JP4303596B2 - ポリペプチドを発現させるための真核生物シグナル配列およびポリペプチド提示ライブラリー - Google Patents

ポリペプチドを発現させるための真核生物シグナル配列およびポリペプチド提示ライブラリー Download PDF

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Description

(関連出願の相互参照)
本願は、2002年2月13日出願の米国特許出願番号10/076,802の一部継続出願であり、該出願の開示内容すべては、参考として本明細書で援用される。
(発明の分野)
この出願は、ポリペプチドを効率的に発現および分泌させる特定の真核生物シグナル配列を、特に原核宿主細胞で用いる方法に関する。また、本発明は真核生物シグナル配列を用いてポリペプチド提示ライブラリーを産生およびスクリーニングする方法に関する。
(発明の背景)
細胞膜を介して細胞から分泌されるタンパク質は、通常、タンパク質の細胞膜横断の手助けに必要とされる付加的なペプチド配列をアミノ末端に有する「プレタンパク質(preprotein)」と呼ばれる前駆体の形態で細胞内に産生される。この付加的なペプチド酸配列は、「シグナル配列(signal sequence)」または「リーダー配列(leader sequence)」と呼ばれている。大腸菌(E.coli)等の原核生物では、シグナルペプチドは、タンパク質分泌をペリプラズムおよび外膜へ指向させる。真核生物細胞では、シグナル配列を含むプレタンパク質が粗面小胞体(RER)膜を貫くようにして挿入されており、それによってプレタンパク質が分泌経路に導かれる。このプロセスの過程で、シグナル配列はシグナル認識粒子(SRP)と呼ばれる粒子と相互作用し、続いて該粒子がSRP受容体またはドッキングタンパク質(docking protein)と呼ばれるRER膜タンパク質によって認識される。RERへのプレタンパク質の挿入後または挿入と同時に、シグナルペプチダーゼと呼ばれる酵素によって、プレタンパク質からシグナル配列が切り出され、それによって成熟タンパク質がRERに放出される。いったんタンパク質が分離してERの内腔に入ると、該タンパク質はゴルジ体に移動し、さらに分泌小胞に移る。分泌小胞が原形質膜と融合すると、小胞の含有物が細胞外環境に放出される。原形質膜および細胞壁の両方を持つ生物(例えば、酵母)では、概して小胞の内容物が上記膜と上記細胞壁との間のペリプラズム空間に放出される。
分泌タンパク質のシグナル配列はいくつかの共通する一般的特徴(例えば、一般的にカルボキシル末端および疎水性の中央領域において短い鎖のアミノ酸)があるにもかかわらず、分泌されたタンパク質の巨大な配列(vast array)について均一なコンセンサス配列は存在していない(例えば、Watson,M.E.E.(1984)Nucl.Acids.Res.12:5145−5164を参照のこと)。同一種の分泌タンパク質間および異なる種の分泌タンパク質間の両方において、実際、異なる分泌タンパク質のシグナル配列の一次構造が著しく変化している。このことは、各々の分泌タンパク質が細胞膜を横切る移動に十分適している特定のシグナル配列をともなって進化していることを示唆する。それらのシグナルペプチドの配列の違いに加えて、原核生物および真核生物もまた、分泌プロセス(例えばシグナル認識粒子の機能およびシャペロンの用途)に違いがある。
大腸菌(E.coli)で異種ポリペプチドを効率的に発現させる上で、異なるE.coliシグナル配列が適合可能であることが示されている。しかし、異なる種のシグナル配列間、特に原核生物のシグナル配列と真核生物のシグナル配列との間での機能的置換は、予測不可能で問題があり、さらに効率性に劣る。第一に、宿主は、該宿主のネイティブシグナル配列によって首尾よく異質タンパク質を発現および分泌することが可能かもしれないが、そのシグナルペプチドを正しく切断することができないかもしれない(例えば、大腸菌(E.coli)細胞内のBacillus αアミラーゼ、例えば、Suominenら、Microbiol.141:649−54,1995を参照のこと)。また、わずかの真核生物タンパク質がネイティブシグナル配列を用いて大腸菌(E.coli)のペリプラズムに分泌させる一方で、ほとんどの真核生物シグナル配列が大腸菌(E.coli)等の原核生物宿主細胞で効率的に機能することができないことが示唆されている(例えば、Humphreysら、Prot.Exp.and Purif.20:252−64,2000を参照のこと)。いくつかの真核生物タンパク質(例えば、ヒトアポリポタンパク質E)は、大腸菌(E.coli)のペリプラズムに分泌されるように、原核生物シグナルと置換したそのネイティブシグナル配列を持つことが必要である(例えば、Monteilhetら、Gene 125:223−8,1993を参照のこと)。
分泌された形状で組み換えタンパク質(例えば、免疫グロブリン)を効率よく産生する能力が強く望まれている。なぜなら、その後に、宿主細胞(例えば、大腸菌(E.coli))が増殖している培地から分泌タンパク質を回収することができるからである。例えば、上記のように、組み換えタンパク質のネイティブシグナル配列が宿主細胞で十分に作用しないことから、このプロセスはしばしば所望の程度まで機能しない。組み換えタンパク質(例えば、組み換え免疫グロブリン)の分泌に有用であり得る特定のシグナル配列が同定されているが、原核生物宿主細胞内で組み換え免疫グロブリン等のタンパク質の効率的な分泌を促進することができる付加的なシグナル配列に対する必要性がいまだ存在する。本発明は、このような要求や他の要求を満たす。
(発明の要旨)
一態様では、本発明は、Fabフラグメントを発現するための方法を提供する。この方法は、(i)真核生物のシグナル配列にそれぞれが作動可能に結合した抗体重鎖および抗体軽鎖をコードするジシストロニック(dicistronic)な転写ユニットに作動可能に結合したラムノースプロモーターを含むベクターを有する細菌細胞の培養物を提供する工程;(ii)培養物にラムノースを添加してラムノースプロモーターを誘導することで、抗体重鎖および抗体軽鎖ならびにそれらに結合したシグナル配列を発現させ、ペリプラズムに分泌させ、シグナルペチド配列が抗体重鎖および抗体軽鎖からプロセスされ、抗体重鎖と抗体軽鎖とが結合して標的分子に特異的に結合するFabフラグメントを形成する工程;ならびに(iii)前記細菌細胞の培養物から前記Fabフラグメントを回収する工程、を含む。それらの方法では、真核生物シグナル配列の各々がMRTLAILAAILLVALQAQA(配列番号2)またはMKILILGIFLFLCSTPAWA(配列番号1)の配列を有するシグナルペプチドをコードする。
上記方法のいくつかでは、重鎖に作動可能に結合したシグナル配列は、MRTLAILAAILLVALQAQA(配列番号2)をコードし、軽鎖に作動可能に結合したシグナル配列がMKILILGIFLFLCSTPAWA(配列番号1)をコードする。いくつかの方法では、重鎖に作動可能に結合したシグナル配列は、MKILILGIFLFLCSTPAWA(配列番号1)をコードし、軽鎖に作動可能に結合したシグナル配列は、MRTLAILAAILLVALQAQA(配列番号2)をコードする。さらにいくつかの他の方法では、重鎖に作動可能に結合したシグナル配列と、軽鎖に作動可能に結合したシグナル配列とが共にMKILILGIFLFLCSTPAWA(配列番号1)をコードするか、もしくは共にMRTLAILAAILLVALQAQA(配列番号2)をコードする。
上記方法のいくつかでは、Fabフラグメントを発現するための宿主細胞は、大腸菌(E.coli)rhaB+細胞である。いくつかの他の方法では、上記宿主は大腸菌(E.coli)rhaB−細胞である。いくつかの方法では、培養物中の培養液からFabフラグメントを回収する。いくつかの方法は、回収工程に先立って、細胞を溶解してFabフラグメントを放出させる工程をさらに含む。
一態様では、本発明は、ファージからFabフラグメントを提示する改善された方法を提供する。この方法は、重鎖および軽鎖をコードするファージ提示ベクターを細菌細胞内で発現させることを含む。軽鎖は第1のシグナルペプチド配列に作動可能に結合しており、そして重鎖はファージ外表面タンパク質および第2のシグナルペプチド配列に作動可能に結合している。この方法では、抗体鎖が発現されて細胞のペリプラズムに分泌され、さらにプロセッシングされることで、シグナルペプチド配列から抗体鎖が分離される。次いで、Fabフラグメントがファージ粒子の外表面から掲示される場合、上記抗体鎖とが結合する。上記方法の改良点は、第1のシグナルペプチド配列および第2のシグナルペプチド配列の各々が、配列MKILILGIFLFLCSTPAWA(配列番号1)またはMRTLAILAAILLVALQAQA(配列番号2)を有する真核生物のシグナルペプチドをコードすることにある。第1および第2のシグナルペプチド配列を異なるものとすることができる。例えば、一方を配列番号1の配列を有するものとし、他方を配列番号2の配列を有するものとする。あるいは、両方のシグナルペプチド配列を同じものとすることができる。例えば、両方とも配列番号1の配列を有するもの、または配列番号2の配列を有するものとする。
別の態様では、本発明は真核生物シグナルペプチド配列と作動可能に結合している抗体鎖を含む融合タンパク質を提供する。真核生物シグナルペプチドは、MKILILGIFLFLCSTPAWA(配列番号1)またはMRTLAILAAILLVALQAQA(配列番号2)であり得る。
別の態様では、本発明は細菌細胞内でポリペプチドを発現させるための発現ベクターを提供する。ベクターは、細菌プロモーター、ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、および該ポリヌクレオチドに作動可能に結合した真核生物シグナル配列を有する。この真核生物シグナルペプチドは、MRTLAILAAILLVALQAQA(配列番号2)またはMKILILGIFLFLCSTPAWA(配列番号1)であり得る。いくつかのベクターでは、細菌プロモーターは、誘導可能なラムノースプロモーターである。
さらに別の態様では、本発明は、細菌細胞内でポリペプチドを発現させるための方法を提供する。この方法は、(i)ラムノースプロモーター、ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、および該ポリヌクレオチドに作動可能に結合した真核生物シグナル配列を含むベクターを含む細菌細胞の培養物を提供する工程;および(ii)ラムノースを培養物に添加してラムノースプロモーターを誘導することで、ポリヌクレオチドとシグナル配列とを発現させてペリプラズムを分泌させ、そして発現されたシグナルペプチド配列が、ポリヌクレオチドから発現されたポリペプチドからプロセッシングされる工程;および(iii)細菌細胞の培養物からポリペプチドを回収する工程を含む。この方法では、真核生物シグナル配列は、MRTLAILAAILLVALQAQA(配列番号2)またはMKILILGIFLFLCSTPAWA(配列番号1)の配列を持つシグナルペプチドをコードする。
一態様では、本発明は、宿主細胞内でポリペプチドを発現させる方法を提供する。この方法は、(i)宿主細胞の培養物を提供する工程であって、該宿主細胞は、ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含むベクターを含み、そしてこのポリヌクレオチドが、真核生物シグナル配列に作動可能に結合する工程;(ii)ポリヌクレオチド配列およびシグナル配列を発現させることで、ポリヌクレオチドから発現されたポリペプチドおよび発現されたシグナルペプチド配列が分泌し、発現されたシグナルペプチド配列が、ポリヌクレオチドから発現されたポリペプチドからプロセッシングされる工程;ならびに(iii)宿主細胞の培養物からポリペプチドを回収する工程、を含む。この方法では、真核生物シグナル配列は、MKILILGIFLFLCSTPAWA(配列番号1)、MRTLAILAAILLVALQAQA(配列番号2)、またはMGALAVFAVACLAAVASVAHA(配列番号3)の配列を有するシグナルペプチドをコードする。
別の態様では、本発明は複製可能な遺伝子パッケージからポリペプチドを提示させる方法を提供する。この方法は、ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含むポリペプチド提示ベクターを原核生物宿主細胞または真核生物宿主細胞で発現させる工程を含むもので、上記ポリヌクレオチドは、真核生物シグナル配列に作動可能に結合し、それによってポリヌクレオチド配列およびシグナル配列が発現および分泌され、さらに発現されたシグナルペプチド配列が、発現されたポリペプチドからプロセッシングされて、複製可能な遺伝子パッケージの外表面から掲示されるようにする。この方法では、真核生物シグナル配列は、 MKILILGIFLFLCSTPAWA(配列番号1)、MRTLAILAAILLVALQAQA(配列番号2)、またはMGALAVFAVACLAAVASVAHA(配列番号3)の配列を持つシグナルペプチドをコードする。
別の態様では、本発明はポリペプチド提示ライブラリーを調製する方法を提供する。この方法は、外来性ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを複製可能な遺伝子パッケージのゲノム内に導入して、複製可能な遺伝子パッケージの外表面から通常発現される内在性タンパク質との融合タンパク質を形成し、それによって上記ポリヌクレオチドが真核生物シグナル配列に操作可能に結合して上記融合タンパク質を発現し、該融合タンパク質が上記外表面に送られてアセンブリングされることで、複製可能な遺伝子パッケージの外表面から上記外来性ポリペプチドを提示する。このような方法では、真核生物シグナル配列は、MKILILGIFLFLCSTPAWA(配列番号1)、MRTLAILAAILLVALQAQA(配列番号2)、またはMGALAVFAVACLAAVASVAHA(配列番号3)の配列を持つシグナルペプチドをコードする。
別の態様では、本発明はポリペプチドを発現させるための細胞を提供する。宿主細胞は、ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドおよび該ポリヌクレオチドに作動可能に結合した真核生物シグナル配列とを含むベクターを含む。このような宿主細胞では、真核生物シグナル配列は、MKILILGIFLFLCSTPAWA(配列番号1)、MRTLAILAAILLVALQAQA(配列番号2)、またはMGALAVFAVACLAAVASVAHA(配列番号3)の配列を持つシグナルペプチド配列をコードする。
さらに別の態様では、本発明は宿主細胞内でポリペプチドを発現させるためのベクターを提供する。このベクターは、ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドと、このポリヌクレオチドに作動可能に結合したプロモーターと、このポリヌクレオチドに作動可能に結合した真核生物シグナル配列とを含む。真核生物シグナル配列は、MKILILGIFLFLCSTPAWA(配列番号1)、MRTLAILAAILLVALQAQA(配列番号2)、またはMGALAVFAVACLAAVASVAHA(配列番号3)の配列を持つ真核生物シグナルペプチドをコードする。
本発明にもとづく方法、宿主細胞、またはベクターで有用なポリペプチドは、原核生物細胞または真核細胞のポリペプチドであり得、該ポリペプチドとして抗体が挙げられる。抗体は、完全抗体またはその結合フラグメントであり得、例えばFabフラグメント、Fvフラグメント、または単鎖フラグメントが挙げられる。
宿主細胞は、原核生物、酵母、昆虫、またはほ乳動物の組織宿主細胞であり得る。本発明にもとづく方法、宿主細胞、またはベクターで有用なプロモーターは、誘導可能なプロモーターであり得る。好ましい宿主細胞は、原核生物細胞、特にプロモーターが細菌プロモーターである細菌細胞である。
一態様では、本発明は、細菌細胞内のポリペプチド(抗体ポリペプチド等)発現のための真核生物シグナル配列を選択する方法を提供する。この方法では、(a)ラムノースプロモーターに作動可能に結合し、かつシグナルペプチドをコードする真核生物シグナル配列に対して作動可能に結合する、ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む細菌細胞を培養する工程;(b)ポリヌクオチドおよびシグナル配列を発現させる工程;(c)ポリペプチドの発現と細菌細胞によるポリペプチドからのシグナル配列のプロセッシングとについて試験する工程;ならびに(d)(i)ポリペプチド発現が検出可能である場合、および(ii)シグナル配列がポリペプチドからプロセッシングされる場合に、真核生物シグナル配列を選択する工程、を含む。真核生物シグナル配列は、それらの方法にもとづいて選択され、ポリペプチドの効率的な発現および産生に有用である。
別の態様では、本発明は、細菌細胞内のポリペプチド(抗体ポリペプチド等)発現のための真核生物シグナル配列を選択するさらなる方法を提供する。さらなる方法は、(a)ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドからポリペプチドを発現する工程であって、このポリヌクレオチドは、シグナルペプチドをコードする第1の真核生物シグナル配列に作動可能に結合する工程;(b)ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドから、ポリペプチドを発現させる工程であって、このポリヌクレオチドは、MKILILGIFLFLCSTPAWA(配列番号1)、MRTLAILAAILLVALQAQA(配列番号2)、またはMGALAVFAVACLAAVASVAHA(配列番号3)である第2の真核生物シグナル配列に作動可能に結合する工程;(c)(i)工程(a)のポリペプチド発現が工程(b)のポリペプチド発現と実質的に同等またはそれよりも大きい場合、および/または(ii)工程(a)の第1の真核生物シグナル配列が、工程(b)の第2の真核生物シグナル配列と実質的に同等またはそれよりも大きいポリペプチドからプロセッシングされる場合、第1の真核生物シグナル配列である真核生物シグナル配列を選択する工程、を含む。上記ポリヌクレオチドは、任意に、作動可能にラムノースプロモーターに結合する。真核生物シグナル配列は、そのようなさらなる方法にもとづいて選択され、ポリペプチドの効率的な発現および産生に有用である。
本発明の本質および利点のさらなる理解は、明細書の残りの部分、図面、および特許請求の範囲を参照することによって達成することが可能である。
本明細書で引用されたすべての刊行物、GenBank寄託配列、ATCC寄託物、特許、および特許出願は、それらの全体かつすべての目的のために明らかに援用される。
(発明の詳細な説明)
(I.概観)
1つの種に由来するシグナル配列が他の種で機能的および/効率的であるかどうかは、一般に予測不可能である。このことは、特に原核生物と真核生物との間のシグナル配列の機能的置換に関して当てはまる(Humphreysら、前出)。そのような予測不可能なこともまた、本発明者によって示されている。試験した合計19種類の真核生物シグナルペプチドのうち、たったの3種類のみが適切にプロセッシングされ原核生物発現系に作動可能に結合したポリペプチド配列の効率的な発現および分泌を導いた(実施例2〜3)。
発見にもとづいて、本発明は、選択された真核生物シグナル配列を利用し、タンパク質またはポリペプチドの発現に対して、特に原核生物宿主細胞内で、普遍的な適応性を持つ方法およびベクターを提供する。いくつかの方法は、特に抗体またはそのフラグメント(例えば、Fabフラグメント)の発現および単離に向けられている。また、上記方法は他の非抗体ポリペプチドの発現、特に原核生物発現系での発現にも好適である。
実施例6、7、および13に示すように、本発明者によって選択された特定の真核生物シグナルペプチド配列(例えば、配列番号1または2)を用いて、大腸菌(E.coli)宿主系から多くのタンパク質およびポリペプチドを効率的に発現、検出、および/または精製した。これらは、抗体および非抗体のポリペプチドの両方を含む。
本発明は、ポリペプチド掲示ライブラリーを生産およびスクリーニングする改善された方法を提供する。この改善は、原核生物系での効率的発現および分泌を可能とする選択された真核生物シグナル配列を掲示ベクターに与える。ポリペプチド掲示ライブラリーをスクリーニングおよび富化した後、同定された目的のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを、発現ベクターにサブクローニングすることが、著しく促進された。作動可能に結合した真核生物シグナル配列は、原核生物系での目的のポリペプチドの発現および効率的な分泌を可能とする。改善された方法の有効性を実施例8〜10に示す。
以下のセクションで、本発明の組成物の作製および使用についての説明、また本発明の方法の実施についての説明をおこなう。
(II.定義)
特に明記しない限り、本明細書で使われる技術用語および科学用語のすべてが本発明の技術分野で当業者により通常理解されるものと同様の意味を有する。本明細書に記載したものと類似または同等の方法および材料のいずれも、本発明の実施または試験に用いることができるが、好ましい方法および材料が記載される。以下の定義は、本発明を実施する上で読者の手助けとなるものである。
基本的な抗体構築物ユニットは、テトラマーを含むことが公知である。各々のテトラマーは、同一の2対のポリペプチド鎖から構成され、各々の対が1本の「軽」鎖(約25kDa)および1本の「重」鎖(約50〜70kDa)を有する。各々の鎖のアミノ末端部分は約100ないし110以上のアミノ酸の可変領域を有し、該可変領域は主に抗原認識の役割を担う。各々の鎖のカルボキシル末端部分は、主にエフェクター機能の役割を担う定常領域を規定する。
軽鎖は、カッパまたはラムダのいずれかに分類される。重鎖は、ガンマ、ミュー、アルファ、デルタまたはエプシロンとして分類され、抗体のアイソタイプをそれぞれIgG、IgM、IgA、IgD、およびIgEを規定する。軽鎖および重鎖内で、可変領域および可変領域が約12アミノ酸以上の「J」領域によって連結されており、重鎖はまた、約10アミノ酸以上の「D」領域を含む。
