JP4200001B2 - シリカ系複合酸化物粒子およびその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、シリカとシリカ以外の金属酸化物よりなる単分散性の高い球状のシリカ系複合酸化物粒子に関する。さらに詳しくは、従来製造することが不可能であった、シリカ以外の金属酸化物の含有率が30〜50モル%の範囲にある新規のシリカ系複合酸化物粒子に関する。
【0002】
【従来の技術】
テトラエチルシリケートやテトラメチルシリケートのような金属アルコキシドを原料とし、触媒を含む含水有機溶媒中で前記金属アルコキシドを加水分解・縮合させることによって単分散性の高い球状のシリカ粒子を製造することができる。また、原料に前記のシリコンのアルコキシドとシリコン以外の金属のアルコキシドを併用することによって、シリカ−チタニア、シリカ−アルミナ、シリカ−ジルコニア等のいわゆるシリカ系複合酸化物粒子を製造することもできる(以下では、上記のような製法をゾルゲル法と呼ぶ)。
【0003】
ところで、ゾルゲル法によるシリカ系複合酸化物粒子は、シリカを主成分にして各種の金属酸化物を複合化することによってシリカのみでは得られない様々な特徴ある性能を発揮することが可能である。例えば、シリカとシリカ以外の金属酸化物の配合比率を変えることにより、光学的な透明性を維持しながら粒子の屈折率を自由に調節できるという、他では見られない優れた特徴を有している。
【0004】
上記のような屈折率を調整したシリカ系複合酸化物粒子は、樹脂と複合化する際のフィラーとして極めて有用である。例えば、特許文献1には、重合可能なビニルモノマーに配合することによって、耐摩耗性や表面滑沢性を向上させ、且つ審美性(透明性)を高めた歯科用複合レジンが記載されている。また、特許文献2および特許文献3には、エポキシ樹脂と複合化することによって熱膨張係数を抑えた透明な複合樹脂が記載されている。
【0005】
ところで、上記のような従来の応用例においては、シリカ系複合酸化物粒子を配合する樹脂成分の屈折率が実質的に1.57以下であったため、シリカ以外の金属酸化物の含有率は20モル%以下で十分であった。さらに従来の方法では、シリカ以外の金属酸化物の含有率を20モル%を超えて合成しようとした場合には、粒子同志が凝集したり、または、合成中に新たな小粒子が発生したりなどして、単分散性の良好な球状のシリカ系複合酸化物粒子を得ることが難しくなるという問題があった。
【0006】
例えば、特許文献1には、一般に球状無機酸化物を得ようとする場合はシリカ以外の金属酸化物の構成比率を30モル%以下、さらには20モル%以下におさえるのが好ましく、特に0.01〜15モル%の範囲のシリカ以外の金属酸化物の構成比率を選択するときは粒子径が揃った真球に近いものとなることが記載されている。また、上記のような公知文献の実施例の中に実際に記載されているシリカ系複合酸化物粒子中のシリカ以外の金属酸化物の含有率は、最大でも24モル%であった。
【0007】
【特許文献1】
特公平3−33721号公報
【特許文献2】
特開平6−65475号公報
【特許文献3】
特開平7−41544号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、シリカ以外の金属酸化物の含有率が30モル%以上である、単分散性の高いシリカ系複合酸化物粒子とその製造方法を提供するものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた。その結果、原料となるシリコンとシリコン以外の金属のアルコキシドよりなる複合アルコキシドを調製する際に、シリコンのアルコキシドを部分加水分解させるときの条件を極めて狭い範囲で最適化することによって、シリカ以外の金属酸化物の含有率が30モル%以上であっても、単分散性の高いシリカ系複合酸化物粒子を合成できることを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0010】
即ち、本発明は、シリカ以外の金属酸化物の含有率が30〜50モル%、粒子径の変動係数が30%以下の球状のシリカ系複合酸化物粒子であって、該シリカ系複合酸化物粒子が、シリコンのアルコキシドを下記式(1)で示される、シリコン以外の金属のアルコキシドに対する水の当量Yを満足する量の水で部分加水分解した後にシリコン以外の金属のアルコキシドと混合することによって原料を調製し、触媒を含む含水有機溶媒中で前記原料を加水分解・縮合させて得られたシリカ系複合酸化物粒子及びその製造方法である。
−0.06X+3.5<Y<−0.06X+4.5 (1)
X:シリカ系複合酸化物中におけるシリカ以外の金属酸化物の含有率(モル%)。但し、30≦X≦50。
Y:シリコン以外の金属アルコキシドに対する水の当量。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明においては、シリカ系複合酸化物粒子に配合するシリカ以外の金属酸化物の種類は特に制限はない。シリカ成分と結合し、単分散性の高い球状粒子を形成できる金属酸化物が好適に採用できる。
【0012】
例えば、本発明のシリカ系複合酸化物粒子を樹脂と複合化し、透明性を必要とするような複合材用途に使用するためには、金属酸化物自身も透明性が高いものが好適である。例えば具体的には、リチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、アルミニウム、チタニウム、ジルコニウム、ゲルマニウム、ハフニウム、錫または鉛などの金属の酸化物が好適である。なお、単分散性の高い球状のシリカ系複合酸化物粒子を得ようとした場合には、上記の金属の酸化物の中でも、周期律表第4族金属の酸化物がさらに好適である。また、さらに単分散性を高めた球状のシリカ系複合酸化物粒子を得ようとした場合には、周期律表第4族金属の酸化物の中でも、チタニアおよび/またはジルコニアが最も好適である。
