JP4308978B2 - 重荷重用空気入りラジアルタイヤ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、トレッドにおけるセパレーションを防止すると共に加硫工程での製造故障をなくした重荷重用空気入りラジアルタイヤ、特に建設車両用空気入りラジアルタイヤに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、建設車両用空気入りラジアルタイヤのようなトレッド断面厚さが厚いタイヤでは、トレッドゴム部材そのものが厚くかつ幅が広く・長さが長いために、トレッドゴム部材重量が大きいことやトレッドゴム部材押し出し機の設備上の制約・作業上の制約等により所要の形状に押し出したトレッドゴム部材を使用するのが困難である。
【0003】
そこで、トレッド成形方法の一つとして、いわゆるホットストリップワインディング方式(Hot Strip Winding方式)といわれる方法が採用されている。この方法では、厚さ2〜3mm、幅40〜100mm程度の帯状のゴムストリップを押し出し機でまず押出し、このゴムストリップをタイヤ周方向に連続して互いに側面を接合しながら螺旋状に巻回してゴムストリップ層を形成し、このゴムストリップ層を所要の厚さ・形状となるように何層も積層していくことによりトレッドを製造している。
【0004】
したがって、この方法によって得られるトレッドでは、図3に示すように、カーカス層側からタイヤ径方向外側方向に数えて第1層目のゴムストリップ層11ではゴムストリップ相互間の接合境界線が左上がりとなり、第2層目のゴムストリップ層12では右上がり、第3層目のゴムストリップ層13では左上がり、第4層目のゴムストリップ層14では右上がりとなって、ゴムストリップ層間でゴムストリップ相互間の接合境界線の傾き方向が交互に変わることになる。この結果、次ぎのような問題(1)〜(3)が残されていた。
【0005】
(1)トレッドに耐カット性能を強く要求される建設車両用空気入りラジアルタイヤでは、一般に、トレッドゴムとしてSBR系コンパウンド(スチレン−ブタジエン共重合体ゴムにカーボンブラック等の配合剤を配合してなるゴム組成物)が用いられる。しかし、SBR系コンパウンドを用いると、ゴムストリップ相互間の接合境界線でのゴムストリップ接合境界面同士の接着力が弱い傾向にある。これは、ゴムストリップを押出してからトレッドを形成し、加硫するまでの工程において、ゴムストリップ接合境界面では押出し時の熱で既に加硫が一部すすんでいるので加硫工程終了後にゴムストリップ接合境界面同士の接着が不十分となるためである。ゴムストリップ接合境界面同士の接着力が弱いとトレッドに接合境界線に沿ってクラックが生じやすい。
【0006】
(2)タイヤ接地時にはトレッドセンター域の接地圧力が最も高い分布を示すが、タイヤ子午線方向断面におけるタイヤ接地時のトレッド内部の主歪み分布をみると、トレッドセンター域では、ベルト層と両ショルダー部トレッドゴムに挟まれているため歪み成分は垂直方向となり、ゴムストリップ相互間の接合境界線と交差しており、かつ、比較的低い歪みレベルにある。一方、ショルダー部のタイヤ接地幅内では、サイドウオール側がフリーの状態にあるため図3に示すようにタイヤ外側方向に傾斜して歪みレベルの高い主歪み成分Fが生じることになる。したがって、図3に示した従来のトレッド形成方法では、この主歪み成分Fの方向とゴムストリップ相互間の左右の接合境界線の向きとが、両方のショルダー部のうちいずれか一方で同じ方向となる。同じ方向となったショルダー部では、その接合境界線に沿ってクラックが生じやすく、また、そのクラックの成長が進み易い。
【0007】
