JP4310819B2 - 新規顔料及びその製造方法 - Google Patents

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【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、顔料およびその製造方法に関する。詳しくは、▲1▼透明性と着色力に優れた顔料、▲2▼透明性と着色力に優れた顔料の製造方法、に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、顔料を含有する印刷インキの透明性と着色力を改良する方法として、例えば、特公昭45−11026号公報には、ジスアゾ顔料に、それらのスルホン酸化合物を混合する方法が、特公昭55−49087号公報には、カップリング成分としてカルボン酸基及び/またはスルホン酸基を有する極性カップリング成分と非極性カップリング成分との混合物を使用して成るジスアゾ顔料を用いる方法が、特開昭63−72762号公報及び特開昭63−178169号公報には、極性カップリング成分と非極性カップリング成分とからなるジスアゾ顔料誘導体を含有するジスアゾ顔料組成物を用いる方法が、それぞれ示されている。なかでも、特公昭55−49087号公報で開示された製法により得られたジスアゾ顔料が透明性と着色力を改良する効果が大きい事が知られていた。
【0003】
また、透明性と着色力を向上させる方法として、WO97/31067号公報には、非極性カップリング成分とベンジジン類のテトラゾ成分とのカップリング方法に関して開示されている。
【0004】
しかしながら、特公昭55−49087号公報やWO97/31067号公報による透明性や着色力の改良効果には限度があり、優れた透明性と着色力を有する顔料の開発が望まれていた。
【0005】
印刷業界において、印刷物の鮮明性を高めるため、透明性と着色力が高い印刷インキがもとめられている。透明性と着色力が高い印刷インキを開発するため、顔料の検討が数々なされている。
【0006】
透明性と着色力を向上させる効果が大きい従来技術として、特公昭55−49087号公報が知られていた。特公昭55−49087号公報で開示された製法は、非極性カップリング成分(式A)と極性カップリング成分(式B)とからなる混合カップリング成分と、3,3’−ジクロロベンジジンのテトラゾ成分とを反応させてジスアゾ顔料を得るものである。特公昭55−49087号公報で開示された製法により透明性と着色力が向上する機構は、微量生成するジスアゾ顔料誘導体(式C)がジスアゾ顔料結晶表面に吸着し、結晶成長を抑制するものと考えられる。しかしながら、吸着力が不十分であり、完全に結晶成長を抑制する事ができず、現在の印刷業界が要求している透明性と着色力を得ることは出来なかった。
【0007】
【化5】
CH3COCH2CONH−Z1 … 式A
【0008】
(式中、Z1 は、メチル基、メトキシ基、塩素原子等の置換基を有していてもよいフェニル基を示す。)
【0009】
【化6】
CH3COCH2CONH−Z2 … 式B
【0010】
(式中、Z2 は、メチル基、メトキシ基、水酸基、塩素原子から有していてもよいフェニル基であって、カルボン酸基、スルホン酸基置換基を有するフェニル基を示す。)
【0011】
式C
【0012】
【化7】
Figure 0004310819
【0013】
(式中、Z1 は、メチル基、メトキシ基、塩素原子等の置換基を有していてもよいフェニル基を示す。式中、Z2 は、メチル基、メトキシ基、水酸基、塩素原子から有していてもよいフェニル基であって、カルボン酸基、スルホン酸基置換基を有するフェニル基を示す。)
【0014】
透明性と着色力を若干向上させる効果がある従来技術として、特開昭63−72762号公報及び特開昭63−178169号公報が知られていた。開昭63−72762号公報及び特開昭63−178169号公報で開示された製法は、ジスアゾ顔料誘導体(式C)を別途合成し、ジスアゾ顔料に混合するものである。透明性と着色力が向上する機構は、添加したジスアゾ顔料誘導体(式C)がジスアゾ顔料結晶表面に吸着し、結晶成長を抑制するものと考えられる。
【0015】
しかしながら、合成時の撹拌による粒子間の衝突、あるいは、濾過工程、乾燥工程、粉砕工程において加えられる力により、ジスアゾ顔料やジスアゾ顔料誘導体の粒子は凝集状態となり、ジスアゾ顔料の一次粒子表面にジスアゾ顔料誘導体を均一に吸着させる事が困難となり、透明性と着色力の改良程度は小さいものであった。
【0016】
したがって、現在の印刷業界が要求している透明性と着色力を得ることは出来なかった。
【0017】
また、透明性と着色力を若干向上させる効果がある従来技術として、WO97/31067号公報が知られていた。WO97/31067号公報に開示された方法は、非極性カップリング成分を析出させる事なく、酸性水溶液中でベンジジン類のテトラゾ成分とのカップリングを行うジスアゾ顔料の製造方法に関するものである。
【0018】
この方法は、カップリング反応率を向上させることにより、未反応の非極性カップリング成分を少なくしようとするものである。透明性と着色力を向上させる機構は、ジスアゾ顔料にくらべて、着色力が全くなく、光の透過率が低く、透明性が低い(隠蔽性が高い)未反応の非極性カップリング成分を取り除いた事により発現されるものである。したがって、顔料の結晶成長を抑制する事はできず、透明性と着色力の改良程度は小さいものであり、現在の印刷業界が要求している透明性と着色力を得ることは出来なかった。
【0019】
【発明が解決しようとする課題】
すなわち、本発明が解決しようとする課題は、▲1▼透明性と着色力に優れた顔料、▲2▼透明性と着色力に優れた顔料の製造方法を提供することにある。
