JP4325745B2 - ポリエステル製造用固体酸触媒、及びそれを用いるポリエステルの製造方法 - Google Patents
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Description
そこで、有機金属化合物からなる高活性な有機酸系触媒を用いて少量でもエステル化反応を促進させる効果を有する技術が提案されている(例えば特許文献1参照)。しかしこの提案には、やはり触媒の使用量に制限があるため、十分な量の触媒を使用することができず、大幅な製造時間の短縮は期待できない。
本発明の特定の固体酸触媒(以下、触媒(C)あるいは、固体酸触媒(C)と言う)を用いてポリエステル化反応を行うことによって、
(1)触媒(C)が固体であるため触媒と目的物のポリエステルとの単離が容易であり、触媒の回収・再利用可能なので、使用できる触媒量に制限がなく、従来の均一系触媒に比べ、触媒を多量に用いることができ、生産性が向上し、工業的に有利である。
(2)ポリエステル合成後に触媒(C)を単離することで、ポリエステル内に触媒が残らず、金属フリーなポリエステルを得ることができる。
(3)現在使用されている触媒に比べ、より低温で縮合反応をすることができるので、ポリエステルを合成する際に要するエネルギーを減少することが可能である。
等の効果が得られる。
本発明の触媒(C)は、金属酸化物担体(A)表面に担持金属酸化物(B)を担持してなる固体酸触媒である。
この金属酸化物担体(A)としては、触媒の設計・装飾の容易性、触媒能を充分に発揮するか否か、ポリエステルもしくはその原料への溶解性などの点から、ジルコニア(二酸化ジルコニウム、ZrO2)を用いる。また、このジルコニアは、シリカ(SiO2)、アルミナ(Al2O3)、チタニア(TiO2)、酸化スズ(SnO2、SnO)、酸化ハフニウム(HfO2)、酸化鉄(Fe2O3、Fe3O4)、又はゼオライト等を併用したものであっても良い。これらを併用する場合、触媒(C)中のジルコニアの含有量が、モル比で10%以上含んでいることが好ましく、さらに好ましくは30%以上含んだものである。なぜなら、これより少ないと、触媒(C)が、ポリエステル樹脂へ溶解することが問題となり、ポリエステル製造用固体酸触媒として使用し難くなるからである。
本発明の触媒(C)の金属元素であるMo/Zr(Moはモリブデン、Zrはジルコニウム)比は、質量比で0.01〜0.40が好ましい。この範囲より少ないと、反応場となる触媒の活性点としての、モリブデン酸ジルコニアが充分に形成されず、触媒能を充分に発揮しないからである。また、この範囲を超えると、担体であるジルコニア表面に比べ、担持するモリブデン酸化物が多すぎ、モリブデン酸化物はジルコニア表面に多層に担持されることになり、結果として触媒能を充分に発揮できなくなるからである。これらの観点から、Mo/Zrの質量比はさらに好ましくは0.1〜0.2である。
ハメットの酸度関数は、電気的に中性の塩基Bが水溶液中で下記式のように結合する。
B + H+ ⇔ BH+
そして、BH+の酸解離定数をpKBH+とし、Bをある溶液に入れたときH+と結合する割合をCBH+、結合しない割合をCBとすると、ハメットの酸度関数(H0)は下記式で表される。
H0=−pKBH+ +log(CBH+/CB)
本発明の触媒(C)のハメットの酸度関数(H0)は、−3〜−9のものである。ハメットの酸度関数(H0)は、水溶液の酸・塩基の強さがpHで表されるように、固体表面の酸・塩基点の強度を表す指標になる。この関数は、水溶液中ではpH=H0であるため、その強度が直感的に理解され、また、実験操作が簡便であるため広く受け入れられている。H0の値が小さい程強い酸性を示し、H0の値が大きい程強い塩基性を示している。
本発明におけるエステル化反応系では、本発明の固体酸触媒(C)の酸度関数(H0)が−3より大き過ぎると触媒活性を示さず、エステル化反応が進行しにくくなり、ポリエステル製造触媒として使用できない。一方、本発明の固体酸触媒(C)の酸度関数(H0)が−9より小さ過ぎるとグリコールの分子内脱水による炭素−炭素二重結合の生成、さらにはこの二重結合とグリコールによるエーテル化反応などの副反応を起こすおそれがあり、ポリエステル製造固体酸触媒として好ましくないからである。