(3)ゴムストリップをタイヤ周方向に連続して互いに側面を接合しながら螺旋状に巻回してなるゴムストリップ層を積層することによりトレッドを形成するため、トレッド面には、図3に示すように加硫前には凹凸が生じているので、加硫に際してこの凹部にゴムが流れ込まずに空気が残った状態で加硫され、これにより加硫後にトレッド面に筋状の線が残るという製品外観故障(ライトトレッド故障)が起き易い。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、ホットストリップワインディング方式によりトレッドを形成した重荷重用空気入りラジアルタイヤであって、トレッドにおけるクラック発生によるセパレーションを防止すると共に加硫工程での製造故障(製品外観故障)をなくした重荷重用空気入りラジアルタイヤを提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は、左右一対のビード部にカーカス層を装架し、該カーカス層の外側にベルト層を介してゴムストリップをタイヤ周方向に連続的に螺旋状に巻回したゴムストリップ積層体からなるトレッドを形成すると共に、該トレッドの表面にタイヤ周方向に延びる複数本の主溝を設けた重荷重用空気入りラジアルタイヤにおいて、タイヤ幅方向最外側の左右の主溝からそれぞれタイヤ接地幅のトレッドショルダー端までは、少なくとも主溝のトレッドショルダー端側の溝壁の部分で前記ゴムストリップ積層体の最外層領域における左右のゴムストリップ間の境界面を、タイヤ接地面に沿うタイヤ幅方向のタイヤ外側方向に対してタイヤ外径側へ斜めに傾斜させ、また前記最外側の主溝からそれぞれトレッドセンターまでは、少なくとも主溝のトレッドセンター側の溝壁の部分で前記ゴムストリップ積層体の最外層領域における左右のゴムストリップ間の境界面を、タイヤ接地面に沿うタイヤ幅方向のタイヤ外側方向に対してタイヤ内径側へ斜めに傾斜させたことを特徴とする。
【0010】
このように、タイヤ幅方向最外側の左右の主溝からそれぞれタイヤ接地幅のトレッドショルダー端においてゴムストリップ積層体の最外層領域における左右のゴムストリップ間の境界面を、タイヤ接地面に沿うタイヤ幅方向のタイヤ外側方向に対してタイヤ外径側へ斜めに傾斜させたため、この境界面(又はゴムストリップ相互間の接合境界線)がタイヤ接地時のトレッド内主歪み成分の方向と交差するので、その主歪み成分の方向がこの境界面に沿わなくなるから、この境界面に沿ったクラックの発生や成長を抑止できる。したがって、たとえゴムストリップ同士の接着力が弱い場合でもトレッドにおけるセパレーションを防止することが可能となる。
【0011】
また、タイヤ子午線方向断面において、加硫中のトレッドゴムの動きはショルダー部にて最も大きく、タイヤ幅方向最外側の左右の主溝からショルダー部にトレッドゴムが流れ込むような動きをして加硫が行われる。特に、トレッド面のショルダー部のタイヤ接地幅内において、少なくともゴムストリップ積層体の最外層領域における左右のゴムストリップ間の境界面を、タイヤ接地面に沿うタイヤ幅方向のタイヤ外側方向に対してタイヤ外径側へ斜めに傾斜させることにより生じた凹凸面では、加硫中におけるタイヤ幅方向最外側の左右の主溝からショルダー部へのトレッドゴムの流れが緩やかとなり、その流れに乱れがないので製品外観故障をなくすことが可能となる。
【0012】
また、前記最外側の主溝からそれぞれトレッドセンターまでは、少なくとも主溝のトレッドセンター側の溝壁の部分で前記ゴムストリップ積層体の最外層領域における左右のゴムストリップ間の境界面を、タイヤ接地面に沿うタイヤ幅方向のタイヤ外側方向に対してタイヤ内径側へ斜めに傾斜させたので、製品外観故障を起こしにくく、かつクラックの発生や成長を抑止可能となる。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明の重荷重用空気入りラジアルタイヤでは、図1に例示されるように、カーカス層2が左右一対のビード部3、3間に装架され、カーカス層2の端部がビード部3においてビードコア4の廻りにタイヤ内側から外側に折り返されて巻き上げられている。カーカス層2の外側には複数枚のベルト層5がタイヤ1周に亘って配置されており、ベルト層5の外側にはトレッド6がタイヤ1周に亘って設けられている。トレッド6の表面、すなわちトレッド面にはタイヤ周方向に延びる主溝7がタイヤ1周に亘って設けられている。
【0014】
