JP4303049B2 - アルミニウムドープ粉粒状合成シリカの製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はアルミニウムドープ粉粒状合成シリカの製造方法に関し、その目的は、アルミニウムドープ合成シリカを粉粒状に制限することができ、高純度で且つ高温耐久性を有し石英坩堝等の原料として有用な粉粒状のアルミニウムドープ合成シリカを、従来の合成シリカの製造方法を応用して、容易に製造することのできる方法を提供することにある。
【0002】
【従来の技術】
従来より、シリカガラスの原料として合成シリカ(二酸化ケイ素)が幅広く使用されており、粉粒状のシリカガラスは、半導体製造の際の石英の単結晶引き上げ時に、シリコンが直接接触する石英坩堝内面の他、半導体用の石英治具を作製する際の原料としても使用されている。
シリカガラスの原料シリカとしては、古くから天然石英原石が用いられているが、天然石英には重金属等の不純物が取り込まれており、また粉砕等の工程での不純物汚染が避けられないため、天然石英の高純度化には限界がある。従って、最近では上記のように合成シリカの製造が行われており、本発明者等は既に、高収率で、しかも操作性よくシリカガラス粉粒体を合成する方法を開示している(特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載のシリカガラス粉粒体の製造方法は、分散状態でアルキルシリケートを加水分解してシリカ粉粒体ゲルを生成させ、次いでこのシリカ粉粒体ゲルを分離し、焼成してシリカガラス粉粒体を製造する方法において、加水分解を、アルキルシリケートの加水分解に伴って副生するアルコールの沸点よりも高い沸点を有する有機溶媒中で、アルコールの沸点以上且つ有機溶媒の沸点以下の温度で、副生するアルコールを連続的に溜出除去しながら行うことを特徴とする方法である。
【0004】
しかしながら、合成シリカは天然石英に比べて高純度ではあるが、天然石英ほどの高温耐久性を示さないという欠点を有している。
そこで、高温耐久性においても優れた合成シリカの創出が望まれており、天然の石英にはアルミニウムが含有されていることから、合成シリカにアルミニウムをドープすることにより、合成シリカの融点が上昇し、高温耐久性が上昇することが既に見出されている(特許文献2及び3参照)。
【0005】
即ち、粉粒状のアルミニウムドープ合成シリカは、高温強度を求められる石英坩堝の原料や、屈折率の調整を必要とする石英光ファイバーの原料として有用である。
【0006】
ところで、近年、所謂ゾルゲル法によって、種々の金属アルコキシドを原料とした複合酸化物が合成されており、アルキルシリケートとアルミニウムアルコキシドを用いて、シリカ−アルミナ系の複合酸化物(アルミニウムドープ合成シリカ)を合成することも検討されている。
【0007】
アルキルシリケートとアルミニウムアルコキシドを加水分解することにより、シリカ−アルミナ系の複合酸化物を合成する場合、この2種の金属アルコキシドを原子レベルで均一に複合する必要があるが、アルキルシリケートとアルミニウムアルコキシドは加水分解速度が異なるため、より均一に複合できるよう従来より種々の配合方法が考案されている。
【0008】
例えば、非特許文献1には、加水分解速度の遅いアルキルシリケートを予め加水分解し、後に加水分解速度の速いアルミニウムアルコキシドを添加することにより、均一な6SiO2-94Al2O3のガラス状物を得る方法が開示されている。
この方法は、アルキルシリケートを予め部分加水分解してシラノール基を有するシリケートオリゴマーとし、これに、次式4(化4)に示すように、アルミニウムアルコキシドを加えて反応させる方法である。(式4中、Rはアルキル基を示す。)
【化4】
【0009】
また、非特許文献2には、アルキルシリケートとアルミニウムアルコキシドをアルコール溶媒に混合後、50mlずつビーカーにとり、大気に暴露する方法で徐々に加えて加水分解することにより繊維状の70SiO2-30Al2O3を得る方法が開示されている。