各々の軽鎖/重鎖対の可変領域は、抗体結合部位を形成する。これらの鎖はすべて、3つの超可変領域(相補性決定領域またはCDRとも呼ばれる)によって連結される相対的に保存されたフレームワーク領域(FR)の同一の一般構造を示す。各対の2本の鎖由来のCDRをフレームワーク領域によって並べることで、特定のエピトープへの結合を可能とする。Kabatら(上掲)の標準的配列定義にもとづいて、CDRおよびFR残基を描写する。それに代わる構造定義は、Chothiaら、J. Mol. Biol. 196, 901−917 (1987)、Nature 342, 878−883 (1989)、および J. Mol. Biol. 186, 651−663 (1989)に提案されている。抗体という用語は、全抗体およびそれらのフラグメントを意味するものとして用いられる。結合フラグメントとして、単鎖フラグメント、Fvフラグメント、およびFabフラグメントが挙げられる。Fabフラグメントという用語は、当該技術分野で、インタクトな抗体をパパイン処理で切断することで生じる結合フラグメントの意味でしばしば用いられる。Fab’およびF(ab’)という用語は、当該技術分野ではしばしば、ペプシンによる切断によって生ずるインタクトな抗体の結合フラグメントをいう。ここで、Fabは、抗原特異的結合にとって十分な、少なくとも実質的に完全な軽鎖および重鎖の可変ドメインと、軽鎖と重鎖との結合を保つのに十分な軽鎖および重鎖の定常領域の一部とを有するインタクトな抗体の二重鎖結合フラグメントを一般にいうように使用される。IgG1サブクラスのFabフラグメントは、インタクトな免疫グロブリンの2本の重鎖間の2つのジスフィルドを形成する2つのシステイン残基のいずれも含まない。通常、Fabフラグメントは、可変ドメインと定常領域の少なくともCH1ドメインとを含む重鎖に、全長または実質的に全長の軽鎖を組み合わせることで、形成される。さらに、軽鎖上のC末端システインをセリンまたは他のアミノ酸と置換することによって、重鎖と軽鎖とのあいだの鎖間ジスルフィド結合を取り除くことができる。
キメラ抗体は、一般に遺伝子工学的によって、例えば、異なる種に属する免疫グロブリン遺伝子セグメント(例えば、可変領域をコードするセグメントと定常領域をコードするセグメント)から軽鎖および重鎖の遺伝子が構築された抗体である。一例として、マウスのモノクローナル抗体由来の遺伝子可変(V)セグメントを、ヒトの定常(C)セグメント、例えばIgG1およびIgG4と連結することができる。したがって、典型的なキメラ抗体は、マウス抗体由来のVドメインまたは抗原結合ドメインとヒト抗体由来のCドメインまたはエフェクタードメインとからなるハイブリッドタンパク質である。キメラ抗体は、抗体の可変領域を与えるマウス抗体または他の非ヒト抗体として同一または類似の結合特異性および親和性を有する。
用語「ヒト抗体」は、ヒト生殖細胞系免疫グロブリン配列由来(もし存在するならば)の可変領域および定常領域を有する抗体を包含する。本発明のヒト抗体として、ヒト生殖細胞系免疫グロブリン配列によってコードされないアミノ酸残基(例えば、インビトロでのランダムまたは部位特異的突然変異誘発により誘導された突然変異、またはインビボでの体細胞突然変異)を挙げることができる。しかし、用語「ヒト抗体」は、他のほ乳類動物種(例えば、マウス)の生殖細胞系由来のCDR配列をヒトのフレームワーク配列に移植した抗体(すなわち、ヒト化抗体)は包含しない。
エピトープという用語は、抗体に対して特異的に結合し得る抗原決定基を意味する。エピトープは、通常、アミノ酸または糖鎖のような分子の化学的に活性な表面群からなり、そして通常、特定の3次元構造的特徴ならびに特定の電荷特徴を有する。立体配座エピトープまたは非立体配座エピトープは、変性溶媒の存在下で前者に対する結合は喪失するが、後者に対する結合は喪失しないという点で区別される。
「発現ベクター」は、ポリヌクレオチド構築物であり、宿主細胞で特定のポリヌクレオチドの転写を可能とする一連の特定ポリヌクレオチドエレメントにより組み換え的または合成的に生成される。通常、発現ベクターはプロモーターに作動可能に結合した転写されるべきポリヌクレオチドを含む。
単離種または種母集団は、支配的に存在する種(すなわち、モル基準で、組成物中、他の種よりも多く存在する)である目的種(例えば、本発明の結合ポリペプチド)を意味する。好ましくは、存在する高分子種全体のうち単離種は少なくとも約50、80、または90%(モル基準で)を占める。最も好ましくは、目的種を精製して本質的に均質なものにする(従来の検出法では組成物中のコンタミ種の検出は不可能であった)。標的は、該標的に対する特異的結合親和性を持つパートナーを分離するのに必要な任意の分子である。
用語「作動可能に結合(operably linked)」は、2つ以上のポリペプチド(例えば、DNA)セグメント間の機能的相互関係に言及したものである。通常、その用語は、転写された配列に対する転写調節配列の機能的関係に言及したものである。例えば、本発明のプロモーター/エンハンサー配列は、シス(cis)作用性転写制御因子の任意の組み合わせを含むもので、適当な宿主細胞または他の発現系でコード配列の転写を刺激または修飾する場合、該コード配列に作動可能に結合する。一般に、転写配列に対して作動可能に結合しているプロモーター転写調節配列は、該転写配列に対して物理的に連続している(すなわち、それらはcis作用性である)。しかし、いくつかの転写調節配列(例えば、エンハンサー)は、該配列によって転写が増強されるコード配列に対して物理的に連続または近接している必要はない。ポリリンカーは、遺伝子が作動可能にプロモーターに結合するように、コード配列の挿入に都合のよい位置を提供する。ポリリンカーは、一連の3つ以上の近接した制限エンドヌクレアーゼ認識配列を含むポリヌクレオチド配列である。
シグナル配列とは、細胞によって非細胞質の位置に通常エクスポート(例えば、分泌)されるか、もしくは膜成分となる通常はエクスポートされる特定のタンパク質のNH末端に存在する短いアミノ酸配列(すなわち、シグナルペプチド)をコードするポリヌクレオチド配列のことをいう。シグナルペプチドは、細胞質から非細胞質の位置へのタンパク質輸送を指示する。
抗体または他の結合因子と抗原とのあいだの特異的結合は、結合親和性が少なくとも10−1であることを意味する。好ましい結合因子は、少なくとも約10−1、好ましくは10−1ないし10−1または1010−1の親和性で結合する。
目的の標的として抗体が含まれ、この抗体の例としては、自己免疫疾患(例えば、糖尿病、多発性硬化症、およびリウマチ様関節炎)に存在する抗イデオタイプ抗体および自己抗体が挙げられる。目的の他の標的は、成長因子受容体(例えば、FGFR、PDGFR、EFG、NGFR、およびVEGF)およびそれらのリガンドである。他の標的は、Gタンパク質受容体であり、サブスタンスK受容体、アンギオテンシン受容体、αおよびβアドレナリン作用性受容体、セレトニン受容体、およびPAF受容体が挙げられる。例えば、Gilman,Ann.Rev.Biochem.56,625−649(1987)を参照せよ。他の標的としては、イオンチャンネル(例えば、カルシウム、ナトリウム、カリウムチャンネル)、ムスカリン性受容体、アセチルコリン受容体、GABA受容体、グルタミン酸受容体、およびドーパミン受容体が挙げられる(Harpold、米国特許第5,401,629号および第5,436,128号を参照のこと)。他の標的は、インテグリン、セレクチン、および免疫グロブリンスーパーファミリー構成要素等の接着タンパク質である(Springer, Nature 346, 425−433 (1990). Osborn, Cell 62, 3 (1990); Hynes, Cell 69, 11 (1992))。他の標的は、サイトカイン、例えばインターロイキンIL1〜IL−13、腫瘍壊死因子αおよびβ、インターフェロンα、β、およびγ、腫瘍増殖因子ベータ(TGF−β)、コロニー刺激因子(CSF)、ならびに顆粒球単球コロニー刺激因子(GM−CSF)である(Human Cytokines: Handbook for Basic & Clinical Research (Aggrawal ら、編著、Blackwell Scientific, Boston, MA 1991)を参照せよ)。他の標的は、ホルモン、酵素、ならびに細胞内および細胞間メッセンジャー(例えば、アデニルシクラーゼ、グアニルシクラーゼ、およびホスホリパーゼC)である。薬物も目的の標的である。標的分子は、ヒト、哺乳動物、または細菌であり得る。他の標的分子は、ヒト、哺乳動物、または細菌のものとすることができる。他の標的は、抗原であり、該抗原の例として、微生物病原体(ウイルス性および細菌性の両方)ならびに腫瘍由来のタンパク質、糖タンパク質、および炭水化物が挙げられる。さらに別の標的は、米国特許第4,366,241号に記載されている。
完全長ポリペプチドコード配列を有する掲示ライブラリー構成要素は、ベクター増殖前に提示ベクターにもともと挿入されているコード配列と等しい長さのコード配列を有する。
(III.ポリペプチドを発現させるための真核生物シグナル配列)
本発明は、宿主細胞、特に原核宿主細胞(例えば、大腸菌(E.coli))で目的のタンパク質またはポリペプチドを真核生物シグナル配列を用いて発現させるための方法およびベクターを提供する。好ましくは、真核生物シグナル配列は、MKILILGIFLFLCSTPAWA(配列番号1)またはMRTLAILAAILLVALQAQA(配列番号2)の配列を有するシグナルペプチドをコードする。配列番号1はヒトセルロプラスミンシグナル配列(受託番号CERU_HUMAN)に対応し、配列番号2はヒト好中球ディフェンシン1,2,3前駆体シグナル配列(受託番号DEFN_HUMAN)に対応する。本発明に用いられ得る別の好ましい真核生物シグナルペプチド配列は、MGALAVFAVACLAAVASVAHA (配列番号3)である。それはクラミドモナス(Chlamydomonas reinhardtii)アリールスルファターゼ前駆体のシグナルペプチドである(受託番号ARS_CHLRE)。目的のタンパク質が免疫グロブリンまたはFabフラグメントである場合、Ig重鎖および軽鎖をコードするポリヌクレオチドは各々が真核生物シグナル配列に対して作動可能に結合している。そのようなベクターによって宿主細胞およびアセンブリから機能性免疫グロブリン分子またはFabフラグメントへの発現および分泌が可能となる。
(A.目的のポリペプチド)
目的の様々なポリペプチドを本発明の発現ベクターによって発現させることができる。いつくかの方法では、目的のポリペプチドが抗体またはそのフラグメントである。発現されるポリペプチドは、マウス抗体、ヒト抗体、またはキメラ抗体であり得る。いくつかの好ましい実施形態では、目的のポリペプチドはFabフラグメントである。発現される抗体は、重鎖配列および軽鎖配列がすでに知られている特定の抗体であり得る。別の用途では、抗体は目的の特定の標的についての親和性に対するポリペプチド掲示ライブラリースクリーニングを介して同定される(例えば、実施例4〜7を参照せよ)。セクションIVで、より詳細に開示されるように、セクションIVでは、スクリーニングと濃縮化の後、抗体の重鎖および軽鎖をコードするポリヌクレオチド配列が提示ベクターから発現ベクターに移される。原核細胞系で機能的抗体の発現に真核生物シグナル配列を用いることの有効性は、実施例6〜7に例示されている。
抗体以外に、種々の非抗体ポリペプチドも本明細書に開示したベクターおよび方法を用いて発現することができる。例示的な実施形態を実施例12および13に示す。真核細胞のタンパク質もしくは原核細胞のタンパク質または真核細胞のポリペプチドもしくは原核細胞のポリペプチドを本発明の方法にもとづいて発現することができる。好ましくは、発現させる目的の非抗体ポリペプチドは、ネイティブなシグナルペプチドを有する非抗体ポリペプチドである。本発明の方法を用いて、例えば、シグナル配列を持つことが知られている多くの真核細胞タンパク質(例えば、米国特許第5,932,445号を参照のこと)を、原核宿主細胞で発現させることができる。これらのタンパク質としては、受容体(核内受容体、膜貫通型受容体、Gタンパク質結合受容体、およびチロシンキナーゼ受容体)、サイトカイン(ケモカイン)、ホルモン(増殖因子および分化因子)、神経ペプチドおよび血管媒介物質、プロテインキナーゼ、ホスファターゼ、ホスホリパーゼ、ホスホジエステラーゼ、ヌクレオチドシクラーゼ、マトリックス分子(接着、カドヘリン、細胞外基質分子、インテグリン、およびセレクチン)、Gタンパク質、イオンチャンネル(カルシウム、塩化物、カリウム、およびナトリウム)、プロテアーゼ、トランスポーター/ポンプ(アミノ酸、タンパク質、糖、金属、およびビタミン;カルシウム、リン酸塩、カリウム、およびナトリウム)、ならびに調節タンパク質が挙げられる。
(B.真核生物シグナル配列を含む発現ベクター)
本発明は、少なくとも1つの転写ユニットを含む発現ベクターを提供する。この転写ユニットは、目的のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドに作動可能に結合した真核生物シグナル配列を含む。ベクターのいくつかも転写ユニットに作動可能に結合した細菌プロモーターを含む。いくつかのベクターにおいて、細菌プロモーターはラムノース誘導プロモーターである。さらに、発現ベクターは、宿主細胞内のポリペプチドを適当に転写およびそれに続く翻訳にとって必要な、または好ましい他の要素(例えば宿主細胞によって認識される複製起点)、終止コドン、および任意の他のポリヌクレオチド配列も含み得る。ベクターもまた、少なくとも1つの選択可能なマーカーを含む。
いくつかのベクター内に、目的のポリペプチドの複数のコピーをコードするポリヌクレオチドが存在する。目的のポリペプチドのコピー数は、2から約100までの範囲に及び得る。好ましいコピーの数は、約2〜約10である。好ましい実施形態では、シグナル配列ペプチドは、目的のポリペプチドの多数のコピーに対するアミノ末端であり、これら多数のコピーは連続的かつ一体となったかたちで配置される。いくつかのベクターでは、いくつかの目的の異なるポリペプチドをコードするポリヌクレオチドが存在し得る。目的の異なるポリペプチドの数は、2から約10までの範囲である。好ましくは、シグナル配列ペプチド(例えば、配列番号1〜3)によって処理され、目的の各々のポリペプチドは、目的のポリペプチドが可変な状態で配置されるように、これらのポリペプチドが連続的かつ一体的なかたちで配置される。上記ポリシストロニックベクターでは、目的の多数のポリペプチド(等しい配列または異なる配列のいずれか)の各々が内在リボソーム挿入部位(IRES)の制御下にあり得る(Molla Aら、Nature 356: 255−257 (1992); Jang S. K.ら、 J. of Virol. 263: 1651−1660 (1989))。例えば、本発明のいくつかの発現ベクターでは、目的の異なるポリペプチドは、免疫グロブリンの重鎖および軽鎖または免疫グロブリンのFabフラグメントであり得る。したがって、いくつかのベクターは、ジシストロニック転写ユニットに作動可能に結合した細菌プロモーターを含み、該ジシストロニック転写ユニットは、真核生物シグナル配列に各々が作動可能に結合している抗体重鎖および抗体軽鎖をコードする。
多くの真核生物シグナル配列を本発明の発現ベクターで用いることができる。表3および4は、本発明の発現およびファージ提示ベクターで使用することができる例示的なシグナル配列を示す。ジストロニック転写ユニットが免疫グロブリンを発現するために用いられる場合、表4に例示したように、ベクター内で重鎖および軽鎖に結合したシグナル配列を、同一または異なるものとすることができる。好ましい実施形態では、用いた真核生物シグナル配列によってコードしたシグナルペプチドは、MKILILGIFLFLCSTPAWA(配列番号1)またはMRTLAILAAILLVALQAQA(配列番号2)である。いくつかの好ましい実施形態では、軽鎖は配列番号1に示すペプチド配列をコードするシグナル配列(例えば、配列番号43)に作動可能に結合しており、そして重鎖は配列番号2に示すペプチド配列をコードするシグナル配列(例えば、配列番号45)に作動可能に結合している。いくつかの他の好ましい実施形態では、軽鎖および重鎖の両方がシグナル配列(例えば、配列番号43および44)に作動可能に結合しており、該シグナル配列は配列番号1に示す同一のペプチド配列をコードする。
本発明の発現ベクターで用いられる真核生物シグナル配列を商業的に得ることができ、あるいは化学的に合成することもできる。例えば、表3および4に示すシグナル配列は、自動合成装置(例えば、Van Devanterら、Nucleic Acids Res. 12:6159−6168 (1984)に記載)を用いて固相ホスホラミダイトトリエステル法(例えば、Beaucage & Caruthers, Tetrahedron Letts. 22:1859−1862 (1981)に記載)にもとづいて合成することができる。オリゴヌクレオチドの精製は、Pearson & Reanier, J. Chrom. 255:137−149 (1983)に記載されているように、ネイティブアクリルアミドゲル電気泳動によって、または陰イオン交換HPLCによって実施することができる。
ラムノース誘導プロモーターの特性が文献で特徴付けられている(例えば、Egan およびSchleif, J. Mol. Biol. 234:87−98, 1993を参照のこと)。ラムノース誘導プロモーターを含むベクターは、分子生物学で日常的に実施される技術を用いて容易に構築することができる(一般的には、Molecular Cloning: A Laboratory Manual (第3版), 第1〜3巻, Cold Spring Harbor Laboratory, (2001) (「Sambrook」)およびCurrent Protocols In Molecular Biology, Ausubel編 John Wiley & Sons, Inc., New York(1997)(「Ausubel」))を参照のこと)。
本発明では、シグナル配列と目的のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドとが発現ベクター内に配置される順番を変えることができる。好ましい実施形態では、シグナル配列は、5’から目的のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドである。前記シグナルペプチド配列と目的のポリペプチドとが、0ないし約1,000アミノ酸によって分離することができる。好ましい実施形態では、シグナルペプチド配列と目的のポリペプチドとが互いに直接隣接し合っている(すなわち、0個のアミノ酸によって隔てられている)。
(C.原核宿主細胞での発現および分泌)
本発明の発現ベクターにとって好ましい宿主細胞は、原核細胞(例えば、大腸菌(E.coli))である。発現ベクターからの目的のポリペプチドの発現は、当該技術分野で日常的に実施されている方法(例えば、Sambrookら、上掲、およびAusubel、上掲)を用いて、原核宿主細胞内で実行することができる。原核宿主細胞系において、作動可能に結合した真核生物シグナル配列によって、目的のポリヌクレオチドを発現させる方法もまた、セクションVで詳細に説明する。ラムノース誘導プロモーターを用いた場合、宿主細胞は大腸菌(E.coli)rhaB+株または大腸菌(E.coli)rhaB−株のいずれかであり得る。これらの宿主細胞でのラムノースによる発現の誘導は、以下の実施例に記載したようにして実施することができる。ラムノース誘導プロモーターからのポリペプチドの発現もまた、当該技術分野では記載されている(例えば、EganおよびSchleif, 上掲;Haldimannら、J. Bacteriol.177:4121−30, 1998;ならびにWilmsら、Biotech. and Bioengin. 73:95−103,2001)。
宿主細胞での発現およびペリプラズムへの分泌に続いて、目的のタンパク質またはポリペプチドを宿主細胞の培養物から回収し得る。目的のポリペプチドが免疫グロブリン鎖である場合、重鎖および軽鎖はそれぞれ宿主細胞で発現され、細胞のペリプラズムに分泌される。発現ベクターの真核生物シグナル配列によってコードされたシグナルペプチドがさらに免疫グロブリン鎖からプロセッシングされる。次に、成熟重鎖および軽鎖が組み合わさってインタクトな免疫グロブリンまたはFabフラグメントを形成する。単一鎖抗体フラグメントを、1つの真核生物シグナル配列のみを用いて発現させることができる。
いくつかの方法では、タンパク質またはポリペプチドが、宿主細胞の粗ライセートとして最初に得られる。つぎに、当該技術分野で知られている標準的なタンパク質精製法を用いて、粗ライセートを精製する。そのようなタンパク質精製方法としては、微分沈降法、分子ふるいクロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、等電集束法、ゲル電気泳動、親和性、および免疫親和性クロマトグラフィーが挙げられ得る。これらの周知で、かつ日常的に実施されている方法は、例えば、Sambrookら、上掲;Ausebel,上掲、およびWuら(編)Academic Press Inc.,N.Y.;Immunological Methods In Cell And Molecular Biologyに記載されている。例えば、免疫親和性クロマトグラフィーにより精製され、発現された免疫グロブリンが特異的に結合し得る標的分子に結合した樹脂を含むカラムに流すことで、組み換えにもとづいて産生された免疫グロブリンまたはFabフラグメントの精製をおこなう。
(IV. 提示ライブラリーの真核生物シグナル配列)
本発明は、ポリペプチド提示ライブラリーの産生およびスクリーニングの改善された方法を提供する。該方法で用いられる提示ベクターは、宿主系(例えば、大腸菌(E.coli)等の原核宿主細胞)での効率的な分泌を可能とする真核生物シグナル配列(例えば、表3および4に示す配列)を含む。続いて、掲示ライブラリーをスクリーニングすることによって同定される目的のポリペプチドは、発現ベクターにクローニングされ得る(例えば、原核生物発現ベクター)また、同定されたポリペプチドを産生する宿主系に、発現ベクターを導入し得る。抗体掲示ライブラリーのスクリーニングの際、重鎖および/または軽鎖可変ドメインをコードするポリヌクレオチドをファージ提示ベクターから発現ベクターにサブクローニングする。発現ベクターを宿主に導入して発現させ、シグナルペプチドを含む軽鎖および重鎖を産生させる。次に、重鎖および軽鎖によって成熟抗体が形成されて宿主から放出される。
抗体ライブラリーの構築およびスクリーニング法は、米国特許第6,057,098号(本明細書で参考として援用される)に記載されている。後述の実施例8〜10に、真核生物シグナル配列を含む掲示ベクターによるファージライブラリーの産生およびスクリーニングのための方法を例示する。提示およびスクリーニングされる抗体は、マウス抗体またはヒト抗体であり得る。これらの抗体をキメラ抗体とすることもできる。特定の目的で用いられるポリペプチドは、Fabフラグメントである。以下のセクションでは、本発明の多価ポリペプチド提示ライブラリーの産生およびスクリーニングについて詳細に説明する。
(A.複製可能な遺伝子パッケージ)