本発明の参考技術では、トレッドを、ゴムストリップをタイヤ周方向に連続して互いに側面を接合しながら螺旋状に巻回してなるゴムストリップ層を積層してなるゴムストリップ積層体から形成しており、両ショルダー部のタイヤ接地幅内の少なくともゴムストリップ積層体の最外層領域における左右のゴムストリップ間の境界面を、それぞれタイヤ接地面に沿うタイヤ幅方向のタイヤ外側方向に対してタイヤ外径側へ斜めに傾斜させている。すなわち、図2に示されるように、ゴムストリップをタイヤ周方向に連続して互いに側面を接合しながら螺旋状に巻回してなるゴムストリップ層11、12、13、14でトレッド6を形成しており、カーカス層側からタイヤ径方向外側方向に数えて第1層目のゴムストリップ層11ではゴムストリップ相互間の接合境界線(又はゴムストリップ間の左右の境界面)が左上がりとなり、第2層目のゴムストリップ層12では右上がり、第3層目のゴムストリップ層13では左上がりとなっていて、トレッド面の両方のショルダー部を形成する第4層目のゴムストリップ層14、14では、ゴムストリップ相互間の接合境界線のトレッドショルダー端10(タイヤ幅方向接地端に同じ)側をタイヤ外径側に傾斜させている(すなわち、図2において、右側のショルダー部を形成するゴムストリップ層14では接合境界線が右上がりとなり、一方、左側のショルダー部を形成するゴムストリップ層14では左上がりとなる)。このため、図2に示されるように、ゴムストリップ間の境界面が、タイヤ子午線方向断面における両ショルダー部において、逆ハの字形になるように該ゴムストリップの互いの側面が接合される。
【0015】
ゴムストリップ層を積層してトレッド6を形成するに際しては、従来においては、図4に示すように、(1)の位置から(2)に向って、接合境界線を矢印方向に傾斜させながらゴムストリップをタイヤ周方向に連続して互いに側面を接合しながら螺旋状に巻回してゴムストリップ層11を形成し、(2)の位置でゴムストリップをゴムストリップ層11の外側に反転させ、(2)の位置から(3)に向って、接合境界線を矢印方向に傾斜させながらゴムストリップを同様に巻回してゴムストリップ層12を形成し、(3)の位置でゴムストリップをゴムストリップ層12の外側に反転させ、(3)の位置から(4)に向って、接合境界線を矢印方向に傾斜させながらゴムストリップを同様に巻回してゴムストリップ層13を形成し、(4)の位置でゴムストリップをゴムストリップ層13の外側に反転させ、(4)の位置から(5)に向って、接合境界線を矢印方向に傾斜させながらゴムストリップを同様に巻回してゴムストリップ層14を形成している。
【0016】
一方、本発明の参考技術においては、図5に示すように、ゴムストリップ層13までを図4におけると同様に形成し、(4)の位置でゴムストリップをゴムストリップ層13の外側に反転させ、(4)の位置から(5)に向って、接合境界線を矢印方向に傾斜させながら(すなわち、接合境界線のトレッドショルダー端10側をタイヤ径方向外側に傾斜させながら)ゴムストリップを同様に巻回して右側ショルダー部を構成するゴムストリップ層14を形成すると共に、(5)´の位置から(6)に向って、接合境界線を矢印方向に傾斜させながら(すなわち、接合境界線のトレッドショルダー端10側をタイヤ径方向外側に傾斜させながら)ゴムストリップを同様に巻回して左側ショルダー部を構成するゴムストリップ層14を形成することにより、トレッド6を形成する。
【0017】
図6に、本発明の参考技術におけるトレッド6の別の形成例を示す。図6では、ゴムストリップ層13に一方のショルダー部を兼用させ、(4)の位置から(5)に向って、接合境界線を矢印方向に傾斜させながら(すなわち、接合境界線のトレッドショルダー端10側をタイヤ径方向外側に傾斜させながら)ゴムストリップを同様に巻回して他方のショルダー部を構成するゴムストリップ層14を形成している。
【0018】
ここで、本発明の参考技術では、ゴムストリップ積層体の左右のゴムストリップ間の境界面を、タイヤ接地面に沿うタイヤ幅方向のタイヤ外側方向に対してタイヤ外径側へ斜めに傾斜させる領域が、ショルダー部のタイヤ接地幅内の最外層において少なくともトレッドショルダー端10からタイヤ幅方向内側へトレッド展開幅Tの10%の位置から25%未満の位置までであるのがよい。この領域では、主歪み成分Fが主として生じるからである。トレッド展開幅Tとは、1998年のJATMA YEAR BOOKに示される最大荷重空気圧とそれに対応する荷重条件下でのタイヤ接地幅をいう。
