JP4318111B2 - ポリイミドフィルムおよびその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は寸法安定性に優れ、ファインピッチ回路用基板、特にフィルム幅方向に狭ピッチに配線されるCOF(Chip on Film)用に好適なポリイミドフィルム及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
フレキシブルプリント基板や半導体パッケージの高繊細化に伴い、それらに用いられるポリイミドフィルムへの要求事項も多くなっており、例えば金属との張り合わせによる寸法変化やカールを小さくすること、およびハンドリング性の高いことなどが挙げられ、ポリイミドフィルムの物性として金属並の熱膨張係数を有すること及び高弾性率であること、さらには吸水による寸法変化の小さいフィルムが要求され、それに応じたポリイミドフィルムが開発されてきた。
【0003】
例えば特開昭60−210629、特開昭64−16832、特開平1−131241号公報では、弾性率を高めるためパラフェニレンジアミンを使用したポリイミドフィルムの例が記載されている。また特開昭59−164328号公報、特開昭61−111359号公報では高弾性を保持しつつ吸水による寸法変化を低減させるためパラフェニレンジアミンに加えビフェニルテトラカルボン酸二無水物を使用したポリイミドフィルムの例が記載されている。
【0004】
さらには特開平4−25434号公報では、金属との貼り合わせ工程での寸法変化を抑えるため、フィルムの機械搬送方向(以下MDという)の熱膨張係数をフィルムの幅方向(以下TDという)の熱膨張係数よりも小さく設定し異方性を持たせたポリイミドフィルムの例が記載されている。これは通常FPC工程では金属との貼り合わせをロールトゥロールで加熱して行うラミネーション方式が採用されており、この工程でのフィルムのMDにテンションがかかって伸びが生じ、一方TDには縮みが生じる現象を相殺させることを目的としている。
【0005】
ところで近年、配線の微細化への対応で、銅貼り積層体は接着剤を用いない2層タイプ(ポリイミドフィルム上に銅層が直接形成)が採用されている。これはフィルム上へのめっき法により銅層を形成させる方法、銅箔上にポリアミック酸をキャストした後イミド化させる方法があるが、いずれもラミネーション方式のような熱圧着工程ではなく、したがってフィルムのMDの熱膨張係数をTDより小さくする必要は無くなり、さらには2層タイプで主流をしめるCOF用途では、フィルムのTDに狭ピッチで配線されるパターンが一般的で、逆にTDの熱膨張係数が大きいとチップ実装ボンディング時等で配線間の寸法変化が大きくなり、ファインピッチ化要求への対応が困難であった。
【0006】
【特許文献1】
特開昭60−210629号公報
【特許文献2】
特開昭64−16832号公報
【特許文献3】
特開平1−131241号公報
【特許文献4】
特開昭59−164328号公報
【特許文献5】
特開昭61−111359号公報
【特許文献6】
特開平4−25434号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上述した従来技術における問題点の解決を課題として検討した結果なされたものであり、フィルムTDの寸法変化を低減させることができるCOF用などのファインピッチ回路用基板に好適なポリイミドフィルムおよびその製造方法の提供を目的とするものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記の目標を達成するために、本発明のポリイミドフィルムは、ジアミン成分としてパラフェニレンジアミン、3,4’−ジアミノジフェニルエーテルのいずれかを使用したポリイミドフィルムであって、フィルムの機械搬送方向(MD)の熱膨張係数αMDと幅方向(TD)の熱膨張係数αTDの比(αMD/αTD)が1.2より大きく1.7未満であり、フィルムの幅方向(TD)の熱膨張係数α TD が5〜16ppm/℃の範囲にあることを特徴とする。
【0009】
さらに、本発明ポリイミドフィルムは下記(1)〜(4)を併せ持つことが好ましい。
(1)ポリイミドフィルムが、ジアミン成分としてパラフェニレンジアミンおよび4,4’−ジアミノジフェニルエーテルを、酸二無水物成分として3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物およびピロメリット酸二無水物を使用したポリイミドフィルムであること。
