JP2023136870A - バナジウム-リン系酸化物触媒の製造方法 - Google Patents

バナジウム-リン系酸化物触媒の製造方法 Download PDF

Info

Publication number
JP2023136870A
JP2023136870A JP2022042797A JP2022042797A JP2023136870A JP 2023136870 A JP2023136870 A JP 2023136870A JP 2022042797 A JP2022042797 A JP 2022042797A JP 2022042797 A JP2022042797 A JP 2022042797A JP 2023136870 A JP2023136870 A JP 2023136870A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
vanadium
phosphorus
catalyst precursor
catalyst
metal
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2022042797A
Other languages
English (en)
Inventor
淳幸 宮路
Atsuyuki Miyaji
慧太 小柴
Keita Koshiba
範和 小西
Norikazu Konishi
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Mitsubishi Chemical Corp
Original Assignee
Mitsubishi Chemical Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Mitsubishi Chemical Corp filed Critical Mitsubishi Chemical Corp
Priority to JP2022042797A priority Critical patent/JP2023136870A/ja
Publication of JP2023136870A publication Critical patent/JP2023136870A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Images

Landscapes

  • Catalysts (AREA)
  • Low-Molecular Organic Synthesis Reactions Using Catalysts (AREA)

Abstract

【課題】炭化水素の気相酸化反応において、従来よりも低い反応温度において、従来と同等の高い収率で無水マレイン酸等のジカルボン酸無水物を製造することが可能なバナジウム-リン系酸化物触媒の製造方法を提供する。【解決手段】下記工程(3)及び(4)を含む、炭化水素の気相酸化反応に用いるバナジウム-リン系酸化物触媒の製造方法。(3)前記触媒の前駆体であって、バナジウム及びリンを含むバナジウム-リン系触媒前駆体に、ニオブ、コバルト、鉄、亜鉛、モリブデン、チタン、セリウム、ガリウム、及びケイ素からなる群から選択される少なくとも1つの金属を含む液を、含浸割合が、該触媒前駆体が吸水しうる最大の含浸割合100重量%に対して、30~98重量%の範囲内となるように含浸させ、前記金属を担持させた金属担持触媒前駆体を得る工程(4)工程(3)で得られた金属担持触媒前駆体を、含水率30%以上の状態で焼成する工程【選択図】図1