【0020】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、▲1▼透明性と着色力に優れた黄色顔料、▲2▼透明性と着色力に優れた黄色顔料の製造方法を開発すべく、鋭意研究した結果、C.I.Pigment Yellow 14と、以下の式(II)で示されるジスアゾ顔料誘導体とを含有するブラッグ角度(2θ±0.15°:Cu−Kα)が10.99°に強い線を示すX線回折図形を有する黄色顔料が透明性と着色力に優れている事、アセト酢酸−o−トルイダイドと、以下の式(III)で示される極性基含有アセト酢酸アニリド化合物と、3,3’−ジクロロベンジジンのテトラゾ液との反応物を105〜135℃に加熱する顔料の製造方法が、顔料が透明性と着色力に優れた顔料を提供するのに有用な事を見い出し本発明を完成するに至った。
【0021】
式(II)
【0022】
【化8】
Figure 0004310819
【0023】
(式中、Zは、メチル基、メトキシ基、水酸基、塩素原子から成る群から選ばれる同一又は異なる1〜4個の置換基を有していてもよいフェニル基であって、 カルボン酸基、スルホン酸基及びこれらのアルカリ金属塩からなる群から選ば れる同一又は異なる1〜4個の置換基を有するフェニル基を示す。)
【0024】
式(III)
【0025】
【化9】
CH3COCH2CONH−Z … 式(III)
【0026】
(式中、Zは、メチル基、メトキシ基、水酸基、塩素原子から成る群から選ばれる同一又は異なる1〜4個の置換基を有していてもよいフェニル基であって、カルボン酸基、スルホン酸基及びこれらのアルカリ金属塩からなる群から選ばれる同一又は異なる1〜4個の置換基を有するフェニル基を示す。)
【0027】
即ち本発明は次の発明を提供するものである。
【0028】
(1) ブラッグ角度(2θ±0.15°:Cu−Kα)が10.99°に強い線を示すX線回折図形を有する、C.I.Pigment Yellow 14と、上記式(II)で示されるジスアゾ顔料誘導体とを含有する顔料。
【0029】
(2) 上記式(II)で示されるジスアゾ顔料誘導体が、アセト酢酸−o−トルイダイドと、上記式(III)で示される極性基含有アセト酢酸アニリド化合物と、3,3’−ジクロロベンジジンのテトラゾ液との反応物である上記(1)記載の顔料。
【0030】
(3) アセト酢酸−o−トルイダイドと、上記式(III)で示される極性基含有アセト酢酸アニリド化合物とを予め混合してから、それと3,3’−ジクロロベンジジンのテトラゾ液とを反応させて、C.I.Pigment Yellow 14と上記式(II)で示されるジスアゾ顔料誘導体との両方を含有させた上記(1)記載の顔料。
【0031】
(4) アセト酢酸−o−トルイダイドと、上記式(III)で示される極性基含有アセト酢酸アニリド化合物とのモル比が、90/10〜99.5/0.5である上記(2)または(3)記載の顔料。
【0032】
(5) アセト酢酸−o−トルイダイドと、上記式(III)で示される極性基含有アセト酢酸アニリド化合物と、3,3’−ジクロロベンジジンのテトラゾ液との反応物を105〜135℃に加熱する顔料の製造方法。
【0033】
(6) アセト酢酸−o−トルイダイドと、上記式(III)で示される極性基含有アセト酢酸アニリド化合物とのモル比が、90/10〜99.5/0.5である上記(5)記載の製造方法。
【0034】
【発明の実施の形態】
【0035】
本発明の顔料は、ブラッグ角度(2θ±0.15°:Cu−Kα)が10.99°に強い線を示すX線回折図形を有することと、C.I.Pigment Yellow 14と、上記式(II)で示されるジスアゾ顔料誘導体とを含有することを特徴とする。
【0036】
尚、C.I.Pigment Yellow 14とは、式(I)で示されるものである。
【0037】
式(I)
【0038】
【化10】
Figure 0004310819
【0039】
本発明の顔料は、上記新規結晶型を有し、式(II)で示されるジスアゾ顔料誘導体のC.I.Pigment Yellow 14の粒子表面への強固な吸着もしくはジスアゾ顔料誘導体とC.I.Pigment Yellow 14との混晶結晶の形成により、結晶成長が完全に抑制されており、表面に極性基を有さないC.I.Pigment Yellow 14に比べて、透明性と着色力に優れた印刷インキを提供できるものである。
【0040】
また、本発明の製造方法は、アセト酢酸−o−トルイダイドと、上記式(III)で示される極性基含有アセト酢酸アニリド化合物と、3,3’−ジクロロベンジジンのテトラゾ液との反応物を105〜135℃に加熱する事を特徴とする。
【0041】
これにより、本発明の顔料は、ブラッグ角度(2θ±0.15°:Cu−Kα)が10.99°に強い線を示すX線回折図形を有することと、C.I.Pigment Yellow 14と、上記式(II)で示されるジスアゾ顔料誘導体とを含有する顔料が容易に得られ、ジスアゾ顔料の結晶表面にジスアゾ顔料誘導体を均一かつ強固に吸着させる事、もしくは、ジスアゾ顔料とジスアゾ顔料誘導体との混晶結晶を形成させる事により、ジスアゾ顔料表面に極性基を導入する事が可能となり、結晶成長が完全に抑制され、透明性と着色力に優れた印刷インキを提供できる。
【0042】
本発明の顔料は、ブラッグ角度(2θ±0.15°:Cu−Kα)が10.99°に強い線を示すX線回折図形を有する、上記式(I)で示されるジスアゾ顔料(C.I.Pigment Yellow 14)と上記式(II)で示されるジスアゾ顔料誘導体とを含有する顔料である。
【0043】
上記ジスアゾ顔料とジスアゾ顔料誘導体は、公知慣用の製造方法で製造することが可能であるが、好適には以下の製造方法により製造できる。
【0044】
本発明において、上記式(I)で示されるジスアゾ顔料は、アセト酢酸−o−トルイダイドと、3,3’−ジクロロベンジジンのテトラゾ液との反応による反応物である事が好ましく、上記式(II)で示されるジスアゾ顔料誘導体は、アセト酢酸−o−トルイダイドと、式(III)で示される極性基含有アセト酢酸アニリド化合物と、3,3’−ジクロロベンジジンのテトラゾ液との反応による反応物である事が好ましい。
