JP5977427B1 - 平版印刷インキ、印刷物 - Google Patents
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薄膜印刷とは、紙等の基材に印刷される印刷インキの膜厚を通常よりも薄くして印刷することを言い、薄膜印刷により、ブロッキングや裏移りの低減による損紙削減、高精細印刷対応といった品質面での改善、ミスチング低減による作業環境の改善等が実現できる。さらに納期の短縮、印刷インキ使用量の削減といったメリットも享受できる。薄膜印刷を行う際には、印刷インキの膜厚が薄くても文字や絵柄の印刷濃度が従来と同等となるように、顔料濃度を高めた印刷インキを用いる必要がある。
特許文献1に記載の印刷インキについてさらなる検討を重ねた結果、このような印刷インキの供給方式の違いや印刷時におけるインキ元ローラの回転速度、ローラ間の周速差の違いにより、アルキッド樹脂を含む印刷インキを用いて印刷を行った際にローラ間での印刷インキ組成物の転移不良が生じて期待した印刷濃度とならない場合があることを新たに見出した。
(適用例1)
本適用例に係る平版印刷インキ組成物は、着色顔料と、固形分酸価が1.5mgKOH/g以上5mgKOH/g以下であるか、固形分水酸基価が5mgKOH/g以上15mgKOH/g以下であるアルキッド樹脂と、ポリブテンおよびポリブタジエンからなる群から選ばれる少なくとも一種であり、数平均分子量が1,000以上100,000以下の炭化水素樹脂と、を含み、炭化水素樹脂の含有量が1質量%以上40質量%以下であることを特徴とする。
上記適用例に係る平版印刷インキ組成物において、炭化水素樹脂の40℃における動的粘度が5,000mm2/S以上200,000mm2/S以下であることが好ましい。
上記適用例に係る平版印刷インキ組成物において、炭化水素樹脂の40℃における動的粘度が20,000mm2/S以上200,000mm2/S以下であり、炭化水素樹脂の含有量が3質量%以上20質量%以下であることが好ましい。
(適用例4)
上記適用例に係る平版印刷インキ組成物において、アルキッド樹脂の含有量が2質量%以上20質量%以下であることが好ましい。
上記適用例に係る平版印刷インキ組成物において、アルキッド樹脂の油長が50%以上90%以下であることが好ましい。
(適用例6)
本適用例に係る印刷物は、上記適用例に係る平版印刷インキ組成物を用いて印刷されたことを特徴とする。
本発明の平版印刷インキは、枚葉、オフ輪、新聞等の各種平版オフセット印刷に用いられるものであり、着色顔料と、固形分酸価が1.5mgKOH/g以上5mgKOH/g以下であるか、固形分水酸基価が5mgKOH/g以上15mgKOH/g以下であるアルキッド樹脂と、ポリブテンおよびポリブタジエンからなる群から選ばれる少なくとも一種であり、数平均分子量が1,000以上100,000以下の炭化水素樹脂と、を含み、炭化水素樹脂の含有量が印刷インキの1質量%以上40質量%以下である。以下、本発明の平版印刷インキについて詳述する。また、以下では平版印刷インキを単に印刷インキともいう。
着色顔料が有機顔料である場合には、通常7質量%以上17質量%以下で用いられる。薄膜印刷に用いるような場合には11質量%以上21質量%以下とすることが好ましい。カーボンブラックのような無機顔料である場合には、通常15質量%以上22質量%以下で調整され、薄膜印刷に用いるような場合には25質量%以上38質量%以下とすることが好ましい。
アルキッド樹脂の固形分酸価は1.5mgKOH/g以上5mgKOH/g以下のアルキッド樹脂であることがより好ましい。また、固形分酸価が1mgKOH/g以上5mgKOH/g以下であり、かつ固形分水酸基価が5mgKOH/g以上15mgKOH/g以下であるアルキッド樹脂を用いることがさらに好ましい。
一方でアルキッド樹脂の含有量が高過ぎると後述する炭化水素樹脂を添加しても転移不良を抑制できないおそれがある。このためアルキッド樹脂の含有量は、印刷インキの2質量%以上20質量%以下であることが好ましく、5質量%以上15質量%以下であることがより好ましい。
イエロー顔料、マゼンタ顔料、シアン顔料等のカラー顔料を用いた印刷インキにはロジン変性フェノール樹脂、石油樹脂を用いることが好ましい。カーボンブラック顔料を用いた印刷インキにはロジン変性フェノール樹脂、石油樹脂、ギルソナイト樹脂を用いることが好ましい。
植物油としては、ヒマシ油、落花生油、オリーブオイルなどの不乾性油、大豆油、綿実油、菜種油、ゴマ油、コーン油などの半乾性油、アマニ油、エノ油、桐油などの乾性油、再生植物油、植物エステル等の植物由来成分などを用いることができる。
