JP4325770B2 - 流体管の離脱防止装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、水道管やガス管等の流体管同士の継手部に取付けられて、流体管同士の離脱を防止する離脱防止装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
流体管同士の継手部に取付けられる従来の離脱防止装置としては、例えば特開平9−119571号公報に開示されているような特殊押輪と称されているものがある。
【0003】
この従来の離脱防止装置は、図9に示すように、ダクタイル鋳鉄等の流体管1,2の一方の受口部1aに、円環状の押輪本体3を外嵌した他方の流体管2の端部を挿入し、押輪本体3の内面の凹部内に収容された弓形爪4を、押しボルト5により押圧することにより流体管2の外周面に食い込ませ、かつ受口部1aのフランジ部1bと押輪本体3とをボルト6とナット7とをもって締結して、パッキン8を受口部1a内に押し込むことにより、流体管1,2同士を離脱防止を図って、かつ水密性を保持して接続するものである。
【0004】
このような離脱防止装置においては、流体管2の外周面に塗布又は被覆された防錆皮膜が弓形爪4の食い込みにより剥離し、露出した金属部が腐食することを防止するために、押輪本体3におけるパッキン8と反対側の内周面端部にOリング9を設け、埋設土中の地下水等が弓形爪4の収容部内に侵入するのを防止している。
【0005】
図10は、上記従来の離脱防止装置における防錆構造の別実施例であり、爪10の刃部10aを挟む両側にOリング9,9を設けて、流体管2の外周面に圧接させ、流体管2の食込み部に水等が侵入するのを防止している。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
上述した従来のOリング9による防錆構造では、いずれも別体としてのOリング9が爪4及び爪10の刃部より離れて設けられており、しかも刃部が流体管に食い込んでからその外周面に強く圧接するようになるため、例えば軟弱地盤等、水分の多い地盤を掘り起こして既設流体管の交換工事を行う際等において、爪が流体管等に食い込む前、すなわちOリングが流体管の外周面に強く圧接される前に、土中の水分等が爪の刃部付近に侵入してしまう恐れがある。
【0007】
その結果、刃部付近に侵入した水等が、刃先の食い込みと同時に流体管の露出部(食い込み部)に侵入し、防錆効果が損なわれることが予想される。
【0008】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたもので、シール材を刃部と一体的に設けることにより、流体管の食込み部付近に隙間なく圧接させ、防錆効果を高めることができるようにした流体管の離脱防止装置を提供することを目的としている。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明の離脱防止装置は、一方の流体管の端部の受口部に挿入されて接続される他方の流体管の外周面に外嵌され、かつ内周面に円周方向を向く複数の弧状凹部を有する押輪本体と、前記弧状凹部内に収容され、内周側の先端部に流体管の外周面に食込み可能な刃部を有する弓形爪と、前記押輪本体に求心方向を向いて螺挿され、前記弓形爪の外周端を押圧することにより、刃部を流体管の外周面に食込ませる押しボルトとを備える流体管の離脱防止装置において、前記弓形爪の刃部の先端部に、その表面を被覆するように弾性シール部材が接着もしくは固着されており、この弾性シール部材における少なくとも前記刃部の先端部下方が、長手方向に延びる切れ目により前記刃部の前後方向に分割されていることを特徴としている。
上記構成の本発明によると、押しボルトを徐々にねじ込み、弓形爪が流体管に押動されるにしたがって、刃先がその両側に接着、もしくは固着された弾性シール部材の切れ目から突出して流体管の外周面に食込まれていく。この際、弾性部材が刃部の先端部と流体管の食込み部の至近位置に強く圧接されるので、水等が流体管の食込み部に侵入することはなく、その部分の防錆効果が高まる。
【0010】
上記離脱防止装置において、前記弾性シール部材の下面に、下方に開口する凹部が、前記切れ目の下端にかかるように形成されていることが好ましい。
このようにすると、シール部材における少なくとも切れ目付近が肉薄となり、刃部の流体管への食い込み時においてシール部材が刃部の前後方向に容易に分割されることになるため、押しボルトのねじ込みが容易になる。
【0011】
上記離脱防止装置において、前記弾性シール部材における刃部の先端部を覆う部分を幅広として、その部分の断面積を他の部分より大とするのが好ましい。