【0013】
また、上記金属酸化物を単独でシリカと複合化させても良いし、複数の金属の酸化物をシリカと複合化させても良い。例えば、シリカ以外の金属酸化物として、チタニアとジルコニアの両方を使用して、シリカ−チタニア−ジルコニアの3元系のシリカ系複合酸化物粒子にしても良い。上記の他に、シリカ−チタニア−酸化ナトリウム、シリカ−ジルコニア−酸化ナトリウム、シリカ−アルミナ−チタニアなどの3元系のシリカ系複合酸化物粒子が挙げられる。さらにまた、Nd、Ce、Er、Tb、Tmなどの希土類元素の酸化物などを少量添加して光学的な活性を増加させれば、微小球レーザーなどへの応用も可能である。
【0014】
本発明のシリカ系複合酸化物粒子は、シリカ以外の金属酸化物の含有率が30〜50モル%の範囲である。なお、ここで言う金属酸化物の含有率とは、シリカを構成するシリコンのモル数をSi、金属酸化物を構成する金属元素のモル数をMとすると、M/(Si+M)×100で表わされる。なお、前述したような3元系のシリカ系複合酸化物粒子の場合は、Mはシリカ以外の金属酸化物の総モル数である。
【0015】
上記金属酸化物の含有率が30モル%未満の場合は、従来公知の方法でも単分散性の高い球状のシリカ系複合酸化物粒子を製造することが可能である。本発明においては、製造方法を改良することによって、従来製造することができなかった、金属酸化物の含有率が30〜50モル%の範囲の単分散性の高い球状のシリカ系複合酸化物粒子を製造することが可能となった。なお、金属酸化物の含有率が50モル%を超えると、単分散性が低下したり、凝集したりするため、製造が困難となる傾向にある。
【0016】
本発明のシリカ系複合酸化物粒子は、粒子径の変動係数が30%以下、好ましくは20%以下、さらに好ましくは10%以下の単分散性の優れた球状のシリカ系複合酸化物粒子である。粒子の形状が球状であることによって、例えば樹脂等に充填する際に、複合樹脂の粘度を下げたり、樹脂中の粒子の充填率を上げることなどが可能である。また、粒子径の変動係数が30%以下であることによって、透明性を損なうことなしに樹脂などに高充填できるという効果がある。
【0017】
本発明のシリカ系複合酸化物粒子は、走査型や透過型の電子顕微鏡等を用いることによって粒子形状を確認することができる。また、該粒子の平均粒子径や単分散性(粒子径の変動係数)は、前記電子顕微鏡像を解析したり、精度の高い粒度分布計などで計測することができる。好適には、上記の電子顕微鏡像を市販の画像解析装置を用いて解析することによって、平均粒子径、粒子径の変動係数、円形度などを求めることができる。
【0018】
なお、本発明のシリカ系複合酸化物粒子の平均粒子径は、0.05〜数十μmの範囲、好ましくは0.05から数μmの範囲、さらに好ましくは0.05〜1μmの範囲が好適である。平均粒子径が1μmを超えて大きいものを製造しようとすると時間がかかり、さらに単分散性を維持するのが難しくなる場合がある。また、粒子形状の指標である円形度は、0.6以上、好ましくは0.7以上、さらに好ましくは0.8以上が好適である。
【0019】
本発明のシリカ系複合酸化物粒子は、シリカとシリカ以外の金属酸化物の構成成分が、一般には化学的に結合して存在するもので、これらの構成成分を物理的に分離することはできない。両成分が化学的に結合していることは、赤外スペクトルや屈折率(粒子の光学的な透明性)を測定することで確認できる。
【0020】
本発明のシリカ系複合酸化物粒子の比表面積は、特に限定されない。一般に、本粒子は500〜1300℃の範囲の温度で焼成して使用されるが、高温で焼成すると比表面積は小さくなり、低温で乾燥したものは比表面積が高くなる傾向にある。なお、1300℃を超えた温度で焼成すると、粒子同志が焼結する場合があり、単分散性を損なってしまうことが懸念される。
【0021】
本発明の複合酸化物粒子は、そのほとんどが非晶質であるが、非晶質と一部結晶質との混合物になる場合もある。前述した焼成温度が低い場合は非晶質になり易く、より高温で焼成するとシリカ以外の金属酸化物の一部が結晶質となる場合がある。一般的にこれらの性質はX線回折等の手段で解析できる。なお、一般的に、本粒子の光学的に透明な性質を利用しようとする場合は、非晶質もしくは極一部のみが結晶質に転移した程度が好ましく、そのためには前述した焼成温度を1100℃以下、好ましくは1050℃以下、さらに好ましくは1000℃以下とすることが好ましい。
【0022】
さらにまた、本発明のシリカ系複合酸化物粒子の密度や屈折率については、シリカ以外の金属酸化物の種類や含有率、さらには粒子の焼成温度等によって変わるため、一概には表示することができない。最も一般的には、密度は1.5〜5g/cm3の範囲、屈折率は1.4〜3の範囲である。なお例えば、透明性が高く単分散性にも優れているシリカ−チタニア複合酸化物粒子に関しては、チタニアの含有率が30〜50モル%の範囲のものを1000℃で焼成した場合には、密度が2.6〜3.0g/cm3の範囲、屈折率は1.65〜1.85の範囲であった。
【0023】
従来、製造が不可能であった本発明のシリカ系複合酸化物粒子は、単分散性が高い球状の高屈折粒子として、反射防止層や透明樹脂への添加剤などとして極めて有用である。本発明のような単分散性の高い粒子は、その粒子径を目的とする可視光の波長(約0.4〜0.8μm)と一致させることによって、従来知られていなかったような光学的な特徴を発揮できる可能性があり、例えばチタニアを構成成分の一つとした粒子は、光触媒としても有用であり、また高屈折粒子はホトニック結晶などへの応用も期待できる。
【0024】
続いて、本発明のシリカ系複合酸化物粒子の製造方法について説明するが、本発明のシリカ系複合酸化物粒子を製造する方法は、以下の製造方法に限定される訳ではない。
【0025】
