼ同様に、例えばセラミックスからなるロール基材と、そのロール基材の表面に鉄、ニッケル等の強磁性材料からなる磁束収集部材40を層状に形成した構造からなるものである。そして、この定着装置10にあっては、特に、加熱定着ベルト11が加圧ロール14内に配設された電磁誘導加熱装置15の励磁コイル17から生成される変動磁界による磁束によりニップ部Nの位置で電磁誘導加熱され、また、この電磁誘導加熱時に加熱定着ベルト11からバックアップ支持ロール12側に洩れ出る磁束が、その支持ロール12の一部を構成する磁束収集部材40によって収集されて遮蔽される。また、この定着装置10においても、前記した定着装置10(図21a)の場合とほぼ同様に、バックアップ支持ロール12における磁束収集部材40の層厚を厚くすると、その磁束収集部材40が電磁誘導加熱しやすい抵抗値を有するものとすることができるため、この磁束収集部材40を定着時において電磁誘導加熱装置15により積極的に電磁誘導加熱させるように構成し、その熱を定着加熱用の熱として利用するようにしてもよい。
【0091】
なお、この図21に示す両定着装置10においては、必要により、加熱定着ベルト11を支持する支持ロール12を使用せず、実施の形態2に係る定着装置(図6、8)のように補助ロール19を設置し、その補助ロール19と加圧ロール14との間で加熱定着ベルト11をバックアップ支持ロール12表面から湾曲形状に保持するように離間させた状態で回転させるように構成してもよい。
【0092】
また、図19及び図21に示す各定着装置10においては、必要により、磁束収集部材40を配設することと、支持ロール12又は加圧ロール14の少なくとも一部を磁束収集部材40で構成することを併用してもよい。すなわち、図19に示す定着装置10にあっては、別個独立の磁束収集部材40に加えて、支持ロール12についてもその少なくとも一部を磁束収集部材40で構成する。また、図21aで示す定着装置10にあっては、磁束収集部材40にて一部が形成されている加圧ロール14の中空内部(ニップ部Nと対向する位置)に別個独立の磁束収集部材40を追加して配設する。さらに、図21bに示す定着装置10にあっては、磁束収集部材40にて一部が形成されている支持ロール12の中空内部(ニップ部Nと対向する位置)に別個独立の磁束収集部材40を追加して配設する。
【0093】
[実施の形態7]
図22は、本発明の実施の形態7に係る加熱加圧装置を示すものであり、電磁誘導加熱方式の転写同時定着装置20として構成した場合の他の形態例を示すものである。
【0094】
すなわち、この転写同時定着装置20は、加熱中間転写ベルト21をニップ部Nの位置で電磁誘導加熱するように電磁誘導加熱装置26を設置するとともに、バックアップ支持ロール22及び加圧ロール25として磁束透過性があり電磁誘導加熱しない(又はしにくい)材料により形成した中空構造の円筒ロールを使用し、また、加圧ロール25の中空内に強磁性体からなる磁束収集体40を配設したことを特徴とするものである。他の点については、実施の形態3に係る転写同時定着装置とほぼ同様の構成を採用している。なお、この装置20では、加圧ロール24は実施の形態3のような特定の位置関係を満たすように特に配置していない。
【0095】
電磁誘導加熱装置26については、その励磁コイル27が、図23に示すように、そのコア27aの少なくともバックアップ支持ロール22の内壁面との対向面をその内壁面の曲面形状に相応して湾曲する形状に形成してある以外は実施の形態3における電磁誘導加熱装置と同じ構成になっている。また、バックアップ支持ロール22及び加圧ロール25については、その全体をセラミックスにて形成している。これにより、図23に例示するように励磁コイル27から生成される磁束Hがセラミックス製の支持ロール22を通過して加熱中間転写ベルト21の発熱層21bに達し、もってベルト21が電磁誘導加熱されるようになっている。そして、磁束収集体40については、加圧ロール25の内壁面の曲面形状に相応して湾曲した形態となるように構成している以外は実施の形態3における磁束収集体と同じ構成からなるものである。
【0096】