【0045】
テトラゾ液との反応をさせる方法としては、例えば特公昭55−49087号公報やWO97/31067号公報の方法がある。
【0046】
なかでも、透明性と着色力が高い顔料を簡便な方法により得られる点から、アセト酢酸−o−トルイダイドと、上記式(III)で示される極性基含有アセト酢酸アニリド化合物とを予め混合してから、それと3,3’−ジクロロベンジジンのテトラゾ液とを反応させてジスアゾ顔料(C.I.Pigment Yellow 14)と、上記式(II)で示されるジスアゾ顔料誘導体との両方を含有させる様にする事が好ましい。
【0047】
より好ましくは、例えばアセト酢酸−o−トルイダイドからなる非極性カップラー成分と、式(III)で示される極性基含有アセト酢酸アニリド化合物からなるカップラー成分を含むカップラー水溶液と、3,3’−ジクロロベンジジンのテトラゾ成分を含むテトラゾ水溶液とを、バッチ式撹拌槽内の酸性水溶液中に、前記非極性カップラー成分と前記極性カップラー成分との合計供給モル速度とテトラゾ成分の供給モル速度との比が、200:80から200:99となるように連続的に注入してカップリング反応させる様にすることにより、本発明の顔料を得ることが出来る。
【0048】
この方法では、カップラー水溶液として、アセト酢酸−o−トルイダイドからなる非極性カップラー成分と、式(III)で示される極性基含有アセト酢酸アニリド化合物からなるカップラー成分とを同時に含むものが用いられ、それが連続的にバッチ式撹拌槽内の酸性水溶液中に供給されるため、両カップラー成分とが析出しない、または、ごく僅かに析出する状態で、3,3’−ジクロロベンジジンのテトラゾ成分を含むテトラゾ水溶液との反応が進行する。
【0049】
このため、透明性と流動性を改良する効果がある式(II)で示されるジスアゾ顔料誘導体の生成が多く、透明性と流動性を改良する効果がない、ジスアゾ顔料(C.I.Pigment Yellow 14)以外のジスアゾ化合物の生成が少なくなる、または、全く生成しないため、現在の印刷業界が要求している透明性と流動性を得る事ができる。
【0050】
本発明において使用される式(III)で示される極性基含有アセト酢酸アニリド化合物の具体例としては、例えば2−アセトアセチルアミノベンゼンスルホン酸、3−アセトアセチルアミノベンゼンスルホン酸、4−アセトアセチルアミノベンゼンスルホン酸、2−アセトアセチルアミノ−5−メチルベンゼンスルホン酸、2−アセトアセチルアミノ−4−クロロ−5−メチルベンゼンスルホン酸、2−アセトアセチルアミノ−5−クロロ−4−メチルベンゼンスルホン酸、2−アセトアセチルアミノ−5−クロロ−4−メチルベンゼンスルホン酸、4−アセトアセチルアミノ−2,5−ジクロロベンゼンスルホン酸、2−アセトアセチルアミノ安息香酸、3−アセトアセチルアミノ安息香酸、4−アセトアセチルアミノ安息香酸、3−アセトアセチルアミノ−4−クロロ安息香酸、2−アセトアセチルアミノテレフタル酸、3−アセトアセチルアミノイソフタル酸、4−アセトアセチルアミノ−2−ヒドロキシ安息香酸、5−アセトアセチルアミノ−2−ヒドロキシ安息香酸等およびこれらのアルカリ金属塩がある。
【0051】
なかでも、4−アセトアセチルアミノベンゼンスルホン酸、2−アセトアセチルアミノ安息香酸、3−アセトアセチルアミノ安息香酸、4−アセトアセチルアミノ安息香酸、5−アセトアセチルアミノ−2−ヒドロキシ安息香酸が、透明性と着色力が著しく改良される点から好ましい。
【0052】
本発明において、アセト酢酸−o−トルイダイドと、式(III)で示される極性基含有アセト酢酸アニリド化合物とのモル比は、90/10〜99.5/0.5である事が好ましく、なかでも、93/7〜99/1である事が透明性と着色力を高める効果が高い事から特に好ましい。
【0053】
本発明で使用されるカップラー水溶液は、上記両カップラー成分を含む。このカップラー水溶液は、アルカリ溶液であることが好ましく、両カップラー成分をアルカリとともに溶解し、アルカリ性溶液とすることにより得ることが出来る。
【0054】
アルカリとしては、例えば水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウム等の無機塩基が挙げられる。
【0055】
本発明で使用される3,3’−ジクロロベンジジンのテトラゾ成分を含むテトラゾ水溶液は、3,3’−ジクロロベンジジンを公知の方法でテトラゾ化して得られるものを含む。この水溶液としては、酸性水溶液が好ましく、特に塩酸酸性水溶液が好ましく使用される。
【0056】
本発明では、上記カップラー水溶液がアルカリ溶液で、かつ、テトラゾ水溶液が塩酸水溶液である場合の組み合わせが好ましい。
【0057】
本発明では、予め、バッチ式撹拌槽内に酸性水溶液が仕込まれる。バッチ式撹拌槽としては、公知慣用のものがいずれも使用できるが、通常は、撹拌が必要な液媒体毎に水槽に加える必要がある液媒体を保持する水槽と、その液媒体を撹拌する撹拌翼を有する撹拌機とから構成されているものである。本発明で使用されるバッチ式撹拌槽内の酸性水溶液は、カップリング反応系をpH3〜6.9の範囲、好ましくは3.5〜6.3に保つ事ができれば良く、従来法のカップリングで使用される公知の酸の水溶液でよい。
【0058】
上記pH領域の保持は、テトラゾ成分の分解や縮合などの副反応を最小化するために好ましく、反応開始から終了時まで上記pHの範囲に維持することが、より好ましい。
【0059】
このためには、反応途中において酸あるいはアルカリを断続的にあるいは連続的に添加することによっても良いが、バッチ式撹拌槽内に酸性水溶液中に、pH緩衝剤を存在させることが好ましい。操作の容易さの面からはpH緩衝性のある水溶液系、例えば、従来のカップリング反応で良く使用される『酢酸−酢酸ナトリウム』系や『ギ酸−ギ酸ナトリウム』系等の緩衝性水溶液を用いると、pHの変動が少なく、pHの維持が容易となり好ましいものとなる。