(2)ポリイミドフィルムが、ジアミン成分として3,4’−ジアミノジフェニルエーテルおよび4,4’−ジアミノジフェニルエーテルを、酸二無水物成分としてピロメリット酸二無水物を使用したポリイミドフィルムであること。
(3)フィルムの機械搬送方向(MD)と幅方向(TD)の200℃加熱収縮率が共に0.05%以下、特に0.03%以下であること
また、本発明ポリイミドフィルムの製造方法は、フィルムの機械搬送方向の延伸倍率(MDX)と幅方向の延伸倍率(TDX)の比(MDX/TDX)が0.70以上0.90未満であることを特徴とし、さらには200〜500℃の温度でアニール処理することにより熱リラックスさせる工程を含むことを特徴とする。
【0010】
MT比=(VMD 2−VTD 2)/{(VMD 2+VTD 2)/2}×100
(4)フィルムの引っ張り弾性率が4.0GPa以上であること
また、本発明ポリイミドフィルムの製造方法は、フィルムの機械搬送方向の延伸倍率(MDX)と幅方向の延伸倍率(TDX)の比(MDX/TDX)が0.70以上0.90未満であることを特徴とし、さらには200〜500℃の温度でアニール処理することにより熱リラックスさせる工程を含むことを特徴とする。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明のポリイミドフィルムを製造するに際しては、まず芳香族ジアミン成分と酸無水物成分とを有機溶媒中で重合させることにより、ポリアミック酸溶液を得る。
【0012】
上記芳香族ジアミン類の具体例としては、パラフェニレンジアミン、メタフェニレンジアミン、ベンチジン、パラキシリレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、1,5−ジアミノナフタレン、3,3’−ジメトキシベンチジン、1,4−ビス(3メチル−5アミノフェニル)ベンゼンおよびこれらのアミド形成性誘導体が挙げられる。この中でフィルムの引っ張り弾性率を高くする効果のあるパラフェニレンジアミン、ベンジジン、3,4’−ジアミノジフェニルエーテルなどのジアミンの量を調整し、最終的に得られるポリイミドフィルムの引っ張り弾性率が4.0GPa以上にすることが、ファインピッチ基板用として好ましい。
【0013】
上記酸無水物成分の具体例としては、ピロメリット酸、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸、2,3’,3,4’−ビフェニルテトラカルボン酸、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸、2,3,6,7−ナフタレンジカルボン酸、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル、ピリジンー2,3,5,6−テトラカルボン酸およびこれらのアミド形成性誘導体などの酸無水物が挙げられる。
【0014】
また、本発明において、ポリアミック酸溶液の形成に使用される有機溶媒の具体例としては、例えば、ジメチルスルホキシド、ジエチルスルホキシドなどのスルホキシド系溶媒、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミドなどのホルムアミド系溶媒、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミドなどのアセトアミド系溶媒、N−メチル−2−ピロリドン、N−ビニル−2−ピロリドンなどのピロリドン系溶媒、フェノール、o−,m−,またはp−クレゾール、キシレノール、ハロゲン化フェノール、カテコールなどのフェノール系溶媒、あるいはヘキサメチルホスホルアミド、γ−ブチロラクトンなどの非プロトン性極性溶媒を挙げることができ、これらを単独又は混合物として用いるのが望ましいが、さらにはキシレン、トルエンのような芳香族炭化水素の使用も可能である。
【0015】
重合方法は公知のいずれの方法で行ってもよく、例えば
(1)先に芳香族ジアミン成分全量を溶媒中に入れ、その後芳香族テトラカルボン酸類成分を芳香族ジアミン成分全量と当量になるよう加えて重合する方法。
【0016】
(2)先に芳香族テトラカルボン酸類成分全量を溶媒中に入れ、その後芳香族ジアミン成分を芳香族テトラカルボン酸類成分と等量になるよう加えて重合する方法。
【0017】
