JP4301599B2 - 終減速装置のエアブリーザ構造 - Google Patents

終減速装置のエアブリーザ構造 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、自動車の終減速装置におけるエアブリーザ構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
キャリアにカバーを合体させたギヤボックス内にディファレンシャルギヤが支持される終減速装置におけるエアブリーザは、一般にギヤボックス内上部にブリーザ室を形成して、同ブリーザ室と外部とをブリーザパイプやブリーザプラグを介して連通する構造で、潤滑油の外部への流出を防止しながら常にギアボックス内を大気圧に保つようにしている。
【0003】
ギヤボックス内では、リングギヤ等の回転により底部に溜まった潤滑油が掻き上げられ飛散し、油路に導かれて軸受等所要箇所に潤滑油が供給される。
このような潤滑油がブリーザ室に浸入すると、流出のおそれがあるとともにギア収納空間との連通路が閉塞されてブリーザ機能が停止されるおそれがある。
【0004】
そこで飛散する潤滑油がブリーザ室に浸入しないようにカバーと一体のリブでブリーザ室を遮蔽する例(特公平1−14472号公報)や別途仕切り板であるデフレクタをボルトで固定して飛散する潤滑油からブリーザ室を遮蔽するようにした例(実公平4−51239号公報)がある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかし前者の例では、ブリーザ室を遮蔽するリブの配置が型抜き方向に限られ有効な遮蔽ができない場合があり、後者の例では型抜き方向と垂直な面をデフレクタで遮蔽できるが、デフレクタを取り付けるのにボルト締め(あるいは溶接、かしめ付け等)によらなければならず組付性が悪い。
【0006】
本発明は、かかる点に鑑みなされたもので、その目的とする処は、ブリーザ室への潤滑油の浸入を有効に防止でき、組付性に優れた終減速装置のエアブリーザ構造を供する点にある。
【0007】
【課題を解決するための手段および作用効果】
上記目的を達成するために、本発明は、ディファレンシャルギヤを覆うギヤボックスがキャリアとカバーとを互いの合わせ面を合わせて合体し構成される終減速装置において、
前記キャリアの上部内空間と前記カバーの上部内空間をそれぞれに互いに対向して突設されたリブが合わされて仕切りギヤボックス内の上部にブリーザ室を構成し、前記ブリーザ室と外部とをブリーザ手段が連通し、前記キャリア側のリブの一部を切り欠いて上部ブリーザ室の下方に開口した連通路を形成し、L字の金属平板の矩形連結部から延出した1側辺を折り曲げて略垂直に立ち上げ、さらに外側に断面コ字状を形成するように折り曲げて係止部を成形し、前記矩形連結部から他側辺が延出した仕切り板が、前記係止部を前記リブに係止して取り付けられ、前記連通路の下方に油路が形成され、前記仕切り板は、前記矩形連結部から延出した前記他側辺が前記油路をカバー側に流れる潤滑油を前記連通路の手前で規制して前記連通路の開口を確保した終減速装置のエアブリーザ構造とした。
【0008】
ギヤボックス内でリングギヤ等の回転により底部に溜まった潤滑油が掻き上げられ飛散し、油路に導かれて軸受等所要箇所に潤滑油が供給されるが、飛散した潤滑油をブリーザ室の下方に開口した連通路の手前で仕切り板が有効に規制して連通路の開口を確保することができるので、ブリーザ室への潤滑油の浸入が効果的に防止され、外部への潤滑油の流出が防止されるとともに連通路が閉塞されることなくブリーザ機能を維持することができる。
【0009】
仕切り板は、リブに係止する係止部を一体に備えているので、取り付けが簡単である。
【0011】
連通路の下方の油路をカバー側に流れる潤滑油を前記仕切り板が連通路の手前で規制するので、連通路の開口を有効に確保することができ、ブリーザ室への潤滑油の浸入および外部への潤滑油の流出が防止されるとともに連通路が閉塞されることなくブリーザ機能を維持することができる。
【0012】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の終減速装置のエアブリーザ構造において、前記仕切り板の係止部が、前記一方のリブ端縁に嵌合し、他方のリブとの間に挟着されることを特徴とする。
【0013】
仕切り板は、その係止部をリブに嵌合し、キャリアとカバーとの合体でリブ間に挟着され固定されるので、仕切り板の組付けが簡単でかつ組付け後の仕切り板の脱落が確実に防止できる。
【0014】
請求項3記載の発明は、請求項2記載の終減速装置のエアブリーザ構造において、前記リブ端縁の前記仕切り板の係止部を挟着する部分を係止部の厚さ分凹ませて凹部を形成したことを特徴とする。
【0015】
仕切り板の係止部は、リブ端縁の凹部に嵌合してリブ間に挟まれるので、仕切り板の位置決めが容易で、組付け後の仕切り板のズレを確実に防止することができる。
【0016】
請求項4記載の発明は、請求項1から請求項3のいずれかの項記載の終減速装置のエアブリーザ構造において、前記仕切り板が、係止部と一体にプレス成形されることを特徴とする。