これらの極性基の付加量は、ポリブテン、ポリブタジエン1モルに対し、0.1モル以上3.0モル以下であることが好ましく、0.5モル以上2.0モル以下であることがより好ましい。
水素添加反応は従来公知の方法により行うことができる。一例として、ニッケル、パラジウム、コバルト、白金、ロジウム等の8族や10族の金属あるいは金属酸化物を水素化触媒とし、反応温度を40〜400℃、水素圧5〜400Kg/cm2で水素化することができる。水素添加は極性基の導入前に行ってもよいし、導入後に行っても良い。
アルキッド樹脂を含む印刷インキは、含まない場合と比較して降伏価、高速域でのタック値が低下する。ここにポリブテンおよびポリブタジエンからなる群から選ばれる少なくとも一種の炭化水素樹脂を添加すると、降伏価、高速域でのタック値ともにアルキッド樹脂を含まない印刷インキと同程度となり、印刷インキの供給方式やローラの本数、配列や、印刷時におけるインキ元ローラの回転速度やローラ間の周速差の違いによる転移不良が改善する。このことから、アルキッド樹脂を使用することによる降伏価、高速域でのタック値の低下と印刷インキの転移性の不安定化には相関があり、ポリブテンおよびポリブタジエンからなる群から選ばれる少なくとも一種の炭化水素樹脂がこれを補うことにより転移性が向上するものと考えられる。
中でも40℃における動的粘度が20,000mm2/S以上200,000mm2/S以下である炭化水素樹脂を3質量%以上20質量%以下の範囲で含むことが好ましい。
本発明の印刷インキは、上記の原料を用い、従来公知の方法で製造することができる。一例として、上述した低酸価または低水酸基価のアルキッド樹脂を含む樹脂、植物油、石油系溶剤等を用いて調整したワニスに、着色顔料、体質顔料、溶剤および他の添加剤を必要に応じて添加し、攪拌機で充分にプレミキシングを行なった後、ショットミル、ロールミル等で練肉を行う。練肉後、ワニス、石油系溶剤、植物油、その他ワックス、酸化防止剤、乳化調整剤等の助剤を添加し、充分に攪拌混合する。ポリブテンおよびポリブタジエンからなる群から選ばれる少なくとも一種の炭化水素樹脂は、プレミキシングの際に添加してもよいし、練肉後に添加してもよい。
これらの原料は印刷インキに必要とされる粘度や流動性に合わせて使用量を調整する。また、これらの原料の添加時期は固定されたものではなく、混合状態に基づいて適切に調整される。
1.1 ロジン変性フェノール樹脂ワニスの調整
コンデンサー、温度計、攪拌機を装着した四つ口フラスコにロジン変性フェノール樹脂(重量平均分子量100,000、軟化点161℃、酸価18.0mgKOH/g):45部、大豆油(日清オイリオ株式会社製):25部、AFソルベント6号:14.5部を仕込み、180℃で1時間加熱攪拌した。その後AFソルベント6号:15部、アルミニウムエチルアセトアセテート・ジイソプロピレート(ALCH−50F 川研ファインケミカル株式会社製):0.5部を加え、ロジン変性フェノール樹脂ワニスを得た。このロジン変性フェノール樹脂ワニスを実施例及び比較例で使用した。
攪拌機、精留塔および温度計つきの反応釜に、大豆油:700部、グリセリン:48.5部、ペンタエリスリトール:53.8部を入れ、250℃で1時間保持してアルコール交換反応を行った。150℃に冷却し、イソフタル酸:250.8部、環流用のキシレンを加えて250℃まで徐々に加熱した後8時間保持して脱水しながらエステル化反応を行った。250℃を保持しながら2時間減圧反応を行ってキシレンを除き、固形分酸価3.5mgKOH/g、固形分水酸基価11.0mgKOH/g、油長70のアルキッド樹脂を得た。
コンデンサー、温度計、攪拌機を装着した四つ口フラスコに、ギルソナイト樹脂(アメリカンギルソナイト社製 ギルソナイトセレクト347):25部、大豆油:75部を仕込み、150℃で1時間加熱攪拌してギルソナイト樹脂ワニスを得た。
カーボンブラック(カーボンブラック#32 三菱化学株式会社製)、炭酸カルシウム(白艶華T−DD 白石工業株式会社製)、ロジン変性フェノール樹脂ワニス、アルキッド樹脂、ギルソナイト樹脂ワニス、ポリブテン、ポリブタジエンを、表1、2に示す配合に従い3本ロールミルにて印刷インキ中の粗大粒子の粒径が5μm以下になるよう練肉分散し、石油系溶剤(AFソルベント6号)、乾燥防止剤として2,6−ジ−ターシャリーブチル−4−クレゾール(H−BHT 本州化学工業株式会社製)を混合して実施例、比較例、参考例の印刷インキを得た。なお、ポリブテンはJX日鉱日石エネルギー株式会社製の日石ポリブテンHV−1900を用いた。ポリブタジエンは日本曹達株式会社製のポリブタジエンB−3000を用いた。
実施例、比較例の印刷インキ組成物を用い、以下の条件にて印刷を行った。
印刷機 :6N−600型印刷試験機(東浜精機(株)製)
