JP4301727B2 - プロピレンオキシドの精製 - Google Patents

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Description

【0001】
本発明は、メタノールと汚染量のアセトアルデヒド不純物とを含むエポキシ化反応混合物からプロピレンオキシドを精製された形で採取する方法を提供する。そのような混合物は、触媒としてチタン含有ゼオライトたとえばチタンシリカライト、反応溶剤としてメタノールを使用して、プロピレンを過酸化水素でエポキシ化することによって生成させることができる。蒸留塔内で、アセトアルデヒドの揮発性を抑えて塔頂流に含まれるアセトアルデヒドの量を最小限に抑えるのに十分なように、メタノール濃度を保つことにより、実質的にすべてのアセトアルデヒドを、蒸留塔内でのエポキシ化反応混合物の分別により除去することができる。
【0002】
近年、酸化剤として過酸化水素を、触媒としてのゼオライトとしてチタン含有ゼオライトを使用する、プロピレンからのプロピレンオキシドの製造が提案された。メタノールは、そのような目的に対して特に好ましい反応溶剤である。メタノールは、触媒活性と選択率を高める傾向があるからである。このタイプのエポキシ化法は、たとえば、米国特許第5,591,875号、第4,833,260号、第5,621,122号、第5,646,314号、第4,824,976号、およびヨーロッパ特許出願公告第0732327号明細書、ならびにClericiほか、J.Catalysis129,159−167(1991)に記載されている。これらの文献を参照されたい。そのような方法は非常に大きなプロピレンオキシド選択率を与えうるものであるが、少量のある種の副生物たとえばアセトアルデヒドが不可避的に生成される。商業用に十分なプロピレンオキシドは、100ppmよりも少ない、好ましくは20ppmよりも少ないアセトアルデヒドしか含まないものでなければならないため、そのような反応混合物から実質的にすべてのアセトアルデヒド副生物を分離する方法の開発が必要である。さらに、このタイプのエポキシ化法では同時生成物として水が生成される。この水は、過酸化水素酸化剤から誘導される。エポキシ化反応に使用する過酸化水素の製造に使用される方法によっては、水が反応器への供給原料中にも存在することがある。チタン含有ゼオライトを触媒として使用するエポキシ化法は水に対して著しく大きな許容度を有するが、大部分の商業的な目的に対しては、実質的に無水の形のプロピレンオキシドを得ることが必要である。したがって、そのようなエポキシ化法によって製造されるプロピレンオキシドから水を除去する効率的な方法が必要である。
【0003】
エチルベンゼンまたはt−ブチルアルコールを反応溶剤として使用する、有機ヒドロペルオキシド基材のエポキシ化法との主たる関連のもとに開発された、プロピレンオキシドからアセトアルデヒドを分離する先行技術の方法では、一般に、粗製プロピレンオキシドを、実質的にすべての未反応プロピレンを除去してから、蒸留塔に装入し、プロピレンオキシドと、アセトアルデヒドを含むすべての低沸点物質とを、塔頂生成物として除去する。次に引き続いて、第二の蒸留塔内でこの塔頂生成物の分別を行い、アセトアルデヒドを、塔頂生成物として、プロピレンオキシドを含む残液分から分離する。
【0004】
ここでの発見によれば、過酸化水素/チタンシリカライト法による粗製エポキシ化生成物に反応溶剤として存在する相当量のメタノールを、プロピレンオキシドからのアセトアルデヒドの必要な分離を実現するために活用することができる。メタノールが高い濃度で存在することにより、プロピレンオキシドに相対的なアセトアルデヒドの揮発性が相当に低下する。したがって、本発明の方法は、従来の精製方法におけるようにアセトアルデヒドを塔頂から取り出すのではなく、蒸留塔内の液相メタノールの濃度を、アセトアルデヒドの揮発性を抑え、すべてまたは実質的にすべてのアセトアルデヒドを塔底流内に押し留めるのに十分な大きさに保つことによって、実施される。低濃度のアセトアルデヒドを含む精製プロピレンオキシドが塔頂から取り出される。また、この塔頂流は、粗製のエポキシ化反応生成物に比して相当に低い水含有率を有する。
【0005】
より詳しくは、本発明は、メタノールを溶剤として使用するエポキシ化工程で製造されるプロピレンオキシドを精製する方法であって、
(a)プロピレンオキシド、メタノール、およびアセトアルデヒドから成る粗
製のエポキシ化反応生成物を、精留塔に供給し、
