JP3878113B2 - シリカ−チタニア複合酸化物の製造方法 - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は光半導体用封止材や歯科用コンポジットレジンなどの複合樹脂の充填材に適した複合酸化物の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
シリカとチタニアからなる複合酸化物(以後、複合酸化物と略記する)は、熱膨張係数がゼロ又は負の値を示すことや、チタニアの含有率を変えるとことにより屈折率の微調整が可能であることなどの優れた性質を持っているが、チタニアが分相すると複合酸化物が白濁するので、作製方法に工夫がいる。そのため従来より、様々な方法で合成が試みられている。
【0003】
例えば、シリカとチタニアを原料にした溶融法、シリコンとチタニウムの塩化物を原料に1750℃まで加熱するフレームハイドロリシス法(P.C.Schultz、Journal of The American Ceramic Society、59巻、214ページ、1976年)、シリコンとチタニウムのアルコキシド化合物を用いるゾルーゲル法(神谷寛一、作花済夫、日本化学会誌,No.10、1571ページ、1981年)等がある。
【0004】
溶融法では、一般にシリカとチタニアを溶融する温度まで加熱するので分相し易いという問題がある。複合酸化物中のチタニアはルチル型に結晶化するが、この方法では球状の粒子は得られない。フレームハイドロリシス法では、得られた非晶質の複合酸化物は、再加熱するとチタニアがルチル型に結晶化するが、この方法では膜状物や塊状物しか得られず、球状の粒子は得られない。一方、ゾル−ゲル法では、製造方法によっては球状の粒子が得られるが、複合酸化物中のチタニアは加熱すると非晶質であったものがアナターゼ型に結晶化する。この方法では、これまでルチル型に結晶化した例はない。
【0005】
更に具体的に説明すると、複合酸化物の球状粒子が、特公平1−38043に記載されている。この場合、上記球状粒子を加熱処理することにより、粒子中のチタニアの一部がアナターゼ型に結晶化しているが、ルチル型への結晶化例は開示されていない。また、特開平2−153816に開示されているシリコンとチタニウムのアルコキシド化合物の混合物を火炎中に導入して、球状の複合酸化物粒子を製造する方法では、得られる粒子が非晶質である。同様に、複合酸化物の破砕粒子として、特開平3−232730及び特開平3−232741に、シリコンとチタニウムのアルコキシド化合物を原料として、複合酸化物粒子を得る方法が開示されているが、これらの粒子中のチタニアは加熱によってアナターゼ型に結晶化することが記載されている。
【0006】
複合酸化物中のチタニアは、通常上述の如く2種類の結晶になることが知られている。ルチル型とアナターゼ型の2種類の結晶の屈折率を比較すると、アナターゼ型は、nω=2.5612、nε=2.4880であるのに対して、ルチル型は、nω=2.6124、nε=2.8993であり、ルチル型の方が高い。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
光半導体用封止材には、半導体から発生する光を透過させるための透明性が、また、歯科用コンポジットレジンには、天然の歯牙と同等の半透明性が、それぞれ求められる。そのためには、封止材やコンポジットレジン等の複合樹脂に用いる充填材の屈折率は、それぞれの樹脂のそれに一致、又は、近くなければならない。即ち、特定の屈折率を有する粒子が必要である。
【0008】
特定の屈折率を有する複合酸化物粒子を調製するためには、屈折率がシリカより高いチタニアをシリカと複合化させるが、この場合、チタニアの結晶構造はルチル型構造の方が非晶質構造やアナターゼ型構造よりも屈折率が高いため、効果的である。
【0009】
また、複合酸化物粒子中のチタニアの含有量が多いと、加熱によって析出するチタニアの結晶が大きくなり、粒子の透明性が低下する傾向にある。よって、複合酸化物粒子中のチタニアの含有率をできるだけ少ない条件で、屈折率を向上させる必要がある。そのためには、複合酸化物粒子中のチタニアの結晶構造は非晶質構造やアナターゼ型構造よりもルチル型構造の方が望ましい。
【0010】
複合酸化物粒子は、シリカとチタニアを原料とする熔融法で製造するとチタニアが分相して白濁し易く、また、たとえ熔融法で透明体ができても粉砕、分級工程を要し不純物が混入し易いので、金属アルコキシドを原料とするゾル−ゲル法を採用するのが好ましい。ところが、ゾル−ゲル法で得られた複合酸化物は、前記の通り、これに含まれるチタニアは非晶質構造又はアナターゼ型構造が知られているのみで、ルチル型構造のものは知られていなかった。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、鋭意検討した結果、ゾル−ゲル法で調製したシリカ−チタニア共加水分解物を特定条件で熱処理することによって、得られるシリカ−チタニアの複合酸化物中のチタニアがルチル型に結晶化することを見い出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
即ち、本発明は、シリカとチタニアを主な構成成分とする平均粒子径が0.05〜50μmの球状粒子であり、全チタニア中のルチル型結晶チタニアの割合が5モル%以上であることを特徴とする複合酸化物粒子である。又、他の発明は、シリコンアルコキシド化合物とチタニウムアルコキシド化合物とを加水分解して得られる共加水分解物を、非酸化性雰囲気下に900℃〜1300℃で加熱することを特徴とするルチル型結晶チタニアを含むシリカーチタニア複合酸化物粒子の製造方法である。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明の複合酸化物粒子は、シチカとチタニアを基本成分とする平均粒子径が0.05〜50μm球状粒子であり、チタニアの少なくとも一部にルチル型結晶を含んでいる(以下、シリカ−チタニア複合酸化物粒子という)。それ以外のチタニアは非晶質構造あるいはアナターゼ型構造などの他の結晶構造であっても良い。チタニア中の該ルチル型結晶チタニアの含有割合は5モル%以上必要である。ルチル型結晶チタニアが5モル%より少ないと、シリカ−チタニア複合酸化物粒子の屈折率をより効果的に向上させることができない。
【0014】
ルチル型結晶チタニアの含有率を調べるには、粉末X線回折法によって測定したルチル型結晶チタニアの(110)面の回折ピークのピーク強度を測定し、別途用意した検量線より算出することができる。検量線を作成するには、100%ルチル型に結晶化したルチル型結晶チタニアと非晶質シリカを任意の割合に混合した試料を、上記と同様にして測定し、ルチル型結晶チタニアの含有率とピーク強度の関係を求めれば良い。
【0015】
シリカ−チタニア複合酸化物粒子に含まれる結晶化したルチル型およびアナターゼ型チタニア結晶の大きさは、特に限定されないが用途によっては小さい程好ましい。例えば、本発明のシリカ−チタニア複合酸化物粒子を高い光の透過率が求められる光半導体用封止材の充填材に用いる場合には、結晶化したチタニアの粒子径は100nm以下、好ましくは50nm以下、より好ましくは20nm以下であることが望ましい。結晶化したチタニア結晶の大きさは、透過型電子顕微鏡で観察することができるし、粉末X線回折の回折ピークの半値幅から計算によって求めることもできる。
【0016】
当該粒子の構成成分の一つであるチタニアは、シリカと化学的に結合した状態、或は、シリカ中に微結晶として分散した状態で存在するもので、シリカとチタニアを物理的に分離することができない。両成分がこうした状態で存在することは、赤外線スペクトル又は屈折率を測定することや透過型電子顕微鏡像の観察により確認することができる。例えば赤外線スペクトルについては、950nm-1付近に特異な吸収を認めることができるし、シリカ−チタニア複合酸化物粒子の屈折率は両成分の各々の屈折率の間にあり、チタニアの含有率が増加すると共に、屈折率も上昇する。また、透過型電子顕微鏡像を観察すれば、非晶質のシリカ−チタニアかまたは非晶質シリカマトリックス中にチタニアの微結晶が分散した状態かを調べることができる。