【0017】
仕切り板が係止部とともに一体にプレス成形されるので、簡単に製造することができるとともに、係止部をリブに係止された仕切り板をキャリアおよびカバーの型抜き方向に略垂直に配置するような形状とすることができ、潤滑油から連通路を有効に遮蔽して開口を確保することができる。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下本発明に係る一実施の形態について図1ないし図5に図示し説明する。
本実施の形態に係る自動車の終減速装置1は、図1に示すようにディファレンシャルギヤ3を覆うギヤボックス2が前後のキャリア10とカバー20との合体により構成される。
なお本実施の形態ではキャリア10側を前方とカバー20側を後方として説明する。
【0019】
前側のキャリア10は、前方に延出した筒部11に軸受(図示せず)を介してピニオンシャフト4が回転自在に支持され、ピニオンシャフト4の後端にドライブピニオン5が嵌着され一体に回転する。
同ドライブピニオン5にベベルギヤである大径のリングギヤ6が噛合する。
【0020】
キャリア10とカバー20は、リングギヤ6の回転中心軸を含むピニオンシャフト4に垂直な面を互いの合わせ面としており、キャリア10を合わせ面側から見た後面図を図2にその要部斜視図を図5に、カバー20の合わせ面側から見た前面図を図3に図示する。
【0021】
キャリア10の合わせ面12は、概ね矩形枠をしており、その内部に種々の補強リブとともに右側上方角部にブリーザ室Bを形成するリブ15およびそのリブ15の下方に内部に油路R1を形成するリブ16が突出形成されている。
全てのリブは、キャリア10の型抜き方向に沿って突出しており、リブ15とリブ16は一部を除き端面は、合わせ面12と同一面をなす。
【0022】
リブ15は、図2および図5に示すようにキャリア10とカバー20とをボルト締めするボルト孔を有する上方中央のボス部17から右側へ若干斜め下方に傾斜して右壁に連接してブリーザ室Bを構成するようにしている。
そしてリブ15の下部である右壁と連接する部分が切り欠かれて連通路18が下方に開口して設けられ、リブ15の他の端面中央部が僅かに凹んで凹部15aが形成されている。
【0023】
リブ15の下方のリブ16は、リングギヤ6を避けて高さの低い部分16aが中央ボス部17の下方部分から右側へ若干下方へ傾斜して延出し、さらに後方へ延びて高さの高い部分16bが右側の軸受19の上部にまで至って油路R1を形成しており、高い部分16bの端面は合わせ面12と同一面をなす。
【0024】
他方のカバー20は、キャリア10の合わせ面12と略同じ矩形枠状の合わせ面22を有し、図3に示すようにキャリア10側のリブ15,リブ16に対向して略対称にリブ25,リブ26が突出形成されている。
【0025】
リブ25は、その端面が一部中央ボス部27側に設けられた切欠き29を除き合わせ面22と同一面をなし、キャリア10にカバー20を合体すると、リブ15とリブ25が連接して共通のブリーザ室Bが構成される。
リブ26は、カバー20側に油路R2を形成し、右端部(図3で左端部)の端面がキャリア10側の高い部分16bと連接するようになっている。
【0026】
ブリーザ室Bのキャリア側右壁を水平に貫通してブリーザパイプ7が支持され、ブリーザ室Bと外部とを連通している。
そしてブリーザ室Bを形成するキャリヤ側リブ15の凹部15aに係止部9を嵌合させて仕切り板8が取り付けられる。
【0027】
仕切り板8は、L字状をした金属平板をプレス成形して簡単に製造できる。
すなわち図4に図示するように、L字の矩形連結部8aから延出した1側辺を折り曲げて略垂直に立ち上げ、さらに外側に断面コ字状を形成するように折り曲げて係止部9を成形し、矩形連結部8aから延出した他の側辺8bを若干折り曲げて矩形連結部8aに対して斜めに傾斜した側辺8bを成形する。
【0028】
断面コ字状の係止部9の内側空隙の幅は、ブリーザ室Bを形成するリブ15の厚さに略等しく、係止部9自体の幅(側辺の幅)は、リブ15の凹部15aの幅に略等しい。
かかる仕切り板8は、図2および図5に示すように係止部9をリブ15の凹部15aに嵌合して係止される。
【0029】
断面コ字状の係止部9の対向する側辺がリブ15を挟んで支持され、凹部15aの深さは係止部9の板厚と等しいので、凹部15aに嵌まった折曲部は合わせ面12と同一面をなす。
【0030】
係止部9がリブ15に係止されると、図5に示すように仕切り板8は、キャリア10の型抜き方向と略垂直な面を構成して位置し、油路R1の下流側上半部を遮蔽することになる。
仕切り板8の側辺8bは、リブ15に形成された連通路18の下方の前側に位置している。
【0031】
こうしてキャリア10側のリブ15に仕切り板8が取り付けられた後、キャリア10にカバー20が合体されると、仕切り板8の係止部9はリブ15とリブ25とに挟まれ挟着される。
【0032】
このように仕切り板8は、その一体の係止部9がリブ15の凹部15aに嵌合し、リブ15とリブ25に挟着されて固定されるので、ボルト等の締付け具が必要なく組付け作業が簡単で、かつ組付け後仕切り板8は確実に固定され脱落のおそれが全くない。