(3)一方の芳香族ジアミン化合物を溶媒中に入れた後、反応成分に対して芳香族テトラカルボン酸類化合物が95〜105モル%となる比率で反応に必要な時間混合した後、もう一方の芳香族ジアミン化合物を添加し、続いて芳香族テトラカルボン酸類化合物を全芳香族ジアミン成分と全芳香族テトラカルボン酸類成分とがほぼ等量になるよう添加して重合する方法。
【0018】
(4)芳香族テトラカルボン酸類化合物を溶媒中に入れた後、反応成分に対して一方の芳香族ジアミン化合物が95〜105モル%となる比率で反応に必要な時間混合した後、芳香族テトラカルボン酸類化合物を添加し、続いてもう一方の芳香族ジアミン化合物を全芳香族ジアミン成分と全芳香族テトラカルボン酸類成分とがほぼ等量になるよう添加して重合する方法。
【0019】
(5)溶媒中で一方の芳香族ジアミン成分と芳香族テトラカルボン酸類をどちらかが過剰になるよう反応させてポリアミド酸溶液(A)を調整し、別の溶媒中でもう一方の芳香族ジアミン成分と芳香族テトラカルボン酸類をどちらかが過剰になるよう反応させポリアミド酸溶液(B)を調整する。こうして得られた各ポリアミド酸溶液(A)と(B)を混合し、重合を完結する方法。この時ポリアミド酸溶液(A)を調整するに際し芳香族ジアミン成分が過剰の場合、ポリアミド酸溶液(B)では芳香族テトラカルボン酸成分を過剰に、またポリアミド酸溶液(A)で芳香族テトラカルボン酸成分が過剰の場合、ポリアミド酸溶液(B)では芳香族ジアミン成分を過剰にし、ポリアミド酸溶液(A)と(B)を混ぜ合わせこれら反応に使用される全芳香族ジアミン成分と全芳香族テトラカルボン酸類成分とがほぼ等量になるよう調整する。
【0020】
なお、重合方法はこれらに限定されることはなく、その他公知の方法を用いてもよい。
【0021】
こうして得られるポリアミック酸溶液は、固形分を5〜40重量%、好ましくは10〜30重量%を含有しており、またその粘度はブルックフィールド粘度計による測定値で10〜2000Pa・s、好ましくは、100〜1000Pa・sのものが、安定した送液のために好ましく使用される。また、有機溶媒溶液中のポリアミック酸は部分的にイミド化されていてもよい。
【0022】
次に、本発明のポリイミドフィルムの製造方法について説明する。
【0023】
ポリイミドフィルムを製膜する方法としては、ポリアミック酸溶液をフィルム状にキャストし熱的に脱環化脱溶媒させてポリイミドフィルムを得る方法、およびポリアミック酸溶液に環化触媒及び脱水剤を混合し化学的に脱環化させてゲルフィルムを作成しこれを加熱脱溶媒することによりポリイミドフィルムを得る方法が挙げられるが、後者の方が得られるポリイミドフィルムの熱膨張係数を低く抑えることができるので好ましい。
【0024】
化学的に脱環化させる方法においては、まず上記ポリアミック酸溶液を調製する。
【0025】
なお、このポリアミック酸溶液は、必要に応じて、酸化チタン、シリカ、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、リン酸水素カルシウムおよびポリイミドフィラーなどの化学的に不活性な有機フィラーや無機フィラーを、30重量%未満濃度で含有することができる。
【0026】
ここで使用するポリアミック酸溶液は、予め重合したポリアミック酸溶液であっても、またフィラー粒子を含有させる際に順次重合したものであってもよい。
【0027】
上記ポリアミック酸溶液は、環化触媒(イミド化触媒)、脱水剤およびゲル化遅延剤などを含有することができる。
【0028】
本発明で使用される環化触媒の具体例としては、トリメチルアミン、トリエチレンジアミンなどの脂肪族第3級アミン、ジメチルアニリンなどの芳香族第3級アミン、およびイソキノリン、ピリジン、ベータピコリンなどの複素環第3級アミンなどが挙げられるが、複素環式第3級アミンから選ばれる少なくとも一種類のアミンを使用するのが好ましい。
【0029】
本発明で使用される脱水剤の具体例としては、無水酢酸、無水プロピオン酸、無水酪酸などの脂肪族カルボン酸無水物、および無水安息香酸などの芳香族カルボン酸無水物などが挙げられるが、無水酢酸および/または無水安息香酸が好ましい。
【0030】
ポリアミック酸溶液からポリイミドフィルムを製造する方法としては、環化触媒および脱水剤を含有せしめたポリアミック酸溶液をスリット付き口金から支持体上に流延してフィルム状に成形し、支持体上でイミド化を一部進行させて自己支持性を有するゲルフィルムとした後、支持体より剥離し、加熱乾燥/イミド化し、熱処理を行う。
【0031】