複製可能な遺伝子パッケージとは、細胞、胞子、またはウイルスを意味する。複製可能な遺伝子パッケージは、真核細胞または原核細胞のものであり得る。掲示ライブラリーの作製は、掲示される外来性ポリペプチドをコードする核酸を複製可能な遺伝子パッケージのゲノムに導入して、内在性タンパク質との融合タンパク質を作ることによっておこなわれる。この融合タンパク質は、複製可能な遺伝子パッケージの外面から通常発現される。融合タンパク質の発現、外表面およびアセンブリへの移動は、遺伝子パッケージの外表面由来の外来性ポリペプチドの掲示に帰する。
掲示ライブラリーに最も頻繁に使用される遺伝子パッケージは、バクテリオファージ、特に線状ファージであり、とりわけファージM13、Fd、およびF1である。ほとんどの研究が、融合タンパク質を形成するそれらのファージのgIIIまたはgVIIIのいずれかに、掲示されるポリペプチドをコードするライブラリーを挿入することであった。例えば、Dower, WO 91/19818; Devlin, WO 91/18989; MacCafferty, WO 92/01047 (遺伝子III); Huse, WO 92/06204; Kang, およびWO 92/18619 (遺伝子VIII)を参照のこと。そのような融合タンパク質は、ファージ外殻タンパク質以外の分泌タンパク質から通常由来するシグナル配列、提示されるポリペプチド、および遺伝子IIIまたは遺伝子VIIIタンパク質もしくはそのフラグメントのいずれかを含む。外来性のコード配列は、他のインサート部位でも可能であるが、しばしば遺伝子IIIまたは遺伝子VIIIのN末端またはその近傍に挿入される。遺伝子IIIまたは遺伝子VIIIのいずれかの第2のコピーを産生させるために、いくつかの線状ファージベクターが設計されている。そのようなベクターでは、2つのコピーのうち、1つのコピーのみに外来性配列が挿入される。他のコピーの発現は、ファージ粒子に取り込まれた融合タンパク質の割合を効果的に下げ、ファージ増殖に有害なポリペプチドに対する選択の減少に有利となり得る。別の例として、外来性ポリペプチド配列は、ファージ外殻タンパク質およびファージパッケージング配列をコードするが複製することができないファージミドベクターにクローニングする。ファージミドを細胞にトランスフェクションさせて、ヘルパーファージの感染によってパッケージングする。ファージミド系を用いることは、外殻タンパク質と提示されたポリペプチドとから形成された融合タンパク質をヘルパーファージから発現した外殻タンパク質の野生型コピーによる希釈の効果もある。例えば、Garrard, WO 92/09690を参照のこと。
真核生物ウイルスを使用して、類似方法でポリペプチドを提示することができる。例えば、マローニーマウス白血病ウイルスのgp70に融合されるヒトヘレグリンの提示がHanら、Proc.Natl. Acad. Sci. U.S.A 92, 9747−9751 (1995)によって報告されている。胞子もまた、複製可能な遺伝子パッケージとして用いることができる。この場合、ポリペプチドは胞子の外表面から掲示される。例えば、枯草菌(B.subtilis)の胞子が好適であることが報告されている。これらの胞子の外殻タンパク質の配列は、Donovanら、J. Mol. Biol. 196, 1−10 (1987)によって提供されている。複製可能な遺伝子パッケージとして、細胞を用いることもできる。提示されるポリペプチドは、細胞表面で発現される細胞タンパク質をコードする遺伝子に挿入される。細菌細胞の例としては、ネズミチフス菌(Salmonella typhimurium)、枯草菌(Bacillus subtilis)、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)、コレラ菌(Vibrio cholerae)、クレブシエラ肺炎桿菌(Klebsiella pneumonia)、淋菌(Neisseria gonorrhoeae)、髄膜炎菌(Neisseria meningitidis)、バクテロイデスノドスス(Bacteroides nodosus)、および牛モラクセラ菌(Moraxella bovis)、特に好ましくは大腸菌(Escherichia. coli)が挙げられる。外表面タンパク質の詳細は、Ladnerらの米国特許第5,571,698号および Georgiouら、Nature Biotechnology 15, 29−34 (1997) で議論されており、これらの文献を本明細書中で引用する。例えば、大腸菌(E.coli)のlamBタンパク質が適切である。
(B. 抗体のライブラリー掲示)
抗体ライブラリーの多価ファージ提示を、米国特許第6,057,098号の記載にしたがって作ることができる。すなわち、出発材料は、ファージのライブラリーであり、ライブラリー構成要素は、ファージ外殻タンパク質、抗体軽鎖可変ドメインまたは抗体重鎖可変ドメイン、およびタグから構成される融合タンパク質を外表面から提示することが可能なファージを有する。少なくともいくつかの構成要素では、抗体重鎖または抗体軽鎖がパートナー抗体重鎖可変ドメインまたはパートナー軽鎖可変ドメイン鎖と複合体を形成し、スクーリングすべきFabフラグメントが該錯体によって形成される。融合タンパク質および/またはパートナー抗体重鎖もしくは軽鎖は、ファージゲノムのセグメントによってコードされる。さらに、掲示ベクターは、抗体重鎖または軽鎖(例えば、表3および4に示すように)に作動可能に結合した少なくとも1つの真核生物シグナル配列を含む。Fabフラグメントの掲示が意図される場合、掲示ベクターは、重鎖配列に作動可能に結合した第1の真核生物シグナル配列および軽鎖配列に作動可能に結合した第2の真核生物シグナル配列を含む。第1および第2のシグナル配列は、同一または異なった配列であり得る。いくつかの方法では、シグナル配列は配列番号1、2、または3に示すシグナルペプチド配列をコードする。例えば、軽鎖に結合したシグナル配列は、配列番号1に示すシグナルペプチド配列をコードする配列番号43であり得、重鎖に結合するシグナル配列は配列番号2に示す(実施例8に例示したような)シグナルペプチドをコードする配列番号45であり得る。あるいは、両方の鎖を、配列番号1に示す同一のシグナルペプチド配列をコードするシグナル配列(例えば配列番号43および44)に作動可能に結合させることができる。
ファージあたりの提示されたパートナー抗体鎖と融合タンパク質のコピーの数は、ライブラリー構成要素間で変動する。ライブラリーまたはその一部分は、融合タンパク質のコピーを少なくとも2つ掲示するライブラリー構成要素が受容体と少なくとも2つのタグコピーとの間の多価結合により固定化受容体に優先的に結合する条件下で、タグに対して特異的親和性を持つ受容体と接触する。次に、受容体に結合したライブラリー構成要素を、結合していないライブラリー構成要素から分離し、融合タンパク質の少なくとも2つのコピーを提示する構成要素のライブラリーに比べて相対的に豊かなサブライブラリーを作る。
(1.一本鎖抗体ライブラリーまたは二本鎖抗体ライブラリー)
抗体ライブラリーは、一本鎖または二本鎖である。一本鎖抗体ライブラリーは、1個の抗体のみの重鎖または軽鎖、あるいはその可変ドメインを有し得る。しかし、より典型的には、一本鎖抗体ライブラリーの構成要素は、連続する単一のタンパク質内で、ペプチドスペイサーによって分離された重鎖可変ドメインまたは軽鎖可変ドメインの融合から形成される。(例えば、Ladnerら、WO 88/06630;McCaffertyら、WO 92/01047 を参照のこと)二本鎖抗体は、重鎖および軽鎖、またはその結合フラグメントの、非共有結合または共有結合によって形成される。二本鎖抗体はまた、2個の抗体結合部位を有する安定した二量体を形成する2個の一本鎖抗体から形成され得る。(Schierら、J. Mol. Biol. 255, 28−43 (1996); Arndtら、Biochemistry 37, 12918−12926 (1998)を参照のこと)抗体ライブラリーの多様性は、免疫化B細胞または非免疫化B細胞の非クローン個体群のような、天然由来の抗体コード配列を獲得することによって起こり得る。それとは別に、またはそれに加えて、多様性は、他のタンパク質について論じられるような、人工的変異誘発によってもたらされることもある。
スペイサーによって必要に応じてフランクされて提示されるべきポリペプチドをコードする核酸は、標準的なDNA組み換え技術によって、上述のように、複製可能な遺伝子パッケージのゲノムの中に挿入される(概ね、本明細書に参考として援用された、Sambrookら、Molecular Cloning A Laboratory Manual, 第3版, 2000, Cold Spring Harbor Laboratory Pressを参照のこと)。
当該核酸は、最終的には、複製可能パッケージの外表面タンパク質の全部または一部に融合したポリペプチド(スペイサーまたはフレイムワーク残基とともに、またはなしで)として発現する。ライブラリーは、約10、10、10、10、10以上の構成要素の大きさであることが多い。
二本鎖抗体ディスプレイライブラリーは、例えば、Dower,米国特許第5,427,908号; Huse WO 92/06204;Huse,in Antibody Engineering, (Freeman 1992), Ch. 5; Kang, WO 92/18619;Winter, WO 92/20791; McCafferty, WO 92/01047; Hoogenboom WO 93/06213;Winterら、Annu. Rev. Immunol. 12, 433−455 (1994); Hoogenboomら、 Immunological Reviews 130, 41−68 (1992);Soderlindら、Immunological Reviews 130, 109−124 (1992)、に記載されているように、作成することができる。好適な一実施形態において、一個の抗体鎖は、一本鎖ライブラリーの場合と同様に、ファージ外殻タンパク質に融合する。パートナー抗体鎖は、第一の抗体鎖と複合体をなすが、上記パートナーは直接ファージ外殻タンパク質には結合しない。重鎖または軽鎖のいずれかが、外殻タンパク質に融合する鎖であり得る。外殻タンパク質に融合しないのがどちらの鎖であっても、それがパートナー鎖である。このアレンジメントは、典型的には、シグナル配列、抗体鎖、およびファージ外殻タンパク質を有する融合タンパク質を形成するために、ファージ提示ベクターのgIIIまたは gVIII のいずれかに、一個の抗体鎖遺伝子をコードする核酸セグメントを組み込むことで達成される。パートナー抗体鎖をコードする核酸セグメントを、第一の抗体鎖をコードする核酸セグメントと同じベクターの中に挿入することができる。必要に応じて、重鎖および軽鎖は、同じプロモーターに結合し、かつ、多シストロン性メッセージ(例えば、Fabフラグメントおよび作動可能に結合されたシグナルペプチドをコードするジストロニックmRNA)として転写された、同じ提示ベクターに挿入することができる。
あるいは、パートナー抗体鎖をコードする核酸は、分離ベクター(ファージベクターであってもなくてもよい)に挿入することができる。この場合、これら2個のベクターは、同じ細胞内で発現される(WO92/20791参照)。パートナー鎖をコードする配列は、このパートナー鎖がシグナル配列に連結されるように挿入されるが、ファージ外殻タンパク質には融合されない。両方の抗体鎖は発現して、細胞のペリプラズムに搬出され、そこで、集合し、ファージ粒子へと組み込まれる。
抗体コード配列は、ヒトまたは非ヒト動物のリンパ細胞から得られ得る。これらの細胞は免疫化されていることが多く、その場合、免疫化は、インビボでは細胞を回収する前に、またはインビトロでは細胞を回収した後、あるいはこれら両方で行われ得る。免疫化した動物の脾臓細胞は、好ましい供給材料である。ヒトの免疫化は、特定の抗体によってのみ可能である。免疫化動物由来の脾臓内にある、異なったH鎖遺伝子およびL鎖遺伝子の数は、約10であり、それは、1012の可能な組み合わせで構築することができる。
再編成された免疫グロブリン遺伝子は、ゲノムDNAまたはmRNAからクローニングすることができる。後者の場合、mRNAを細胞から抽出し、cDNAを逆転写酵素およびポリ−dTオリゴヌクレオチドプライマーを使って調製する。抗体コード配列をクローニングするためのプライマーについては、次の文献で、述べられている:Larickら、Bio/Technology 7,934(1989)、DanielssonおよびBorrebaceick,Antibody Engineering:A Practical Guide(Freeman,NY,1992),89頁、およびHuse(同上)第5章。
抗体フラグメントのレパートリーは、増幅したVH配列およびVL配列を、いくつかの方法で一緒に組み合わせることにより構築されてきた。軽鎖および重鎖を、異なったベクターに挿入し、そのベクターを、インビトロで(Hogrefeら、Gene 128,119−126(1993))、またはインビボで(Waterhouseら、Nucl.Acids.Res.21,2265−66(1993))、組み合わせることができる。あるいは、その軽鎖および重鎖を、同じベクター内に順次クローニングするか(Barbasら、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A 88,7987−82(1991))、またはPCRによって一緒に組み立てて、その後、ベクターに挿入し得る(Clacksonら、Nature 352,624−28(1991))。重鎖のレパートリーはまた、一本の軽鎖と組み合わせられ得、その逆もある。Hoogenboomら、J.Mol.Biol.227,381−88(1992)。
重鎖および軽鎖をコードする配列の集団をクローニングするための、例示的なベクターおよび手順のいくつかを、Huseが記述している(WO92/06204)。Hcポリペプチドをコードする配列の多様な集団を、M13IX30内にクローニングし、Lcポリペプチドをクローニングする配列を、M13IX11内にクローニングする。この集団を、M13IX30内のXhoI−SeeIまたはStuI制限酵素部位の間に、および、M13IX11内のSacI−XbaIまたはEcoRV部位の間に挿入する(それぞれ、Huseの図1AおよびB)。両方のベクターとも、HcおよびLcコード配列と、それらの関連ベクター配列を一緒に結合させるために、二対のMluI−HindIII制限酵素部位(Huseの図1AおよびB)を含む。この二対は、発現すべき配列を含むベクタータンパク質だけが、正確に、一個のベクター内に合わせられるように、クローニング部位に対して対称的に配向している。
(2.キメラまたはヒト抗体ライブラリー)
本発明の多価提示ライブラリーを作成およびスクリーニングするための改良された方法は、キメラまたはヒト抗体ライブラリーを包含する。キメラ抗体は、例えば、抗体が第一の種由来の可変領域および第二の種由来の定常領域を有するものを含む、少なくとも1のキメラ抗体鎖を有する。Fabフラグメントのようないくつかのキメラ抗体は、キメラ重鎖およびキメラ軽鎖を含む。いくつかのキメラ軽鎖は、第一の種由来の軽鎖可変領域、および第二の種由来の定常領域を含む。同様に、いくつかのキメラ重鎖は、第一の種由来の重鎖可変領域、および第二の種由来の重鎖定常領域を含む。インタクトな抗体は、2コピーのキメラ軽鎖および2コピーのキメラ重鎖を含み得る。キメラFabフラグメントは、キメラ軽鎖およびキメラ重鎖を含み得る。第一の種由来の可変領域、および第二の種由来の定常領域を有するキメラ抗体について、その可変領域は、典型的には、マウス、ラット、ウサギ、モルモット、ウシ、ウマ、ヒツジ、ハゲワシ(vulcher)、サル、またはチンパンジーのような、非ヒト種から得られる。その定常領域は、典型的には、ヒトでの利用を意図したキメラについてヒト由来であるか、または獣医学的適用が意図される動物種由来である。Fabフラグメントにおいて、重鎖定常領域は通常CH1領域を含み、軽鎖定常領域はC−κまたはC−λのようなインタクトな軽鎖定常領域である。インタクトなIgG抗体において、重鎖定常領域は、典型的にCH1、ヒンジ、CH2およびCH3領域を含み、軽鎖は、インタクトなC−κ軽鎖またはC−λ軽鎖である。
本発明のポリクローナルキメラ抗体のライブラリーは、例えば、米国特許第6,420,113号として発行された1999年10月2日に出願の米国特許出願番号09/410,903(本明細書に参照のため引用されている)に記述されている方法にしたがって作成することができる。いくつかの方法では、ファージベクターまたは他の複製可能な遺伝子パッケージは、重鎖可変領域に作動可能に連結された第一の真核生物シグナル配列、および軽鎖可変領域に作動可能に連結された第二の真核生物シグナル配列を含む。さらに、重鎖定常領域(CH1領域)および軽鎖定常領域をそれぞれ、重鎖可変領域および軽鎖可変領域とインフレームで挿入する。提示ベクターに適した真核生物シグナル配列の例を、表3および表4に示す。
いくつかの方法では、複製可能な遺伝子パッケージまたはファージ提示ライブラリーは、非ヒト可変領域およびヒト定常領域を含むキメラFabフラグメントを発現および提示することができる。例えば、上記提示ベクターは、ヒトのCH1領域を、挿入重鎖可変領域とインフレームでコードすることができ、インタクトなヒト軽鎖領域(κまたはλのような)を、挿入軽鎖可変領域とインフレームでコードすることができる。いくつかの方法では、上記発現ベクターを、Fabフラグメント内にあるキメラ重鎖のセグメントとインフレームで、ヒト重鎖定常領域(典型的には、ヒンジ、CH2およびCH3領域)のさらなるセグメントをコードするように設計する。その結果生じる、改変ベクターの集団は、インタクトな抗体の集団を発現する。
本発明はまた、真核生物シグナル配列を含む、ヒト抗体のファージライブラリーの提示およびスクリーニングのための方法も提供する。上記ヒト抗体は、予想外の特徴を有するヒト抗体の集団を産生するために、元来、非ヒトトランスジェニック動物内で発現される。これらの特徴としては、異常に高い結合親和性(例えば、いくつかの例では、pM解離定数)、事実上無限数のそのような抗体、および上記集団におけるそのような抗体に対する高い富化率が挙げられる。そのような特徴を有するヒト抗体のライブラリーは、例えば、1999年12月1日出願の米国特許出願番号09/453,234(本明細書に参考として援用される)、およびWO01/25492に記述されているように作成できる。略述すると、その方法は、ヒト免疫グロブリン遺伝子を有する非ヒトトランスジェニック動物(例えば、トランスジェニックマウス)の免疫化を必要とする。その動物は、上記抗原に結合するヒト抗体の多様な範囲を発現する。そのような抗体の抗体鎖成分をコードする核酸は、その後、上記動物から提示ベクター内にクローニングされる。典型的には、重鎖および軽鎖配列をコードする分離された核酸集団がクローニングされ、その別個の集団は、その後、上記ベクターのどのコピーでも、重鎖および軽鎖の無作為的組み合わせを受けるように、ベクター内に挿入されて組み換えられる。
(C.多価提示メンバーについての富化)
ポリペプチドの複数のコピーを提示するライブラリーのメンバーは、提示ライブラリーにおいては比較的稀少である。そのライブラリーがスクリーニング標的と接触する前に、1つより多いポリペプチドを提示するライブラリーメンバーを富化するには、対になったタグとレセプターとを使用することができる。タグは、レセプターと結合するものなら何でもよいが、典型的には、短いペプチド配列である。レセプターは、そのタグに対して、特異的ではあるが、可逆的な結合を示し、支持体に固定化することができるものなら何でもよい。本発明に適した様々なタグ−レセプターの組み合わせが、米国特許第6,057,098号に開示されている。例えば、エピトープと抗体との対は、抗ダイノルフィン(dynorphin)mAb 32.39に対して高い親和性を有することが知られているヘキサペプチドリガンド(Barrettら、Neuropeptides 6,113−120(1985)およびCullら、PNAS 89,1865−1869(1992)を参照せよ)と、MAb 3E7を結合することが知られている種々の短いペプチド(Schatz,Biotechnology 11,1138−43(1993))を含む。タグと抗体とのもう別の組み合わせは、BlanarおよびRutter,Science 256,1014−1018(1992)が記述している。さらに別のタグ−レセプター対の例は、FLAGTMシステム(Kodak)である。
レセプターはビオチンによって標識されることが多く、そのレセプターがアビジン被覆支持体に固定化されることを可能にする。ビオチン標識は、ビオチン化酵素BirAを使用して行う(例えば、Schatz,Biotechnology 11,1138−43(1993)を参照せよ)。
タグをコードする核酸配列は、そのタグが、提示されるべきポリペプチドおよび複製可能な遺伝子パッケージの外表面タンパク質を含む融合タンパク質の一部として発現されるように、提示ベクター内に挿入される。これら成分の相対的な順序は、タグおよび提示されるべきポリペプチドの両方が上記パッケージの外表面上に露出される限り、重要ではない。例えば、タグは、外表面タンパク質と提示ポリペプチドの間に、または融合タンパク質の露出端もしくはその近くに、配置され得る。タグは、抗体の定常ドメインのような、全てのライブラリーメンバーに共通な提示ポリペプチドの一部であり得る。
Fabフラグメントを提示する複製可能な遺伝子パッケージにおいて、タグは、どちらの鎖がファージ外殻タンパク質に結合するかに関係なく、重鎖または軽鎖のFabのどちらかに融合され得る。必要があれば、2個の異なったタグが使われ得、1個は、重鎖および軽鎖の各々に融合される。一つのタグは、通常、ファージ外殻タンパク質とそれに結合した抗体鎖との間に配置され、もう一つのタグは、パートナー鎖のN末端またはC末端のどちらかに配置される。
(D.多価メンバーの選択)
多価ライブラリーメンバーの選択は、ライブラリーメンバーのタグ成分に対するレセプターにライブラリーを接触させることにより実行する。通常、固相に固定化したレセプターにライブラリーを接触させ、ライブラリーメンバーをそれらのタグを介してレセプターに結合することにより、平衡に達することが可能となる。その後、複合体となったレセプターおよびライブラリーメンバーを、レセプターが親和性を有する固相の添加(例えば、アビジンで標識した固相を用いて、ビオチンで標識したレセプターを固定化することができる)によって、溶液から取り出す。あるいは、溶液中でライブラリーをレセプターに接触させることができ、この結果、レセプターが固定化される。大部分の提示されたタグがレセプターに平衡で結合するように、レセプターの濃度は、通常、液相結合の間、タグ/レセプターのKd以上にすべきである。レセプター−ライブラリーメンバーを固相に接触させる際、溶液中でライブラリーメンバーから固相が分離された後、少なくとも2つの提示されたタグを介してレセプターに結合するライブラリーメンバーのみが、固相に結合したままである。単一のタグを介してレセプターに結合されるライブラリーメンバーは、固相の分離および洗浄の間、固相より剪断されると推定される。未結合のライブラリーメンバーを除去した後、イオン強度もしくはpHを変化させるか、またはレセプターへの結合についてタグと競合する物質を添加することによって、結合したライブラリーメンバーをレセプターおよび固相から解離できる。例えば、アガロースに固定化されるとともにNi2+を含む金属キレートリガンドのヘキサヒスチジン配列への結合は、イミダゾールを溶液に添加して金属キレートリガンドの結合について競合させることにより、簡単に逆転できる。抗体−ペプチド結合は、多くの場合、pHを10.5以上に上げることによって解離できる。
