JP4316706B2 - 加熱殺菌乃至滅菌方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、容器内に内容物を充填し且つ口部を樹脂製キャップで密封してなる包装体に熱水を散布することから成る加熱殺菌乃至滅菌方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、食品包装体の殺菌乃至滅菌には、超高温短時間殺菌(UHT)包装、高温短時間殺菌(HTST)包装、レトルト殺菌包装、無菌充填包装などの完全殺菌包装や、熱間充填包装、湯殺菌包装などの低温殺菌包装が使用されている。
【0003】
食品類の内、飲料の包装には、缶の他に、PETボトル等のプラスチック製ボトルや、ガラス製のボトルが広く使用されており、これらボトルの密封には、金属製或いはプラスチック製のキャップが使用されている。
飲料類に対する殺菌には、無菌充填や、低温殺菌が一般的に用いられており、殺菌のためのコストや、内容物の香味保持性の点から、熱間充填、湯殺菌或いはこれらの組合せが一般的となりつつある。低温殺菌の温度としては、一般に60乃至95℃の温度が用いられている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、容器内に内容物を充填し且つ口部を樹脂製キャップで密封してなる包装体に熱水を散布して、加熱殺菌乃至滅菌を行う方法では、キャップとして、その天面乃至頂部の内面から高さ方向に離隔した位置で容器口部の内周面乃至外周面と密封係合する部分を備えたキャップを使用した場合、容器とキャップとの密封係合部分乃至その近傍の殺菌乃至滅菌が不十分となることが分かった。
【0005】
即ち、容器とキャップとの密封係合部分乃至その近傍への殺菌乃至滅菌温度の伝導は、キャップの天面乃至頂部或いはスカート部からの熱伝導によらざるを得ないのであるが、前記密封係合部分とキャップの天面乃至頂部或いはスカート部との間には熱伝導性の点で無視できない距離があり、しかもキャップを構成するプラスチックの熱伝導率も低いため、容器とキャップとの密封係合部分乃至その近傍の温度があまり上昇せず、殺菌乃至滅菌が不十分となるものと思われる。
【0006】
従って、本発明の目的は、容器内に内容物を充填し且つ口部を樹脂製キャップで密封してなる包装体に熱水を散布して、加熱殺菌乃至滅菌を行う方法において、キャップとして、その天面乃至頂部の内面から高さ方向に離隔した位置で容器口部の内周面乃至外周面と密封係合する部分を備えたキャップを使用しても、前記密封係合部分乃至その近傍の加熱殺菌乃至滅菌が有効に行われる方法を提供するにある。本発明の他の目的は、熱間充填及び熱水散布による殺菌乃至滅菌に使用され、容器口部とキャップとの密封係合部分乃至その近傍の加熱殺菌乃至滅菌が有効に行われる方法を提供するにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明によれば、容器内に内容物を充填し且つ口部を樹脂製キャップで密封してなる包装体に熱水を散布することから成る加熱殺菌乃至滅菌方法において、前記キャップがその天面乃至頂部の内面から高さ方向に離隔した位置で容器口部の内周面乃至外周面と密封係合する部分を備えた前記キャップであり、前記キャップのスカート部から天面乃至頂部に至る部分には、前記密封係合部分に対応する容器口部外面の空間に至る微細貫通口が形成され、容器口部との密封係合部分が前記キャップ天面乃至頂部と別体に形成された樹脂製中栓であり、前記中栓は容器口部の頂面或いは頂面及びコーナー部と係合するフランジ部と、容器口部の内周面と係合する側壁部と、側壁部の下端を閉塞する閉塞底面部とを備え、前記フランジ部の容器口部との接触面は前記キャップの天面乃至頂面から離隔しており、前記中栓の側壁部の外周には側壁部の高さ方向に延びるリブ部と凹部とが交互に多数配置され、前記各リブ部の中間にはフランジ面に平行な共通平面上でしかも共通な円周上に位置する突起部が形成され、熱水散布に先だって、内容物の熱間充填と前記キャップ閉栓後の横倒しとを行う、ことを特徴とする加熱殺菌乃至滅菌方法が提供される。本発明に用いるキャップの微細貫通口は、上記構造のものであればよく、特に限定されないが、好適な例として、天面乃至頂部の周縁部に周状に分布して形成された高さ方向に延びるスリット状貫通口であるものや、スカート部から天面乃至頂部の周縁部にかけて径方向及び高さ方向に延びる切り欠き状貫通口であるものなどが挙げられる。
【0009】
【発明の実施形態】
本発明の加熱殺菌乃至滅菌方法では、容器口部を密封する樹脂キャップとして、その天面乃至頂部の内面から高さ方向(下方向)に離隔した位置で容器口部の内周面乃至外周面と密封係合する部分を備えたキャップであって、樹脂キャップのスカート部から天面乃至頂部に至る部分に、前記密封係合部分に対応する容器口部外面の空間に至る微細貫通口を形成したものを使用する。
【0010】
既に指摘したとおり、熱水散布による殺菌乃至滅菌方法では、キャップと容器口部との密封係合部分乃至その近傍とキャップの天面乃至頂部或いはスカート部との間には熱伝導性の点で無視できない距離があり、しかもキャップを構成するプラスチックの熱伝導率も低いため、容器とキャップとの密封係合部分乃至その近傍の温度があまり上昇せず、殺菌乃至滅菌が不十分となるのであるが、本発明では前記構造のキャップを用いることにより、密封包装体に熱水を散布した際、微細貫通口を通して、密封係合部分に対応する容器口部外面に接する空間内に熱水が流入し、この熱水により容器口部外面が直接加熱され、この部分からの熱伝導により密封係合部分乃至その近傍がより高温に加熱され、殺菌乃至滅菌を十分に行うことが可能となるのである。
【0011】
後述する実施例を参照されたい。樹脂キャップのスカート部から天面乃至頂部に至る部分に、中栓の側壁部に対応する容器口部外面の空間に至る微細貫通口を形成したキャップ(本発明の実施例)と、微細貫通口を形成していない以外は同様の構成のキャップ(比較例)とについて、加熱殺菌乃至滅菌時の温度測定を行った。即ち、内容積500mlのPETボトルに液温87℃の水を熱間充填し、上記各キャップを打栓した後に30秒間容器を横倒しした。しかる後に、正立状態で温度80℃の熱水を180秒間散布した。中栓側壁部の上部の温度測定を行ったところ次の結果が得られた。
尚、温度上昇勾配は温度55℃からの温度の立ち上がりから求めた。
上記の結果によると、微細貫通開口を設けたキャップの方が、微細貫通口を設けていないキャップに比べて、温度の立ち上がり、到達最高温度及び高温の継続時間の全てにおいて勝っており、キャップの中栓側壁部上部の加熱殺菌乃至滅菌性に優れていることが了解される。
【0012】
本発明において、樹脂キャップのスカート部から天面乃至頂部に至る部分に、密封係合部分に対応する容器口部外面の空間に至る微細貫通口を設けるという簡単な手段で、熱水散布による密封係合部分乃至その近傍の加熱殺菌乃至滅菌が有効に行われるという事実は、実験により現象として見いだされたものであり、全く予想外のものである。