上記ポリアミック酸溶液は、スリット状口金を通ってフィルム状に成型され、加熱された支持体上に流延され、支持体上で熱閉環反応をし、自己支持性を有するゲルフィルムとなって支持体から剥離される。
【0032】
上記支持体とは、金属製の回転ドラムやエンドレスベルトであり、その温度は液体または気体の熱媒によりおよび/または電気ヒーターなどの輻射熱により液体または気体の熱媒によりおよび/または電気ヒーターなどの輻射熱により制御される。
【0033】
上記ゲルフィルムは、支持体からの受熱および/または熱風や電気ヒータなどの熱源からの受熱により30〜200℃、好ましくは40〜150℃に加熱されて閉環反応し、遊離した有機溶媒などの揮発分を乾燥させることにより自己支持性を有するようになり、支持体から剥離される。
【0034】
上記支持体から剥離されたゲルフィルムは、通常回転ロールにより走行速度を規制しながら走行方向に延伸される。機械搬送方向への延伸倍率(MDX)は、140℃以下の温度で1.05〜1.9倍、好ましくは1.1〜1.6倍、さらに好ましくは1.1〜1.5倍で実施される。搬送方向に延伸されたゲルフィルムは、テンター装置に導入され、テンタークリップに幅方向両端部を把持されて、テンタークリップと共に走行しながら、幅方法へ延伸される。この時フィルムの機械搬送方向の延伸倍率と幅方向の延伸倍率の比(MDX/TDX)が0.70以上0.90未満にすることにより、フィルムTDに配向勝ったフィルムを得ることができる。これら範囲内にて両者の延伸倍率の調整を行い、フィルムのMDの熱膨張係数αMDとTDの熱膨張係数αTDの比(αMD/αTD)が1.2より大きく1.7未満になるようにする。この比が1.2より小さいとフィルムTDの熱膨張係数が大きくなることになり寸法精度上好ましくなく、1.7より大きくなるとフィルムの異方性が高くなり走行性悪化などの影響を及ぼすので好ましくない。
【0035】
上記の乾燥ゾーンで乾燥したフィルムは、熱風、赤外ヒーターなどで15秒から10分加熱される。次いで、熱風および/または電気ヒーターなどにより、250〜500の温度で15秒から20分熱処理を行う。
【0036】
また走行速度を調整しポリイミドフィルムの厚みを調整するが、ポリイミドフィルムの厚みとしては3〜250μmが好ましい。これより薄くても厚くてもフィルムの製膜性が著しく悪化するので好ましくない。
【0037】
このようにして得られたポリイミドフィルムをさらに200〜500℃の温度でアニール処理を行うことが好ましい。そうすることによってフィルムの熱リラックスが起こり加熱収縮率を小さく抑えることができる。本発明ポリイミドフィルムの製法ではフィルムTDへの配向が強いため、その分この方向での加熱収縮率が高くなってしまいがちであるが、アニール処理からの熱リラックスにより200℃での加熱収縮率をフィルムのMD、TD共に0.05%以下に抑えることができるのでより一層高寸法精度が高くなり好ましい。具体的には200〜500℃の炉の中を、低張力下にてフィルムを走行させ、アニール処理を行う。炉の中でフィルムが滞留する時間が処理時間となるが、走行速度を変えることでコントロールすることになり、30秒〜5分の処理時間であることが好ましい。これより短いとフィルムに充分熱が伝わらず、また長いと過熱気味になり平面性を損なうので好ましくない。また走行時のフィルム張力は10〜50N/mが好ましく、さらには20〜30N/mが好ましい。この範囲よりも張力が低いとフィルムの走行性が悪くなり、また張力が高いと得られたフィルムの走行方向の熱収縮率が高くなるので好ましくない。
【0038】
また、得られたポリイミドフィルムに接着性を持たせるため、フィルム表面にコロナ処理やプラズマ処理のような電気処理あるいはブラスト処理のような物理的処理を行ってもよい。
【0039】
このようにして得られるポリイミドフィルムは、フィルムのTDへの配向を進ませることで、この方向の熱膨張係数を低く抑えることができ、さらに加熱収縮率も低く、また高い引っ張り弾性率を保持しているので、ファインピッチ回路用基板、特にフィルムのTDに狭ピッチに配線されるCOF(Chip on Film)用に好適である。
【0040】
【実施例】
以下、実施例により本発明を具体的に説明する。
【0041】
なお、実施例中PPDはパラフェニレンジアミン、4,4’−ODAは4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ODAは3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、PMDAはピロメリット酸二無水物、BPDAは3,3’−4,4’−ジフェニルテトラカルボン酸二無水物、DMAcはN,N−ジメチルアセトアミドをそれぞれ表す。
