JP4330263B2 - ノンヒートセット水無しオフ輪印刷用インキ組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、紙面に印刷された印刷インキを乾燥するための加熱乾燥部を有しないオフセット輪転印刷機に使用するノンヒートセット水無しオフ輪印刷用インキ組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より印刷の主流となっている平版印刷方法では、親油性の画線部および親水性の非画線部からなる版に対して、インキを供給すると同時に湿し水を供給し、水とインキの反発性を利用することによりインキ画像を形成させている。しかし、この平版印刷法では、印刷インキの乳化による印刷面の光沢の低下、湿し水のコントロール不良に起因する非画線部の汚れ等の弊害が問題視されている。この問題を解決する方法として非画線部をシリコン層で形成した版を使用し、湿し水を使用せずに、該シリコンとインキの反発性を利用してインキ画像を形成せしめる、いわゆる水無しオフ輪印刷方法が実用化されている。
【0003】
近年、この水無しオフ輪印刷方法においては、生産性の向上のために、高速印刷が行われるようになっている。この水無しオフ輪印刷方法に使用する印刷機の基本型は、巻取紙給紙部、オフセット印刷ユニット部、加熱乾燥部(ヒートセット部)、排紙部から構成されているヒートセット型水無しオフ輪印刷機である。またこのヒートセット型の水無し平版印刷方法に使用するインキは、乳化によりタックが下げられないため、低タック/高粘度のものが使用されている(特公昭50-11287号公報、特開平02−22369号公報(オルガノポリシロキサン含有)、特開昭57−87478号公報(脂肪酸エステル、脂肪酸二塩基酸エステル、リン酸エステル等含有))。
【0004】
しかし、これらの低タック/高粘度のインキを、ノンヒートセットオフ輪印刷機に使用した場合、新聞用紙、更紙では紙むけ、パイリング等のトラブルが発生し印刷が困難であった。
【0005】
この問題を解決するために、特開平10−292145号公報では、特定のロジン変性フェノール樹脂、オルガノポリシロキサンを含有させ、低粘度化したインキ組成物が提案されているが、未だ十分な耐地汚れ適性が得られないという問題があった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、紙面に印刷されたインキの乾燥のために加熱乾燥機を有していないノンヒートセット水無しオフ輪印刷機に使用可能なノンヒートセット水無しオフ輪印刷用インキ組成物を提供することを課題とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の課題を解決するために鋭意検討した結果、ゲルワニスとして、n−ヘキサントレランスが2g/g以下のゲルワニスを使用し、かつ全インキ組成物中に、特定の脂肪酸モノエステルを3〜30重量%、およびオルガノポリシロキサンを0.1〜3重量%含有させるインキ組成物が、ノンヒートセット水無しオフ輪印刷機(紙面に印刷されたインキの乾燥のための加熱乾燥機を有していない水無しオフ輪印刷機)に適用できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、請求項1にかかる発明は、(A)着色剤、
(B)n−ヘキサントレランスが2g/g以下のゲルワニス、
(C)全インキ組成物中に3〜30重量%の一般式(1):
R1−CO−O−R2 (1)
(式中、R1は炭素数6〜25の脂肪酸からカルボキシル基を除いた残基、R2は炭素数1〜10のアルキル基を示す)で示される脂肪酸モノエステル、
(D)全インキ組成物中に0.1〜3重量%のオルガノポリシロキサン、
を含有することを特徴とするノンヒートセットオフ輪印刷用インキ組成物に関する。
【0009】
また、請求項2にかかる発明は、ゲルワニス(B)が、バインダー樹脂としてロジン変性フェノール樹脂および/またはロジン変性マレイン酸樹脂、ゲル化剤、溶剤成分として沸点270〜400℃の石油系溶剤を含有する混合物を加熱反応させて得られるゲルワニスであることを特徴とする請求項1記載のノンヒートセットオフ輪印刷用インキ組成物に関する。
【0010】