このような転写同時定着装置20による転写同時定着動作は、加圧ロール25が加熱中間転写ベルト21をバックアップ支持ロール22に押し付けているニップ部Nの位置において、その加熱中間転写ベルト21が電磁誘導加熱装置26の励磁コイル27から生成される磁束により電磁誘導加熱される点で相違する他は、基本的に、実施の形態3の転写同時定着装置とほぼ同様に行われる。
【0097】
特に、この転写同時定着装置20にあっては、電磁誘導加熱装置26により加熱中間転写ベルト21がニップ部の位置で電磁誘導加熱される際、その励磁コイル27から生成される変動磁界や渦電流による反作用磁界で決定される磁束が加熱中間転写ベルト21から励磁コイル27のある側とは反対側の加圧ロール25及びその中空内部などに主に洩れ出るが、図23に示すように、その洩れる側に強磁性体からなる磁束収集体40が設けられているため、その洩れた磁束は磁束収集体40を超えて周囲に広がることが抑えられて遮蔽される。この際、加熱中間転写ベルト21から洩れ出た磁束が加圧ロール25を通過するが、この加圧ロール25そのものは、セラミックス製であるためベルト21から洩れ出た磁束によって電磁誘導加熱されることは殆どない。
【0098】
図24は、この実施の形態7に係る転写同時定着装置20の他の実施形態を示すものである。
【0099】
この図24aに示す転写同時定着装置20は、前記した転写同時定着装置(図22)において前記磁束収集部材40を加圧ロール25の中空内部に独立別体のものとして配設したことに代えて、加熱ロール25を磁束収集部材40により構成したものである。すなわち、加熱ロール25は、アルミニウムからなるロール基材と、そのロール基材の表面に鉄系材料からなる磁束収集部材40を層状に形成した構造からなるものである。そして、この転写同時定着装置20にあっては、特に電磁誘導加熱装置26により加熱中間転写ベルト21がニップ部Nの位置で電磁誘導加熱される際、その加熱中間転写ベルト21から加圧ロール25側に洩れ出る磁束が、その加圧ロール25の一部を構成する磁束収集部材40によって収集されて遮蔽される。この転写同時定着装置20においては、上記加熱ロール25を鉄系材料からなる磁束収集部材40のみでロール状に形成してもよい。この場合には、前記したように磁束収集部材40自体が層厚の厚いものとなり、電磁誘導加熱しやすい抵抗値を有するロールとすることができるため、この磁束収集部材40のみからなる加熱ロール25を定着時において電磁誘導加熱装置15により積極的に電磁誘導加熱させ、その熱を定着加熱用の熱として利用することが可能となる。
【0100】
一方、図24bに示す転写同時定着装置20は、電磁誘導加熱装置26の励磁コイル27をセラミックス製の加圧ロール25の中空内部に配設し、バックアップ支持ロール22を磁束収集部材40により構成した以外は前記した転写同時定着装置(図22)と同じ構成のものである。バックアップ支持ロール22は、セラミックス系材料からなるロール基材と、そのロール基材の表面に鉄、ニッケル系材料からなる磁束収集部材40を層状に形成した構造からなるものである。そして、この転写同時定着装置20にあっては、特に、加熱中間転写ベルト21が加圧ロール25内に配設された電磁誘導加熱装置26の励磁コイル27から生成される変動磁界による磁束によりニップ部Nの位置で電磁誘導加熱され、また、この電磁誘導加熱時に加熱中間転写ベルト21からバックアップ支持ロール22側に洩れ出る磁束が、その支持ロール22の一部を構成する磁束収集部材40によって収集されて遮蔽される。
【0101】
なお、この図24に示す転写同時定着装置20においては、必要により、加熱中間転写ベルト21を支持する支持ロール22を使用せず、実施の形態4に係る定着装置(図14、16参照)のように補助ロール29を設置し、その補助ロール29と加圧ロール25との間で加熱中間転写ベルト21をバックアップ支持ロール22の表面から湾曲形状に保持するように離間させた状態で回転させるように構成してもよい。
【0102】