【0010】
その他、非特許文献3には、成分アルコキシドを一定の順序で加水分解することにより、多成分酸化物ガラスを合成する方法が開示されている。
また、特許文献4、特許文献5、特許文献6には、加水分解速度を調整するためアルミニウムキレートを用いるアルミニウム含有合成石英ガラス粉の製造方法が開示されている。しかし、ここで述べられている技術は、一旦寒天状のゲルを調製後、粉砕する方法であり、粉砕せずに粒子状のアルミニウム含有合成シリカを得る方法ではない。
【0011】
【特許文献1】
特開平10−1308号公報
【特許文献2】
特開昭61−236619号公報
【特許文献3】
特開平3−45530号公報
【特許文献4】
特開平10−287417号公報
【特許文献5】
特許第287418号公報
【特許文献6】
特開平11−310418号公報
【非特許文献1】
Journal of Materials Science.,12 p.1203 (1977)
【非特許文献2】
窯業協会誌 84 P.614(1976)
【非特許文献3】
Journal of Non-Crystalline Solids, 92, p.605 (1984)
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記した方法により得られる複合酸化物の形状を粉粒状に制限することは困難である。つまり、溶媒としてアルコールを使用するため、粉粒状ゲルを得ることはできないのである。
また、特許文献1に記載のシリカガラス粉粒体の製造方法を応用し、アルキルシリケートとアルミニウムアルコキシドを加水分解してアルミニウムドープ粉粒状合成シリカを合成しようとしても、アルキルシリケートとアルミニウムアルコキシドを均一に混合して加水分解するだけでは水酸化アルミニウムが分離するため均一化することはできない。特に、アルキルシリケートがメチルシリケートの場合、アルミニウムアルコキシドとの間でアルコール交換反応が生起して、有機溶剤に不溶性のアルミニウムメトキシドが生成し、沈殿分離してしまうという問題も生じる。
【0013】
そこで、粉粒状に制限することができるアルミニウムドープ合成シリカの製造方法の創出が望まれており、本発明者らは、鋭意研究の結果、アルキルシリケートとアルミニウムアルコキシドとを共に溶解し得る溶媒中で両者を均一混合し、微量の水をアルキルシリケートが消失するまで導入した後、溶媒を除去して得られる粘稠な液体をアルミニウム源として使用することにより、従来の合成シリカの製造方法をほぼそのまま応用した方法で均一にアルミニウムを複合化でき、且つ粒子制御が可能なことを見出し、本発明を完成するに至った。
【0014】
【課題を解決するための手段】
即ち、請求項1に係る発明は、アルキルシリケートとアルミニウムアルコキシドとを共に溶解し得る溶媒中で、アルキルシリケートとアルミニウムアルコキシドを均一に混合し、アルミニウムアルコキシドに対して2〜4倍当量の水を、アルキルシリケートが消失するまで、5〜20時間かけて導入した後、溶媒を除去して得られる粘稠な液体をアルミニウム源として使用することを特徴とするアルミニウムドープ粉粒状合成シリカの製造方法に関する。
【0015】
また請求項2に係る発明は、所望量の前記アルミニウム源と、アルキルシリケート又はそのオリゴマーとを均一に混合した後に、加水分解することを特徴とする請求項1記載のアルミニウムドープ合成シリカの製造方法に関する。
【0016】
更に請求項3に係る発明は、アルキルシリケートのアルキル基の炭素数が2〜4であることを特徴とする請求項1又は2記載のアルミニウムドープ粉粒状合成シリカの製造方法に関し、請求項4に係る発明は、アルキルシリケートがメチルシリケートであることを特徴とする請求項2記載のアルミニウムドープ粉粒状合成シリカの製造方法に関する。