また、請求項3にかかる発明は、一般式(1)で示される脂肪酸モノエステル(C)が、動植物油由来の脂肪酸アルキルエステルであることを特徴とする請求項1または2記載のノンヒートセット水無しオフ輪印刷用インキ組成物に関する。
【0011】
また、請求項4にかかる発明は、オルガノポリシロキサン(D)の25℃での粘度が10〜10,000cStであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のノンヒートセット水無しオフ輪印刷用インキ組成物に関する。
【0012】
また、請求項5にかかる発明は、ノンヒートセットオフ輪印刷用インキ組成物が、さらに溶解性パラメータが19(MPa)1/2より小さく、室温で液状でかつ溶剤成分に相溶するオレフィン系および/またはジエン系ポリマーを全インキ組成物中に0.1〜3重量%含有することを特徴とする請求項1〜4記載のノンヒートセット水無しオフ輪印刷用インキ組成物に関する。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明のノンヒートセット水無しオフ輪印刷用インキ組成物を詳細に説明する。
【0014】
本発明のノンヒートセット水無しオフ輪印刷用インキ組成物は、ゲルワニスとして、n−ヘキサントレランスが2g/g以下のゲルワニスを使用し、かつ全インキ組成物中に、前記一般式(1)で示される脂肪酸モノエステルを3〜30重量%、およびオルガノポリシロキサンを0.1〜3重量%含有することを特徴とするものである。
【0015】
本発明のノンヒートセット水無しオフ輪印刷用インキ組成物は、前記特定の組成により、ノンヒートセット水無しオフ輪印刷機(紙面に印刷されたインキの乾燥のために加熱乾燥機を有していない水無しオフ輪印刷機)に使用できる。
【0016】
まず、本発明のノンヒートセット水無しオフ輪印刷用インキ組成物を得るためのゲルワニスについて説明する。
【0017】
本発明で使用するゲルワニスとしては、n−ヘキサントレランス(ワニス1gにn−ヘキサンを添加し、系が白濁し始めるまでに要したn-ヘキサンの量)が2g/g以下であるものが好ましい。ワニスのn−ヘキサントレランスが2g/gより大きいと耐地汚れ性が低下するため、使用樹脂によりワニス配合の調整が必要である。
【0018】
本発明におけるゲルワニスを得るために使用されるバインダー樹脂としては、従来から使用されているロジン変性フェノール樹脂、ロジン変性マレイン酸樹脂が特に制限なく使用できる。これらロジン変性フェノール樹脂、ロジン変性マレイン酸樹脂は単独又は組み合わせて使用できる。
【0019】
本発明におけるゲルワニスを得るために使用される溶剤としては、沸点270〜400℃の石油系溶剤が好ましい。具体的には、日本石油(株)製のAFソルベント5、6や、三菱化成(株)製のダイアレン(α−オレフィン)などが挙げられる。溶剤の沸点が270℃より低いと、機上でインキが増粘し耐パイリング適性等が低下する傾向がある。一方沸点が400℃を超えると、溶剤の粘度が高くなり、版面上での溶剤の離脱性が低下し、耐地汚れ性が低下する傾向がある。
【0020】
本発明におけるゲルワニスを得るために使用されるゲル化剤としては、従来オフセット印刷用ゲルワニスを得るために使用されるゲル化剤が使用できる。具体的には、アルミニウムアルコラート類、アルミニウムキレート化合物等が挙げられ、好ましい具体例としては、アルミニウムトリイソプロポキシド、モノsec−ブトキシアルミニウムジイソプロポキシド、アルミニウムsec−ブチトキシド、エチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロポキシド、アルミニウムトリスエチルアセトアセテート等が例示できる。
【0021】
前記ゲル化剤の使用量は、バインダー樹脂(固形分)に対し、20重量%以下が好ましい。より好ましい範囲は、下記に説明するオレフィン系および/またはジエン系ポリマーを使用してゲルワニスを得る場合と、オレフィン系および/またはジエン系ポリマーを使用しないでゲルワニスを得る場合とで異なり、オレフィン系および/またはジエン系ポリマーを使用してゲルワニスを得る場合は1〜15重量%、オレフィン系および/またはジエン系ポリマーを使用しないでゲルワニスを得る場合は、1〜20重量%である。ゲル化剤の使用量が前記範囲を超えると、経時安定性が低下する等の問題がある。ただし、ゲル化剤の適切な使用量は、使用するバインダー樹脂の種類、オレフィン系および/またはジエン系ポリマーを使用してゲルワニスを得るか否か等により異なるので、前記範囲内で適切な使用量を選択することが好ましい。