即ち、本発明において設ける微細貫通口とは、文字通り微細なものであり、その貫通口1個当たりの開口断面積は、一般に0.02乃至0.10mm2 の範囲にある。このような微細な開口から、密封係合部分乃至その近傍の温度を高める程度の熱水が有効に流入するということは、驚くべきことであるが、その原因としては、散布する熱水では、温度上昇により常温の水に比して粘度や接触角が低くなることにより、キャップの濡れ性が向上しており、しかも微細貫通口では毛細管現象が作用していることと密接に関係している。
実際に、後述する実施例1のキャップについて、温度を変化させて各種値と共に微細貫通孔からの浸透性を測定した結果は次の通りである。
液体 水
温度(℃) 25 50 70 80
表面張力(γ) 71.96 67.90 64.41 62.60
接触角(θ) 93゜ 80゜
粘度 0.903 0.549 0.356
濡れ性(γ×cosθ) -3.6 11.8
スリットへの浸透 × ○ ○ ○
尚、5%エタノール水溶液の室温の表面張力は54.7、接触角は84゜、粘度は0.667、濡れ性は5.7 であるが、貫通孔からの浸透は不良であり、濡れ性が浸透に大きく寄与している。
【0013】
本発明に用いる熱水散布による加熱殺菌乃至滅菌においては、内容物やキャップの形状及び構造によっても相違するが、一般に60乃至95℃、特に65乃至90℃の熱水を用いて殺菌を行うのが適当である。また、熱水散布の時間も、温度やその他の条件によって相違するが、一般に2乃至20分間、特に3乃至15分間程度の時間が好適である。熱水の散布量は、温度及び時間によっても相違するが、一般に密封係合部分乃至その近傍の温度が所定の加熱殺菌乃至滅菌温度に保持されるようなものであってよい。
殺菌乃至滅菌に用いた熱水は、回収し、必要により熱交換機或いは加熱装置を通した後、熱水散布に循環使用することができる。
【0014】
また、熱水を散布すべき包装体は、正立状態でも横倒し状態でも何れの状態でもよいが、殺菌乃至滅菌装置のコンパクトさと作業性の点では、包装体がキャップを上にした正立状態で殺菌乃至滅菌操作を行うのが望ましく、本発明の方法によれば、この場合にもキャップの密封係合部乃至その近傍の殺菌乃至滅菌が有効に行われるものである。
殺菌乃至滅菌後の包装体は、これを室温にまで放冷してもよいが、内容物の劣化のおそれがあることや、キャップの密封部分が何かの拍子でゆるむおそれがあるため、冷却水を散布し或いは冷却水に浸漬して、積極的に冷却することが好ましい。
【0015】
本発明の加熱殺菌乃至滅菌方法は、熱間充填法との組合せで実施するのが特に有効である。
熱間充填では、内容物液体の種類によっても相違するが、一般に包装容器内に温度が75℃以上、特に80乃至95℃の液体内容物を充填することにより、内容物の殺菌乃至滅菌と容器の殺菌乃至滅菌とを同時に行う。容器内への熱間充填及びキャップの閉栓は、当然のことながら正立状態で行われるが、充填及び閉栓後容器を転倒させ、この状態で10秒乃至60秒間、特に20乃至40秒間保持して、キャップの殺菌乃至滅菌をも行う。
包装体の横倒しは、容器の口部やキャップの内面が内容物液体と接触する限り、その仕方に特に制限はないが、必要により包装体を回転させたり、振動を加えたりすることもできる。
容器が正立状態で内容物の充填とキャップの打栓とを行っただけでは、キャップと内容物液面との間には、ヘッドスペースが必然的に介在し、キャップは殺菌乃至滅菌が不十分な状態に維持されるのであるが、これを横倒しすることにより、キャップの天面部内面が高温の内容液と接触して殺菌乃至滅菌が有効に行われる。
【0016】
しかしながら、キャップ天面乃至頂部の内面から高さ方向に離隔した位置に容器口部との密封係合部分が存在したり、キャップ天面乃至頂部と容器口部との間に空間が形成さていたりすると、これらの部分の殺菌乃至滅菌が不十分なものとなるのであるが、本発明によれば、前述した微細貫通口を備えたキャップを使用し、熱水散布を行うことにより、キャップの密封係合部乃至その近傍の部分の加熱殺菌乃至滅菌をも有効に行うことが可能となるものである。
【0017】
包装体の横倒しは、容器の口部やキャップの内面が内容物液体と接触する限り、その仕方に特に制限はないが、必要により包装体を回転乃至回動させたり、振動を加えたりすることもできる。
【0018】
【実施例】
本発明を次の例で説明する。本発明は、いかなる意味においても後述する例に限定されるものではない。
添付図面において、
図1は本発明の方法に用いるキャップの一例(実施例1)の一部断面側面図であり、
図2は図1のキャップを容器口部と共に示す一部断面側面図であり、
図3は図2のキャップ及び容器口部の要部を示す拡大断面図であり、
図4は本発明の方法に用いるキャップの他の例(実施例2)の一部断面側面図であり、
図5は図4のキャップを容器口部と共に示す一部断面側面図であり、
図6は図5のキャップ及び容器口部の要部を示す拡大断面図であり、
図7は本発明の方法に用いるキャップの更に他の例(実施例3)の一部断面側面図であり、
図8は図7のキャップを容器口部と共に示す一部断面側面図であり、
図9は図7のキャップの上面図であり、
図10は図8のキャップ及び容器口部の要部を示す拡大断面図であり、
図11は本発明の方法に用いるキャップの別の例(実施例4)の一部断面側面図であり、
図12は図11のキャップの上面図であり、
図13は微細貫通口の形成に用いる工具の一例の斜視図であり、
図14は図13の工具の刃のA−A断面図であり、
図15は図13の刃のB−B断面図であり、
図16は本発明の方法に用いる中栓付容器蓋の好適例(実施例5)を容器口部と共に示す一部断面側面図であり、
図17は図16の容器蓋及び容器口部の要部の拡大断面図であり、
図18は図11の容器蓋に用いる中栓の一例の上面図であり、
図19は図18の中栓の側面図であり、
図20は図18の中栓の底面図であり、
図21は図18の中栓の側断面図であり、
図22は図11の容器蓋に用いる中栓の他の例(実施例6)の上面図であり、
図23は図22の中栓の側面図であり、
図24は図22の中栓の底面図であり、
図25は図22の中栓の側断面図であり、
図26は本発明の方法に用いる中栓付容器蓋の他の例(実施例7)を容器口部と共に示す一部断面側面図であり、
図27は図26の容器蓋及び容器口部の要部の拡大断面図であり、
図28は本発明の方法に用いる中栓付容器蓋の更に他の例(実施例8)を容器口部と共に示す一部断面側面図であり、
図29は図28の容器蓋の要部の拡大断面図であり、
図30は図11のキャップ(実施例4)の変形を容器口部と共に示す拡大断面図であり、
図31は図22の中栓(実施例6)をキャップ及び容器口部と共に示す拡大断面図である。
【0019】
[実施例1]
本発明の方法に使用するキャップの一例を示す図1、図2及び図3において、このプラスチックキャップは、タンパーエビデント機能を有するワンピース型の樹脂キャップであり、このキャップ1は、密封部2と、微細貫通口3とを備えている。