【0017】
本発明のシリカ−チタニア複合酸化物粒子に含まれるチタニアの配合率は、好ましくは3モル%以上50モル%以下さらに好ましくは3モル%以上30モル%以下の範囲にあることが望ましい。チタニアの配合率が小さい場合には、高温で加熱してもチタニアは結晶化し難いため、本発明のシリカ−チタニア複合酸化物粒子を得ることができない場合がある。一方、チタニアの配合率が高すぎる場合には、一般に球状粒子とすることが困難となるほかに、高温で加熱すると、チタニアの結晶が大きくなり過ぎるため透明性が損なわれ、透明性の高い複合樹脂用充填材としては使用できなくなる傾向にある。
【0018】
本発明のシリカ−チタニア複合酸化物粒子は、平均粒子径が0.05〜50μmの範囲にある。平均粒子径が0.05μmを下回ると粒子が凝集し易く、複合樹脂に充填する場合にも操作性が良くないなどの不具合いが生じる。平均粒子径が50μmを越えた場合には、複合樹脂にした場合に透明性が保てないなどの問題がある。なお、表面滑沢性が求められる歯科用コンポジットレジンに本発明の粒子を用いる場合には、平均粒子径が10μm以下が好ましく、1μm以下がより好ましい。また、高い光透過性が求められる光半導体用の封止材の充填材として用いる場合には、平均粒子径は10μm以下が好ましく、1μm以下がより好ましい。
【0019】
また、本発明のシリカ−チタニア複合酸化物粒子の形状は球形である。形状が球形でない破砕粒子の様な不定型の粒子を樹脂と混練する場合には、粘度が高くなったり、表面滑沢性が悪いなどの問題が生じる場合がある。また、光半導体などを封止する透明封止材には、半導体素子を傷つけないように球状の粒子が好まれる。
【0020】
シリカ−チタニア複合酸化物粒子の組成は、蛍光X線分析、ICP分析、原子吸光分析、化学分析など公知の方法で明らかにすることができる。粒子の平均粒子径や形状の観察には、走査型電子顕微鏡や透過型電子顕微鏡等の電子顕微鏡による方法が適している。また、粒子の平均粒子径の測定には粒度分布計なども使用することができる。
【0021】
上記シリカ−チタニア複合酸化物粒子は、代表的には以下に述べる製造方法により製造することができる。即ち、シリコンアルコキシド化合物とチタニウムアルコキシド化合物との混合物を加水分解して得られたシリコンとチタニウムを主な構成成分とする球状共加水分解物粒子を非酸化性雰囲気下に900℃〜1300℃で加熱して製造される。
【0022】
尚、この製造方法は、前記ルチル結晶チタニアを含むシリカ−チタニア複合酸化物粒子の製造のみならず、同じくルチル結晶チタニアを含む板状、棒状、不定型のシリカ−チタニア複合酸化物の製造に応用できる。従って、以下その形状に限定する事なくルチル結晶チタニアを含むシリカ−チタニア複合酸化物(以下、単にシリカーチタニア複合酸化物という)一般の製法として説明する。
【0023】
シリコンアルコキシド化合物としては、一般式
Si(OR)4、又はSiRn(OR')4−n 〔nは1〜3の整数〕
で示されるシリコンアルコキシド化合物を特に限定することなく採用できる。このような化合物として、例えば、シリコンテトラエトキシド、シリコンテトラメトキシド、シリコンテトラプロポキシド、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン等が挙げられる。上記一般式でnが1または2の場合のシリコンアルコキシド化合物は、通常上に例示したようなトリアルコキシまたはテトラアルコキ型のシリコンアルコキシド化合物に一部混合して用いられる。
【0024】
チタニウムアルコキシド化合物としては、加水分解可能なアルコキシド基を有するチタニウムアルコキシド化合物を広く採用できる。例えばチタニウムテトラエトキシド、チタニウムテトライソプロポキシド、チタニウムテトラブトキシド、等が好適に採用される。
【0025】
シリコンアルコキシド化合物とチタニウムアルコキシド化合物との混合物を加水分解することによって共加水分解物が得られるが、該共加水分解物を900℃以上の温度で加熱することによってシリカ−チタニア複合酸化物に転化する。
【0026】
シリカーチタニア複合酸化物の製造に於いては、加水分解前に両アルコキシド化合物を共縮合させ低縮合体にするのが好ましい。シリコンアルコキシド化合物とチタニウムアルコキシド化合物とは、一般に、加水分解速度が異なるため、両化合物が縮合していない混合物を加水分解すると、シリカとチタニアの粒子がそれぞれ独立して生成する場合がある。
【0027】
両化合物の低縮合体を得るには、公知の方法を特に限定することなく採用できるが、通常、シリコンアルコキシド化合物の部分加水分解物にチタニウムアルコキシド化合物を添加する方法が好ましく採用される。
【0028】
低縮合体の溶液に用いる溶媒は、低縮合体を溶解するものであれば特に限定されず使用できるが、反応性、操作性、入手が容易なこと等の理由で一般には、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール等のアルコール類が好適である。また、ジエチルエーテル等のエーテル類、酢酸エチル、酢酸メチル等のエステル類、ベンゼン、トルエン、ヘキサン等の炭化水素類の様な有機溶媒を一部混合して用いることもできる。
【0029】
該低縮合体を加水分解するには、公知の方法を広く採用できるが、酸性又はアルカリ性の溶液中で加水分解する方法が好ましく採用される。
【0030】
低縮合体の加水分解物が球状の粒子であるものを得ようとする場合には、該低縮合体の溶液をアルカリ性溶液中で加水分解するのが好ましい。アルカリ性溶液の溶媒には、公知の有機溶媒が何等制限されることなく使用できる。一般に好適に使用される溶媒は、前記低縮合体の溶媒として記載したものと同じアルコール類、又は、エーテル類、エステル類、炭化水素類等の有機溶媒を前記アルコール類に一部添加した混合溶媒と水とよりなる含水溶媒である。アルカリ性溶液をアルカリ性に保つためには、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、トリメチルアミン、トリエチルアミン等の公知のアルカリ化合物を使用できるが、アンモニアが特に好適である。
【0031】
上記球状共加水分解物粒子の粒子径は、アルカリ性溶液に用いるアルカリ濃度、水の濃度、有機溶媒の種類等の要因によって影響を受けるので予め適宜これらの条件を決定しておくのが好ましい。一般には、前記アルカリ性溶液のアルカリ濃度は1.0〜10モル/リットルの範囲で選択するのが好ましく、アルカリ濃度が高いほど、得られる球状共加水分解物粒子の粒子径が大きくなる傾向にある。またアルカリ性溶液中の水の濃度は、一般には、0.5〜50モル/リットルの範囲から選ぶのが好適である。前記アルカリ性溶液中の有機溶媒の種類については、一般には溶媒に用いるアルコール類の炭素原子数が多くなれば、得られる球状シリカーチタニア複合酸化物粒子の粒子径が大きくなる傾向にある。
【0032】
前記低縮合体の溶液をアルカリ性溶液に添加する方法は、特に限定されないが、一般には少量づつ長時間かけて添加するのが好ましく、通常、数分〜10数時間の範囲で実施すればよい。低縮合体の溶液をアルカリ性溶液に添加する間、アルカリ性溶液の温度は、種々の条件によって異なり一概に限定することができないが、通常は0℃〜50℃の範囲で実施すればよい。さらに、低縮合体の溶液をアルカリ性溶液に添加する間、アルカリ性溶液はマグネチックスターラーや攪拌棒などによって常時攪拌しておく必要がある。
【0033】
以上の操作によって生成する球状共加水分解物粒子は分離後乾燥すればよい。このようにして得られた球状共加水分解物粒子は、粒度分布範囲が狭い球状の共加水分解物粒子である。
【0034】
一方、共加水分解物の形状が球状以外の場合には、前記低縮合体を酸性やアルカリ性の水溶液中で加水分解する公知の方法が好ましく採用される。例えば、酸性水溶液と前記の低縮合体を混合、攪拌し、加水分解させることによって、一般にバルク体と呼ばれる複合酸化物の塊が得られることが知られているが、この様なバルク体あるいはバルク体を粉砕した不定形粒子、あるいは、前記低縮合体を高分子フィルム上に薄くコーティングし、水蒸気の存在下に放置して加水分解させた固形物を剥離させて得られる鱗片状の共加水分解物なども前記球状共加水分解物粒子と同様に、シリカーチタニア複合酸化物を製造するための原料とすることができる。
