JP5195223B2 - ポリエステルの製造方法 - Google Patents
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(1)熱分解性カルボン酸であるシュウ酸、マロン酸を原料として耐溶剤性に優れたポリエステル樹脂を効率よく生産できる。
(2)ポリエステル樹脂の製造が容易にでき、触媒の回収・再利用可能なので、使用できる触媒量に制限がなく、従来の均一系触媒に比べ、触媒を多量に用いることができ、生産性が向上し、工業的に有利である。
(3)現在使用されている触媒に比べ、反応温度がより低温でポリエステルを合成することが可能である。
等の効果が得られる。
本発明で使用する固体酸触媒(C)は、金属酸化物担体(c1)と担持金属酸化物(c2)とからなるものである。
この金属酸化物担体(c1)としては、触媒の設計・装飾の容易性、触媒能を充分に発揮するか否か、酸性溶液への溶解性などの点から、ジルコニア(二酸化ジルコニウム、ZrO2)を用いる。また、このジルコニアは、シリカ(SiO2)、アルミナ(Al2O3)、チタニア(TiO2)又はゼオライト等を併用したものであっても良い。これらを併用する場合、ジルコニアの含有量が、モル比で10%以上含んでいることが好ましく、さらに好ましくは30%以上含んだものである。
ハメットの酸度関数は、電気的に中性の塩基Bが水溶液中で下記式のように結合する。
B + H+ ⇔ BH+
そして、BH+の酸解離定数をpKBH+とし、Bをある溶液に入れたときH+と結合する割合をCBH+、結合しない割合をCBとすると、ハメットの酸度関数(H0)は下記式で表される。
H0=−pKBH+ +log(CBH+/CB)
本発明で使用する固体酸触媒(C)のハメットの酸度関数(H0)は、好ましくは−3〜−9のものである。ハメットの酸度関数(H0)は、水溶液の酸・塩基の強さがpHで表されるように、固体表面の酸・塩基点の強度を表す指標になる。この関数は、水溶液中ではpH=H0であるため、その強度が直感的に理解され、また、実験操作が簡便であるため広く受け入れられている。H0の値が小さい程強い酸性を示し、H0の値が大きい程強い塩基性を示している。
本発明におけるエステル化反応系では、固体酸触媒(C)の酸度関数(H0)が−3より大き過ぎると触媒活性を示さず、エステル化反応が進行しにくくなり、ポリエステル製造触媒として使用できない。一方、本発明の固体酸触媒(C)の酸度関数(H0)が−9より小さ過ぎるとグリコールの分子内脱水による炭素−炭素二重結合の生成、さらにはこの二重結合とグリコールによるエーテル化反応などの副反応を起こすおそれがあり、ポリエステル製造固体酸触媒として好ましくないからである。
測定方法:
試料として固体酸触媒 0.1gを日本ベル製TPD-AT-1型昇温脱離装置の石英セル(内径10 mm)にセットし、ヘリウムガス (30 cm3 min-1, 1 atm)流通下で423 K (150℃)まで5 K min-1で昇温し、423 Kで3時間保った。その後ヘリウムガスを流通させたまま373 K (100℃)まで7.5 K min-1で降温した後に真空脱気し、100 Torr (1 Torr = 1/760 atm = 133 Pa)のNH3を導入して30分間吸着させ、その後12 分間脱気した後に水蒸気処理を行った。水蒸気処理としては、373 Kで約25 Torr (約3 kPa)の蒸気圧の水蒸気を導入、そのまま30分間保ち、30分間脱気、再び30分間水蒸気導入、再び30分間脱気の順に繰り返した。その後ヘリウムガス 0.041 mmol s-1 (298 K, 25℃, 1 atmで60 cm3 min-1に相当する)を減圧(100 Torr)を保ちながら流通させ、373 Kで30分間保った後に試料床を10 K min-1で983 K (710℃)まで昇温し、出口気体を質量分析計(ANELVA M-QA 100F)で分析した。
測定に際しては質量数(m/e) 2, 4, 14, 15, 16, 17, 18, 26, 27, 28, 29, 30, 31, 32, 44のマススペクトルを全て記録した。終了後に1 mol %-NH3/He標準ガスをさらにヘリウムで希釈してアンモニアガス濃度0, 0.1, 0.2, 0.3, 0.4 mol %、合計流量が0.041 mmol s-1となるようにして検出器に流通させ、スペクトルを記録し、アンモニアの検量線を作成して検出器強度を補正した。昇温脱離時に測定した主な各質量スペクトルのアンモニア離脱TPDスペクトルから、実測に基づく1点法で、ピーク面積から酸量、ピーク位置などから平均酸強度を決定する。酸量と酸強度(ΔH)を算出し、酸度関数(H0)を計算して求める。