【0060】
本発明において、バッチ式撹拌槽内の酸性水溶液中への、両カップラー成分を含むカップラー水溶液と、3,3’−ジクロロベンジジンのテトラゾ成分を含むテトラゾ水溶液との注入は、例えば別々の注入管を通し酸性水溶液中に並行して行うことが好ましい。
【0061】
カップラー水溶液とテトラゾ水溶液とが直接に接触すると、カップラー成分の析出が起きて固体となり、透明性と流動性を改良する効果がある生成物が少なく、透明性と流動性を改良する効果がない生成物が多くなってしまう可能性があるため、透明性と流動性の改良効果が小さくなる場合がある。
【0062】
これを避けるため、酸性水溶液を満たしたバッチ式撹拌槽を備える撹拌槽では、注入管出口を互いに離した位置に設け注入を行い(並行注入という場合がある。)、十分に撹拌を行い、確実にテトラゾ成分とカップラー成分とが酸性水溶液中で反応するようにする事が好ましい。
【0063】
また、酸性水溶液を撹拌槽より抜き出して外部循環させ、この循環ラインのそれぞれにテトラゾ水溶液とカップラー水溶液とを、あるいは、一方を循環ラインに他方を撹拌槽へ注入するようにしても良い。
【0064】
本発明において、好適には両カップラー成分の供給モル速度とテトラゾ成分の供給モル速度との比が、200:80から200:99となるように、好ましくは200:90から200:99となるように連続的に注入してカップリング反応させる事により顔料が製造できる。
【0065】
こうする事で、テトラゾ成分は酸性水溶液に注入後、直ちに全てがカップラー成分と反応し、未反応のテトラゾが反応系内に残存しなくなる。その結果、テトラゾ成分の分解や縮合による副反応が防止され、色の汚れが防止される。
【0066】
供給モル速度の比は、反応の全期間を通じて一定値に保つ必要はなく、上記供給モル速度比の範囲内で、注入の進行につれて変化させてもよい。また、カップラー水溶液の注入開始をテトラゾ水溶液の注入に先行させてもよい。さらに、ノニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、ロジン溶液のような表面処理剤を注入し、生成した顔料粒子の表面処理を同時に行っても良い。
【0067】
以上のように、テトラゾとカップラー成分とを上記のモル比で並行注入すると、注入終了時点で反応系内にはテトラゾ成分は全く存在していないが、反応可能なカップラー成分が少し残っている状態となっている。そこで、両カップラー成分を含むカップラー水溶液と、3,3’−ジクロロベンジジンのテトラゾ成分を含むテトラゾ水溶液とを、バッチ式撹拌槽内の酸性水溶液中に、連続的に注入した後、テトラゾ水溶液だけを追加的に注入する事が出来る。例えば、並行注入終了後、テトラゾ水溶液のみを追加注入して、完全にカップラー成分と反応させ、更にカップリング反応率を高める事もできる。
【0068】
本発明において、両カップラー成分を含むカップラー水溶液の酸性水溶液への注入は、カップラー水溶液を酸性水溶液と混合した時に、溶解していた両カップラー成分が析出しないような条件を選択する事が好ましい。
【0069】
本発明において、両カップラー成分の濃度の和が0.1〜1モル/リットルであるカップラー水溶液と、濃度が0.05〜0.8モル/リットルであるテトラゾ水溶液を酸性水溶液に注入する事が操作上、また経済上、負担が軽い点で好ましい。
【0070】
本発明において、酸性水溶液への、カップラー水溶液およびテトラゾ水溶液の1分間当たりの注入量は、特に制限されないが、酸性水溶液中で両カップラー成分が析出しないような範囲で決められる。
【0071】
酸性水溶液と、カップラー水溶液およびテトラゾ水溶液の1分間当たりの注入量との比率は、1000:1〜1000:50の範囲で行う事が好ましい。
【0072】
本発明において、カップリング中の温度やpHの値などの反応条件およびこの制御法は、従来のカップリング反応での公知の条件値および制御法から選択され、特段の制約はない。pHや温度を時間あるいは注入量と共に変化させても、あるいは終始一定に保っても良い。
【0073】
なお、本発明が好ましい実施形態で実施される場合には、酸性であるテトラゾ水溶液とアルカリ性であるカップラー水溶液とが並行して注入されるので、これらの水溶液中の酸とアルカリとが中和されるようにそれぞれの溶液のpHや流量を調整する事により、初期のpHを最後まで保った状態でカップリング反応を行うことができる。
【0074】
しかしながら、本発明において、ブラッグ角度(2θ±0.15°:Cu−Kα)が10.99°に強い線を示すX線回折図形を有する新規結晶型の顔料を得るためには、例えばアセト酢酸−o−トルイダイドと、極性基含有アセト酢酸アニリド化合物と、3,3’−ジクロロベンジジンのテトラゾ液との反応物を105〜135℃に加熱する事が必要である。なかでも、115〜135℃に加熱する事が好ましい。
【0075】
この加熱温度が低いとブラッグ角度(2θ±0.15°:Cu−Kα)が11.49°に強い線を示すX線回折図形を有する従来技術の顔料、例えば、特公昭55−49087号公報、特開昭63−72762号、特開昭63−178169号公報、WO97/31067号公報に記載の顔料が得られ、透明性と着色力が低く、印刷業界の要望に応える事ができない。
【0076】
また、加熱温度が高いと、ブラッグ角度(2θ±0.15°:Cu−Kα)が11.49°に強い線を示すX線回折図形を有する従来技術の顔料となり、透明性と着色力が大幅に低くなる。
【0077】
アセト酢酸−o−トルイダイドと、3,3’−ジクロロベンジジンのテトラゾ液との反応によるジスアゾ顔料は、加熱する事により、結晶成長が進行し、透明性と着色力が低下する事が一般的である。また、アセト酢酸−o−トルイダイドと、極性基含有アセト酢酸アニリド化合物と、3,3’−ジクロロベンジジンのテトラゾ液との反応物からなる顔料も、透明性と着色力が低下する程度が若干小さいものの、加熱する事により、結晶成長が進行し、透明性と着色力が低下する事が一般的である。