【0035】
以上のようにして得られた球状共加水分解物粒子または他の形状の共加水分解物を非酸化性雰囲気下に900〜1300℃で加熱することによって各形状のシリカーチタニア複合酸化物が得られる。
【0036】
加熱温度は、900℃より低い温度で加熱するとチタニアが結晶化しないかあるいは、結晶化度が極めて低い。また、1300℃より高い温度で加熱すると、チタニアの結晶が大きくなりシリカーチタニア複合酸化物の透明性が低下したり、あるいはシリカが非晶質からクリストバライト結晶に結晶化したり、あるいは又シリカーチタニア複合酸化物自体の着色が強くなったりするので好ましくない。特に、共加水分解物が球状または他の形状の粒子である場合、粒子同志が焼結し易くなる傾向にあるため好ましくない。
【0037】
更に、シリカーチタニア複合酸化物が1μm以下のシリカ−チタニア複合酸化物粒子の場合には、高温ほど粒子同志が焼結し易くなる傾向が強くなるため、好ましくは1200℃以下、さらに好ましくは1100℃以下で加熱することが望ましい。但し、上記粒子を1200℃を越える温度の気相中に、分散した状態で送り、加熱するならば焼結はない。加熱に要する時間は、粒子の大きさや雰囲気によって異なるので一概に限定できないが、1〜20時間が適当である。
【0038】
ところで、共加水分解物を非酸化性雰囲気下に900℃以上の温度で加熱してもシリカーチタニア複合酸化物中のチタニア含有量が低い場合などでは、ルチル型のチタニア結晶が確認できないか、あるいは、確認はできても極めて少量である場合がある。この様な場合には、該複合酸化物を更に空気中などの、非酸化性雰囲気以外の雰囲気下で再加熱するすることによって、ルチル型構造のチタニア結晶の含有量を増加させることができる。この様な現象は、非酸化性雰囲気下で加熱したときに、X線回折などでは測定できない様なルチル型構造の超微結晶が既に生成しており、再加熱によってそれらが成長したものと考えられる。
【0039】
従って、本発明では、非酸化性雰囲気下に900〜1300℃で加熱した後、更に酸化性雰囲気下で再加熱することによってルチル型のチタニア結晶を成長させるという態様も好ましく採用される。なお、この場合、酸化性雰囲気下に加熱するため、ルチル型のチタニア結晶の成長とともに、新たにアナターゼ型のチタニア結晶も発生することが多いのでルチル型構造とアナターゼ型構造の2種類のチタニア結晶が混在したシリカーチタニア複合酸化物となる場合が多い。
【0040】
本発明のシリカーチタニア複合酸化物を製造するためには、共加水分解物を加熱するときの雰囲気を非酸化性に保つことが必須である
共加水分解物は、加熱によってシリカーチタニア複合酸化物になる。加熱の雰囲気として、空気や酸素など酸化性のガス雰囲気を採用すると、共加水分解物中のチタニアはアナターゼ型に結晶化し、ルチル型にはならない。
【0041】
非酸化性の雰囲気としては、加熱に用いる電気炉の中を、非酸化性の雰囲気に保つことができる様であれば特に限定されない。例えば、加熱に用いる電気炉の中を窒素、アルゴン、ヘリウム、水素、一酸化炭素、二酸化炭素等の気体の1種または2種を用いて非酸化性のガス雰囲気に保つか、あるいは真空に保つのが好適である。
【0042】
更に、酸化を積極的に防止するために、共加水分解物の表面を有機化合物で予め被覆しておくのがより好ましい。共加水分解物の表面を有機化合物で被覆する場合、該有機化合物としては公知の化合物を広く採用できるが、共加水分解物の表面を確実に被覆でき、しかも、揮発しにくいものが好ましい。このようなものとして、ポリエチレングリコール、ポリスチレン、ポリアクリル酸等何等かの溶媒に可溶なポリマーが好ましく、中でもアルコールに可溶なポリエチレングリコールや水に溶け易いポリアクリル酸が好ましい。
【0043】
該有機化合物を共加水分解物に被覆するには、例えば、共加水分解物にポリエチレングルコールのアルコール溶液を添加し、良く混合した後、溶媒を乾燥させる方法が採用される。
【0044】
上記有機化合物を被覆した共加水分解物を非酸化性雰囲気下に加熱すると、有機化合物の炭化物が粒子の表面又は内部に残存し、灰白色に着色する場合がある。このような場合には、これらの共加水分解物を空気などの酸化性雰囲気中で再び加熱し、炭化物を酸化除去することによって白色のシリカ−チタニア複合酸化物とすることができる。
【0045】
共加水分解物の加熱によって得られるシリカ−チタニア複合酸化物中のチタニアが、上記条件下で熱処理すると選択的にルチル型に結晶化する機構は明らかではないが、以下のように考えられる。アルコキシド化合物を出発物質として合成したシリコンとチタニウムを主成分とする共加水分解物を非酸化性雰囲気下に加熱すると、出発物質であるチタニウムアルコキシド化合物やシリコンアルコキシド化合物の加水分解によって生成した有機化合物、あるいは、共加水分解物中に含まれる有機溶媒やアルコキシ基の残基等が非酸化性雰囲気中で熱分解されることによって、共加水分解物の周囲が強い還元性雰囲気に保たれる。このため、共加水分解物または複合酸化物中のチタニウムの電荷や酸素の配位数が微妙に変化し、チタニアの選択的なルチル型構造への転移が起こっているものと考えられる。チタニア単一成分系では、アナターゼ型からルチル型への不可逆的な転移が知られており、チタニア中の酸素イオン空孔が相転移の核生成を促進するためだといわれている。しかし、本発明の系では、複合酸化物中のチタニアがアナターゼ型を経由してルチル型に転移する事実を確認することはできず、非晶質チタニアがアナターゼ型を経由せずに、直接ルチル型に結晶化したのではないかと考えられる。
【0046】
【実施例】
次に、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明は以下の実施例により制限されるものではない。以下の実施例で利用したシリカ−チタニア複合酸化物粒子の性状の測定は、特に断わらない限り次のようにして測定した。
(1)平均粒子径:走査型電子顕微鏡の撮影像より求めた。
(2)粒子の屈折率:試料粒子を屈折率が異なる種々の25℃の液に懸濁させ、懸濁液が最も透明に見える液の屈折率をアッベの屈折率計によって測定した。
(3)結晶の同定:チタニアの結晶構造の同定は、X線回折装置を用いて粉末法によって行った。
(4)ルチル型結晶チタニアの割合:ルチル型結晶チタニア(関東化学(株)、試薬特級)と非晶質シリカを任意の割合に混合した試料を作り、粉末X線回折装置を用いてルチル型チタニアの(110)面の回折ピークの積分強度を測定した。ルチル型結晶チタニアの含有率に対してそれぞれの積分強度をプロットして検量線を作成した。上記と測定条件を同一にして、各実施例の試料の粉末X線回折を測定し、上記検量線よりルチル型結晶チタニアの含有率を算出した。全チタニア含有率(モル%)に対する該ルチル型結晶チタニアの含有率(モル%)の百分率をルチル型結晶チタニアの割合(モル%)と定義した。
【0047】
製造例1
共加水分解物粒子(A)の合成:撹拌羽根付きの内容積4リットルのガラス製反応容器にメタノール140g、イソプロパノール260g、およびアンモニア水(25重量%)100gを仕込み、反応液を調製し、反応液の温度を40℃に保持しつつ攪拌した。
【0048】
次に、3リットルの三角フラスコに、シリコンテトラメトキシド(Si(OMe)4、コルコート(株)、商品名;メチルシリケート39)799gを仕込み、撹拌しながら、メタノール288gと0.1重量%塩酸水溶液(35%塩酸、和光純薬工業(株)を1/1000に水で希釈)41gを加え、約10分間撹拌した。続いて、チタニウムテトライソプロポキシド(Ti(O−i−Pr)4、日本曹達(株)、品名;A−1(TPT))213gをイソプロパノール450gで希釈した液を加え、透明な均一溶液(シリコンテトラアルコキシドとチタニウムテトラアルコキシドの共縮合物)を得た。
【0049】