平衡吸着法は、金属酸化物担体(c1)を担持させる金属の溶液に浸して吸着させた後、過剰分の溶液を濾別する方法である。担持量は溶液濃度と細孔容積で決まる。担体を加えるにつれて溶液の組成が変化するなどの問題がある。
Incipient Wetness法は、金属酸化物担体(c1)を排気後、細孔容積分の担持させる金属の溶液を少しずつ加えて金属酸化物担体(c1)の表面が均一に濡れた状態にする方法である。金属担持量は溶液濃度で調節する。
蒸発乾固法は、金属酸化物担体(c1)を溶液に浸した後、溶媒を蒸発させて溶質を担持する方法である。担持量を多くできるが、担体と弱く結合した金属成分は乾燥時に濃縮されて還元処理後には大きな金属粒子になりやすい。
これらの中で、触媒の特性を考慮しつつ担持方法を選ぶことが好ましく、本発明のモリブデン酸ジルコニア固体酸触媒では、Incipient Wetness法もしくは蒸発乾固法が好ましく用いられる。
触媒除去の方法としては、特別な操作は特に無い。例えば回分式反応器を用いた場合は、簡単な濾過操作で行え、固定床流通式反応器を用いた場合はそういった濾過操作の必要も無く、固体酸触媒を充填したカラム内を流通して得られたポリエステル樹脂中に固体酸触媒(C)が残らない製造方法である。
一方、流通式反応器は、定常的な流通操作によって、物質の損失を少なくし、反応状態を安定にしてポリエステル樹脂の品質を一定に保ち、生産費を低減させることが可能であり、ポリエステル樹脂を連続的に製造する方法としてはより有利である。
これらの反応器のうち、反応終了後に触媒の回収を特殊な操作をする必要なく行える固定床流通式反応器を用いるのが特に好ましい。
しかしながら、前記固体酸触媒(C)は、例えばMoO3/ZrO2では、115℃でも反応を進行させることが可能であり(実施例参照)、前記固体酸触媒(C)を用いることで従来に比べ低温でエステル化反応をすることが可能となるため、省エネルギー化の観点から工業的に有利である。
MoO3/ZrO2は、100℃で一晩乾燥させた水酸化ジルコニウム(Zr(OH)4、日本軽金属工業製)50gを、純水にモリブデン酸アンモニウム[(NH4)6Mo7O24・4H2O(キシダ化学製)]を必要量溶かした水溶液(0.04mol・dm-3)を用い、水酸化ジルコニウムの細孔容積分の前記モリブデン酸アンモニウム水溶液を少しずつ加えてジルコニウム担体表面が均一に濡れた状態にして得た(Incipient Wetness法)。三酸化モリブデン(MoO3)の担持量が、重量比でMo/Zr=0.1となるように溶液濃度で調節した。反応前処理として酸素雰囲気下で焼成温度1073Kで3時間焼成を行った。自然放置冷却し、常温にして、固体酸触媒(C1)を得た。
焼成温度を673Kに変えた以外は上記調整例1と同様に調製し、固体酸触媒(C2)を得た。
測定方法:
前記固体酸触媒(C1)、同(C2)約0.1 gを日本ベル製TPD-AT-1型昇温脱離装置の石英セル(内径10 mm)にセットし、ヘリウムガス (30 cm3 min1, 1 atm)流通下で423 K (150℃)まで5 K min1で昇温し、423 Kで3時間保った。その後ヘリウムガスを流通させたまま373 K (100℃)まで7.5 K min1で降温した後に真空脱気し、100 Torr (1 Torr = 1/760 atm = 133 Pa)のNH3を導入して30分間吸着させ、その後12 分間脱気した後に水蒸気処理を行った。水蒸気処理としては、373 Kで約25 Torr (約3 kPa)の蒸気圧の水蒸気を導入、そのまま30分間保ち、30分間脱気、再び30分間水蒸気導入、再び30分間脱気の順に繰り返した。その後ヘリウムガス 0.041 mmol s1 (298 K, 25℃, 1 atmで60 cm3 min1に相当する)を減圧(100 Torr)を保ちながら流通させ、373 Kで30分間保った後に試料床を10 K min1で983 K (710℃)まで昇温し、出口気体を質量分析計(ANELVA M-QA 100F)で分析した。
どちらの試料でも、500 K付近にアンモニアの脱離を示すm/e = 16のピークが見られ、さらに固体酸触媒C1では900 K以上、固体酸触媒C2では780 K付近に小さなm/e = 16のショルダーが見られる。しかし、これら高温のショルダーの出現と同時に、m/e = 44の大きなピーク(CO2のフラグメント)およびm/e = 28 (CO2のフラグメント+N2)も見られていることから、高温のショルダーはCO2のフラグメントによるものであって、アンモニアによるものではないと考えられる。そこで、後述のアンモニアの定量ではこの部分を除いた。