キャップ1は容器口部の形状にあわせてほぼ帽子形状をしており、天面11と天面11の周縁部から垂下したスカート状側壁部12とから形成されている。また、キャップ1のスカート状側壁部12の下側には、環状切断面13を介して開封明示用の周状バンド4が設けられている。
【0020】
密封部2は、キャップ本体1の天面11の内面側に一体に形成されており、例えば、アウターリング21、インナーリング22及びフラットな部分23を備えている。本発明において、アウターリング21の内周面を容器口部25(図2及び図3参照)の外周面と密封係合させてもよく、またインナーリング22の外周面を容器口部25の内周面と密封係合させてもよく、更にフラットな部分23を容器口部の頂面と密封係合させてもよい。
この具体例に示す密封構造では、図3に最もよく示されるように、アウターリング21の内周面に形成した径内向きの突起21aが容器口部25の外周面28と係合して密封が行われており、またアウターリング21とフラットな部分23と境界部に設けた径内向きの膨出部(コーナー部)24と容器口部25の外周側コーナー部25bとの間でも係合密封が行われている。この具体例では、インナーリング22はキャップ1のセンターリングを行えるような位置決めとしての役目を有している。
このタイプの密封構造では、キャップの頂面が上方向にパネリング変形した場合にも密封位置の変動がないか或いはあるとしてもその変動の程度が小さく、内圧のある内容物の密封に特に適している。
【0021】
キャップ1のスカート状側壁部12には、容器口部への締結のための雌ねじ15が形成されており、これらの雌ねじ15には高さ方向に延びる溝16により分断されている。この溝16は、開栓時に早急に容器のシールをブレークするためのものであり、加熱殺菌時に熱水を排出する通路ともなるものである。
また、スカート状側壁部12の外面には、キャップの把持を容易にするためのローレット溝19が形成されている。
一方、図3に示すとおり、容器口部25は、締結用の雄ねじ26を備え、この雄ねじ26の下方にキャップ係止用のあご部27を備えている。
【0022】
キャップ1と周状バンド4とは環状切断面13により分割されていると共に、ブリッジ17により連結されている。すなわち、ブリッジ17は閉栓時にはそのまま維持され、開栓時には切断されてキャップの旋回が可能となるものである。
【0023】
側壁部12の下部が周状バンド4に向けて外径の増大する部分、特にテーパー状の部分20から成っており、この下にブリッジ17の形成用スペースが確保されている。同様に、周状バンド4の外面も下向きに径の増大するテーパ面となっている。
【0024】
側壁部下部の内面側には段部10が形成されており、この段部下面側からブリッジ17が周状バンド4側に延びており、型抜き等の成形性を良好にしている。
既に述べたとおり、キャップ本体1と周状バンド4とは環状切断面13により分割されているが、ブリッジ17は環状切断面13よりも内側に位置していることが了解されよう。
【0025】
周状バンド4は、容器口部への係止のために、径内方向且つ斜め上方向に延びる片状のフラップ片41を多数周状に配置して備えているが、このフラップ片41は、スカート部内面から径内方向に突出した厚みの小さい付け根部44を介して周状に配置されており、フラップ片41の上方向への屈折乃至屈曲が自由且つ容易となり、閉栓操作が、ブリッジを破損することなく、円滑に進行すると共に、その先端部45が容器の係止用あご部27(図3参照)の下面に沿うように係合して、キャップの係止が安定に行われる。開栓に際しては、この先端部45と容器係止用あご部27との係合により、周状バンド4の持ち上がりが阻止され、ブリッジの破断が生じるようになっている。
【0026】
また、周状バンド4の下端縁42は比較的厚肉に形成されていると共に、この下端縁42は閉栓時には容器口部下方のサポートリング27aと近接して、器具等の挿入による不正開封を防止するようにされている。
【0027】
本発明の方法では、スカート部12から天面11に至る部分に、密封係合部分21aに対応する容器口部外面の空間31に至る微細貫通口3を設けたものを用いることが特徴である。
図1乃至図3に示すように、この実施例では、微細貫通口3は、スカート状側壁部12の周に沿って設けられた周方向スリットであり、図に示す例では、軸対称に4本周方向に分布して設けられている。
これらの各スリット3はキャップ1の側壁部12の外面から内面にかけて完全に貫通している。
この微細貫通口3は文字通り微細なものでよく、この実施例において、スリット3の径方向の寸法は約2mm、スリット幅(間隙)は0.02mmである。
【0028】
キャップの容器への締結に際しては、キャップ本体1を閉栓方向に回転させると、周状バンド4とキャップ本体1との一体性を保持しつつ閉栓方向に回転し、前に説明したフラップ片41の作用により、容器口部に周状バンド4及びキャップ本体1を締結させることが可能となる。
【0029】
図3において、容器内に内容物を熱間充填し、容器口部25にキャップを閉栓した後、約30秒間横倒しし、その後この容器が正立している状態で熱水を散布する。
散布された熱水は、スリット3を通して容器口部の外部空間31内に流入乃至吸引され、アウターリング21及び密封係合部分21aに最も近い容器口部外面28と接触して、これらの部分を介した熱伝導により、密封係合部分21a乃至その近傍も加熱されて、加熱殺菌乃至滅菌が有効に行われることになる。
【0030】
キャップの開栓時においては、フラップ片41等の固定機構により周状バンド4が容器口部に固定され、キャップ本体1のみが開栓方向に回転するので、剪断力によりブリッジ17が破断する。この破断により、キャップ本体1と周状バンド4とが分離して開封が行われる。
【0031】
キャップの成形に用いる樹脂としては、各種プラスチック、例えば、低−、中−又は高−密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、熱可塑性ポリエステル、ポリアミド、スチレン系樹脂、ABS樹脂等が挙げられる。
【0032】
本発明に用いるプラスチックキャップは、上記樹脂を用い、通常、圧縮成形、射出成形等によりリシール用上蓋部及び開封用バンドが一体化した状態で製造される。引き裂き部は上記の成形工程で溝として形成することもできるし、また切れ目を設ける場合には、この成形工程の後に公知のカッティング加工を施せばよい。
【0033】
微細貫通口3の形成は、成形された樹脂キャップの後加工により施すこともできる。
この後加工に用いる工具の一例を示す図13乃至15において、この工具は、支持部材80に取り付けられた刃81からなっており、刃81は先端刃82、両サイドの刃83、84からなっている。刃の厚みtは一般に0.1乃至0.5mmであり、先端刃82及び両サイドの刃83、84は何れも水面から角度θだけ傾斜しており、この傾斜角度θは一般に5乃至15度である。
この刃81を樹脂キャップに突き当てることにより、微細貫通口3の切削が行われる。