製造方法としては、金属アルコキシドを原料とし、触媒を含む含水有機溶媒中で前記金属アルコキシドを加水分解・縮合させることによって単分散性の高い球状の粒子を製造することができる。
【0026】
ここで用いる含水有機溶媒中の有機溶媒としては、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、エチレングリコール、プロピレングリコールなどのアルコール類、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類、ジオキサン、テトラヒドロフランなどのエーテル類、酢酸エチルなどのエステル類、その他水と相溶性のある有機溶媒が単独または複数混合して用いられる。これらの中でもメタノール、エタノール、イソプロパノールのような低級アルコール類は金属アルコキシドや水との相溶性も高く、また粘度も低いために、極めて好適に使用される。触媒を含む含水有機溶液中の上記有機溶媒の割合は、およそ3〜95%、好ましくは60〜90%の範囲が好適である。
【0027】
また、金属アルコキシドを加水分解するための触媒としては、N(CH3)3などのアミン、アンモニア、LiOH、NaOH、KOH、N(CH3)4OHなどの塩基が好適に使用できる。特に、アンモニアやアミンの場合は、製造したシリカ系複合酸化物粒子を焼成すれば粒子中に塩基が残留しないために、加水分解用の触媒として極めて好適である。触媒の添加量は、用いる触媒の種類や含水有機溶媒中の水と有機溶媒の種類や配合比率によって異なるために一概には言えないが、pHが10以上、好ましくは11以上になるように添加するのが好ましい。触媒として最も好適なアンモニアの場合は、NH3としての重量分率で2〜10%、好ましくは3〜7%の範囲が好適である。
【0028】
触媒を含む含水有機溶液中の水の割合は、用いるアルコキシドの種類によって異なるため一概には言えないが、3〜95%、好ましくは、5〜40%、さらに好ましくは5〜20%の範囲が好適である。
【0029】
金属アルコキシドとしては、前記の触媒を含む含水有機溶媒中で加水分解を受けて金属酸化物になるものであれば公知の化合物が何ら制限なく採用される。シリコンのアルコキシドの代表的なものを例示すると、例えば、一般式Si(OR)4またはSiR′n(OR)4−nで示されるシリコンのアルコキシド、またはシリコンのアルコキシドを部分的に加水分解して得られる低縮合物が工業的に入手し易く、その一種または2種以上の混合物が好ましく用いられる。なお、上記シリコンのアルコキシドの一般式において、RおよびR′はアルキル基で、例えばメチル基、エチル基、イソプロピル基、ブチル基などの低級アルキル基が好適である。nは1〜3の整数である。
【0030】
また、シリコン以外の金属のアルコキシドとしては、周期律表第1族、第2族、第3族、第4族、第13族および第14族の金属のアルコキシドが特に制限されず使用される。例えば、一般式M1(OR)、M2(OR)2、M3(OR)3、M4(OR)4、M13(OR)3、M14(OR)4(但し、Rはアルキル基、特に好ましくは、炭素数4以下のもの)で表示される金属アルコキシドが好ましい。ここで、M1は第1族の金属、M2は第2族の金属、M3は第3族の金属、M4は第4族の金属、M13は第13族の金属、M14は第14族の金属で、具体的には、リチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、スカンジウム、イットリウム、チタニウム、ホウ素、ジルコニウム、ハフニウム、アルミニウム、ゲルマニウム、錫または鉛が好適に使用される。本発明において一般に好適に使用される上記化合物を更に具体的に例示すると、NaOCH3、NaOC2H5、NaOC3H7等の有機ナトリウム化合物および上記Naに代わって、Li、K等で代替した第1族化合物、Mg(OCH3)2、Mg(OC2H5)2、Mg(OC3H7)2、Mg(OC4H9)2、Mg(OC5H11)2等の有機マグネシウム化合物および上記Mgに代わって、Ca、Sr、Ba等で代替した第2族化合物、Ti(OisoC3H7)4、Ti(OnC4H9)4等の化合物および上記Tiに代わってZr、Hf、Ge、Sn、Pb等で代替した第4族または第14族化合物、Al(OC2H5)3、Al(OC3H7)3、Al(OC4H9)3等の化合物および上記Alに代わってB等で代替した第13族化合物などが挙げられる。また、アルコキシド以外に上記金属の酢酸塩、アセト酢酸塩等のカルボン酸塩、CaCl2、Ca(HOC6H4COO)2・H2O等の化合物も使用できる。
【0031】
なお、単分散性の高い球状のシリカ系複合酸化物粒子を得ようとした場合には、上記の化合物の中でも周期律表第4族の金属のアルコキシドが好適であり、さらにそれらの中でもチタニウムおよび/またはジルコニウムのアルコキシドが最も好適に採用できる。
【0032】
本発明のシリカ系複合酸化物粒子を製造するためには金属アルコキシドとして、上述したシリコンのアルコキシドと、シリコン以外の金属のアルコキシドを1種または2種以上混合して用いるが、両者は予め混合したものを原料として用いることが重要である。さらに両者を混合する前に予めシリコンのアルコキシドの一部又は全部を部分的に加水分解させる(以下では、部分加水分解ともいう)ことが重要であり、さらにまた、部分加水分解させるときに使用する水の量が非常に重要である。
【0033】
下記のような条件でシリコンアルコシキドを水で部分加水分解した後にシリコン以外の金属のアルコキシドと混合して原料を調製することによって、シリカ以外の金属酸化物の含有率が30モル%以上であっても、粒子径の変動係数が30%以下で且つ球状のシリカ系複合酸化物粒子を効率良く得ることができる。
【0034】