【0042】
また、実施例中の各特性は次の方法で評価した。
(1)熱膨張係数
機器:TMA−50を使用し、測定温度範囲:50〜200℃、昇温速度:10℃/minの条件で測定した。
(2)加熱収縮率
25℃、60%RHに調整された部屋に2日間放置した後のフィルム寸法(L1)を測定し、続いて200℃60分間加熱した後再び25℃、60%RHに調整された部屋に2日間放置した後フィルム寸法(L2)を測定し、下記式計算により評価した。
【0043】
加熱収縮率 = −(L2−L1)/L1×100
(3)MT比
「SONIC SHEET TESTER SST−250型」(野村商事株式会社製)を用い、フィルムのMD、TDそれぞれの超音波伝播速度(VMD、VTD)を測定した。これらの値から下記式によってMT比を求めた。
【0044】
MT比=(VMD 2−VTD 2)/{(VMD 2+VTD 2)/2}×100
この値はフィルム配向の向きを表す尺度であり、プラスの時フィルムはMD配向が強く、マイナスの時フィルムはTD配向が強いことを表す。
(4)引っ張り弾性率
機器:RTM−250を使用し、引張速度:100mm/minの条件で測定した。
(5)寸法変化率
フィルム上に硫酸銅メッキ液により電解メッキにて20μm厚の銅層を形成させ、100μmピッチ(ライン間隔50μm)でパターンエッチングしTDに銅を配線させたのち、シプレイファーイースト製無電解スズメッキ液LT34にてスズメッキを施し、この時の寸法を測定した(L3)。これを250℃のボンディングステージに載せ400℃のボンディングツールによりチップとボンディングした後の寸法を測定した(L4)。寸法変化率は下記式により求めた。
【0045】
寸法変化率 = (L4−L3)/L3×100
[実施例1]
500mlのセパルブルフラスコにDMAc239.1gを入れ、ここにPPD3.94g(0.036モル)、4,4’−ODA21.87g(0.109モル)、BPDA12.85g(0.044モル)、PMDA22.24g(0.102モル)を投入し、常温常圧中で1時間反応させ、均一になるまで撹拌してポリアミック酸溶液を得た。
【0046】
このポリアミック酸溶液から15gを採って、マイナス5℃で冷却した後、無水酢酸1.5gとβ−ピコリン1.6gを混合することにより、ポリアミック酸のイミド化を行った。
【0047】
こうして得られたポリイミドポリマーを、90℃の回転ドラムに30秒流延させた後、得られたゲルフィルムを100℃で5分間加熱しながら、走行方向に1.1倍延伸した。次いで幅方向両端部を把持して、270℃で2分間加熱しながら幅方向に1.4倍延伸した後、380℃にて5分間加熱し、38μm厚のポリイミドフィルムを得た。このポリイミドフィルムを220℃に設定された炉の中で20N/mの張力をかけて1分間アニール処理を行った後、各特性を評価した。
【0048】
フィルムMDの熱膨張係数αMD :18.9ppm/℃
フィルムTDの熱膨張係数αTD :12.5ppm/℃
200℃加熱収縮率(MD) :0.02%
200℃加熱収縮率(TD) :0.01%
MT比 :−11.8
引っ張り弾性率(MD) :5.3GPa
引っ張り弾性率(TD) :5.8GPa
寸法変化率 :0.05%
[実施例2〜4]
実施例1と同様の手順で、芳香族ジアミン成分および芳香族テトラカルボン酸成分を表1に示す割合でそれぞれポリアミック酸溶液を得た後、横方向・縦方向の延伸倍率を表1のように行い実施例1と同じ操作で得られたポリイミドフィルムの各特性評価を行い、表1にその結果を示した。
【0049】
[実施例5]
500mlのセパルブルフラスコにDMAc239.1gを入れ、ここに3,4’−ODA16.03g(0.080モル)、4,4’−ODA13.12g(0.066モル)、PMDA31.75g(0.146モル)を投入し、常温常圧中で1時間反応させ、均一になるまで撹拌してポリアミック酸溶液を得た。
【0050】
このポリアミック酸溶液から15gを採って、マイナス5℃で冷却した後、無水酢酸1.5gとβ−ピコリン1.6gを混合することにより、ポリアミック酸のイミド化を行った。
【0051】