この方法により選択されるライブラリーメンバー当たりのポリペプチドの平均数は、多数の因子に影響される。液相結合の間、レセプターの濃度を低下させることは、選択されたライブラリーメンバー中のポリペプチドの平均数の増加効果を有する。また、洗浄条件のストリンジェンシーを増すこともまた、選択されたライブラリーメンバー当たりのポリペプチドの平均数を増加させる。ライブラリーメンバーと固相との間の物理的関係を操作して、ライブラリーメンバー当たりのポリペプチドの平均数を増加することも可能である。例えば、離散した粒子を固相として用いる場合、粒子のサイズを小さくすると、結合の立体的な制約が増し、より高密度の、ライブラリーメンバー当たりの提示されるポリペプチドが必要となるはずである。
各抗体鎖に連結される2つのタグを有するFabライブラリーについて、第1ラウンドの産物を第2ラウンドへの出発材料にして、選択を同様に2周実行することができる。第1のタグに対するレセプターを用いて選択の第1ラウンドを実行し、第2のタグに対するレセプターを用いて第2ラウンドを実行する。両タグについての選択によって、重抗体鎖および軽抗体鎖の両方の2つのコピー(すなわち、2つのFabフラグメント)を提示するライブラリーメンバーが富化される。
(E.目的の標的への親和性についての選択)
Fabまたは他のポリペプチドの多価提示について富化されたライブラリーメンバーを、目的の標的への結合についてスクリーニングした。目的の標的は、結合パートナーを同定することが望まれるためいずれの目的の分子でもよい。この工程では、スクリーニングされるのは、提示されたポリペプチドであって、標的に結合するタグではないので、標的はタグに対する特異的結合親和性を欠くべきである。この工程でのスクリーニング手順は、親和性試薬がタグに対するレセプターではなく目的の標的である以外は、先の工程に非常に類似している。富化されたライブラリーメンバーを、その固定化を可能にする方法で通常標識した(例えば、ビオチンを用いて)標的に接触させる。結合により、平衡へと進むことが可能となり、その後、パンニングとして公知のプロセスで固相と接触させることにより、標的を溶液から取り出す(ParmleyおよびSmith、Gene 73、305−318(1988))。選択プロセス全体を通して、固相と結合したままのライブラリーメンバーには、それらと固定化した標的分子との間の多価結合よって同様のことを行う。未結合のライブラリーメンバーを洗浄して、固相から取り除く。
通常、スクリーニングの次のラウンドを実行する前に、ライブラリーメンバーを増幅にかける。多くの場合、結合したライブラリーメンバーは、支持体から解離することなく増幅できる。例えば、ビーズに固定化した遺伝子VIIIファージライブラリーメンバーは、ビーズをE.coliの培養物に浸漬させることによって増幅できる。同様に、細菌提示ライブラリーは、結合したライブラリーメンバーに増殖培地を添加することによって増幅できる。あるいは、結合したライブラリーメンバーは、次の選択、増幅または増殖を実行する前に、(例えば、イオン強度またはpHを変化させることによって)固相から解離できる。
親和性選択の後、結合したライブラリーメンバーは、2つの特徴、すなわちポリペプチドの多価提示および目的の標的に対する特異的親和性を有するポリペプチドの提示のためこの時点で富化される。しかし、次の増幅の後、2次ライブラリーを生産するため、標的に対する特異的親和性を有するポリペプチドを提示するために、2次ライブラリーは富化されたままであるが、増幅の結果として、ポリペプチドの多価提示のためにはこれ以上富化されない。このようにして、その後多価富化の2度目のサイクルを実行し、それに続いて、スクリーニング標的に対する親和性富化の2度目のサイクルを行う。さらに、スクリーニング標的に対する親和性富化のサイクルは、必要に応じて、多価提示のために増幅および富化と交互にすることを、濃度が所望の度合いに至るまで実行できる。
変形では、標的に類似していても同一ではない化合物と拮抗させて、標的に対する親和性スクリーニングを実行する。このようなスクリーニングでは、化合物上には存在しない標的エピトープに結合するライブラリーメンバーが優先的に選択される。さらに別の変形では、抗原に対する標的との既知の交差反応性を有する化合物と拮抗させて、結合したライブラリーメンバーを固相から解離できる。標的に対する既知の化合物と同一または同様の結合特異性を有するライブラリーメンバーは、優先的に溶離される。エピトープを介して標的に対する親和性を有するライブラリーメンバーは、固相と結合状態の化合物によって認識されるものとは区別される。
標的に対する異なる一価親和性のポリペプチド間で選択する点での区別は、液相結合中の、ライブラリーメンバーの結合価および標的の濃度に影響される。iで表示した標的分子の最小量がライブラリーメンバーに結合して、それを固相に固定化すると仮定して、n個のポリペプチドを提示するライブラリーメンバーについて、固定化の確率が計算できる。質量作用の法則から、結合/未結合ポリペプチド分数Fは、K[targ]/(1+K[targ])であり、式中、[targ]は、溶液中の総標的濃度である。このようにして、ライブラリーメンバー当たり、標識した標的リガンドによってi以上の提示されたポリペプチドが結合される確率は、2項確率分布:
Figure 0004303596
によって求められる。
確率は、Kおよび[target]の関数であるので、標的に対してそれぞれが一価親和性Kを有する多価提示メンバーは、標的の濃度を変化させることによって選択され得る。ライブラリーメンバーが0.1/[Ag]、1/[Ag]、および10/[Ag]の一価親和性を示し、メンバー当たりn個のポリペプチドを提示し、i=1、2、または3であるときの固相固定化の確率は、次の通りである。
Figure 0004303596
Figure 0004303596
上記の表は、異なる一価結合親和性の固定化ポリペプチド間の区別が、ライブラリーメンバー(n)の結合価によって、および液相結合に対する標的の濃度によって影響されることを示す。n(ファージ当たりの提示されるポリペプチド数)がi(固相結合に必要な最小結合価)に等しいとき、区別は最大になる。また、液相結合の間、標的の濃度を低下することによっても、区別は増大する。通常、標的濃度は、単離しようとするポリペプチドのKd付近である。10−8〜10−10Mの標的濃度が代表的である。
上記方法で生産した富化されたライブラリーを、標的に対する特異的親和性を有するポリペプチドをコードする高比率のメンバーにより特徴づける。例えば、少なくとも10%、25%、50%、75%、95%または99%のメンバーが標的に対する特異的親和性を有するポリペプチドをコードする。標的に対する親和性を有するメンバーの正確な%値は、増幅によって、遺伝的欠失の出現が増すので、ライブラリーが選択に続いて増殖されたかどうかに依存する。しかし、完全長ポリペプチドコード配列を有するメンバーの中で、標的に対する特異的親和性を有するポリペプチドをコードする比率は非常に高い(例えば、少なくとも50%、75%、95%または99%)。標的に対する特異的親和性を有するポリペプチドをコードする全てのライブラリーメンバーが必ずしもポリペプチドを提示するわけではない。例えば、全長コード配列のメンバーの95%が標的に対する特異的親和性を有するポリペプチドをコードするライブラリーでは、通常半数より少ない数が実際にポリペプチドを提示する。通常、このようなライブラリーは、少なくとも4、10、20、50、100、1000、10,000、または100,000個の異なるコード配列を有する。通常、このようなコード配列の任意の1つの出現は、ライブラリー中の全コード配列の50%、25%、または10%以下である。
(V.宿主系でのサブクローニングおよび発現)
(A.サブクローニング)
提示ライブラリーメンバーのスクリーニングでは、代表的に、標的に対する特異的親和性を有するライブラリーメンバーの小集団が生じる。いくつかの方法では、ライブラリーメンバーのクローン性単離物が得られ、これらの単離物を様々な他の分析に直接用いる。他の方法では、ライブラリーメンバーのクローン性単離物を得て、抗体鎖をコードするポリヌクレオチド配列をそれぞれの単離物から増幅する。代表的に、発現ベクターに移す前に、同一のポリヌクレオチド分子の成分として重鎖および軽鎖を増幅するので、提示ベクター中に存在する重鎖および軽鎖の組み合わせは、発現ベクター中でも保存される。さらに、各シグナル配列もまた、発現ベクターに移され、その中で、抗体鎖に対するその作動可能な結合が保存される。発現ベクターは、上記に開示したような原核生物ベクターであり得る。発現ベクターは、また、真核生物ベクターであり得る。さらに、いくつかの方法では、1つの発現ベクター(例えば、セクションIIIで論じる原核生物発現ベクター)中の目的のポリヌクレオチド(例えば、Fabコード配列)を、別の発現ベクター(他の原核生物ベクターまたは真核生物ベクター)に移す。
ヒト可変領域およびヒト定常領域の両方を含む提示抗体鎖について、代表的に、可変領域および定常領域の両方をコードする核酸をサブクローニングする。他の方法では、抗体鎖をコードする核酸を増幅し、個々のメンバーのクローン単離をせずに、ライブラリーメンバーのプールから全てまとめて発現ベクターの複数のコピーへサブクローニングする。提示ベクターから発現ベクターへポリヌクレオチドの混合集団を移すためのサブクローニングプロセスは、下記に詳細に記述するように、個々の提示ベクターのクローン性単離物から得た核酸を移すための方法と本質的に同じである。
サブクローニングすべき抗体鎖をコードするポリヌクレオチドは、隣接配列の制限消化により切り出すことができるか、またはコード配列に隣接する部位に対するプライマーを用いるPCR法によって増幅することができる。一般的なPCR技術に関しては、Principles and Applications for DNA Amplification(H.A.Erlich編、Freeman Press、NY、N.Y.、1992);PCR Protocols:A Guide to Methods and Applications(Innisら編、Academic Press、San Diego、CA、1990);Mattilaら、Nucleic Acids Res.19:967(1991);Eckertら、PCR Methods and Applications 1:17(1991);PCR(McPhersonら編集、IRL Press、Oxford)を参照せよ。PCRプライマーは、発現ベクターに導入する際、増幅フラグメントのポジティブな選択を可能にするマーカー配列を含むことができる。PCRプライマーは、必須ではないが、発現ベクターへのクローニングを可能にするための制限部位を含むこともできる。Fabライブラリーについて、重鎖および軽鎖を互いに隣接させるか、または近接させて提示ベクターに挿入する場合、これら2つ鎖を増幅させるか、または一緒に切り出すことができる。いくつかのFabライブラリーについては、抗体鎖の可変領域のみを切除するか、または増幅する。Fabライブラリーの重鎖または軽鎖を別々に切り出すか、または増幅する場合、続いて、それらを同一または異なる発現ベクターに挿入することができる。
真核生物発現ベクターを用いる際、重鎖および軽鎖の配列を2つの別々のベクターに移すことができる。一方で、重鎖および軽鎖の配列は、同一の発現ベクターにサブクローニングすることができる。後者の場合、軽鎖および重鎖を2つの別々の真核生物プロモーターの制御下に置くことができる。あるいは、重鎖および軽鎖の配列を同一のベクターの1つのプロモーターの制御下に置くことができる。しかし、リボソームが下流配列(例えば、軽鎖配列)に結合することを確実にするためには、下流配列に作動可能に会合するようにIRES配列を挿入することもできる。
提示抗体鎖をコードするフラグメントを切り出すか、または増幅した場合、これらのフラグメントは、通常、アガロースゲルまたはショ糖勾配でサイズ的に精製される。代表的に、これらのフラグメントは、コード配列の様々な欠失形態に対応するより低い分子でスメアを有する単一の鮮明な完全長バンドとなる。完全長コード配列に対応するバンドを、ゲルまたは勾配から取り出し、これらの配列を次の工程で使用する。
次の工程では、完全長コード配列をコードする核酸を発現ベクターに連結させ、それによって、異なるインサートを保持する発現ベクターの改変形態の集団を作製する。これは、適合する末端を有するように切断されたインサートの混合物を持つ切断された発現ベクターを従来通りライゲーションすることによって達成され得る。あるいは、インサートDNAに対する制限酵素の使用を避けることができる。天然にコードされる制限酵素部位は、インサート配列内に存在し、このために制限酵素で処理する際、配列の破壊を引き起こす可能性があるので、このクローニング法が有益である。制限酵素を用いないクローニングについて、インサートおよび線状化したベクター配列の混合集団を、T4 DNAポリメラーゼまたはエキソヌクレアーゼIII等の3’→5’エキソヌクレアーゼで短時間処理する。Sambrookら、Molecular Cloning、A Laboratory Manual(第2版、CSHP、New York 1989)を参照せよ。消化により生成されたインサートの突出5’末端は、ベクターの消化により生成された1本鎖オーバーハングに相補的である。オーバーハングをアニーリングして、再アニーリングしたベクターをレシピエント宿主細胞にトランスフェクションする。3’→5’エキソヌクレアーゼではなく5’→3’エキソヌクレアーゼを用いても同じ結果が達成され得る。
好ましくは、発現ベクターへのインサートのライゲーションは、再アニーリングしたベクターおよび未切断のベクターに対する選択が可能となる条件下で実行する。非許容条件下での再アニーリングしたベクターに対する選択を可能にする条件的致死遺伝子を含む多くのベクターが公知である。例えば、ConleyおよびSaunders、Mol.Gen.Genet.194:211−218(1984)を参照せよ。これらのベクターによって、インサートを収容したベクターに対するポジティブな選択を効果的に可能にする。選択は、ポジティブ選択マーカー(例えば、抗生物質耐性)の一部を欠失するように発現ベクターを切断することによっても達成できる。欠けた部分は、その後、完全長インサートで補充する。この部分は、提示ベクター中のポリペプチドコード配列の3’末端で導入できるか、または、インサートの増幅に用いるプライマー中に含むことができる。
発現ベクターの選択は、ベクターを発現させる目的の宿主細胞に依存する。通常、ベクターは、他の調節配列の発現を確実にする挿入されるコード配列に作動可能に結合されて、プロモーターおよび他の調節配列を含む。誘導可能なプロモーターを使用すると、誘導条件下以外での挿入配列の発現を防ぐため都合がよい。誘導可能なプロモーターとしては、アラビノース、lacZ、メタロチオネインプロモーター、または熱ショックプロモーターが挙げられる。その発現産物が宿主細胞によっていっそう寛容されるコード配列に対して集団を偏らせることなしに、形質転換された生体の培養物は、非誘導条件下で増殖できる。多くの場合、ベクターに内包される前に、挿入ポリペプチドはシグナル配列に結合するけれども、ベクターには、挿入配列によってコードされるポリペプチドを有する融合タンパク質を形成するように配置される分泌シグナル配列を設けてもよい。抗体軽鎖および重鎖可変ドメインをコードする配列を収容するために用いるベクターは、挿入鎖を有する融合タンパク質として発現することができる定常領域またはその部分をコードすることもあり、それによって、インタクトな抗体またはそのフラグメントの産生に至る。通常、このような定常領域は、ヒトのものである。保存的変異は、好ましくはないが、許容され得る。例えば、提示パッケージがC1定常領域に結合する重鎖可変領域と、インタクトな軽鎖定常領域に結合する軽鎖可変領域とを提示し、全抗体鎖が提示ベクターから発現ベクターに移される場合、発現ベクターは、挿入重鎖核酸のC1領域を有するヒト重鎖定常領域ヒンジ、C2、およびC3領域インフレームをコードするように設計することができ、それによって、インタクトな抗体が発現される。当然、正確に、ヒト重鎖定常領域のセグメントが提示パッケージによっておよび発現ベクターによって補充されるように多数の小さな変形が可能である。例えば、C1領域およびヒンジ領域のいくつかまたは全てを含むように提示パッケージを設計することもできる。この場合、インタクトな抗体を発現させるために、ヒンジ領域の残部(もし存在するならば)と、C2およびC3領域とを補充するように発現ベクターを設計する。
(B.宿主系および発現)
セクションIIIおよびIVで論ずるような対象となるポリヌクレオチドを発現させるために様々な宿主系を用いることができる。セクションIIIで論ずるように、大腸菌(E.coli)は、本発明のポリヌクレオチドをクローニングするために特に有用な1つの原核宿主細胞である。使用に好適な他の細菌宿主としては、バチラススブチリス(Bacillus subtilis)等の棹菌(bacilli)と、サルモネラ菌(Salmonella)、セラチア属(Serratia)、および多種の シュードモナス(Pseudomonas)種等の他の腸内細菌(enterobacteriaceae) とが挙げられる。これらの原核細胞宿主では、発現ベクターを作製することもでき、宿主細胞に適合した発現制御配列を通常含む(例えば、複製起点)。さらに、ラクトースプロモーター系、トリプトファン(trp)プロモーター系、ベータラクタマーゼプロモーター系、またはファージラムダもしくはファージT7から得たプロモーター系等の様々な周知のプロモーターの任意の数を存在させる。プロモーターは、転写および翻訳を開始終了するために、通常、発現を制御し、任意でオペレーター配列を有し、リボソーム結合部位配列等を有する。
他の細菌、例えば酵母もまた発現のために用いることができる。サッカロマイセス(Saccharomyces)は、3−ホスホグリセリン酸キナーゼもしくは他の解糖酵素を含むプロモーターまたはガラクトースプロモーター、および複製起点、終止配列等の発現制御配列を所望の通りに有する好適なベクターとともに使用する好適な宿主である。昆虫細胞も、バキュロウイルスベクターと組み合わせて用いることができる。
ほ乳類組織細胞培養物を利用して、本発明の対象となるポリペプチドを発現および産生させることもできる(Winnacker、From Genes to Clones(VCH Publishers、N.Y.、N.Y.、1987)を参照せよ)。インタクトな免疫グロブリンを分泌することができる多数の好適な宿主細胞系が開発されており、CHO細胞系、様々なCos細胞系、HeLa細胞、ミエローマ細胞系、形質転換したB細胞、およびハイブリドーマが挙げられる。これらの細胞に対する発現ベクターは、複製起点、プロモーター、およびエンハンサー等の発現制御配列(Queenら、Immunol.Rev.89:49−68(1986))と、リボソーム結合部位、RNAスプライス部位、ポリアデニル化部位、および転写ターミネーター配列等の必要なプロセッシング情報部位とを含むことができる。好適な発現制御配列は、免疫グロブリン遺伝子、SV40、アデノウイルス、ウシパピローマウイルス、またはサイトメガロウイルス由来のプロモーターである。
目的のポリヌクレオチド配列を含むベクターの導入方法は、細胞宿主の種類によって変わる。例えば、原核細胞には通常塩化カルシウムトランスフェクション法が利用される一方で、他の細胞宿主にはリン酸カルシウム処理または電気穿孔法が用いることも可能である(一般的に、Sambrookら、上掲)。
いったん発現させると、抗体の集合を、培養物培養液および宿主細胞から精製する。一般に、シグナル配列とともに抗体鎖を発現させ、これによって、培養物培養液に放出する。しかし、抗体鎖が宿主細胞から天然に分泌されない場合、抗体鎖は穏やかな界面活性剤による処理によって放出することができる。抗体鎖は、その後、硫酸アンモニウム沈降法、固定標的に対するアフィニティークロマトグラフィー法、カラムクロマトグラフィー法、ゲル電気泳動法等の従来法により精製できる(一般に、Scopes,Protein Purification(Springer−Verlag、N.Y.、1982)を参照せよ)。
上記方法によって、選択された標的に対する特異的親和性を有する抗体鎖をコードする核酸配列の新規ライブラリーが生じる。核酸のライブラリーは、通常、少なくとも5、10、20、50、100、1000、10、または10の異なる構成要素を有する。一般に、単一の構成要素がライブラリーの全配列の25または50%以上を占めることはない。通常、ライブラリー構成要素の少なくとも25、50、75、90、95、99または99.9%は、標的分子に対して特異的親和性を有する抗体鎖をコードする。核酸ライブラリーは、任意のベクターの成分として自由な形態で存在することができ、また宿主細胞にベクター成分としてトランスフェクションすることができる。いくつかのライブラリーでは、抗体重鎖をコードする核酸の少なくとも90、95、または99%がIgGアイソタイプの重鎖をコードする。いくつかのライブラリーでは、標的に対して特異的親和性を有する構成要素の重鎖をコードする核酸は、鎖に対して少なくとも5、10、14、15、20、または25の体細胞ヌクレオチド変異の中央値を有する。いくつかのライブラリーでは、標的に対して特異的親和性を有する構成要素の軽鎖をコードする核酸は、鎖に対して少なくとも2、3、5、10、15、20、または25の体細胞ヌクレオチド変異の中央値を有する。