最も重要なのは、シリコンアルコキシドの部分加水分解に使用する水の量である。本発明の製造方法においては、シリコンのアルコキシドを水で部分加水分解する際にシリコンのアルコキシドを、下記式(1)で示される、シリコン以外の金属アルコキシドに対する水の当量Yを満足する量の水で部分加水分解することが極めて重要である。
【0035】
−0.06X+3.5<Y<−0.06X+4.5 (1)
X:シリカ系複合酸化物中におけるシリカ以外の金属酸化物の含有率(モル%)。但し、30≦X≦50。
【0036】
Y:シリコン以外の金属のアルコキシドに対する水の当量。
【0037】
シリコンのアルコキシドを部分加水分解する際に、水の量が上記範囲よりも少ない場合や多い場合には、触媒を含む含水有機溶媒中で前記原料を加水分解・縮合させてシリカ系複合酸化物粒子を得る際に、反応を制御することが難しくなり、微小粒子が発生したり、融着粒子が多く生成したり、極端な場合は粒子合成中に粒子同志が凝集してしまう場合がある。部分加水分解の際の水の量は、シリコン以外の金属のアルコキシドに対する水の当量Yが、−0.06X+3.7<Y<−0.06X+4.3の範囲であることが好ましい。
【0038】
上記部分加水分解の目的は、シリコンのアルコキシドの一部を加水分解することによって分子内にシラノール基(SiOH)を生成させ、次に該シラノール基とシリコン以外の金属のアルコキシドとを反応させ、シリコンとシリコン以外の金属の複合アルコキシドを生成させることにあると本発明者等は考えている。したがって、シリコン以外の金属のアルコキシド、シリコンのアルコキシド及び水の3者のモル比を精密に管理する必要があるものと考えられる。
【0039】
シリコンのアルコキシドを部分加水分解する際には、該アルコキシドと水の両方に対して相溶性のあるアルコール等の有機溶媒を併用することが好ましい。アルコール等の有機溶媒を使用しない場合は、シリコンのアルコキシドと水が相分離する傾向があり、部分加水分解が進行しない、または非常に反応が遅くなる場合がある。また、部分加水分解を迅速に進めるために、前記の水には、触媒を添加することも好ましい。触媒としては酸が好適で、具体的には、塩酸、硫酸、硝酸、シュウ酸などが挙げられるが、特に制限はない。酸の濃度としては、水のpHが1〜4の範囲のものを使用するのが良い。
【0040】
ところで、本発明の製造方法では、上述したように、シリコンのアルコキシドを水で部分加水分解した後にシリコン以外の金属のアルコキシドと混合することによって原料を調製し、前記の触媒を含む含水有機溶媒(以下、反応液ともいう)中で前記原料を加水分解・縮合させてシリカ系複合酸化物粒子を得る。
【0041】
上記原料は、液中滴下することが好ましい。液中滴下とは、上記原料を反応液中に滴下する際、滴下口先端が反応液中に浸されていることを言う。滴下口先端の位置は、液中にあれば特に限定されないが、攪拌羽根の近傍などの充分に攪拌が行われる位置が望ましい。液中滴下をせずに、例えば、反応液の上部から液上滴下した場合には粒子が凝集しやすいため好ましくない。
【0042】
また、上記原料と共に、別途調製されたアルカリ性水溶液を、触媒を含む含水有機溶媒中に同時滴下しても良い。該アルカリ性水溶液としては、10〜30重量%のアンモニア水などが好適である。なお、上記原料中のシリコンとシリコン以外の金属の総モル数に対して、該アルカリ性水溶液中の水のモル数が1〜6倍モル、好ましくは2〜5倍モルとなるような供給比でアルカリ性水溶液を滴下することが好ましい。アルカリ性水溶液の滴下は、特に液中滴下する必要はないが、攪拌羽根近傍で液中滴下した方が、反応液中での攪拌が充分に行われるので好ましい。上記のようにアルカリ性水溶液を同時滴下することによって、固形分濃度を高くして粒子を合成できるので、収率の高い合成が可能となる。
【0043】
また、単分散性を上げるためには、滴下速度も重要な因子である。滴下速度は、できる限り遅くした方が、単分散性は高くなる傾向にある。しかしながら、滴下速度が遅い場合には、合成が終了するまでに長時間を要するため、実用的ではない。そのため、合成初期は滴下速度を遅くし、後半になってから滴下速度を速めるのも本発明を実施する上で好ましい態様である。
【0044】
アルコキシドからなる原料およびアルカリ性水溶液は、それぞれ滴下を開始してから終了するまで連続的に滴下することが好ましい。なお、ここで言う連続的とは、好ましくは10分以上、さらに好ましくは3分以上の間隔を空けないことを言う。滴下速度は、必ずしも一定である必要はないが、滴下速度を変える場合には連続的に変えた方が望ましい。特開平4−77309には、数回に分けて水を添加することが記されているが、このような方法では、急激な水の添加によって反応液中の雰囲気が乱され、粒子同志の凝集や、新たな核粒子の発生などが起こるため、好ましい方法ではない。
【0045】
加水分解を行うときの反応槽の温度は、0〜50℃の範囲であれば良く、用いるアルコキシドの種類によって適宜選択される。
【0046】
その他、加水分解に使用する反応容器、上記以外の反応条件等は公知のものが何ら制限なく採用される。
【0047】
上記のように合成された粒子は、シリカ以外の金属酸化物の含有率が30〜50モル%であって、粒子径の変動係数が30%以下の球状のシリカ系複合酸化物粒子である。
【0048】
合成終了後の粒子は、反応液中に分散したコロイド状の粒子分散液として得られる。用途によっては、そのまま使用しても良いし、反応液の溶媒を水もしくはアルコールなどの有機溶媒に溶媒置換した後に使用しても良い。
【0049】
また、粒子を合成した後、遠心分離、ろ過、蒸留、スプレードライなどの手法で固液分離し、粉末の形で取り出しても良い。取り出した粉末は乾燥させることができる。乾燥温度は50〜300℃の範囲が好適で、乾燥時間は数時間から数日の間が好適である。乾燥した粉末はさらに高い温度で焼成することができる。焼成温度は300〜1300℃の範囲が好適で、焼成時間は1〜24時間の範囲が好適である。乾燥または焼成後の粒子は、ボールミルやジェットミルなどを使用して粒子ひとつひとつに解砕することができる。また、樹脂等に分散して使用する場合には、高シェアの分散機を使用することによって、樹脂への分散と同時に粒子の解砕を行うことができる。
