JP4330916B2 - 農作業機のボンネット構造 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、トラクタ等の農作業機のボンネット構造に関し、特にエンジンルームの上方を覆うボンネットを樹脂製とした農作業機のボンネット構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
トラクタ等の農作業機において、例えば、エンジンやラジエータ等が内装されるエンジンルームは、その前方をフロントグリルで覆われ、左右側方はサイドカバーで覆われていて、これらフロントグリルとサイドカバーは機体フレームに固定され、更にエンジンルームの上方は、後部支点を中心として上下に開閉自在な樹脂製のボンネットで覆われたものが公知である(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この従来技術によれば、ボンネットを樹脂製としたので、部品点数の削減を図ることができると共に、金属製に比較して軽量となって該ボンネットを上下開閉するときの操作性が向上する。
【0004】
【特許文献1】
特開2000−118446号公報(図1)
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、前述した特許文献1によると、樹脂製のボンネットの下端部が他部材に支持されないフリー状態(自由端)となっているため、該ボンネット下端部の寸法及び形状を正確に管理することが困難であった。このため、例えば樹脂製のボンネットを開放状態から閉止したとき、鉄製の左右側板との間に隙間が生じたり、ボンネットと左右側板との当接部に凹凸が生じて、外観の美感を損なうおそれがあった。
【0006】
本発明は、斯かる課題を解決するためになされたもので、その目的とするところは、ボンネットの剛性の向上を図りつつ、その寸法管理を行い易くした農作業機のボンネット構造を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するため、請求項1に係る発明は、機体前部に形成されたエンジンルーム(14)の上方を、開閉自在なボンネット(20)にて覆った農作業機(10)のボンネット構造において、
前記機体前部の機体フレームに固定され、前記エンジンルーム下方の前部及び左右側部を囲むように固定カバー(22)を設け、
前記ボンネット(20)は、前記エンジンルーム(14)の天面を覆う樹脂製の天板(24)と、該天板(24)の左右側部に固定された金属製の左右側板(26,26)と、で構成され、
前記ボンネットの天板(24)と前記固定カバー(22)の左右側部との間を前記左右側板(26,26)で塞いだことを特徴とする。
【0008】
請求項2に係る発明は、請求項1記載の農作業機のボンネット構造において、前記天板(24)の下端部と前記左右側板(26,26)の上端部とを重合して固定手段(46,48)により固定すると共に、該天板(24)と左右側板(26,26)の後部に規制プレート(28)を固定し、該規制プレート(28)の下端部を前記左右側板(26,26)の下端部に当接させて該左右側板(26,26)の機体内方への移動を規制した、ことを特徴とする。
【0009】
請求項3に係る発明は、請求項1又は2記載の農作業機のボンネット構造において、前記固定手段(46,48)による前記天板(24)と前記左右側板(26,26)との固定部位に、該固定部位の前記固定手段(46,48)を隠すようにマークシート(47)を貼着した、ことを特徴とする。
【0010】
[作用]
以上により、本発明によれば、ボンネット(20)を、樹脂製の天板(24)と該天板(24)の左右側部に連結される金属製の左右側板(26,26)とで構成して、ボンネット(20)の開閉方向に荷重が加わるようにしたので、ボンネット全体の剛性が高められると共に、構成部材の一部を樹脂製として軽量化が図られ、操作性が向上する。また、左右側板(26,26)を金属製としたことで、該左右側板(26,26)の寸法管理が行い易くなり、例えばボンネット(20)を閉じたときに機体側との当接部が合致して美感が向上する。
【0011】
なお、上述の括弧内の符号は、図面を対照するためのものであって、本発明を何ら限定するものではない。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、図面に基づき本発明の実施の形態を説明する。
【0013】
図1及び図2は、本発明を適用したトラクタの外観を示す図であり、該トラクタ10は、前輪11及び後輪12にて支持された走行機体13を有し、該走行機体13の前部には搭載エンジン(図示せず)を収容するエンジンルーム14が形成され、該エンジンルーム14の上方は上下に開閉自在なボンネット20で覆われている。また、該ボンネット20の後方の操縦部には、操向用の操向ハンドル15と、後輪12を覆う左右のフェンダフレーム16,16間の略々中央に座席シート17等が配設されている。更に、座席シート17の後部には、安全フレーム18が取付けられている。