核酸ライブラリーが発現して、標的に対して特異的親和性を有する抗体のポリクローナルライブラリーを生成できる。このようなライブラリーの組成物は、ヌクレオチドライブラリーの組成物から決定される。その結果、このようなライブラリーは、通常、異なるアミノ酸組成物を有する少なくとも5、10、20、50、100、1000、10、または10の構成要素を有する。一般に、単一の構成要素がライブラリーの全ポリペプチドの25または50%以上を占めることはない。標的に対する特異的親和性を有する抗体鎖ライブラリー中の抗体鎖の%値は、通常、抗体鎖をコードする対応する核酸の%値よりも低い。この差は、適当な1次アミノ酸配列を有して適当な折り畳みを支持するにもかかわらず、全てのポリペプチドが結合に適当な構造に折り畳まれるわけではないという事実に起因する。いくつかのライブラリーでは、抗体鎖の少なくとも25、50、75、90、95、99、または99.9%が標的分子に対する特異的親和性を有する。また、多鎖抗体のライブラリーでは、各抗体(例えば、Fabまたはインタクトな抗体)がライブラリー構成要素であると考えられる。いくつかのライブラリーでは、少なくとも90、95、または99%の重鎖がIgGアイソタイプである。いくつかのライブラリーでは、標的に対する特異的親和性を有する重鎖は、鎖に対して、少なくとも1、2、3、4、5、7、10、12、15、または20の体細胞アミノ酸変異の中央値を有する。いくつかのライブラリーでは、標的に対する特異的親和性を有する軽鎖は、鎖に対して、少なくとも1、2、3、5、10、12、15、または20の体細胞アミノ酸変異の中央値を有する。異なる抗体鎖は、標的に対する優れた結合特異性および親和性の点で、互いに異なる。このようなライブラリーのいくつかは、同一抗原上の異なるエピトープに結合する構成要素を含む。このようなライブラリーのいくつかは、互いに拮抗することなく、同一抗原に結合する少なくとも2つの構成要素を含む。
上記方法から生じるヒト抗体のポリクローナルライブラリーは、本ライブラリーの高親和性結合剤の高い%値によって、さらに本ライブラリーが天然の集団に存在する抗体の同様の多様性を通常示さない点で、ヒト抗体の天然の集団とは区別される。本ライブラリーの多様性の減少は、全てのヒト免疫グロブリン遺伝子を含まない原料物質を提供する非ヒトトランスジェニック動物が原因である。例えば、いくつかのポリクローナル抗体ライブラリーは、ラムダ軽鎖を有する抗体とは無関係である。本発明のいくつかのポリクローナル抗体ライブラリーは、10、20、30、または40より少ない数のV遺伝子にコードされる抗体重鎖を有する。本発明のいくつかのポリクローナル抗体ライブラリーは、10、20、30、または40より少ない数のV遺伝子にコードされる抗体軽鎖を有する。
先述した発明は、明確に理解されるために詳述されているが、添付の特許請求の範囲内で特定の変更が実施されてもよいことは明らかである。本出願で引用される全ての刊行物および特許文献は、それぞれがそのように個別に明記されていない限り、同程度で、全ての目的のために、その全文が参考として本明細書に援用される。以下の実施例は、例証の目的で提供するものであり、本発明の範囲はこれに限定されるものではない。
(実施例1)
(発現ベクターの構築)
本明細書に記載したように、ポリヌクレオチドに作動可能に連結するlacおよびラムノースプロモーター等のプロモーターにしたがって発現するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを有する発現ベクターを構築した。
(AL1.3発現ベクターの調製)
米国特許第6,057,098号の実施例17記載のものと同様の発現ベクターを、κ鎖上に異なるシグナル配列を有するFabをクローニングするために開発した。このベクターは修飾pBR322プラスミドであり、このベクターをAL1.3と命名した。これは、lacプロモーター(Plac)、アンピシリン耐性遺伝子、NsiI制限酵素切断部位、HindIII制限酵素切断部位、および部分的なテトラサイクリン耐性遺伝子を含む。
lacプロモーターの3’および5’末端にある配列に対応させて、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)プライマーBおよびC(表2)をそれぞれ作製した。プライマーBおよびCは、Placに特異的な配列を有するとともに、それらの5’末端に、それぞれ、HindIII制限酵素切断部位の3’末端およびEcoRI制限酵素切断部位の5’末端に相補的な約20ヌクレオチドのpBRベクター配列を含む。さらに、プライマーBは、抗体カセットの導入を調製する際に最終コンストラクトを線状化するために、lacプロモーターの3’末端に、NsiI制限酵素切断部位を配置する。PCR反応を5回実行し、それぞれ、プライマーB 100pmol、プライマーC 100pmol、エクスパンドポリメラーゼ(Roche Applied Science、Indianapolis、Ind.)2単位、2mMデオキシヌクレオチド三リン酸(dNTP、Roche Applied Science社、Indianapolis、Ind.)10μl、10倍Expand反応緩衝液10μl、BS51ウラシル鋳型(実施例8)50ng、さらに水を併せて100μlにしたものを含む。反応は、パーキンエルマー(Perkin−Elmer)サーマルサイクラー(Model 9600、Perkin−Elmer、Emoryville、Calif.)で行い、以下の温度プロファイルを用いた。すなわち、変性(1分、94℃)を1サイクル;変性(15秒、94℃)、アニーリング(30秒、55℃)、および伸長(60秒、72℃)を10サイクル;変性(15秒、94℃)、アニーリング(30秒、55℃)、および伸長(80秒、追加サイクルごとに20秒、72℃)を20サイクル;伸長(6分、72℃);浸漬(4℃、時間上限なし)である。PlacPCR産物をアガロースゲル電気泳動により検証した。PCR産物をアガロースゲル電気泳動により分画して、完全長産物をゲルから切り出し、QiaQuickカラム(Qiagen社、Valencia、Calif.)で製造元の推奨にしたがって精製した。インサートの濃度をA260によって測定した後、精製し、水に再懸濁した。
米国特許第6,057,098号の実施例17記載のものと同様の発現ベクターを改変して、EcoRIおよびHindIII(Roche Applied Science、Indianapolis、IND.)で、製造元の推奨に従いベクターを消化することによって、Placインサートを得た。これらの酵素で発現ベクターを消化することによって、pBR322ベクターを消化して得られるものと同一のpBR322主鎖を生産する。消化したベクターをアガロースゲル電気泳動にかけ、pBR322主鎖に対応する産物をゲルから切り出し、QiaQuickカラム(Qiagen社、Valencia、Calif.)を用いて製造元の推奨にしたがって精製した。インサートの濃度をA260によって測定した。
10倍緩衝液A(Roche Applied Science、Indianapolis、IND.)1.0μlをDNA1.0μgに添加し、水と併せて全量9μlにすることによって、T4エキソヌクレアーゼ消化用に、Placインサートと、EcoRI/HindIIIで線状化したpBR322ベクターとを調製した。T4DNAポリメラーゼ(Roche Applied Science、Indianapolis、IND.)1μl(1U/μl)を用いて、30℃、4分間、試料を消化した。10分間、70℃でインキュベートして、T4DNAポリメラーゼを熱不活性化した。試料を冷却し、短時間撹拌した。異なる管に、消化したPlacインサート12ng、消化したベクター100ng、および10倍アニーリング緩衝液(Tris(pH7.0)200mM、MgCl20mM、およびNaCl500mM)1.0μlを添加し、水と併せて10μl量にした。2分間、70℃まで、試料を加熱し、その後20分間以上、30℃まで冷却して、インサートおよびベクターの相補的5’一本鎖オーバーハングを、エキソヌクレアーゼ消化によって互いにアニーリングさせた。10倍合成緩衝液(各dNTPを5mM、ATPを10mM、Tris(pH7.4)を100mM、MgClを50mM、DTTを20mM)1.3μl、T4DNAリガーゼ(Roche Applied Science、Indianapolis、IND.)1.3μl、希釈T7DNA(1U/μl)ポリメラーゼ(New England BioLabs、Beverly、Mass.)1.3μlを添加し、30分間、37℃でインキュベートすることによって、インサートおよびベクターを互いにライゲートさせた。
ライゲーション反応物は、DNA1部に対して蒸留水3部の割合で希釈し、米国特許第6,057,098号の実施例8に記載のように、1μlを電気穿孔法でエレクトロコンピテント大腸菌(E.coli)DH10B(Invitrogen、Carlsbad、Calif.)40μlに導入した。形質転換した試料を、2倍YTで1mlに即座に希釈し、アンピシリン(100μg/ml)(Fisher、Pittsburg、Pa.)を添加したLB寒天プレートに、様々な希釈度で播種し、37℃で一晩培養した。
AL1.1、AL1.2、AL1.3、およびAL1.4と命名した4つのコロニーを選別し、2倍YT(100μg/mlアンピシリン)50mlで、37℃、一晩培養した。翌日、−80℃で長期保存するためにグリセロール凍結保存菌を作製し、キアゲンハイ‐スピードプラスミドミディキット(Qiang High−Speed Plasmid Midi Kit)(Qiagen、Valencia、Calif.)を用いて一晩培養した菌の残りからプラスミドを精製した。ベクターをNsiIおよびHindIII(Roche Applied Science社、Indianapolis、Ind.)で切断して、アガロースゲル電気泳動によって解析した。4つのベクター全てが両方の制限酵素切断部位を含んでいることが判明した。
抑制抗体CD.TXA.22.2を用いて、抗体の発現に関して、AL1.1、AL1.2、AL1.3、およびAL1.4ベクターを試験した。このモノクローナル抗体は、米国特許第6,057,098号の実施例15に記載される選択プロセスから得た。製造元の推奨にしたがってキアゲンハイ‐スピードプラスミドミディキット(Qiang High−Speed Plasmid Midi Kit)を用いて、一晩培養した菌からCD.TXA.22.2プラスミドを調製した。プライマーAおよびOとともに、鋳型としてCD.TXA.22.2プラスミド5ngを用いて、米国特許第6,057,098号の実施例18に記載するように、PCRによって抗体カセット領域を増幅した(表2)。プライマーは、CD.TXA.22.2に特異的な配列を有するとともに、その5’末端に、Placの3’末端と、HindIII部位のすぐ下流にある配列とに対応する約20ヌクレオチドのベクター配列を含む。さらに、プライマーOは、6つのヒスチジンコドンと、TAA終止コドンと、CDTXA.22.2コード配列およびベクター配列間にある19ヌクレオチドのテトラサイクリンプロモーターとを有する(実施例17、米国特許第6,057,098号)。前述のように、PCR産物をアガロース電気泳動にかけ、完全長産物をゲルから切り出し、精製した。T4エキソヌクレアーゼ消化用にCDTXA.22.2インサートと、NsiI−HindIIIで消化したベクターとを、各1.0μgずつ異なる管にアリコートし、10倍制限エンドヌクレアーゼ緩衝液Aを1.0μlを添加して、水と併せて9.0μl量にすることによって調製した。T4DNAポリメラーゼを1μ1(lU/μl)用いて、30℃で、4分間試料を消化した。10分間、70℃でインキュベートすることによって、T4DNAポリメラーゼを熱不活性化した。試料を冷却し、短時間撹拌して、消化したインサート(100ng)およびベクター(100ng)を、10倍アニーリング緩衝液1μlと混和して、水を加えて10μl量にした。上述のように、試料をアニーリングおよびライゲートして、電気穿孔法でエレクトロコンピテント細胞に導入した。形質転換した細胞を、2倍YT培養液で1.0mlに希釈して、1μl、10μl、および100μlを、テトラサイクリン(10μg/ml)(Fisher社,Pittsburg,Pa.)を添加したLB寒天プレート上に播種し、37℃で一晩培養した。各AL1ベクターサブタイプから3つの異なる候補を取り、振とうフラスコで一晩培養した。翌日、−80℃で長期保存するためにグリセロール凍結保存菌を作製し、このクローンをWC2と名づけた。これらWC2クローンを培養して、CD.TXA.22.2抗体を、イソプロピル−B−D−チオガラクトシド(IPTG)(Roche Applied Science、Indianapolis,Ind.)を1mMに添加して発現を誘導したもの以外は、実施例3に記載するように、ニッケルキレートクロマトグラフィーによって精製した。これらの発現結果に基づいて、AL1.3ベクターを今後のクローニング実験用に選択した。
(AL2.2発現ベクターの構築)
シグナル配列ありで、またはシグナル配列無しで、タンパク質をクローニングするため、米国特許第6,057,098号の実施例17に記載のものと類似した別の発現ベクターを開発した。ベクターは、AL2.2と命名された修飾pBR322プラスミドであり、ラムノースプロモーター(PrhaSB)を含んだrhaRおよびrhaS遺伝子と、アンピシリン耐性遺伝子と、NsiIおよびHindIII制限部位と、部分的なテトラサイクリン耐性遺伝子とを有する。
PrhaSBを含んだrhaRおよびrhaS調節遺伝子からなるターゲットを、大腸菌(E.coli)XL1−Blue株(Stratagene, San Diego,CA)から、プライマーDおよびE(表2)を用いて、高適合性PCRシステム、エクスパンド(Roche,Applied Science,Indianapolis,IN)を使用したPCRにより増幅した。プライマー DおよびEは、rhaRおよびPrhaSB(Genbank受託番号AE000465)に特有な配列を有すことに加えて、それらの5’末端に各々、約20ヌクレオチドのpBR322ベクター配列のEcoRI制限部位5’側に相補的な配列、およびHindIII 制限部位3’側に相補的な配列を含む。この相補的配列により、rhaインサート(rhaR rhaS PrhaSB)をpBR322種鎖にクローニングすることが容易になる。
ラムノースPCRの鋳型は、一晩培養したXL1の100μlを遠心し、そのペレットを1mlの蒸留水に再懸濁することによって調製した。細胞懸濁液を蒸留水で3回洗った。最終ペレットを100μlの蒸留水に再懸濁し、95℃で5分間インキュベートした。100μlPCR反応を4回実行した。各PCR反応は、プライマーD 100μl、プライマーE 100pmol、エクスパンドポリメラーゼ2単位、2mM dNTP 10μg、10倍エクスパンド反応緩衝液10μl、および鋳型として1、2、または4μlの熱変成させたE.coliストックを含み、水を加えて100μlにした。PCR反応は、パーキンエルマーのサーマルサイクラー(Moldel9600)内で、以下の温度プロファイルを用いて行った。すなわち、94℃での変性(1分)1サイクル;変性(15秒、94℃)、アニーリング(30秒、55℃)、および伸長(120秒、72℃)を10サイクル;変性(15秒、94℃)、アニーリング(30秒、55℃)、および伸長(140秒、プラス各追加のサイクルあたり20秒、72℃)を20サイクル;伸長(6分、72℃);ソーク(4℃、時間上限なし)。rhaPCR産物を、アガロースゲル電気泳動によって確認した。それらの反応液を合わせ、製造元の推奨にしたがってキアクイックカラムを用いて精製した。インサートの濃度は、A260によって決定した。
rhaインサート、および、EcoRI/HindIIIで線状化されたpBRベクター(上記AL1.3発現ベクターの調製を参照)は、DNA1.0μgに10x緩衝液A1.0μlを加え、水で最終容積を9μlにすることでT4エキソヌクレアーゼ消化に準備した。T4DNAポリメラーゼ1μl(1U/μl)を用い、それらの試料を、30℃で、4分間消化した。T4DNAポリメラーゼは、70℃10分間インキュベートし、熱不活性化した。試料を冷やし、短時間遠心した。別の試験管に、消化されたrhaインサート100ng、消化されたベクター100ng、および10倍アニーリング緩衝液1.0μlを加え、水で容積を10μlにした。試料をアニーリングし、かつ結合させ、上述のようにエレクトロコンピテントセルに電気穿孔した。形質転換した細胞を、2倍YT培養液で1.0mlに希釈し、アンピシリン(100μg/ml)を含むLB寒天プレートに、様々な希釈率で播種し、37℃で一晩培養した。
10クローンを取り、30μlの2倍YTに懸濁した。これらのクローンに正しいインサートがあるか、懸濁した細菌1μlを鋳型とし、プライマーDおよびE(表2)を用いたPCR増幅によって、テストした。PCR反応のアガロースゲル電気泳動により、10のクローンのうちの9つにrhaインサートがあることが明らかになった。陽性のクローンのうちの4つを取り、100 μg/mlのアンピシリンを含む50mlのLB培養液中で、37℃で、一晩培養した。翌日、−80℃で長期保存するためにグリセロール凍結保存菌を作製し、製造元の推奨にしたがって、キアゲンハイ‐スピードプラスミドミディキット(Qiang High−Speed Plasmid Midi Kit)(Qiagen、Valencia、Calif.)を用いて一晩培養した菌の残りからプラスミドを精製した。プラスミド1μgを、制限酵素NsiIおよびHindIIIで処理した。消化産物のアガロースゲル電気泳動により、コンストラクトのうちの3つが、両方の制限酵素切断部位を含んでいることが判明した。これらの新規ベクター、すなわちAL2.1、AL2.2 、およびAL2.3は、PrhaSBプロモーターと、rhaRおよびrhaS遺伝子と、アンピシリン耐性遺伝子と、テトラサイクリン耐性遺伝子の一部と、NsiIおよびHindIII制限部位とを有した。これらのベクターに挿入されたrha インサート配列の確認は、マックコーネルリサーチ(MacConnell Research)(San Diego,CA)において、セクアサーム(Sequatherm)シークエンシングキット(Epicenter Technologies,Madison,WI)、マディソン、ウィスコンシン)を用いたジデオキ鎖ターミネーション法と、オリゴヌクレオチドプライマーJ、K、およびN(表2)を用いたLI−COR 4000L自動シークエンサー(LI−COR、リンカーン、ネブラスカ)とによって、おこなった。これらの配列結果に基づき、発現ベクターとして使用するのにAL2.2を選択した。
対照抗体CDTXA.22.2をAL2.2のクローニングを、上述のAL1.3ベクターに用いた方法と、PCR増幅部分でプライマーF(表2)をプライマーAの代わりとして用いる点を除いて、同様の方法でおこなった。CDTXA.22.2のクローンであるWC23を培養し、ラムノースで誘導した後、実施例3に記載のニッケルキレートクロマトグラフィーにより、CDTXA.22.2抗体をうまく精製することができた。
AL2.2ベクター10μgを、NsiIおよびHindIIIで制限し、アガロースゲル電気泳動で分画化した後、完全長産物をゲルから切り出し、製造元の推奨にしたがって、キアクイック(QiaQuick)カラムを用いて精製した。ベクターの濃度を、A260によって測定した。上述の通り、T4消化によってインサートを受けるためにベクターの調製をおこなった。
(pBRSac1/HindIII(pBRsacH3)発現ベクター)
pBRSacH3ベクターを、AL2.2から誘導した。該ベクターは、NsiI部位がヒトセルロプラシミンシグナル配列と置き換えられる点を除き、あらゆる点でAL2.2と同じである。セルロプラシミンシグナル配列の3’末端最後の2塩基を修飾してSacI制限部位を生成した。SacIおよびHindIII部位の存在により、インサート導入の準備としてベクターを線状化することが可能となる。このコンストラクトは、その5’末端にヒトセルロプラシミンシグナル配列を使う抗体および抗原をクローニングするために作られた。シグナル配列をベクターに置くことにより、サブクローニング用のPCRプライマーをかなり小さくできる。したがって、PCR 反応がより効率的になる。必要とされる反応数がより少なくなるので、必要とされる時間および資源の両方が削減される。
PCRプライマーであるプライマーAAおよびU(表2)の各々を、r−メタンフェタミン(rMET10)κ鎖の5’および3’末端のコード配列に一致するように作製した。このモノクローナル抗体は、実施例4に記載の選択プロセスで得られた。製造元の推奨にしたがって、キアゲンハイ−スピードプラスミドミディキット(Qiagen HiSpeed Plasmid Purification Midi Kit)を使用し、rMET10プラスミドを一晩培養してから調製した。κ鎖コード配列に加えて、5’プライマーはその5’末端に、AL2.2ベクターのNsiI部位上流領域に一致する約20ヌクレオチドのベクター配列を含み、ヒトセルロプラシミンシグナル配列をコードする配列がその後に続く。セルロプラシミンシグナル配列の最後のコドンを、最後から2番目のコドンと合わせてSacI制限部位を形成するように修飾した。3’プライマーはその5’末端に、3’からHindIII部位の約20ヌクレオチドのベクター配列を含み、κ鎖コード配列の3’末端と一致する配列がその後に続く。上述の通り、rMET10プラスミド5ngを鋳型として用い、PCR反応を行った。PCR産物を、アガロースゲル電気泳動によって確かめた。それらの反応を合わせ、製造元の推奨にしたがって、セルロプラシミンのSacIインサートをキアクイック(QiaQuick)カラムによって精製した。インサートの濃度は、A260によって測定した。
上述の通り、AL2.2ベクターをNsiIおよびHindIIIで消化して、セルロプラシミンのSacIインサート導入の準備をし、さらに、セルロプラシミン−SacIインサートと共に、上述の通り、T4消化およびアニーリングを行い、DH10Bに電気穿孔し、播種した。3コロニーを取り、100μg/mlのアンピシリンを含む2倍YT培養液50ml中で、37℃で、一晩培養した。翌日、−80℃における長期保存用にグリセロール凍結保存ストックを作り、製造元の推奨にしたがって、キアゲンハイ − スピードプラスミドミディキット(Qiang High−Speed Plasmid Midi Kit)を用い、一晩培養した菌の残りからプラスミドを精製した。それらのプラスミドを、製造元の推奨にしたがって、SacIおよびHindIII 制限酵素(Roche Applied Sciences,Indianapolis,IN)で消化した。消化産物のアガロースゲル電気泳動によって、アガロースゲル電気泳動によって、3つのコンストラクト全てが両方の制限酵素切断部位を含んでいることが判明した。これらの新規ベクター、すなわちpBRsacH3。1、pBRsacH3.2、pBRsacH3.3は、PrhaSB プロモーターと、rhaRおよびrhaS遺伝子と、ヒトセルロプラシミンシグナル配列と、アンピシリン耐性(βラクタマーゼ)遺伝子と、テトラサイクリン耐性遺伝子の一部と、SacIおよびHindIII制限部位とを有する。3つのベクターの配列は、プライマーN(表2)を用い、実施例1の記載のように、マックコーネルリサーチ(Macconnell Research)で確かめられた。
(実施例2)
(真核生物シグナル配列の選択)
真核生物シグナル配列を選択し、ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドと共に発現ベクターに組み込んだ。ポリペプチドには、本明細書に記載されているような、抗体重鎖ポリペプチドおよび抗体軽鎖ポリペプチドが含まれる。
