JP4301529B2 - 非齲蝕性の糖代用物の製法 - Google Patents

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、組換えDNA技術を用いる、非齲蝕性の糖、特にトレハルロースおよび/またはパラチノースの調製のための改良方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
非齲蝕性の糖置換体であるパラチノース(イソマルツロース)およびトレハルロースは、固定化細菌性細胞(例えば、プロタミノバクター ルブルム(Protaminobacter rubrum)、エルウィニア ラポンティキ(Erwinia rhapontici)、セルラティア プリムティカ(Serratia plymuthica)を用いる酵素的転移によりスクロースから大量に産生される。これは二糖類であるスクロースの2つの単糖単位間に存在するα1→β2グリコシド結合が、パラチノースにおけるα1→6結合およびトレハルロースにおけるα1→α1結合へと異性化されることを伴なう。2つの非齲蝕性二糖類を生じるためのスクロースの転移は、スクロースムターゼとも称される細菌性酵素スクロースイソメラーゼによる触媒作用を用いて行われる。使用する生物体に依存して、この反応は所望の非齲蝕性二糖類パラチノースおよびトレハルロース以外にも、所定の比率における所望されない単糖類(グルコースおよび/またはフルクトース)を含む産物混合物をもたらす。これらの単糖類含有物は工業的には重要な問題となっており、その理由はそれらを除去するために手の込んだ精製処理(通常は分別結晶法)が必要であるためである。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
したがって本発明の基となる一つの目的は、スクロースのトレハルロールおよび/またはパラチノースへの異性化の際に単糖類の形成をできる限り抑制することであった。本発明の基となる他の目的は、既知の生物体が産生するものと比較してより高い収率においてパラチノースおよび/またはトレハルロースを産生する生物体を提供することであった。
【0004】
【課題を解決するための手段】
これらの目的を達成するために、組換えDNA分子、組換えDNA分子で形質転換させた生物体、組換え蛋白質、および特にパラチノースおよび/またはトレハルロースである非齲蝕性の糖の調製のための改良方法を提供する。
【0005】
本発明は、スクロースイソメラーゼ活性を有する蛋白質をコードし、そして
(a)適切である場合にはシグナルペプチドコーディング領域を伴わない、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号9、配列番号11、もしくは配列番号13で示されるヌクレオチド配列の内の一つ、
(b)遺伝コードの縮重の範囲内に含まれる、(a)からの配列に対応するヌクレオチド配列、あるいは
(c)(a)および/または(b)からの配列とハイブリッド形成するヌクレオチド配列、
を含んでなるDNA配列に関する。
【0006】
本発明の文脈においては、用語「スクロースイソメラーゼ活性を有する蛋白質」は、スクロースを、スクロース中のグルコースとフルクトースとの間のα1→β2グリコシド結合の、2つの単糖単位の間の他のグリコシド結合、特にα1→6結合および/またはα1→α1結合への転化により他の二糖類へと異性化することが可能である蛋白質を意図している。したがって用語「スクロースイソメラーゼ活性を有する蛋白質」は、具体的にはスクロースをパラチノースおよび/またはトレハルロースへと異性化することが可能な蛋白質に関することが好ましい。そのうえ、スクロースの異性化により形成される全ての二糖類におけるパラチノースとトレハルロースとの比率は≧2%であることが好ましく、特に≧20%であることが好ましく、そして≧50%であることが最も好ましい。
【0007】
配列番号1において示されるヌクレオチド配列は、微生物プロタミノバクタールブルム(Protaminobacter rubrum)(CBS 547,77)からの完全なスクロースイソメラーゼをコードしており、これはシグナルペプチド領域を含む。配列番号2において示されるヌクレオチド配列は微生物エルウィニア ラポンティキ(Erwinia rhapontici)(NCPPB 1578)からのスクロースイソメラーゼのN−末端分画をコードしており、これはシグナルペプチドを含む。配列番号3において示されるヌクレオチド配列は、エンテロバクター スピシーズ(Enterobactor spec.)SZ62株からのスクロースイソメラーゼのある分画をコードしている。