【0017】
【発明の実施の形態】
本発明に係るアルミニウムドープ粉粒状合成シリカの製造方法においては、まず、次式5(化5)で示されるアルキルシリケートと、次式6(化6)で示されるアルミニウムアルコキシドとを用いて、アルミニウムドープ用のアルミニウム源を合成する。(但し、式中R及びR’はアルキル基を示す)
【化5】
【化6】
【0018】
使用するアルキルシリケートは特に限定されないが、メチルオルソシリケート,エチルオルソシリケート,プロピルオルソシリケート,ブチルオルソシリケート等の低級アルキルシリケート、これらの混合シリケート又はオリゴマーが好ましく用いられる。また、メチルオルソシリケートを用いると、アルミニウムアルコキシドとの間でアルコール交換反応が生起して、有機溶媒に不溶性のアルミニウムメトキシドが生成する可能性があるため、アルキル基の炭素数が2〜4のアルキルシリケートが特に好ましく用いられる。
【0019】
使用するアルミニウムアルコキシドも特に限定されないが、アルミニウムイソプロポキシド,アルミニウムプロポキシド,アルミニウムイソブトキシド,アルミニウムn−ブトキシド,アルミニウムsec−ブトキシド、又はこれらの混合アルコキシド等の有機溶媒に可溶なアルミニウムアルコキシドが好ましく用いられる。
但し、アルミニウムアルコキシドは、調製後徐々に会合体を形成して、溶媒に溶解し難い3量体,4量体を形成することが知られているため、調製直後のものを使用するのが好ましい。
【0020】
以下、上記アルキルシリケートとアルミニウムアルコキシドとを用いたアルミニウム源の合成について詳細に説明する。尚、この合成反応は次式7(化7)で示され、アルキルシリケートとアルミニウムアルコキシドとを加水分解することにより、アルミニウム源を合成することができる。(但し、式中R及びR’はアルキル基を示す)
【化7】
【0021】
先ず、水を加えて加水分解反応を生起させる前に、アルキルシリケートとアルミニウムアルコキシドとを溶媒中で均一に混合する。溶媒には、アルキルシリケートとアルミニウムアルコキシドとを共に溶解し得る溶媒が用いられる。具体的には、ヘキサン,ベンゼン,エタノール,イソプロパノール,ブタノール,テトラヒドロフラン,ジオキサン等を好ましい例として挙げることができ、特に水を溶解し得る親水性の溶媒が好ましく用いられる。
【0022】
上記溶媒にアルキルシリケートとアルミニウムアルコキシドとを均一に混合するには、最初にアルミニウムアルコキシドを反応器に量り取り、溶媒を加えて均一に溶解させ、次いで、アルミニウムアルコキシドに対して約3倍当量のアルキルシリケートを加えて均一化すればよい。
尚、溶媒の使用量は特に限定されず、アルキルシリケートとアルミニウムアルコキシドを溶解し得る量であればよい。例えば、アルキルシリケートとアルミニウムアルコキシドの合計量の3〜4倍量使用すればよい。
【0023】
アルキルシリケートとアルミニウムアルコキシドとを均一に混合した後、これに微量の水を導入して加水分解反応を生じさせる。この時の水の量はアルミニウムアルコキシドに対して2〜4倍当量、好ましくは約3倍当量とされる。これは、2倍当量より少ないと、アルミニウムアルコキシドが十分シリル化されず、4倍当量より多く導入すると、加水分解が進行し、得られたアルミニウム源が固化し易くなるからである。
【0024】
この際、水はゆっくりと導入する必要がある。これは、アルキルシリケートとアルミニウムアルコキシドとは加水分解速度が異なり、アルミニウムアルコキシドはアルキルシリケートに比べて格段に反応性が高いので、水の導入速度が速すぎると、アルキルシリケートと反応する前にアルミニウムアルコキシドが加水分解して、有機溶媒に不溶な水酸化アルミニウムが生成して析出するため白濁し、均一な反応混合物を得ることができないからである。