上記均一溶液1792gとアンモニア水(25重量%)480gの各々を前記反応液中に、最初は滴下速度を小さくし、終盤にかけて徐々に速度を大きくして、8時間かけて同時に滴下した。滴下終了後、得られた共加水分解物をろ過し、150℃で乾燥したところ、約370gの共加水分解物が得られた。得られた共加水分解物は走査型電子顕微鏡で観察したところ、平均粒子径0.40μmの極めて単分散性の高い球状粒子〔以下、粒子(A)という〕であった。該粒子(A)中のチタニアの配合率〔Ti/(Ti+Si)〕は仕込み組成より12.5モル%であった。
【0050】
製造例2
共加水分解物粒子(B)の合成:撹拌羽根付きの内容積4リットルのガラス製反応容器にメタノール80g、イソプロパノール320g、およびアンモニア水(25重量%)100gを仕込み、反応液を調製し、反応液の温度を40℃に保持しつつ攪拌した。
【0051】
次に、3リットルの三角フラスコに、シリコンテトラメトキシド(Si(OMe)4、コルコート(株)、商品名;メチルシリケート39)868gを仕込み、撹拌しながら、メタノール115gと0.1重量%塩酸水溶液(35%塩酸、和光純薬工業(株)を1/1000に水で希釈)16gを加え、約10分間撹拌した。続いて、チタニウムテトライソプロポキシド(Ti(O−i−Pr)4、日本曹達(株)、品名;A−1(TPT))85gをイソプロパノール180gで希釈した液を加え、透明な均一溶液(シリコンテトラアルコキシドとチタニウムテトラアルコキシドの共縮合物)を得た。
【0052】
上記均一溶液1265gとアンモニア水(25重量%)480gの各々を前記反応液中に、最初は滴下速度を小さくし、終盤にかけて徐々に速度を大きくして、8時間かけて同時に滴下した。滴下終了後、得られた共加水分解物をろ過し、150℃で乾燥したところ、約365gの共加水分解物が得られた。得られた共加水分解物は走査型電子顕微鏡で観察したところ、平均粒子径0.54μmの極めて単分散性の高い球状粒子〔以下、粒子(B)という〕であった。該粒子(B)中のチタニアの配合率〔Ti/(Ti+Si)〕は仕込み組成より5.0モル%であった。
【0053】
製造例3
共加水分解物粒子(C)の合成:撹拌羽根付きの内容積4リットルのガラス製反応容器にイソプロパノール350g、およびアンモニア水(25重量%)150gを仕込み、反応液を調製し、反応液の温度を40℃に保持しつつ攪拌した。
【0054】
次に、5リットルの三角フラスコに、シリコンテトラメトキシド(Si(OMe)4、コルコート(株)、商品名;メチルシリケート39)1585gを仕込み、撹拌しながら、メタノール611gと0.1重量%塩酸水溶液(35%塩酸、和光純薬工業(株)を1/1000に水で希釈)86gを加え、約10分間撹拌した。続いて、チタニウムテトラブトキシド(Ti(O−Bu)4、日本曹達(株)、品名;B−1(TBT))541gをイソプロパノール960gで希釈した液を加え、透明な均一溶液(シリコンテトラアルコキシドとチタニウムテトラアルコキシドの共縮合物)を得た。
【0055】
続いて、上記均一溶液とアンモニア水(25重量%)の各々を前記反応液中に、同時に滴下した。ただし、滴下を開始してから5時間の間は、反応液の液面すれすれにチューブの先を固定し、滴下によって増加した分の反応液をポンプで系外に汲み出すことによって、実質的に反応液の体積が変化しないように粒子を合成した。滴下を開始してから5時間後からは反応液の汲み出しは中止して10時間まで滴下を継続した。滴下終了後、得られた共加水分解物をろ過し、150℃で乾燥したところ、約430gの共加水分解物が得られた。得られた共加水分解物は走査型電子顕微鏡で観察したところ、平均粒子径1.62μmの球状粒子〔以下、粒子(C)という〕であった。該粒子(C)中のチタニアの配合率〔Ti/(Ti+Si)〕は仕込み組成より13.25モル%であった。
【0056】
製造例4
共加水分解物粒子(D)の合成:内容積4リットルのポリ容器に、シリコンテトラメトキシド(Si(OMe)4、コルコート(株)、商品名;メチルシリケート39)1681gを仕込み、撹拌しながらメタノール221gと0.1重量%塩酸水溶液(35%塩酸、和光純薬工業(株)を1/1000に水で希釈)124gを加え、10分間撹拌した。続いて、チタニウムテトライソプロポキシド(Ti(O−i−Pr)4、日本曹達(株)、品名;A−1(TPT))490gを加え、透明な均一溶液(シリコンテトラアルコキシドとチタニウムテトラアルコキシドの共縮合物)を得た。上記溶液を撹拌しながら氷冷し、十分に冷えたところで、氷冷したイオン交換水795gを加えた。約10分間攪拌した後、室内に放置しておいたところ、内容物はゲル化し寒天状に固化した。続いて、内径1mm程度のピンホールを開けた蓋を閉めて、95℃に保った恒温槽中に12時間放置した。さらにイオン交換水を300g加えて120℃で5時間保持した後、蓋を開けて一晩乾燥したところ、小指大の透明なガラス塊が得られた。上記ガラス塊をボールミルで粗粉砕した後、ジェットミル(株式会社セイシン企業製、FS−4)により、ノズル圧力5.5kg/cm2で粉砕した。粉砕後の共加水分解物を走査型電子顕微鏡で観察したところ、粒子径は1μmから8μmの範囲で、粒子形状は不定形の共加水分解物〔以下、粒子(D)という〕であった。該粒子(D)中のチタニアの配合率〔Ti/(Ti+Si)〕は仕込み組成より13.5モル%であった。
【0057】
実施例1〜7
製造例1〜4の各共加水分解物粒子を表1に記載の条件で加熱し、シリカ−チタニア複合酸化物粒子を得た。これらの物性を併せて表1に示す。尚、各共加水分解物粒子の焼成は以下に記載の方法に準拠して行った。
【0058】
分子量2万のポリエチレングリコール(和光純薬工業製)5gとメタノール25gを加熱しながら溶かして透明な溶液を調製した。共加水分解物粒子25gと上記溶液を乳鉢で良く混合した後、徐々にメタノールを蒸発させて該共加水分解物粒子とポリエチレングリコールの乾燥した混合物を得た。ルツボに入れた上記混合物を電気炉に仕込み、所定のガスを流しながら所定の温度で所定時間加熱した。なお、この時点では、通常粒子は薄く灰色がかっていたが、灰色の成分はポリエチレングリコールが炭化した物であった。引続き空気を流しながら800℃で2時間加熱し、炭化物を燃焼させて白色の複合酸化物粒子を得た。
【0059】
実施例8
窒素雰囲気下900℃で2時間加熱した以外は実施例1と同様にしてシリカ−チタニア複合酸化物粒子を得た。実施例1と同様にしてその粒子の物性を測定したところ、平均粒子径は0.36μm、ルチル型結晶チタニアの割合は1モル%であった。次に、上記シリカ−チタニア複合酸化物粒子の一部を空気中、1200℃で6時間加熱したところ平均粒子径は0.35μm、屈折率は1.547、結晶構造はアナターゼ型構造と共にルチル型構造のピークが検出された。このときのルチル型結晶チタニアの割合は5モル%であった。
【0060】
比較例1〜3
実施例1〜7に準じて各共加水分解物粒子を表1に記載の条件で加熱し、シリカ−チタニア複合酸化物粒子を得た。これらの物性を表1に示す。
【0061】
【表1】
【0062】
【発明の効果】
本発明の製造方法によって製造される複合酸化物は、複合酸化物中のチタニアがより屈折率の高いルチル型構造であるため、従来知られているアナターゼ型構造の複合酸化物に比べてチタニア含有量を減らすことができる。このため、複合酸化物の製造に関しては、チタニウムアルコキシド化合物の使用量の低減が図れ、さらにまた、球状シリカ−チタニア複合酸化物粒子に関しては、チタニア含有量の少ない球状シリカ−チタニア複合酸化物粒子を提供することが可能となった。
【0063】
本発明の複合酸化物は、屈折率を任意に調整できるため、光半導体用封止材や歯科用コンポジットレジンなどの光を透過する必要のある複合樹脂の充填材として有用である。また、従来にはなかったルチル型結晶チタニアの微結晶を含有したシリカ−チタニア複合酸化物は、新規の触媒あるいは触媒担体としても期待できる。
【発明の属する技術分野】
本発明は光半導体用封止材や歯科用コンポジットレジンなどの複合樹脂の充填材に適した複合酸化物の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