【0078】
しかしながら、本発明において、限定的な加熱温度範囲において、透明性と着色力に優れた新規結晶型の顔料が得られる。
【0079】
アセト酢酸−o−トルイダイドと、極性基含有アセト酢酸アニリド化合物と、3,3’−ジクロロベンジジンのテトラゾ液との反応物からなる顔料は、加熱する事により、下記に記述した第1段階、第2段階、第3段階を進行すると考えられる。
【0080】
(第一段階):アセト酢酸−o−トルイダイドと、極性基含有アセト酢酸アニリド化合物〔式(III)〕と、3,3’−ジクロロベンジジンのテトラゾ液との反応物を使用する事により生成するジスアゾ顔料誘導体〔式(II)〕が、アセト酢酸−o−トルイダイドと、3,3’−ジクロロベンジジンのテトラゾ液との反応物に相当するジスアゾ顔料(C.I.Pigment Yellow 14)結晶表面に吸着し、結晶成長を抑制するものと考えられる。
【0081】
しかしながら、従来実施されている常圧条件での加熱、すなわち100℃未満の加熱ではジスアゾ顔料誘導体の吸着が不十分であり、完全に結晶成長を抑制する事ができず、現在の印刷業界が要求している透明性と着色力を得ることは出来ない。ブラッグ角度(2θ±0.15°:Cu−Kα)が11.49°に強い線を示すX線回折図形を有する従来技術の顔料となる。
【0082】
(第2段階):105〜135℃に加熱する事により、ジスアゾ顔料の結晶表面に粒子表面にジスアゾ顔料誘導体を均一かつ強固に吸着させる事、もしくは、ジスアゾ顔料とジスアゾ顔料誘導体との混晶結晶を形成させる事により、ジスアゾ顔料表面に極性基を導入する事が可能となり、結晶成長が完全に抑制され、現在の印刷業界が要求している透明性と着色力を得る事が出来きる。ブラッグ角度(2θ±0.15°:Cu−Kα)が10.99°に強い線を示すX線回折図形を有する本発明の顔料となる。
【0083】
(第3段階):135℃を越える温度に加熱する事により、ジスアゾ顔料の結晶表面に粒子表面吸着していたジスアゾ顔料誘導体が脱着する、もしくは、ジスアゾ顔料とジスアゾ顔料誘導体との混晶結晶が破壊され従来技術の結晶型に変換される。結晶成長が急速に進み、現在の印刷業界が要求している透明性と着色力を得ることは出来ない。ブラッグ角度(2θ±0.15°:Cu−Kα)が11.49°に強い線を示すX線回折図形を有する従来技術の顔料となる。
【0084】
すなわち、本発明の顔料は上記の第2段階に相当する顔料であると考えられる。従って、本発明の製法では、限定的な加熱温度範囲が重要な意味を持つことになる。
【0085】
本発明の顔料は、従来公知の界面活性剤、例えば、ノニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、高分子界面活性剤やロジン等の樹脂酸で表面処理を行うことも可能である。
【0086】
本発明の顔料は、印刷インキに使用した場合、現在の印刷業界が要求している優れた透明性と着色力を得る事が出来る。なお、本発明の顔料は、塗料、プラスチック、カラーフィルター用途に使用する事も可能である。
【0087】
本発明の製造方法により得られたジスアゾ顔料は、印刷インキ用ビヒクルと混練されて、透明性と流動性に優れた印刷インキに使用する事ができる。
【0088】
オフセットインキ用ビヒクルは、例えば、ロジン変性フェノール樹脂、石油樹脂、アルキッド樹脂又はこれら乾性油変性樹脂等の樹脂と、必要に応じて、アマニ油、桐油、大豆油等の植物油と、n−パラフィン、イソパラフィン、アロマテック、ナフテン、α−オレフィン等の溶剤から成るものであって、それらの混合割合は、重量比で、樹脂:植物油:溶剤=20〜50部:0〜30部:10〜60部の範囲が好ましい。
【0089】
本発明のジスアゾ顔料を配合したオフセットインキ用ビヒクルは、必要に応じて、インキ溶剤、ドライヤー、レベリング改良剤、増粘剤等の公知の添加剤を適宜配合して印刷インキと成る。
【0090】
また、グラビアインキ用ビヒクルは、例えばガムロジン、ウッドロジン、トール油ロジン、石灰化ロジン、ライムロジン、ロジンエステル、マレイン酸樹脂、ギルソナイト、ダンマル、セラック、ポリアミド樹脂、ビニル樹脂、ニトロセルロース、環化ゴム、塩化ゴム、エチルセルロース、酢酸セルロース、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、アルキッド樹脂等の樹脂混合物と、n−ヘキサン、トルエン、エタノール、メタノール、アセトン、酢酸エチル、乳酸エチル、セロソルブ、イソプロピルアルコール、クロルベンゾール、エチルエーテル、アセタールエチルエーテル、アセト酢酸エチル、酢酸ブチルセロソルブ等の溶剤から成るものであって、それらの混合割合は、重量比で、樹脂混合物:溶剤=10〜50部:30〜80部の範囲が好ましい。
【0091】
本発明のジスアゾ顔料を配合したグラビアインキ用ビヒクルは、必要に応じて、例えば硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、石膏、アルミナ白、クレー、シリカ、シリカ白、タルク、ケイ酸カルシウム、沈降性炭酸マグネシウム等の体質顔料の他、補助剤として、可塑剤、紫外線防止剤、酸化防止剤、帯電防止剤等の公知の添加剤を適宜配合して印刷インキと成る。
【0092】
【実施例】
以下、実施例、比較例及び試験例を用いて本発明を更に詳細に説明するが、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。なお、以下の例中における「部」および「%」は、特に断りのない限り、いずれも重量基準である。
【0093】
<実施例1>