Description

本発明は、バナジウム-リン系酸化物触媒の製造方法に関する。
より詳しくは、本発明は、炭化水素を気相酸化してジカルボン酸無水物を製造するのに適したバナジウム-リン系酸化物触媒の改良された製造方法に関する。
従来、ブタン、ブテン、ブタジエン等の炭化水素、特に飽和炭化水素のn-ブタンを、気相にて選択的に酸化して無水マレイン酸等のジカルボン酸無水物を製造するための触媒として、4価のバナジウムと5価のリンから成るバナジウム-リン系酸化物触媒が用いられている。特に、触媒特性の優れた結晶性の複合酸化物触媒として知られるピロリン酸ジバナジル((VO))の合成方法については多くの文献が知られている。
例えば、非特許文献1には、n-ブタンを酸化して無水マレイン酸を製造する触媒として、バナジウム-リン系酸化物触媒を製造する技術が開示されている。
また、特許文献1には、バナジウム-リン系触媒の前駆体(以下、「バナジウム-リン系触媒前駆体」という。)として、ピロリン酸ジバナジルを主体とするバナジウム-リン系複合酸化物に、触媒促進剤としてニオブ、アンチモン、ビスマスのうち少なくとも1つの金属化合物を含浸させて性能を向上する技術が開示されている。
特許文献2及び非特許文献2には、バナジウム-リン系触媒前駆体としてピロリン酸ジバナジルを主体とするバナジウム-リン系複合酸化物に、触媒促進剤としてコバルト、鉄、亜鉛、モリブデンまたはチタンからなる群から選択される少なくとも1つの金属化合物を含浸させて性能を向上する技術が開示されている。
特許文献3には、バナジウム-リン系触媒前駆体としてバナジウム-リン系複合酸化物、リン及びバナジウムを含有する水溶液を混合してスラリーを形成し、乾燥、焼成することで、得られたバナジウム-リン系複合酸化物触媒の強度を向上する技術が開示されている。
特表2018-530417号公報 特表2015-501214号公報 特開平08-141403号公報
"Heterogeneous Catalytic Oxidation: Fundamental and Technological Aspects of the Selective and Total Oxidation of Organic Compounds", B. K. Hodnett, Wiley, p132-159(2000) L.Cornaglia et al.,Stud. In Surf.Sci. and Catal.,130,p1727(2000).
炭化水素の気相酸化反応により無水マレイン酸等のジカルボン酸無水物を製造するための触媒には、触媒活性が高く、低い反応温度において高収率でジカルボン酸無水物を製造できることが望まれている。
しかしながら、特許文献1~3及び非特許文献1~2に開示された触媒の製造方法では、バナジウム-リン系複合酸化物を、触媒促進剤を含む溶液に含浸させるときに、前記複合酸化物中で触媒促進剤が凝集又は不均一に分散して、最終的に得られた触媒において、触媒前駆体に由来する触媒活性向上効果が十分に得られないことや、含浸処理後の触媒粒子を焼成する際に粒子どうしが融着して触媒として利用できないことがあった。即ち、バナジウム-リン系酸化物触媒の製造安定性が低下することがあった。
さらに、特許文献1~3及び非特許文献1~2の製造方法でバナジウム-リン系酸化物触媒が得られても、そのバナジウム-リン系酸化物触媒は、低い反応温度では従来と同等の高い収率で無水マレイン酸等のジカルボン酸無水物を製造できなかった。
本発明はこれらの問題点を解決することを目的とする。すなわち、本発明の課題は、製造安定性に優れたバナジウム-リン系酸化物触媒の製造方法を提供することにある。さらに、本発明の課題は、炭化水素の気相酸化反応において、従来よりも低い反応温度において、従来と同等の高い収率で無水マレイン酸等のジカルボン酸無水物を製造することが可能なバナジウム-リン系酸化物触媒の製造方法を提供することにある。
本発明者らは、上記課題を解決すべく、バナジウム-リン系酸化物中の触媒促進剤の最適な担持状態及びそのコントロール手段について検討を重ねた結果、バナジウム-リン系触媒前駆体を、触媒促進剤であるニオブ等の金属を含む溶液に含浸させるときの含浸液量を制御することで、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明の要旨は、炭化水素の気相酸化反応に用いる触媒を製造する方法において、下記工程(3)及び(4)を含むバナジウム-リン系酸化物触媒の製造方法、にある。
(3)前記触媒の前駆体であって、バナジウム及びリンを含むバナジウム-リン系触媒前駆体に、ニオブ、コバルト、鉄、亜鉛、モリブデン、チタン、セリウム、ガリウム、及びケイ素からなる群から選択される少なくとも1つの金属を含む液を、含浸割合が、該触媒前駆体が吸水しうる最大の含浸割合100重量%に対して、30~98重量%の範囲内となるように含浸させ、前記金属を担持させた金属担持触媒前駆体を得る工程
(4)工程(3)で得られた金属担持触媒前駆体を、含水率30%以上の状態で焼成する工程
本発明により、触媒の製造安定性に優れたバナジウム-リン系酸化物触媒の製造方法を提供することができる。すなわち、本発明の製造方法によれば、バナジウム-リン系複合酸化物中に触媒促進剤の成分を、凝集することなく均一に分散できるため、触媒促進剤による触媒活性向上効果を十分に得ることができる。さらに、触媒促進剤の含浸処理後の触媒粒子を焼成する際に粒子どうしが融着しないため、触媒の生産性に優れている。
さらに、本発明の製造方法により得られるバナジウム-リン系酸化物触媒は、炭化水素の気相酸化反応において、従来よりも低い反応温度において、従来と同等の高い収率で無水マレイン酸等のジカルボン酸無水物を製造することができる。また、前記反応温度の低下で副反応が抑制され、無水マレイン酸等のジカルボン酸無水物を高い選択率で得ることができる。
すなわち、本発明により製造したバナジウム-リン系酸化物触媒は、低い温度範囲において使用できるので、長期に渡り反応成績が良好であることが期待される。さらに、触媒当たりのジカルボン酸無水物の製造量が大きく、触媒原単位の低減が可能である。
比較例4及び実施例8~17における、ニオブ担持量に対する、反応温度及び無水マレイン酸選択率の関係を示すグラフである。
以下、本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の説明に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、任意に変形して実施することができる。
なお、特に断らない限り、本明細書において「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載された数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味し、「A~B」は、A以上B以下であることを意味する。
本明細書において、「含浸」とは、材料を浸み込ませる、浸透させる、充填することを意味する。
本明細書において、「乾燥」とは、対象物を20℃以上200℃未満の温度で保持し、該対象物中に含まれる溶媒成分を除去することをいう。
本明細書において、「焼成」とは、対象物を、400℃以上800℃以下、且つ、該対象物の融点よりも低い温度で加熱して、該対象物の結晶化を促進させ、触媒活性点を発現させることをいう。
[バナジウム-リン系酸化物触媒の製造方法]
本発明は、炭化水素の気相酸化反応に用いるバナジウム-リン系酸化物触媒の製造方法に関するものであり、下記の工程(3)及び(4)を含むナジウム-リン系酸化物触媒の製造方法である。
本発明の製造方法において、下記の工程(3)及び(4)において、バナジウム-リン系触媒前駆体に、ニオブ等の金属を含む液を、その含浸割合が特定の範囲内となるように含浸させた金属担持触媒前駆体を、含水率が特定の範囲内の状態で焼成することを特徴とする。
さらに、本発明の製造方法において、下記工程(3)の前に、下記工程(1)及び(2)を含むことができる。
(1)有機溶媒中で、バナジウム化合物をリン化合物と反応させて触媒前駆体を得る工程
(2)リン及びバナジウムを含有する水溶液と、工程(1)で得られた触媒前駆体を混合してスラリーを形成し、得られたスラリーを少なくとも乾燥又は焼成して、バナジウム及びリンを含有するバナジウム-リン系触媒前駆体を得る工程
(3)前記触媒の前駆体であって、バナジウム及びリンを含むバナジウム-リン系触媒前駆体に、ニオブ、コバルト、鉄、亜鉛、モリブデン、チタン、セリウム、ガリウム、及びケイ素からなる群から選択される少なくとも1つの金属を含む液を、含浸割合が、該触媒前駆体が吸水しうる最大の含浸割合100重量%に対して、30~98重量%の範囲内となるように含浸させ、前記金属を担持させた金属担持触媒前駆体を得る工程
(4)工程(3)で得られた金属担持触媒前駆体を、含水率30%以上の状態で焼成する
<バナジウム-リン系酸化物触媒>