測定方法:
試料として固体酸触媒 0.1gを日本ベル製TPD-AT-1型昇温脱離装置の石英セル(内径10 mm)にセットし、ヘリウムガス (30 cm3 min-1, 1 atm)流通下で423 K (150℃)まで5 K min-1で昇温し、423 Kで3時間保った。その後ヘリウムガスを流通させたまま373 K (100℃)まで7.5 K min-1で降温した後に真空脱気し、100 Torr (1 Torr = 1/760 atm = 133 Pa)のNH3を導入して30分間吸着させ、その後12 分間脱気した後に水蒸気処理を行った。水蒸気処理としては、373 Kで約25 Torr (約3 kPa)の蒸気圧の水蒸気を導入、そのまま30分間保ち、30分間脱気、再び30分間水蒸気導入、再び30分間脱気の順に繰り返した。その後ヘリウムガス 0.041 mmol s-1 (298 K, 25℃, 1 atmで60 cm3 min-1に相当する)を減圧(100 Torr)を保ちながら流通させ、373 Kで30分間保った後に試料床を10 K min-1で983 K (710℃)まで昇温し、出口気体を質量分析計(ANELVA M-QA 100F)で分析した。
測定に際しては質量数(m/e) 2, 4, 14, 15, 16, 17, 18, 26, 27, 28, 29, 30, 31, 32, 44のマススペクトルを全て記録した。終了後に1 mol %-NH3/He標準ガスをさらにヘリウムで希釈してアンモニアガス濃度0, 0.1, 0.2, 0.3, 0.4 mol %、合計流量が0.041 mmol s-1となるようにして検出器に流通させ、スペクトルを記録し、アンモニアの検量線を作成して検出器強度を補正した。昇温脱離時に測定した主な各質量スペクトルのアンモニア離脱TPDスペクトルから、実測に基づく1点法で、ピーク面積から酸量、ピーク位置などから平均酸強度を決定する。酸量と酸強度(ΔH)を算出し、酸度関数(H0)を計算した。
測定装置:表面張力計K12(クルス社製)の粉体濡れ速度測定用オプションで、
測定方法:試料(触媒)2.5gをサンプル管に詰め溶剤の浸透速度を測定した。
ヘキサンの接触角が0°であると仮定してファクターを求め、水の濡れ速度から水の接触角を測定した。下記数1のウォッシュバーンの式から計算した。
その平均粒径が1μmの場合、固体酸触媒(C)を充填したカラム内を水が浸透する速度(浸透速度法)から算出された水との接触角が、30°〜110°であることがポリエステル製造用固体酸触媒(C)として好ましい。より好ましくは接触角70°〜90°である。
平衡吸着法は、金属酸化物担体(A)を担持させる金属の溶液に浸して吸着させた後、過剰分の溶液を濾別する方法である。担持量は溶液濃度と細孔容積で決まる。担体を加えるにつれて溶液の組成が変化するなどの問題がある。
インシピエント・ウェットネス(Incipient Wetness)法は、金属酸化物担体(A)を排気後、細孔容積分の担持させる金属の溶液を少しずつ加えて金属酸化物担体(A)の表面が均一に濡れた状態にする方法である。金属元素の担持量は溶液濃度で調節する。
蒸発乾固法は、金属酸化物担体(A)を溶液に浸した後、溶媒を蒸発させて溶質を担持する方法である。担持量を多くできるが、担体と弱く結合した金属成分は乾燥時に濃縮されて還元処理後には大きな金属粒子になりやすい。
これらの中で、触媒の特性を考慮しつつ担持方法を選ぶことが好ましく、本発明の固体酸触媒(C)では、インシピエント・ウェットネス(Incipient Wetness)法もしくは蒸発乾固法が好ましく用いられる。
触媒の除去方法としては、特別な操作は特に無い。例えば回分式反応器を用いた場合は、簡単な濾過操作で行え、固定床流通式反応器を用いた場合はそういった濾過操作の必要も無く、固体酸触媒を充填したカラム内を流通して得られたポリエステル、ポリエステル樹脂、不飽和ポリエステル中に固体酸触媒(C)が残らない製造方法である。