【0019】
また、本発明の参考技術では、図7に示すようにトレッド6の表面にタイヤ幅方向に延びるラグ溝11を設けてラグパターンを形成してもよい。
本発明の重荷重用空気入りラジアルタイヤは、図8に示すようにトレッド6の表面にタイヤ周方向に延びる複数の主溝7を設けて複数のブロック12を区画し、これによってブロックパターンを形成してもよい。
【0020】
本発明の参考技術において、図7に示すようなラグパターンを形成した場合には、図9に示すようにトレッド面のショルダー部のタイヤ接地幅内においてゴムストリップ層のゴムストリップ相互間の接合境界線13のトレッドショルダー端10側をタイヤ内径側に傾斜させると、接地時の接地反力による主歪み成分Fの方向と接合境界線13の方向が同一となるので、ショルダー部にクラック発生が起き易く、また成長し易い。さらには、加硫工程におけるショルダー部のゴムストリップ層表面のゴム流れがゴムストリップの巻き傾きに対し逆立てる方向となるため(矢印Eは加硫時のゴム流れ方向)、ゴムストリップ層表面の凹凸間に空気が残り易く、製品外観故障が発生し易い。
【0021】
一方、図7に示すような参考技術のラグパターンを形成した場合に、図10に示すようにトレッド面のショルダー部のタイヤ接地幅内の最外層を形成するゴムストリップ層のゴムストリップ相互間の接合境界線13のトレッドショルダー端10側をタイヤ外径側に傾斜させると(すなわち、ショルダー部のタイヤ接地幅内のゴムストリップ積層体の最外層領域における左右のゴムストリップ間の境界面を、タイヤ接地面に沿うタイヤ幅方向のタイヤ外側方向に対してタイヤ外径側へ斜めに傾斜させると)、主歪み成分Fの方向と接合境界線13の方向が交差した形となるので、ショルダー部のタイヤ接地幅内にクラック発生が起き難い。また、カット傷を受けたときでもクラックの成長が止まる。さらに、加硫工程におけるショルダー部のタイヤ接地幅内のゴムストリップ層表面のゴム流れ方向に沿ったゴムストリップの巻き傾きのため、ゴム流れがスムースとなり(矢印Eは加硫時のゴム流れ方向)、製品外観故障が起きにくい。
【0022】
本発明において、図8に示すようなブロックパターンを形成した場合には、タイヤ幅方向最外側の左右の主溝7からそれぞれタイヤ接地幅のトレッドショルダー端までは、少なくとも主溝のトレッドショルダー端側の溝壁の部分でゴムストリップ積層体の最外層領域における左右のゴムストリップ間の境界面を、タイヤ接地面に沿うタイヤ幅方向のタイヤ外側方向に対してタイヤ外径側へ斜めに傾斜させ、また前記最外側の主溝7からそれぞれトレッドセンターまでは、少なくとも主溝のトレッドセンター側の溝壁の部分で前記ゴムストリップ積層体の最外層領域における左右のゴムストリップ間の境界面を、タイヤ接地面に沿うタイヤ幅方向のタイヤ外側方向に対してタイヤ内径側へ斜めに傾斜させる。換言すれば、タイヤ幅方向最外側の主溝7の幅方向溝中心を境にトレッドショルダー端側のタイヤ接地幅内では最外層のゴムストリップ層のゴムストリップ相互間の接合境界線のトレッドショルダー端側を少なくとも主溝のトレッドショルダー端側の溝壁の部分でタイヤ外径側へ斜めに傾斜させると共に、トレッドセンター側では最外層のゴムストリップ層のゴムストリップ相互間の接合境界線のトレッドショルダー端側を少なくとも主溝のトレッドセンター側の溝壁の部分でタイヤ内径側へ斜めに傾斜させる。
【0023】
すなわち、最外層のゴムストリップ層のゴムストリップ相互間の接合境界線13のトレッドショルダー端10側をタイヤ外径側へ斜めに傾斜させると、タイヤ加硫に際してグリーンタイヤを金型に入れてその金型を閉じるときに、トレッドショルダー端に最も近い主溝7に対応する金型内面の突起によりトレッド面におけるゴムストリップ層が押し分けられるため、図11に示すように、主溝7のトレッドセンターCL側では接合境界線13が立ち上がってしまう。この結果、特にトレッドショルダー端からトレッドセンターCLに向ってトレッド展開幅の1/4ポイント付近では、主歪み成分Fの方向と接合境界線13の方向が同一となるので、クラック発生が起き易く、また成長し易い。さらには、加硫工程におけるショルダー部のゴムストリップ層表面のゴム流れがゴムストリップの巻き傾きに対し逆立てる方向となるため(矢印Eは加硫時のゴム流れ方向)、ゴムストリップ層表面の凹凸間に空気が残り易く、製品外観故障が発生し易い。