シリカとチタニアからなる複合酸化物(以後、複合酸化物と略記する)は、熱膨張係数がゼロ又は負の値を示すことや、チタニアの含有率を変えるとことにより屈折率の微調整が可能であることなどの優れた性質を持っているが、チタニアが分相すると複合酸化物が白濁するので、作製方法に工夫がいる。そのため従来より、様々な方法で合成が試みられている。
【0003】
例えば、シリカとチタニアを原料にした溶融法、シリコンとチタニウムの塩化物を原料に1750℃まで加熱するフレームハイドロリシス法(P.C.Schultz、Journal of The American Ceramic Society、59巻、214ページ、1976年)、シリコンとチタニウムのアルコキシド化合物を用いるゾルーゲル法(神谷寛一、作花済夫、日本化学会誌,No.10、1571ページ、1981年)等がある。
【0004】
溶融法では、一般にシリカとチタニアを溶融する温度まで加熱するので分相し易いという問題がある。複合酸化物中のチタニアはルチル型に結晶化するが、この方法では球状の粒子は得られない。フレームハイドロリシス法では、得られた非晶質の複合酸化物は、再加熱するとチタニアがルチル型に結晶化するが、この方法では膜状物や塊状物しか得られず、球状の粒子は得られない。一方、ゾル−ゲル法では、製造方法によっては球状の粒子が得られるが、複合酸化物中のチタニアは加熱すると非晶質であったものがアナターゼ型に結晶化する。この方法では、これまでルチル型に結晶化した例はない。
【0005】
更に具体的に説明すると、複合酸化物の球状粒子が、特公平1−38043に記載されている。この場合、上記球状粒子を加熱処理することにより、粒子中のチタニアの一部がアナターゼ型に結晶化しているが、ルチル型への結晶化例は開示されていない。また、特開平2−153816に開示されているシリコンとチタニウムのアルコキシド化合物の混合物を火炎中に導入して、球状の複合酸化物粒子を製造する方法では、得られる粒子が非晶質である。同様に、複合酸化物の破砕粒子として、特開平3−232730及び特開平3−232741に、シリコンとチタニウムのアルコキシド化合物を原料として、複合酸化物粒子を得る方法が開示されているが、これらの粒子中のチタニアは加熱によってアナターゼ型に結晶化することが記載されている。
【0006】
複合酸化物中のチタニアは、通常上述の如く2種類の結晶になることが知られている。ルチル型とアナターゼ型の2種類の結晶の屈折率を比較すると、アナターゼ型は、nω=2.5612、nε=2.4880であるのに対して、ルチル型は、nω=2.6124、nε=2.8993であり、ルチル型の方が高い。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
光半導体用封止材には、半導体から発生する光を透過させるための透明性が、また、歯科用コンポジットレジンには、天然の歯牙と同等の半透明性が、それぞれ求められる。そのためには、封止材やコンポジットレジン等の複合樹脂に用いる充填材の屈折率は、それぞれの樹脂のそれに一致、又は、近くなければならない。即ち、特定の屈折率を有する粒子が必要である。
【0008】
特定の屈折率を有する複合酸化物粒子を調製するためには、屈折率がシリカより高いチタニアをシリカと複合化させるが、この場合、チタニアの結晶構造はルチル型構造の方が非晶質構造やアナターゼ型構造よりも屈折率が高いため、効果的である。
【0009】
また、複合酸化物粒子中のチタニアの含有量が多いと、加熱によって析出するチタニアの結晶が大きくなり、粒子の透明性が低下する傾向にある。よって、複合酸化物粒子中のチタニアの含有率をできるだけ少ない条件で、屈折率を向上させる必要がある。そのためには、複合酸化物粒子中のチタニアの結晶構造は非晶質構造やアナターゼ型構造よりもルチル型構造の方が望ましい。
【0010】
複合酸化物粒子は、シリカとチタニアを原料とする熔融法で製造するとチタニアが分相して白濁し易く、また、たとえ熔融法で透明体ができても粉砕、分級工程を要し不純物が混入し易いので、金属アルコキシドを原料とするゾル−ゲル法を採用するのが好ましい。ところが、ゾル−ゲル法で得られた複合酸化物は、前記の通り、これに含まれるチタニアは非晶質構造又はアナターゼ型構造が知られているのみで、ルチル型構造のものは知られていなかった。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、鋭意検討した結果、ゾル−ゲル法で調製したシリカ−チタニア共加水分解物を特定条件で熱処理することによって、得られるシリカ−チタニアの複合酸化物中のチタニアがルチル型に結晶化することを見い出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
即ち、本発明は、シリカとチタニアを主な構成成分とする平均粒子径が0.05〜50μmの球状粒子であり、全チタニア中のルチル型結晶チタニアの割合が5モル%以上であることを特徴とする複合酸化物粒子である。又、他の発明は、シリコンアルコキシド化合物とチタニウムアルコキシド化合物とを加水分解して得られる共加水分解物を、非酸化性雰囲気下に900℃〜1300℃で加熱することを特徴とするルチル型結晶チタニアを含むシリカーチタニア複合酸化物粒子の製造方法である。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明の複合酸化物粒子は、シチカとチタニアを基本成分とする平均粒子径が0.05〜50μm球状粒子であり、チタニアの少なくとも一部にルチル型結晶を含んでいる(以下、シリカ−チタニア複合酸化物粒子という)。それ以外のチタニアは非晶質構造あるいはアナターゼ型構造などの他の結晶構造であっても良い。チタニア中の該ルチル型結晶チタニアの含有割合は5モル%以上必要である。ルチル型結晶チタニアが5モル%より少ないと、シリカ−チタニア複合酸化物粒子の屈折率をより効果的に向上させることができない。
【0014】
ルチル型結晶チタニアの含有率を調べるには、粉末X線回折法によって測定したルチル型結晶チタニアの(110)面の回折ピークのピーク強度を測定し、別途用意した検量線より算出することができる。検量線を作成するには、100%ルチル型に結晶化したルチル型結晶チタニアと非晶質シリカを任意の割合に混合した試料を、上記と同様にして測定し、ルチル型結晶チタニアの含有率とピーク強度の関係を求めれば良い。
【0015】
シリカ−チタニア複合酸化物粒子に含まれる結晶化したルチル型およびアナターゼ型チタニア結晶の大きさは、特に限定されないが用途によっては小さい程好ましい。例えば、本発明のシリカ−チタニア複合酸化物粒子を高い光の透過率が求められる光半導体用封止材の充填材に用いる場合には、結晶化したチタニアの粒子径は100nm以下、好ましくは50nm以下、より好ましくは20nm以下であることが望ましい。結晶化したチタニア結晶の大きさは、透過型電子顕微鏡で観察することができるし、粉末X線回折の回折ピークの半値幅から計算によって求めることもできる。
【0016】
当該粒子の構成成分の一つであるチタニアは、シリカと化学的に結合した状態、或は、シリカ中に微結晶として分散した状態で存在するもので、シリカとチタニアを物理的に分離することができない。両成分がこうした状態で存在することは、赤外線スペクトル又は屈折率を測定することや透過型電子顕微鏡像の観察により確認することができる。例えば赤外線スペクトルについては、950nm-1付近に特異な吸収を認めることができるし、シリカ−チタニア複合酸化物粒子の屈折率は両成分の各々の屈折率の間にあり、チタニアの含有率が増加すると共に、屈折率も上昇する。また、透過型電子顕微鏡像を観察すれば、非晶質のシリカ−チタニアかまたは非晶質シリカマトリックス中にチタニアの微結晶が分散した状態かを調べることができる。
【0017】