また、微細貫通孔3の形成は、成型用金型に微細貫通口に相当する突起部或いは入れ子を設け、微細貫通口となるべき部分への樹脂の流入を阻止することにより行うこともできる。但し、このような微細な貫通孔を設けるには、前述した後加工によって行う方が好ましい。
【0034】
[実施例2]
図4、図5及び図6に示すキャップでは、基本的構成は実施例1に示したものと同様であるが、密封部2の構成が実施例1のものと相違している。
すなわち、この実施例のキャップでは、インナーリング22の外周面に容器口部25の内周面29を密封係合する径外方向きの突起部22aを備えている。尚、アウターリング21はキャップをセンターに位置決めさせる機能を有している。
このタイプのキャップは、必ずしもこれに限定されないが、減圧内容物の密封に特に適している。
キャップの他の構成は、図1乃至3のものと同様であり、説明の重複を避けるため、共通の引照数字を付して図面に示されている(以下も同様である)。また、スリット3の寸法及び配置も図1乃至3のものと同様である。
このキャップにおいても、図3に関して説明したのと同様に、加熱殺菌乃至滅菌に際して、散布された熱水は、スリット3を通して容器口部の外部空間31内に流入乃至吸引され、密封係合部分22aに最も近い容器口部外面28及びアウターリング21乃至その近傍と接触して、これを加熱し、密封係合部分22a乃至その近傍の殺菌乃至滅菌が有効に行われる。
【0035】
[実施例3]
図7、図8、図9及び図10に示すキャップでは、密封部2は、キャップ1と別体に形成された密封用ライナーから成っており、この密封用ライナー2は、例えば、キャップ本体1の天面11の内面側に形成されており、密封すべき容器口部25(図10)の頂面25aと係合するリング状の平坦部分22、容器口部の外周面28と係合する下向きに突出したアウターリング21及び位置決め用のインナーリング23を備えている。
また、キャップ本体の天面11の内面側には、密封用ライナー2を保持するために、下向き且つ径内方向に延びるライナー保持用突起14を備えており、密封用ライナー2の周縁部はこのライナー保持用突起14と係合して脱落しないように保持されている。
【0036】
キャップと別個にライナーを施す場合、ライナーとしては、低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、エチレン系共重合体、各種ゴム乃至熱可塑性エラストマー、アクリル樹脂プラスチゾル、塩化ビニル樹脂プラスチゾル等を用いることができる。
【0037】
また、周状バンド4の径内方向側には、周状バンド4を容器口部の下方に固定するためのフラップ片41が設けられているが、このフラップ片41は、実施例1に示したものとは配置が次の点で相違している。
すなわち、フラップ片41の付け根44は、周状バンドの高さ方向且つ斜め方向に、周状に間隔をおいては位置され、フラップ片41は径内方向に傾斜して延びている。このフラップ片の傾斜角度は、閉栓方向には、フラップ片先端45の径外方向への広がりを許容して、周状バンド4の回転が可能となるが、逆に開栓方向には、フラップ片先端45の径外方向への広がりを阻止して、周状バンド4の回転が不能となるようになっている。
この実施例のキャップでも、フラップ片41の上記作用により、キャップ1と周状バンド4とを一体性を保ちつつ閉栓が可能であり、一方開栓に際しては、周状バンド4が容器口部のあご部27の下に係止され、ブリッジ17が切断して開封が行われる。
【0038】
また、このキャップにおいては、周状バンド4の下側には、下方向に凸に且つ径内方向きに形成されたビード部42が形成されている。このビード部42は、フラップ片41の下方への変形を防止して、フラップ片41をあご部27の下に保持すると共に、フラップ片41を機械的に補強するものであり、また器具等の挿入による不正開封を防止するためのものでもある。
このビード部42は、例えば周状バンド4の下端に薄い帯状突起を形成させ、この帯状突起を加熱して熱収縮により湾曲させることにより形成される。
【0039】
このキャップでは、微細貫通口3が天面11の周縁に周状に分布して設けられた周方向スリットであり(図10参照)、図に示す例では、軸対称に8本周方向に分布して設けられている。
これらの各スリット3はキャップ本体1の外面から内面にかけて完全に貫通している。
また、この実施例において、スリット3の周方向の寸法は約2mm、スリット幅(間隙)は約0.02mmである。
このキャップにおいても、実施例1に関して説明したのと同様に、加熱殺菌乃至滅菌に際して、散布された熱水は、スリット3を通して容器口部の外部空間31内に流入乃至吸引され、密封係合部分21、22に最も近い容器口部外面28及びライナー保持用突起14と接触して、これを加熱し、密封係合部分21、22の殺菌乃至滅菌が有効に行われる。
【0040】
[実施例4]
図11及び図12に示すキャップでは、キャップ本体1及び密封用ライナー2の構成は、図7乃至10(実施例3)に示したものと同様である。
このキャップでは、微細貫通口3がスカート状側壁部12から天面11周縁にかけて設けられた径方向の切欠状スリットであり、図に示す例では、軸対称に8本周方向に分布して設けられている。
これらの各スリット3はキャップ本体1の外面から内面にかけて完全に貫通している。
また、この実施例において、スリット3の径方向の寸法は約2mm、高さ方向の寸法は3.8mm、スリット幅(間隙)は0.02mmである。
このキャップにおいても、実施例1(図3)に関して説明したのと同様に、加熱殺菌乃至滅菌に際して、散布された熱水は、スリット3を通して容器口部の外部空間31内に流入乃至吸引され、密封係合部分21、22に最も近い容器口部外面28及びライナー保持用突起14と接触して、これを加熱し、密封係合部分21、22の殺菌乃至滅菌が有効に行われる。
勿論、実施例3及び4に示すキャップ本体1及び密封ライナー2からなる構成においても、図30に示すとおり、実施例1で用いた微細貫通孔3の形態を用いることは可能であり、むしろ成形性の点ではより好ましい。
【0041】
[実施例5]
本発明は天面乃至頂部に液注出機構或いは開閉可能な弁機構を有するものに有利に適用することができる。即ち、このタイプのキャップにおいては、前述した液注出機構或いは開閉可能な弁機構の収容スペースのため、並びに中栓に特有の形状のため、熱水に接触する外面とキャップの密封係合部分及びその周辺との距離が大きくなり、密封係合部分等の加熱殺菌乃至滅菌が著しく困難なものとなっていたが、本発明によれば、この密封係合部分等の殺菌乃至滅菌をも有効に行うことが可能となる。
以下、この例について図16乃至21を参照して説明する。
【0042】
図16において、この容器蓋は、合成樹脂製のキャップ1と、合成樹脂製の中栓7と、オーバーキャップ9を備えている。
キャップ1は、おおまかに言って頂部11と、スカート部12とから成っており、頂部11には微細貫通口3が形成されているが、頂部中央上部に開閉可能な弁機構6を備えている点が図1乃至3に示したキャップと相違している。