これに対し、図12に示すように、タイヤ幅方向最外側の主溝7の幅方向溝中心を境として、トレッドショルダー端10側のタイヤ接地幅内では接合境界線13のトレッドショルダー端10側をタイヤ外径側へ斜めに傾斜させると共に、トレッドセンターCL側では接合境界線13のトレッドショルダー端10側をタイヤ内径側へ斜めに傾斜させると、金型を閉じるときに金型内面の突起によりトレッド面におけるゴムストリップ層が押し分けられるが、加硫工程におけるゴムストリップ層表面のゴム流れ方向に沿ったゴムストリップの巻き傾きのため、ゴム流れがスムースとなり(矢印Eは加硫時のゴム流れ方向)、製品外観故障が起きにくく、さらには、左右のゴムストリップ間の境界面が、タイヤ子午線方向断面において、主溝7を境として左右両側で逆ハの字形になるようにゴムストリップの互いの側面が接合され、接合境界線13が主歪み成分Fの方向に対し交差角が大きくなるように傾くため、クラック発生・成長に対し有利な形となる。
【0024】
したがって、図13に示すように、ゴムストリップ層13までを図4におけると同様に形成し、(4)の位置でゴムストリップをゴムストリップ層13の外側に反転させ、(4)の位置から(5)に向って、接合境界線を矢印方向に傾斜させながら(すなわち、接合境界線のトレッドショルダー端10側をタイヤ径方向外側に傾斜させながら)ゴムストリップを同様に巻回して右側ショルダー部を構成するゴムストリップ層14を形成すると共に、(5)´の位置から(6)に向って、接合境界線を矢印方向に傾斜させながら(すなわち、接合境界線のトレッドショルダー端10側をタイヤ径方向外側に傾斜させながら)ゴムストリップを同様に巻回して左側ショルダー部を構成するゴムストリップ層14を形成すると、トレッドセンターCLの左側では、トレッド面を形成するゴムストリップ層13および14のゴムストリップ相互間の接合境界線が同方向に傾斜することになるから(すなわち、左側の主溝7の左右両側で接合境界線が同方向に傾斜)、図11におけると同様な問題が生じることになる。
【0025】
これに対し、図14に示すように、(1)の位置から(2)に向って、接合境界線を矢印方向に傾斜させながらゴムストリップをタイヤ周方向に連続して互いに側面を接合しながら螺旋状に巻回してゴムストリップ層11を形成し、(2)の位置でゴムストリップをゴムストリップ層11の外側に反転させ、(2)の位置から(3)に向って、接合境界線を矢印方向に傾斜させながらゴムストリップを同様に巻回してゴムストリップ層12を形成し、(3)の位置でゴムストリップをゴムストリップ層12の外側に反転させ、(3)の位置から(4)に向って、接合境界線を矢印方向に傾斜させながらゴムストリップを同様に巻回してゴムストリップ層13を形成し、(4)の位置でゴムストリップをゴムストリップ層13の外側に反転させ、(4)の位置から(5)に向って、接合境界線を矢印方向に傾斜させながらゴムストリップを同様に巻回してゴムストリップ層14を形成し、次に(5)´の位置から(6)に向って、接合境界線を矢印方向に傾斜させながらゴムストリップを同様に巻回してゴムストリップ層14を形成し、(6)の位置でゴムストリップをゴムストリップ層14の外側に反転させ、(6)の位置から(7)に向って、接合境界線を矢印方向に傾斜させながらゴムストリップを同様に巻回してゴムストリップ層15を形成することによれば、トレッド面を形成するゴムストリップ層のゴムストリップ相互間の接合境界線の傾斜方向が主溝7を挟んで左右両側で互いに逆になるので、図12におけると同様に製品外観故障が起きにくく、さらには、クラック発生・成長を防止できることになる。
【0026】
【実施例】
(1) タイヤサイズ23.5R25および図7に示すラグパターンを有するローダ用タイヤにつき(参考例1、従来例1)、それぞれ一定期間生産工程に流した際の製品外観故障の発生率(%)を下記により評価した。この結果を表1に示す。ここで、参考例1は図5に示すようなゴムストリップの巻き方でトレッドを形成したタイヤであり、従来例1は図4に示すようなゴムストリップの巻き方でトレッドを形成したタイヤである。