本発明のシリカ−チタニア複合酸化物粒子に含まれるチタニアの配合率は、好ましくは3モル%以上50モル%以下さらに好ましくは3モル%以上30モル%以下の範囲にあることが望ましい。チタニアの配合率が小さい場合には、高温で加熱してもチタニアは結晶化し難いため、本発明のシリカ−チタニア複合酸化物粒子を得ることができない場合がある。一方、チタニアの配合率が高すぎる場合には、一般に球状粒子とすることが困難となるほかに、高温で加熱すると、チタニアの結晶が大きくなり過ぎるため透明性が損なわれ、透明性の高い複合樹脂用充填材としては使用できなくなる傾向にある。
【0018】
本発明のシリカ−チタニア複合酸化物粒子は、平均粒子径が0.05〜50μmの範囲にある。平均粒子径が0.05μmを下回ると粒子が凝集し易く、複合樹脂に充填する場合にも操作性が良くないなどの不具合いが生じる。平均粒子径が50μmを越えた場合には、複合樹脂にした場合に透明性が保てないなどの問題がある。なお、表面滑沢性が求められる歯科用コンポジットレジンに本発明の粒子を用いる場合には、平均粒子径が10μm以下が好ましく、1μm以下がより好ましい。また、高い光透過性が求められる光半導体用の封止材の充填材として用いる場合には、平均粒子径は10μm以下が好ましく、1μm以下がより好ましい。
【0019】
また、本発明のシリカ−チタニア複合酸化物粒子の形状は球形である。形状が球形でない破砕粒子の様な不定型の粒子を樹脂と混練する場合には、粘度が高くなったり、表面滑沢性が悪いなどの問題が生じる場合がある。また、光半導体などを封止する透明封止材には、半導体素子を傷つけないように球状の粒子が好まれる。
【0020】
シリカ−チタニア複合酸化物粒子の組成は、蛍光X線分析、ICP分析、原子吸光分析、化学分析など公知の方法で明らかにすることができる。粒子の平均粒子径や形状の観察には、走査型電子顕微鏡や透過型電子顕微鏡等の電子顕微鏡による方法が適している。また、粒子の平均粒子径の測定には粒度分布計なども使用することができる。
【0021】
上記シリカ−チタニア複合酸化物粒子は、代表的には以下に述べる製造方法により製造することができる。即ち、シリコンアルコキシド化合物とチタニウムアルコキシド化合物との混合物を加水分解して得られたシリコンとチタニウムを主な構成成分とする球状共加水分解物粒子を非酸化性雰囲気下に900℃〜1300℃で加熱して製造される。
【0022】
尚、この製造方法は、前記ルチル結晶チタニアを含むシリカ−チタニア複合酸化物粒子の製造のみならず、同じくルチル結晶チタニアを含む板状、棒状、不定型のシリカ−チタニア複合酸化物の製造に応用できる。従って、以下その形状に限定する事なくルチル結晶チタニアを含むシリカ−チタニア複合酸化物(以下、単にシリカーチタニア複合酸化物という)一般の製法として説明する。
【0023】
シリコンアルコキシド化合物としては、一般式
Si(OR)4、又はSiRn(OR')4−n 〔nは1〜3の整数〕
で示されるシリコンアルコキシド化合物を特に限定することなく採用できる。このような化合物として、例えば、シリコンテトラエトキシド、シリコンテトラメトキシド、シリコンテトラプロポキシド、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン等が挙げられる。上記一般式でnが1または2の場合のシリコンアルコキシド化合物は、通常上に例示したようなトリアルコキシまたはテトラアルコキ型のシリコンアルコキシド化合物に一部混合して用いられる。
【0024】
チタニウムアルコキシド化合物としては、加水分解可能なアルコキシド基を有するチタニウムアルコキシド化合物を広く採用できる。例えばチタニウムテトラエトキシド、チタニウムテトライソプロポキシド、チタニウムテトラブトキシド、等が好適に採用される。
【0025】
シリコンアルコキシド化合物とチタニウムアルコキシド化合物との混合物を加水分解することによって共加水分解物が得られるが、該共加水分解物を900℃以上の温度で加熱することによってシリカ−チタニア複合酸化物に転化する。
【0026】
シリカーチタニア複合酸化物の製造に於いては、加水分解前に両アルコキシド化合物を共縮合させ低縮合体にするのが好ましい。シリコンアルコキシド化合物とチタニウムアルコキシド化合物とは、一般に、加水分解速度が異なるため、両化合物が縮合していない混合物を加水分解すると、シリカとチタニアの粒子がそれぞれ独立して生成する場合がある。
【0027】
両化合物の低縮合体を得るには、公知の方法を特に限定することなく採用できるが、通常、シリコンアルコキシド化合物の部分加水分解物にチタニウムアルコキシド化合物を添加する方法が好ましく採用される。
【0028】
低縮合体の溶液に用いる溶媒は、低縮合体を溶解するものであれば特に限定されず使用できるが、反応性、操作性、入手が容易なこと等の理由で一般には、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール等のアルコール類が好適である。また、ジエチルエーテル等のエーテル類、酢酸エチル、酢酸メチル等のエステル類、ベンゼン、トルエン、ヘキサン等の炭化水素類の様な有機溶媒を一部混合して用いることもできる。
【0029】
該低縮合体を加水分解するには、公知の方法を広く採用できるが、酸性又はアルカリ性の溶液中で加水分解する方法が好ましく採用される。
【0030】
低縮合体の加水分解物が球状の粒子であるものを得ようとする場合には、該低縮合体の溶液をアルカリ性溶液中で加水分解するのが好ましい。アルカリ性溶液の溶媒には、公知の有機溶媒が何等制限されることなく使用できる。一般に好適に使用される溶媒は、前記低縮合体の溶媒として記載したものと同じアルコール類、又は、エーテル類、エステル類、炭化水素類等の有機溶媒を前記アルコール類に一部添加した混合溶媒と水とよりなる含水溶媒である。アルカリ性溶液をアルカリ性に保つためには、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、トリメチルアミン、トリエチルアミン等の公知のアルカリ化合物を使用できるが、アンモニアが特に好適である。
【0031】
上記球状共加水分解物粒子の粒子径は、アルカリ性溶液に用いるアルカリ濃度、水の濃度、有機溶媒の種類等の要因によって影響を受けるので予め適宜これらの条件を決定しておくのが好ましい。一般には、前記アルカリ性溶液のアルカリ濃度は1.0〜10モル/リットルの範囲で選択するのが好ましく、アルカリ濃度が高いほど、得られる球状共加水分解物粒子の粒子径が大きくなる傾向にある。またアルカリ性溶液中の水の濃度は、一般には、0.5〜50モル/リットルの範囲から選ぶのが好適である。前記アルカリ性溶液中の有機溶媒の種類については、一般には溶媒に用いるアルコール類の炭素原子数が多くなれば、得られる球状シリカーチタニア複合酸化物粒子の粒子径が大きくなる傾向にある。
【0032】
前記低縮合体の溶液をアルカリ性溶液に添加する方法は、特に限定されないが、一般には少量づつ長時間かけて添加するのが好ましく、通常、数分〜10数時間の範囲で実施すればよい。低縮合体の溶液をアルカリ性溶液に添加する間、アルカリ性溶液の温度は、種々の条件によって異なり一概に限定することができないが、通常は0℃〜50℃の範囲で実施すればよい。さらに、低縮合体の溶液をアルカリ性溶液に添加する間、アルカリ性溶液はマグネチックスターラーや攪拌棒などによって常時攪拌しておく必要がある。
【0033】
以上の操作によって生成する球状共加水分解物粒子は分離後乾燥すればよい。このようにして得られた球状共加水分解物粒子は、粒度分布範囲が狭い球状の共加水分解物粒子である。
【0034】
一方、共加水分解物の形状が球状以外の場合には、前記低縮合体を酸性やアルカリ性の水溶液中で加水分解する公知の方法が好ましく採用される。例えば、酸性水溶液と前記の低縮合体を混合、攪拌し、加水分解させることによって、一般にバルク体と呼ばれる複合酸化物の塊が得られることが知られているが、この様なバルク体あるいはバルク体を粉砕した不定形粒子、あるいは、前記低縮合体を高分子フィルム上に薄くコーティングし、水蒸気の存在下に放置して加水分解させた固形物を剥離させて得られる鱗片状の共加水分解物なども前記球状共加水分解物粒子と同様に、シリカーチタニア複合酸化物を製造するための原料とすることができる。
【0035】