3,3’−ジクロロベンジジン塩酸塩をその3倍モルの塩酸と2倍モルの亜硝酸ナトリウムを使用して常法によりテトラゾ化し、5℃、0.125モル/リットルのテトラゾ水溶液を調整した。一方、アセト酢酸−o−トルイダイド362.9部と2−アセトアセチルアミノ安息香酸22.1部を水酸化ナトリウム120部を含む水溶液に溶解し、20℃、0.259モル/リットルのカップラー水溶液を調整した。
【0094】
また、酸性水溶液として80%酢酸300gと水酸化ナトリウム80部と水とからなる15℃、pH4.7の緩衝溶液5000gを調整し、撹拌機を有する反応器に仕込んだ。
【0095】
このpH緩衝溶液中の互いに離れた位置に出口を持つ2本の注入管を通してpH緩衝溶液中に注入を行った。これらの溶液は同時に注入を開始し、定量ポンプにより同じ体積流量(64.3ml/分)で120分注入し、同時に注入を終了した。注入の間、液面より採取した反応液からはテトラゾは検出されなかった。その後、反応系内にテトラゾが極僅か認められるまでテトラゾ水溶液のみを注入した。なお、テトラゾの検出は、β−ナフトールによる発色反応を用いて行った。
【0096】
130℃で1時間加熱撹拌後、濾過、水洗し、90℃の乾燥機で乾燥して、顔料(発明顔料1)を得た。
【0097】
質量分析計にて測定を行った結果、ジスアゾ顔料(式1−A)に相当するm/z=656と、ジスアゾ顔料誘導体(式1−B)に相当するm/z=686とにピークを有していた。
【0098】
X線回折測定装置(理学電機株式会社製RINT 1100)にて測定を行った結果、ブラッグ角度(2θ±0.15°:Cu−Kα)が10.99°に強い線を示すX線回折図形を有した。図1は、得られたX線回折図形である。
【0099】
式1−A
【0100】
【化11】
Figure 0004310819
【0101】
式1−B
【0102】
【化12】
Figure 0004310819
【0103】
<比較例1−1>
130℃で1時間加熱撹拌する代わりに、90℃で1時間加熱撹拌する事以外は、実施例1と同様にして顔料(比較顔料1−1)を得た。
【0104】
質量分析計にて測定を行った結果、ジスアゾ顔料(式1−A)に相当するm/z=656と、ジスアゾ顔料誘導体(式1−B)に相当するm/z=686とにピークを有していた。
【0105】
X線回折測定装置にて測定を行った結果、ブラッグ角度(2θ±0.15°:Cu−Kα)が11.49に強い線を示すX線回折図形を有した。図2は、得られたX線回折図形である。
【0106】
<ジスアゾ顔料の製造方法の比較例1−2>
3,3’−ジクロロベンジジン塩酸塩をその3倍モルの塩酸と2倍モルの亜硝酸ナトリウムを使用して常法によりテトラゾ化し、5℃、0.125モル/リットルのテトラゾ水溶液を調整した。一方、アセト酢酸−o−トルイダイド362.9部と2−アセトアセチルアミノ安息香酸22.1部を水酸化ナトリウム144部を含む水溶液に溶解し、20℃、0.259モル/リットルのカップラー水溶液を調整した。
【0107】
また、酸性水溶液として80%酢酸300gと水とからなる20℃の酢酸溶液5000gを調整し、撹拌機を有する反応器に仕込んだ。
【0108】
この酢酸溶液にカップラー水溶液を64.3ml/分の流量で120分間注入してカップラーを沈殿させた。このカップラースラリー中に出口を持つ注入管をセットし、テトラゾ水溶液を64.3ml/分の流速で注入を開始した。反応液面でテトラゾが極僅か認められるまで、約120分かけて注入した。なお、テトラゾの検出は、β−ナフトールによる発色反応を用いて行った。
【0109】
90℃で1時間加熱撹拌後、濾過、水洗し、90℃の乾燥機で乾燥して、顔料(比較顔料1−2)を得た。
【0110】
X線回折測定装置にて測定を行った結果、図2と同様に、ブラッグ角度(2θ±0.15°:Cu−Kα)が11.49°に強い線を示すX線回折図形を有した。
【0111】
<ジスアゾ顔料の製造方法の比較例1−3>
アセト酢酸−o−トルイダイド362.9部と2−アセトアセチルアミノ安息香酸22.1部を使用する代わりに、アセト酢酸−o−トルイダイド382部を使用する事以外は、実施例1と同様にして顔料(比較顔料1−3)を得た。
【0112】
質量分析計にて測定を行った結果、ジスアゾ顔料(式1−A)に相当するm/z=656にピークを有したが、ジスアゾ顔料誘導体(式1−B)に相当するm/z=686とにピークを有していなかった。
【0113】
X線回折測定装置にて測定を行った結果、図2と同様に、ブラッグ角度(2θ±0.15°:Cu−Kα)が11.49°に強い線を示すX線回折図形を有した。
【0114】
<比較例1−4>
130℃で1時間加熱撹拌する代わりに、75℃で1時間加熱撹拌する事以外は、実施例1と同様にして顔料(比較顔料1−4)を得た。
【0115】
質量分析計にて測定を行った結果、ジスアゾ顔料(式1−A)に相当するm/z=656と、ジスアゾ顔料誘導体(式1−B)に相当するm/z=686とにピークを有していた。
【0116】
X線回折測定装置にて測定を行った結果、図2と同様に、ブラッグ角度(2θ±0.15°:Cu−Kα)が11.49°に強い線を示すX線回折図形を有した。
【0117】
<試験例1>
以下の方法により、実施例1により得られた顔料(発明顔料1)、比較例1−1により得られた顔料(比較顔料1−1)、比較例1−2により得られた顔料(比較顔料1−2)、比較例1−3により得られた顔料(比較顔料3)、比較例1−4により得られた顔料(比較顔料4)をインキ化した。
【0118】
顔料0.4部と平版インキワニス(ロジン変性フェノール樹脂含有)1.6部をフーバー式マーラーにて練肉して、試験インキを調整した。
【0119】
上記方法により調整した各試験インキについて、透明性と着色力を測定し、その結果を表1にまとめて示した。
【0120】
<透明性の評価方法>
黒インキを用いて黒帯を印刷した白い展色紙に試験インキを展色し、黒帯の上の展色状態を目視で観察する。黒帯の上に試験インキが展色される事により黒帯が見えにくいものを不透明と判断し、目視判定7とする。黒帯が見えやすいものを透明と判断し、目視判定5とする。