本発明におけるバナジウム-リン系酸化物触媒は、後述する金属担持触媒前駆体又は該金属担持触媒前駆体とバインダーを含む触媒前駆体混合物を焼成して得られたものである。
前記金属担持触媒前駆体は、バナジウム及びリンを含有するバナジウム-リン系触媒前駆体に、ニオブ、コバルト、鉄、亜鉛、モリブデン、チタン、セリウム、ガリウム、及びケイ素からなる群から選択される少なくとも1つの金属(以下、「ニオブ等の金属」という。)が担持されたものである。
前記バナジウム-リン系触媒前駆体は、従来から炭化水素の気相酸化反応に使用されている触媒の前駆体であり、熱処理されることによって触媒となる、触媒前駆体を示す。触媒前駆体は、通常、触媒原料を含有する混合溶液又はスラリーを調製し、これを乾燥させることにより調製される。
前記ニオブ等の金属は、得られたバナジウム-リン系酸化物触媒がより高い触媒活性を発揮するための触媒促進剤として有効である。
バナジウム-リン系触媒前駆体の実施形態としては、特に限定されるものではなく、バナジウム-リン系触媒前駆体が支持体となる形態(「形態A」という。)が挙げられ、必要であれば、後述する担体に前記バナジウム-リン系触媒前駆体が付着又は混合されたものが支持体となる形態(「形態B」という。)を用いることができる。
形態Aにおける支持体及び形態Bにおける支持体の形状は、特に限定されるものではなく、多孔質形状又は非多孔質形状とすることができる。
形態Aにおいて、バナジウム-リン系触媒前駆体の形状は、特定に限定されるものではなく、球状、棒状、円柱状、中空円柱状、リング状、タブレット状、板状等が挙げられ、中でも球状であることが好ましい。なお、球状、棒状、円柱状、中空円柱状には、断面が円状や楕円状となるものを含む。該触媒前駆体の形状が球状であれば、固定床反応器において触媒充填層の圧力損失の増大を抑制できる。
形態Bにおいて、担体の種類については特に限定はなく、例えば、酸化物系セラミックやコロイダルシリカが挙げられる。酸化物系セラミックは化学的に安定しているため、触媒金属を担持するための素材として広く用いられている。
酸化物系セラミックは、ケイ素、アルミニウム、チタン、ジルコニウム、マグネシウム、ニオブ等の夫々の元素の酸化物の少なくとも1種類以上を含むものが好ましい。ケイ素の酸化物としては酸化ケイ素が挙げられる。アルミニウム、チタン、ジルコニウム、マグネシウム、ニオブのそれぞれの酸化物としてはアルミナ、チタニア、ジルコニア、マグネシア、ニオビアが挙げられる。前記酸化物は2種類の元素の複合酸化物であってもよく、例えばケイ素とアルミニウムであればその複合酸化物であるムライトが挙げられる。これらのうち、酸化物系セラミックとしては、特にアルミナが好ましい。
これらの担体を含むことにより、得られたリン-バナジウム酸化物触媒の表面のみならずバナジウム-リン系触媒前駆体が担持された細孔内部まで触媒機能を発揮することができ、原料である炭化水素の転化率や目的生成物の選択率の向上を見込むことができる。また、細孔を有しないものの高比表面積の担体を用いた場合、担体表面にバナジウム-リン系触媒前駆体を高分散に固定化できれば、触媒機能の向上が期待される。
担体の形状は、特定に限定されるものではなく、球状、棒状、円柱状、中空円柱状、リング状、タブレット状、板状等が挙げられ、中でも球状であることが好ましい。なお、球状、棒状、円柱状、中空円柱状には、断面が円状や楕円状となるものを含む。担体の形状が球状であれば、固定床反応器において触媒充填層の圧力損失の増大を抑制できる。
<バナジウム-リン系酸化物触媒の製造方法>
以下に工程(1)~(4)の詳細について説明する。
[工程(1)]
工程(1)は、有機溶媒中でバナジウム化合物をリン化合物と反応させて触媒前駆体であるリン酸水素バナジルを得る工程である。
この工程において、触媒前駆体の原料として使用する5価のバナジウム化合物としては、五酸化バナジウム、またはメタバナジウム酸アンモニウム、オキシ三ハロゲン化バナジウムなどのバナジウム塩が例示されるが、最も一般的な原料は五酸化バナジウムである。この五酸化バナジウムは市販品をそのまま、あるいは、粉砕して用いる。
また、本発明の触媒前駆体の原料として使用する5価のリン化合物としては、実質的にオルトリン酸種より成り、他のリン酸例えばピロリン酸やトリリン酸を実質的に含まず、すなわち、オルトリン酸換算で70重量%以上であり、96重量%以下の高濃度のリン酸を使用する(重量%表示、以下同じ)。かかるリン酸は、一般に、工業規模で生産され、入手が容易な市販の89%リン酸をそのまま使用するか、市販の85%、89%あるいは105%リン酸から調製できる。その調製方法としては、1)105%のリン酸に水を添加する方法、2)85%または89%リン酸と105%リン酸を適当な割合で混合する方法、3)85%または89%リン酸から水を除去する方法等を用いることができるが、1)、2)の方法が好ましい。
105%リン酸とは、オルトリン酸換算のリン酸濃度で表示されているので、実際はオルトリン酸種の他、その縮合体であるピロリン酸種及びトリリン酸種からなる混合リン酸である。上記の1)の方法においては、混合リン酸を水と反応させて、実質的にオルトリン酸のみを含有するリン酸の形態として後で使用する。
さらにリン酸の縮合が進行した116%リン酸などを原料として使用することも可能であるが、原料リン酸の調製に時間を要するため、好ましくない。
一方、99%あるいは100%オルトリン酸として、白色固体の試薬が入手可能である。これに水を添加する方法でもよい。
原料の使用割合は、リンとバナジウムの原子比として、通常1.0~1.3が適当である。
この工程(1)で使用される有機溶媒はそれ自体が還元力を有するものであって、5価のバナジウム化合物の少なくとも一部を4価のバナジウム化合物に還元し得るものであることが好ましい。還元性の有機溶媒としては、酸化を受けやすい官能基を有するものが挙げられ、典型的にはアルコール性水酸基を有する化合物が好適である。このような化合物の中では、ブタノール、2-プロパノールや2-メチルプロパノール、ヘキサル等の炭素数3~6の脂肪族アルコールや、ベンジルアルコールが代表的である。かかる有機溶媒としては、上記の溶媒の混合物を使用することもでき、例えば、炭素数3~6の脂肪族アルコールと還元力の大きなベンジルアルコールを混合して用いることもできる。また、ヒドラジンやシュウ酸等の還元剤を有機溶媒中に存在させることも可能である。
また、有機溶媒の使用量は、反応媒体として使用できる量であれば特に限定されないが還元力の大きなベンジルアルコールを混合して使用する場合は、ベンジルアルコール/5価のバナジウム化合物のモル比で通常0.02~2、好ましくは0.5~1.5である。
以上の原料の使用割合の範囲において特に活性の高い触媒が得られる。
本発明の方法により製造される触媒には上記のリン化合物及びバナジウム化合物の他に助触媒成分として他の金属成分を添加することができる。助触媒として反応系に添加し、酸化物触媒の触媒前駆体に含有させる助触媒元素としては、鉄、コバルト、亜鉛等が挙げられ、これらの金属は併用してもよい。但し、本発明においては、特に鉄が良好である。この助触媒の金属は、前駆体を調製する際の反応媒体中に化合物で存在させるのが良い。この化合物の例としては、例えば鉄の化合物として、塩化鉄、酢酸鉄、シュウ酸鉄等が例示される。
助触媒金属を使用する場合にはバナジウムと助触媒金属との合計に対する助触媒金属の原子比で、通常0.005~0.3、好ましくは0.02~0.2である。本発明では以上の原料を含むスラリー状態とし、これを、加熱攪拌下で反応させ、リンとバナジウムの複合酸化物粒子を製造する。
工程(1)においては、5価のバナジウム化合物、好ましくは五酸化バナジウムを還元性の有機溶媒中で、あらかじめ加熱、還流してバナジウムの一部を4価に還元した後でリン酸を添加する方法、あるいは5価のバナジウム化合物とリン酸を初めから混合して反応させる方法のいずれも採用することができるが、好ましくは前者の方法である。
また、助触媒金属化合物を使用する場合にも、反応の最初から添加する方法、リン酸を添加した後に加える方法等を選択可能である。
原料を混合したスラリーの加熱温度としては、用いる有機溶媒の種類によるが、通常80~200℃の範囲で実施し、溶媒の沸点付近の温度範囲で還流させる方法が特に好ましい。加熱時間は、反応条件により変動するが、反応系にリン酸を添加してから、通常1~20時間が好適である。
また、場合によっては、上記の加熱・還流中において、原料中の水あるいは反応により生成する水を除去することにより、優れた性能の触媒が得られやすい。この場合に、反応系における水分の実質的全量を除去する必要はないが、継続的に水を除去するようにした方が望ましい。水と共に加熱により蒸発した有機溶媒は、冷却して凝縮すると有機層と水層の2層に分離するので、この有機層は反応系に戻し、水層側を除去する。
このような操作は、例えばディーン・スターク型の装置を付けることにより、容易に実施できる。
