JP4328897B2 - 中空杭回転圧入装置における中掘り装置 - Google Patents

Description

【０００１】
【発明の属する技術分野】
本願発明は、中空杭回転圧入装置によりケーシング、中空コンクリート杭等の中空杭を回転させつつ地中に圧入する際に、該中空杭内に回転する掘削作業ロッドを挿入し、該掘削作業ロッドの回転反力を中空杭に受けさせて該中空杭内を掘削する中掘り装置に関する。
【０００２】
【従来の技術】
従来、この種の中掘り装置として、上記中空杭の上端部に油圧式チャックを有する杭保持筒を着脱自在に被嵌すると共に、上記チャックにより該杭保持筒を中空杭に係止し、上記杭保持筒の外側に環状制御枠を同心位置に回転自在に支持させ、該制御枠上に、クレーンに吊支された駆動部を設置すると共に、該駆動部の出力軸に上端を接続されたスクリュー掘削ロッドを上記中空杭内に挿通し、そして上記中空杭の回転時に上記制御枠（駆動部）を静止状態に保つ制御装置として、上記杭保持筒に同心的に固定された大歯車と、上記制御枠に搭載された同期モータにより回転される小歯車とをかみ合わせ、上記小歯車を大歯車の周囲に公転しないように自転させるべく上記同期モータの回転数を調整する調整手段を備え、それにより上記スクリュー掘削ロッドの回転反力を上記ケーシングに受けさせるようにした構造のものが知られている（特開平１１−１３１４７２）。
【０００３】
しかし、上記の従来装置は、杭保持筒が油圧式チャックを備える大掛りなものとなるばかりでなく、上記スクリュー掘削ロッドの回転反力を中空杭に受けさせる方式として、上記環状制御枠および駆動部の重量物を杭保持筒に回転自在に支持させる構造をとり、しかもそのような重量物を静止状態に保つ制御装置としての大歯車、小歯車、同期モータ等も当然大型重量物となり、それらが相まって装置全体が大型で高重量のものとなる欠点があった。
【０００４】
【発明が解決しようとする課題およびその解決手段】
本願請求項１の発明は、中掘り装置の小型、軽量化を課題とし、その解決手段は、上記掘削作業ロッドの回転反力を中空杭に受けさせる方式として、上記回転駆動部を中空杭に回転不能に係止させる構造をとることに着眼したもので、
回転圧入装置により垂直に把持されて回転されつつ地中に圧入される中空杭の上端部に、杭保持筒を回転不能に且つ軸方向へ挿脱自在に挿入し、
上記杭保持筒の上端部に固定された枠体に回転駆動部を搭載すると共に、該回転駆動部に上端部を接続された掘削作業ロッドを上記杭保持筒内を経て上記中空杭内に挿通し、
上記枠体に、上記回転駆動部に外部の動力源から動力を供給すべき動力供給用回転継手の回転部を連結すると共に、その停止部に連結したワイヤにて上記枠体、掘削作業ロッド、杭保持筒等を吊支した、
中空杭回転圧入装置における中掘り装置を提案する。
【０００５】
上記請求項１の発明において、上記動力供給用回転継手の停止部に外部動力源からの動力線を接続することになるが、この動力線を地上の作業員が保持することにより該停止部を静止状態に保つことが可能となる。
【０００６】
上記請求項１の発明における上記「回転駆動部」には、電動モータと減速機、および油圧モータが使用される。
また上記「掘削作業ロッド」には、下端に掘削ヘッドを有し、ロッド外周面にスクリュー羽根を有するスクリュー掘削ロッド、下端に掘削ヘッドを有し、ロッド外周面に撹拌羽根を有する撹拌ロッド、下端に掘削ヘッドを有するのみの掘削ロッド等を含む。
さらに上記「動力供給用回転継手」には、上記回転駆動部が電動モータと減速機の場合はスリップリング等の電流供給用回転継手が、上記回転駆動部が油圧モータの場合は圧油供給用回転継手がそれぞれ使用される。
【０００７】
本願請求項２の発明は、上記請求項１の発明の課題に加え、中空杭下端からの土砂の流入を制御するため上記掘削ヘッドの中空杭下端からの出代の調節や、中空杭の圧入を容易にするため掘削ヘッド上下動による交番掘削等を確実に行うことを課題とし、その解決手段として、
上記請求項１の発明における中空杭の上端部内周面にスライドキーを、上記杭保持筒の外周面に上記スライドキーが係合する母線方向に延長するキー溝をそれぞれ設けた、中空杭回転圧入装置における中掘り装置を提案する。
【０００８】
本願請求項３の発明は、上記請求項１または２の発明の課題に加え、上記動力供給用回転継手における停止部のとも回りを防止することを課題とし、その解決手段として、
上記動力供給用回転継手における停止部のとも回りを防止する装置として、上記回転継手の回転部に固定された大歯車と、上記停止部に設置された同期モータにより回転される小歯車とをかみ合わせ、上記小歯車を上記大歯車の周囲に公転しないように自転させて上記停止部を常に静止状態におくべく上記同期モータの回転数を調整する手段を備えた、中空杭回転圧入装置における中掘り装置を提案する。
以下図面を参照して本願発明の実施例について説明する。
【０００９】
【実施例】
図１において、中空杭回転圧入装置（Ａ）は、ベースフレーム（１）上に立設された４本の中空杭圧入用油圧ジャッキ（２）…に昇降フレーム（３）を支持させ、該昇降フレーム（３）に、中空杭を把持すべきチャックを有する回転筒（４）を回転自在に支持させると共に、上記昇降フレーム（３）上に設置された中空杭回転用油圧モータ（５）、（５）から歯車を介して上記回転筒（４）に回転を伝達するもので、その回転筒（４）内に、本例では下端部外周面に１巻き分のらせん羽根（７）を有する鋼管からなる中空杭（６）を挿入して上記チャックにより垂直に把持し、該中空杭（６）の上端部に掘削ロッド（８）を有する中掘り装置（Ｂ）を係合させてある。
【００１０】
上記中掘り装置（Ｂ）の詳細は次のようである。図２において、上記中空杭（６）の上端部に、該中空杭（６）より若干小径の円筒状杭保持筒（９）を挿入してあり、その一方の中空杭（６）の上端部内周面に２個のスライドキー（１０）、（１０）を互に直径方向の相対する位置に固定すると共に、他方の杭保持筒（９）の外周面の上記スライドキー（１０）、（１０）に対応する位置に該杭保持筒（９）のほぼ全長に及ぶ一対づつの突条（１１）（１１）、（１１）（１１）を突設して、各対の突条間に母線方向に延長するキー溝（１２）、（１２）を形成し、このキー溝（１２）、（１２）に上記スライドキー（１０）、（１０）を係合することにより上記杭保持筒（９）を中空杭（６）に対し回転不能に且つ軸方向へ挿脱自在としてある。