【0050】
【発明の効果】
本発明の方法によれば、従来製造が困難であった、シリカ以外の金属酸化物の含有率が30〜50モル%の範囲の単分散性の極めて高い球状のシリカ系複合酸化物粒子を得ることができる。特に、シリカ以外の金属酸化物としてチタニアやジルコニアを配合したシリカ系複合酸化物粒子は、単分散性が高く球状の粒子を得易いという特徴がある。上記のような光学的な透明性の高い高屈折率の粒子は、反射防止層や透明な高屈折率樹脂やフィルムの添加剤として極めて有用である。
【0051】
【実施例】
以下、本発明の実施例を挙げて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら制限されるものではない。
(粒子の物性測定法)
平均粒子径と粒子径の変動係数は、走査型電子顕微鏡の撮影像を用いて200個以上の粒子を画像解析装置を用いて解析することにより求めた。また、画像データより、粒子の円形度も求めた。
【0052】
粒子の屈折率は、液浸法によった。即ち、異なる屈折率の溶媒(例えば、トルエン、1−ブロモナフタレン、1−クロロナフタレン、ジヨードメタン、イオウ入りジヨードメタンなど)を適当に配合することにより任意の屈折率の混合溶媒を作り、その中に粒子を分散させて25℃において最も透明な粒子分散溶液の屈折率を粒子の屈折率とした。溶媒の屈折率はアッベの屈折率計を用いて25℃で測定した。
【0053】
粒子の密度は、ガス置換法による密度計(マイクロメリテックス社製のアキュピック1330)を用いて測定した。
【0054】
粒子の結晶形態は、X線回折装置を用いて同定した。
実施例1
撹拌羽根付きの内容積4リットルのガラス製反応器にイソプロパノールおよびアンモニア水(25重量%)をそれぞれ480gおよび120g仕込み、反応液の温度を40℃に保持しつつ100rpmで撹拌した。
【0055】
次に、3リットルの三角フラスコに、テトラメトキシシラン(Si(OMe)4、コルコート(株)、商品名:メチルシリケート39)408gを仕込み、撹拌しながら、メタノール254gと0.035重量%塩酸水溶液(pH2.1)47.6gを加え、約10分間撹拌してテトラメトキシシランの部分加水分解を行った。このとき、該溶液はテトラメトキシシランの加水分解による発熱を観測した。また、GC/MSを用いて分析したところ、テトラメトキシシランの一つのメトキシ基が加水分解し、Si(OMe)3(OH)が生成していることが確認できた。
【0056】
続いて、チタンテトライソプロポキシド(Ti(O−iPr)4、日本曹達(株)、商品名:A−1)375gをイソプロパノール400gで希釈した液を加え、無色透明な均一溶液(SiとTiの複合アルコキシド)を得た。
【0057】
なお、上記でテトラメトキシシランの部分加水分解に用いた水の量は、チタンテトライソプロポキシドに対して2.0当量であった。また、仕込み組成より、テトラメトキシシランとチタンテトライソプロポキシドの合計のモル数に対するチタンテトライソプロポキシドの配合比率は、33モル%であった。
【0058】
シリカ以外の金属酸化物の含有量が33モル%の場合、式(1)より求められる部分加水分解に必要な水の、シリカ以外の金属アルコキシドに対する当量は、1.52を超え2.52未満である。
【0059】
上記複合アルコキシド溶液(原料)約1480gを0.3g/minの速度で、アルカリ性水溶液としてアンモニア水(25重量%)320gを0.1g/minの速度で反応液中に同時滴下してシリカ系複合酸化物粒子を合成した。滴下開始後、原料とアルカリ性水溶液の滴下速度を徐々に増加させ、5時間かけて全量を滴下した。
【0060】
滴下終了後30分間撹拌を続けた後、溶液を取り出した。溶液の重量は約2400gであった。ろ過、乾燥後に回収した粒子は261gであった。したがって、粒子を製造した際のスラリー濃度は約11%であった。
【0061】
得られた粒子を走査型電子顕微鏡で観察した結果、粒子形状は明らかに球状であった。画像解析の結果、平均粒子径は0.25μm、粒子径の変動係数は8.7%、粒子の円形度は0.88であった。
【0062】
乾燥後の粒子の一部を1000℃で4時間焼成した。焼成した粒子を走査型電子顕微鏡で観察した結果、平均粒子径は7%ほど小さくなったが、他の数値は上記とほぼ同様であった。また、密度は2.67g/cm3、屈折率は1.70であった。X線回折の結果、乾燥した粒子は非晶質であった。また、1000℃で焼成した粒子は、25.2°付近にアナターゼ型チタニア由来のピークを検出した。よって焼成粒子は、シリカマトリックス中にチタニアの微結晶が分散した球状の粒子であることが分かった。
実施例2
部分加水分解に使用する0.035重量%塩酸水溶液の量を、チタンテトライソプロポキシドに対して1.7当量とした以外は実施例1と同様にしてチタニア含有率が33モル%のシリカ系複合酸化物粒子を合成した。
【0063】
得られた粒子を走査型電子顕微鏡で観察した結果、粒子形状は明らかに球状であった。画像解析の結果、平均粒子径は0.25μm、粒子径の変動係数は8.6%、粒子の円形度は0.88であった。
【0064】
乾燥後の粒子の一部を1000℃で4時間焼成した。焼成した粒子を走査型電子顕微鏡で観察した結果、平均粒子径は7%ほど小さくなったが、他の数値は上記とほぼ同様であった。また、密度は2.67g/cm3、屈折率は1.70であった。X線回折の結果、乾燥した粒子は非晶質であった。また、1000℃で焼成した粒子は、25.2°付近にアナターゼ型チタニア由来のピークを検出した。よって焼成粒子は、シリカマトリックス中にチタニアの微結晶が分散した球状の粒子であることが分かった。