具体的な水の導入方法としては、単にゆっくり滴下する方法や、親水性溶媒で希釈して滴下する方法、湿気を含ませた気体を吹き込む方法などを例示することができるが、特に限定はされず、室温条件で攪拌を行いながら5乃至20時間かけてゆっくり導入すればよい。ただ、水酸化アルミニウムの生成を抑えるためには、水の直接添加は避ける方が好ましい。
【0025】
上記したような方法で、微量の水をゆっくりと導入すると、アルミニウムアルコキシドは次式8(化8)で示されるように、部分加水分解する。一方、アルキルシリケートは、それ自体の加水分解反応では2量体,3量体等のオリゴマーを生成するが、この反応においては、これらのオリゴマーはガスクロマトグラフィーでは確認できないので、部分加水分解したアルミニウムアルコキシドと反応し、次式9(化9)で示されるように、メタロシロキサン結合(Si−O−Al)を形成すると予想することができる。(式中R及びR’はアルキル基を示す)
【化8】
【化9】
【0026】
更に、前式9(化9)で示される反応により生成した化合物は、次式10(化10),次式11(化11),次式12(化12),次式13(化13)と反応し、最終的に、アルミニウムドープ用のアルミニウム源が合成される。尚、この前式8(化8)〜次式13(化13)の一連の反応をまとめると、前記式7(化7)で示される反応式になる。(式中R及びR’はアルキル基を示す)
【化10】
【化11】
【化12】
【化13】
【0027】
反応が進むに従ってアルキルシリケートが徐々に減少することは、ガスクロマトグラフィーでの観察で確認できるので、ガスクロマトグラフィーでアルキリシリケートのピークがほぼ消失したのを確認して加水分解反応の終点とする。
反応終了確認後、常圧蒸留や減圧蒸留によって、溶媒や残存しているアルキルシリケート等を除去し、残渣をアルミニウム源とすることができる。この蒸留の際に、ロータリーエバボレーターを使用することも勿論可能であるが、熱分解等が起こるのを防ぐために、加熱温度は50℃程度に留めるのが好ましい。
【0028】
得られた残渣(アルミニウム源)は透明で粘度の高い液体で、次式14(化14)で示される化合物と考えられる。(式中Rはアルキル基を示す)
得られた透明の粘度の高い液体を赤外分光光度計で測定すると、Si−O−Al結合に由来する1060cm−1付近のピークが確認される。
【化14】
このアルミニウム源は、アルミニウムアルコキシドほどの高い反応性を示さないため、長期間保存することができ、取扱いが容易である。ただ、空気中の湿気によって加水分解され変質する恐れがあるので、取扱いの際には、窒素雰囲気下等、乾燥雰囲気下で取り扱う必要がある。
【0029】
本発明においては、上記方法により得られた粘稠な液体をアルミニウム源として使用することにより、アルミニウムドープ粉粒状合成シリカを調製することができる。
例えば、所望量のアルミニウム源と、次式15(化15)で示されるアルキルシリケート又はそのオリゴマーとを均一に混合した後に、加水分解することにより、アルミニウムドープ粉粒状合成シリカを合成することができる。(式中R''はアルキル基を示す)
【化15】
【0030】
使用するアルキルシリケートは特に限定されないが、メチルシリケート,エチルシリケート,ブチルシリケート等の低級アルキルシリケート、特にメチルシリケートが好ましく用いられる。これは、低級アルキルシリケートを用いると、加水分解に伴って副生するアルコールの沸点が比較的低く、特にメチルシリケートを用いると、沸点の低いメタノールが副生するので、後述するアルコール溜出除去を容易に行うことができるからである。
【0031】
具体的には、まず最初に、得られたアルミニウム源中のアルミニウム含有量を算出し、この値に基づいて、ドープしようとする量のアルミニウム源をアルキルシリケートと均一に混合する。尚、このアルミニウム源はアルミニウムアルコキシドと異なり、アルキルシリケートとの相溶性に優れるため、容易に均一混合することができる。