【００１１】
上記杭保持筒（９）の上端部には筒状の枠体（１３）を固定し、該枠体（１３）上に、電動モータ（１４）および減速機（１５）からなる回転駆動部を内蔵する駆動部ホルダー（１６）を固定し、該駆動部の出力軸に上端部を接続された掘削ロッド（８）を上記杭保持筒（９）内を通して中空杭（６）内に挿通してあり、この駆動部ホルダー（１６）の上端部に、図１のようにスリップリング（１７）を介して吊りリング（１８）を連結し、該吊りリング（１８）に、クレーンからワイヤ（１９）により吊下されたフック（２０）を係止して、上記駆動部ホルダー（１６）、枠体（１３）、杭保持筒（９）等を吊支している。（２１）は上記掘削ロッド（８）下端の掘削ヘッドで、中空杭（６）下端から適宜突出している。
【００１２】
上記スリップリング（１７）は、その回転部を上記駆動部ホルダー（１６）に固定して電動モータ（１４）と導線で接続され、その停止部に上記吊りリング（１８）を固定するが、さらに該停止部に動力線（２２）の一端を接続すると共に他端を地上の電源に接続してある。
【００１３】
上例の作用を次に説明する。回転圧入装置（Ａ）に中空杭（６）を垂直に把持させ、掘削ロッド（８）下端の掘削ヘッド（２１）を中空杭（６）下端から突出させた図１の状態で、地上の作業員が動力線（２２）を保持し、ついで電動モータ（１４）の始動により掘削ロッド（８）を反時計方向に回転させ、その掘削ヘッド（２１）により中空杭（６）の先端地盤を先掘りしていき、それについで回転圧入装置（Ａ）により中空杭（６）を時計方向へ回転させつつ間欠的に地中に圧入していく。
【００１４】
ここで、掘削ロッド（８）の回転反力は、枠体（１３）、杭保持筒（９）およびスライドキー（１０）、（１０）を経て中空杭（６）に受けられる。また作業員による動力線（２２）の保持により、上記スリップリング（１７）の停止部のとも回りを防止し、それによりワイヤ（１９）による中掘り装置（Ｂ）の吊支を正常に維持する。
【００１５】
地盤の性状により、上記掘削ヘッド（２１）と中空杭（６）下端との間隔から中空杭（６）内に流入する土砂の量が増減するが、これを所望量に調整する場合は、上記ワイヤ（１９）の昇降操作により掘削ロッド（８）を適宜昇降させて上記間隔を変更する。その際、スライドキー（１０）、（１０）がキー溝（１２）、（１２）内を摺動して上記の昇降を可能にする。また中空杭（６）の圧入を容易にするため、掘削ヘッド（２１）の中空杭（６）下端からの出代を長くしたり、掘削ヘッド（２１）を上下動させる交番掘削を行うときも上記と同様である。
【００１６】
次に、上記スリップリング（１７）の停止部のとも回り防止装置について説明する。図３において、駆動部ホルダー（１６）の上面中央に突設された円形台（２３）上に上記スリップリング（１７）の回転部（１７ａ）を固定すると共に、上記スリップリングの停止部（１７ｂ）に、上記回転部（１７ａ）を囲むハウジング（２４）を取りつけ、該ハウジング（２４）内の上記回転部（１７ａ）に大歯車（２５）を固定すると共に、上記ハウジング（２４）上の一側に設置された同期モータ（２６）の出力軸をハウジング内に突出し、該出力軸に固定された小歯車（２７）を上記大歯車（２５）にかみ合わせてある。
【００１７】
さらに上記同期モータ（２６）の回転数検出器として近接スイッチ（２８）を上記小歯車（２７）に対向する位置に取りつけると共に、中空杭（６）の回転数検出器として、図４に示すように上記中空杭回転用油圧モータ（５）の出力軸に固定された歯車（５’）に対向する位置に近接スイッチ（２９）を取りつけ、そして両近接スイッチ（２８）、（２９）により検出された同期モータ回転数検出信号および中空杭回転数検出信号を図５に示すように比較演算回転数制御回路（３０）に送り、そこで中空杭（６）の回転数に基づく大歯車（２５）の周速度と、同期モータ（２６）の回転数に基づく小歯車（２７）の周速度との差を演算し、ついでその演算値（差）があるとき、その差を０にするため、すなわち小歯車（２７）の公転を停止させるために小歯車（２７）の自転回転数を変速させるべく同期モータ（２６）に変速指令を送るようにした同期モータ回転数調整回路（３１）を備える。
【００１８】
今、回転圧入装置（Ａ）により中空杭（６）を時計方向に回転させると大歯車（２５）も同方向に回転し、それと共に同期モータ（２６）の始動により小歯車（２７）を反時計方向に回転させると、近接スイッチ（２８）、（２９）による各検出信号が比較演算回転数制御回路（３０）に送られて上記大歯車（２５）と小歯車（２７）の周速度の差を演算し、差があるときは、上記小歯車（２７）を、上記周速度の差を０にするに必要な回転数で回転させるべく、同期モータ（２６）に変速指令を送って変速させ、それにより小歯車（２７）の公転すなわちとも回りを阻止する。
【００１９】
【発明の効果】
本願請求項１の発明によれば、掘削作業ロッドの回転反力を、中空杭に回転不能に係止した杭保持筒を介して、中空杭に直接的に受けさせることにより中掘り装置の小型化、軽量化を実現することができるのである。
【００２０】
本願請求項２の発明によれば、上記請求項１の発明の効果に加え、中空杭内への土砂の流入調節のため掘削作業ロッドの掘削ヘッドの中空杭下端からの出代調整や、中空杭の圧入を容易化するため掘削ヘッドの交番掘削等を確実に行うことができる。
【００２１】
本願請求項３の発明によれば、上記請求項１または２の発明の効果に加え、動力供給用回転継手の停止部のとも回りを自動的に防止することができ、作業の安全を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【図１】中空杭回転圧入装置および中掘り装置の一部省略正面図である。
【図２】（イ）杭保持筒部分の拡大縦断面図である。
（ロ）上記（イ）図のＡ−Ａ断面図である。
【図３】同期モータ回転数検出器取りつけ部分の一部切欠拡大図である。
【図４】中空杭回転数検出器取りつけ部分の一部切欠拡大図である。
【図５】同期モータ回転数調整回路のブロック図である。
【符号の説明】
Ａ 中空杭圧入装置
Ｂ 中掘り装置
６ 中空杭
８ 掘削ロッド
９ 杭保持筒
１０ スライドキー
１２ キー溝
１３ 枠体
１４ 電動モータ
１５ 減速機
１７ スリップリング
１９ ワイヤ
２５ 大歯車
２６ 同期モータ
２７ 小歯車