一方、流通式反応器は、定常的な流通操作によって、物質の損失を少なくし、反応状態を安定にしてポリエステル、ポリエステル樹脂、不飽和ポリエステルの品質を一定に保ち、生産費を低減させることが可能であり、ポリエステル樹脂を連続的に製造する方法としてはより有利である。
これらの反応器のうち、反応終了後に触媒の回収を特殊な操作をする必要なく行える固定床流通式反応器もしくは流動床流通式反応器を用いるのが特に好ましい。
しかしながら、本発明の固体酸触媒(C)は、低温例えば、115℃でも縮重合反応を進行させることが可能であり(実施例参照)、本発明の固体酸触媒(C)を用いることで従来に比べ低温で、エステル化反応をすることが可能となるため、省エネルギー化の観点から工業的に有利である。
製造方法としては、100℃で一晩乾燥させた水酸化ジルコニウム(Zr(OH)4、日本軽金属工業製)50gを、純水にモリブデン酸アンモニウム[(NH4)6Mo7O24・4H2O(キシダ化学製)]を必要量溶かした水溶液(0.04mol・dm-3)を用い、水酸化ジルコニウムの細孔容積分の前記モリブデン酸アンモニウム水溶液を少しずつ加えてジルコニウム担体表面が均一に濡れた状態にして焼成前の前駆体を得た(インシピエント・ウェットネス法)。三酸化モリブデン(MoO3)の担持量が、質量比でMo/Zr=0.1となるように溶液濃度で調節した。反応前処理として酸素雰囲気下で焼成温度1073Kで3時間焼成を行った。自然放置冷却し、常温にして、固体酸触媒Aを得た。
焼成温度を673Kに変えた以外は上記実施例1と同様に調製し、固体酸触媒Bを得た。
焼成温度を773Kに変えた以外は上記実施例1と同様に調製し、固体酸触媒Cを得た。
焼成温度を873Kに変えた以外は上記実施例1と同様に調製し、固体酸触媒Dを得た。
焼成温度を973Kに変えた以外は上記固体酸触媒Aと同様に調製し、固体酸触媒Eを得た。
<NH3−TPD測定によるH0関数の測定方法>
測定方法:
試料(固体酸触媒A及び固体酸触媒B)約0.1 gを日本ベル製TPD-AT-1型昇温脱離装置の石英セル(内径10 mm)にセットし、ヘリウムガス (30 cm3 min-1, 1 atm)流通下で423 K (150℃)まで5 K min-1で昇温し、423 Kで3時間保った。その後ヘリウムガスを流通させたまま373 K (100℃)まで7.5 K min-1で降温した後に真空脱気し、100 Torr (1 Torr = 1/760 atm = 133 Pa)のNH3を導入して30分間吸着させ、その後12 分間脱気した後に水蒸気処理を行った。水蒸気処理としては、373 Kで約25 Torr (約3 kPa)の蒸気圧の水蒸気を導入、そのまま30分間保ち、30分間脱気、再び30分間水蒸気導入、再び30分間脱気の順に繰り返した。その後ヘリウムガス 0.041 mmol s-1 (298 K, 25℃, 1 atmで60 cm3 min-1に相当する)を減圧(100 Torr)を保ちながら流通させ、373 Kで30分間保った後に試料床を10 K min-1で983 K (710℃)まで昇温し、出口気体を質量分析計(ANELVA M-QA 100F)で分析した。
どちらの試料でも、500 K付近にアンモニアの脱離を示すm/e = 16のピークが見られ、さらに固体酸触媒Aでは900 K以上、固体酸触媒Bでは780 K付近に小さなm/e = 16のショルダーが見られる。しかし、これら高温のショルダーの出現と同時に、m/e = 44の大きなピーク(CO2のフラグメント)およびm/e = 28 (CO2のフラグメント+N2)も見られていることから、高温のショルダーはCO2のフラグメントによるものであって、アンモニアによるものではないと考えられる。そこで、後述のアンモニアの定量ではこの部分を除いた。