例えば、アルキルシリケートとしてテトラメチルオルソシリケートを用いた場合、テトラメチルオルソシリケートとアルミニウムアルコキシドとを混合すると、直ちにアルコール交換反応を起こして不溶性のアルミニウムメトキシドが生じ、全体がゲル化するため、均一化することはできないが、本発明において使用するアルミニウム源はテトラメチルオルソシリケートとも容易に均一混合することができる。
但し、アルキルシリケートの添加量によっては、混合後数日でゲル化することがあるため、反応直前に均一混合する方が好ましい。
【0032】
次にアルミニウム源を均一に混合したアルキルシリケートを加水分解することにより、アルミニウムドープ粉粒状合成シリカを合成することができる。
例えば、特許文献1に記載の方法を利用して加水分解反応を行うことにより、アルミニウムドープ粉粒状合成シリカを得ることができる。
即ち、溶媒には、加水分解に伴って副生するアルコールの沸点よりも高い沸点を有する有機溶媒を用い、アルコールの沸点以上且つ有機溶媒の沸点以下の温度で、副生するアルコールを連続的に溜出除去しながら加水分解を行ってアルミニウムドープシリカ粉粒体ゲルを生成させ、次いでこのシリカ粉粒体ゲルを分離し、焼成することによりアルミニウムドープ粉粒状合成シリカを得ることができる。
【0033】
尚、アルミニウムドープ粉粒状合成シリカの具体的な調製方法は上記方法には限定されず、前式14(化14)で示される粘稠な液体をアルミニウム源として使用する方法であれば、全て好適に採用することができる。
【0034】
本発明に係るアルミニウムドープ粉粒状合成シリカの製造方法は以上の通りであり、前式14(化14)で示される粘稠な液体をアルミニウム源として使用すると、このアルミニウム源はアルミニウムアルコキシドほどの高い反応性を示さず、アルキルシリケートとの相溶性に優れるので、アルキルシリケートのみを単独で加水分解することにより行われていた合成シリカの合成プロセスを、アルミニウムをドープした系にそのまま応用して、容易にアルミニウムドープ粉粒状合成シリカを製造することができる。
【0035】
従って、得られるアルミニウムドープ粉粒状合成シリカを用いた石英ガラスは、合成シリカが有する高純度性を維持しつつ、しかもアルミニウムがドープされることにより融点が上昇しているので天然シリカを用いた場合と同様の高温耐久性を発揮することができる。
【0036】
また、本発明においては、メタロシロキサン結合(Si−O−Al)を有する化合物をアルミニウム源として使用するので、アルミニウムの偏析のない均質性に優れたシリカ−アルミナ複合体を確実に合成することができる。
【0037】
【実施例】
以下、本発明に係るアルミニウムドープ粉粒状合成シリカの製造方法を実施例を挙げて詳細に説明する。但し、この発明は以下の実施例により何ら限定されるものではない。
【0038】
〔アルミニウムイソプロポキシドの合成〕
温度計、40gの金属アルミニウムを充填したカラム、その上部に−10℃ブラインを通じたジムロートコンデンサを取り付けた1リットルフラスコに、イソプロピルアルコール500gを仕込んだ。そして金属アルミニウムの上部にスパチュラ1杯程度のヨウ素を反応開始剤として加えた。
フラスコに沸騰石を入れ、マントルヒーターで加熱してイソプロピルアルコールを還流状態としたところ、直ちに、アルミニウム表面に発生した水素による発泡が認められた。5〜10分の誘導期の後、反応速度が増加し、カラムに充填したアルミニウムが殆ど反応し終えたことを確認した後、残った微量のアルミニウムをフラスコ内に落とし、そのまま水素発生が停止するまで還流を継続した。
水素発生終了を確認後、残ったイソプロピルアルコールを常圧蒸留して除去した。更に減圧下で蒸留を継続し、5mmHg120℃以上の留分を本流として採取した。
得られたアルミニウムイソプロポキシドは粘稠な液体で、時間の経過と共に結晶化し、全体が固形物となった。尚、アルミニウム基準での収率は94.6%であった。
【0039】
〔アルミニウム源の合成〕