Claims (3)

1. 回転圧入装置により垂直に把持されて回転されつつ地中に圧入される中空杭の上端部に、杭保持筒を回転不能に且つ軸方向へ挿脱自在に挿入し、
   上記杭保持筒の上端部に固定された枠体に回転駆動部を搭載すると共に、該回転駆動部に上端部を接続された掘削作業ロッドを上記杭保持筒内を経て上記中空杭内に挿通し、
   上記枠体に、上記回転駆動部に外部の動力源から動力を供給すべき動力供給用回転継手の回転部を連結すると共に、その停止部に連結したワイヤにて上記枠体、掘削作業ロッド、杭保持筒等を吊支した、
   中空杭回転圧入装置における中掘り装置。
2. 上記中空杭の上端部内周面にスライドキーを、上記杭保持筒の外周面に上記スライドキーが係合する母線方向に延長するキー溝をそれぞれ設けた、請求項１に記載の中空杭回転圧入装置における中掘り装置。
3. 上記動力供給用回転継手における停止部のとも回りを防止する装置として、上記回転継手の回転部に固定された大歯車と、上記停止部に設置された同期モータにより回転される小歯車とをかみ合わせ、上記小歯車を上記大歯車の周囲に公転しないように自転させて上記停止部を常に静止状態におくべく上記同期モータの回転数を調整する手段を備えた、請求項１または２に記載の中空杭回転圧入装置における中掘り装置。

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