図3には、m/e = 16から算出したアンモニアTPDスペクトルを示した。これらのスペクトルから酸量と酸強度(ΔH)を算出し、表−1に示した。
実測に基づく1点法では、ピーク面積から酸量、ピーク位置などから平均酸強度を決定できる。この方法によると質量当たりの固体酸触媒Aの酸量は約0.03 mol kg-1、固体酸触媒Bの酸量は約0.2 mol kg-1と差があるように思われるが、表面密度(酸量/表面積)は固体酸触媒A, Bとも0.4〜0.7 nm-2程度であった。平均酸強度は固体酸触媒AがΔH = 133 kJ mol-1、H0に換算して−7.4に対して、固体酸触媒BがΔH = 116 kJ mol-1、H0に換算して−4.4とやや弱かった。
試験方法:測定装置:表面張力計K12(クルス社製)の粉体濡れ速度測定用オプション
測定方法:試料約2.5gをサンプル管に詰め溶剤の浸透速度を測定した。
ヘキサンの接触角が0°であると仮定してファクターを求め、水の濡れ速度から水の接触角を測定した。(ウォッシュバーンの式)
触媒:固体酸触媒A 平均粒径1μm
固体酸触媒B 平均粒径1μm
固体酸触媒D 平均粒径1μm
結果を表2に示した。
ウォッシュバーンの式
〈実施例6〉(ポリエステルの合成)
三角フラスコに1,4−ブタンジオール24.5質量部とアジピン酸34.8質量部を仕込み、触媒として固体酸触媒A 0.59質量部を添加した。反応温度180℃に維持し、常圧下、振とう機中で振とうさせながら恒温のオイルバス中で反応を行った。
三角フラスコに1,4−ブタンジオール24.5質量部とアジピン酸34.8質量部を仕込み、触媒として固体酸触媒B0.59質量部を添加した。反応温度180℃に維持し、常圧下、振とう機中で振とうさせながら恒温のオイルバス中で反応を行った。
三角フラスコに1,4−ブタンジオール24.5質量部とアジピン酸34.8質量部を仕込み、触媒として固体酸触媒C 0.59質量部を添加した。反応温度180℃に維持し、常圧下、振とう機中で振とうさせながら恒温のオイルバス中で反応を行った。
三角フラスコに1,4−ブタンジオール24.5質量部とアジピン酸34.8質量部を仕込み、触媒として固体酸触媒D 0.59質量部を添加した。反応温度180℃に維持し、常圧下、振とう機中で振とうさせながら恒温のオイルバス中で反応を行った。
三角フラスコに1,4−ブタンジオール24.5質量部とアジピン酸34.8質量部を仕込み、触媒として固体酸触媒E 0.59質量部を添加した。反応温度180℃に維持し、常圧下、振とう機中で振とうさせながら恒温のオイルバス中で反応を行った。
以上の結果を、表3にまとめて記載した。焼成温度が900K〜1100Kであると、ポリエステル転化率が大きくなることがわかった。
セパラブルフラスコに1,4−ブタンジオール82.28質量部とアジピン酸117.72質量部を仕込み、触媒として固体酸触媒Aを2.00質量部添加した。セパラブルフラスコを閉じ、反応温度180℃に維持し、−95KPaの減圧下、300rpmの回転数で撹拌しながら、恒温のオイルバス中で反応を行った。合成終了後、得られたポリエステルを溶剤(トルエン)で溶かし、濾過することにより触媒の単離・回収を行った。
セパラブルフラスコに1,4−ブタンジオール82.28質量部とアジピン酸117.72質量部を仕込み、触媒として固体酸触媒Aを2.00部添加した。セパラブルフラスコを閉じ、反応温度115℃に維持し、−95KPaの減圧下、300rpmの回転数で撹拌しながら恒温のオイルバス中で反応を行った。
三角フラスコに1,4−ブタンジオール28.1質量部とコハク酸32.7質量部を仕込み、触媒として固体酸触媒A 0.61質量部を添加した。反応温度180℃に維持し、常圧下、振とう機中で振とうさせながら恒温のオイルバス中で反応を行った。
三角フラスコに1,4−ブタンジオール20.6質量部とアゼライン酸37.1質量部を仕込み、触媒として固体酸触媒A 0.58質量部を添加した。反応温度180℃に維持し、常圧下、振とう機中で振とうさせながら恒温のオイルバス中で反応を行った。