攪拌機、ガス吹き込み管及び排気管を備えた1リットルのフラスコに粘稠液体状態のアルミニウムイソプロポキシド40.7gを窒素雰囲気下に仕込み、溶媒としてイソプロピルアルコール720gを加えた。攪拌しながら均一混合し、アルミニウムイソプロポキシドのイソプロピルアルコール溶液を調製した。
次に、テトラエチルシリケート150gを滴下ロートより加えて均一混合した。この混合溶液中に、60℃に加温した純水を通すことによって湿気を含ませた窒素を、ガス吹き込み管を通じて吹き込んだ。2,3時間毎にガスクロマトグラフィーによる分析を行い、水分の導入に従ってテトラエチルシリケートのピークが徐々に減少するのを観察した。約17時間後にテトラエチルシリケートのピークがほぼ消失したことを確認できたので、加水分解反応を終了した。
得られた反応液をロータリーエバポレーターに仕込み、最初は常圧で、後に減圧下で、溶媒(イソプロピルアルコール),エタノール,未反応のテトラエチルシリケート等の低沸成分を除去した。
残渣として得られた粘稠液をアルミニウム源▲1▼とした。
【0040】
テトラエチルシリケート150gの代わりにテトラプロピルシリケート190gを用いた以外は、上記アルミニウム源▲1▼の合成方法と同様の方法でアルミニウム源▲2▼を合成し、またテトラエチルシリケート150gの代わりにテトラブチルシリケート230gを用いた以外は、上記アルミニウム源▲1▼の合成方法と同様の方法でアルミニウム源▲3▼を合成した。
【0041】
アルミニウム源▲1▼の透明で粘度の高い液体を赤外分光光度計で測定した。結果を図1に記載する。
図1に示されるように、Si−O−Al結合に由来する1060cm−1付近のピークが確認された。
【0042】
〔アルミニウムドープシリカの合成〕
(実施例1)
テトラメチルオルソシリケート(TMOS)1715gに、上記方法により得られたアルミニウム源▲1▼0.738g(シリカに対し50ppm相当のアルミニウム量)を加え、均一に混合した。
攪拌機及び還流冷却器を備えた5リットルのフラスコに、キシレン2585g,純水811g及び触媒としての1%酢酸8.3gを仕込んだ。攪拌を開始して水を懸濁状態に分散させ、この中にアルミニウム源を混合したTMOSを全量一気に加えて、加水分解反応を生じさせた。フラスコを加熱し、内温を70℃に30分間保った後、内温を90℃に上げ、加水分解によって生成したメタノールを留去した。内温が120℃になるまで留去を続け、留去終了後攪拌を停止して油層と水層を分離させた。
分離した油層を吸引によって除去し、残りを濾別して粉粒状ゲルを分離した。得られた粉粒状ゲルを真空乾燥し、更に200℃の温度で10時間焼成して、アルミニウムドープシリカ粉粒体を得た。
【0043】
得られたアルミニウムドープシリカ粉粒体は、シリカ単独の場合に比べて粒径が若干小さかったが、この点以外はシリカ単独の場合と変わらなかった。
また、アルミニウムドープシリカ粉粒体の任意サンプルを採取し、シリカ分をフッ化水素酸処理して揮発させた後、残渣を塩酸に溶解し、フレームレス原子吸光法によりアルミニウム成分を定量したところ、50ppmの計算値に対し、実測値50.9ppmとなり、均一にアルミニウムがドープされていることがわかった。
【0044】
(比較例)
アルミニウム源としてアルミニウムイソプロポキシドを用いた以外は、実施例1と同様の操作でアルミニウムドープ粉粒状合成シリカ粉粒体の合成を試みた。
その結果、TMOSにアルミニウムイソプロポキシドを加えても均一に分散せず、数分後に全体が固化し、以降の操作を進めることができなかった。
これは、アルミニウムイソプロポキシドのイソプロポキシド基とTMOSのメトキシ基が交換し、有機溶媒に不溶のアルミニウムメトキシドを生成したためと思われる。
【0045】