工程(1)により得られる複合酸化物粒子(触媒前駆体)は、必ずしも結晶性は良好ではないが、リン酸水素バナジル・1/2水塩を含有するものである。該粒子は、固液分離の一般的手法により分離され、必要に応じてアルコール等の溶媒で洗浄した後、乾燥する。本発明においては、工程(1)で得られた触媒前駆体の粒子を、好適には乾燥した状態で工程(2)に使用する。
[工程(2)]
工程(2)は、リン及びバナジウムを含有する水溶液と、工程(1)で得られた触媒前駆体を混合してスラリーを形成し、得られたスラリーを少なくとも乾燥又は焼成して、本発明における触媒の前駆体、即ちバナジウム及びリンを含有するバナジウム-リン系触媒前駆体を得る工程である。
この工程では、工程(1)にて得られたリン酸水素バナジル又は後述する粉砕工程で得られた粉砕粒子と、リン及び4価のバナジウムを含有する水溶液と混合して水性のスラリーを形成し、乾燥、焼成して触媒化する。
リン及びバナジウムを含有する水溶液としては、水性スラリーを形成して酸性となる溶液が好ましくリン酸バナジル水溶液等が好ましい。リン酸バナジル水溶液は、実質的に4価のバナジウム及びリンを含有する安定化した水溶液であり、例えば特開昭58-151312号公報に示された水溶液を好適に使用することができる。この水溶液は、リン酸酸性水溶液中で五酸化バナジウム等の5価の原子価を有するバナジウム化合物と抱水ヒドラジン、亜リン酸、シュウ酸、乳酸等の還元剤と反応させて、5価のバナジウムの少なくとも一部を4価のバナジウムに還元し、さらにその安定化の為にシュウ酸を添加または残留させて得ることができる。この水溶液中のシュウ酸の量は、バナジウム元素に対するモル比で1.2以下であり、好ましくは0.2~1である。またリン元素は、バナジウム元素に対してモル比で0.5~10であるのが好ましい。このような水溶液は安定化されているので、工業的にも予め調製しておくことができ、好適にはこの水溶液に後述の粉砕工程で得た粉砕粒子を添加して、水性スラリーを形成する。
水性スラリーの濃度としては、焼成後の触媒酸化物重量換算で、10~50%の範囲が好ましい。濃度が10%より薄くなると乾燥の効率が悪く、また50%より高くなるとスラリー粘度が高くなり、乾燥法として噴霧乾燥を採用する場合には適さなくなる。このリン酸バナジル水溶液はその後の乾燥、焼成により触媒中では非晶質のバナジウム-リン酸化物となり、触媒強度を発現するバインダー成分として働くと考えられる。該非晶質のバナジウム-リン酸化合物をB成分、後述の粉砕工程で得た粉砕粒子を乾燥、焼成したものをA成分とした場合、焼成後の触媒中での重量パーセントで換算した場合、A成分が80~50%で、B成分が20~50%の範囲となるように、後述の粉砕工程で得た粉砕粒子とリン酸バナジル水溶液を混合することが好ましい。
また、このスラリー溶液にシリカゾルやヒュームドシリカ等のシリカを添加することもでき、その添加量としては焼成後の触媒中の重量として10%以下が好ましいが、本発明においては必ずしも添加する必要はない。
上記水性スラリーは、所望の触媒形態に成型してから乾燥又は焼成するか、乾燥後又は焼成後に成型するか、あるいは噴霧乾燥のように成型しながら乾燥し、その後に焼成する。
工程(2)における乾燥方法としては、噴霧乾燥又は加熱等、一般的な方法が行えるが、流動床触媒や輸送床反応用の触媒に適した微小球状の固体粒子とする場合には、回転ディスク型あるいはノズル吹き出し型の噴霧乾燥が使用でき、この方法では平均粒子径として20~300μm程度の固体粒子を形成することができる。
この場合の乾燥温度としては、100~350℃の範囲が好ましく、100~250℃の範囲がさらに好ましい。成型方法は、流動床触媒の場合は、使用できる300μm以下の粒径のものが得られる方法であれば限定されない。但し、噴霧乾燥後の固体粒子は、通常上記のような粒径であるので、特に成型工程は必要でなく、このまま焼成処理が可能である。固定床触媒の場合は、押し出し成型等、公知のペレット化やタブレット化等の方法が行える。この乾燥及び成型により得られた固体粒子は焼成することでバナジウム-リン系触媒前駆体とする。
工程(2)における焼成方法としては、最終的に焼成温度350~700℃にて、0.1~20時間、窒素、希ガス、空気またはこれらの混合物、あるいはブタン、ブテン類等の有機物を含む空気の雰囲気下で実施される。焼成装置としては、流動焼成炉、キルン焼成炉、連続式箱型炉等を使用できる。
[粉砕工程]
さらに、本発明の製造方法においては、必要に応じて、工程(1)と工程(2)の間に得られた触媒前駆体を粉砕する粉砕工程を含むことができる。
この粉砕工程においては、第(1)工程にて得られた粒子を高速気流中で乾式粉砕する。粒子の粉砕は、高速の気流による粒子同志の衝突あるいは、粒子の粉砕装置壁での衝突により進行する。高速気流は、例えば気体をノズルより吹き出すことで容易に形成される。気体としては、空気や各種の不活性ガスを使用できるが、安価な空気で充分である。このような装置の例としては、粉体加工分野で知られたジェットミル粉砕機等がある(粉体工学会編・粉体工学便覧・日刊工業新聞社・昭和61年2月28日初版第1版発行)。具体的な装置例としては、ジェットオーマイザーミルやシングルトラックジェットミルが挙げられる。特に、ジェットミルタイプの粉砕装置は工業的スケールで容易に連続した粉砕ができるので好ましい。通常、高速気流による乾式粉砕の方法では粒径3μm以下への微粉砕には限界があると言われているが、工程(1)で得られた粒子はこの方法でも比較的容易に3μm以下の重量平均粒子径になることが見出された。
ジェットミル粉砕における気体の圧力としては、工程(1)での触媒前駆体の製造方法や粉砕速度(原料供給速度)に依存するが、一般的には3KG(kg/cm-G、ゲージ圧)から10KGが好ましい。3KGより低い場合には、得られた流動触媒の強度が良好でない場合があり、10KGより高い場合には、高圧設備が必要となるのでいずれも好ましくない。
粉砕工程で得られた粒子の大きさとしては、特に限定されるものではなく、通常は、工程(1)で得られた粒子の性状と粉砕工程における粉砕条件によるが、重量平均粒子径で0.5~2.0μmの範囲とすることができる。高速気流中での乾式粉砕は、ボールミル等による通常の乾式粉砕或いは湿式粉砕と異なり、粉砕媒体の摩耗による媒体材質の粉砕品への混入がなく、触媒性能において好ましいと考えられる。
また、媒体と粉砕品の分離が不要であり、一般に処理時間がかなり短縮されるとともに、連続粉砕に適している。更に、高速気流下による粉砕であれば、同時に乾燥も達成される。
また、高速気流中での乾式粉砕は、ボールミル等による通常の乾式粉砕と比較すると、粗粒の混入が避けられるため粒度分析がシャープとなり、工程(1)で製造された粒子の形状や粉砕工程の粉砕条件にも依存するが、通常、再現性の良い粒度分布が得られやすい。また、本発明者らの検討によれば、触媒前駆体を高速気流中で乾式粉砕すると、触媒前駆体が凝集状態から解砕し、板状状態に形態が変化することが粉末X線回折により確認でき、かかる触媒前駆体の形態変化が、最終的に触媒の機械的強度向上に有効に働いていると推定される。
[工程(3)]
工程(3)は、工程(2)で得られた、本発明における触媒の前駆体、即ちバナジウム及びリンを含むバナジウム-リン系触媒前駆体に、ニオブ等の金属を含む液を、含浸割合が、該触媒前駆体が吸水しうる最大の含浸割合100重量%に対して、30~98重量%の範囲内となるように含浸させ、前記ニオブ等の金属を担持させた金属担持触媒前駆体を得る工程である。
この工程では、バナジウム-リン系触媒前駆体であるバナジウム-リン系複合酸化物に、ニオブ等の金属(以下「触媒促進剤」と称す場合がある。)を担持させる。具体的には、バナジウム-リン系複合酸化物を含有する多孔質状の担体に、触媒促進剤を含む溶液を接触させ、前記バナジウム-リン系複合酸化物に触媒促進剤を担持させる。
バナジウム-リン系複合酸化物中のリン元素とバナジウム元素の比率は、特に限定されないが、バナジウム-リン系複合酸化物中のバナジウムに対して、原子比で0.0001~0.5のニオブ等の金属を担持させることができる。
バナジウム-リン系複合酸化物に担持されたニオブ等の金属の担持量の測定方法としては、誘導結合プラズマ(ICP)発光分光法又は蛍光X線分析(XRF)を用いて、前記複合酸化物中に担持されたニオブ等の金属の総量を測定する方法が挙げられる。
ニオブ等の金属(触媒促進剤)の供給源となる化合物は、溶媒に溶解できる化合物であれば特に限定されないが、ニオブの場合であればシュウ酸ニオブアンモニウム等が挙げられる。
工程(3)の含浸処理においては、バナジウム-リン系複合酸化物を、触媒促進剤を含む液状の親水性溶液に含浸させる。触媒促進剤の供給源の形態が液状であれば、特別な設備を設けずとも、常温(15~45℃)常圧条件下にて、バナジウム-リン系複合酸化物を含浸させることができる。また、触媒促進剤の供給源が親水性溶液であれば、親水性の触媒促進剤を含有する水溶液を多孔質状の担体内部に浸透させることが容易となる。