【0022】
また、本発明におけるゲルワニスを得るのに使用する溶剤成分は、前記のごとく沸点270〜400℃の石油系溶剤であるが、バインダー樹脂の溶解性が悪い場合があるので、植物油、脂肪酸エステル、アルキッド樹脂等のバインダー樹脂の溶解性を向上させる化合物を併用してゲルワニスを得ることが好ましい。
【0023】
本発明のノンヒートセット水無しオフ輪印刷用インキ組成物を得るために使用される脂肪酸モノエステルは、下記一般式(1):
R1−CO−O−R2 (1)
(式中、R1は炭素数6〜25の脂肪酸からカルボキシル基を除いた残基、R2は炭素数1〜10のアルキル基を示す)で示される脂肪酸モノエステルである。
【0024】
前記脂肪酸モノエステルを構成する炭素数6〜25の脂肪酸(R1−COOH)としては、たとえばカプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、イソオクタン酸、イソノナン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、パルミトオレイン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、ヒドロキシステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リシノール酸、リノレン酸、エレオステアリン酸、アラキジン酸、アラキドン酸、ベヘン酸、エルカ酸等が挙げられる。これらの脂肪酸の中でも、動植物油由来の脂肪酸が好適に使用できる。前記脂肪酸モノエステルを構成する炭素数1〜10のアルキル基(R2)としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、2−エチルヘキシル等が挙げられる。これら脂肪酸モノエステルは、単独でまたは2種以上を組合わせて使用できる。
【0025】
前記脂肪酸モノエステルは、ノンヒートセット水無しオフ輪印刷用インキ組成物の全量中に3〜30重量%含有される。脂肪酸モノエステルの含有量が前記範囲未満ではセット性、耐地汚れ性に関して十分な効果が得られず、一方脂肪酸モノエステルの含有量が前記範囲を超えると耐地汚れ性が低下する。なお、脂肪酸モノエステルは、ゲルワニス製造時に加えることもできるし、ゲルワニス製造後のノンヒートセット水無しオフ輪印刷用インキ組成物の製造時に加えることもできるし、さらに、両方の段階で加えることもできる。
【0026】
本発明のノンヒートセット水無しオフ輪印刷用インキ組成物を得るために使用されるオルガノポリシロキサンとしては、25℃での粘度が10〜10,000cStであるものが好適に使用できる。さらに好ましくは、25℃での粘度が100〜1,000cStのものである。前記オルガノポリシロキサンの粘度が、10cSt未満では機上で揮発が起こり印刷版上での安定性および耐地汚れ性が低下し、一方オルガノポリシロキサンの粘度が、10,000cStを超えると、ノンヒートセット水無しオフ輪印刷用インキ組成物との混合性が劣り、機上安定性、耐地汚れ性が低下し好ましくない。
【0027】
本発明で使用するオルガノポリシロキサンは常温で液状であるのが好ましく、具体的には、ジメチルポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、カルボキシル基変性ポリシロキサン、エポキシ変性ポリシロキサン、アルコキシ変性ポリシロキサン、カルビノール変性ポリシロキサン、脂肪酸エステル変性ポリシロキサン、ポリエーテル変性ポリシロキサン、アルキル変性ポリシロキサン、アミノ変性ポリシロキサン、メチルスチリル変性ポリシロキサン、メタクリル変性ポリシロキサン等を挙げることができる。この中でも、アルキル変性ポリシロキサンが好適に使用できる。
【0028】
前記オルガノポリシロキサンは、ノンヒートセット水無しオフ輪印刷用インキ組成物の全量中に、0.1〜3重量%含有される。オルガノポリシロキサンの含有量が前記範囲未満では、良好な耐地汚れ性が得られず、一方オルガノポリシロキサンの含有量が前記範囲を超えると印刷機のローラ間での転移性が低下するばかりでなく紙面への転移性も低下する。