また、図22及び図24に示す各転写同時定着装置20においては、必要により、磁束収集部材40を配設することと、支持ロール22又は加圧ロール25の少なくとも一部を磁束収集部材40で構成することを併用してもよい。すなわち、図22に示す転写同時定着装置20にあっては、別個独立の磁束収集部材40に加えて、支持ロール22についてもその少なくとも一部を磁束収集部材40で構成する。また、図24aで示す転写同時定着装置20にあっては、磁束収集部材40にて一部が形成されている加圧ロール25の中空内部(ニップ部Nと対向する位置)に別個独立の磁束収集部材40を追加して配設する。さらに、図24bに示す転写同時定着装置20にあっては、磁束収集部材40にて一部が形成されている支持ロール22の中空内部(ニップ部Nと対向する位置)に別個独立の磁束収集部材40を追加して配設する。
【0103】
[他の実施の形態]
実施の形態1、2では、加熱定着ベルト11の加熱手段5として電磁誘導加熱装置15を使用する場合について例示したが、面状の電熱ヒータ等のような自己発熱型の加熱装置を使用してもよい。また、実施の形態1、2において電磁誘導加熱する加熱定着ベルト11が変動磁界の磁束が洩れる特性を有する場合には、必要に応じて、そのベルト11を挟んで電磁誘導加熱装置15の励磁コイル16と対向する位置に実施の形態3,4に示すような強磁性体40を同様に配設すると有効である。
【0104】
また、実施の形態3、4では、加圧ロール25を実施の形態1、2における加圧ロール14と同様の特定の位置関係を満たすように配置した場合について例示したが、必要であれば、その加圧ロール25は支持ロール22,29と同時に加熱中間転写ベルト21に接触するような位置関係(実施の形態6、7参照)となるように配置しても構わない。
【0105】
そして、実施の形態1〜7においては、支持体3及び加圧体4としていずれもロール形状で回転するものを使用する場合について例示したが、その一方がパッド形状で固定配置されるものを使用することも可能である。
【0106】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明(第1発明)の加熱加圧装置によれば、加熱用ベルトをニップ部より上流側の位置で加熱する場合であっても、加圧体を特定の位置関係を満たすように配置することにより、その加熱用ベルトにより未定着像を少なくともニップ部において十分にかつ安定して加熱することができる。
【0107】
また、本発明(第2発明)の加熱加圧装置によれば、加熱用ベルトをニップ部より上流側の位置で電磁励磁加熱する場合であっても、磁束収集体を配設することにより、その加熱用ベルトからの磁束洩れによる不具合を発生させることなく、加熱用ベルトを効率よく安定して電磁誘導加熱することができる。
【0108】
さらに、本発明(第3発明)の加熱加圧装置によれば、加熱用ベルトをニップ部の位置で電磁励磁加熱する場合であっても、磁束収集体を配設することにより、その加熱用ベルトからの磁束洩れによる不具合を発生させることなく、加熱用ベルトを効率よく安定して電磁誘導加熱することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 実施の形態1に係る定着装置を示す概要図。
【図2】 加熱定着ベルトの層構造を示す概略断面図。
【図3】 加熱定着ベルトと電磁誘導加熱装置の関係とその動作状態とを示す概略説明図。
【図4】 加圧ロールの配置状態を示す要部説明図。
【図5】 加圧ロールの配置の仕方について示すもので、(a)はその加圧ロールがない無加圧時の状態を示す要部説明図、(b)はその加圧ロールを配置した場合の状態を示す要部説明図。
【図6】 実施の形態2に係る定着装置を示す概要図。
【図7】 加熱定着ベルトと電磁誘導加熱装置の関係とその動作状態とを示す概略説明図。
【図8】 加圧ロールの配置状態を示す要部説明図。
【図9】 実施の形態3に係る転写同時定着装置及びその装置を適用した画像形成装置を示す概要図。
【図10】 加熱中間転写ベルトと電磁誘導加熱装置と磁束収集体との関係とその動作状態とを示す概略説明図。
【図11】 加圧ロールの配置状態を示す要部説明図。
【図12】 加熱中間転写ベルトから洩れる磁束密度を測定する際の測定状態を示す説明図。
【図13】 (a)は磁束収集体である強磁性体の有無により加熱中間転写ベルトから洩れ出る各磁束密度を測定した結果を示す図表、(b)は強磁性体の有無と強磁性体の加熱中間転写ベルトとの間隔の違いによる力率を測定した結果を示す図表。