前記親水性溶媒の沸点は、特に限定されないが、35℃~180℃であることが好ましい。バナジウム-リン系複合酸化物に接触させる際、親水性溶媒が沸騰していると、取り扱いが困難になるからであり、また、上記で蒸気圧を限定する理由と同様に、揮発特性を考慮する必要があるからである。沸点が上記範囲内であれば、触媒をバナジウム-リン系複合酸化物表面に効果的に担持させることができる。
前記親水性溶媒として、具体的には、水、若しくは、メタノール、エタノール、ブタノール(ブチルアルコール)、2-プロパノ-ル、2-メチルプロパノ-ル、ヘキサノール等の炭素数1~6の脂肪族アルコ-ルが挙げられる。これらの溶媒は、1種を単独、又は2種以上を混合して用いることができる。これらの中でも、コストや取り扱い性の観点から、水が好ましい。
バナジウム-リン系触媒前駆体であるバナジウム-リン系複合酸化物に、ニオブ等の金属を含む溶液を含浸させる方法は、特に限定されるものではなく、例えば、バナジウム-リン系複合酸化物に、公知のスプレードライ装置を用いて、ニオブ等の金属を含む溶液をスプレー噴霧して含浸させるスプレー担持法や、ニオブ等の金属を含む溶液の入った容器に、バナジウム-リン系複合酸化物を浸漬させる浸漬法が挙げられる。含浸液量の制御が容易であり、バナジウム-リン系複合酸化物中に前記金属を凝集させることなく均一に含浸できることから、スプレー担持法が好ましい。
すなわち、本発明の製造方法においては、まず、バナジウム-リン系触媒前駆体に、ニオブ等の金属を含む溶液を下記式(A)で算出される含浸割合(以下、「含浸割合(A)」と称す場合がある。)が30~98重量%の範囲内となるように含浸させる。この含浸割合は40~90重量%が好ましく、50~80重量%がより好ましい。
含浸割合(重量%)=[含浸液量(g)/吸水量(g)]×100 (A)
ここで、「含浸液量」とは、ニオブ等の金属を含む溶液を、バナジウム-リン系複合酸化物に浸透させた後の該溶液を含む該複合酸化物の総質量と、前記溶液を浸透させる前のバナジウム-リン系複合酸化物の質量との差である。「吸水量」とは、バナジウム-リン系触媒前駆体の最大吸水量である。
この吸水量は、以下の方法で測定することができる。即ち、先ず所定量のバナジウム-リン系複合酸化物を撹拌しながら、ニオブ等の金属を含む溶液を滴下し続ける。前記複合酸化物が前記溶液を吸収できない状態に達すると、該複合酸化物は凝集し始める。前記吸水量は、このとき迄に滴下した溶液量の総量とバナジウム-リン系複合酸化物の量から算出できる。
含浸割合(A)をこのように定義することで、ニオブ等の金属を含む溶液がバナジウム-リン系複合酸化物中にどれだけ浸透したか、その割合を算出することが出来る。例えば、バナジウム-リン系複合酸化物に浸透したニオブ等の金属を含む溶液の量が、含浸液量の100重量%の場合とは、絶乾状態のバナジウム-リン系複合酸化物の空隙の全てに、ニオブ等の金属を含む溶液が浸透して飽和状態となっている場合をいう。
前記含浸割合(A)の上限が98重量%を超えると、続いて工程(4)において焼成するときに、バナジウム-リン系複合酸化物が凝集したり、バナジウム-リン系複合酸化物の一部が融解したりして塊状になる。その結果、触媒前駆体の比表面積が著しく低下して所望の触媒性能が得られない、又は、取り扱い性が著しく低下して触媒として使用することが困難となる。一方、前記含浸割合(A)の下限が30%未満では、バナジウム-リン系複合酸化物中に含浸されたニオブ等の金属が凝集し分散性が低下するため、ニオブ等の金属による触媒活性の向上効果が不十分となる。
含浸割合(A)を30~98重量%の範囲内に制御する方法は、特に限定されないが、例えば、スプレー担持法を用いて、ニオブ等の金属を含む溶液の量とニオブ等の金属の濃度を調整し,含浸割合(A)を30~98重量%の範囲内となるように、バナジウム-リン系触媒前駆体が含浸されるときの前記溶液量を制御する方法が挙げられる。
なお、含浸割合(A)が98重量%を超える含浸方法としては、担体の細孔容積に等しい量の水溶液を担体上に徐々に滴下し含浸する溶液滴下含浸法(incipient wetness法)や、担持金属を溶解させた溶液に触媒前駆体全量を含浸させる平衡吸着法が挙げられる。
さらに、工程(3)において、前記金属担持触媒前駆体のニオブ等の金属の担持量の下限は、特に限定されるものではなく、該金属担持触媒前駆体の総重量100%に対して、0.05重量%以上の範囲となるように含浸させることが好ましい。ニオブ等の金属の担持量は0.15重量%以上がより好ましく、0.25重量%以上がさらに好ましい。前記担持量の下限が0.05重量%以上であれば、低い反応温度であっても高収率でジカルボン酸無水物を製造できる。一方、前記金属担持触媒前駆体のニオブ等の金属の担持量の上限は、特に限定されるものではなく、該金属担持触媒前駆体の総重量100%に対して、1.1重量%以下の範囲となるように含浸させることが好ましい。ニオブ等の金属の担持量は0.8重量%以下がより好ましく、0.7重量%以下がさらに好ましい。前記担持量の上限が1.1重量%以下であれば、高い選択率でジカルボン酸無水物を製造できる。
上記の上限下限は任意に組み合わせることができる。例えば、記金属担持触媒前駆体のニオブ等の金属の担持量の下限は、特に限定されるものではなく、該金属担持触媒前駆体の総重量100%に対して、0.05重量%以上1.1重量%以下が好ましく、0.15重量%以上0.8重量%以下がより好ましく、0.25重量%以上0.7重量%以下がさらに好ましい。
[工程(4)]
工程(4)は、工程(3)で得られた金属担持触媒前駆体を、含水率30%以上の状態で焼成する工程である。或いは又、工程(4)は、工程(3)において前記含浸割合が30~98重量%の範囲内となるように含浸された金属担持触媒前駆体の粒子を、実質的に乾燥することなく、焼成することもできる。
本発明の特徴は、前記工程(3)において触媒前駆体へのニオブ等の金属を含む液の含浸割合を30~98重量%の範囲内とした上で、含浸後の触媒粒子を好ましくはそのまま工程(4)で焼成する点にある。
工程(4)における、焼成条件は特に限定されないが、不活性ガス、空気等の酸素含有ガスまたはこれらの混合物、あるいはブタン、ブテン類等の有機物を含む空気の雰囲気下、又は真空条件下で焼成することが好ましい。ここで、不活性ガスとは触媒活性を低下させない気体のことを指し、窒素、炭酸ガス、ヘリウム、アルゴン等が挙げられる。これらは一種を用いてもよく、二種以上を混合して使用してもよい。
焼成温度は、400℃以上800℃以下が好ましく、500℃以上700℃以下がより好ましい。焼成温度が400℃未満では水分の除去が不十分で触媒性能の低下を引き起こすことがある。また、焼成温度が800℃を超えると4価のバナジウムが高酸化状態まで酸化され、触媒性能が低下する。焼成時間は、特に制限されないが、通常は0.1~20時間の範囲内である。
焼成装置としては、流動焼成炉、キルン焼成炉、連続式箱型炉、回転焼成炉、マッフル炉等を使用できる。焼成効率により優れることから、流動焼成炉や回転焼成炉が好ましい。
[炭化水素の気相酸化反応]
以上のように、本発明では工程(1)で得られた触媒前駆体を、その後の工程(2)~工程(4)での焼成処理及び必要に応じてその後の活性化処理を行うことにより、前駆体中のリン酸水素バナジル・1/2水塩の少なくとも一部を触媒活性成分であるピロリン酸ジバナジルに転換させて触媒として使用する。
本発明の製造方法により得られた触媒は、炭化水素の気相酸化反応、特にn-ブタン、1-ブテン、2-ブテン、1,3-ブタジエン等の炭素数4の炭化水素の気相酸化による無水マレイン酸の製造に好適に利用される。炭化水素原料として特に経済的に有利なのはn-ブタン及びブテンであり、これらは天然ガスからの分離、或いはナフサクラッキング生成物からの分離などによって容易に得ることができる。
気相酸化反応の形式は流動床でも固定床、輸送床でもよい。但し本発明により製造されるバナジウム-リン系酸化物触媒は、流動床触媒の製造に特に適している。本発明で得られるバナジウム-リン系酸化物触媒を用いた無水マレイン酸の製造において用いられる酸化剤としては空気あるいは分子状酸素等の酸素含有ガスが用いられる。
気相酸化における原料炭化水素濃度は、酸素含有ガスとの合計に対する割合で、通常0.1~10容量%、好ましくは1~5容量%、酸素濃度は原料炭化水素及び酸素含有ガスの合計ガスに対する割合で10~30容量%である。
反応温度は通常300~500℃、好ましくは350~450℃であり、反応圧力は、通常、常圧もしくは0.05~10kg/cm-Gの加圧下で行われる。
以下、実施例により、本発明をより具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例により限定されるものではない。
なお、特に断りがない限り「%」は、「重量%」を示す。
実験例で使用した化合物は以下のとおりである。なお「リン酸」とは、全量をオルトリン酸に換算した濃度で示す。