実施例3
部分加水分解に使用する0.035重量%塩酸水溶液の量を、チタンテトライソプロポキシドに対して2.3当量とした以外は実施例1と同様にしてチタニア含有率が33モル%のシリカ系複合酸化物粒子を合成した。
【0065】
得られた粒子を走査型電子顕微鏡で観察した結果、粒子形状は明らかに球状であった。画像解析の結果、平均粒子径は0.25μm、粒子径の変動係数は8.7%、粒子の円形度は0.85であった。
【0066】
乾燥後の粒子の一部を1000℃で4時間焼成した。焼成した粒子を走査型電子顕微鏡で観察した結果、平均粒子径は7%ほど小さくなったが、他の数値は上記とほぼ同様であった。また、密度は2.65g/cm3、屈折率は1.70であった。X線回折の結果、乾燥した粒子は非晶質であった。また、1000℃で焼成した粒子は、25.2°付近にアナターゼ型チタニア由来のピークを検出した。よって焼成粒子は、シリカマトリックス中にチタニアの微結晶が分散した球状の粒子であることが分かった。
実施例4
撹拌羽根付きの内容積4リットルのガラス製反応器にイソプロパノールおよびアンモニア水(25重量%)をそれぞれ540gおよび60g仕込み、反応液の温度を40℃に保持しつつ100rpmで撹拌した。
【0067】
次に、3リットルの三角フラスコに、テトラメトキシシラン(Si(OMe)4、コルコート(株)、商品名:メチルシリケート39)365gを仕込み、撹拌しながら、メタノール307gと0.035重量%塩酸水溶液(pH2.1)43.2gを加え、約10分間撹拌してテトラメトキシシランの部分加水分解を行った。このとき、該溶液はテトラメトキシシランの加水分解による発熱を観測した。
【0068】
続いて、チタンテトライソプロポキシド(Ti(O−iPr)4、日本曹達(株)、商品名:A−1)455gをイソプロパノール480gで希釈した液を加え、無色透明な均一溶液(SiとTiの複合アルコキシド)を得た。
【0069】
なお、上記でテトラメトキシシランの部分加水分解に用いた水の量は、チタンテトライソプロポキシドに対して1.5当量であった。また、仕込み組成より、テトラメトキシシランとチタンテトライソプロポキシドの合計のモル数に対するチタンテトライソプロポキシドの配合比率は、40モル%であった。
【0070】
シリカ以外の金属酸化物の含有量が40モル%の場合、式(1)より求められる部分加水分解に必要な水の、シリカ以外の金属アルコキシドに対する当量は、1.10を超え2.10未満である。
【0071】
上記複合アルコキシド溶液(原料)約1652gを0.3g/minの速度で、アルカリ性水溶液としてアンモニア水(25重量%)380gを0.1g/minの速度で反応液中に同時滴下してシリカ系複合酸化物粒子を合成した。滴下開始後、原料とアルカリ性水溶液の滴下速度を徐々に増加させ、6時間かけて全量を滴下した。
【0072】
滴下終了後30分間撹拌を続けた後、溶液を取り出した。溶液の重量は約2600gであった。ろ過、乾燥後に回収した粒子は265gであった。したがって、粒子を製造した際のスラリー濃度は約10%であった。
【0073】
得られた粒子を走査型電子顕微鏡で観察した結果、粒子形状は明らかに球状であった。画像解析の結果、平均粒子径は0.45μm、粒子径の変動係数は14.7%、粒子の円形度は0.85であった。
【0074】
乾燥後の粒子の一部を1000℃で4時間焼成した。焼成した粒子を走査型電子顕微鏡で観察した結果、平均粒子径は7%ほど小さくなったが、他の数値は上記とほぼ同様であった。また、密度は2.78g/cm3、屈折率は1.75であった。X線回折の結果、乾燥した粒子は非晶質であった。また、1000℃で焼成した粒子は、25.2°付近にアナターゼ型チタニア由来のピークを検出した。よって焼成粒子は、シリカマトリックス中にチタニアの微結晶が分散した球状の粒子であることが分かった。
実施例5
部分加水分解に使用する0.035重量%塩酸水溶液の量を、チタンテトライソプロポキシドに対して1.3当量とした以外は実施例4と同様にしてチタニア含有率が40モル%のシリカ系複合酸化物粒子を合成した。
【0075】
得られた粒子を走査型電子顕微鏡で観察した結果、粒子形状は明らかに球状であった。画像解析の結果、平均粒子径は0.45μm、粒子径の変動係数は8.0%、粒子の円形度は0.87であった。
【0076】
乾燥後の粒子の一部を1000℃で4時間焼成した。焼成した粒子を走査型電子顕微鏡で観察した結果、平均粒子径は7%ほど小さくなったが、他の数値は上記とほぼ同様であった。また、密度は2.76g/cm3、屈折率は1.75であった。X線回折の結果、乾燥した粒子は非晶質であった。また、1000℃で焼成した粒子は、25.2°付近にアナターゼ型チタニア由来のピークを検出した。よって焼成粒子は、シリカマトリックス中にチタニアの微結晶が分散した球状の粒子であることが分かった。
実施例6
部分加水分解に使用する0.035重量%塩酸水溶液の量を、チタンテトライソプロポキシドに対して2.0当量とした以外は実施例4と同様にしてチタニア含有率が40モル%のシリカ系複合酸化物粒子を合成した。
【0077】
得られた粒子を走査型電子顕微鏡で観察した結果、粒子形状は明らかに球状であった。画像解析の結果、平均粒子径は0.40μm、粒子径の変動係数は13.8%、粒子の円形度は0.89であった。
【0078】
乾燥後の粒子の一部を1000℃で4時間焼成した。焼成した粒子を走査型電子顕微鏡で観察した結果、平均粒子径は7%ほど小さくなったが、他の数値は上記とほぼ同様であった。また、密度は2.75g/cm3、屈折率は1.75であった。X線回折の結果、乾燥した粒子は非晶質であった。また、1000℃で焼成した粒子は、25.2°付近にアナターゼ型チタニア由来のピークを検出した。よって焼成粒子は、シリカマトリックス中にチタニアの微結晶が分散した球状の粒子であることが分かった。