【0029】
本発明のノンヒートセット水無しオフ輪印刷用インキ組成物には、耐地汚れ性を向上させるために、さらに、溶解性パラメータが19(MPa)1/2より小さく、室温で液状であり、かつ溶剤成分と相溶するオレフィン系および/またはジエン系ポリマーを加えることが好ましい。より好ましくは、溶解性パラメータが15〜18(MPa)1/2の範囲にあり、常温で液状であり、かつ溶剤成分と相溶するオレフィン系および/またはジエン系ポリマーを含有させる。このオレフィン系およびジエン系ポリマーの具体例としては、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリイソブチレン、あるいはこれらの共重合体等が挙げられる。 溶剤成分と相溶しない場合は、オレフィン系および/またはジエン系ポリマーと他の成分との混和性が十分でなく、逆に、溶解性パラメータが高いと他の成分との相溶性が高くなりすぎて、セット性、耐地汚れ性を改善することができない。
前記オレフィン系および/またはジエン系ポリマーは、ノンヒートセット水無しオフ輪印刷用インキ組成物の全量中に、0〜3重量%、なかんづく0.1〜3重量%含有されることが好ましい。オレフィン系および/またはジエン系ポリマーの含有量が0.1重量%未満では、耐地汚れ性、セット性の改善効果が低く、一方オレフィン系および/またはジエン系ポリマーの含有量が前記範囲を超えると紙面への転移性および耐地汚れ性が低下する傾向がある。なお、オレフィン系および/またはジエン系ポリマーは、ゲルワニスの製造時に加えることもできるし、ゲルワニス製造後のノンヒートセット水無しオフ輪印刷用インキ組成物の製造時に加えることもでき、どちらの段階で加えても問題はない。しかし、オレフィン系および/またはジエン系ポリマーを加えないで得たゲルワニスを使用し、かつインキ組成物製造時にオレフィン系および/またはジエン系ポリマーを加えたインキ組成物は経時安定性が低下する場合があるので、インキ組成物中にオレフィン系および/またはジエン系ポリマーを使用する場合は、オレフィン系および/またはジエン系ポリマーを加えて製造したゲルワニスを使用することが好ましい。
【0030】
本発明のノンヒートセット水無しオフ輪印刷用インキ組成物を得るために使用する着色剤としては、オフセット印刷インキに用いられる無色または有色の、無機または有機顔料が使用でき、具体的には、二酸化チタン、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、磁性酸化鉄等の無機顔料、アゾ顔料、レーキ顔料、フタロシアニン顔料、イソインドリン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料等の有機顔料、およびカーボンブラック等が使用できる。
【0031】
本発明のノンヒートセット水無しオフ輪印刷用インキ組成物を得るために必要に応じて使用する溶剤としては、ゲルワニスを製造するときに使用した沸点270〜400℃の石油系溶剤が使用できる。
【0032】
さらに、本発明のノンヒートセット水無しオフ輪印刷用インキ組成物には、必要に応じて、大豆油、綿実油、アマニ油、サフラワー油、ヒマワリ油、トウモロコシ油、カノーラ油、桐油、脱水ヒマシ油等の植物油、前記バインダー樹脂以外のアルキッド樹脂、石油樹脂、フェノール樹脂、ロジンエステル樹脂、ポリエステル樹脂等の樹脂、顔料分散剤、ドライヤー、乾燥遅延剤、酸化防止剤、耐摩擦性向上剤等の添加剤を適宜使用することができる。
【0033】
本発明のノンヒートセット水無しオフ輪印刷用インキ組成物における前記着色剤、バインダー樹脂、沸点270〜400℃の石油系溶剤の比率は、全インキ組成物中に、着色剤5〜40重量%、バインダー樹脂10〜40重量%、沸点270〜400℃の石油系溶剤15〜50重量の範囲が適当である。
【0034】
本発明のノンヒートセット水無しオフ輪印刷用インキ組成物を製造するには、従来公知の方法が使用できる。以下に、本発明のノンヒートセット水無しオフ輪印刷用インキ組成物を得るために通常用いられる製造法について説明する。ただし、本発明の範囲はこれらの例によって制限されるものではない。
【0035】
<製造例1>