【0008】
配列番号1におけるシグナルペプチドをコードする領域はヌクレオチド1−99までの範囲に広がっている。配列番号2におけるシグナルペプチドをコードする領域はヌクレオチド1−108までの範囲に広がっている。本発明に従うDNA配列はシグナルペプチドをコードする領域を含まない配列番号1および配列番号2において示されるヌクレオチド配列をも含むが、その理由は、シグナルペプチドは一般的に特別な細胞区画内(例えば、外膜と内膜との間の周辺腔内、外膜内、もしくは内膜内)における成熟蛋白質の正確な局在化、あるいは細胞外輸送のためのみに必要であるに過ぎず、そのような酵素活性のために必要であるのではないからである。したがって本発明は成熟蛋白質(シグナルペプチドを伴わない)をもコードし、そして異種のシグナル配列、特に例えばdie Gentechnologie、VCH−Verlagsgesellschaft Weinheim、Germany(1985)、p.256においてE.L.Winnacker、Gene und Klone、Eine Einfuehrung in die Gentechnologie、において記載されるような原核生物のシグナル配列に操作的に連結させてある配列を含む。
【0009】
配列番号9のヌクレオチド配列は、プロタミノバクター ルブルムからのイソメラーゼの変異体をコードしている。配列番号11のヌクレオチド配列は、単離SZ 62株からの完全なイソメラーゼをコードしている。配列番号13のヌクレオチド配列は、MX−45株(FERM 11808またはFERM BP3619)からのイソメラーゼの大部分をコードしている。
【0010】
配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号9、配列番号11、もしくは配列番号13において示されるヌクレオチド配列、ならびに遺伝コードの縮重の範囲内に含まれるこれらの配列の内の一つに対応するヌクレオチド配列以外にも、もしある配列がスクロースを異性化することが可能な蛋白質をコードしているとしたら、本発明はそれらの配列の内の一つとハイブリッド形成するDNA配列をも含む。本発明に従う用語「ハイブリッド形成」は、Sambrook et al.(Molecular Cloning. A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Laboratory Press(1989)、1.101−1.104)におけるように用いる。本発明に従うと、ハイブリッド形成は、1時間の1×SSCおよび0.1%SDS、55℃、好ましくは62℃、および特に好ましくは68℃での洗浄、特に1時間の0.2×SSCおよび0.1%SDS、55℃、好ましくは62℃、および特に好ましくは68℃での洗浄の後に依然として陽性のハイブリッド形成シグナルが観察される場合に用いられる用語である。配列番号1もしくは配列番号2において示されるヌクレオチド配列の内の一つ、あるいは遺伝コードの縮重の範囲内に含まれるそれらの配列に対応するヌクレオチド配列と、このような洗浄条件下においてハイブリッド形成するヌクレオチド配列は、本発明に従うヌクレオチド配列である。
【0011】
本発明に従うDNA配列は、
(a)適切である場合にはシグナルペプチドをコードする領域を伴わない、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号9、配列番号11、もしくは配列番号13で示されるヌクレオチド配列の内の一つ、あるいは
(b)(a)からの配列と少なくとも70%相同であるヌクレオチド配列、
を有することが好ましい。
【0012】
本発明に従うDNA配列は、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号9、配列番号11、もしくは配列番号13で示されるヌクレオチド配列の保存部分領域に対して少なくとも80%相同であるヌクレオチド配列をも有することが好ましい。これらの保存部分領域は具体的には、配列番号1において示されるヌクレオチド配列中のヌクレオチド139−186、ヌクレオチド256−312、ヌクレオチド328−360、ヌクレオチド379−420、および/またはヌクレオチド424−444である。