実施例7
撹拌羽根付きの内容積4リットルのガラス製反応器にイソプロパノール、メタノールおよびアンモニア水(25重量%)をそれぞれ200g、700gおよび100g仕込み、反応液の温度を40℃に保持しつつ100rpmで撹拌した。
【0079】
次に、3リットルの三角フラスコに、テトラメトキシシラン(Si(OMe)4、コルコート(株)、商品名:メチルシリケート39)329gを仕込み、撹拌しながら、メタノール354gと0.035重量%塩酸水溶液(pH2.1)39.8gを加え、約10分間撹拌してテトラメトキシシランの部分加水分解を行った。このとき、該溶液はテトラメトキシシランの加水分解による発熱を観測した。
【0080】
続いて、チタンテトライソプロポキシド(Ti(O−iPr)4、日本曹達(株)、商品名:A−1)523gをイソプロパノール553gで希釈した液を加え、無色透明な均一溶液(SiとTiの複合アルコキシド)を得た。
【0081】
なお、上記でテトラメトキシシランの部分加水分解に用いた水の量は、チタンテトライソプロポキシドに対して1.2当量であった。また、仕込み組成より、テトラメトキシシランとチタンテトライソプロポキシドの合計のモル数に対するチタンテトライソプロポキシドの配合比率は、46モル%であった。
【0082】
シリカ以外の金属酸化物の含有量が46モル%の場合、式(1)より求められる部分加水分解に必要な水の、シリカ以外の金属アルコキシドに対する当量は、0.74を超え1.74未満である。
【0083】
上記複合アルコキシド溶液(原料)約1800gを0.3g/minの速度で、アルカリ性水溶液としてアンモニア水(25重量%)420gを0.1g/minの速度で反応液中に同時滴下してシリカ系複合酸化物粒子を合成した。滴下開始後、原料とアルカリ性水溶液の滴下速度を徐々に増加させ、8時間かけて全量を滴下した。
【0084】
滴下終了後30分間撹拌を続けた後、溶液を取り出した。溶液の重量は約3200gであった。ろ過、乾燥後に回収した粒子は255gであった。したがって、粒子を製造した際のスラリー濃度は約8%であった。
【0085】
得られた粒子を走査型電子顕微鏡で観察した結果、粒子形状は明らかに球状であった。画像解析の結果、平均粒子径は0.11μm、粒子径の変動係数は18.3%、粒子の円形度は0.79であった。
【0086】
乾燥後の粒子の一部を1000℃で4時間焼成した。焼成した粒子を走査型電子顕微鏡で観察した結果、平均粒子径は10%ほど小さくなったが、他の数値は上記とほぼ同様であった。また、密度は2.88g/cm3、屈折率は1.80であった。X線回折の結果、乾燥した粒子は非晶質であった。また、1000℃で焼成した粒子は、25.2°付近にアナターゼ型チタニア由来のピークを検出した。よって焼成粒子は、シリカマトリックス中にチタニアの微結晶が分散した球状の粒子であることが分かった。
実施例8
部分加水分解に使用する0.035重量%塩酸水溶液の量を、チタンテトライソプロポキシドに対して1.0当量とした以外は実施例7と同様にしてチタニア含有率が46モル%のシリカ系複合酸化物粒子を合成した。
【0087】
得られた粒子を走査型電子顕微鏡で観察した結果、粒子形状は明らかに球状であった。画像解析の結果、平均粒子径は0.13μm、粒子径の変動係数は18.5%、粒子の円形度は0.77であった。
【0088】
乾燥後の粒子の一部を1000℃で4時間焼成した。焼成した粒子を走査型電子顕微鏡で観察した結果、平均粒子径は7%ほど小さくなったが、他の数値は上記とほぼ同様であった。また、密度は2.88g/cm3、屈折率は1.80であった。X線回折の結果、乾燥した粒子は非晶質であった。また、1000℃で焼成した粒子は、25.2°付近にアナターゼ型チタニア由来のピークを検出した。よって焼成粒子は、シリカマトリックス中にチタニアの微結晶が分散した球状の粒子であることが分かった。
実施例9
部分加水分解に使用する0.035重量%塩酸水溶液の量を、チタンテトライソプロポキシドに対して1.7当量とした以外は実施例7と同様にしてチタニア含有率が46モル%のシリカ系複合酸化物粒子を合成した。
【0089】
得られた粒子を走査型電子顕微鏡で観察した結果、粒子形状は明らかに球状であった。画像解析の結果、平均粒子径は0.11μm、粒子径の変動係数は18.8%、粒子の円形度は0.75であった。
【0090】
乾燥後の粒子の一部を1000℃で4時間焼成した。焼成した粒子を走査型電子顕微鏡で観察した結果、平均粒子径は7%ほど小さくなったが、他の数値は上記とほぼ同様であった。また、密度は2.89g/cm3、屈折率は1.80であった。X線回折の結果、乾燥した粒子は非晶質であった。また、1000℃で焼成した粒子は、25.2°付近にアナターゼ型チタニア由来のピークを検出した。よって焼成粒子は、シリカマトリックス中にチタニアの微結晶が分散した球状の粒子であることが分かった。
比較例1
部分加水分解に使用する0.035重量%塩酸水溶液の量を、チタンテトライソプロポキシドに対して1.0当量、1.4当量、2.6当量、3.0当量とした以外は実施例1と同様にしてチタニア含有率が33モル%のシリカ系複合酸化物粒子を合成した。
【0091】
しかし、合成途中で微粒子が発生し、最終的には粒子全体が凝集したために単分散性の高い球状のシリカ系複合酸化物粒子は合成できなかった。
比較例2
部分加水分解に使用する0.035重量%塩酸水溶液の量を、チタンテトライソプロポキシドに対して0.5当量、1.0当量、2.5当量、3.0当量とした以外は実施例4と同様にしてチタニア含有率が40モル%のシリカ系複合酸化物粒子を合成した。
【0092】
しかし、合成途中で微粒子が発生し、最終的には粒子全体が凝集したために単分散性の高い球状のシリカ系複合酸化物粒子は合成できなかった。
比較例3