以上のようにして得られた球状共加水分解物粒子または他の形状の共加水分解物を非酸化性雰囲気下に900〜1300℃で加熱することによって各形状のシリカーチタニア複合酸化物が得られる。
【0036】
加熱温度は、900℃より低い温度で加熱するとチタニアが結晶化しないかあるいは、結晶化度が極めて低い。また、1300℃より高い温度で加熱すると、チタニアの結晶が大きくなりシリカーチタニア複合酸化物の透明性が低下したり、あるいはシリカが非晶質からクリストバライト結晶に結晶化したり、あるいは又シリカーチタニア複合酸化物自体の着色が強くなったりするので好ましくない。特に、共加水分解物が球状または他の形状の粒子である場合、粒子同志が焼結し易くなる傾向にあるため好ましくない。
【0037】
更に、シリカーチタニア複合酸化物が1μm以下のシリカ−チタニア複合酸化物粒子の場合には、高温ほど粒子同志が焼結し易くなる傾向が強くなるため、好ましくは1200℃以下、さらに好ましくは1100℃以下で加熱することが望ましい。但し、上記粒子を1200℃を越える温度の気相中に、分散した状態で送り、加熱するならば焼結はない。加熱に要する時間は、粒子の大きさや雰囲気によって異なるので一概に限定できないが、1〜20時間が適当である。
【0038】
ところで、共加水分解物を非酸化性雰囲気下に900℃以上の温度で加熱してもシリカーチタニア複合酸化物中のチタニア含有量が低い場合などでは、ルチル型のチタニア結晶が確認できないか、あるいは、確認はできても極めて少量である場合がある。この様な場合には、該複合酸化物を更に空気中などの、非酸化性雰囲気以外の雰囲気下で再加熱するすることによって、ルチル型構造のチタニア結晶の含有量を増加させることができる。この様な現象は、非酸化性雰囲気下で加熱したときに、X線回折などでは測定できない様なルチル型構造の超微結晶が既に生成しており、再加熱によってそれらが成長したものと考えられる。
【0039】
従って、本発明では、非酸化性雰囲気下に900〜1300℃で加熱した後、更に酸化性雰囲気下で再加熱することによってルチル型のチタニア結晶を成長させるという態様も好ましく採用される。なお、この場合、酸化性雰囲気下に加熱するため、ルチル型のチタニア結晶の成長とともに、新たにアナターゼ型のチタニア結晶も発生することが多いのでルチル型構造とアナターゼ型構造の2種類のチタニア結晶が混在したシリカーチタニア複合酸化物となる場合が多い。
【0040】
本発明のシリカーチタニア複合酸化物を製造するためには、共加水分解物を加熱するときの雰囲気を非酸化性に保つことが必須である
共加水分解物は、加熱によってシリカーチタニア複合酸化物になる。加熱の雰囲気として、空気や酸素など酸化性のガス雰囲気を採用すると、共加水分解物中のチタニアはアナターゼ型に結晶化し、ルチル型にはならない。
【0041】
非酸化性の雰囲気としては、加熱に用いる電気炉の中を、非酸化性の雰囲気に保つことができる様であれば特に限定されない。例えば、加熱に用いる電気炉の中を窒素、アルゴン、ヘリウム、水素、一酸化炭素、二酸化炭素等の気体の1種または2種を用いて非酸化性のガス雰囲気に保つか、あるいは真空に保つのが好適である。
【0042】
更に、酸化を積極的に防止するために、共加水分解物の表面を有機化合物で予め被覆しておくのがより好ましい。共加水分解物の表面を有機化合物で被覆する場合、該有機化合物としては公知の化合物を広く採用できるが、共加水分解物の表面を確実に被覆でき、しかも、揮発しにくいものが好ましい。このようなものとして、ポリエチレングリコール、ポリスチレン、ポリアクリル酸等何等かの溶媒に可溶なポリマーが好ましく、中でもアルコールに可溶なポリエチレングリコールや水に溶け易いポリアクリル酸が好ましい。
【0043】
該有機化合物を共加水分解物に被覆するには、例えば、共加水分解物にポリエチレングルコールのアルコール溶液を添加し、良く混合した後、溶媒を乾燥させる方法が採用される。
【0044】
上記有機化合物を被覆した共加水分解物を非酸化性雰囲気下に加熱すると、有機化合物の炭化物が粒子の表面又は内部に残存し、灰白色に着色する場合がある。このような場合には、これらの共加水分解物を空気などの酸化性雰囲気中で再び加熱し、炭化物を酸化除去することによって白色のシリカ−チタニア複合酸化物とすることができる。
【0045】
共加水分解物の加熱によって得られるシリカ−チタニア複合酸化物中のチタニアが、上記条件下で熱処理すると選択的にルチル型に結晶化する機構は明らかではないが、以下のように考えられる。アルコキシド化合物を出発物質として合成したシリコンとチタニウムを主成分とする共加水分解物を非酸化性雰囲気下に加熱すると、出発物質であるチタニウムアルコキシド化合物やシリコンアルコキシド化合物の加水分解によって生成した有機化合物、あるいは、共加水分解物中に含まれる有機溶媒やアルコキシ基の残基等が非酸化性雰囲気中で熱分解されることによって、共加水分解物の周囲が強い還元性雰囲気に保たれる。このため、共加水分解物または複合酸化物中のチタニウムの電荷や酸素の配位数が微妙に変化し、チタニアの選択的なルチル型構造への転移が起こっているものと考えられる。チタニア単一成分系では、アナターゼ型からルチル型への不可逆的な転移が知られており、チタニア中の酸素イオン空孔が相転移の核生成を促進するためだといわれている。しかし、本発明の系では、複合酸化物中のチタニアがアナターゼ型を経由してルチル型に転移する事実を確認することはできず、非晶質チタニアがアナターゼ型を経由せずに、直接ルチル型に結晶化したのではないかと考えられる。
【0046】
【実施例】
次に、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明は以下の実施例により制限されるものではない。以下の実施例で利用したシリカ−チタニア複合酸化物粒子の性状の測定は、特に断わらない限り次のようにして測定した。
(1)平均粒子径:走査型電子顕微鏡の撮影像より求めた。
(2)粒子の屈折率:試料粒子を屈折率が異なる種々の25℃の液に懸濁させ、懸濁液が最も透明に見える液の屈折率をアッベの屈折率計によって測定した。
(3)結晶の同定:チタニアの結晶構造の同定は、X線回折装置を用いて粉末法によって行った。
(4)ルチル型結晶チタニアの割合:ルチル型結晶チタニア(関東化学(株)、試薬特級)と非晶質シリカを任意の割合に混合した試料を作り、粉末X線回折装置を用いてルチル型チタニアの(110)面の回折ピークの積分強度を測定した。ルチル型結晶チタニアの含有率に対してそれぞれの積分強度をプロットして検量線を作成した。上記と測定条件を同一にして、各実施例の試料の粉末X線回折を測定し、上記検量線よりルチル型結晶チタニアの含有率を算出した。全チタニア含有率(モル%)に対する該ルチル型結晶チタニアの含有率(モル%)の百分率をルチル型結晶チタニアの割合(モル%)と定義した。
【0047】
製造例1
共加水分解物粒子(A)の合成:撹拌羽根付きの内容積4リットルのガラス製反応容器にメタノール140g、イソプロパノール260g、およびアンモニア水(25重量%)100gを仕込み、反応液を調製し、反応液の温度を40℃に保持しつつ攪拌した。
【0048】
次に、3リットルの三角フラスコに、シリコンテトラメトキシド(Si(OMe)4、コルコート(株)、商品名;メチルシリケート39)799gを仕込み、撹拌しながら、メタノール288gと0.1重量%塩酸水溶液(35%塩酸、和光純薬工業(株)を1/1000に水で希釈)41gを加え、約10分間撹拌した。続いて、チタニウムテトライソプロポキシド(Ti(O−i−Pr)4、日本曹達(株)、品名;A−1(TPT))213gをイソプロパノール450gで希釈した液を加え、透明な均一溶液(シリコンテトラアルコキシドとチタニウムテトラアルコキシドの共縮合物)を得た。
【0049】
上記均一溶液1792gとアンモニア水(25重量%)480gの各々を前記反応液中に、最初は滴下速度を小さくし、終盤にかけて徐々に速度を大きくして、8時間かけて同時に滴下した。滴下終了後、得られた共加水分解物をろ過し、150℃で乾燥したところ、約370gの共加水分解物が得られた。得られた共加水分解物は走査型電子顕微鏡で観察したところ、平均粒子径0.40μmの極めて単分散性の高い球状粒子〔以下、粒子(A)という〕であった。該粒子(A)中のチタニアの配合率〔Ti/(Ti+Si)〕は仕込み組成より12.5モル%であった。