85%リン酸(日本化学工業株式会社製)
89%リン酸(日本化学工業株式会社製)
シュウ酸・2水塩(商品名:しゅう酸二水和物、富士フイルム和光純薬株式会社)
シュウ酸鉄・2水和物(富士フイルム和光純薬株式会社製)
シュウ酸ニオブアンモニウム水和物(シグマアルドリッチ社製)
五酸化バナジウム(商品名:酸化バナジウム(V)、富士フイルム和光純薬株式会社製)
2-メチルプロパノール(富士フイルム和光純薬株式会社製)
[実施例1]
<リン酸バナジル溶液の調製>
工程(2)で使用するリン及びバナジウムを含有する水溶液として、下記の方法を用いてリン酸バナジル溶液を調製した。
脱塩水10kgに85%リン酸10.54kg、シュウ酸・2水塩10.743kgを添加し、80℃まで加熱、攪拌しながら溶解した。次いで五酸化バナジウム7.75kgを少量ずつ添加し、95~100℃で0.5~2時間反応した。冷却後、水を加えて全量を38.5kgとし、これをリン酸バナジル溶液(固形分濃度44.2重量%)とした。このリン酸バナジル溶液のリン/バナジウム原子比は1.08であった。
<工程(1)>
10リットルの容器に2-メチルプロパノール2195g、ベンジルアルコール205.4g、五酸化バナジウム347.5g、シュウ酸鉄・2水物36.0gを入れてスラリー状態で3時間、加熱・還流した。加熱・還流後のスラリーに、89%リン酸528.5gを2-メチルプロパノール1.0リットルに溶解した溶液を添加後、2-メチルプロパノール2.4リットルを入れた。このスラリー溶液を更に7時間、加熱・還流した後、冷却した。2-メチルプロパノールにより、生成物を洗浄、濾過し、130℃で10時間乾燥した。本合成を5回繰り返し、約3.5kgの生成物を得た。
次いで、得られた生成物を、シングルトラック型のジェットミル(株式会社セイシン企業製)を用いて、圧力3KGの空気を使用して粉砕し、粉砕粒子を得た。
<工程(2)>
リン酸バナジル溶液の調製工程で得られた、上記リン酸バナジル溶液3288g(固形分濃度44.2重量%。固形分であるリン酸バナジル(B成分)は1453g)、水7.32kg、及び工程(1)で得られた粉砕粒子(A成分)3.39kgを混合してスラリーを形成した(A成分70重量%、B成分30重量%)。スラリー濃度は30重量%であった。このスラリーをディスク回転型の噴霧乾燥機に導入して、温度115℃で微小粒子を合成した。得られた粒子の内、4.0kgを流動焼成炉にて550℃で20分間、窒素流通下で焼成してバナジウム-リン系複合酸化物を得て、これをバナジウム-リン系触媒前駆体とした。
<工程(3)>
バナジウム-リン系触媒前駆体として上記バナジウム-リン系複合酸化物1gに、含浸割合(A)が36.0重量%、下記式(B)で算出されるニオブ担持量が0.4重量%となるようにシュウ酸ニオブアンモニウム水溶液を含浸させ、金属担持触媒前駆体を得た。
なお、前記シュウ酸ニオブアンモニウム水溶液は、バナジウム-リン系複合酸化物に対するニオブ担持量が0.4重量%となるようにニオブの濃度を調整したシュウ酸ニオブアンモニウムの水溶液を用いた。
[ニオブ担持量(単位:重量%)]=[バナジウム-リン系複合酸化物に担持されたニオブの重量(g)/金属担持触媒前駆体の重量(g)]×100 (B)
なお、前記ニオブ担持量は、誘導結合プラズマ(ICP)発光分光法を用いて測定した。
<工程(4)>
工程(3)で得られた金属担持触媒前駆体を、ロータリーキルン(株式会社モトヤマ製)を用いて、窒素流通下、温度550℃で60分間焼成した。
[実施例2]
実施例1の工程(3)における含浸割合(A)を57.3%とした以外は、実施例1と同じ方法により触媒を製造した。
[実施例3]
工程(3)における含浸割合(A)を76.4%とした以外は、実施例1と同じ方法により触媒を製造した。
[実施例4]
工程(3)における含浸割合(A)を95.4%とした以外は、実施例1と同じ方法により触媒を製造した。
[実施例5]
工程(4)における焼成時間を20分とした以外は、実施例1と同じ方法により触媒を製造した。
[実施例6]
工程(4)における焼成時間を20分とした以外は、実施例3と同様に調製した。
[実施例7]
工程(4)における焼成時間を20分とした以外は、実施例4と同じ方法により触媒を製造した。
[比較例1]
工程(3)を不実施とした以外は、実施例1と同じ方法により触媒を製造した。
[比較例2]
工程(3)において、ニオブ担持量が0.4重量%及び含浸割合(A)が100%となるように、バナジウム-リン系触媒前駆体を秤量した水に含浸させた以外は、実施例1と同じ方法により金属担持触媒前駆体を製造した。続いて、得られた金属担持触媒前駆体を、工程(4)において、ロータリーキルンを用いて窒素流通下、温度550℃で60分間焼成したところ、ロータリーキルンの内部に触媒粒子が付着したため、触媒を回収できなかった。
[比較例3]
工程(3)において、バナジウム-リン系触媒前駆体に、ニオブ担持量が0.4重量%及び含浸割合(A)が100%となるように、秤量した水を含浸させた以外は、実施例1と同じ方法により金属担持触媒前駆体を製造した。続いて、得られた金属担持触媒前駆体を、工程(4)の焼成処理(温度550℃、60分間)を行うかわりに、真空乾燥機を用いて温度200℃で17時間乾燥して、触媒を製造した。
[比較例4]
工程(3)において、バナジウム-リン系触媒前駆体に、ニオブ担持量が0重量%及び含浸割合(A)が76.4%となるように、秤量した水を含浸させた以外は、実施例3と同じ方法により触媒を製造した。
[無水マレイン酸製造試験]
各実施例、比較例にて得られた触媒の触媒性能を、下記の方法により評価した。
触媒650mgを、内径8mmφ、反応管全長30cm(その内、触媒充填箇所5cm)のパイレックス製反応管に充填した。この反応管に、n-ブタン-空気混合ガス(n-ブタン濃度4モル%)を、常圧下、1時間当りの供給n-ブタン1モル当りの触媒の重量(W/F)がW/F=0.7(g・h/mol)となる条件で供給し、n-ブタンの気相酸化反応を行った。n-ブタン転換率が90%となる条件に触媒層温度を調整し、この温度を反応温度として記録した。
また、反応出口ガスを水に通液させ、水に吸収された、副生物であるマレイン酸の生成量(単位:mg)を滴定法により測定し、一方、通液後の出口ガスをサンプリングし、水に吸収されなかった生成物である無水マレイン酸の生成量(単位:mg)を、ガスクロマトグラフィー内部標準法により測定して、下記式(C)から無水マレイン酸の選択率を算出した。
[無水マレイン酸の選択率(重量%)]=[無水マレイン酸の生成量]/([無水マレイン酸の生成量]+[マレイン酸の生成量])×100 (C)
表1に、各実施例、比較例における触媒の製造安定性の評価結果(ニオブの含浸状態と乾燥・焼成時の触媒の粒子の融着の有無を目視観察)と共に、上記無水マレイン酸製造試験の結果を示す。
Figure 2023136870000002
実施例1~7の触媒は、含浸処理を行わなかった比較例1と比較すると、無水マレイン酸選択率が高く、且つ、n-ブタン転化率が90%となるときの反応温度が低かった。
含浸割合(A)を100%とした比較例2では触媒の融着で触媒を回収できなかった。
また、比較例3では、工程(4)の焼成処理を行う代わりに、乾燥処理を行なったため、乾燥処理中に触媒粒子の融着が観察され、さらに乾燥炉内の一部に触媒粒子が融着したため、触媒回収時にロスがあった。さらに、得られた触媒は、無水マレイン酸選択率が低く、また、n-ブタン転化率が90%となるときの反応温度が高かった。
ニオブを担持していない比較例4では、n-ブタン転化率が90%となるときの反応温度が高かった。
[実施例8~13]
実施例1の工程(3)において、含浸割合(A)が72.0重量%、ニオブ担持量が表2記載のとおりとなるようにニオブの含有割合を調整したシュウ酸ニオブアンモニウム水溶液に、上記バナジウム-リン系複合酸化物1gを含浸させた以外は、実施例1と同じ方法により触媒を製造した。
[実施例14~17]
実施例1の工程(3)において、含浸割合(A)及びニオブ担持量が表2記載のとおりとなるようにニオブの含有割合を調整したシュウ酸ニオブアンモニウム水溶液に、上記バナジウム-リン系複合酸化物1gを含浸させ、且つ、工程(4)における焼成温度と焼成時間を表2に記載のとおりに変更した以外は、実施例1と同じ方法により触媒を製造した。
実施例8~17における触媒の製造安定性の評価結果(ニオブの含浸状態と焼成時の触媒の粒子の融着の有無を目視観察)と、前述の方法で行った無水マレイン酸製造試験結果を、比較例4の結果と共に、下記表2に示す。
Figure 2023136870000003
比較例4及び実施例8~17における、ニオブ担持量に対する、反応温度及び無水マレイン酸選択率の関係を図1に示した。図1から明らかなように、実施例8~17の触媒は、比較例4の触媒と比較すると、無水マレイン酸選択率と低い反応温度におけるn-ブタン転換率とのバランスに優れていた。