▲1▼ バインダー樹脂、該バインダー樹脂(固形分)に対し20重量%以下のゲル化剤、バインダー樹脂の溶解性を向上させる化合物(脂肪酸モノエステル、植物油、アルキッド樹脂等)、オレフィン系および/またはジエン系ポリマー、沸点270〜400℃の石油系溶剤とを加熱反応させノンヒートセット水無しオフ輪印刷用インキ用ゲルワニスを得る。
【0036】
▲2▼ 前記ノンヒートセット水無しオフ輪印刷用インキ用ゲルワニスに、着色剤、および必要に応じて脂肪酸モノエステル、沸点270〜400℃の石油系溶剤、顔料分散剤を加え、ビーズミルや3本ロールミル等で練肉分散させることによりノンヒートセット水無しオフ輪印刷用インキ用ベースを得る。
【0037】
▲3▼ 前記ノンヒートセット水無しオフ輪印刷用インキ用ベースに、オルガノポリシロキサン、必要に応じてワックス等のその他添加剤を加え、脂肪酸モノエステルおよび/または沸点270〜400℃の石油系溶剤等で所定の粘度に調整しノンヒートセット水無しオフ輪印刷用インキ組成物を得る。
【0038】
<製造例2>
▲1▼ バインダー樹脂、該バインダー樹脂(固形分)に対し20重量%以下のゲル化剤、バインダー樹脂の溶解性を向上させる化合物(脂肪酸モノエステル、植物油、アルキッド樹脂等)、沸点270〜400℃の石油系溶剤とを加熱反応させノンヒートセット水無しオフ輪印刷用インキ用ゲルワニスを得る。
【0039】
▲2▼ 前記ノンヒートセット水無しオフ輪印刷用インキ用ゲルワニスに、着色剤、および必要に応じて脂肪酸モノエステル、沸点270〜400℃の石油系溶剤、顔料分散剤等を加え、ビーズミルや3本ロールミル等で練肉分散させることによりノンヒートセット水無しオフ輪印刷用インキ用ベースを得る。
【0040】
▲3▼ 前記ノンヒートセット水無しオフ輪印刷用インキ用ベースに、オルガノポリシロキサン、オレフィン系および/またはジエン系ポリマー、必要に応じてワックス等のその他添加剤を加え、脂肪酸モノエステルおよび/または沸点270〜400℃の石油系溶剤等で所定の粘度に調整しノンヒートセット水無しオフ輪印刷用インキ組成物を得る。
【0041】
【実施例】
以下、実施例によって、本発明のノンヒートセット水無しオフ輪印刷用インキ組成物をさらに詳細に説明するが、本発明はその主旨と適用範囲を逸脱しない限りこれらに限定されるものではない。なお、以下の記述中において「部」は重量部を示す。
【0042】
[ノンヒートセット水無しオフ輪印刷インキ用ゲルワニスの製造]
<インキ用ゲルワニスA>
コンデンサー、温度計および攪拌機を装着した四つ口フラスコに、重量平均分子量130,000、酸価15mgKOH/gのロジン変性フェノール樹脂A(日立化成ポリマー(株)製)、重量平均分子量7,000、酸価11.0mgKOH/gの亜麻仁油変性アルキッド樹脂(アルキッド樹脂A、大日本インキ化学工業(株)製)、トール油脂肪酸tert−ブチルエステル(脂肪酸エステルA、LAWTER INTERNATIONAL INC.製)、α−オレフィン(溶剤A、沸点301℃、三菱化成(株)製、ダイアレン)をそれぞれ表1の配合(各成分の配合量は部数で示す、以下同様)となるように仕込み、200℃に昇温し、同温度で1時間加熱溶解した後、ゲル化剤としてエチルアセテートアルミニウムジイソプロポキシド(川研ファインケミカル(株)製、ALCH)を表1の配合となるように仕込み、170℃で60分間加熱保持し、インキ用ゲルワニスAを得た。
【0043】
<インキ用ゲルワニスB>
ノンヒートセット水無しオフ輪印刷インキ用ゲルワニスAの製造において、ロジン変性フェノール樹脂Aを重量平均分子量300,000、酸価30mgKOH/gのロジン変性フェノール樹脂B(AKZO社製)に代えた以外は同様にしてインキ用ゲルワニスBを得た。
【0044】
<インキ用ゲルワニスC>
インキ用ゲルワニスAの製造において、ロジン変性フェノール樹脂Aを重量平均分子量70,000、酸価18mgKOH/gのロジン変性フェノール樹脂C(日立化成ポリマー(株)製)に代えた以外は同様にしてインキ用ゲルワニスCを得た。
【0045】
<インキ用ゲルワニスD>
インキ用ゲルワニスAの製造において、亜麻仁油変性アルキッド樹脂(アルキッド樹脂A)を重量平均分子量7,000、酸価10.0mgKOH/gの大豆油変性アルキッド樹脂(アルキッド樹脂B、大日本インキ化学工業(株)製)に代えた以外は同様にしてインキ用ゲルワニスDを得た。
【0046】
<インキ用ゲルワニスE>