三角フラスコに1,4−ブタンジオール19.6質量部とセバシン酸37.7質量部を仕込み、触媒として固体酸触媒A 0.57質量部を添加した。反応温度180℃に維持し、常圧下、振とう機中で振とうさせながら恒温のオイルバス中で反応を行った。
三角フラスコに1,4−ブタンジオール17.9質量部と1,12ドデカンジカルボン酸38.7質量部を仕込み、触媒として固体酸触媒A 0.57質量部を添加した。反応温度180℃に維持し、常圧下、振とう機中で振とうさせながら恒温のオイルバス中で反応を行った。
三角フラスコに1,4−ブタンジオール9.3質量部とダイマー酸43.7質量部を仕込み、触媒として固体酸触媒A0.53質量部を添加した。反応温度180℃に維持し、常圧下、振とう機中で振とうさせながら恒温のオイルバス中で反応を行った。
三角フラスコに1,4−ブタンジオール24.2質量部と無水フタル酸35.0質量部を仕込み、触媒として固体酸触媒A 0.59部を添加した。反応温度180℃に維持し、常圧下、振とう機中で振とうさせながら恒温のオイルバス中で反応を行った。
三角フラスコにエチレングリコール19.6質量部とアジピン酸41.1質量部を仕込み、冷却管をセットし、反応温度を180℃に維持した恒温のオイルバス中で、常圧下、振とう機中で振とうさせながら反応を行った。反応開始から3.5h後に固体酸触媒A 0.61部を添加し、さらに2時間後冷却管をはずした。
三角フラスコに1,6−ヘキサンジオール28.1質量部とアジピン酸30.1質量部を仕込み、冷却管をセットし、反応温度を180℃に維持した恒温のオイルバス中で、常圧下、振とう機中で振とうさせながら反応を行った。反応開始から3.5時間後に固体酸触媒A 0.58部を添加し、さらに2時間後冷却管をはずした。
三角フラスコにネオペンチルグリコール26.4質量部とアジピン酸32.3質量部を仕込み、冷却管をセットし、反応温度を180℃に維持した恒温のオイルバス中で、常圧下、振とう機中で振とうさせながら反応を行った。反応開始から3.5時間後に固体酸触媒A 0.59質量部を添加し、さらに2時間後冷却管をはずした。
三角フラスコにジエチレングリコール26.7質量部とアジピン酸32.0質量部を仕込み、冷却管をセットし、反応温度を180℃に維持した恒温のオイルバス中で、常圧下、振とう機中で振とうさせながら反応を行った。反応開始から3.5時間後に固体酸触媒A 0.59質量部を添加し、さらに2時間後冷却管をはずした。
三角フラスコに2−メチル−1,3−プロパンジオール24.5質量部とアジピン酸34.8部を仕込み、冷却管をセットし、反応温度を180℃に維持した恒温のオイルバス中で、常圧下、振とう機中で振とうさせながら反応を行った。反応開始から3.5時間後に固体酸触媒A 0.59質量部を添加し、さらに2時間後冷却管をはずした。
三角フラスコに3−メチル−1,5−ペンタンジオール28.1質量部とアジピン酸30.1質量部を仕込み、冷却管をセットし、反応温度を180℃に維持した恒温のオイルバス中で、常圧下、振とう機中で振とうさせながら反応を行った。反応開始から3.5時間後に固体酸触媒A 0.58質量部を添加し、さらに2時間後冷却管をはずした。
三角フラスコに1,3−プロピレングリコール22.2質量部とアジピン酸37.8質量部を仕込み、冷却管をセットし、反応温度を180℃に維持した恒温のオイルバス中で、常圧下、振とう機中で振とうさせながら反応を行った。反応開始から3.5時間後に固体酸触媒A 0.60質量部を添加し、さらに2時間後冷却管をはずした。
三角フラスコにジエチレングリコール26.5質量部と無水フタル酸32.1質量部を仕込み、冷却管をセットし、反応温度を180℃に維持した恒温のオイルバス中で、常圧下、振とう機中で振とうさせながら反応を行った。反応開始から3.5時間後に固体酸触媒A 0.53質量部を添加し、さらに2時間後冷却管をはずした。
三角フラスコに2−メチル−1,3−プロパンジオール9.3質量部とダイマー酸43.7質量部を仕込み、冷却管をセットし、反応温度を180℃に維持した恒温のオイルバス中で、常圧下、振とう機中で振とうさせながら反応を行った。反応開始から3.5時間後に固体酸触媒A 0.53質量部を添加し、さらに2時間後冷却管をはずした。