(b)粗製のエポキシ化反応生成物を、精留塔内で分別蒸留し、
(c)プロピレンオキシドとメタノールから成り、粗製のエポキシ化反応生成
物に比して低濃度のアセトアルデヒドを含む塔頂流を、精留塔から引き
出し、
(d)メタノールとアセトアルデヒドから成る塔底流を、精留塔から引き出す各ステップから成ることを特徴とする方法、を提供する。
前記分別蒸留は、精留塔内のメタノール濃度が、塔頂流が精留塔から引き出される点にアセトアルデヒドが実質的に存在しないようにするのに十分な大きさに保たれるような条件下で実施する。
【0006】
以下、添付の図面を参照しつつ本発明をさらに詳しく説明する。未反応プロピレンを先行蒸留たとえばフラッシュ蒸留または同様の通常の蒸留操作によって実質的に除去した粗製のエポキシ化反応生成物を、ライン2を通じて、第一の精留塔1の中間帯域に供給する。使用するエポキシ化条件に応じて、粗製のエポキシ化反応生成物は、一般に下記の成分から成る組成(wt%)を有する。
プロピレンオキシド 2〜10
メタノール 60〜85
アセトアルデヒド 0.01〜0.1
水 10〜25
プロピレンオキシドの開環副生物
(たとえば、プロピレングリコール)0.1〜1
プロピレンおよび/またはプロパン 0.01〜0.1
【0007】
第一の精留塔1は、通常の蒸留塔(column or tower)から成ることができ、必要体積の粗製エポキシ化反応器生成物を所定の時間内に処理するのに適当な容量を有し、かつプロピレンオキシドからのメタノールとアセトアルデヒドの必要な分離を実現するのに十分な理論段数を有する。段塔の使用が特に有利である。この精留塔は、経済上の理由から、通常単一の蒸留塔から成るものとすべきであるが、同じ結果を実現するのに複数の塔を使用することは排除されない。
【0008】
精留塔1は、プロピレンオキシドと少量のメタノールから成る第一の塔頂流をライン3から除去することができ、また実質的にすべてのアセトアルデヒド(好ましくは、少なくとも99%、より好ましくは、少なくとも99.9%)がライン4から第一の塔底流によって除去されるような条件で運転する。本質的なことは、この条件を、アセトアルデヒドの揮発性がプロピレンオキシドのそれよりも低くなるようにするのに有効な、第一の精留塔1内のメタノール濃度が与えられるように選択することである。十分なメタノールを第一の精留塔の塔頂から取り出し、メタノールとプロピレンオキシドの双方の濃度が、アセトアルデヒドがメタノールとプロピレンオキシドのどちらよりも重く(すなわち、低揮発性に)なるのに十分なだけ高い、帯域が供給トレーの上方に存在するようにしなければならない。そうすることにより、アセトアルデヒドが第一の精留塔1の塔頂に達するのを防ぐことができ、また最適条件下では、第一の精留塔への供給原料中の実質的にすべてのアセトアルデヒドを塔底流内に採取することができる。一般に、この方法は、少なくとも2(より好ましくは、少なくとも4)wt%のメタノールが塔頂流内に含まれるように、実施する。使用する追加の下流処理の程度を最小限に抑えるために、第一の精留塔1を、好ましくは、約1.0〜約3.4atm絶対圧(約15〜約50psia)の塔頂圧、および約80〜約110℃の塔底温度で運転する。特に有利なのは、第一の精留塔1を、塔頂帯域が約1.7〜約6.8atm絶対圧(約25〜約40psia)の圧力であり、塔底帯域が約93〜104℃の温度であるように、運転するものである。第一の精留塔1は、一般に、20〜60(より好ましくは、30〜50)の気−液接触理論段を有する。適当な還流/留出物比が最善の結果を実現するのに重要であり、この還流比は、好ましくは、10:1〜30:1(より好ましくは、15:1〜25:1)の範囲とすべきである。この精留塔への熱はリボイラーによって供給することができる。
【0009】
第一の塔底流は、一般に、アセトアルデヒドのほかに相当量のメタノールと水を、蒸留条件下でプロピレンオキシドよりも低い揮発性を有する少量の副生物たとえばプロピレングリコールとともに含む。本発明の方法のさらなる利点は、実質的に水を含まないプロピレンオキシドを製造することができるということである。一般に、塔底流が、粗製のエポキシ化反応生成物中に最初存在する水のほとんどすべて(たとえば、少なくとも99%)を含むからである。塔底流は、通常の手段たとえば分別または抽出蒸留によって精製して、メタノールをエポキシ化工程での溶剤としての再使用のために回収することができる。
【0010】