【0013】
特に好ましい態様においては、本発明に従うDNA配列は、配列番号1において示されるヌクレオチド配列の、
(a)ヌクレオチド139−155、および/または
(b)ヌクレオチド625−644
の部分領域に対して少なくとも80%相同である、特に少なくとも90%相同であるヌクレオチド配列を有する。
【0014】
先の配列領域から得られるオリゴヌクレオチドは、プロタミノバクター ルブルム(Protaminobacter rubrum)(CBS 547,77)、エルウィニア ラポンティキ(Erwinia rhapontici)(NCPPB 1578)、分離菌SZ62、およびシュードモナス メソアキドフィラ(Pseudomonas mesoacidophila)MX−45(FERM 11808)を例とする多大な数のテスト微生物のゲノムDNAからのイソメラーゼ断片のPCR増幅のためのプライマーとして適切であることが判明している。
【0015】
以下に示されるオリゴヌクレオチド(括弧内に示される塩基は二者択一のものとして存在することができる)は適切である場合には混合物の形態をとっており、これらのオリゴヌクレオチドをこの目的のために用いることが特に好ましく、それらは、
オリゴヌクレオチドI(17ヌクレオチド)
5′−TGGTGGAA(A,G)GA(G,A)GCTGT−3′
オリゴヌクレオチドII(20ヌクレオチド)
5′−TCCCAGTTCAG(G,A)TCCGGCTG−3′
オリゴヌクレオチドIは配列番号1のヌクレオチド139−155から得られ、そしてオリゴヌクレオチドIIは配列番号1のヌクレオチド625−644に対して相補的な配列から得られる。本発明に従うDNA配列の相同部分領域と、オリゴヌクレオチドIおよびオリゴヌクレオチドIIと称される配列との間の相違は、各場合において2ヌクレオチドを上回らないことが好ましく、そして各場合において1ヌクレオチドを上回らないことが特に好ましい。
【0016】
本発明の他の特に好ましい態様においては、DAN配列は、配列番号1において示されるヌクレオチド配列の、
(a)ヌクレオチド995−1013、および/または
(b)ヌクレオチド1078−1094
の部分領域に対して少なくとも80%相同性、特に少なくとも90%相同性を有する。
【0017】
先の配列領域から得られるオリゴヌクレオチドは、プロタミノバクター ルブルム、エルウィニア ラポンティキからのスクロースイソメラーゼ遺伝子とハイブリッド形成する。
【0018】
本発明の他の特に好ましい態様においては、DAN配列は、配列番号1において示されるヌクレオチド配列の、
(a)ヌクレオチド995−1013、および/または
(b)ヌクレオチド1078−1094
の部分領域に対して少なくとも80%相同性、特に少なくとも90%相同性を有する。
【0019】
本発明に従うヌクレオチド配列は、具体的にはプロタミノバクター(Protaminobacter)、エルウィニア(Erwinia)、セルラティア(Serratia)、レウコノストック(Leuconostoc)、シュードモナス(Pseudomonas)、アグロバクテリウム(Agrobacterium)、およびクレブシエルラ(Klebsiella)という属の微生物から取得することができる。このような微生物の具体的な例は、プロタミノバクター ルブルム(CBS 547,77)、エルウィニア ラポンティキ(NCPPB 1578)、セルラティア プリムティカ(Serratia plymuthica)(ATCC 15928)、セルラティア マルケスケンス(Serratia marcescens)(NCIB 8285)、レウコノストック メセンテロイデス(Leuconostoc mesenteroides)NRRL B−521f(ATCC 10830a)、シュードモナス メソアキドフィラ(Pseudomonas mesoacidophila)MX−45(FERM 11808もしくはFERM BP−3619)、アグロバクテリウム ラディオバクテル(Agrobacterium radiobacter)MX−232(FERM 12397もしくはFERM BP−3620)、およびクレブシエルラ(Klebsiella)の亜種、およびエンテロバクター スピシーズ(Enterobactor spec.)