【0014】
図3及び図4に示すように、前記ボンネット20は、エンジンルーム14の天面を覆う樹脂製の天板24と、該天板24の前部に連結される樹脂製のフロントグリル25と、前記天板24の左右側部に連結される鉄製の左右の側板26,26とを有している。このように、ボンネット20に、樹脂製の天板24及び樹脂製のフロントグリル25を用いたことで、該ボンネット20の軽量化が図られ、上下開閉時の操作性の向上が図られる。前記フロントグリル25の上部には、上下2段に格子状の外気取入口(外気取入部)331 ,332 が形成され、下部には前照灯54の前面を保護する透光部34が形成されている。
【0015】
本実施形態では、このフロントグリル25は透明な樹脂製で構成され、かつ前記透光部34を除いて所定の色の塗装が施されている。また、フロントグリル25の下方には、フロントカバー27が取付けられ、該フロントカバー27は、その左右両側部が側板26の前部に取付けられている。このフロントカバー27の左右方向の中央内側には、鉄製の補強ブラケット29が取付けられていて、該補強ブラケット29は、上下に延びる鉄板59(図5参照)を介して天板24に固定されている。更に、天板24と左右の側板26,26との組付状態における後部の内側周囲に亘って、規制プレート28が取り付けられている。
【0017】
ボンネット20は、図5に示すように、本実施形態では、その後部支点21を中心として上下開閉自在に構成されていて、該ボンネット20の下方への閉止時には、その前部下面に取付けられた前記補強ブラケット29が、機体前部に取付けられた固定カバー22の上面に当接される。この補強ブラケット29には、フロントグリル25の左右方向の略々中央内側を上下方向に延びる細長い鉄板59が固定されている。この鉄板59は、長手方向の中途部をボルト・ナット57にてフロントグリル25に固定され、また上部をボルト・ナット60にて天板24の前部に固定されている。
【0018】
本実施形態によれば、ボンネット20を構成している各部材(天板24、フロントグリル25、側板26等)を、該ボンネット20の開閉方向(上下方向)に荷重が加わるようにすることで、ボンネット20自体の剛性をアップすることができる。また、天板24に補強ブラケット29を連結し、該補強ブラケット29の部分でボンネット20の閉止時に機体に当接する機能を持たせたことで、組立時の隙間管理等を容易にすることができる。更に、天板24、側板26、フロントグリル25、及びフロントカバー27等の各部品を、固定手段により正確に位置決めできると共に、後述する規制プレート28の作用と相俟って、部品組立後の外観品質の向上を図ることができる。
【0019】
次に、ボンネット20を構成している各部材の詳細について説明する。
【0020】
前記天板24は、図6及び図7に示すように、合成樹脂であるポリジシクロパンタジエンを用いて成形したもので、機体前部がやや下方に傾斜した略々平坦な平面状の上面部と、若干下方に垂下する左右の側面部とを有し、該左右の側面部の下端部には、左右の側板26との重合部に多数のボルト孔44が形成されている。また、上面部の内側には、前述したフロントグリル25や、後述する規制プレート28を取り付けるための多数のボルト取付座(インサートネジ取付座)30が形成されている。なお、天板24の外表面側は、適宜クリーム色等の塗装又は金属メッキが施されている。
【0021】
フロントグリル25は、図8と図9(及び図5参照)に示すように、透明なポリカーボネイトを用いて一体成形されていて、前述したように、上部には格子状の外気取入口331 ,332 が形成され、下部には前照灯54及び側照灯55(図12参照)の前面を保護する透光部34が形成されている。すなわち、これら外気取入口33と透光部34とは、成形手段により一体的に成形されている。このフロントグリル25には、透過率の良い透明な材質(ポリカーボネイト)が用いられていて、透光部34を除く部分には、化粧用の塗装又は金属メッキが施されている。そして、透光部34は、後述する前照灯54及び側照灯55からの光を照射するレンズの役目をなす。
【0022】
また、前記透光部34の左右両側部には、後述する側照灯55からの光を機体前方及び側方に向けて広範囲に照明する光拡散部41が形成されている。この光拡散部41は、側照灯55からの光を機体前方及び側方に拡散可能に、例えば透光部34の内面に断面鋸歯状等に形成された光屈折部分からなる。これにより、側照灯55から出射された光は機体前方及び側方の広範囲にわたって照明することが可能になり、夜間作業時等において機体左右側の視野を広範囲に確保することができる。更に、フロントグリル25の内側には、多数のボルト取付座31や天板21との取付け用の孔が形成された舌片32、後述するリフレクタ部35との取付け用の孔53’が形成された舌片32’等が形成されている。本実施形態によれば、フロントグリル25の材質をポリカーボネイトとしたことで、合成樹脂であるにもかかわらず該フロントグリル25の強度アップが図られる。