このようにすると、切断されたシール部材と流体管との接触面積が増大するので、防錆効果はより高まる。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。なお、上述した従来例と同様の部材には、同じ符号を付して説明する。
【0013】
図1は、本発明の離脱防止装置、すなわち特殊押輪の円環状をなす押輪本体3の一部を示すもので、従来と同様、一方の流体管(図示略)の端部外周面に外嵌されて、他方の流体管に結合されるものである。
【0014】
押輪本体3の内面には、求心方向を向く複数の仕切片3aが円周方向に等間隔おきに突設され、その先端の両壁面の中央部には、円周方向を向く短寸の係止片3b,3bが連設されている。
【0015】
隣り合う各仕切片3a,3aとの間には、後記する弓形爪13を収容するための内向コ字形の弧状凹部11が形成されている。押輪本体3における周壁には、各凹部11の中央部に向かって進退可能な求心方向を向く押しボルト5が螺挿されている。
【0016】
また、各仕切片3aと対応する部分の周壁には、押輪本体3を他方の流体管のフランジ部(図示略)に結合するためのボルトの挿通孔12が穿設されている。
【0017】
上記各凹部11内には、図2ないし図4に示すような弓形爪13が着脱可能として収容されるようになっている。弓形爪13は、内周部にナイフエッヂ状の刃部13aを有するとともに、円周方向の上部両端に係止突部14を突設して構成され、両係止突部14,14の端部間の寸法は、上記押輪本体3の凹部11内に内向きに突設された係止片3b,3bの離間寸法よりも若干大としてある。
【0018】
この弓形爪13には、ゴム製のシール部材15が、その両周端部に連設された弾性筒部15a,15aを弓形爪13の両係止突部14に嵌合することにより装着され、刃部13aの表面13b、13cと円周方向の両端面とが被覆されている。
【0019】
詳しくは、図4に示されるように、弾性シール部材15における前記刃部13aの先端部T下方には、上下方向を向く切れ目Cが、弾性シール部材15の長手方向にわたって連続して設けられており、シール部材15における下部は切れ目Cを介して先端部Tの前後方向に分割されている。
そして、シール部材15における刃部13aの表面13b、13cを覆う部分は、接着剤により表面13b、13cに強固に接着されている。なお、この場合、表面13b、13cにおける先端部T近傍のみは接着せず、非接着部として残すようにすると良い。
【0020】
弓形爪13を押輪本体3の凹部11に収容するには、図5に示すように、弓形爪13の一端部をまず凹部11内に挿入したのち、他端部を、シール部材15の両端の弾性筒部15aを圧縮させながら挿入すれば、容易に収容することができる。
【0021】
収容後においては、係止突部14に嵌合した弾性筒部15aが、押輪本体3の係止片3bに係止されるので簡単に抜け外れる恐れはない。
【0022】
図6に示すように、弓形爪13を全ての凹部11に収容した押輪本体3を流体管2に外嵌し、押しボルト5をねじ込むと、弓形爪13が求心方向に押圧されてシール部材15の下端部が流体管2の外周面に圧接される。
【0023】
この状態でさらに押しボルト5をねじ込むと、図7に示すように、刃部13aの先端部Tが切れ目Cより突出して流体管2の外周面に食い込まれ、押輪本体3が流体管2に固定されることになる。
【0024】
前述のように、シール部材15は刃部13aの表面13b、13cに強固に接着されているので、この刃部13aの先端部T部分のみが表面から剥離し、他の部分は刃部13aとともに流体管2と刃部13aとの間で圧縮させられて、それらの表面に隙間なく圧接するので、埋設した土中の水等が流体管2の食込み部に侵入することはない。また、刃部13aの表面13b、13cがシール部材15により隙間無く覆われていても、刃部13aが流体管2に押動されるにしたがって、その先端部Tが切れ目Cを介して流体管2の外周面に確実に食い込まれるので、押輪本体3が流体管2に固定されることになる。
なお、前述のようにシール部材15における刃部13aの先端部T付近を非接着部としておけば、先端部Tの流体管2への深く食い込みがシール部材15により邪魔されることなく深く食い込むので、防錆効果が高まるばかりか、食込み部の腐食が防止される。
【0025】
図8には、シール部材15の変形例が示されている。このシール部材15における刃部13aの先端部T下方部分は、前述の実施例よりも幅広で、かつ下方に延出されているとともに、この下面部15bには、切れ目Cにより前後に分割される凹部16が、シール部材15の長手方向にわたって形成されている。
このようにすると、刃部13aの先端部Tがシール部材15により確実に覆われるため、流体管2に押圧されるまでに先端部Tに水が進入しにくくなるばかりか、シール部材15と流体管2との接触面積も増大することから、防錆効果をより高めることができる。