である。本発明に従うヌクレオチド配列は、関連する微生物のゲノムから、例えば配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号9、配列番号11および配列番号13の保存領域の内の一つもしくは複数からのオリゴヌクレオチドを用いて、増幅および/またはハイブリッド形成の標準的な技術により、単純な様式において単離することができ、そして特性決定することができる。本発明に従うヌクレオチド配列はオリゴヌクレオチドIおよびIIを用いて、関連する生物体のゲノムDNAのPCR増幅により取得することが好ましい。関連するスクロースイソメラーゼ遺伝子の部分断片はこのような方式において取得し、そして次には関連する微生物の遺伝子ライブラリーから完全な遺伝子を単離するためのハイブリッド形成プローブとして使用することができる。別法では、特定の生物体から遺伝子ライブラリーを作製し、そしてオリゴヌクレオチドI、II、III、および/またはIVを用いてこの遺伝子ライブラリーを直接スクリーニングすることによりこのヌクレオチド配列を取得することができる。
【0020】
本発明はさらに本発明に従うDNA配列の少なくとも一つのコピーを含むベクターに関する。このベクターは原核生物もしくは真核生物ベクターのいずれかのものであることができ、このベクター上では本発明に従うDNA配列が発現シグナル(プロモーター、オペレーター、エンハンサーなど)の調節下にあることが好ましい。原核生物ベクターの例は、バクテリオファージ(一例は、バクテリオファージλである)を例とするもののような染色体ベクター、ならびにプラスミドを例とするもののような染色体外ベクターであり、環状プラスミドベクターが特に好ましい。適切な原核生物ベクターは、例えばSambrook et al.、前述、第1−4章において記載されている。
【0021】
本発明に従うベクターの特に好ましい例はプラスミドpHWS 88であり、これは調節可能なtacプロモーターの調節下においてプロタミノバクター ルブルム(配列番号1において示される配列を伴う)からのスクロースイソメラーゼ遺伝子を宿している。このプラスミドpHWS 88を、受託番号DSM 8824の基に1993年12月16日、Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen(DSM)、Mascheroder Weg 1b、38124 Braunschweig、Germanyに、ブダペスト条約の規定に従って寄託した。
【0022】
本発明の他の好ましい態様においては、本発明に従うベクターは、宿主細胞当たり10を下回るコピー数、特に好ましくは1から2までのコピー数で宿主細胞内に存在するプラスミドである。一方でこの種のベクターの例は、バクテリオファージλもしくはFプラスミドを例とするもののような染色体ベクターである。スクロースイソメラーゼ遺伝子を含むFプラスミドは、一例ではスクロースイソメラーゼ遺伝子を含むトランスポゾンでのFプラスミドを含む大腸菌(coli)株の形質転換、ならびにそのトランスポゾンがFプラスミド内に取り込まれている組換え細胞についての後続の選択を行うことにより調製することができる。この種の組換えトランスポゾンの一例はトランスポゾンTn 1721 Tetを含むプラスミドpHWS 118であり、そしてこれは先に記載のプラスミドpHWS 88からのスクロースイソメラーゼ遺伝子を含むDNA断片をトランスポゾンpJOE 105(DSM 8825)内にクローニングさせることにより調製した。
【0023】
他方、本発明に従うベクターは真核生物ベクターであることもでき、その例はイーストベクター(例えばYIp、YEpなど)、もしくはより高等な細胞に適するベクター(例えば、プラスミドベクター、ウイスル性ベクター、植物性ベクター)である。これらの種類のベクターは分子生物学の領域における当業者に知られているため、その詳細をここに記載する必要なはい。これに関連しては、特にSambrook et al.、上述、第16章を引用されたい。
【0024】