頂部11の径内方向にはリング状の水平フランジ部51が形成されており、この頂部11の外側端部からスカート部12が下方に垂下している。水平フランジ部51の内面(下面)には、中栓押さえ用の環状突起52が形成されている。この突起52の機能については後述する。
スカート部12の内面にはネジ15が形成されており、このネジ15により、キャップ1が容器口部25へ着脱自在に係合固定される。即ち、容器口部25の外面には、ネジ26が形成されており、上記のネジ15とこのネジ26との螺合により、キャップ1が容器口部25に固定される。
また、スカート部12の内面のネジ15よりも上方部分には、水平フランジ部51とは小間隔を置いて中栓係止用突起53が形成されている。この中栓係止用突起53の機能についても後述する。
【0043】
上記の容器蓋において、キャップ1の頂部11の中央上部には、段差部54を介して上方に直立した中空筒55が形成されており、この中空筒55内の中空空間は、頂部11の下側空間と連通しており、中栓7がなければ、容器内に通じている。
一方、中空筒55内には、同心状に小径の柱状体56が上方に延びており、その上端は、中空筒55から突出している。この柱状体56と中空筒55との位置関係は同心円状であり、柱状体56は、一定間隔で設けられているブリッジ57によって中空筒55の内側に保持されており、中空筒55内の空間は、このブリッジ57によっては閉じられておらず、従って、中空筒55の内面と柱状体56の外面との間の空間が注出路58を形成し、この注出路58を通して、内容液の注ぎ出しが行われる。
【0044】
中空筒55には、弁部材6が上下にスライド可能に嵌め込まれている。
この弁部材6の上下動によって、上述した注出路58が開放されたり、或いは閉じられたりするのであり、この弁部材6が上昇して注出路58が開放され、下降して注出路58が閉じられる。
弁部材6は、天井壁61と、天井壁61から下方に延びているインナーリング62及び外側筒状壁63とから構成されており、インナーリング62と外側筒状壁63との間に中空筒55がスライド可能に嵌め込まれている。また天井壁61の中央部分には、開口64が形成されている。
【0045】
即ち、図16に示されている様に、弁部材6が最下方位置にある時(常態)には、柱状体56の上端部が開口64を閉じており、従って、この状態では、注出路58が塞がれ、内容液の注出を行うことができない。一方、弁部材6を上昇させると、開口64が開放され、注出路58が外部に通じる。従って、この状態で内容液の注ぎ出しを行うことが可能となるわけである。
このような構造では、一般の需要者は、例えば片手で容器を持ちながら、口で弁部材6を引っ張り上げることができるので、飲料などの容器内容液を喫飲する上で極めて便利である。
【0046】
弁部材6の外側筒状壁63の下端内面には、アンダーカット(突起部)65が形成されており、一方、中空筒55の上方部分外面には、係止用突起59を設けることが好ましい。
即ち、上記係止用突起59とアンダーカット65との係合により、弁部材6が上昇し過ぎて外れてしまうというトラブルを防止できる。更に、中空筒55の下方部分外面に係止用突起を設けると、アンダーカット65とこの係止用突起との係合により、弁部材60を最下方位置(常態)に安定に保持することができる。また弁部材6の上昇或いは降下による開閉感を需要者に与えることができる。
【0047】
また図16から明らかな様に、本発明の容器蓋は、衛生性、商品価値、或いはホットパック後の冷却による水の侵入等を防止するなどの点で、オーバーキャップ9を設けた形で市販に供される。このために、頂部11から中空筒55の外側に至る中間部分には、ほぼ直立した段差部54を形成しておき、この部分にオーバーキャップ9を係止する様な構造とすることが望ましい。
【0048】
中栓7としては、図18乃至21に示すようなものが使用される。
この中栓7は、容器口部の頂面25a(図17参照)と係合するフランジ部71と、容器口部の内周面と係合する側壁部72と、閉塞底面部73と、中栓の把持部74とを備えている。この中栓では、弧状の把持部材74が側壁部72に一対の離隔した内側が滑らかな連結部75、75を介して一体に設けられ、しかも把持部材74は連結部75、75間の周a,bの内長い方の周aの側に延びている(図18参照)。
【0049】
上記の把持部材74と側壁部72との連結構造では、これらが連結部75、75の内側において滑らかに接続されているため、連結部75、75の部分は、他の側壁部72や把持部74に比して厚肉であり、把持部74を引っ張ったときにも伸びにくく、引張力が側壁部に伝達されやすい構造となっている。
【0050】
また、本発明による中栓では、把持部材74が連結部75、75間の周a,bの内長い方の周aの側に延びているので、把持部材74による引張力が側壁部72の短い方の周bに集中的に加わり、シールブレークと中栓の開栓とがこの順序に、しかも容易に進行するので、開栓時の液飛びが解消されるという利点が得られる。
【0051】
即ち、開栓に際して、把持部材74を指で摘み、開栓方向に引っ張ると、先ず、離隔した一対の連結部75、75が径内方に且つ長い方の周の側に引っ張られ、これにより、側壁部72の外周面と容器口部の内周面とのシールブレークが発生する。次いで、この剥離力は、一対の連結部75、75或いはその近傍の両側から、側壁部2の短い方の周bに沿って、しかも短い方の周bの中心Cに向かって、シール幅が次第に狭まるように開栓操作が進行する。
【0052】
このため、中栓の開栓に際して、常に中栓のシールブレークが優先して行われ、その後開栓、即ち中栓の取り外しが進行するので、開栓に際して液飛びが発生するのが完全に抑制され、しかも中栓の容器からの取り外し点(短い方の周の中心C)に両側から応力が集中するように開栓が行われるので、開栓操作も至って容易且つ確実に行われるという利点が達成されるものである。
【0053】
中栓の側壁部72は全体として円周状に形成されており、その内周面76は、型抜きが容易に行えるように、下向きに径が小さくなるようなテーパー状に形成されている。一方、その外周面77には、フランジ部2よりも下方に離隔した位置に、径外方向に最も膨出した膨出部78が形成されている。膨出部78の下方には、下向きに径が縮小するテーパー部が形成されていて、容器口部への打栓が容易に行えるようになっている。
【0054】
一方、把持部材74は、好適には、側壁部27の内径よりも小さな内径の環状部材の一部として形成されており、把持部材74と側壁部72との関係は次のようになっている。即ち、側壁部72を包含する仮想的な環状体Aと、把持部材74を包含しその延長上にある仮想的な環状体Bとを考えると、両者は環状体Aの内周面に環状体Bの内周面が内接する偏心的な位置関係にある。これらの環状体A及びBの内部には成型用の樹脂が充満されており、中栓を形成している。即ち、連結部75、75からの2個の周のうち長い方の周aの部分では側壁部72と把持部材74とが独立に存在するが、短い方の周bの部分では、前記環状体A及びBの両方を包含するように側壁部72の内周面が規定されている。一層具体的には、把持部材74と側壁部72とのこの連結構造では、把持部材74の側壁部72への付け根となる端において、側壁部の厚みが最も大きく、次いで連結部間の中心に向けて厚みが徐々に減少していく部分があり、連結部間の中心に最も厚みの小さい部分があり、開栓に際してこの厚みの最も小さい部分で容器口からの取り外しが容易に行われるようになっている。