部分加水分解に使用する0.035重量%塩酸水溶液の量を、チタンテトライソプロポキシドに対して0.5当量、0.7当量、1.9当量、2.5当量とした以外は実施例7と同様にしてチタニア含有率が46モル%のシリカ系複合酸化物粒子を合成した。
【0093】
しかし、合成途中で微粒子が発生し、最終的には粒子全体が凝集したために単分散性の高い球状のシリカ系複合酸化物粒子は合成できなかった。
【0094】
実施例1〜9および比較例1〜3の結果をまとめて図1に示す。単分散性の高い球状のシリカ系複合酸化物粒子が合成できたポイントを で、微粒子が大量に発生したり、合成途中で凝集したりして、単分散性の高い球状のシリカ系複合酸化物粒子が合成できなかったポイントを で表記した。
【0095】
以上の実施例および比較例より、シリコンのアルコキシドを部分加水分解する際の水の量が式(1)を満足しない場合、単分散性の高い球状のシリカ系複合酸化物粒子が得られないことが分かる。
実施例10
撹拌羽根付きの内容積4リットルのガラス製反応器にイソプロパノールおよびアンモニア水(25重量%)をそれぞれ480gおよび120g仕込み、反応液の温度を40℃に保持しつつ100rpmで撹拌した。
【0096】
次に、3リットルの三角フラスコに、テトラメトキシシラン(Si(OMe)4、コルコート(株)、商品名:メチルシリケート39)408gを仕込み、撹拌しながら、メタノール254gと0.035重量%塩酸水溶液(pH2.1)47.6gを加え、約10分間撹拌してテトラメトキシシランの部分加水分解を行った。このとき、該溶液はテトラメトキシシランの加水分解による発熱を観測した。
【0097】
続いて、ジルコニウムテトラブトキシド(Zr(O−Bu)4、日本曹達(株)、商品名:TBZr、純度86.2重量%)588gをイソプロパノール400gで希釈した液を加え、無色透明な均一溶液(SiとZrの複合アルコキシド)を得た。
【0098】
なお、上記でテトラメトキシシランの部分加水分解に用いた水の量は、ジルコニウムテトラブトキシドに対して2.0当量であった。また、仕込み組成より、テトラメトキシシランとジルコニウムテトラブトキシドの合計のモル数に対するジルコニウムテトラブトキシドの配合比率は、33モル%であった。
【0099】
シリカ以外の金属酸化物の含有量が33モル%の場合、式(1)より求められる部分加水分解に必要な水の、シリカ以外の金属アルコキシドに対する当量は、1.52を超え2.52未満である。
【0100】
上記複合アルコキシド溶液(原料)約1690gを0.3g/minの速度で、アルカリ性水溶液としてアンモニア水(25重量%)300gを0.1g/minの速度で反応液中に同時滴下してシリカ系複合酸化物粒子を合成した。滴下開始後、原料とアルカリ性水溶液の滴下速度を徐々に増加させ、8時間かけて全量を滴下した。
【0101】
滴下終了後30分間撹拌を続けた後、溶液を取り出した。溶液の重量は約2550gであった。ろ過、乾燥後に回収した粒子は318gであった。したがって、粒子を製造した際のスラリー濃度は約12%であった。
【0102】
得られた粒子を走査型電子顕微鏡で観察した結果、粒子形状は明らかに球状であった。画像解析の結果、平均粒子径は0.33μm、粒子径の変動係数は23.3%、粒子の円形度は0.75であった。
【0103】
乾燥後の粒子の一部を1000℃で4時間焼成した。焼成した粒子を走査型電子顕微鏡で観察した結果、平均粒子径は8%ほど小さくなったが、他の数値は上記とほぼ同様であった。また、密度は3.36g/cm3、屈折率は1.64であった。X線回折の結果、乾燥した粒子は非晶質であった。また、1000℃で焼成した粒子は、30.1°付近に立方晶ジルコニア由来のピークを検出した。よって焼成粒子は、シリカマトリックス中にジルコニアの微結晶が分散した球状の粒子であることが分かった。
【図面の簡単な説明】
【図1】 シリカ以外の金属酸化物の含有率(モル%)と部分加水分解に用いる水の量(シリコン以外の金属アルコキシドに対する水の当量)との関係を示す図
Claims (4)
- シリカ以外の金属酸化物の含有率が30〜50モル%、粒子径の変動係数が30%以下の球状のシリカ系複合酸化物粒子であって、該シリカ系複合酸化物粒子が、シリコンのアルコキシドを下記式(1)で示される、シリコン以外の金属のアルコキシドに対する水の当量Yを満足する量の水で部分加水分解した後にシリコン以外の金属のアルコキシドと混合することによって原料を調製し、触媒を含む含水有機溶媒中で前記原料を加水分解・縮合させて得られたシリカ系複合酸化物粒子。
−0.06X+3.5<Y<−0.06X+4.5 (1)
X:シリカ系複合酸化物中におけるシリカ以外の金属酸化物の含有率(モル%)。但し、30≦X≦50。
Y:シリコン以外の金属アルコキシドに対する水の当量。 - シリカ以外の金属酸化物が周期律表第4族金属の酸化物であることを特徴とする請求項1記載のシリカ系複合酸化物粒子。
- シリカ以外の金属酸化物がチタニアおよび/またはジルコニアであることを特徴とする請求項1記載のシリカ系複合酸化物粒子。
- シリコンのアルコキシドを水で部分加水分解した後にシリコン以外の金属のアルコキシドと混合することによって原料を調製し、触媒を含む含水有機溶媒中で前記原料を加水分解・縮合させてシリカ系複合酸化物粒子を得るシリカ系複合酸化物粒子の製造方法において、シリコンのアルコキシドを部分加水分解する際の水の量が、下記式(1)で示される、シリコン以外の金属のアルコキシドに対する水の当量Yを満足することを特徴とする請求項1記載のシリカ系複合酸化物粒子の製造方法。
−0.06X+3.5<Y<−0.06X+4.5 (1)
X:シリカ系複合酸化物中におけるシリカ以外の金属酸化物の含有率(モル%)。但し、30≦X≦50。
Y:シリコン以外の金属アルコキシドに対する水の当量。
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