【0023】
図10及び図11は、透光部34の内側に取付けられるリフレクタ部35で、このリフレクタ部35は、ポリプロピレンを成形して作られ、左右方向の中央側には隣接して開口部36,36が形成され、この開口部36に、前照灯54が光軸調節自在に取付けられている。また、リフレクタ部35における前記開口部36,36の左右側部には、凹状の湾曲部37,37が形成されている。そして、この湾曲部37の略々中央に側照灯55が取付けられている。このリフレクタ部35の表面には、光を反射するアルミ蒸着が施されている。また、リフレクタ部35の上下部には、該リフレクタ部35のフロントグリル25への取付用の立設片38,39とボルト取付孔40、及び取付け用の孔53”が形成された舌片32”等が形成されている。
【0024】
図12は、リフレクタ部35に前照灯54と側照灯55を取付けた状態の断平面図であり、機体左右方向の中央側に前照灯54,54が取付けられ、該前照灯54,54の左右側部に側照灯55,55が並設されている。前照灯54は、図13に示すような外観をなし、その外周部には、リフレクタ部35への取付用の3個のネジ孔58が形成されている。この前照灯54は、前面に配置されたレンズ56と電球61、及び該電球61の後面を覆う円錐状の反射面52(図12参照)とを有している。
【0025】
また、リフレクタ部35の左右両側部には、前述したように、その断平面の軌跡が図の一点鎖線(a−a)で示すような凹状の湾曲部37が形成されていて、この湾曲部37の略々中央に側照灯55が取付けられている。前記湾曲部37には、光を反射するようにアルミ蒸着が施されていて、この構成により、側照灯55の照射角度は平面視で機体前方から側方に向けて略々50°の範囲となっている。こうして、前記側照灯55によれば、前記湾曲部37と前述した光拡散部41の効果とが相俟って、より広範囲に照明できるようになっている。更に、前記湾曲部37は、側照灯55の光が前照灯54側に漏れないようにするための仕切リブの役目も果たしている。
【0026】
図14は、フロントグリル25に、リフレクタ部35を介して前照灯54が取付けられた状態を示す断側面図である。すなわち、リフレクタ部35は上部のボルト・ナット57と下部のボルト・ナット62でフロントグリル25に取付けられている。また、図15は、リフレクタ部35の開口部36に、前照灯54が光軸調節自在に取付けられた状態を示している。すなわち、前照灯54は、開口部36の周囲に配置された上下3本のボルト631,632,633とナット641,642,643、及び前照灯54を機体後方に常時付勢するスプリング651,652,653により取付けられている。このため、これら上部の2本のボルト631,632と下部の1本のボルト633を調節することで、前照灯54の光軸を上下に任意に調節することができ、これにより、工場出荷時に光軸を略々一定に調節することができる。
【0027】
また、前記フロントカバー27は、図16に示すように、本実施形態では、ポリプロピレンを用いて一体成形され、上部にはフロントグリル25との取付け用の立設片42,42’やボルト取付孔43が形成されていて、該フロントカバー27の表面にも塗装又は金属メッキが施されている。
【0028】
次に、前記左右の側板26は、図17に示すように、1枚の鉄板を加工して製造されるもので、機体前後に細長く延びた形状をなし、該側板26の上端部で、かつ天板21の下端部との重合部には、該側板26に溶接手段により内方に向けて突出された多数のボルト(固定手段)46が植設されている。この重合部において、天板21と側板26とは、前記ボルト(固定手段)46とナット(固定手段)48により一体的に固定されている(図18参照)。また、前記規制プレート28は、天板21と側板26とを固定する最後部のボルト46とナット48により共締めされて固定されている(図18参照)。更に、前記重合部には、ボルト46の頭部を覆い隠すようにマークシート47が貼着されている。このマークシート47は、主として製造メーカの公告機能を高めたり、美感を強調する目的で貼着されるものである。なお、前記側板26の前端部で、フロントグリル25との取付部位には、舌片45が形成されている。
【0029】