【図14】 実施の形態4に係る転写同時定着装置及びその装置を適用した画像形成装置を示す概要図。
【図15】 加熱中間転写ベルトと電磁誘導加熱装置と磁束収集体との関係とその動作状態とを示す概略説明図。
【図16】 加圧ロールの配置状態を示す要部説明図。
【図17】 実施の形態5に係る磁束収集体の構成を示す要部概要図。
【図18】 加熱中間転写ベルトの速度変更によるそのベルトの移動距離とそのベルト表面温度の変化との関係を測定した結果を示すグラフ図。
【図19】 実施の形態6に係る定着装置を示す概要図。
【図20】 加熱定着ベルトと電磁誘導加熱装置と磁束収集体の関係とその動作状態とを示す概略説明図。
【図21】 実施の形態6に係る定着装置の他の構成例を示す概要図。
【図22】 実施の形態7に係る転写同時定着装置を示す概要図。
【図23】 加熱中間転写ベルトと電磁誘導加熱装置と磁束収集体の関係とその動作状態とを示す概略説明図。
【図24】 実施の形態7に係る転写同時定着装置の他の構成例を示す概要図。
【図25】 従来の加熱加圧装置を示す概要図。
【図26】 従来の加熱用ベルトの回転速度を変更した場合におけるベルトの表面温度の推移の違いを示す概略説明図。
【符号の説明】
1…加熱加圧装置、10…定着装置、11…加熱定着ベルト(加熱用ベルト2)、11b,21b…電磁誘導発熱層(導電層)、12…バックアップ支持ロール(支持体3)、14…加圧ロール(加圧体4)、15,26…電磁誘導加熱装置(加熱手段5)、16,27…励磁コイル、17,28…電源、20…転写同時定着装置、21…加熱中間転写ベルト(加熱用ベルト2)、40…非電磁誘導加熱性の磁束収集体、T…トナー像(未定着像)、P…記録用紙(記録媒体)、N…ニップ部、A,C…ベルトの周回移動方向、H…変動磁界(磁束)、K1…加圧ロールとベルトの接触点、K2…支持ロールとベルトの接触点、W…磁束収集体の幅、D…磁束収集体のベルトとの間隔、J…磁束収集体の変位量。
Claims (4)
- 未定着像を加熱及び加圧して記録媒体に少なくとも定着させる装置であって、
少なくとも導電層を有し周回移動する加熱用ベルトと、
この加熱用ベルトをそのベルト内周面側から支持する支持体と、
この支持体に前記加熱用ベルトを押し付けてそのベルト外周面との間で前記未定着像と記録媒体とを圧接させるニップ部を形成する加圧体と、
前記加熱用ベルトと対向するように前記支持体又は加圧体側に配設される励磁コイルとこの励磁コイルに交流電圧を印加する交流電源からなり、そのベルトを前記ニップ部の位置で電磁誘導加熱する電磁誘導加熱手段とを備えた加熱加圧装置において、
前記加熱用ベルトを挟んで前記励磁コイルと対向する側の位置に非電磁誘導加熱性の磁束収集部材を配設するか、
又は、前記加熱用ベルトを挟んで前記励磁コイルと対向する側に位置する前記加圧体又は支持体を少なくとも前記磁束収集部材にて構成するか、
又は、前記加熱用ベルトを挟んで前記励磁コイルと対向する側の位置に非電磁誘導加熱性の磁束収集部材を配設するとともに、その加熱用ベルトを挟んで前記励磁コイルと対向する側に位置する前記加圧体又は支持体を少なくとも前記磁束収集部材にて構成することを特徴とする加熱加圧装置。 - 請求項1に記載の加熱加圧装置において、
前記加熱用ベルトの導電層は厚さが2〜15μmの銅である加熱加圧装置。 - 請求項1又は2に記載の加熱加圧装置において、
前記加熱用ベルトを加熱定着ベルトとし、かつ、前記記録媒体をその表面に前記未定着像を担持させた状態で前記ニップ部に送り込み、その未定着像をニップ部で記録媒体に定着させる定着装置として構成した加熱加圧装置。 - 請求項1〜3のいずれかに記載の加熱加圧装置において、
前記加熱用ベルトを加熱中間転写ベルトとし、かつ、前記未定着像をその加熱中間転写ベルトに担持させた状態で前記ニップ部に送り込み、その未定着像をニップ部で記録媒体に転写及び定着させる転写同時定着装置として構成した加熱加圧装置。
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