図3には、m/e = 16から算出したアンモニアTPDスペクトルを示した。これらのスペクトルから酸量と酸強度(ΔH)を算出し、表−1に示した。
実測に基づく1点法では、ピーク面積から酸量、ピーク位置などから平均酸強度を決定できる。この方法によると質量当たりの固体酸触媒(C1)の酸量は約0.03 mol kg-1、固体酸触媒Bの酸量は約0.2 mol kg-1と差があるように思われるが、表面密度(酸量/表面積)は固体酸触媒(C1)、(C2)とも0.4〜0.7 nm-2程度であった。平均酸強度は固体酸触媒(C1)がΔH = 133 kJ mol-1、H0に換算して−7.4に対して、固体酸触媒(C2)がΔH = 116 kJ mol-1、H0に換算して−4.4とやや弱かった。
5L4ッ口フラスコにエチレングリコール1023部とシュウ酸3977部および、固体酸触媒(C1)50部を仕込み、冷却管、凝集管、窒素導入管をセットし、窒素ブローしながら115℃まで昇温し、16時間脱水縮合させ常温固体のポリエステルポリオールを得た。なお触媒は、1ミクロンのフィルターで吸引ろ過し取り除いた。得られたポリエステルは融点141℃の常温白色の固体であった。また、分子量はヘキサフルオロイソプロパーノールを溶媒に用いたGPCを用いて測定し、数平均分子量が1058であった。
5L4ッ口フラスコに1,4ブタンジオール1369部とシュウ酸3631部および、イソフタル酸1498部および、固体酸触媒(C2)50部を仕込み、冷却管、凝集管、窒素導入管をセットし、窒素ブローしながら115℃まで昇温し、12時間脱水縮合させポリエステルポリオールを得た。なお触媒は、1ミクロンのフィルターで吸引ろ過し取り除いた。得られたポリエステルは、融点149℃の常温白色固体であった。分子量は、ヘキサフルオロイソプロパーノールを溶媒に用いたGPCを用いて測定し、数平均分子量が989であった。
5L4ッ口フラスコにエチレングリコール715部とアジピン酸4285部および、固体酸触媒(C1)50部を仕込み、冷却管、凝集管、窒素導入管をセットする。次に、窒素ブローしながら115℃まで昇温し、14時間脱水縮合させポリエステルポリオールを得た。なお触媒は、1ミクロンのフィルターで吸引ろ過し取り除いた。得られたポリエステルは、OHV111.8、酸価0.48、融点45℃の常温白色固体であった。
5L4ッ口フラスコに1、4ブタンジオール982部とアジピン酸1318部、固体酸触媒(C1)50部を添加した。次に、冷却管、凝集管、窒素導入管をセットし、窒素ブローしながら115℃まで昇温し、12時間脱水縮合させポリエステルポリオールを得た。なお触媒は、1ミクロンのフィルターで吸引ろ過し取り除いた。得られたポリエステルは、OHV112.2、酸価0.39、融点53℃の常温白色固体であった。
合成したポリエステルの各種溶剤に対する溶解性を確認した。樹脂1gをマイヤーに測り取り、溶剤30mlと攪拌子を加え、30分間攪拌し溶解状態を観察した。メチレンクロライド及びN−メチルピロリドンについては、加熱後の溶解性を確認した。
B 固体酸触媒C2
Claims (3)
- 多価アルコール(A)及び熱分解性カルボン酸(B)であるシュウ酸を、金属酸化物担体(c1)であるジルコニアと担持する金属元素を含む酸化物(c2)である三酸化モリブデンとを含むハメットの酸度関数H 0 が−3〜−9である固体酸触媒(C)を用いて反応させるポリエステルの製造方法であり、前記固体酸触媒(C)がIncipient Wetness法もしくは蒸発乾固法により担持させ、更に673K〜1473Kの範囲で焼成して調製するものであることを特徴とするポリエステルの製造方法。
- さらに、非熱分解性カルボン酸(D)として、コハク酸、グルタール酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、1,12ドデカンジカルボン酸、無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ダイマー酸、ハロゲン化無水フタル酸、テトラヒドロフタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、2,3−ナフタレンジカルボン酸、2,3−ナフタレンジカルボン酸無水物、4,4’−ビフェニルジカルボン酸、ピロメリット酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、及び無水イタコン酸から選ばれる少なくとも一つを含む請求項1記載のポリエステルの製造方法。
- 前記固体酸触媒(C)の組成が、モリブデン酸ジルコニアである請求項1記載のポリエス
テルの製造方法。
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