【0027】
製品外観故障の発生率(%):
ゴムストリップ層表面の凹凸間に空気が残ってトレッド表面に筋状のゴム流れ不足が発生した製品外観故障について、ゴムストリップの巻き方の違いによる発生率をまとめたのが表1である。
【0028】
【表1】
表1から明らかなように、参考例1では従来例1に比し製品外観故障の発生率(%)が極めて少ない。
【0029】
(2) タイヤサイズ23.5R25および図8に示すブロックパターンを有するローダ用タイヤにつき(実施例1、比較例1、従来例2)、それぞれ一定期間生産工程に流した際の製品外観故障の発生率(%)を上記(1)におけると同様に評価した。この結果を表2に示す。ここで、実施例1は図14に示すようなゴムストリップの巻き方でトレッドを形成したタイヤであり、比較例1は図13に示すようなゴムストリップの巻き方でトレッドを形成したタイヤであり、従来例2は図4に示すようなゴムストリップの巻き方でトレッドを形成したタイヤである。
【0030】
【表2】
表2から明らかなように、実施例1では比較例1および従来例2に比し製品外観故障の発生率(%)が少ない。
【0031】
(3) タイヤサイズ23.5R25および図7に示すラグパターンを有するローダ用タイヤにつき(参考例2、従来例3)、下記の条件で回転ドラム試験を行い、回転ドラム上を規定時間走行させたときのトレッドのクラックの発生とその程度を調査した。この結果を表3に示す。
【0032】
ここで、参考例2は図5に示すようなゴムストリップの巻き方でトレッドを形成したタイヤであり、従来例3は図4に示すようなゴムストリップの巻き方でトレッドを形成したタイヤである。
【0033】
リム : 25×19.50(2.5)
空気圧 : 500kPa
試験荷重 : 143KN(1998年のJATMA規格の120%)
回転ドラムには半径60mmの半円断面のクリート(突起)を周上2箇所に取り付けることで、タイヤ回転時、絶えずタイヤトレッド面に衝撃力が掛かるようにしてある。
速度 : 8km/h
【0034】
【表3】
表3から明らかなように、参考例2では従来例3に比しトレッドにクラックの発生がない。
【0035】
(4) タイヤサイズ23.5R25および図8に示すブロックパターンを有するローダ用タイヤにつき(実施例2、比較例2、従来例4)、下記の条件で回転ドラム試験を行い、回転ドラム上を規定時間走行させたときのトレッドのクラックの発生とその程度を調査した。この結果を表4に示す。
【0036】
ここで、実施例2は図14に示すようなゴムストリップの巻き方でトレッドを形成したタイヤであり、比較例2は図13に示すようなゴムストリップの巻き方でトレッドを形成したタイヤであり、従来例4は図4に示すようなゴムストリップの巻き方でトレッドを形成したタイヤである。
【0037】
リム : 25×19.50(2.5)
空気圧 : 500kPa
試験荷重 :143KN(1998年のJATMA規格の120%)
回転ドラムには半径60mmの半円断面のクリート(突起)を周上2箇所に取り付けることで、タイヤ回転時、絶えずタイヤトレッド面に衝撃力が掛かるようにしてある。
速度 : 8km/h
【0038】
【表4】
表4から明らかなように、実施例2では比較例2および従来例4に比しトレッドにクラックの発生がない。
【0039】
【発明の効果】
以上説明したように本発明の重荷重用空気入りラジアルタイヤにおいては、トレッドの表面にタイヤ周方向に延びる複数本の主溝を設けた重荷重用空気入りラジアルタイヤにおいて、タイヤ幅方向最外側の左右の主溝からそれぞれタイヤ接地幅のトレッドショルダー端までは、少なくとも主溝のトレッドショルダー端側の溝壁の部分で前記ゴムストリップ積層体の最外層領域における左右のゴムストリップ間の境界面を、タイヤ接地面に沿うタイヤ幅方向のタイヤ外側方向に対してタイヤ外径側へ斜めに傾斜させ、また前記最外側の主溝からそれぞれトレッドセンターまでは、少なくとも主溝のトレッドセンター側の溝壁の部分で前記ゴムストリップ積層体の最外層領域における左右のゴムストリップ間の境界面を、タイヤ接地面に沿うタイヤ幅方向のタイヤ外側方向に対してタイヤ内径側へ斜めに傾斜させたために、走行時にトレッド表面からのクラック発生に起因するセパレーションを防止すると共に加硫工程での製品外観故障をなくすことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の重荷重用空気入りラジアルタイヤの一例の子午線方向断面説明図である。