Claims (9)

  1. 炭化水素の気相酸化反応に用いる触媒を製造する方法において、下記工程(3)及び(4)を含むバナジウム-リン系酸化物触媒の製造方法。
    (3)前記触媒の前駆体であって、バナジウム及びリンを含むバナジウム-リン系触媒前駆体に、ニオブ、コバルト、鉄、亜鉛、モリブデン、チタン、セリウム、ガリウム、及びケイ素からなる群から選択される少なくとも1つの金属を含む液を、含浸割合が、該触媒前駆体が吸水しうる最大の含浸割合100重量%に対して、30~98重量%の範囲内となるように含浸させ、前記金属を担持させた金属担持触媒前駆体を得る工程
    (4)工程(3)で得られた金属担持触媒前駆体を、含水率30%以上の状態で焼成する工程
  2. 前記工程(3)の前に、下記工程(1)及び(2)を含む、請求項1に記載のバナジウム-リン系酸化物触媒の製造方法。
    (1)有機溶媒中で、バナジウム化合物をリン化合物と反応させて触媒前駆体を得る工程
    (2)リン及びバナジウムを含有する水溶液と、工程(1)で得られた触媒前駆体を混合してスラリーを形成し、得られたスラリーを少なくとも乾燥又は焼成して、バナジウム及びリンを含有するバナジウム-リン系触媒前駆体を得る工程
  3. 前記バナジウム-リン系触媒前駆体が、さらに、該バナジウム-リン系触媒前駆体の総重量100%に対して、ピロリン酸ジバナジルを80重量%以下含む、請求項1又は2に記載のバナジウム-リン系酸化物触媒の製造方法。
  4. 前記工程(4)において、前記金属担持触媒前駆体を、400℃以上の温度で焼成する、請求項1~3のいずれか一項に記載のバナジウム-リン系酸化物触媒の製造方法。
  5. 前記工程(3)において、前記金属の担持量が、前記金属担持触媒前駆体の総重量100%に対して、0.05重量%以上1.1重量%以下の範囲となるように含浸させる、請求項1~4のいずれか一項に記載のバナジウム-リン系酸化物触媒の製造方法。
  6. 前記工程(1)における前記バナジウム化合物が、5価のバナジウム化合物を含み、且つ、前記有機溶媒が、5価のバナジウムの少なくとも一部を4価のバナジウムに還元する有機溶媒である、請求項2~5のいずれか一項に記載の製造方法。
  7. 前記工程(1)におけるリン化合物が、5価のリン化合物であり、且つ、実質的にオルトリン酸種より成る、70重量%以上96重量%以下の濃度のリン酸である、請求項2~6のいずれか一項に記載の製造方法。
  8. 前記気相酸化反応が、前記炭化水素を気相酸化してジカルボン酸無水物を生成する反応である、請求項1~7のいずれか一項に記載のバナジウム-リン系酸化物触媒の製造方法。
  9. 前記気相酸化反応が、炭素数4の前記炭化水素を気相酸化して無水マレイン酸を生成する反応である、請求項1~7のいずれか一項に記載のバナジウム-リン系酸化物触媒の製造方法。
JP2022042797A 2022-03-17 2022-03-17 バナジウム-リン系酸化物触媒の製造方法 Pending JP2023136870A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2022042797A JP2023136870A (ja) 2022-03-17 2022-03-17 バナジウム-リン系酸化物触媒の製造方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2022042797A JP2023136870A (ja) 2022-03-17 2022-03-17 バナジウム-リン系酸化物触媒の製造方法