計20の異なる真核生物シグナル配列(表1)を、コントロール抗体であるCDTXA.22.2(米国特許第6,057,098号の実施例15)上のペクチン酸塩リアーゼ(pelB)シグナル配列との置換に使用した。生じたクローンは、κ鎖の分泌を指示する真核生物シグナル配列と、重鎖の分泌を指示する原核細胞シグナル配列(アルカリホスファターゼ(alkP))とを有した。κ鎖と連結された真核生物シグナル配列の効率的な発現および分泌の分析、ならびに完全なプロセシングについてSDS−PAGE分析によって毒値ステイ分析され得るように、alkPシグナル配列を重鎖に使用した。
表1における20の真核生物シグナル配列と一致する5’プライマー全ては、ベクターAL1.3(実施例1)内のlacプロモーター3’末端に対応する約20ヌクレオチドを5’末端に有し、その後に成熟CDTXA.22.2κ鎖の5’末端に対応する最初の20ヌクレオチドと同じフレームにある各々の真核生物シグナル配列をコードする配列を従えている。これらのシグナル配列をコードするために選択されたコドンは、腸内細菌における高発現遺伝子で観察された優先的コドンの使用頻度(Genetics Computer Group,Inc.によるWisconsin Package)に一部基づいており、より少ない程度に、あらゆる副次的な構造(Humphreysら、Protein and Purification20、252−264(2000))の可能性を最小限にするように設計された。それは両者が発現レベルに影響を与える可能性があるからである。したがって、これらの配列に使われるコドンは、それら自然界の生物において使用されるコドンと幾分異なっていた。20の異なる真核生物シグナル配列に対応する20の抗体DNAカセットの増幅は、それぞれ、上述の5’プライマー群および前述の3’プライマーO(表2)を用い、5ngのCDTXA.22.2プラスミド(実施例1)を鋳型とし、米国特許第6,057,098号の実施例18に記載の通り、Expand DNAポリメラ−ゼを使用しておこなった。PCR産物をアガロースゲル電気泳動にかけ、実施例1に記載の通り、完全長インサートを切り出し、精製した。
κ鎖および重鎖上で、それぞれpelBおよびalkP分泌シグナルを使用する真核生物シグナル配列抗体カセットを、コントロールクローンWC2(実施例1)とともに、PrhaSBプロモーター下でより厳密に調節されているベクターAL2.2へ導入してSDS−PAGEゲル分析用抗体の発現に使用するクローンを生成するために修飾した。この修正を実現するため、米国特許第6,057,098号の実施例18記載の通り、Expand DNAポリメラ−ゼと、プライマーHおよびO(表2)とを用い、各々、熱変成させたWC2細胞ストック1μlと、精製した真核生物シグナル配列抗体カセット5ngとを鋳型として、WC2培養から抗体カセットを増幅し、また、真核生物シグナル配列抗体カセットを再増幅した。プライマーHは、PrhaSBの3’末端に対応するAL2.2ベクター配列を5’末端に有し、その後にlacプロモーターの3’末端に特異的な配列が続く。
実施例1の記載ように、抗体カセットおよびAL2.2ベクターを用いて、アニーリングおよび電気穿孔を行い、その後播種した。これらのクローンは、元のWC系の名前を保持し、AL2.2ベクターを示すために「A」を後につけた。WC2A−22Aクローンを増殖、誘導し、実施例3の記載のように、抗体を精製した。
(表1:真核生物シグナル配列)
プラスミドクローン/シグナル配列説明/受託番号
WC3/カルボキシペプチダーゼY(Saccharomyces cerevisiae)/M15482.1
WC4/KRE5タンパク質(Saccharomyces cerevisiae)/M3356.1
WC5/アポリポタンパク質C−1前駆体(ラット(hat))/APC1_RAT
WC6/アリールスルファターゼ前駆体(Chlamydomonas reinhardtii)/ARS_CHLRE
WC7/クララ細胞10kd分泌タンパク質前駆体(ヒト)/10KS_HUMAN
WC8/クロモグラニンA前駆体(ヒト)/CMGA_HUMAN
WC9/好中球ディフェンシン1,2,3前駆体(ヒト)/DEFN_HUMAN
WC10/β−ヘキソサミニダーゼa鎖前駆体(ヒト)/HEXA_HUMAN
WC11/スパーク(SPARC)前駆体(ヒト)/SPRC_HUMAN
WC12/腫瘍壊死因子前駆体2(ヒト)/TNR2_HUMAN
WC13/λ’CL(マウス)/Ref.A
WC14/κ6A4’CL(マウス)/Ref.B
WC15**/嚢子壁タンパク質1(Giardia lamblia)/U09330
WC16/κ鎖3−13’CL(マウス)/Ref.C
WC17/糖タンパク抗原BM86前駆体(ウシダニ)/BM86_BOOMI
WC18/炭酸脱水酵素2前駆体(Chlamydomonas rein.)/CAH2_CHLRE
WC19/セルロプラスミン前駆体(ヒト)/CERU_HUMAN
WC20/糖脂質アンカー型表面タンパク質前駆体(酵母)/GAS1_YEAST
WC21/インターロイキン6受容体前駆体(ラット)/IL6R_RAT
WC22/抑制酸性ホスファターゼ前駆体(酵母)/PPA5_YEAST
クローンは、rhaSBプロモーターの制御下で、AL2.2ベクターに存在する場合、名前の末尾に「A」を付加する。
** PCR増幅の結果、完全長インサートを成しえず、WC15をこの研究から除外した。
参考文献:
A)Bernardら、(1978)CELL 15、1133〜1144頁。
B)Margetら、(1988)GENE 74、335〜345頁。
C)Bedzykら、(1990)JBC 265、133〜138頁。
(表2:PCRおよび配列決定用プライマー配列(配列識別番号4〜42))
Figure 0004303596
Figure 0004303596
(実施例3)
(真核生物のシグナル配列の評価と選択)
本明細書に記載する通り、宿主細胞中での抗体重鎖または軽鎖ポリペプチドの発現を含めた、宿主細胞中のポリペプチド発現のための多種類のシグナル配列を評価し、選択した。誘導ラムノースプロモーター経由のバクテリア宿主細胞中を含め、培養宿主細胞中でポリペプチドを発現させた。試験には、ペプチド発現の評価(例、収率、量)とペプチドからのシグナル配列のプロセシング(例、切断)を含めた。例えば、検出可能なSDS−PAGE分析によるものを含む検出可能な発現、および例えばSDS−PAGE分析で証拠付けられるようなものを含むポリペプチドからのシグナル配列のプロセシングの証拠は、発現のための真核生物のシグナル配列を選択することを可能にした。好ましい真核生物のシグナル配列は、効率的な発現(例えば、検出可能な、ごく弱いものでなく好ましくは強い、SDS−PAGEによるポリペプチドバンド)および効果的なおよび/または完全なプロセシング(例えば、シグナル配列および/または発現されたポリペプチド鎖それぞれについてのプロセシングを示すポリペプチド鎖バンドの早い泳動、シグナル標識の完全なプロセシングを示す2つ以下の単一バンドの存在)をもたらすものである。発現および/またはプロセシングを検出するための多種類の方法が、本明細書に記述したSDS−PAGE法を含め、当業者に周知であり、また利用されている。
(CD.TXA.22.2抗体発現量による真核生物のシグナル配列の評価)
実施例2に記述した通り、異なるプラスミドすなわちWC2A〜WC22Aを含むクローンを20セット構築し、誘導性ラムノースプロモーターにより抗C.difficileトキシンA抗体(CDTXA.22.2)を発現させるのに用いた。全てのケースで、重鎖は原核生物のアルカリホスファターゼシグナル配列を用い人工的に作った。コントロールセットであるWC2Aでは、κ鎖は原核生物のpelBシグナル配列を用いて作り、一方残りの19においては、それを19の異なる原核生物シグナル配列を用いて作った。全てのケースで、抗体重鎖に対してまた、そのC末端にアフィニティ精製を可能にするためにヘキサヒスチジンタグを設けた。これらのプラスミドに対して、培養中の選択を可能にするためテトラサイクリンおよびアンピシリン耐性遺伝子を持たせた。これらのプラスミドをE.coli株DH10B rha株(Invitrogen,Carlsbad,CA)に電気穿孔した。それぞれのセットからの3つのクローンについて、CDTXA.22.2抗体の発現に関し評価した。
振蕩フラスコに−70℃の細胞バンクからの細胞を植え付け、イノーバ(Innova)4330冷蔵培養シェーカー(New Brunswick Scientific,Edison,NJ)を用い一晩37℃で培養した。細胞を、L−ロイシン0.3g/L、L−イソロイシン0.3g/L、カゼイン酵素加水酸化物12g/L(ICN Biomedicals,Costa Mesa,CA)、グリセロール12.5g/Lを補充した半合成培地(Pack,P.ら、1993,Bio/Technology 11:1271〜1277)中で培養した。培地には選択を維持するために10μg/mLのテトラサイクリンを補充した。この接種材料を500mL振蕩フラスコに植え付け、それをまた37℃で培養した。対数増殖期には、望ましい濃度でL−ラムノース(Sigma,St.Louis,MO)を加え、タンパク質発現を誘導し、続いて温度を23℃に制御した。バッチ処理終了後は、培養物をpH7に調整し、10mMまでのイミダゾールを補充した。その後、培養物をM−110Y マイクロフリューダイザー(Microfluidics,Newton,MA)にて17,000psiでホモジナイズした。
キレートセファローズFF樹脂(Amersham Pharmacia Biotech,Piscataway,NJ)を0.1M NiClで満たし、20mMホウ酸塩、150mM NaCl、10mMイミダゾール、0.01%NaN、pH8.0緩衝液で平衡化した。500mLの培養ホモジネートをそれぞれ5mLの樹脂と共に、培養器シェーカーにて室温で培養した。このホモジネート/樹脂混合物を次いで漏斗の付いた使い捨てクロマトグラフィーカラムに注入した。樹脂はそのままカラムの中に定着させ、ホモジネートを真空ポンプで吸引した。再平衡化後、カラムを20mMホウ酸塩、150mM NaCl、200mMイミダゾール、0.01%NaN、pH8.0緩衝液で溶出した。次に、使い捨てクロマトグラフィーカラムそれぞれに2mLのプロテインGセファローズFF樹脂(Amersham Pharmacia Biotech,Piscataway,NJ)を詰めた。カラムを20mMホウ酸塩、150mM NaCl、0.01%NaN、pH8.0緩衝液で平衡化した。最初の精製ステップからの溶出物をプロテインGのカラムに装填した。再平衡化後、カラムを0.1Mグリシン、0.01%NaN、pH3.0緩衝液で溶出した。次いで、プロテインG溶出物にただちに150mMまでのNaClを補充し、1MトリスpH10.2緩衝液でpH8.0に中和した。精製された抗体は4℃で貯蔵した。
精製した抗体について、12% トリス−グリシンゲル(Invitrogen、Carlsbad,CA)を使い、SDS−PAGE分析で収率とバンドパターンを評価した。候補クローン、すなわち真核生物のシグナル配列に対応するもの、からは除外するものとして、次の基準を採用した。
(a) ゲル上のバンドの不在、抗体発現が検出できないことを示す;
(b) ゲル上の極めて薄いバンド、受け入れられないほどに弱い抗体発現を示す;
(c) κ鎖バンドの遅い泳動、シグナル配列のプロセシングのないことを示す;
(d) 2つ以上のκ鎖バンドの存在、シグナル配列の不完全なプロセシングを示す。
これらにより、次の3つの真核生物のシグナル配列だけが選択基準に合致することになった。
ヒトセルロプラスミン前駆体
ヒト好中球ディフェンシン1,2,3前駆体
Chlamydomonas reinhardtiiアリールスルファターゼ前駆体
これら3つの真核生物シグナル配列の完全なプロセシングを、Perkin Elmer Applied Biosystems Model 494 Prociseタンパク質/ペプチドシーケンサー(PE Applied Biosystems,Foster City,CA))を使い、κ鎖上のN末端アミノ酸の配列を解読することで確かめた。これら3つのシグナル配列のポリヌクレオチド配列は表3に示す通りである。
(表3 選択基準に合致する真核生物のシグナル配列クローンの配列)
WC6: アリールスルファターゼ前駆体(Chlamydomonas reinhardtii)シグナル配列 5’−(ATGGGTGCTCTGGCAGTTTTCGCTGTAGCGTGTCTGGCAGCCGTTGCGTCTGTAGCTCACGCA)(配列番号46)
WC9:好中球ディフェンシン1,2,3(ヒト)シグナル配列:5’−(ATGCGTACTCTGGCTATCCTTGCAGCTATTCTGCTTGTTGCACTGCAGGCTCAAGCG)(配列番号45)
WC19:セルロプラスミン前駆体(ヒト)シグナル配列:5’−(ATGAAAATCCTGATTCTCGGTATCTTCCTGTTTCTCTGTTCTACTCCAGCTTGGGCA)(配列番号43)
(実施例4)
(モノクローナル抗体の調製)
本明細書に記載したrMET1およびrMET.10抗体を含め、モノクローナル抗体を選択し、調製した。
(rMET1およびrMET10モノクローナル抗体の調製)
(P−(3−メルカプトプロピル)アミノ−d−メタンフェタミンの合成)
P−(3−メルカプトプロピル)アミノ−d−メタンフェタミン(還元メタンフェタミン誘導体)は米国特許第5,470,997号の実施例11に記載された通りに合成することができる。
(還元メタンフェタミン誘導体の結合体の調製)
還元メタンフェタミン誘導体とキーホールリンペットヘモシアン、ウシ血清アルブミン、およびアルカリホスファターゼとの結合体を次のように調製した。
キーホールリンペットヘモシアン(KLH,Calbiochem,San Diego,CA)を、スルフォスクシニミジル4−(N−マレイミドメチル)シクロヘキサン−1−カルボキシレート(SULFO−SMCC)(Pierce Chemical Co.,Rockford,IL)と、SULFO−SMCCを加えた上で1N水酸化カリウムによりpHを7から7.5に保ちつつ、室温で1時間以上撹拌して反応させた。反応しなかったSULFO−SMCCから、0.1Mリン酸カリウム、0.02Mカリウムホウ酸塩、および0.15M塩化ナトリウム、pH7.0でのゲル濾過クロマトグラフィーを用い、タンパク質を分離した。還元メタンフェタミン誘導体をKLH−マレイミドに、推定されるマレイミド存在量を越える十分なモル濃度で加え、溶液を4℃で4時間かき混ぜ、次いで、免疫付与に先立って、3容量の1リットル発熱物質を含まないリン酸緩衝生理的食塩水pH7.4で透析した。
アルカリホスファターゼ(AP,Calzyme Laboratories,San Luis Obispo,CA)を、最低100容積のカラム緩衝液(50mMリン酸カリウム、10mMカリウムホウ酸塩、0.15M塩化ナトリウム、1mM MgSO、pH7)を反対液とする透析に、2〜8℃で最低4時間かけた。APを使用する前に、緩衝液を最低2回取り替えた。APを透析から外し、室温に戻した時、その濃度を、溶液1mg/mLにつき0.77の吸光度を用い、280nmでの吸光度で測定した。APをカラム緩衝液で5mg/mLに薄めた。APとスクシニミジル4−(N−マレイミドメチル)シクロヘキサン−1−カルボキシレート(SMCC)(Pierce Chemical Co.,Rockford,IL)の反応を、SMCCとAPの比率を20:1にして行った。SMCCを20mg/mLのアセトニトリルに溶かし、ボルテックスしかつ素早くかき混ぜながらAPに加えた。溶液を室温で90分間放置した後、反応しなかったSMCCと低分子量の反応産物を、ゲル濾過クロマトグラフィー(G50 Fine,Pharmacia Biotech社,Piscataway,NJ)を使って、カラム緩衝液で平衡にしたカラムの中でAPから分離した。還元メタンフェタミン誘導体をAP−SMCCに、推定されるマレイミドの存在量を越える十分なモル濃度で加え、溶液を室温で最低1時間培養し、次いで3容量の20mMカリウムホウ酸塩、0.15M塩化ナトリウム、1mM MgSO、pH8.0を反対液とし透析した。メタンフェタミン−APを米国特許第6,057,098号の実施例9に示されるようにビオチニル化した。
BSAを、米国特許第6,057,098号の実施例9に示されるように、ビオチニル化した。ビオチニル化BSAをSMCCと、SMCCのアセトニトリル溶液をBSA対SMCCのモル比率1:10でBSAに加え、さらにその溶液のpHを1N水酸化カリウムで7から7.5の間に保ちつつ1時間室温でかき混ぜることで、反応させた。反応しなかった物質から、0.1Mリン酸カリウム、0.02Mカリウムホウ酸塩、および0.15M塩化ナトリウム、pH7.0でのゲル濾過クロマトグラフィーにより、タンパク質を分離した。還元メタンフェタミンをBSA−SMCCに、推定されるマレイミドの存在量を越える十分なモル濃度で加え、溶液を室温で最低1時間攪拌した。反応しなかった物質は、大規模な透析により、0.1Mリン酸カリウム、0.02Mカリウムホウ酸塩、0.15M塩化ナトリウム、pH7.0の中に取り除いた。
(BSA−SMCCの調製)
ウシ血清アルブミン(BSA,20mg/ml)とSMCCとの反応を、SMCCのアセトニトリル溶液をBSA対SMCCのモル比率1:50でBSAに加え、さらにその溶液のpHを1N水酸化カリウムで7から7.5の間に保ちつつ1時間室温でかき混ぜることで、おこなった。反応しなかった物質から、0.1Mリン酸カリウム、0.02Mカリウムホウ酸塩、および0.15M塩化ナトリウム、pH7.0でのゲル濾過クロマトグラフィーにより、タンパク質を分離した。β−メルカプトエタノール(Fisher Scientific,Pittsuburgh,PA)をBSA−SMCCに、推定されるマレイミドの存在量を越える十分なモル濃度で加え、溶液を室温で最低1時間攪拌した。遊離メルカプトエタノールは、大規模な透析により、0.1Mリン酸カリウム、0.02Mカリウムホウ酸塩、0.15M塩化ナトリウム、pH7.0の中に取り除いた。
(ファージ提示ライブラリーからのrMet1の選択)
米国特許第6,057,098号の実施例1〜4および7に記載の通り、BS45ウラシル鋳型を用い、還元メタンフェタミンKLHにより免疫されたマウスの脾臓から精製されたRNAを用い、ファージ提示ライブラリーを作製した。還元メタンフェタミンAPビオチン結合体に結合した抗体ファージを、米国特許第6,057,098号の実施例15に記載の通り、選択した。還元メタンフェタミンAPビオチンよりはるかに大量のBSA−SMCCを抗体ファージに加え、何ラウンドかのパンニング法により、SMCCリンカーに特異的な抗体を取り除いた。パンニング法の5回目のラウンドの後、抗体ファージを、還元メタンフェタミンAPビオチン、およびそれらの薬剤と交差反応するメタンフェタミン抗体を取り除くための何種類かの過剰な薬剤と共に、インキュベートした。加えられた交差反応薬剤は、+エフェドリン、−エフェドリン、d−擬エフェドリン、ラニチジン、プロカインアミド、フェンメトラジン、およびトリメトベンズアミドであった。これらの交差反応物質の存在下で、2ラウンドの選択を行った。アビジン乳濁液と結合したファージのアリコートを、これらの交差反応物質の存在下で、100mmLB平板に播種し、米国特許第6,057,098号の実施例15に記載の通り、プラークをニトロセルロースフィルターでオーバーレイした。このフィルターは、米国特許第6,057,098号の実施例15に記載の通り、AP−還元メタンフェタミン結合体を用いて開発した。ポジティブなプラークは、米国特許第6,057,098号の実施例18に記載の通り、pBRncoH3発現プラスミド中にサブクローニングした。これらのクローンのうち1つをrMET1と名付けた。
抗体rMET10は、rMet1と同じ抗体配列である。しかし、κ鎖の3’末端の10ヌクレオチドが欠失していた。rMet1の凍結ストック細胞を鋳型として用い(実施例1参照)、Expand DNAポリメラーゼを使ってPCR反応を2回行った(米国特許第6,057,098号の実施例18)。第1の反応は、オリゴヌクレオチドKKおよびQ(表2)を用いて行った。第2の反応は、オリゴヌクレオチドPおよびO(表2)を用いて行った。米国特許第6,057,098号の実施例18に記載の通り、両方のPCR産生物を精製し、T4 DNAポリメラーゼで消化し、pBRncoH3にサブクローニングした。rMet1およびrMet10クローンについて、MacConnell Research(San Diego,CA)で、Sequathermシーケンシングキット(Epicenter Technologies,Madison,WI)とLI−COR 4000L自動シーケンサー(LI−COR,Lincoln.NE)とを用いたジデオキシ鎖終止法により配列を決定した。κ鎖の5’末端、および重鎖の3’末端にそれぞれ結び付くオリゴヌクレオチドプライマーJJおよびN(表2)を用いた。
(実施例5)
(発現ベクターへのクローニング)
本明細書中に記載されているrMET10モノクローナル抗体をコードするポリヌクレオチドを含む、ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを発現ベクターにクローニングした。
(ヒトセルロプラスミンシグナル配列(配列番号1)をκ鎖および重鎖の両方に用いたAL2.2ベクターへのr−メタンフェタミン10(rMET10)抗体のクローニング)
モノクローナル抗体rMET10は、実施例4に記載の選択プロセスとクローニングプロセスによって得た。元の構成では、κ鎖および重鎖の分泌を指示するために、pelBシグナル配列およびアルカリホスファターゼシグナル配列をそれぞれ用いた。これらのシグナル配列をヒトセルロプラスミンシグナル配列に変換するため、κ鎖および重鎖を別々に増幅し、その後、サブクローニングプロセスの際にκ鎖−重鎖カセットに再構成した。κ鎖は、プライマーSとプライマーG(表2)とを用いて増幅した。プライマーSは、rMET10に特異的な配列を有することに加えて、PrhaSBの3’末端に対応する約20ヌクレオチドのAL2.2ベクター配列をその5’末端に含み、それに続き、κ鎖と同じフレームにあるヒトセルロプラスミンシグナル配列をコードする配列を含む。プライマーGは、ファージ提示ベクター内のκ鎖の終止コドンの下流にあり、かつ重鎖のリボソーム結合部位の上流にある領域に結合する。重鎖は、プライマーTとプライマーR(表2)とを用いて増幅した。プライマーTは、rMET10に特異的な配列を有することに加えて、プライマーGに相補的な約20ヌクレオチドをその5’末端に含み、それに続き、重鎖と同じフレームにあるヒトセルロプラスミンシグナル配列をコードする配列を含む。