こうして得られたポリイミドポリマーを、90℃の回転ドラムに30秒流延させた後、得られたゲルフィルムを100℃で5分間加熱しながら、走行方向に1.1倍延伸した。次いで幅方向両端部を把持して、270℃で2分間加熱しながら幅方向に1.4倍延伸した後、380℃にて5分間加熱し、38μm厚のポリイミドフィルムを得た。このポリイミドフィルムを220℃に設定された炉の中で20N/mの張力をかけて1分間アニール処理を行った後、各特性を評価した。結果を表1に示す。
【0052】
【表1】
【0053】
[比較例1]
実施例1と同様の手順で、芳香族ジアミン成分および芳香族テトラカルボン酸成分を表1に示す割合でそれぞれポリアミック酸溶液を得た後、横方向・縦方向の延伸倍率を表2のよう行い実施例1と同じ操作で得られたポリイミドフィルムの各特性評価を行い、表2にその結果を示した。
【0054】
[比較例2]
500mlのセパルブルフラスコにDMAc239.1gを入れ、ここに4,4’−ODA29.15g(0.146モル)、PMDA31.75g(0.146モル)を投入し、常温常圧中で1時間反応させ、均一になるまで撹拌してポリアミック酸溶液を得た。
【0055】
このポリアミック酸溶液から15gを採って、マイナス5℃で冷却した後、無水酢酸1.5gとβ−ピコリン1.6gを混合することにより、ポリアミック酸のイミド化を行った。
【0056】
こうして得られたポリイミドポリマーを、90℃の回転ドラムに30秒流延させた後、得られたゲルフィルムを100℃で5分間加熱しながら、走行方向に1.1倍延伸した。次いで幅方向両端部を把持して、270℃で2分間加熱しながら幅方向に1.3倍延伸した後、380℃にて5分間加熱し、38μm厚のポリイミドフィルムを得た。このポリイミドフィルムを220℃に設定された炉の中で20N/mの張力をかけて1分間アニール処理を行った後、各特性を評価し、表2にその結果を示した。
【0057】
【表2】
【0058】
【発明の効果】
本発明のポリイミドフィルムは、フィルムのTDへの配向を進ませることで、この方向の熱膨張係数を低く抑えることができ、さらに加熱収縮率も低く、また高い引っ張り弾性率を保持しているので、ファインピッチ回路用基板、特にフィルムのTDに狭ピッチに配線されるCOF(Chip on Film)用に好適に用いることができる。
Claims (8)
- ジアミン成分としてパラフェニレンジアミン、3,4’−ジアミノジフェニルエーテルのいずれかを使用したポリイミドフィルムであって、フィルムの機械搬送方向(MD)の熱膨張係数αMDと幅方向(TD)の熱膨張係数αTDの比(αMD/αTD)が1.2より大きく1.7未満であり、フィルムの幅方向(TD)の熱膨張係数α TD が5〜16ppm/℃の範囲にあることを特徴とするポリイミドフィルム。
- 前記ポリイミドフィルムが、ジアミン成分としてパラフェニレンジアミンおよび4,4’−ジアミノジフェニルエーテルを、酸二無水物成分として3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物およびピロメリット酸二無水物を使用したポリイミドフィルムであることを特徴とする請求項1記載のポリイミドフィルム。
- 前記ポリイミドフィルムが、ジアミン成分として3,4’−ジアミノジフェニルエーテルおよび4,4’−ジアミノジフェニルエーテルを、酸二無水物成分としてピロメリット酸二無水物を使用したポリイミドフィルムであることを特徴とする請求項1記載のポリイミドフィルム。
- フィルムの機械搬送方向(MD)と幅方向(TD)の200℃加熱収縮率が共に0.05%以下であることを特徴とする請求項1記載のポリイミドフィルム。
- フィルムの機械搬送方向(MD)と幅方向(TD)の200℃加熱収縮率が共に0.03%以下であることを特徴とする請求項1記載のポリイミドフィルム。
- フィルムの引っ張り弾性率が4.0GPa以上であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項記載のポリイミドフィルム。
- 請求項1〜6のいずれか1項記載のポリイミドフィルムで、かつフィルムの機械搬送方向の延伸倍率(MDX)と幅方向の延伸倍率(TDX)の比(MDX/TDX)が0.70以上0.90未満になるように製造することを特徴とするポリイミドフィルムの製造方法。
- 200〜500℃の温度でアニール処理することにより熱リラックスさせる工程を含むことを特徴とする請求項7記載のポリイミドフィルムの製造方法。
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