インキ用ゲルワニスAの製造において、亜麻仁油変性アルキッド樹脂(アルキッド樹脂A)を亜麻仁油に代えた以外は同様にしてインキ用ゲルワニスEを得た。
【0047】
<インキ用ゲルワニスF>
インキ用ゲルワニスAの製造において、亜麻仁油変性アルキッド樹脂(アルキッド樹脂A)を大豆油に代えた以外は同様にしてインキ用ゲルワニスFを得た。
【0048】
<インキ用ゲルワニスG>
インキ用ゲルワニスAの製造において、トール油脂肪酸tert−ブチルエステル(脂肪酸エステルA)を大豆油脂肪酸イソブチルエステル(脂肪酸エステルB、ニツカ合成(株)製)に代えた以外は同様にしてインキ用ゲルワニスGを得た。
【0049】
<インキ用ゲルワニスH>
インキ用ゲルワニスAの製造において、トール油脂肪酸tert−ブチルエステル(脂肪酸エステルA)を大豆油脂肪酸メチルエステル(脂肪酸エステルC、ニツカ合成(株)製)に代えた以外は同様にしてインキ用ゲルワニスHを得た。
【0050】
<インキ用ゲルワニスI>
インキ用ゲルワニスAの製造において、溶剤Aを鉱物油(溶剤B、沸点300〜320℃、日本石油(株)製AF−6)に代えた以外は同様にしてインキ用ゲルワニスIを得た。
【0051】
<インキ用ゲルワニスJ>
コンデンサー、温度計および攪拌機を装着した四つ口フラスコに、ロジン変性フェノール樹脂A、亜麻仁油変性アルキッド樹脂(アルキッド樹脂A)、トール油脂肪酸tert−ブチルエステル(脂肪酸エステルA)、溶剤Aをそれぞれ表1の配合となるように仕込み、200℃に昇温し、同温度で1時間加熱溶解した後、ゲル化剤を表1の配合となるように仕込み、170℃で60分間加熱保持し、インキ用ゲルワニスJを得た。
【0052】
<インキ用ゲルワニスK>
コンデンサー、温度計および攪拌機を装着した四つ口フラスコに、ロジン変性フェノール樹脂A、亜麻仁油変性アルキッド樹脂(アルキッド樹脂A)、溶剤Aをそれぞれ表1の配合となるように仕込み、200℃に昇温し、同温度で1時間加熱溶解した後、ゲル化剤を表1の配合となるように仕込み、170℃で60分間加熱保持し、インキ用ゲルワニスKを得た。
【0053】
<インキ用ゲルワニスL>
コンデンサー、温度計および攪拌機を装着した四つ口フラスコに、ロジン変性フェノール樹脂A、亜麻仁油変性アルキッド樹脂(アルキッド樹脂A)、トール油脂肪酸tert−ブチルエステル(脂肪酸エステルA)、溶解性パラメータが17.2(MPa)1/2で常温で液状のポリブタジエン(数平均分子量3,000)、α−オレフィン(溶剤A)をそれぞれ表1の配合となるように仕込み、200℃に昇温し、同温度で1時間加熱溶解した後、ゲル化剤としてエチルアセテートアルミニウムジイソプロポキシドを表1の配合となるように仕込み、170℃で60分間加熱保持し、インキ用ゲルワニスLを得た。
【0054】
[ノンヒートセット水無しオフ輪印刷インキ組成物の製造]
<実施例1〜12>
インキ用ゲルワニスA、B、D〜K、カーボンブラック(三菱化学(株)製MA−7)をそれぞれ表2の配合で混合し、ビーズミル、3本ロールで順次練肉し、各インキベースを得た。次いで、各インキベースに対して表2の配合で、100cStのアルキル変性ジメチルポリシロキサン(オルガノポリシロキサンA、信越化学工業(株)製KF−412)、脂肪酸エステルAを添加、攪拌し、溶剤Aまたは溶剤Bによりラレー粘度を10Pa・sに調整し、実施例1〜12のノンヒートセット水無しオフ輪印刷用インキ組成物を得た。
【0055】
<実施例13〜17>
インキ用ゲルワニスA、カーボンブラックをそれぞれ表2の配合で混合し、ビーズミル、3本ロールで順次練肉し、各インキベースを得た。次いで、インキベースに対して表2の配合で、溶解性パラメータが17.2(MPa)1/2で室温で液状のポリブタジエン(数平均分子量3,000)、溶解性パラメータが16.6(MPa)1/2で室温で液状のポリイソプレンン、溶解性パラメータが15.2(MPa)1/2で室温で液状のポリイソブチレン、オルガノポリシロキサンAを添加、攪拌し、溶剤Aによりラレー粘度を10Pa・sに調整し、実施例13〜17のノンヒートセット水無しオフ輪印刷用インキ組成物を得た。
【0056】
<実施例18>