【0121】
<着色力の評価方法>
試験インキ0.2部を白インキ2部に混ぜて淡色インキを作製した。白い展色紙に淡色インキを展色し、着色力を目視で評価した。なお、実施例で得られた顔料(発明顔料)の着色力を100%とした百分率で表示を行った。
【0122】
【表1】
表 1
Figure 0004310819
【0123】
<実施例2>
2−アセトアセチルアミノ安息香酸22.1部を使用する代わりに5−アセトアセチルアミノ−2−ヒドロキシ安息香酸23.7部を使用した事、および、130℃で1時間加熱撹拌する代わりに120℃で1時間撹拌する事以外は、実施例1と同様にして、ジスアゾ顔料を含むウェット顔料(発明顔料2)を得た。
【0124】
質量分析計にて測定を行った結果、ジスアゾ顔料(式1−A)に相当するm/z=656と、ジスアゾ顔料誘導体(式2−B)に相当するm/z=702とにピークを有していた。
【0125】
X線回折測定装置にて測定を行った結果、図1と同様に、ブラッグ角度(2θ±0.15°:Cu−Kα)が10.99°に強い線を示すX線回折図形を有した。
【0126】
式2−B
【0127】
【化13】
Figure 0004310819
【0128】
<比較例2−1>
120℃で1時間加熱撹拌する代わりに、90℃で1時間加熱撹拌する事以外は、実施例2と同様にして顔料(比較顔料2−1)を得た。
【0129】
質量分析計にて測定を行った結果、ジスアゾ顔料(式1−A)に相当するm/z=656と、ジスアゾ顔料誘導体(式2−B)に相当するm/z=702とにピークを有していた。
【0130】
X線回折測定装置にて測定を行った結果、図2と同様に、ブラッグ角度(2θ±0.15°:Cu−Kα)が11.49°に強い線を示すX線回折図形を有した。
【0131】
<ジスアゾ顔料の製造方法の比較例2−2>
2−アセトアセチルアミノ安息香酸22.1部を使用する代わりに5−アセトアセチルアミノ−2−ヒドロキシ安息香酸23.7部を使用した事以外は、比較例1−2と同様にして、顔料(比較顔料2−2)を得た。
【0132】
X線回折測定装置にて測定を行った結果、図2と同様に、ブラッグ角度(2θ±0.15°:Cu−Kα)が11.49°に強い線を示すX線回折図形を有した。
【0133】
<試験例2>
試験例1と同様にして、実施例2により得られた顔料(発明顔料2)、比較例2−1により得られた顔料(比較顔料2−1)、比較例2−2により得られた顔料(比較顔料2−2)をインキ化した。各試験インキについて、透明性と着色力を測定し、その結果を表2にまとめて示した。
【0134】
【表2】
表 2
Figure 0004310819
【0135】
<実施例3>
2−アセトアセチルアミノ安息香酸22.1部使用する代わりに、4−アセトアセチルアミノベンゼンスルホン酸のカリウム塩29.5部を使用した事以外は、実施例1と同様にして、顔料(発明顔料3)を得た。
【0136】
本顔料は、ジスアゾ顔料(式1−A)と、ジスアゾ顔料誘導体(式3−B)を含有している。
【0137】
X線回折測定装置にて測定を行った結果、図1と同様に、ブラッグ角度(2θ±0.15°:Cu−Kα)が10.99°に強い線を示すX線回折図形を有した。
【0138】
式3−B
【0139】
【化14】
Figure 0004310819
【0140】
<比較例3−1>
130℃で1時間加熱撹拌する代わりに、90℃で1時間加熱撹拌する事以外は、実施例3と同様にして顔料(比較顔料3−1)を得た。
【0141】
本顔料は、ジスアゾ顔料(式1−A)と、ジスアゾ顔料誘導体(式3−B)を含有している。
【0142】
X線回折測定装置にて測定を行った結果、図2と同様に、ブラッグ角度(2θ±0.15°:Cu−Kα)が11.49°に強い線を示すX線回折図形を有した。
【0143】
<ジスアゾ顔料の製造方法の比較例3−2>
2−アセトアセチルアミノ安息香酸22.1部を使用する代わりに、4−アセトアセチルアミノベンゼンスルホン酸のカリウム塩29.5部を使用した事以外外は、比較例1−2と同様にして、顔料(比較顔料3−2)を得た。
【0144】
X線回折測定装置にて測定を行った結果、図2と同様に、ブラッグ角度(2θ±0.15°:Cu−Kα)が11.49°に強い線を示すX線回折図形を有した。
【0145】
<試験例3>
試験例1と同様にして、実施例3により得られた顔料(発明顔料3)、比較例3−1により得られた顔料(比較顔料3−1)、比較例3−2により得られた顔料(比較顔料3−2)をインキ化した。各試験インキについて、透明性と着色力を測定し、その結果を表3にまとめて示した。
【0146】
【表3】
表 3
Figure 0004310819
【0147】
<実施例4>
アセト酢酸−o−トルイダイド362.9部と2−アセトアセチルアミノ安息香酸22.1部を使用する代わりに、アセト酢酸−o−トルイダイド351.4部と2−アセトアセチルアミノ安息香酸35.4部を使用した事以外は、実施例1と同様にして顔料(発明顔料4)を得た。
【0148】
本顔料は、ジスアゾ顔料(式1−A)と、ジスアゾ顔料誘導体(式1−B)を含有している。
【0149】
X線回折測定装置にて測定を行った結果、図1と同様に、ブラッグ角度(2θ±0.15°:Cu−Kα)が10.99°に強い線を示すX線回折図形を有した。
【0150】
<比較例4−1>
130℃で1時間加熱撹拌する代わりに、90℃で1時間加熱撹拌する事以外は、実施例4と同様にして顔料(比較顔料4−1)を得た。
【0151】
質量分析計にて測定を行った結果、ジスアゾ顔料(式1−A)と、ジスアゾ顔料誘導体(式1−B)を含有している。
【0152】
X線回折測定装置にて測定を行った結果、図2と同様に、ブラッグ角度(2θ±0.15°:Cu−Kα)が11.49°に強い線を示すX線回折図形を有した。
【0153】
<試験例4>