5LのSUS製釜にジエチレングリコール431.50質量部、テレフタル酸231.8質量部、アジピン酸85.0質量部、固体酸触媒Aを12.7質量部仕込み、窒素導入管より窒素ブローしながら215℃まで昇温し、12時間反応を進行させた。反応中、酸価を2時間毎に追跡し、酸価が3以下になったのを確認後、温度が150度になるまで冷却し、無水フタル酸137.7質量部及び無水マレイン酸114.1質量部を加え、205度まで再昇温させ、さらに反応を9時間進行させた。酸価が33以下になったのを確認後、トルハイドロキノン30ppm、ナフテン酸銅10ppmを添加し、スチレンで希釈し不揮発分60%の液状樹脂を得た。
以上の結果を、表4にまとめて記載した。いずれの多価アルコール、多塩基酸でもポリエステル用触媒となりうることを確認した。
三角フラスコに1,4−ブタンジオール15.45質量部とアジピン酸29.4質量部を仕込み、触媒として固体酸触媒Aを0.45部添加し、冷却管をセットし、反応温度180℃、常圧下、振とう機中で振とうさせながら恒温のオイルバス中で反応を行った。反応から1時間毎にサンプリングし、酸価を測定した。
三角フラスコに1,4−ブタンジオール20.6質量部とアジピン酸29.4質量部を仕込み、触媒として固体酸触媒Aを0.50部添加し、冷却管をセットし、反応温度180℃、常圧下、振とう機中で振とうさせながら恒温のオイルバス中で反応を行った。反応から1時間毎にサンプリングし、酸価を測定した。
三角フラスコに1,4−ブタンジオール25.75質量部とアジピン酸29.4質量部を仕込み、触媒として固体酸触媒Aを0.55部添加し、冷却管をセットし、反応温度180℃、常圧下、振とう機中で振とうさせながら恒温のオイルバス中で反応を行った。反応から1時間毎にサンプリングし、酸価を測定した。
三角フラスコに1,4−ブタンジオール20.6質量部とアジピン酸36.75質量部を仕込み、触媒として固体酸触媒Aを0.57部添加し、冷却管をセットし、反応温度180℃、常圧下、振とう機中で振とうさせながら恒温のオイルバス中で反応を行った。反応から1時間毎にサンプリングし、酸価を測定した。
三角フラスコに1,4−ブタンジオール20.6質量部とアジピン酸22.05質量部を仕込み、触媒として固体酸触媒Aを0.43部添加し、冷却管をセットし、反応温度180℃、常圧下、振とう機中で振とうさせながら恒温のオイルバス中で反応を行った。反応から1時間毎にサンプリングし、酸価を測定した。
Rate=k[1,4BG]0.1[AA]0.8
で見積もることができる。無触媒下での反応速度式は、
Rate=k[1,4BG]1[AA]1
であるので、この触媒系では、1,4BGに対する反応次数が1→0.1となることから活性点に1,4BGが吸着していることが解かり、AAに対する反応次数は1→0.8となったことからAAが吸着し難いことが解かる。反応次数が小数点となっているが、これは、エステル化反応が、触媒表面および触媒表面外で進行しており、それらの合算値として計算されたためであると考えられる。またこれらの反応次数から、触媒表面には1,4BGが強く吸着されることがわかる。
よって、この触媒系におけるエステル化反応機構は、まず1,4BGが触媒表面の活性点に解離吸着し、続いてAAがその活性点と接触、反応することでエステル化反応が進行していると推定できる。エステル化反応機構の概念図を図5に示す。
三角フラスコに1,4−ブタンジオール24.5質量部とアジピン酸34.8質量部を仕込み、固体超強酸として硫酸根ジルコニア(以下これをSO4 2-/ZrO2と記す, 第一希元素化学製, lotNo.G18088)を0.59質量部添加した。反応温度180℃に維持し、常圧下、振とう機中で振とうさせながら恒温のオイルバス中で反応を行った。このSO4 2-/ZrO2の酸強度は、ハメットの酸度関数H0で表した時に、H0=−11.93であり、いわゆる固体超強酸である。