本発明はさらに、本発明に従うDNA配列もしくは本発明に従うベクターを用いて形質転換させる細胞に関する。ある態様においてはこの細胞は原核生物細胞、好ましくはグラム陰性原核生物細胞、特に好ましくは腸内細菌細胞である。そのうえ例えば大腸菌のようにそれ自体スクロースイソメラーゼ遺伝子を全く含まない細胞を使用することも可能である一方で、他方では、スクロースイソメラーゼ遺伝子の源として先に記載される微生物を例とする、それ自体染色体上にそのような遺伝子を既に含む細胞を使用することも可能である。適切な原核生物細胞の好ましい例は、大腸菌、プロタミノバクター ルブルム、もしくはエルウィニア ラポンティキ細胞である。外因性核酸配列を用いる原核生物細胞の形質転換は分子生物学の領域における当業者には知られている(例えば、Sambrook et al.、上述、第1−4章を参照せよ)。
【0025】
しかしながら本発明の他の態様においては、本発明に従う細胞は、例えば真菌類細胞(例えばイースト)、動物もしくは植物細胞であることもできる。外因性核酸配列を用いる真核生物の形質転換もしくはトランスフェクションのための方法は同様に分子生物学の領域における当業者に知られており、そしてその詳細をここに説明する必要はない(例えば、Sambrook et al.、上述、第16章を参照せよ)。
【0026】
本発明は、本発明に従うDNA配列によりコード化される、先に記載されるスクロースイソメラーゼ活性を有する蛋白質にも関する。この蛋白質は、
(a)適切である場合にはシグナルペプチド領域を含まない、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号10、配列番号12、もしくは配列番号14において示されるアミノ酸配列の内の一つ、あるいは
(b)(a)からの配列と少なくとも80%相同であるアミノ酸配列、
を含むことが好ましい。
【0027】
配列番号4において示されるアミノ酸配列は、プロタミノバクター ルブルムからの完全なスクロースイソメラーゼを含む。シグナルペプチドはアミノ酸1−33の範囲内に広がっている。成熟蛋白質はアミノ酸34において開始する。配列番号5において示されるアミノ酸配列は、エルウィニア ラポンティキからのスクロースイソメラーゼのN−末端分画を含む。シグナルペプチドはアミノ酸1−36の範囲内に広がっている。成熟蛋白質はアミノ酸37において開始する。配列番号6において示されるアミノ酸配列は、微生物SZ 62からのスクロースイソメラーゼの一部分を含む。図1は、P. ルブルム、E. ラポンティキ、およびSZ 62からのイソメラーゼのアミノ酸配列の比較である。
【0028】
配列番号10のアミノ酸配列はプロタミノバクター ルブルムからのイソメラーゼの変異体を包含する。配列番号12のアミノ酸配列は、SZ 62からの完全なイソメラーゼを包含する。この酵素は37℃で高い活性を有しておりそして単糖類は極めて少量産生されるにすぎない。配列番号14のアミノ酸配列はMX−45からのイソメラーゼの大部分を包含する。この酵素は、約85%のトレハルロース及び13%のパラチノースを生産した。
【0029】
本発明に従う蛋白質は、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号10、配列番号12、もしくは配列番号14において示されるアミノ酸配列からの保存部分領域、特に配列番号4において示されるアミノ酸配列の
(a)アミノ酸51−149、
(b)アミノ酸168−181、
(c)アミノ酸199−250、
(d)アミノ酸351−387、および/または
(e)アミノ酸390−420、
からの部分領域に対して少なくとも90%相同であるアミノ酸配列を有することが特に好ましい。
【0030】
先に記載のDNA配列、ベクター、形質転換させた細胞、および蛋白質により、追加的な酵素活性を妨害することなく単純な様式においてスクロースイソメラーゼ活性を提供することが可能である。
【0031】
一方でこの目的のために、宿主生物体からの抽出物の構成成分として、あるいは単離および精製された形態において、組換えDNA技術によりスクロースイソメラーゼを取得することが可能である(例えば、大腸菌内における発現により)。この、好ましくは精製および単離されているスクロースイソメラーゼ酵素を、酵素反応器内におけるスクロースの反応によるトレハルロースおよび/またはパラチノースを例とするもののような非齲蝕性の糖の工業的産生のために、例えば固定化形態において使用することができる。酵素の固定化は当業者に知られており、そして詳細をここに記載する必要はない。
【0032】