組み換えの確率を最小にするため、重鎖のセルロプラスミンシグナル配列と、κ鎖のセルロプラスミンシグナル配列(表4)について用いたヌクレオチド配列がE.coliのコドン使用頻度を考慮に入れながらも、実際に用いられたコドンができる限り異なるものとなるようにした。5ngのrMET10プラスミドを鋳型として用い、κ鎖および重鎖を別々のPCR反応で増幅し、精製の後、米国特許第6,054,098号、実施例18の記載と同様に、T4消化を行い、クローニングの準備とした。rmet10プラスミドは、製造元の推奨にしたがって、rMET10クローン(実施例4)を一晩培養したものからQiagen High−Speed Plasmid Midi Kitを用いて調製した。T4消化の後、試料を冷却し、短時間遠心した。κ鎖および重鎖の消化済みインサート各50ngを、新しい微量遠心チューブ中の消化済みAL2.2ベクター100ngに加えた。1.0μlの10×アニーリング緩衝液を添加した後、水で容量を10μlにし、インサートとベクターとをアニーリングさせるため、混合液を2分間、70℃に加熱し、さらに20分以上の時間をかけて室温まで冷却した。アニーリングしたDNAを蒸留水で1対3に希釈し、その1μlを40μlのエレクトロコンピテントE.coli株DH10Bに電気穿孔し(米国特許第6,057,098号の実施例8)、実施例12の記載同様、播種した。コロニーをとり、50mlの2倍YT(テトラサイクリン、20μg/ml)中で37℃にて、一晩培養した。翌日、−80℃における長期保存のため、クローンrMET.10.LS.1についてグリセロール凍結保存ストックを調製し、プラスミドは、一晩培養した残りから、Qiagen High−Speed Plasmid Midi Kitを用い、製造元の推奨にしたがって精製した。配列は、実施例1の記載同様、Macconnell Researchで、プライマーKおよびプライマーN(表2)を用いて確認した。クローンrMET10.LS.1を発現し、実施例6の記載同様、ニッケルキレートクロマトグラフィーで首尾良く精製した。
Figure 0004303596
(実施例6)
(発現の用量試験)
本明細書中に記載されているrMET10抗体を含む、ポリペプチド発現の用量試験を行った。
(2種のE.coli株における、rMET10抗体発現のL−ラムノース用量試験)
rMET10抗体の発現用プラスミドは、実施例5の記載と同様に構築した。このコンストラクト中のκ鎖および重鎖は、ともに、ヒトセルロプラスミンシグナル配列をもつように加工した。このプラスミドをE.coli DH10B rha株に電気穿孔することで、クローンrMET10.LS.1を生成し、10μg/mlのテトラサイクリン選択下で培養した。このプラスミドをまた、別のE.coli ECL339 rha株(ATCC)に電気穿孔することで、クローンrMET10.ECL.20を生成した。宿主株がゲノムにテトラサイクリン耐性遺伝子をもつため、100μg/mlのアンピシリン選択下でこのクローンを培養した。
これら2つのクローンのフラスコ振盪培養500mlを複数個複製し、異なった濃度のL−ラムノースによって誘導した。ECL339 rha細胞を誘導するのに、比較的小量のL−ラムノースが必要であったが、それはこの糖がこの細胞株によって代謝されていないためである。抗体は、実施例3に記載された手順にしたがって、精製された。抗体の濃度は、UV−1201分光光度計(Shimadzu,Columbia,MD)で280nmにおける吸光度を測定し、減衰係数1.6(mL)/(mgcm)を用いることによって決定した。抗体活性は、機能的(functional)ELISAアッセイによって評価した。ビオチン化された標的抗原(実施例4)を、96穴Neutravidin(登録商標)プレート(Pierce Endogen,Rockford,IL)にコーティングした。試料抗体を捕捉し、ヤギ抗(マウスκ鎖)−アルカリホスファターゼ(Southern Biotechnology Associates,Birmingham,AL)で標識した。最後に、ELISA増幅試薬(Invitrogen,Carlsbad,CA)を用いて、比色分析シグナルを発色させた。490nmにおける最終読み取り値をVmaxプレートリーダー(Molecular Devices,Sunnyvale,CA)で測定し、SOFTmax(登録商標)PRO(Molecular Devices,Sunnyvale,CA)を用いて、データを分析した。比較のため、精製された抗体収率を表5に示す。最適ラムノース濃度で生産された抗体に関し、ELISA標準曲線を図1に示す。
(実施例7)
(発現の追加用量試験)
本明細書中に記載されているrMET1抗体を含む,ポリペプチド発現の追加用量試験を行った。
(2種のE.coli株における,rMET1抗体発現のL−ラムノース用量試験)
プラスミドpBRsacH3(実施例1)を、rMET1抗体(実施例9)のクローニングに用いた。この実験で、κ鎖および重鎖を加工して、それぞれヒトセルロプラスミンシグナル配列およびヒト好中球ディフェンシンシグナル配列を、持つようにした(実施例9)。このプラスミドをE.coli DH10B rha株に電気穿孔することで、クローンrMET1.LS.1を生成し、10μg/mlのテトラサイクリン選択下で培養した。このプラスミドを、E.coli ECL339 rha株に電気穿孔することで、クローンrMET1.ECL.1を生成し、100μg/mlのアンピシリン選択下で培養した。
これら2つのクローンのフラスコ振盪培養500mlを複数個複製し、異なった濃度のL−ラムノースによって誘導した後、実施例6の記載同様、精製し、分析した。比較のため、精製された抗体収率を表6に示す。最適L−ラムノース濃度で生産された抗体に関し、ELISA標準曲線を図2にプロットした。
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(実施例8)
(真核生物シグナル配列をもった提示ベクターの構築)
本明細書に記載されている抗体ファージ提示ベクターを含む、真核生物シグナル配列をもった提示ベクターを構築した。
抗体クローニング用の抗体ファージ提示ベクターを、M13ベクターBS51から得た。BS45にあるpelBシグナル配列の最後のコドンが、オリゴヌクレオチド指向突然変異誘発によって、BS51から取り除かれていることを除いて、BS51は、米国特許第6,057,098号の実施例5に記載されているBS45と同一である(Kunkel,proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A 82:488(1985); Kunkelら、Methods.Enzymol.154:367(1987))。
カッパ鎖および重鎖の原核細胞シグナル配列を、オリゴヌクレオチド指向突然変異誘発によって、BS51から削除した。オリゴヌクレオチドBB(表2)は、カッパ鎖上のpelBシグナル配列を削除するのに用い、オリゴヌクレオチドCC(表2)は、重鎖上のアルカリホスファターゼシグナル配列を削除するのに用いた。
オリゴヌクレオチドMおよびオリゴヌクレオチドKK(表2)、ならびにオリゴヌクレオチドMおよびオリゴヌクレオチドLL(表2)を用いたPCRによって、両鎖の定常領域を含むDNA配列を増幅し、その後、DNAアガロースゲルでPCR産物の大きさを判定することによって、両シグナル配列の削除を決定した。このPCRでは、cDNAではなく、ファージ1μlが鋳型であったが、そのことを除いては、米国特許第6,057,098号、実施例3に記載の2本鎖DNAのPCRと同様に行われた。望み通りの削除が行われたファージは、オリゴヌクレオチドのどちらの組み合わせでも、PCR産物を生じなかった。アガロースゲル電気泳動法によってPCR産物が検出されなかった2つのクローンに関し、カッパ鎖の3’側と重鎖の3’側とにそれぞれ結合するオリゴヌクレオチドプライマーLおよびオリゴヌクレオチドプライマーM(表2)を用いて、実施例1の記載と同様に、それらの配列をマックコーネルリサーチ(Macconnell Research)で確認した。両クローンとも正しい配列をもっていた。米国特許第6,057,098号、実施例6の記載と同様に、両方の欠失をもつ1個のファージストックからウラシル鋳型を調製した。この鋳型、すなわちBS55は、カッパ鎖およびIgG1用の真核生物シグナル配列を挿入するのに用いた。
真核生物シグナル配列を、オリゴヌクレオチド指向突然変異誘発によってBS55に挿入した。オリゴヌクレオチドDD(表2)は、配列番号43のシグナル配列をカッパ鎖に挿入するのに用い、オリゴヌクレオチドEE(表2)は、配列番号45のシグナル配列を重鎖に挿入するのに用いた。オリゴヌクレオチド1(表8)およびオリゴヌクレオチドH(表2)を用いたPCRによって、両鎖の定常領域を含むDNA配列を増幅し、その後、DNAアガロースゲルでPCR産物の大きさを判定することによって、両シグナル配列が挿入されているかを決定した。このPCRでは、cDNAではなく,ファージ3μlが鋳型であったが、そのことを除いては、米国特許第6,057,098号、実施例3に記載の2本鎖DNAのPCRと同様に行われた。望み通りの挿入が行われたファージは、BS55対照群より大きいPCR産物を有した。アガロースゲル電気泳動法によって2重挿入を見られるものを有する3つのクローンに関し、カッパ鎖の3’側と重鎖の3’側とにそれぞれ結合するオリゴヌクレオチドプライマーLおよびオリゴヌクレオチドプライマーM(表2)を用いて、実施例1の記載と同様に,それらの配列をマックコーネルリサーチ(MacConnell Research)で確認した。3種類のクローンすべてが、正しい配列をもっていた。この真核生物シグナル配列をもつウラシル鋳型は、BS60と呼ばれ、米国特許第6,057,098号、実施例6の記載と同様に調製した。
(実施例9)
(ポリペプチドの提示と選択)
抗体ファージ提示ベクターを含む、真核生物シグナル配列をもった提示ベクターをポリペプチドの提示と選択に利用した。
(真核生物シグナル配列をもったファージ提示ベクターにおける、rMet1の提示と選択)
米国特許第6,057,098号、実施例3および実施例4の記載とほぼ同様に、カッパ鎖および重鎖可変領域の一本鎖DNA配列をrMet1用に調製した。オリゴヌクレオチド41と971(表7)はカッパ鎖可変領域を増幅するのに用いられ、オリゴヌクレオチド204と1170(表8)は、重鎖可変領域を増幅するのに用いられた。一本鎖DNA反応(それぞれ4X100μl)は、オリゴヌクレオチド1のみを重鎖用に用い、オリゴヌクレオチド2のみをカッパ鎖用に用いて行った(表7および表8)。一本鎖DNAを精製し、ウラシル鋳型BS60に結合させた。これは、250μgスケールのみのウラシル鋳型が用いられたことを除き、米国特許第6,057,098号、実施例7の記載と同様に行われた。アニーリングは、試料を70℃で2分間インキュベートし、37℃より低い温度にゆっくり冷却することによって行われた。エクステンションおよびライゲーションの後、90μlの突然変異誘発停止緩衝液を混合液に加え、1μlの希釈DNAを、米国特許第6,057,098号実施例8の記載と同様に、大腸菌(E.coli)DH12Sの電気穿孔用コンピテントセル40μl(Invitrogen,Carlsbad,CA)に電気穿孔した。電気穿孔した細胞のアリコートを、100mmプレートの上にプレーティングした。プレート上のプラークにニトロセルロースフィルターをかぶせ、米国特許第6,057,098号、実施例13の記載と同様に、AP−メタンフェタミンでフィルターを展開した。機能的陽性プラークを選択し、50μlの2倍YTにとった。
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rMET1突然変異誘発のプラークリフトで得た機能的陽性プラークを、M13表面での抗体提示用に選択した。プレートからプラークをとり、50μlの2YTにいれた。チューブをボルテックスにかけ、その後、米国特許第6,057,098号、実施例12の記載と同様に、ファージ40μlを150mmのLBアガープレート上にプレーティングした。プレートを37℃で4時間、さらにその後、20℃で一晩インキュベートした。抗体ファージは、米国特許第6,057,098号、実施例15の記載と同様にして、プレートから溶出した。200μlのファージを2mLのパンニング緩衝液(40 mM TRIS, 150 mM NaCl, 20 mg/mL BSA, 0.25% カゼイン, 0.1% Tween20 (Fisher Scientific, Pittsburgh, PA), pH 7.5)に希釈し、ファージを2×1mL画分に分注することによって、ファージをパンニング用に調製した。画分の1つに、10μLの10−6Mの還元メタンフェタミンBSA−ビオチン(実施例4)を加え、2番目の画分には何にも加えなかった。抗体と抗原との間の均衡を獲得するため、試料を室温で1時間インキュベートした。米国特許第6,057,098号、実施例14の記載とほぼ同様に、アビジン磁気ラテックス(Bangs Laboratories, Fishers, IN)を用いて、ファージ試料のパンニングを行ったが、以下のような違いがあった。液体操作ステップすべてを、テカンジェネシス150ロボット(Tecan Genesis 150 robot(Tecan, Charlotte, NC))において、製造元の推奨にしたがって行った。10分間、アビジンラテックスをファージとインキュベートした後、チューブを磁石の上に置き、パンニング緩衝液でファージを希釈することなく、ラテックスを分離した。アビジンラテックスを、3回、各1mLのパンニング緩衝液で洗った。最後の洗浄の後、アビジンラテックスを500μLの2YTに再懸濁した。フォアグランド試料およびバックグランド試料から、ラテックスのアリコートをとり、100mmのLBアガープレート上にプレーティングした(米国特許第6,057,098号の実施例12)。プラークの計数を行ったところ、フォアグランドのバックグラウンドに対する比が617:1であった。このことは、M13ファージ上での抗体の提示が非常によいことを示す。
米国特許第6,057,098号、実施例18の記載とほぼ同様に、選択された機能的陽性プラークの1つをpBRsacH3(実施例1)にサブクローニングした。このモノクローナル抗体をサブクローニングする際、重鎖可変領域およびカッパ鎖を増幅するのに、オリゴヌクレオチドW(表2)およびオリゴヌクレオチド1(表8)を用い、重鎖定常領域を増幅するのに、オリゴヌクレオチドRとオリゴヌクレオチドMM(表2)を用いた。各PCR反応に、3μLのファージを鋳型として用いた。米国特許第6,057,098号、実施例18の記載と同様に、2つのPCR産物およびpBRsacH3ベクター(ともに、SacI,およびHindIIIで切断されている)のすべてを、T4 DNAポリメラーゼで消化、アニールし、さらに電気穿孔に用いた。カッパ鎖5’側および重鎖3’側にそれぞれ結合するオリゴヌクレオチドプライマーKおよびオリゴヌクレオチドプライマーN(表2)を用い、実施例1の記載と同様に、3つのrMet1クローンをMacConnell Researchで配列決定した。
(実施例10)
(ポリクローナルファージ富化)
本明細書に記載されているパンニング法を含めたポリペプチド発現およびポリペプチド提示に用いる、真核生物シグナル配列をもったポリクローナルファージの富化を行った。
真核生物シグナル配列をもった、マトリックスメタロプロテナーゼ9前駆体(proMMP9)に対するポリクローナルファージのポリクローナルファージ富化
BS60ウラシル鋳型(実施例8)を用い、米国特許第6,057,098号、実施例7とほぼ同様にして、第1ラウンド抗体ファージを調製したが、ここでは以下のような相違を伴っていた。表7および表8に示すオリゴヌクレオチドを用い、米国特許第6,057,098号、実施例3の記載と同様にして、二本鎖PCR産物を調製した。相補的cDNAの独立した調製(米国特許第6,057,098号、実施例2)は行わなかった。代わりに、プラチナTaq(Platinum Taq)によるスーパースクリプトワンステップRT−PCR(Superscript One Step RT−PCR)(Invitrogen, Carlsbad, CA)を用いて、RNA鋳型から始まるDNA増幅を、製造元の推奨にしたがって行った。一本鎖DNAを二本鎖DNAから分離するHPLCの勾配(米国特許第6,057,098号の実施例4)を短くした。以下の熱プロフィールを用い、ウラシル鋳型とss−DNAインサートのアニーリングを行った。すなわち、70℃を2分間30秒、70℃から42℃までの傾斜(ramp)を10分以上、42℃で10秒間維持(hold)、4℃で保存(store)である。突然変異誘発DNAは、キアクイック(QIAquick)PCR精製カラム(Qiagen, Valencia, CA)を用い、製造元の説明にしたがって精製した。30μLの溶出緩衝液で突然変異誘発DNAをカラムから溶出し、1μLをDH12Sの電気穿孔用コンピテントセル40μLに電気穿孔した。電気穿孔された細胞を、一晩培養したXL1細胞(0.6mL)と2YT(0.4mL)との混合液1mLに再懸濁した。1mLの試料すべてを、150mmのLBアガープレート上にプレーティングした。プレートを37℃で4時間、さらにその後、20℃で一晩インキュベートした。第1ラウンドの抗体ファージ試料は、米国特許第6,057,098号、実施例15の記載と同様にして、プレートから溶出した。
2つの異なった脾臓からの突然変異誘発DNAを用い、4回の電気穿孔(各脾臓、2回の電気穿孔)を行った結果、4種の異なったファージ試料を得た。各試料に関し、第1ラウンドファージ950μL、1M Tris(pH8)50μL、300mg/mL BSA 30μL、5% カゼイン50μL(Hammersten grade, Research Organics, Cleveland, OH)と、10−7M proMMP9−ビオチン(実施例4)11μLとを混合し、室温で3時間インキュベートすることによって、proMMP9−ビオチンとのパンニングをセットアップした。
rMET1抗体ファージを用いた実施例9の記載と同様にして、アビジン磁気ラテックスを用いて、抗体ファージ試料のパンニングを行った。最後の洗浄の後、各ラテックスを500μLの2倍YTに再懸濁し、その後、第2ラウンドの抗体ファージを調製するために、各試料全体のラテックスを150mmのLBプレート上にプレーティングした。150mmプレートを37℃で4時間、さらにその後、20℃で一晩インキュベートした。
生じた第2ラウンド抗体ファージ試料を、カッパチェーン上のデカペプチドタグと、7F11磁気ラテックスとを用い、米国特許第6,057,098号、実施例16の記載とほぼ同様にして、多価提示(polyvalent display)用に富化した。液体操作ステップのすべてを、テカンジェネシス150ロボットにおいて、製造元の推奨にしたがって行った。各試料に関し、7F11/デカペプチドで富化したファージ1mLと、1.49×10−6MのproMMP9−ビオチン5μLとを混合し、室温で1.5時間インキュベートすることによって、proMMP9ービオチンとのパンニングをセットアップした。ラウンド1抗体ファージについての上記の記載と同様に、アビジン磁気ラテックスを用いてファージ試料のパンニングを行い、さらにLBアガープレート上にプレーティングした。
生じた第3ラウンドの抗体ファージ試料を、第2ラウンドの抗体ファージ試料に関する上記の記載と同様に、カッパチェーン上のデカペプチドタグと、7F11磁気ラテックスとを用いて、多価提示用に富化し、その後アビジン磁気ラテックスでパンニングを行った。
第4ラウンドの各ファージストック150μLを混合することによって、第4ラウンドの抗体ファージ試料をプールした。パンニング緩衝液900μLと、プールされた第4ラウンドの抗体ファージ100μLとを用い、上記の記載と同様に、プールされた抗体ファージを第4ラウンドの機能的パンニング用に二連でセットアップした。試料の1つ(フォアグランド)に、10−7MのproMMP9−ビオチン10μLを加え、もう一方の試料(バックグラウンド)には、proMMP9ビオチンを加えずに、磁気ラテックスに対するファージの非特異的結合をモニターするブランク(blank)として用いた。2〜8℃での一晩のインキュベーションの後、上記の記載と同様に、アビジン磁気ラテックスでファージ試料のパンニングを行った。翌日、第5ラウンドの抗体ファージを溶出し、フォアグランドプレート上のプラーク数、およびバックグラウンドプレート上のプラーク数の計数を行った。フォアグランド:バックグラウンドの比は、2.1:1であった。
第4ラウンドのファージに関する上記の記載と同様に、第5ラウンドの抗体ファージを二連でセットアップしたが、このとき、1.49x10−6MのproMMP9−ビオチン6.7μLをフォアグランド試料に加えたことが異なる。1時間室温においた後、アビジン磁気ラテックスでファージ試料のパンニングを行い、上記の記載と同様に処理した。第6ラウンドの抗体ファージ試料における、フォアグランド:バックグラウンドの比は、21.8:1であった。これらの結果は、多様な抗体のライブラリーがファージ上に提示されており、さらにアフィニティーの高い抗体が選択されたことを示す。
(実施例11)
(ポリペプチドのクローニング、発現、精製、および修飾)
本明細書に記載したように、抗体産生の免疫原として有用なポリペプチド等のポリペプチドのクローニング、発現、精製、および修飾をおこなった。
(ヒトマトリックスメタロプロテナーゼ−9前駆体(proMMP9)のクローニング、発現、精製、およびビオチン化)