【0055】
把持部材4の外周面は、図21に最もよく示されるように、側壁部72の内周面76とほぼ同様に下向きに径が小さくなるテーパー面を形成しており、また把持部材74の内周面も垂直面乃至下向きに径の小さくなるテーパー面を形成しているが、外周面のテーパー角度の方が大きく、把持部材74の径方向の厚みは下向きに次第に小さくなっている。上記の厚み分布を持たせた把持部材では、成形時の型抜きが容易であり、例えば、把持部材の内周面より内側の型を先ず抜き、次いで外側の型を無理抜きすることにより、型抜きを容易に行うことができる。
【0056】
用いる中栓は、この場合に決して限定されるものではないが、把持部材74の上面を中栓のフランジ部71の上面と面一になるように設けておくことが好ましい。この構造では、把持部材付中栓の成形が最も容易であると共に、最も厚肉の把持部材上面とフランジ部上面とが接続されることにより、中栓の開栓による取り外しが容易に行われる。
更に、把持部材74の下端縁を通る面が側壁部外周の膨出部78の少なくとも一部、特に膨出部78の上の部分と交わるような位置関係にしておくことが好ましい。このような配置にすると、開栓に際して、膨出部78を支点として側壁部外周を容器口部から離れやすくすることができ、シールブレークや中栓の取り外しを容易に行うことができる。
【0057】
把持部材74の内周面のほぼ中央には、指の掛かりをよくするためのリブ79が少なくとも1本周方向に伸びるように設けられている。また、把持部材74の中央は成形に際して、2分された樹脂流が合流するウェルドラインとなるが、開栓に際してこの部分が破壊するのを防止するため、相対的に厚肉の補強部となっている。
【0058】
この具体例においては、中栓のフランジ部71の外周に、薄肉でしかも幅の狭い延長部70が形成されており、この延長部70は、中栓をキャップ内にセットした状態で同時に打栓を可能にし、中栓を開栓する際には、それに先だってキャップのみの取り外しを可能とするものであるが、その作用については、後から詳述する。
【0059】
本発明の中栓において、把持部材74を包含する環状体Bの内径(Rb)は、開栓に際して少なくとも指の挿入が可能となるものである。一般に、Rbは少なくとも13.2mmの径を有することが好ましい。
また、把持部材74の径方向の厚みは、上面部で0.7乃至1.05mmの範囲にあることが、開栓性の点で好適である。
【0060】
中栓を構成する樹脂材料は、それ自体公知の任意のプラスチックで形成されていることができるが、比較的柔らかい樹脂材料、例えばオレフィン系樹脂で形成されていることが望ましく、特に弾性率(JIS K7203)が2000乃至10000kg/cm2 のオレフィン系樹脂、特に線状低密度ポリエチレン(LLDPE)や線状超低密度ポリエチレン(LUDPE)から形成されていると、シールブレークと開栓とにタイムラグをもうけた開栓を容易に行うことが可能となる。
【0061】
再び図16及び17に戻って、中栓7に薄肉周縁延長部70が形成されていることが特に好適である。この薄肉周縁部70とキャップスカート部11の内面に形成されている中栓係止用突起53との係合関係が、次のようにコントロールされる。
即ち、キャップを打栓する前の状態では、中栓7の薄肉周縁延長部70が中栓係止用突起53と確実に噛み合う寸法関係となっている。
一方、キャップが容器口部に打栓された状態では、図17に明瞭に示されるとおり、薄肉周縁延長部70が径内方向に寸法が縮小された状態となっている。というのは、キャップ1の打栓に伴い、当然中栓7も打栓されるが、中栓7の膨出部78の径は容器口部25の内面29の径よりも若干大きく形成されており、そのためフランジ部71及び薄肉周縁延長部70が径内方向に引き込まれるからである。
上記の点につき更に説明する。
【0062】
本発明の容器蓋では、キャッピングに先立って中栓7はキャップ1内に挿入されるが、この状態において、中栓7の薄肉周縁部70は、キャップスカート部11の内面に形成されている中栓係止用突起53と係合するようになっている。従って、中栓7のキャップ1からの脱落が有効に防止され、キャッピング工程への搬送及びキャッピングを確実に行うことができる。
【0063】
次いで、内容液が熱間充填された容器の口部25へのキャッピングが行われる。キャップ1を閉栓方向に旋回させてキャッピングを行っていくと、キャップ1の降下によって中栓7も押し下げられ、キャッピング終了時には、図16及び図17に示されている様に、中栓7は容器口部25内に嵌め込まれる。
容器口部25内に嵌め込まれた中栓7では、中栓7の膨出部78が容器口部25の内面29と係合して、筒状側壁72が容器口部25によって絞られているから、薄肉周縁部70の外径は若干縮小している。
また、この状態において、水平フランジ部51の内面に形成されている中栓押さえ用の環状突起52は、中栓7のフランジ71にがっちりと食い込み、従って、中栓7はしっかりと容器口部25に固定され、密封が確実なものとなる。
キャッピングが完全に終了した図16及び図17の状態では、薄肉周縁部70の外径が小さくなっているため、このままの状態でキャップ1を上昇させた時、薄肉周縁部70は、中栓係止用突起53とは係合しないか、或いは係合するとしても係合の程度が微弱なものとなっている。
【0064】
このキャップでは、微細貫通口3が、図1乃至3と同様に、キャップスカート状側壁12に周方向に設けられた周方向スリットであり、図に示す例では、軸対称に4本周方向に分布して設けられている。
これらの各スリット3はキャップ本体1の外面から内面にかけて完全に貫通している。
また、この実施例において、スリット3の各々の開口面積は0.04mm2 である。
このキャップにおいても、図3に関して説明したのと同様に、加熱殺菌乃至滅菌に際して、散布された熱水は、スリット3を通して容器口部の外部空間31内に流入乃至吸引され、密封係合部分21に最も近い容器口部外面28及び中栓フランジ部71と接触して、これを加熱し、密封係合部分71b,78a及びその周辺部の殺周辺部の殺菌乃至滅菌が有効に行われる。
【0065】
図16及び図17のように、キャップ1及び中栓7が容器口部25に装着された容器は、この状態で市販され、これを購入した一般需要者は、先ず、キャップ1を開栓方向に旋回させてキャップ1を上昇させ、キャップ1を容器口部25から取り除く。
キャップ1を開栓方向に旋回して上昇させると、中栓押さえ用の環状突起52の中栓フランジ71に対する押圧力も解除されるが、薄肉周縁部70と中栓係止用突起53との係合は外れる。即ち、薄肉周縁部70は合成樹脂製であり、しかも薄肉であることも関連して、変形が容易であり、薄肉周縁部70が中栓係止用突起53と若干の噛み合いを生じていたとしても、薄肉周縁部70が変形して突起53から容易に外れるのである。