他方で、スクロースからの非齲蝕性の糖の産生は、好ましくは固定化形態である完全な微生物内においても実施することができる。先に記載のスクロースイソメラーゼ遺伝子の、パラチノースおよび/またはトレハルロース代謝の低下していないかもしくは低下している(つまり、先に記載の糖類を分解することが有意に不可能である生物体内)生物体内へのクローニングにより、外因性DNAの導入に起因し、極微量の単糖類の形成のみを伴う状態で非齲蝕性二糖類を産生することが可能な、新規の生物体を作製することができる。したがって、スクロースイソメラーゼ遺伝子の導入に適するものは、パラチノースおよび/またはトレハルロースを利用することができない生物体(例えば、大腸菌、バチルス属、イースト)である一方で、他方では、原理的にはパラチノースおよび/またはトレハルロースを利用することが可能ではあろうが、非特異的突然変異もしくは特異的突然変異のためにパラチノースおよび/またはトレハルロースの代謝が低下している生物体である。
【0033】
用語「パラチノースおよび/またはトレハルロースの代謝の低下」は本発明の目的については、関連する生物体のすべての細胞がC源としてスクロースを利用する際に非齲蝕性二糖類を産生するが、後者の二糖類を、例えばそれらを単糖類に分解することによる代謝においてわずかな範囲においてのみ利用することができるに過ぎないことを意味する。この生物体は15−65℃、特に25−55℃における非齲蝕性二糖類および単糖類の分解産物の総量に基づいて、好ましくは2.5%を下回る、特に好ましくは2%を下回る、最も好ましくは1%を下回る総グルコース および フルクトースを産生する。
【0034】
したがって本発明はさらに、スクロースイソメラーゼ活性を有する蛋白質をコードする少なくとも一つのDNA配列を含み、そして先に特定されるようにパラチノースおよび/またはトレハルロース代謝が低下している細胞に関する。この種の細胞はより大きな比率の非齲蝕性二糖類、トレハルロースおよび/またはパラチノースを産生し、そして妨害性副産物であるグルコースおよびフルクトースの産生量が低下している。
【0035】
本発明のある態様においては、パラチノースおよび/またはトレハルロースの細胞内分解の原因となっているインベルターゼおよび/またはパラチナーゼ遺伝子の発現の部分的もしくは完全な阻害により、パラチノースおよび/またはトレハルロースの代謝を低減させることが可能である。遺伝子発現のこのような阻害は、例えば部位特異的突然変異誘発および/または関連する遺伝子の欠損により実施することができる。配列番号7において示されるパラチナーゼ遺伝子または配列番号15において示されるパラチノースヒドロラーゼ遺伝子の部位特異的突然変異は、一例では相同染色体組換えに適し、そして突然変異を起こしているパラチナーゼ遺伝子を宿すベクターの導入、ならびにこのような組換えを生じている生物体の選択により実施することができる。遺伝子組換えによる選択の原理は、die Gentechnologie(1985)、VCH−Verlagsgesellschaft Weinheim、Germany、pp.320 et seq.におけるE.L.Winnacker、Gene und Klone、Eine Einfuehrungにおいて説明されている。
【0036】
さらに、パラチノースおよび/またはトレハルロース代謝が低下している本発明に従う生物体を、適切な出発生物体からの非特異的突然変異誘発、ならびにパラチナーゼ欠損突然変異体についての選択により取得することが可能である。この種類のパラチナーゼ欠損突然変異体のある例は、プロタミノバクター ルブルム株SZZ 13であり、これを受託番号DSM 9121の基に1994年3月29日、Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen(DSM)、Mascheroder Weg 1b、38124 Braunschweig、Germanyに、ブダペスト条約の規定に従って寄託した。この微生物は、P.ルブルムの野生型細胞のN−メチル−N’−ニトロ−N−ニトロソグアニジンでの非特異的突然変異誘発により調製し、そしてこの微生物が非齲蝕性の糖であるトレハルロースおよびパラチノースをもはやグルコースおよびフルクトースへと開裂しない点において識別される。このような突然変異体の選択は、例えばMacConkeyのパラチノース培地、もしくは単一のC源としてパラチノースもしくはグルコースを添加してある最小塩培地を使用することにより実施することができる。MacConkeyのパラチノース培地(Difco Laboratories社、Detroit、Michigan、USAからのMacConkeyAgar Base(40g/L)および20g/Lのパラチノース)上で白色を呈する、あるいは単一のC源としてグルコースを添加してある最小塩培地上において生育するが、単一のC源としてパラチノースを添加してある対応する培地上ではそのようにはならない突然変異体を、パラチナーゼ欠損突然変異体として同定した。