一般に、約90〜98wt%のプロピレンオキシド、2〜6wt%のメタノール、0〜2wt%のプロピレン、および20ppmよりも少ない(より好ましくは、5ppmよりも少ない)アセトアルデヒドを含む、第一の塔頂流内に有意の量のプロピレンが残留している場合、この残留プロピレンを除去するために、第二の精留塔を使用することができる。たとえば、第一の塔頂流を、ライン3から第二の精留塔5の中間帯域に装入することができる。精留塔5は、プロピレンが塔頂帯域から第二の塔頂流としてライン6によって引き出されるように運転される。実質的にプロピレンを含まないプロピレンオキシドが、第二の精留塔5の塔底帯域から第二の残液分としてライン7によって引き出される。第二の精留塔5は、約9.52〜約20.4絶対圧(約140〜約300psia)の塔頂帯域圧、および約115〜約150℃の塔底帯域温度で運転するのが有利である。特に好ましいのは、約10.9〜約15.0絶対圧(約160〜約220psia)の塔頂帯域圧、および約120〜約140℃の塔底帯域温度での運転である。好ましくは、第二の精留塔には、約5〜約15(より好ましくは、5〜10)の気−液接触理論段が存在する。還流/留出物比は、10:1〜50:1とするのが適当であり、20:1〜40:1が好ましい範囲である。
【0011】
必要であれば、第二の塔底流を抽出蒸留することによって、第二の塔底流内に存在するプロピレンオキシドのさらなる精製を、実現することができる。不純なプロピレンオキシド留分の抽出蒸留は、当業者に周知であり、たとえば、下記の米国特許明細書に包括的詳細が述べられている。すなわち、米国特許第3,337,425号、第3,338,800号、第3,464,897号、第3,578,568号、第3,843,488号、第4,140,588号、第4,971,661号、第5,000,825号、第5,006,206号、第5,116,465号、第5,116,466号、第5,116,467号、第5,129,996号、第5,133,839号、第5,139,622号、第5,145,561号、第5,145,563号、第5,154,803号、第5,154,804号、第5,160,587号、第5,340,446号、第5,453,160号、第5,464,505号、および第5,620,568号明細書。これらの明細書を参照されたい。
【0012】
たとえば、第二の塔底流(あるいは、第一の塔頂流(特に、第一の塔頂流がほとんどまたはまったく未反応プロピレンを含まない場合))を、ライン7を通じて抽出蒸留塔8の中間帯域に供給し、該帯域において、第二の塔底流を、抽出溶剤、たとえば炭化水素(たとえば、オクタン)、重質の極性有機化合物(たとえば、プロピレングリコール)、またはこの目的に有効なことが当業者に公知の他の物質と、向流接触させる。高純度のプロピレンオキシドを、塔8の塔頂帯域からライン9を通じて取り出し、一方割合に少量の揮発性不純物たとえば水、メタノール、その他を、含む抽出溶剤を、抽出物流として塔8の塔底帯域からライン10を通じて取り出す。この抽出物流をストリッパー11の中間帯域に供給する。ストリッパー11は、プロピレンオキシドよりも高い沸点を有する成分がライン12を通じて塔頂から取り出されるように運転される。抽出溶剤はライン13から塔底流として取り出し、ライン14により抽出蒸留塔8の上部帯域に再循環させる。補給抽出溶剤はライン15からライン14に供給することができる。
【0013】

40の理論段(リボイラーを含む)を有する第一の蒸留塔に、未反応プロピレンの大部分を除去した粗製のエポキシ化反応生成物を、塔頂から16番目の段に導入した。全縮器を使用して、留出生成物が液体として引き出されるようにした。塔への供給原料は下記の組成のものである。
Figure 0004301727
【0014】
第一の蒸留塔は、モル還流比(還流/留出物)19.7で運転した。塔凝縮器内の圧力を、2.0atm絶対圧(30psia)に設定し、塔を、トレーあたりの圧力低下0.14atm(0.2psi)したがって塔底圧約2.6atm絶対圧(約38psia)で運転した。塔底(リボイラー)温度を98℃、塔頂(凝縮器)温度を51℃とした。
【0015】
以上の条件下で、塔への供給原料に含まれるアセトアルデヒドの99.93%が塔底流内に採取され、プロピレンオキシドの99.7%が塔頂から採取された。これら二つの生成物流の組成は下記の通りである。
Figure 0004301727

【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の特定実施態様の模式図である。