セパラブルフラスコに1,4−ブタンジオール82.28質量部とアジピン酸117.72質量部を仕込み、Ti(OC3H7)4を0.04質量部添加した。セパラブルフラスコを閉じ、反応温度180℃に維持し、−95KPaの減圧下、300rpmの回転数で撹拌しながら恒温のオイルバス中で反応を行った。
セパラブルフラスコに1,4−ブタンジオール82.28質量部とアジピン酸117.72質量部を仕込み、Ti(OC3H7)4を0.04部添加した。セパラブルフラスコを閉じ、反応温度115℃に維持し、−95KPaの減圧下、300rpmの回転数で撹拌しながら恒温のオイルバス中で反応を行った。
三角フラスコに1,4−ブタンジオール24.5質量部とアジピン酸34.8質量部を仕込み、無触媒で、反応温度を180℃に維持し、常圧下、振とう機中で振とうさせながら恒温のオイルバス中で反応を行った。
比較例として既存の触媒を使用してポリエステル樹脂を製造した結果を表5に示した。比較例3のごとく、既存のチタン系触媒或いは無触媒では、反応温度115℃でポリエステル樹脂が生成しないことが解る。
固体酸触媒を用いて合成したポリエステルの副反応・残留触媒について検討する。
副反応の解析には、実施例6〜12と比較例1で合成したポリエステルの副生成物の定量・残留触媒の分析を行った。結果を表6に示した。
実施例11と比較例2で合成したポリエステルの残留触媒量を蛍光X線分析装置を用いて定量した。結果を表6に示す。
上記表6の実施例及び比較例より、以下の諸点が確認できた。
(1)本発明の触媒はポリエステルの選択率が99.9%以上(副生成物が検出限界以下)と極めて良好である。また反応速度も、通常の酸触媒ほどではないが、大量に用いても濾別・再利用可能なことから、それらをカバーし、かつ金属フリーなポリエステルを合成できる。
(2)本発明の固体酸触媒は、酸強度を示すH0関数で表記すると、H0=−3〜−9である。
(3)本発明の固体酸触媒の水との接触角は70°〜90°の範囲である。
(4)焼成温度が触媒の濡れ性と関係しており、これが触媒活性に影響していることがわかった。反応速度は、900〜1100K付近で最適となる。
(5)現在使用されているチタン系均一触媒に比べ、より低温でポリエステルを合成することが可能である。
B 固体酸触媒B
Claims (9)
- 金属酸化物からなる担体(A)に金属酸化物(B)を担持させて得られる固体酸触媒において、前記金属酸化物からなる担体(A)がジルコニアで、前記金属酸化物(B)がモリブデン酸化物であり、ハメットの酸度関数(H0)が、−3〜−9であることを特徴とするポリエステル製造用固体酸触媒。
- 水との接触角が、30°〜110°(浸透速度法)である請求項1に記載のポリエステル製造用固体酸触媒。
- 前記金属酸化物(B)が、ジルコニウムを含有するモリブデン酸化物である請求項1〜2いずれかに記載のポリエステル製造用固体酸触媒。
- 前記ジルコニウムを含有するモリブデン酸化物が、モリブデン酸ジルコニアである請求項3に記載のポリエステル製造用固体酸触媒。
- 請求項1〜4いずれかに記載のポリエステル製造用固体酸触媒を用いたことを特徴とするポリエステルの製造方法。
- 多価アルコール(D)及び多価カルボン酸(E)を、請求項1から4いずれかに記載のポリエステル製造用固体酸触媒を有する固定床流通式反応器を用いて反応させることを特徴とするポリエステルの製造方法。
- 多価アルコール(D)及び多価カルボン酸(E)を、請求項1から4いずれかに記載のポリエステル製造用固体酸触媒を有する流動床流通式反応器を用いて反応させることを特徴とするポリエステルの製造方法。
- 多価アルコール(D)及び多価カルボン酸(E)を、請求項1から4いずれかに記載のポリエステル製造用固体酸触媒を有する回分式反応器を用いて反応させることを特徴とするポリエステルの製造方法。
- 請求項1〜4いずれかに記載のポリエステル製造用固体酸触媒を用いたことを特徴とする不飽和ポリエステルの製造方法。
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