【0037】
さらに本発明は、スクロースイソメラーゼ活性を伴う蛋白質をコードするDNA配列を含む供与生物体からの遺伝子ライブラリーを適切な宿主生物体内に作製し、この遺伝子ライブラリーのクローンを調査し、そしてスクロースイソメラーゼ活性を有する蛋白質をコードする核酸を含むクローンを単離する、スクロースイソメラーゼ活性を伴う蛋白質をコードする核酸を単離するための方法に関する。この方法において単離され、そしてスクロースイソメラーゼ活性を有する蛋白質をコードする核酸を、次には非齲蝕性の糖の新規の産生生物体を提供する目的で、先に記載される細胞内への導入のために使用することができる。
【0038】
この方法においては、選択される宿主生物体はパラチノース代謝についてそれ自体の機能遺伝子、特に機能的なパラチナーゼおよび/またはインベルターゼ遺伝子を有さない生物体であることが好ましい。好ましい宿主生物体は大腸菌である。パラチノース産生性クローンの特徴決定を容易にするためには、遺伝子ライブラリー中のクローンを調査するに当たり、スクロース開裂性クローン、ならびにそのクローン中に含まれそして受容生物体から生じるDNA配列を単離し、そしてこれを、ガラクトースを利用せずかつ遺伝子ライブラリー中のクローンのためのスクリーニング株として用いられる大腸菌内に形質転換させることが可能である。
【0039】
他方では、スクロースイソメラーゼ活性を伴う蛋白質をコードするDNA配列についての遺伝子ライブラリー中のクローンの調査を、プロタミノバクター ルブルム、エルウィニア ラポンティキ、および分離菌SZ62からのスクロースイソメラーゼ遺伝子をコードする、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号9、配列番号11、および配列番号13から得られる核酸プローブを使用して実施することも可能である。プライマーとしてオリゴヌクレオチドIおよびIIを用いるPCR反応により取得されるDNA断片、あるいはオリゴヌクレオチドIIIおよび/またはIVを、プローブとして使用することが特に好ましい。
【0040】
本発明はさらに、非齲蝕性の糖、特にトレハルロースおよび/またはパラチノースの産生方法に関し、この方法は、
(a)単離形態における、スクロースイソメラーゼ活性を有する蛋白質、
(b)スクロースイソメラーゼ活性を有する蛋白質をコードするDNA配列、あるいはこのDNA配列の少なくとも一つのコピーを含むベクターで形質転換させた生物体、
(c)スクロースイソメラーゼ活性を伴う蛋白質をコードする少なくとも一つのDNA配列を含み、そしてパラチノースおよび/またはトレハルロース代謝が低下している生物体、および/または
(d)そのような細胞もしくはそのような生物体からの抽出物、
を、糖類の産生のために使用することを含んでなる。
【0041】
この方法は一般的に、適切な培地中の蛋白質、生物体、もしくは抽出物を、スクロースが少なくとも部分的にスクロースイソメラーゼにより非齲蝕性二糖類へと転化されるような条件下においてスクロースと接触させることにより実施する。その次に、非齲蝕性二糖類をその培地もしくは生物体から取得し、そして既知の様式において精製する。
【0042】
この方法の好ましい態様においては、生物体、蛋白質、もしくは抽出物を固定化形態において使用する。蛋白質(純粋形態、もしくは抽出物におけるもの)は、適切な担体に対して、反応性側鎖基(例えば、NH2基)のカップリングにより固定化することが好ましい。細胞の固定化は、例えばアルギン酸ナトリウム/塩化カルシウム溶液中で実施する。細胞および蛋白質の固定化に適切な方法の総説は、例えば、I.Chibata(Immobilized Enzymes、John Wiley and Sons、New York、London、1979)において与えられている。
【0043】