試験例1と同様にして、実施例4により得られた顔料(発明顔料4)、比較例4−1により得られた顔料(比較顔料4−1)をインキ化した。各試験インキについて、透明性と着色力を測定し、その結果を表4にまとめて示した。
【0154】
【表4】
表 4
Figure 0004310819
【0155】
<実施例5>
アセト酢酸−o−トルイダイド362.9部と2−アセトアセチルアミノ安息香酸22.1部を使用する代わりに、アセト酢酸−o−トルイダイド370.5部と2−アセトアセチルアミノ安息香酸13.3部を使用した事、および、130℃で1時間加熱する代わりに115℃で1時間加熱する事以外は、実施例1と同様にして顔料(発明顔料5)を得た。
【0156】
X線回折測定装置にて測定を行った結果、図1と同様に、ブラッグ角度(2θ±0.15°:Cu−Kα)が10.99°に強い線を示すX線回折図形を有した。
【0157】
<比較例5−1>
115℃で1時間加熱する代わりに90℃で1時間加熱する事以外は、実施例5と同様にして顔料(比較顔料5−1)を得た。
【0158】
X線回折測定装置にて測定を行った結果、図2と同様に、ブラッグ角度(2θ±0.15°:Cu−Kα)が11.49°に強い線を示すX線回折図形を有した。
【0159】
<試験例5>
試験例1と同様にして、実施例5により得られた顔料(発明顔料5)、比較例5−1により得られた顔料(比較顔料5−1)をインキ化した。各試験インキについて、透明性と着色力を測定し、その結果を表5にまとめて示した。
【0160】
【表5】
表 5
Figure 0004310819
【0161】
発明顔料は、ブラッグ角度(2θ±0.15°:Cu−Kα)が10.99°、に強い線を示すX線回折図形を有し、透明性と着色力に優れたインキを与える事がわかる。一方、比較顔料は、ブラッグ角度(2θ±0.15°:Cu−Kα)が11.49°に強い線を示すX線回折図形を有し、透明性と着色力が劣ったインキを与える事がわかる。
【0162】
【発明の効果】
本発明の顔料は、特定のジスアゾ顔料誘導体で修飾された、新規X線回折図を示す新規結晶型顔料であり、透明性と着色力に優れている。本発明の製造方法では、カップリング成分とテトラゾ成分との反応を特定温度範囲で行うので、新規X線回折図を示す新規結晶型顔料を、容易に、選択的に得ることが出来る。
【0163】
従って、本発明の新規結晶型顔料とインキビヒクルよりなる印刷インキは、透明性と着色力に優れたものとすることが出来る。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1で得られた発明顔料1のX線回折図形である。
【図2】比較例1−1で得られた比較顔料1−1のX線回折図形である。

Claims (6)

  1. ブラッグ角度(2θ±0.15°:Cu−Kα)が10.99°に強い線を示すX線回折図形を有する、C.I.Pigment Yellow 14と、式(II)で示されるジスアゾ顔料誘導体とを含有する顔料。
    Figure 0004310819
    (式中、Zは、メチル基、メトキシ基、水酸基、塩素原子から成る群から選ばれる同一又は異なる1〜4個の置換基を有していてもよいフェニル基であって、カルボン酸基、スルホン酸基及びこれらのアルカリ金属塩からなる群から選ばれる同一又は異なる1〜4個の置換基を有するフェニル基を示す。)
  2. 式(II)で示されるジスアゾ顔料誘導体が、アセト酢酸−o−トルイダイドと、式(III)で示される極性基含有アセト酢酸アニリド化合物と、3,3’−ジクロロベンジジンのテトラゾ液との反応物である請求項1記載の顔料。
    【化2】
    CH3COCH2CONH−Z … 式(III)
    (式中、Zは、メチル基、メトキシ基、水酸基、塩素原子から成る群から選ばれる同一又は異なる1〜4個の置換基を有していてもよいフェニル基であって、カルボン酸基、スルホン酸基及びこれらのアルカリ金属塩からなる群から選ばれる同一又は異なる1〜4個の置換基を有するフェニル基を示す。)
  3. アセト酢酸−o−トルイダイドと、式(III)で示される極性基含有アセト酢酸アニリド化合物とを予め混合してから、それと3,3’−ジクロロベンジジンのテトラゾ液とを反応させて、C.I.Pigment Yellow 14と式(II)で示されるジスアゾ顔料誘導体との両方を含有させた請求項1記載の顔料。
    【化3】
    CH3COCH2CONH−Z … 式(III)
    (式中、Zは、メチル基、メトキシ基、水酸基、塩素原子から成る群から選ばれる同一又は異なる1〜4個の置換基を有していてもよいフェニル基であって、カルボン酸基、スルホン酸基及びこれらのアルカリ金属塩からなる群から選ばれる同一又は異なる1〜4個の置換基を有するフェニル基を示す。)
  4. アセト酢酸−o−トルイダイドと、式(III)で示される極性基含有アセト酢酸アニリド化合物とのモル比が、90/10〜99.5/0.5である請求項2または3記載の顔料。
  5. アセト酢酸−o−トルイダイドと、式(III)で示される極性基含有アセト酢酸アニリド化合物と、3,3’−ジクロロベンジジンのテトラゾ液との反応物を105〜135℃に加熱する顔料の製造方法。
    【化4】
    CH3COCH2CONH−Z … 式(III)
    (式中、Zは、メチル基、メトキシ基、水酸基、塩素原子から成る群から選ばれる同一又は異なる1〜4個の置換基を有していてもよいフェニル基であって、カルボン酸基、スルホン酸基及びこれらのアルカリ金属塩からなる群から選ばれる同一又は異なる1〜4個の置換基を有するフェニル基を示す。)
  6. アセト酢酸−o−トルイダイドと、式(III)で示される極性基含有アセト酢酸アニリド化合物とのモル比が、90/10〜99.5/0.5である請求項5記載の製造方法。
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