【符号の説明】
1 第一の精留塔
2 エポキシ化生成物の供給ライン
3 塔頂流を取り出すライン
4 塔底流を取り出すライン

Claims (18)

  1. メタノールを溶剤として使用し、プロピレンを過酸化水素で酸化するエポキシ化工程で製造されるプロピレンオキシドを精製する方法であって、
    (a)プロピレンオキシド、メタノール及びアセトアルデヒドから成る粗製のエポキシ
    化反応生成物を、精留塔に供給し、
    (b)粗製のエポキシ化反応生成物を、精留塔内で分別蒸留し、
    (c)プロピレンオキシドとメタノールから成り、粗製のエポキシ化反応生成物に比し
    て低濃度のアセトアルデヒドを含む塔頂流を、精留塔から引き出し、そして
    (d)メタノールとアセトアルデヒドから成る塔底流を、精留塔から引き出す各ステッ
    プから成ることを特徴とする方法。
  2. 前記エポキシ化工程において、触媒としてチタン含有ゼオライトを使用する、請求項1の方法。
  3. 粗製のエポキシ化反応生成物のメタノール濃度が60〜80wt%である、請求項1の方法。
  4. 粗製のエポキシ化反応生成物に含まれるアセトアルデヒドの少なくとも99%を、塔底流によって採取する、請求項1の方法。
  5. 前記分別蒸留を、1.02〜3.4atm絶対圧(15〜50psia)の塔頂圧で実施する、請求項1の方法。
  6. 前記分別蒸留を、80〜110℃の塔底温度で実施する、請求項1の方法。
  7. 粗製のエポキシ化反応生成物が最初プロピレンを含み、ステップ(a)に先立って、粗製のエポキシ化反応生成物を初期蒸留し、プロピレンの相当の部分を除去する、請求項1の方法。
  8. 粗製のエポキシ化反応生成物と塔底流がさらに水を含む、請求項1の方法。
  9. 前記塔頂流を第二の精留塔に送って、前記塔頂流を蒸留し、プロピレンから成る第二の塔頂流とプロピレンオキシドから成り実質的にプロピレン含まない第二の塔底流とを第二の精留塔から別々に引き出すようにする、請求項1の方法。
  10. 前記第二の塔底流を抽出蒸留塔に送って、前記第二の塔底流を抽出溶剤によって抽出蒸留し、実質的にプロピレンオキシドのみから成る第三の塔頂流と、抽出溶剤及び第二の塔底流内に存在する不純物から成る第三の塔底流とを、抽出蒸留塔から別々に引き出すようにする、請求項の方法。
  11. 抽出溶剤がプロピレングリコール及びオクタンから成るグループから選択される、請求項10の方法。
  12. 請求項1に規定された工程(c)においての塔頂流が少なくとも2wt%のメタノールを含む、請求項1の方法。
  13. 精留塔が20〜60の気−液接触理論段を有する、請求項1の方法。
  14. 前記分別蒸留を、10:1〜30:1の還流:留出物比を用いて実施する、請求項1の方法。
  15. 出発物質としてプロピレンを使用し、溶剤としてメタノールを使用し、酸化剤として過酸化水素を使用し、触媒としてチタン含有ゼオライトを使用するエポキシ化工程で製造されるプロピレンオキシドを精製する方法であって、
    (a)2〜10wt%のプロピレンオキシド、60〜85wt%のメタノール、10〜
    25wt%の水、及び0.01〜0.1wt%のアセトアルデヒドから成る粗製
    のエポキシ化反応生成物を、20〜60の気−液接触理論段を有する第一の精留
    塔に供給し、
    (b)前記精留塔内で、1.02〜3.4atm絶対圧(15〜50psia)の塔頂
    圧、80〜110℃の塔底温度、及び10:1〜30:1の還流:留出物比で、
    前記粗製のエポキシ化反応生成物を分別蒸留し、
    (c)プロピレンオキシドと少なくとも2wt%のメタノールから成る塔頂流を、前記
    精留塔から引き出し、そして
    (d)メタノール、水、及び粗製のエポキシ化反応生成物中に存在するアセトアルデヒ
    ドの少なくとも99%、から成る塔底流を、前記精留塔から引き出す、各ステッ
    プから成ることを特徴とする方法。
  16. 塔頂圧が1.7〜2.7atm絶対圧(25〜40psia)、塔底温度が、93〜104℃、還流:留出物比が15:1〜25:1である、請求項15の方法。
  17. 塔頂流が少なくとも4wt%のメタノールを含む、請求項15の方法。
  18. 塔底流が粗製のエポキシ化反応生成物に最初から存在する水の少なくとも99%を含む、請求項15の方法。
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