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2023136870A true JP2023136870A (ja) 2023-09-29

Family

ID=88146038

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2022042797A Pending JP2023136870A (ja) 2022-03-17 2022-03-17 バナジウム-リン系酸化物触媒の製造方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2023136870A (ja)

Similar Documents

Publication Publication Date Title
KR101399376B1 (ko) 글리세린의 탈수 반응에 의한 아크롤레인 및/또는 아크릴산의 제조용 촉매 및 방법
EP0221106B1 (en) Process of preparing catalysts for oxydehydrogenation of ethane to ethylene
JP6162706B2 (ja) 無水マレイン酸生成用の改良されたn−ブタン酸化触媒
KR101441150B1 (ko) 개선된 말레산 무수물 촉매 및 그의 제조 방법
JPH05239047A (ja) 無水フタル酸製造用触媒およびそれを用いてなる無水フタル酸の製造方法
JPS62144752A (ja) 摩擦抵抗触媒、触媒前駆物質、および触媒支持体
JP2020507451A (ja) ニオブおよびテルルの低下した含有量ならびにエタンの酸化的脱水素化に対するより高い活性を有するMoVNbTe触媒の合成
CN101557873A (zh) 用于催化气相氧化的混合氧化物催化剂
CN110479244B (zh) 钼基催化剂及其制备方法和应用
TW201004704A (en) Method for regenerating catalyst for the production of methacrylic acid and process for preparing methacrylic acid
TW200950882A (en) Method for regenerating catalyst for the production of methacrylic acid and process for preparing methacrylic acid
KR20200042921A (ko) 에탄에서 에틸렌으로의 산화적 탈수소화를 위한 MoVNbTe 쉘 촉매의 합성
WO2013048692A2 (en) Catalysts for producing acrylic acids and acrylates
US5530144A (en) Process for producing a phosphorus-vanadium oxide catalyst precursor, process for producing a phosphorus-vanadium oxide catalyst, and process for producing maleic anhydride by vapor phase oxidation using the catalyst
JP6804511B2 (ja) n−ブタンを無水マレイン酸へ酸化するための改良された触媒
WO2013043385A2 (en) Catalysts for producing acrylic acids and acrylates
US4824819A (en) Vanadium coated phosphorus-vandium oxide and phosphorus-vanadium oxide co-metal catalyst and process for the manufacture of maleic anhydride
JP2023136870A (ja) バナジウム-リン系酸化物触媒の製造方法
JP2009522086A (ja) 不飽和アルデヒドの不飽和カルボン酸への酸化のためのヘテロポリ酸触媒を合成する方法
JP5831329B2 (ja) 複合酸化物触媒
JP3603352B2 (ja) リン−バナジウム酸化物触媒の製造方法
US4127591A (en) Method of producing maleic anhydride
WO2005058498A1 (en) Catalysts for alkane or alkene oxidation and ammoxidation
JPH052375B2 (ja)
JP3555205B2 (ja) リン−バナジウム酸化物触媒前駆体の製造方法