図18に示すように、前記天板24と左右の側板26との内側の最後部には、これら天板24と左右の側板26の内側周囲に沿って延設された前記規制プレート28が、ボルト49と前記ナット48により固定されている。更に、この規制プレート28の下端部には、図示しないが弾性ゴムが装着されていて、この弾性ゴムに側板26の内側下端部26aが当接している。こうして、規制プレート28は、側板26の機体内方への移動を規制していて、側板26の機体左右方向の位置決めを行う機能を果たしている。これにより、ボンネット20が、上方に開放された状態から下方に閉止され、該ボンネット20の下端部が固定カバー22の上面に当接したとき、前記側板26と固定カバー22の左右方向の位置とが、ピッタリと合致するようになっている。
【0030】
図19は、組立状態のボンネット20を下方から見た外観図であり、フロントグリル25の外気取入口33の内側には、図20に示すような多数の網目を有する金網50が、多数のボルト孔51に挿入されるボルトにより張設されている。この金網50により、外気取入口33からボンネット20内に外気を取り入れてエンジンの冷却を行う一方、外気取入口33からボンネット20内にワラやごみ等が侵入するのを防止している。
【0031】
前記固定カバー22は、図21に示すように、機体フレームの前部に固定されるもので合成樹脂を一体成形して構成され、図示しないが、機体前部に取付けるためのボルト孔を有し、また、一側部にはマフラの排気孔23が形成されている。この固定カバー22の上面に、ボンネット20の下部に取付けられた補強ブラケット29の下面が当接される。
【0032】
【発明の効果】
請求項1に係る発明によれば、ボンネットを、エンジンルームの天面を覆う樹脂製の天板と、該天板の左右側部に連結される金属製の左右側板とで構成したことにより、ボンネットの各部品構成を、該ボンネットの開閉方向に荷重が加わるようにしたので、剛性をアップすることができる。
【0033】
請求項2に係る発明によれば、天板の下端部と左右側板の上端部とを重合して固定手段により固定すると共に、該天板と左右側板の後部に規制プレートを固定し、該規制プレートの下端部を前記左右側板の下端部に当接させて該左右側板の機体内方への移動を規制したので、ボンネット端部の剛性が高められると共に、寸法管理が可能となるため、ボンネットを閉じた時に該ボンネットと機体側の固定カバーとの外観を美麗に保持することができる。
【0034】
請求項3に係る発明によれば、固定手段による天板と左右側板との固定部位に、該固定部位の前記固定手段を隠すようにマークシートを貼着したので、部品組立後の外観品質の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明が適用されたトラクタの側面図である。
【図2】同上の正面図である。
【図3】ボンネットの分解斜視図である。
【図4】ボンネットの外観斜視図である。
【図5】ボンネットの開放時と閉止時の状態を示す断側面図である。
【図6】天板の裏面図である。
【図7】天板の側面図である。
【図8】フロントグリルの正面からの外観図である。
【図9】フロントグリルの背面からの外観図である。
【図10】リフレクタ部の外観図である。
【図11】リフレクタ部の側面図である。
【図12】フロントグリルの断平面図である。
【図13】前照灯の外観図である。
【図14】フロントグリルの断側面図である。
【図15】前照灯の取付部の断平面図である。
【図16】フロントカバーの外観図である。
【図17】側板の正面図である。
【図18】図5のA−A断面図である。
【図19】ボンネットを下方から見た外観図である。
【図20】金網の外観図である。
【図21】固定カバーの外観図である。
【符号の説明】
10 トラクタ
20 ボンネット
24 天板
26 左右側板
28 規制プレート
46 ボルト(固定手段)
47 マークシート
48 ナット(固定手段)
Claims (3)
- 機体前部に形成されたエンジンルームの上方を、開閉自在なボンネットにて覆った農作業機のボンネット構造において、
前記機体前部の機体フレームに固定され、前記エンジンルーム下方の前部及び左右側部を囲むように固定カバーを設け、
前記ボンネットは、前記エンジンルームの天面を覆う樹脂製の天板と、該天板の左右側部に固定された金属製の左右側板と、で構成され、
前記ボンネットの天板と前記固定カバーの左右側部との間を前記左右側板で塞いだことを特徴とする、
農作業機のボンネット構造。 - 前記天板の下端部と前記左右側板の上端部とを重合して固定手段により固定すると共に、該天板と左右側板の後部に規制プレートを固定し、該規制プレートの下端部を前記左右側板の下端部に当接させて該左右側板の機体内方への移動を規制した、
ことを特徴とする請求項1記載の農作業機のボンネット構造。 - 前記固定手段による前記天板と前記左右側板との固定部位に、該固定部位の前記固定手段を隠すようにマークシートを貼着した、
ことを特徴とする請求項1又は2記載の農作業機のボンネット構造。
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