【図2】 本発明の参考技術の重荷重用空気入りラジアルタイヤにおけるトレッドの形成状況の一例を示す子午線方向断面説明図である。
【図3】 従来の重荷重用空気入りラジアルタイヤにおけるトレッドの形成状況の一例を示す子午線方向断面説明図である。
【図4】 従来の重荷重用空気入りラジアルタイヤにおけるトレッドの形成手順の一例を示す子午線方向断面説明図である。
【図5】 本発明の参考技術の重荷重用空気入りラジアルタイヤにおけるトレッドの形成手順の一例を示す子午線方向断面説明図である。
【図6】 本発明の参考技術の重荷重用空気入りラジアルタイヤにおけるトレッドの形成手順の別例を示す子午線方向断面説明図である。
【図7】 本発明の参考技術の重荷重用空気入りラジアルタイヤのトレッド面に形成されるトレッドパターンの一例を示す斜視図である。
【図8】 本発明の重荷重用空気入りラジアルタイヤのトレッド面に形成されるトレッドパターンの一例を示す斜視図である。
【図9】 トレッドにおける接地時の接地反力による主歪み成分Fの方向とゴムストリップ層のゴムストリップ相互間の接合境界線の方向とについての一例を示すトレッド子午線方向半断面説明図である。
【図10】 トレッドにおける接地時の接地反力による主歪み成分Fの方向とゴムストリップ層のゴムストリップ相互間の接合境界線の方向とについての他例を示すトレッド子午線方向半断面説明図である。
【図11】 トレッド面にタイヤ周方向に延びる主溝を設けた場合における接地時の接地反力による主歪み成分Fの方向とゴムストリップ層のゴムストリップ相互間の接合境界線の方向とについての一例を示すトレッド子午線方向半断面説明図である。
【図12】 トレッド面にタイヤ周方向に延びる主溝を設けた場合における接地時の接地反力による主歪み成分Fの方向とゴムストリップ層のゴムストリップ相互間の接合境界線の方向とについての本発明の実施形態の一例を示すトレッド子午線方向半断面説明図である。
【図13】 トレッド面にタイヤ周方向に延びる主溝を設けた場合におけるトレッドの形成手順の一例を示すトレッド子午線方向断面説明図である。
【図14】 トレッド面にタイヤ周方向に延びる主溝を設けた場合におけるトレッドの形成手順の本発明の実施形態の一例を示すトレッド子午線方向断面説明図である。
【符号の説明】
2 カーカス層
3 ビード部
4 ビードコア
5 ベルト層
6 トレッド
7 主溝
10 トレッドショルダー端
11 ラグ溝
12 ブロック
13 接合境界線
Claims (1)
- 左右一対のビード部にカーカス層を装架し、該カーカス層の外側にベルト層を介してゴムストリップをタイヤ周方向に連続的に螺旋状に巻回したゴムストリップ積層体からなるトレッドを形成すると共に、該トレッドの表面にタイヤ周方向に延びる複数本の主溝を設けた重荷重用空気入りラジアルタイヤにおいて、タイヤ幅方向最外側の左右の主溝からそれぞれタイヤ接地幅のトレッドショルダー端までは、少なくとも主溝のトレッドショルダー端側の溝壁の部分で前記ゴムストリップ積層体の最外層領域における左右のゴムストリップ間の境界面を、タイヤ接地面に沿うタイヤ幅方向のタイヤ外側方向に対してタイヤ外径側へ斜めに傾斜させ、また前記最外側の主溝からそれぞれトレッドセンターまでは、少なくとも主溝のトレッドセンター側の溝壁の部分で前記ゴムストリップ積層体の最外層領域における左右のゴムストリップ間の境界面を、タイヤ接地面に沿うタイヤ幅方向のタイヤ外側方向に対してタイヤ内径側へ斜めに傾斜させた重荷重用空気入りラジアルタイヤ。
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