また、このようにシール部材15を幅広としても、少なくとも切れ目C付近が肉薄となり、刃部13aの流体管2への食い込み時においてシール部材2が刃部の前後方向に容易に分割されることになるため、押しボルト5のねじ込みが容易になる。
【0026】
また、このような凹部16の形状は任意であり、種々に変形可能であるばかりか、上記したように下面部15bの長手方向に連続して形成されていなくても、下面部15bにおける適宜箇所に複数形成されていてもよい。
【0027】
本発明は、上記実施例に限定されるものではなく、種々の実施形態をとり得る。
例えば上記実施例では、シール部材15を接着剤により刃部13aに固着しているが、モールド(加硫)成形や焼付け等により一体的に固着してもよい。
【0028】
シール部材15全体を弓形爪13に固着する際は、係止突部14のない弓形爪にも適用しうる。この場合、弾性筒部15aと同方向に突出する弾性部材(筒状でなくてもよい)を連設しておけばよい。
また、シール部材15を、刃部13aに固着される部分と係止突部14に嵌合される部分とに分割してもよい。
【0029】
係止突部14の形状を、本願出願人が特開平6−241360号公報において開示している薄肉突起状とし、凹部11よりの脱落を防止しうる構造とすれば、シール部材15の弾性筒部15aを省略し、刃部13aの接着部のみとすることもできる。
【0030】
【発明の効果】
本発明によれば、次のような効果が得られる。
【0031】
(a)請求項1に記載の発明によれば、押しボルトを徐々にねじ込み、弓形爪が流体管に押動されるにしたがって、刃先がその両側に接着、もしくは固着された弾性シール部材の切れ目から突出して流体管の外周面に食込まれていく。この際、弾性部材が刃部の先端部と流体管の食込み部の至近位置に強く圧接されるので、水等が流体管の食込み部に侵入することはなく、その部分の防錆効果が高まる。
【0032】
(b)請求項2に記載の発明によれば、シール部材における少なくとも切れ目付近が肉薄となり、刃部の流体管への食い込み時においてシール部材が刃部の前後方向に容易に分割されることになるため、押しボルトのねじ込みが容易になる。
【0033】
(c)請求項3に記載の発明によれば、切断されたシール部材と流体管との接触面積が増大するので、防錆効果はより高まる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明における押輪本体の一部切欠正面図である。
【図2】弓形爪及びそれに取付けられたシール部材の正面図である。
【図3】弓形爪の平面図である。
【図4】同じく、図2のIV−IV線の拡大縦断側面図である。
【図5】弓形爪を押輪本体の凹部内に収容した状態の拡大縦断部分正面図である。
【図6】同じく、弓形爪を流体管に食込ませた状態の拡大縦断部分正面図である。
【図7】同じく、図6のVII−VII線の縦断側面図である。
【図8】シール部材の変形例を備える弓形爪の縦断側面図である。
【図9】従来の離脱防止装置を示す縦断側面図である。
【図10】同じく、従来の他の実施例を示す要部の縦断側面図である。
【符号の説明】
1,2 流体管
3 押輪本体
3a 仕切片
3b 係止片
5 押しボルト
11 凹部
12 挿通孔
13 弓形爪
13a 刃部
13b、13c 表面
14 係止突部
15 シール部材(弾性シール部材)
15a 弾性筒部
15b 下面部
16 凹部
C 切れ目
T 先端部
Claims (3)
- 一方の流体管の端部の受口部に挿入されて接続される他方の流体管の外周面に外嵌され、かつ内周面に円周方向を向く複数の弧状凹部を有する押輪本体と、前記弧状凹部内に収容され、内周側の先端部に流体管の外周面に食込み可能な刃部を有する弓形爪と、前記押輪本体に求心方向を向いて螺挿され、前記弓形爪の外周端を押圧することにより、刃部を流体管の外周面に食込ませる押しボルトとを備える流体管の離脱防止装置において、
前記弓形爪の刃部の先端部に、その表面を被覆するように弾性シール部材が接着もしくは固着されており、この弾性シール部材における少なくとも前記刃部の先端部下方が、長手方向に延びる切れ目により前記刃部の前後方向に分割されていることを特徴とする流体管の離脱防止装置。 - 前記弾性シール部材の下面に、下方に開口する凹部が、前記切れ目の下端にかかるように形成されている請求項1に記載の流体管の離脱防止装置。
- 前記弾性シール部材における刃部の先端部を覆う部分を幅広として、その部分の断面積を他の部分より大とした請求項1または2に記載の流体管の離脱防止装置。
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