インキ用ゲルワニスB、カーボンブラックをそれぞれ表2の配合で混合し、ビーズミル、3本ロールで順次練肉し、各インキベースを得た。次いで、インキベースに対して表2の配合で、溶解性パラメータが17.2(MPa)1/2で室温で液状のポリブタジエン(数平均分子量3,000)、オルガノポリシロキサンAを添加、攪拌し、溶剤Aによりラレー粘度を10Pa・sに調整し、実施例18のノンヒートセット水無しオフ輪印刷用インキ組成物を得た。
【0057】
<実施例19>
インキ用ゲルワニスF、カーボンブラックをそれぞれ表2の配合で混合し、ビーズミル、3本ロールで順次練肉し、各インキベースを得た。次いで、インキベースに対して表2の配合で、溶解性パラメータが17.2(MPa)1/2で室温で液状のポリブタジエン(数平均分子量3,000)、オルガノポリシロキサンAを添加、攪拌し、溶剤Aによりラレー粘度を10Pa・sに調整し、実施例19のノンヒートセット水無しオフ輪印刷用インキ組成物を得た。
【0058】
<実施例20>
インキ用ゲルワニスK、カーボンブラックをそれぞれ表2の配合で混合し、ビーズミル、3本ロールで順次練肉し、各インキベースを得た。次いで、インキベースに対して表2の配合で、溶解性パラメータが17.2(MPa)1/2で室温で液状のポリブタジエン(数平均分子量3,000)、オルガノポリシロキサンA、脂肪酸エステルAを添加、攪拌し、溶剤Aによりラレー粘度を10Pa・sに調整し、実施例20のノンヒートセット水無しオフ輪印刷用インキ組成物を得た。
【0059】
<実施例21>
インキ用ゲルワニスA、カーボンブラックをそれぞれ表2の配合で混合し、ビーズミル、3本ロールで順次練肉し、各インキベースを得た。次いで、インキベースに対して表2の配合で、溶解性パラメータが17.2(MPa)1/2で室温で液状のポリブタジエン(数平均分子量3,000)、300cStのジメチルポリシロキサン(オルガノポリシロキサンB、信越化学工業(株)製KF−96−300CS)を添加、攪拌し、溶剤Aによりラレー粘度を10Pa・sに調整し、実施例21のノンヒートセット水無しオフ輪印刷用インキ組成物を得た
【0060】
<実施例22、23>
実施例1のインキ用ゲルワニスA、カーボンブラックをそれぞれ表2の配合で混合し、ビーズミル、3本ロールで順次練肉し、インキベースを得た。次いで、インキベースに対して表2の配合で溶解性パラメータが17.2(MPa)1/2で室温で液状のポリブタジエン(数平均分子量3,000)、オルガノポリシロキサンAを添加、攪拌し、溶剤Aによりラレー粘度を10Pa・sに調整し、実施例22、実施例23のノンヒートセット水無しオフ輪印刷用インキ組成物を得た。
【0061】
<実施例24>
インキ用ゲルワニスL、カーボンブラックをそれぞれ表2の配合で混合し、ビーズミル、3本ロールで順次練肉し、各インキベースを得た。次いで、各インキベースに対して表2の配合で、オルガノポリシロキサンAを添加、攪拌し、溶剤Aによりラレー粘度を10Pa・sに調整し、実施例24のノンヒートセット水無しオフ輪印刷用インキ組成物を得た。
【0062】
<比較例1>
インキ用ゲルワニスK、カーボンブラックをそれぞれ表2の配合で混合し、ビーズミル、3本ロールで順次練肉し、インキベースを得た。次いで、溶剤Aによりラレー粘度を10Pa・sに調整し、比較例1のノンヒートセット水無しオフ輪印刷用インキ組成物を得た。
【0063】
<比較例2>
インキ用ゲルワニスA、カーボンブラックをそれぞれ表2の配合で混合し、ビーズミル、3本ロールで順次練肉し、インキベースを得た。次いで、溶剤Aによりラレー粘度を10Pa・sに調整し、比較例2のノンヒートセット水無しオフ輪印刷用インキ組成物を得た。
【0064】
<比較例3>
インキ用ゲルワニスK、カーボンブラックをそれぞれ表2の配合で混合し、ビーズミル、3本ロールで順次練肉し、インキベースを得た。次いで、インキベースに対して表2の配合で、オルガノポリシロキサンAを添加、攪拌し、溶剤Aによりラレー粘度を10Pa・sに調整し、比較例3のノンヒートセット水無しオフ輪印刷用インキ組成物を得た。
【0065】
<比較例4>
インキ用ゲルワニスJ、カーボンブラックをそれぞれ表2の配合で混合し、ビーズミル、3本ロールで順次練肉し、インキベースを得た。次いで、インキベースに対して表2の配合で、オルガノポリシロキサンAを添加、攪拌し、脂肪酸エステルAによりラレー粘度を10Pa・sに調整し、比較例4のノンヒートセット水無しオフ輪印刷用インキ組成物を得た。
【0066】
<比較例5>