インキ供給方式:壺方式
印刷用紙 :新聞用更紙 SL紙(調軽量紙)(中越パルプ工業(株)製)
印刷速度 :10.0万部/時
印刷版 :CTP版(Kodak社製)
印刷部数 :10,000万部
続いて、インキ供給方式をレール方式に変更した以外は同様にして印刷を行い、以下のようにして評価を行い、結果を表1、2にまとめた。
印刷時に安定した印刷品質と作業性を示すかどうかについて、参考例の印刷インキを基準として相対評価を行った。印刷品質と作業性が参考例同様に良好である場合を○、参考例には劣るが実用上問題ない場合を△、実用上問題となる場合を×として3段階で評価した。
得られた印刷物の印刷直後(印刷後1分)の紙面濃度値を濃度計(グレタグマクベス社製 Spectroeye)を用いて測定した。測定条件は以下の通りである。
光源 :D50
白色基準 :絶対白色(Abs)
視野角 :2度
フィルター:なし
濃度基準 :ISO T
「新聞オフセット輪転インキの試験方法 団体規格:2000(新聞インキ協会発行)」の4.1.4(ガラス板流度系による流動性の試験方法)に従い、流動性を評価した。この試験方法は、表面が平滑なガラス板を垂直に立て、一定量のインキ試料が自重によって一定時間内にガラス板上を流れた長さを測定することにより流動性を評価する。
印刷インキの流動性は、印刷時の様々なトラブルと関係がある。流動性が高過ぎる場合は壺ダレ、ミスチング等の懸念があり、流動性が低過ぎる場合には壺上がりや転移不良が生じやすい。参考例の印刷インキを基準として相対評価を行い、参考例と同程度の流動性であり実用上問題ない場合は○、ミスチング等により印刷物が汚れたり、転移不良で紙面濃度が不十分になるなどして印刷物にも問題が生じるなど実用上問題となる場合は×、印刷物は問題ないが壺ダレ、壺上がりなど印刷作業上の支障が生じるおそれがある場合を△として3段階で評価した。
一方、炭化水素樹脂を用いなかった比較例1の印刷インキは壺方式とレール方式とで印刷濃度に差が生じた。また、炭化水素樹脂の含有量が少ない比較例2の印刷インキは、印刷インキの供給方式の違いによる印刷濃度の差はなかったものの実施例2−5の印刷インキと比較すると印刷濃度が低く、どちらの方式でも転移不良が生じていた。比較例3の印刷インキは炭化水素樹脂の含有量が多すぎたため、転移不良は抑制されたものの印刷適性、流動性が悪化した。
着色顔料を高濃度とした場合には流動性、着肉性、耐水性、印刷適性に優れ、印刷機におけるインキの供給方式やローラの本数、配列や、印刷時におけるインキ元ローラの回転速度、ローラ間の周速差の違いによらず転移不良が抑制されており、薄膜印刷に好適である。薄膜印刷により、ブロッキングや裏移り、ミスチング、フライングの低減、高精細印刷対応といった品質面での向上に加え、印刷インキの使用量を削減することができる。
特に新聞用に浸透乾燥型の高濃度印刷インキとした場合には、セットオフや裏抜けの少ない高濃度印刷インキの特徴を活かし、従来に比べ軽量な新聞用紙の利用が可能となり、新聞用紙コストの削減や森林資源の保存による環境負荷の低減に寄与することもできる。
Claims (6)
- 着色顔料と、
固形分酸価が1.5mgKOH/g以上5mgKOH/g以下であるか、固形分水酸基価が5mgKOH/g以上15mgKOH/g以下であるアルキッド樹脂と、
ポリブテンおよびポリブタジエンからなる群から選ばれる少なくとも一種であり、数平均分子量が1,000以上100,000以下の炭化水素樹脂と、を含み
前記アルキッド樹脂の含有量が5質量%以上20質量%以下であり、
前記炭化水素樹脂の含有量が1質量%以上40質量%以下であることを特徴とする平版印刷インキ。 - 前記炭化水素樹脂の40℃における動的粘度が5,000mm2/S以上200,000mm2/S以下であることを特徴とする請求項1に記載の平版印刷インキ。
- 前記炭化水素樹脂の40℃における動的粘度が20,000mm2/S以上200,000mm2/S以下であり、
前記炭化水素樹脂の含有量が3質量%以上20質量%以下であることを特徴とする請求項1に記載の平版印刷インキ。 - 前記アルキッド樹脂の含有量が2質量%以上20質量%以下であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の平版印刷インキ。
- 前記アルキッド樹脂の油長が50%以上から90%以下であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の平版印刷インキ。
- 請求項1乃至5のいずれか一項に記載の平版印刷インキにより印刷されたことを特徴とする印刷物。
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