かくして、キャップ1の開栓によって、キャップ1のみが上昇して容器口部25から取り除かれ、中栓7は、容器口部25にそのまま残存することになる。
【0066】
キャップ1を容器口部25から取り除いた後は、既に説明したとおり、把持部材74を手で持って引っ張り上げることにより、容器口部25に残存している中栓7を取り出して廃棄する。 次いで、再びキャップ1を容器口部25に装着する。
中栓7を取り除いた容器口部25にキャップ1を装着すると、中栓押さえ用の環状突起52が容器口部上端に圧接することになり、容器内の密封性は十分に確保される。
また、この状態では、容器内空間はキャップ1に形成されている注出路58に連通しているため、一般の需要者は、弁部材6を上昇させて内容液の注ぎ出し、或いは喫飲を行うことができ、弁部材6を降下させることにより、注出路58を閉じることができる。
【0067】
薄肉周縁部70の厚みや径は、閉栓前には係止用突起53による保持が確実に行われ、一方開栓時には中栓係止用突起53と薄肉周縁部70との係合が生じないか或いは係合しても係合状態から容易に外れるように設定される。例えば、薄肉周縁部70の厚みは、100乃至200μm 程度が好適である。
【0068】
[実施例6]
前記実施例5のキャップにおいて、図22乃至25に示す中栓を用いることができる。
この中栓7では、側壁部72の外周に、側壁部の高さ方向に延びるリブ部91と凹部92とが交互に多数配置されていることが特徴である。この各リブ部91の中間にはフランジ面に平行な共通な平面上でしかも共通な円周上に位置する突起部78が形成されている。
即ち、リブ部91は、図23及び図25から明らかなとおり、径外方向に凸な湾曲形状となっており、その径外方向に最も突出した部分が突起部78となっている。
【0069】
突起部78の水平断面における外形状は、図24の底面図から明らかなとおり、円周を分断した弧からなっており、容器口部との係合が確実に行われるようになっている。
一方、凹部92の水平断面形状は、図24に示す具体例の場合、半円状であるが、この例に限定されず、U字型溝、V字型溝、逆台形溝、半楕円型溝、放物線型溝、サイクロイド型溝などの任意の溝形状であってよい。
【0070】
本実施例の中栓では、容器口部との密封保持は中栓のフランジ部71と容器口部25の頂面25aとの当接、並びにフランジ部付け根に設けられたコーナー部71aと容器口部の頂面のコーナー部25c(図31参照)との係合により行われ、一方容器口部25に対する中栓7の係止は側壁部72のリブ部91に設けた突起部78により行われ、中栓による容器の密封保持と中栓の容器への係止とが機能分離的に行われている。このように、両方の機能を分離することにより、後述するように、開栓に先立って常にシールブレークを優先して行い、その後開栓(抜栓)を行うことが可能となる。
上記のように、フランジ部付け根に設けられたコーナー部71aと容器口部の頂面コーナー部25cとを係合させると、両コーナー部が垂直方向のみならず、水平方向にも係合するので、中栓による密封保持が一層確実なものとなる。
【0071】
即ち、中栓の側壁部72では、容器口部に対する機械的係止を行うが、密封は行わないようにするため、側壁部72の外周に、側壁部の高さ方向に延びるリブ部91と凹部92とを交互に形成させている。リブ部91に設けた突起部78は容器口部内周面と係合するが、凹部92は容器口部内周面から離隔していて、気体や液体が自由に通過できる通路となっている。
【0072】
一方、中栓フランジ部71の下面と容器口部頂面とは垂直方向に係合すると共に、両方のコーナー部で係合して、密封保持されているから、中栓7をほんの少し持ち上げるだけで、中栓フランジ部と容器口部との隙間及び側壁部の凹部92を通してシールブレークが行われ、その後容器口部内周面29とリブ部の突起部78との係合が解除されることにより、開栓が行われるのであって、シールブレークと開栓との間に十分なタイムラグをもたせることにより、液飛びの発生を防止できるのである。
【0073】
また、容器口部の内周面と係合する突起部78を、側壁部外周に凹部92を介して間欠的に配置したリブ91に形成したため、係止力の調節が容易となり、この係止力を、中栓7が容器口部に確実に係止されるが、中栓7の引き抜きが指で容易に行われる範囲に調節することが可能となる。
【0074】
更に、内容物を熱間充填し、中栓7を密封させた後、この包装体を横倒しすると、中栓側壁部の凹部92を通して熱い液体が中栓のほぼ全域に行き渡り、中栓7の密封係合部近傍の部分の加熱殺菌乃至滅菌が有効に行われ、内容物の保存性が向上するという利点もある。
【0075】
本実施例の中栓7においては、前記円周上に位置する突起部78の合計の周長をL、円周長をL0 としたとき、L/L0 の比が0.25乃至0.8の範囲にあることが好ましい。この比が上記範囲を下回ると中栓を容器口部に確実に係止させることが困難となる傾向があり、またこの比が上記範囲を上回ると係止力が過大となって易開栓性が損なわれる傾向がある。
【0076】
また、この中栓7においては、突起部78が位置する円周の径をD、突起部78が位置する面上における凹部92の最深部の径をD1 、容器口部25の内径をD0 としたとき、各部の径が下記式
D>D0 >D1
を満足する関係にあることが、中栓の容器口部への係止を確実に行いながら、開栓初期のシールブレークを確実にし、また内容物の熱間充填による中栓の殺菌乃至滅菌を確実に行うために好ましい。
【0077】
更に、突起部78が位置する円周の径をD、容器口部25の内径をD0 としたとき、D/D0 の比が1.01乃至1.09の範囲にあることが、中栓の係止力と易開栓性とのバランスの点で好ましい。
この比が上記範囲を下回ると中栓の係止が不安定となり、密封性が低下する傾向があり、一方、この比が上記範囲を上回るとやはり易開栓性が損なわれる傾向がある。
本実施例の中栓では、リブ部91と凹部92とを交互に配置した構造を取っているため、リブの周方向への変形が許容され、D/D0 の比を比較的広い範囲に設定できることも特徴であり、中栓と容器口部との間の寸法の許容誤差を広くできるという利点もある。
【0078】
更にまた、突起部78が位置する円周の径をD、突起部が位置する面上における凹部92の最深部の径をD1 としたとき、下記式
(D−D1 )/D
の比が0.1乃至0.25の範囲にあることが、開栓初期のシールブレークを確実にし、また内容物の熱間充填による中栓の殺菌乃至滅菌を確実に行うために好ましい。
【0079】
また、中栓の側壁部におけるリブ91の数(従って凹部92の数)が6乃至24個であることが、中栓の係止を確実にすると共に、開栓初期のシールブレークを確実にし、また内容物の熱間充填による中栓の殺菌乃至滅菌を確実に行うために好ましい。
【0080】
この中栓付のキャップにおいて、熱間充填は、一般に70℃以上、特に85乃至95℃の温度の液体内容物を充填することにより行うが、キャップを打栓した後の包装容器の横倒しは、一般に20乃至40秒間程度行うのが好ましい。