インキ用ゲルワニスA、カーボンブラックをそれぞれ表2の配合で混合し、ビーズミル、3本ロールで順次練肉し、インキベースを得た。次いで、インキベースに対して表2の配合で、オルガノポリシロキサンAを添加、攪拌し、溶剤Aによりラレー粘度を10Pa・sに調整し、比較例5のノンヒートセット水無しオフ輪印刷用インキ組成物を得た。
【0067】
<比較例6>
インキ用ゲルワニスC、カーボンブラックをそれぞれ表2の配合で混合し、ビーズミル、3本ロールで順次練肉し、インキベースを得た。次いで、インキベースに対して表2の配合で、オルガノポリシロキサンA、溶剤Aを添加、攪拌し、比較例6のノンヒートセット水無しオフ輪印刷用インキ組成物を得た。
【0068】
[印刷性能評価試験]
実施例1〜24および比較例1〜6のノンヒートセット水無しオフ輪印刷用インキ組成物の印刷性能に関し、下記の印刷性能評価試験を行った。
【0069】
(1)耐地汚れ性
オフ輪印刷機に水無し平版用印刷版(東レ(株)製)を取り付け、湿し水および冷却水を供給することなく、10m/sで軽量更巻取紙(日本製紙(株)製)に印刷を行った。この際、印刷機のロール、版、およびブランケットは徐々に温度が上昇する。そして、一定のベタ濃度(マクベス社製反射濃度計での光学反射濃度1.4)において、印刷物の非画線部に地汚れが発生した際の版面温度を地汚れ温度として評価した。地汚れ温度が高い方が、耐地汚れ性に優れる。なお、ノンヒートセットオフ輪印刷は、良好な着肉性を得るため版面温度を、30〜35℃と高い温度に設定され印刷される。従って、版面温度が30℃未満で地汚れが発生するものは使用できない。
【0070】
(2)転移性
印刷適性試験装置(三井電気精機(株)製)を用いて実施例1〜24および比較例1〜6のノンヒートセット水無しオフ輪印刷用インキ組成物の各々0.15ccを印刷速度9.9m/sで更紙に展色し、その転移濃度を反射濃度計(マクベス社製)で測定し、次の基準に基づいて評価した。
5:転移濃度が1.6〜1.7であるもの
4:転移濃度が1.5以上、1.6未満であるもの
3:転移濃度が1.4以上、1.5未満であるもの
2:転移濃度が1.3以上、1.4未満であるもの
1:転移濃度が1.3未満であるもの
【0071】
[評価結果]
実施例1〜24および比較例1〜6のノンヒートセット水無しオフ輪印刷用インキ組成物について、前記評価を行った結果を表2に示す。
【0072】
【表1】
【0073】
【表2】
【発明の効果】
本発明のノンヒートセット水無しオフ輪印刷用インキ組成物は、新聞用紙、更紙への印刷適性を満足する低粘度でありながら優れた耐地汚れ性を有し、かつ、インキの転移性を損なわないため、ノンヒートセット水無しオフ輪印刷を可能とする。
Claims (4)
- (A)着色剤、
(B)n−ヘキサントレランスが2g/g以下のゲルワニス、
(C)全インキ組成物中に3〜30重量%の一般式(1):
R1−CO−O−R2 (1)
(式中、R1は炭素数6〜25の脂肪酸からカルボキシル基を除いた残基、R2は炭素数1〜10のアルキル基を示す)で示される脂肪酸モノエステル、
(D)全インキ組成物中に0.1〜3重量%のオルガノポリシロキサン、
を含有し、かつ、
前記ゲルワニス(B)が、バインダー樹脂としてロジン変性フェノール樹脂および/またはロジン変性マレイン酸樹脂、ゲル化剤、溶剤成分として沸点270〜400℃の石油系溶剤を含有する混合物を加熱反応させて得られるゲルワニスであることを特徴とするノンヒートセットオフ輪印刷用インキ組成物。 - 一般式(1)で示される脂肪酸モノエステル(C)が、動植物油由来の脂肪酸アルキルエステルであることを特徴とする請求項1記載のノンヒートセット水無しオフ輪印刷用インキ組成物。
- オルガノポリシロキサン(D)の25℃での粘度が10〜10,000cStであることを特徴とする請求項1または2記載のノンヒートセット水無しオフ輪印刷用インキ組成物。
- ノンヒートセットオフ輪印刷用インキ組成物が、さらに溶解性パラメータが19(MPa)1/2より小さく、室温で液状でかつ溶剤成分に相溶するオレフィン系および/またはジエン系ポリマーを全インキ組成物中に0.1〜3重量%含有することを特徴とする請求項1〜3記載のノンヒートセット水無しオフ輪印刷用インキ組成物。
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