仕切り板8の係止部9は、リブ15の端縁の凹部15aに嵌合しているので、仕切り板8の位置決めが容易で、組付け後の仕切り板8のズレは確実に防止される。
【0033】
本終減速装置1が駆動されリングギヤ6が前進方向の回転(図1において時計回りの回転)をすると、ギヤボックス2の底に溜まった潤滑油をリングギヤ6が主にケース20側内部で上方に掻き上げ接線方向に飛散する。
【0034】
図2を参照して前進方向に回転するリングギヤ6の特に歯により接線方向に飛散される潤滑油は、キャリア10側の特に中央ボス部17の天井面や下方のリブ16の突出高さの低い部分16aに至る内側面に当たり、内面に沿って流れ落ち、油路R1の上流側に集まる。
【0035】
この油路R1の上流側に集まった潤滑油が、油路R1の傾斜に導かれて流れると、図5の破線矢印のように流れ、最終的にカバー側に向かって流れ、軸受19に供給される。
【0036】
リングギヤ6が前進方向に高速回転すると、潤滑油は益々油路R1の上流側に集中して油路R1を流れる潤滑油の量が増大するが、この潤滑油のカバー側に向かう流れは、仕切り板8により連通路18の手前で規制されるので、連通路18の開口は確保される。
【0037】
このように仕切り板8は、キャリア10の型抜き方向と垂直な遮蔽面を構成し、油路R1を流れる潤滑油を効果的に規制して連通路18の開口を確保できるので、連通路18から潤滑油が浸入したり、開口を塞いだりすることがなく、ブリーザ室Bのブリーザ機能を常に維持することができるとともに、潤滑油がブリーザパイプ7を通じて外部に漏出することもない。
【0038】
リングギヤ6が前進方向に高速回転する場合以外、すなわち前進方向に中低速回転したり後進方向に回転する場合は、潤滑油が連通路18を塞いだり、連通路18から浸入したりすることは殆どない。
【0039】
なお稀に終減速装置1の振動等により連通路18の開口を潤滑油が塞ぐようなことがあっても、ブリーザ室Bには連通路18のほかに切欠き29による通路がギヤ室との間を連通しているので、連通路18を塞いだ潤滑油を抜くことができ、連通路18の開口はすぐに回復できる。
【0040】
連通路18より左方にあるリブ25の切欠き29は、潤滑油が集中するリブ16の突出高さの低い部分16a上に左右方向の位置が対応するが、合わせ面12,22に沿ってあり潤滑油が集中する部分と前後位置がずれており、潤滑油が浸入しにくい位置にある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施の形態に係る終減速装置の断面図である。
【図2】キャリアの後面図である。
【図3】カバーの前面図である。
【図4】仕切り板の斜視図である。
【図5】キャリアの要部斜視図である。
【符号の説明】
B…ブリーザ室、R1,R2…油路、
1…終減速装置、2…ギヤボックス、3…ディファレンシャルギヤ、4…ピニオンシャフト、5…ドライブピニオン、6…リングギヤ、7…ブリーザパイプ、8…仕切り板、9…係止部、
10…キャリア、11…筒部、12…合わせ面、15,16…リブ、17…ボス部、18…連通路、19…軸受、
20…カバー、22…合わせ面、25,26…リブ、29…切欠き。

Claims (4)

  1. ディファレンシャルギヤを覆うギヤボックスがキャリアとカバーとを互いの合わせ面を合わせて合体し構成される終減速装置において、
    前記キャリアの上部内空間と前記カバーの上部内空間をそれぞれに互いに対向して突設されたリブが合わされて仕切りギヤボックス内の上部にブリーザ室を構成し、
    前記ブリーザ室と外部とをブリーザ手段が連通し、
    前記キャリア側のリブの一部を切り欠いて上部ブリーザ室の下方に開口した連通路を形成し、
    L字の金属平板の矩形連結部から延出した1側辺を折り曲げて略垂直に立ち上げ、さらに外側に断面コ字状を形成するように折り曲げて係止部を成形し、前記矩形連結部から他側辺が延出した仕切り板が、前記係止部を前記リブに係止して取り付けられ、
    前記連通路の下方に油路が形成され、
    前記仕切り板は、前記矩形連結部から延出した前記他側辺が前記油路をカバー側に流れる潤滑油を前記連通路の手前で規制して前記連通路の開口を確保したことを特徴とする終減速装置のエアブリーザ構造。
  2. 前記仕切り板の係止部は、前記一方のリブ端縁に嵌合し、他方のリブとの間に挟着されることを特徴とする請求項1記載の終減速装置のエアブリーザ構造。
  3. 前記リブ端縁の前記仕切り板の係止部を挟着する部分を係止部の厚さ分凹ませて凹部を形成したことを特徴とする請求項2記載の終減速装置のエアブリーザ構造。
  4. 前記仕切り板は、係止部と一体にプレス成形されることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかの項記載の終減速装置のエアブリーザ構造。
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