横倒し後は、実施例5に述べた手段で密封係合部及びその周辺部の殺菌を行うことができる。
【0081】
[実施例7]
図26及び図27に示す中栓付キャップでは、実施例3と同様に、微細貫通口3は、頂部11の周縁部に周状に配置され、高さ方向に延びる周状スリットとして形成されており、全部で4本のスリットが軸対称に設けられている。
これらのスリット3はキャップ本体1の外面から内面にかけて完全に貫通していることが理解されるべきである。
キャップ本体1の他の構成及び中栓7の構成は、図16及び図17に示したキャップ構造、図18乃至21或いは図22乃至25の中栓の構造と同様である(共通の部材は共通の引照数字が付されている)。
また、この実施例において、スリット3の周方向の寸法は2mm、スリット幅(間隙)は0.02mmである。
このキャップにおいても、図3に関して説明したのと同様に、加熱殺菌乃至滅菌に際して、散布された熱水は、スリット3を通して容器口部の外部空間31内に流入乃至吸引され、密封係合部分71bに最も近い容器口部外面28及び中栓フランジ部71と接触して、これを加熱し、密封係合部分71b及びその周辺部の殺菌乃至滅菌が有効に行われる。
【0082】
[実施例8]
図28及び図29に示すように、この実施例では、微細貫通口3は、頂部11の周縁部からスカート部12の上部にかけて、径方向且つ高さ方向に延びる切欠状スリットとして形成されており、全部で4本のスリットが軸対称に設けられている。
これらのスリット3はキャップ本体1の外面から内面にかけて完全に貫通していることが理解されるべきである。
キャップ本体1の他の構成及び中栓7の構成は、図16及び図17に示したキャップ構造、図18乃至21或いは図22乃至25の中栓の構造と同様である(共通の部材は共通の引照数字が付されている)。
また、この実施例において、スリット3の径方向の寸法は2mm、高さ方向の寸法は4mm、スリット幅(間隙)は0.02mmである。
このキャップにおいても、図3に関して説明したのと同様に、加熱殺菌乃至滅菌に際して、散布された熱水は、スリット3を通して容器口部の外部空間31内に流入乃至吸引され、密封係合部分71bに最も近い容器口部外面28及び中栓フランジ部71と接触して、これを加熱し、密封係合部分71bの殺菌乃至滅菌が有効に行われる。
【0083】
【発明の効果】
本発明によれば、容器内に内容物を充填し且つ口部を樹脂製キャップで密封してなる包装体に熱水を散布して、加熱殺菌乃至滅菌を行うに際し、キャップとして、スカート部から天面乃至頂部に至る部分に密封係合部分に対応する容器口部外面の空間に至る微細貫通口を形成したものを使用することにより、天面乃至頂部の内面から高さ方向に離隔した位置で容器口部の密封係合が行われても、散布された熱水が、微細貫通口を通して容器口部の外部空間内に流入乃至吸引され、密封係合部分に最も近い容器口部外面や中栓などと接触して、これを加熱し、密封係合部分及びその周辺部分の殺菌乃至滅菌が有効に行われる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の方法に用いるキャップの一例(実施例1)の一部断面側面図である。
【図2】図1のキャップを容器口部と共に示す一部断面側面図である。
【図3】図2のキャップ及び容器口部の要部を示す拡大断面図である。
【図4】本発明の方法に用いるキャップの他の例(実施例2)の一部断面側面図である。
【図5】図4のキャップを容器口部と共に示す一部断面側面図である。
【図6】図5のキャップ及び容器口部の要部を示す拡大断面図である。
【図7】本発明の方法に用いるキャップの更に他の例(実施例3)の一部断面側面図である。
【図8】図7のキャップを容器口部と共に示す一部断面側面図である。
【図9】図7のキャップの上面図である。
【図10】図8のキャップ及び容器口部の要部を示す拡大断面図である。
【図11】本発明の方法に用いるキャップの別の例(実施例4)の一部断面側面図である。
【図12】図11のキャップの上面図である。
【図13】微細貫通口の形成に用いる工具の一例の斜視図である。
【図14】図13の工具の刃のA−A断面図である。
【図15】図13の刃のB−B断面図である。
【図16】本発明の方法に用いる中栓付容器蓋の好適例(実施例5)を容器口部と共に示す一部断面側面図である。
【図17】図16の容器蓋及び容器口部の要部の拡大断面図である。
【図18】図11の容器蓋に用いる中栓の一例の上面図である。
【図19】図18の中栓の側面図である。
【図20】図18の中栓の底面図である。
【図21】図18の中栓の側断面図である。
【図22】図11の容器蓋に用いる中栓の他の例(実施例6)の上面図である。
【図23】図22の中栓の側面図である。
【図24】図22の中栓の底面図である。
【図25】図22の中栓の側断面図である。
【図26】本発明の方法に用いる中栓付容器蓋の他の例(実施例7)を容器口部と共に示す一部断面側面図である。
【図27】図26の容器蓋及び容器口部の要部の拡大断面図である。
【図28】本発明の方法に用いる中栓付容器蓋の更に他の例(実施例8)を容器口部と共に示す一部断面側面図である。
【図29】図28の容器蓋の要部の拡大断面図である。
【図30】図11のキャップ(実施例4)の変形を容器口部と共に示す拡大断面図である。
【図31】図22の中栓(実施例6)をキャップ及び容器口部と共に示す拡大断面図である。
Claims (3)
- 容器内に内容物を充填し且つ口部を樹脂製キャップで密封してなる包装体に熱水を散布することから成る加熱殺菌乃至滅菌方法において、
前記キャップがその天面乃至頂部の内面から高さ方向に離隔した位置で容器口部の内周面乃至外周面と密封係合する部分を備えた前記キャップであり、前記キャップのスカート部から天面乃至頂部に至る部分には、前記密封係合部分に対応する容器口部外面の空間に至る微細貫通口が形成され、
容器口部との密封係合部分が前記キャップ天面乃至頂部と別体に形成された樹脂製中栓であり、前記中栓は容器口部の頂面或いは頂面及びコーナー部と係合するフランジ部と、容器口部の内周面と係合する側壁部と、側壁部の下端を閉塞する閉塞底面部とを備え、前記フランジ部の容器口部との接触面は前記キャップの天面乃至頂面から離隔しており、
前記中栓の側壁部の外周には側壁部の高さ方向に延びるリブ部と凹部とが交互に多数配置され、前記各リブ部の中間にはフランジ面に平行な共通平面上でしかも共通な円周上に位置する突起部が形成され、
熱水散布に先だって、内容物の熱間充填と前記キャップ閉栓後の横倒しとを行う、
ことを特徴とする加熱殺菌乃至滅菌方法。 - 前記微細貫通口が天面乃至頂部の周縁部に周状に分布して形成された周方向に延びるスリット状貫通口であることを特徴とする請求項1に記載の加熱殺菌乃至滅菌方法。
- 前記微細貫通口がスカート部と天面乃至頂部との接続コーナ部に周状に分布して形成された前記キャップの高さ方向且つ径方向に延びる切り欠き状貫通口であることを特徴とする請求項1に記載の加熱殺菌乃至滅菌方法。
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