【0050】
製造例2
共加水分解物粒子(B)の合成:撹拌羽根付きの内容積4リットルのガラス製反応容器にメタノール80g、イソプロパノール320g、およびアンモニア水(25重量%)100gを仕込み、反応液を調製し、反応液の温度を40℃に保持しつつ攪拌した。
【0051】
次に、3リットルの三角フラスコに、シリコンテトラメトキシド(Si(OMe)4、コルコート(株)、商品名;メチルシリケート39)868gを仕込み、撹拌しながら、メタノール115gと0.1重量%塩酸水溶液(35%塩酸、和光純薬工業(株)を1/1000に水で希釈)16gを加え、約10分間撹拌した。続いて、チタニウムテトライソプロポキシド(Ti(O−i−Pr)4、日本曹達(株)、品名;A−1(TPT))85gをイソプロパノール180gで希釈した液を加え、透明な均一溶液(シリコンテトラアルコキシドとチタニウムテトラアルコキシドの共縮合物)を得た。
【0052】
上記均一溶液1265gとアンモニア水(25重量%)480gの各々を前記反応液中に、最初は滴下速度を小さくし、終盤にかけて徐々に速度を大きくして、8時間かけて同時に滴下した。滴下終了後、得られた共加水分解物をろ過し、150℃で乾燥したところ、約365gの共加水分解物が得られた。得られた共加水分解物は走査型電子顕微鏡で観察したところ、平均粒子径0.54μmの極めて単分散性の高い球状粒子〔以下、粒子(B)という〕であった。該粒子(B)中のチタニアの配合率〔Ti/(Ti+Si)〕は仕込み組成より5.0モル%であった。
【0053】
製造例3
共加水分解物粒子(C)の合成:撹拌羽根付きの内容積4リットルのガラス製反応容器にイソプロパノール350g、およびアンモニア水(25重量%)150gを仕込み、反応液を調製し、反応液の温度を40℃に保持しつつ攪拌した。
【0054】
次に、5リットルの三角フラスコに、シリコンテトラメトキシド(Si(OMe)4、コルコート(株)、商品名;メチルシリケート39)1585gを仕込み、撹拌しながら、メタノール611gと0.1重量%塩酸水溶液(35%塩酸、和光純薬工業(株)を1/1000に水で希釈)86gを加え、約10分間撹拌した。続いて、チタニウムテトラブトキシド(Ti(O−Bu)4、日本曹達(株)、品名;B−1(TBT))541gをイソプロパノール960gで希釈した液を加え、透明な均一溶液(シリコンテトラアルコキシドとチタニウムテトラアルコキシドの共縮合物)を得た。
【0055】
続いて、上記均一溶液とアンモニア水(25重量%)の各々を前記反応液中に、同時に滴下した。ただし、滴下を開始してから5時間の間は、反応液の液面すれすれにチューブの先を固定し、滴下によって増加した分の反応液をポンプで系外に汲み出すことによって、実質的に反応液の体積が変化しないように粒子を合成した。滴下を開始してから5時間後からは反応液の汲み出しは中止して10時間まで滴下を継続した。滴下終了後、得られた共加水分解物をろ過し、150℃で乾燥したところ、約430gの共加水分解物が得られた。得られた共加水分解物は走査型電子顕微鏡で観察したところ、平均粒子径1.62μmの球状粒子〔以下、粒子(C)という〕であった。該粒子(C)中のチタニアの配合率〔Ti/(Ti+Si)〕は仕込み組成より13.25モル%であった。
【0056】
製造例4
共加水分解物粒子(D)の合成:内容積4リットルのポリ容器に、シリコンテトラメトキシド(Si(OMe)4、コルコート(株)、商品名;メチルシリケート39)1681gを仕込み、撹拌しながらメタノール221gと0.1重量%塩酸水溶液(35%塩酸、和光純薬工業(株)を1/1000に水で希釈)124gを加え、10分間撹拌した。続いて、チタニウムテトライソプロポキシド(Ti(O−i−Pr)4、日本曹達(株)、品名;A−1(TPT))490gを加え、透明な均一溶液(シリコンテトラアルコキシドとチタニウムテトラアルコキシドの共縮合物)を得た。上記溶液を撹拌しながら氷冷し、十分に冷えたところで、氷冷したイオン交換水795gを加えた。約10分間攪拌した後、室内に放置しておいたところ、内容物はゲル化し寒天状に固化した。続いて、内径1mm程度のピンホールを開けた蓋を閉めて、95℃に保った恒温槽中に12時間放置した。さらにイオン交換水を300g加えて120℃で5時間保持した後、蓋を開けて一晩乾燥したところ、小指大の透明なガラス塊が得られた。上記ガラス塊をボールミルで粗粉砕した後、ジェットミル(株式会社セイシン企業製、FS−4)により、ノズル圧力5.5kg/cm2で粉砕した。粉砕後の共加水分解物を走査型電子顕微鏡で観察したところ、粒子径は1μmから8μmの範囲で、粒子形状は不定形の共加水分解物〔以下、粒子(D)という〕であった。該粒子(D)中のチタニアの配合率〔Ti/(Ti+Si)〕は仕込み組成より13.5モル%であった。
【0057】
実施例1〜7
製造例1〜4の各共加水分解物粒子を表1に記載の条件で加熱し、シリカ−チタニア複合酸化物粒子を得た。これらの物性を併せて表1に示す。尚、各共加水分解物粒子の焼成は以下に記載の方法に準拠して行った。
【0058】
分子量2万のポリエチレングリコール(和光純薬工業製)5gとメタノール25gを加熱しながら溶かして透明な溶液を調製した。共加水分解物粒子25gと上記溶液を乳鉢で良く混合した後、徐々にメタノールを蒸発させて該共加水分解物粒子とポリエチレングリコールの乾燥した混合物を得た。ルツボに入れた上記混合物を電気炉に仕込み、所定のガスを流しながら所定の温度で所定時間加熱した。なお、この時点では、通常粒子は薄く灰色がかっていたが、灰色の成分はポリエチレングリコールが炭化した物であった。引続き空気を流しながら800℃で2時間加熱し、炭化物を燃焼させて白色の複合酸化物粒子を得た。
【0059】
実施例8
窒素雰囲気下900℃で2時間加熱した以外は実施例1と同様にしてシリカ−チタニア複合酸化物粒子を得た。実施例1と同様にしてその粒子の物性を測定したところ、平均粒子径は0.36μm、ルチル型結晶チタニアの割合は1モル%であった。次に、上記シリカ−チタニア複合酸化物粒子の一部を空気中、1200℃で6時間加熱したところ平均粒子径は0.35μm、屈折率は1.547、結晶構造はアナターゼ型構造と共にルチル型構造のピークが検出された。このときのルチル型結晶チタニアの割合は5モル%であった。
【0060】
比較例1〜3
実施例1〜7に準じて各共加水分解物粒子を表1に記載の条件で加熱し、シリカ−チタニア複合酸化物粒子を得た。これらの物性を表1に示す。
【0061】
【表1】
【0062】
【発明の効果】
本発明の製造方法によって製造される複合酸化物は、複合酸化物中のチタニアがより屈折率の高いルチル型構造であるため、従来知られているアナターゼ型構造の複合酸化物に比べてチタニア含有量を減らすことができる。このため、複合酸化物の製造に関しては、チタニウムアルコキシド化合物の使用量の低減が図れ、さらにまた、球状シリカ−チタニア複合酸化物粒子に関しては、チタニア含有量の少ない球状シリカ−チタニア複合酸化物粒子を提供することが可能となった。
【0063】
本発明の複合酸化物は、屈折率を任意に調整できるため、光半導体用封止材や歯科用コンポジットレジンなどの光を透過する必要のある複合樹脂の充填材として有用である。また、従来にはなかったルチル型結晶チタニアの微結晶を含有したシリカ−チタニア複合酸化物は、新規の触媒あるいは触媒担体としても期待できる。
Claims (1)
- シリコンアルコキシド化合物とチタニウムアルコキシド化合物とを加水分解して得られる共加水分解物を、非酸化性雰囲気下に900℃〜1300℃で加熱してルチル型結晶チタニアを析出させることを特徴とする、ルチル型結晶チタニアの微結晶が非晶質マトリックス中に分散した状態で存在するシリカ−チタニア複合酸化物の製造方法。
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