上記実施例及び比較例の結果から、実施例のように、アルキルシリケートとアルミニウムアルコキシドとを共に溶解し得る溶媒中で両者を均一に混合し、微量の水をアルキルシリケートが消失するまで導入した後、溶媒を除去して得られる粘稠な液体をアルミニウム源として使用すると、従来の合成シリカの製造方法を応用して、粉粒状のアルミニウムドープ合成シリカを容易に製造することができるのに対し、比較例のように、アルキルシリケートとアルミニウムアルコキシドを混合して加水分解することによりアルミニウムドープ合成シリカを合成しようとしても、アルキルシリケートとアルミニウムアルコキシドとが均一に分散しないため、アルミニウムドープ合成シリカを製造できないことがわかる。
【0046】
【発明の効果】
以上詳述した如く、請求項1に係る発明は、アルキルシリケートとアルミニウムアルコキシドとを共に溶解し得る溶媒中で、アルキルシリケートとアルミニウムアルコキシドを均一に混合し、アルミニウムアルコキシドに対して2〜4倍当量の水を、アルキルシリケートが消失するまで、5〜20時間かけて導入した後、溶媒を除去して得られる粘稠な液体をアルミニウム源として使用することを特徴とするアルミニウムドープ粉粒状合成シリカの製造方法に関するものであるから、以下のような効果を奏する。
【0047】
即ち、得られる粘稠な液体はアルミニウムアルコキシドほどの高い反応性を示さず、アルキルシリケートとの相溶性に優れるので、これをアルミニウム源として使用することにより、アルキルシリケートのみを単独で加水分解することにより行われていた合成シリカの合成プロセスを、アルミニウムをドープした系にそのまま応用して、容易に粉粒状のアルミニウムドープ合成シリカを製造することができる。
【0048】
また請求項2に係る発明は、所望量の前記アルミニウム源と、アルキルシリケート又はそのオリゴマーとを均一に混合した後に、加水分解することを特徴とする請求項1記載のアルミニウムドープ粉粒状合成シリカの製造方法に関するものであるから、以下のような効果を奏する。
【0049】
即ち、メタロシロキサン結合を有する粘稠な液体をアルミニウム源として使用するので、アルミニウムの偏析のない均質性に優れたシリカ−アルミナ複合体を確実に合成することができる。
そして、得られるアルミニウムドープ粉粒状合成シリカを用いた石英ガラスは、合成シリカが有する高純度性を維持しつつ、しかもアルミニウムがドープされることにより融点が上昇しているので天然シリカを用いた場合と同様の高温耐久性を発揮することができる。
【0050】
請求項3に係る発明は、アルキルシリケートのアルキル基の炭素数が2〜4であることを特徴とする請求項1又は2記載のアルミニウムドープ粉粒状合成シリカの製造方法に関するものであるから、アルキルシリケートとアルミニウムアルコキシドとの間でアルコール交換反応が生起して、有機溶媒に不溶性のアルミニウムアルコキシドが生成してしまうことはなく、確実にアルキルシリケートとアルミニウムアルコキシドとを溶媒中で均一に混合することができるという効果を奏する。
【0051】
更に請求項4に係る発明は、アルキルシリケートがメチルシリケートであることを特徴とする請求項2記載のアルミニウムドープ粉粒状合成シリカの製造方法に関するものであるから、加水分解に伴って副生するアルコールを容易に溜出除去することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】アルミニウム源▲1▼の赤外吸収スペクトルのチャートである。
Claims (4)
- 前式1(化1)で示されるアルキルシリケートのアルキル基の炭素数が2〜4であることを特徴とする請求項1又は2記載のアルミニウムドープ粉粒状合成シリカの製造方法。
- 前式3(化3)で示されるアルキルシリケートがメチルシリケートであることを特徴とする請求項2記載のアルミニウムドープ粉粒状合成シリカの製造方法。
Priority Applications (1)
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