抗体産生に用いた免疫原は、バイオサイト社(Biosite Incorporated)によって調製した。PCRプライマーは、ヒトproMMP9の5’末端の配列およびヒトproMM9の3’末端のコード配列とに一致させた(Genbank受託番号J05070)。上記プライマーは、6つのヒスチジンコドン、プライマーFF、およびGGを含み、それぞれがコード配列の一端と停止コドンとのあいだあり、かつ金属キレートアフィニティクロマトグラフィによる組み換えタンパク質の精製を補助する(表2)。5’プライマーも同様に、EcoRI部位およびすぐ上流の配列に対応する5’末端に21塩基対のpEAK12ベクター配列(Edge BioSystems, Gaithersburg,MD)を含む。3’プライマーは、約20ヌクレオチドのベクター配列を有し、その5’末端に6塩基のNotI部位およびすぐ下流の配列が含まれる。これらのプライマーの5’末端にあるベクター配列は、T4DNAポリメラーゼ処理によって、pEAK12ベクターのものに対して特異的かつ相補的である単一鎖のオーバーハングを形成する。proMMP9遺伝子インサートのPCR増幅を、5’プライマー(FF)100pmol、3’プライマー(GG)100pmol、エクスパンドポリメラーゼ2.5単位、2mM dNTP 10μl、10xエクスパンド反応緩衝液10μl、鋳型としてクロンテッククイック(Clontech Quick)−クローンヒト脾臓cDNA(Clontech Laboratories, Palo Alto, CA) 1μl、および水100μlを含む2x100μl反応スケールでおこなった。反応は、実施例18(米国特許第6,057,098号)の記載にしたがって、パーキンエルマーサーマルサイクラー(Perkin−Elmer thermal cycler)でおこなった。PCR産物を沈殿させ、アガロースゲル電気泳動で画分化して、全長の産物をゲルから切り出し、精製し、さらに水に再懸濁した(実施例17、米国特許第6,057,098号)。インサートの挿入に備え、pEAK12ベクターをNotIおよびEcoRI((New England BioLabs,Beverly,MA)による消化によって調製した。T4エクソヌクレアーゼ消化のために、DNA1.0μgに10×緩衝液A1.0μlを添加し、さらに水によって最終容量を9μlにすることで、インサートおよびEcoRI/NotI消化pEAK12ベクターを調製した。試料を1μl(1U/μl)のT4DNAポリメラーゼで30℃、4分間にわたり消化した。T4DNAポリメラーゼを70℃、10分間インキュベートすることで、加熱による不活性化をおこなった。試料を冷やし、軽く遠心し、さらに新しい微小遠心管で消化インサート45ngを消化pEAK12ベクター100ngに添加した。1.0μlの10倍アニーリング緩衝液を加えた後、水で容量を10μlにした。混合物を70℃、2分間加熱し、20分間以上冷やして室温にし、インサートおよびベクターのアニーリングを可能にした。アニールDNAを希釈水によって1対4に希釈し、30μlのエレクトロコンピテント大腸菌(E.coli)DH10B株(Invitrogen,Carlsbad,CA)を電気穿孔(実施例8、米国特許第6,057,098号)にかけた。形質転換細胞を2倍YTブロスで1.0mlに希釈し、アンピシリン(75μg/ml)添加LB寒天プレート上に10μl、100μl、300μlプレーティングし、さらに37℃で一晩増殖させた。コロニーを取り、2倍YT(37℃で75μg/mlアンピシリン)で一晩増殖させた。翌日、長期間−80℃保存のためにグリセロールストックを作製した。これらのクローン(proMMP9ピーク12)の配列を、実施例1に記載したように、pEAK12ベクター内のインサートの5’および3’側に結合したオリゴヌクレオチドプライマーHHおよびII(表2)をそれぞれ用いて、マックコーネルリサーチ(MacConnell Research)で確認した。ヒトproMMP9のトランスフェクションおよびそれに続く発現および精製に好適なプラスミドを、エンドフリープラスミドメガキット(EndoFree Plasmid Mega Kit)を用い、かつ製造元の推奨(Qiagen,Valencia,CA)に従って、クローンproMMP9ピーク12.2から調製した。
HEK293(「ピーク(peak)」)細胞を5%ウシ胎仔血清(FBS)(JRH Biosciences, Lenexa, KS)、20単位/mlヘパリン、0.1%プルロニック(Pluronic)F−68((JRH Biosciences,Lenexa,KS)、および50μg/mlゲンタマイシン(Sigma,St.Louis,Mo.)を含有するIS293培地(Irvine Scientific,Santa Ana,CA)の凍結バイアルストック(5×10細胞/ml)1mlからT−75フラスコに展開させた。温度37℃、湿度85%、およびCO濃度5%で2〜3日間インキュベートした後、培地中のFBSを2%に減少させるとともにT−175フラスコに細胞を展開させた。次に、細胞を2〜3週間にわたって1:2に展開させることで、結合した細胞からなる一貫性のある単層が形成される。上記方法によって増殖したピーク細胞を1000rpm、6分間遠心し、上清を捨てた。細胞数を数えて密度を定め、標準的な色素試験による最小90%生存度を調べた後、細胞を2%FBSおよび50μg/mlゲンタマイシン含有のIS293(400ml)に5x10細胞/mlで懸濁し、さらに1L浸透フラスコに添加した。次に、円錐管に、400ml浸透フラスコ1本あたり5mlのIS293と320μgのproMMP9DNAを添加した。これを混合し、2分間、室温でインキュベートした。浸透フラスコ1本あたり400μlのX−tremeGENE RO1539トランスフェクション(Roche Diagnostics,Indianapolis,IN)を上記円錐管に添加して混合し、さらに室温で20分間、インキュベートした。混合物を浸透フラスコに添加し、温度37℃、湿度85%、およびCO濃度5%で4日間、100rpmでインキュベートした。上記浸透フラスコから細胞ブロスを3,500rpm、20分間で沈降させ、上清をproMMP9の精製のために保存した。NiClを充填したキレーティングファストフロー樹脂(Chelating Fast Flow resin)(Amersham Pharmacia Biotech, Piscataway, NJ)20mlを含有するカラムをBBS(20mM ホウ酸塩、150mM NaCl、および0.01% NaN)で平衡化させた。次に、浸透フラスコの上清をカラムに載せ、BBSおよび10mMイミダゾールで洗浄し、さらにBBSおよび200mMイミダゾールで溶出させた。溶出液は、CaClを10mMまで加えた後の次の精製ステップの装填物として使用した。5mLゼラチンセファロース4B樹脂(Amersham Pharmacia Biotech, Piscataway, NJ)含有カラムをBBSおよび10mM CaCl緩衝液で平衡化させた。抗体を載せた後、カラムを平衡緩衝液で洗浄し、さらにproMMP9をBBS,10mM CaCl、および2%ジメチルスルホキシド(DMSO)(Sigma, St. Louis, MO)緩衝液で溶出させた。ポリオキシエチレングリコールドデシルエーテル(BRIJ−35)(0.005%)、およびEDTA(10mM)を溶出液に添加し、次に溶出液を最終緩衝液(50 mM Tris、 400 mM NaCl、 10 mM CaCl、 0.01% NaN、 pH 7.5、 0.005% BRIJ−35、および10 mM EDTA)に透析した。最後に、4℃で保存するために、タンパク質を約0.25mg/mlに濃縮した。ザイモグラムゲルを用いてproMMP9の産生および精製について調べた。また、ウェスタンブロットを用いてタンパク質の活性について調べた。PEAK細胞系を用いて作られた精製抗原と既知の標準との比較をおこなうために、proMMP9(Oncogene Research products, Cambridge,MA)を用いた。proMMP9は、米国特許第6,057,098号の実施例9に記載されているように、ビオチニル化した。
(実施例12)
(真核生物シグナル配列を用いたポリペプチド抗原のクローニング)
ポリペプチド抗原をクローン化し、真核生物シグナル配列(本明細書に記載したようにヒトセルロプラスミンシグナル配列を含む)を用いて、発現させた。
(ヒトセルロプラスミンシグナル配列を用いた成熟マカクインターロイキン8抗原のクローニング)
成熟マカクインターロイキン8抗原の5’末端のコード配列およびマカクインターロイキン8抗原の3’末端のコード配列、ならびにプライマーYおよびZにそれぞれ対応したPCRプライマーを作製した(表2)。特に、5’プライマーは、pBRsacH3ベクターの3’末端に対応する22塩基対のベクター配列をその5’末端に有し、また7つのヒスチジンコドン、および該コード配列の上流にあるエンテロキナーゼ切断部位を有する。上記3’プライマーは、5’末端にあるHindIII部位に対して3’側の24個のヌクレオチドのベクター配列に加えて、HindIII消化によって取り除かれるtetプロモーターの19ヌクレオチドを含む(実施例17、米国特許第6,057,098)。
インターロイキン−8遺伝子インサートのPCR増幅を3×100μl反応スケールで実施した。各スケールは、5’プライマーY(100pmol)、3’プライマーZ(100pmol)、エクスパンドポリメラーゼ(2単位)、2mM dNTP(10μl)、10×エクスパンド反応緩衝液(10μl)、鋳型としてヒトIL−8プラスミド調製物(50ng)、および100μlにするための水を含んだ。キアゲンハイスピードプラスミドミディキット(Qiagen High−Speed Plasmid Midi Kit)を用い、かつ製造元の推奨にしたがって、ヒトIL−8クローンの一晩培養からヒトIL−8プラスミドを調製した。このIL−8クローンは、PCT出願98/06704に記載されたプロセスから得た。反応は、パーキンエルマーサーマルサイクラー(Perkin−Elmer thermal cycler(Model 9600))により、以下の温度プロフィルを用いておこなった。すなわち、変性(1分、94℃)を1サイクル;変性(15秒、94℃)、アニーリング(30秒)、55伸長(60秒、72℃)を10サイクル;変性(15秒、94℃)、アニーリング(30秒、55℃)、伸張(80秒プラス各追加サイクルあたり20秒、72℃)の20サイクル;伸張(6分、72℃);浸漬(4℃、上限なし)。PCR産物を沈殿させ、アガロースゲル電気泳動で分画化して、完全長の産物をゲルから切り出し、キアゲンハイ−スピードプラスミドミディキット(Qiagen HiSpeed Plasmid Purification Midi Kit)で精製した。インサートの濃度は、A260で測定した。T4エクソヌクレアーゼ消化のために、DNA1.0μgに10×緩衝液A(1.0μl)を添加し、さらに水によって最終容量を9μlにすることで、インサートおよびSacI/HindIII消化pBRsacH3ベクター(実施例1)を調製した。試料を1μl(1U/μl)のT4DNAポリメラーゼで30℃、4分間にわたり消化した。T4DNAポリメラーゼを70℃、10分間インキュベートすることで、加熱による不活性化をおこなった。試料を冷やし、軽く遠心し、さらに新しい微小遠心管で消化インサート80ngを消化pBRsacH3ベクター(100ng)に添加した。1.0μlの10倍アニーリング緩衝液を加えた後、水で容量を10μlにした。混合物を70℃、2分間加熱し、20分間以上冷やして室温にし、インサートおよびベクターのアニーリングを可能にした。アニーリング後、10×合成緩衝液(1.0μl)、T4DNAリガーゼ(1U/μl)(1.0μl)、および希釈T7DNAポリメラーゼ(1U/μl)(1.0μl)を添加し、37℃、30分インキュベートすることで、インサートとベクターとを連結した。アニールDNAを希釈水によって1対3に希釈し、1μlを40μlのエレクトロコンピテント大腸菌(E.coli)DH10B株に電気穿孔した(実施例8、米国特許第6,057,098号)。形質転換細胞を2×YTブロスで1.0mlに希釈し、テトラサイクリン(10μg/ml)補充LB寒天プレート上に10μl、50μl、200μlプレートし、さらに37℃で一晩増殖させた。コロニーを取り、37℃で2×YT(20μg/mlテトラサイクリン)(50ml)を一晩増殖させた。翌日、長期間−80℃保存のためにグリセロール凍結保存ストックを作製し、キアプレプ(QiaPrep)カラム(Qiagen,Valencia,CA)を用いて、一晩培養したものの残りからプラスミドを精製した。3つのコロニーの配列を、pBRsacH3ベクター内のインサートの3’側に結合したオリゴヌクレオチドプライマーN(表2)を用いて、実施例1に記載したように、マックコーネルリサーチ(MacConnell Research)で確認した。3つのクローン(mac−il8−5’his.1、mac−il8−5’his.2、およびmac−il8−5’his.3)のすべてが正しい配列を持っていた。実施例13に記載したように、マカクインターロイキン−8抗原を発現させ、ニッケル−キレートクロマトグラフィーによって精製した。
(実施例13)
(ポリペプチドの発現と精製)
本明細書に記載されているポリペプチド抗原を含むポリペプチドを発現させ、精製した。
(マカクIL−8抗原の発現と精製)
このクローンは、実施例12の記載と同様に、マカクIL−8抗原を発現するプラスミドで電気穿孔された宿主大腸菌(E.coli)DH10B rha株からなった。この構築物は、N末端の加工により、セプタヒスチジンタグ、エンテロキナーゼ切断部位、およびヒトセルロプラスミンシグナル配列をこの順序でもった。細胞は、10μg/mLのテトラサイクリン選択下で培養した。
500mLの振盪フラスコ培養物を10個複製し、それぞれを4g/LのL−ラムノースで誘導し、実施例3の記載と同様に、キレート性セファロースFFクロマトグラフィーに通して精製した。溶出液をプールし、緩衝液を50mM Tris、0.01% NaN、pH8の緩衝液に交換した。その後、タンパク質溶液に6μg/mLまでのエンテロキナーゼ(Roche Diagnostics,Indianapolis,IN)を加え、4℃で一晩インキュベートすることにより、マカクIL−8抗原上のセプタヒスチジンタグを切断した。
次に、消化後タンパク質溶液の緩衝液を、10mM NaPO、40mM NaCl、0.01% NaN、pH7.4の緩衝液に交換し、5mLのQセファロースFF樹脂を充填し、かつ同じ緩衝液で平衡化されているディスポーサブルクロマトグラフィーカラムに通した。マカクIL−8抗原はフロースルーに含まれたが、当初の精製工程からのいくつかの夾雑物がカラムに結合した。
Qセファロースのフロースルーに、10mMまでのイミダゾールを加え、0.1M NiClをチャージしたキレート性セファロースFF樹脂5mLを充填したディスポーサブルクロマトグラフィーカラムに通した。このカラムは、20mMボレート、150mM NaCl、10mMイミダゾール、0.01% NaN、pH8.0の緩衝液で平衡化された。この工程では、マカクIL−8抗原にはもはやN末端のセプタヒスチジンタグが含まれておらず、そのためマカクIL−8抗原はフロースルーにあり、唯一残っていた夾雑物がカラムに結合した。
その後、キレート性セファロースFFのフロースルーを、YM−10セントリプレップ(Centriprep)遠心濃縮器(Millipore,Bedford,MA)で処理し、それに続き、濃縮液の緩衝液を、50mM NaPO、150mM NaCl、pH7の緩衝液に交換した。これを、同じ緩衝液で平衡化されたハイQ(High Q)樹脂(Bio−Rad,Hercules,CA)(2.5mL)を充填したディスポーサブルクロマトグラフィーカラムに通した。この工程で、マカクIL−8抗原はフロースルーに含まれたが、エンドトキシンがカラムに結合した。精製されたマカクIL−8抗原を、最後の0.2μmシリンジ濾過にかけ、4℃で保存した。最終的な収率として、1.9mgのマカクIL−8抗原を得た。
吸光度0.7(mL)/(mgcm)を用い、280nmの吸光度によって、精製されたマカクIL−8抗原の濃度を測定した。精製された抗原を、4〜20%のTris−グリシンゲル(Invitrogen)を用いたSDS−PAGEによって分析し、95%より高い純度を有するという結果を得た。マカクIL−8抗原およびヒトIL−8抗原(PCT出願98/06704)を、イムン−ブロット(Immun−Blot)TMPVDF膜(Bio−Rad,Hercules,CA)上へ、ウェスタントランスファーした。マカクIL−8とヒトIL−8との間には、高い%の同一性があるため、ヒトIL−8は良いコントロールとなる。組換え型の抗ヒトIL−8 オムニクローナル(Omniclonal)TM抗体であるMED002.1とMED002A.2(PCT出願98/06704)を標識に用い、ヤギ抗(ヒトカッパ)−アルカリホスファターゼ(Southern Biotechnology Associates)を二次標識および検出に用いた。両抗原のバンドは、ウェスタンブロットにおいて、同程度の強度であった。
図1は、重鎖および軽鎖の両方で同一の真核生物シグナル配列を有する大腸菌(E.coli)でのrMET10抗体の発現を示す。 図2は、重鎖および軽鎖で異なる真核生物シグナル配列を有する大腸菌(E.coli)でのrMET1抗体の発現を示す。
配列表
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Claims (12)

  1. Fabフラグメントを発現させる方法であって、以下:
    MKILILGIFLFLCSTPAWA(配列番号1)、MRTLAILAAILLVALQAQA(配列番号2)またはMGALAVFAVACLAAVASVAHA(配列番号3)に示されたシグナルペプチド配列をコードする真核生物のシグナル配列にそれぞれが作動可能に結合した抗体重鎖および抗体軽鎖をコードするポリヌクレオチドを含むベクターを有する細菌細胞の培養物を提供し、それによって、該抗体重鎖および該抗体軽鎖ならびにそれらに結合したシグナル配列を発現させ、ペリプラズムに分泌させ、該シグナルペプチド配列が該抗体重鎖および該抗体軽鎖からプロセッシングされ、該抗体重鎖と該抗体軽鎖とが組み立てられて標的分子に特異的に結合するFabフラグメントを形成する工程と、
    該細菌細胞の培養物から該Fabフラグメントを回収する工程と、
    を包含する、方法。
  2. 請求項1に記載の方法であって、
    (a)前記重鎖に作動可能に結合した前記シグナル配列がMRTLAILAAILLVALQAQA(配列番号2)をコードし、前記軽鎖に作動可能に結合した前記シグナル配列がMKILILGIFLFLCSTPAWA(配列番号1)をコードするか、または
    (b)該重鎖に作動可能に結合した該シグナル配列がMKILILGIFLFLCSTPAWA(配列番号1)をコードし、該軽鎖に作動可能に結合した該シグナル配列がMRTLAILAAILLVALQAQA(配列番号2)をコードするか、または
    (c)該重鎖に作動可能に結合した該シグナル配列がMGALAVFAVACLAAVASVAHA(配列番号3)をコードし、該軽鎖に作動可能に結合した該シグナル配列がMRTLAILAAILLVALQAQA(配列番号2)をコードするか、または
    (d)該重鎖に作動可能に結合した該シグナル配列がMRTLAILAAILLVALQAQA(配列番号2)をコードし、該軽鎖に作動可能に結合した該シグナル配列がMGALAVFAVACLAAVASVAHA(配列番号3)をコードするか、または
    (e)該重鎖に作動可能に結合した該シグナル配列がMGALAVFAVACLAAVASVAHA(配列番号3)をコードし、該軽鎖に作動可能に結合した該シグナル配列がMKILILGIFLFLCSTPAWA(配列番号1)をコードするか、または
    (f)該重鎖に作動可能に結合した該シグナル配列がMKILILGIFLFLCSTP
    AWA(配列番号1)をコードし、該軽鎖に作動可能に結合した該シグナル配列がMGALAVFAVACLAAVASVAHA(配列番号3)をコードする、方法。
  3. 請求項1に記載の方法であって、
    (a)前記重鎖に作動可能に結合した前記シグナル配列と、前記軽鎖に作動可能に結合した前記シグナル配列とが共にMKILILGIFLFLCSTPAWA(配列番号1)をコードするか、または
    (b)該重鎖に作動可能に結合した該シグナル配列と該軽鎖に作動可能に結合した該シグナル配列とが共にMRTLAILAAILLVALQAQA(配列番号2)をコードするか、または
    (c)該重鎖に作動可能に結合した該シグナル配列と該軽鎖に作動可能に結合した該シグナル配列とが共にMGALAVFAVACLAAVASVAHA(配列番号3)をコードする、方法。
  4. 前記ポリヌクレオチドが、さらに作動可能にプロモーターに結合される、請求項1に記載の方法。
  5. 前記ポリヌクレオチドが、さらに作動可能にラムノースプロモーターに結合される、請求項1に記載の方法。
  6. 前記培養物中の培地から前記Fabフラグメントを回収する、請求項1に記載の方法。
  7. 前記回収工程に先立って、前記細胞を溶解して前記Fabフラグメントを放出させる工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
  8. ファージからFabフラグメントを提示する方法であって、該方法は、抗体重鎖および抗体軽鎖をコードするファージ提示ベクターを細菌細胞内で発現させる工程を包含し、該軽鎖が第1のシグナルペプチド配列に作動可能に結合しており、そして該重鎖がファージ外表面タンパク質および第2のシグナルペプチド配列に作動可能に結合しており、それによって該抗体の鎖が発現されて該細胞のペリプラズムに分泌され、そしてプロセッシングされることで、該シグナルペプチド配列から該抗体の鎖が分離され、標的分子に対する特異的結合親和性を持ち、ファージ粒子の外表面から掲示されるFabフラグメントとして該抗体の鎖が組み立てられ、
    該第1のシグナルペプチド配列および第2のシグナルペプチド配列の各々が配列MKILILGIFLFLCSTPAWA(配列番号1)、MRTLAILAAILLVALQAQA(配列番号2)またはMGALAVFAVACLAAVASVAHA(配列番号3)を有する真核生物のシグナル配列である、方法。
  9. 請求項8に記載の方法であって、
    (a)前記第1のシグナルペプチド配列がMKILILGIFLFLCSTPAWA(配列番号1)であり、前記第2のシグナルペプチド配列がMRTLAILAAILLVALQAQA(配列番号2)であるか、または
    (b)該第1のシグナルペプチド配列がMRTLAILAAILLVALQAQA(配列番号2)であり、該第2のシグナルペプチド配列がMKILILGIFLFLCSTPAWA(配列番号1)であるか、または
    (c)該第1のシグナルペプチド配列がMRTLAILAAILLVALQAQA(配列番号2)であり、該第2のシグナルペプチド配列がMGALAVFAVACLAAVASVAHA(配列番号3)であるか、または
    (d)該第1のシグナルペプチド配列がMGALAVFAVACLAAVASVAHA(配列番号3)であり、該第2のシグナルペプチド配列がMRTLAILAAILLVALQAQA(配列番号2)であるか、または
    (e)該第1のシグナルペプチド配列がMGALAVFAVACLAAVASVAHA(配列番号3)であり、該第2のシグナルペプチド配列がMKILILGIFLFLCSTPAWA(配列番号1)であるか、または
    (f)該第1のシグナルペプチド配列がMKILILGIFLFLCSTPAWA(配列番号1)であり、該第2のシグナルペプチド配列がMGALAVFAVACLAAVASVAHA(配列番号3)である、方法。
  10. 請求項8に記載の方法であって、
    (a)前記第1のシグナルペプチド配列および前記第2のシグナルペプチド配列が、共にMKILILGIFLFLCSTPAWA(配列番号1)であるか、または
    (b)該第1のシグナルペプチド配列および該第2のシグナルペプチド配列が、共にMRTLAILAAILLVALQAQA(配列番号2)であるか、または
    (c)該第1のシグナルペプチド配列および該第2のシグナルペプチド配列が、共にMGALAVFAVACLAAVASVAHA(配列番号3)である、方法。
  11. 前記ベクターがプロモーターを含む、請求項8に記載の方法。
  12. 前記ベクターがラムノースプロモーターを含む、請求項8に記載の方法。
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