スクロースイソメラーゼ遺伝子で形質転換させた細胞の利用に際して、細胞中の遺伝子コピー数を増加させること、および/または強力なプロモーターとの組み合わせで発現速度を増大させることにより、既知の生物体と比較して非齲蝕性の糖の産生速度を増加させることが可能である。そしてスクロースイソメラーゼ遺伝子を用いて、非齲蝕性の糖を利用することが不可能であるかあるいは限られた程度までのみそれらを利用することが可能であるに過ぎない細胞を形質転換させることにより、形質転換細胞を産生することが可能であり、そしてその形質転換細胞を用いることで、非齲蝕性の糖、特にパラチノースおよび/またはトレハルロースを、副産物がほとんどない状態もしくはわずかな副産物を生じるだけの状態で取得することが可能となる。
【0044】
既に機能的なスクロースイソメラーゼ遺伝子を含み、パラチノースおよび/またはトレハルロースの代謝が減少している微生物を利用する際には、外因性スクロースイソメラーゼ遺伝子での形質転換は必須ではないものの、しかしこれを実施して収率を改善させることができる。
【0045】
最後に、本発明は、パラチナーゼ活性またはパラチノースヒドロラーゼ活性を有する蛋白質をコードし、そして
(a)配列番号7または配列番号15に記載されるヌクレオチド配列、
(b)遺伝コードの縮重の範囲内に含まれる、(a)からの配列に対応するヌクレオチド配列、あるいは
(c)(a)および/または(b)からの配列とハイブリッド形成するヌクレオチド配列、
を含んでなるDNA配列にも関する。
【0046】
本発明はさらに、先に記載のDNA配列の少なくとも一つのコピーを含むベクター、ならびに先に記載のDNA配列もしくはベクターで形質転換させた細胞に関する。本発明は同様に、先に示されるDNA配列によりコード化され、そして配列番号8または配列番号16で示されるアミノ酸配列を好ましくは有する、パラチナーゼ活性を有する蛋白質を含む。
【0047】
P.ルブルムに由来する配列番号8において示されるパラチナーゼは、それが、既知の酵素により開裂されないスクロース異性体、特にパラチノースを開裂するという点において既知のスクロース開裂性酵素とは異なる。
【0048】
配列番号16において示されるアミノ酸配列は、MX−45由来のパラチノースヒドロラーゼを含み、パラチノースを開裂しフルクトースとグルコースを形成する。この酵素をコードする遺伝子は配列番号15で示され、そしてMX−45のゲノム中、配列番号13で示されるイソメラーゼ遺伝子の5′側に存在する。
【0049】
本発明は以下に列挙される配列によりさらに詳しく記載される。
【0050】
配列番号1は、プロタミノバクター ルブルムからのスクロースイソメラーゼをコードする遺伝子のヌクレオチド配列を示す。シグナルペプチドをコードする配列はヌクレオチドNo.99で停止している。
【0051】
配列番号2は、エルウィニア ラポンティキからのスクロースイソメラーゼをコードする遺伝子のヌクレオチド配列のN−末端分画を示す。シグナルペプチドをコードする配列はヌクレオチドNo.108で停止している。
【0052】
配列番号3は、分離菌SZ 62からのスクロースイソメラーゼをコードする遺伝子のヌクレオチド配列のある分画を示す。
【0053】
配列番号4は、プロタミノバクター ルブルムからのスクロースイソメラーゼのアミノ酸配列を示す。
【0054】
配列番号5は、エルウィニア ラポンティキからのスクロースイソメラーゼのアミノ酸配列のN−末端分画を示す。
【0055】
配列番号6は、分離菌SZ 62からのスクロースイソメラーゼのアミノ酸配列のある分画を示す。
【0056】
配列番号7は、プロタミノバクター ルブルムからのパラチナーゼ遺伝子のヌクレオチド配列を示す。
【0057】
配列番号8は、プロタミノバクター ルブルムからのパラチナーゼのアミノ酸配列を示す。
【0058】
配列番号9は、プロタミノバクター ルブルムからのスクロースイソメラーゼ遺伝子の変異体のヌクレオチド配列を示す。
【0059】
配列番号10は、その対応するアミノ酸配列を示す。
【0060】
配列番号11は、SZ 62からのスクロースイソメラーゼ遺伝子の完全なヌクレオチド配列を示す。
【0061】
配列番号12は、その対応するアミノ酸配列を示す。
【0062】
配列番号13は、シュードモナス メソアキドフィラ(Pseudomonas mesoacidophila)(MX−45)からのスクロースイソメラーゼ遺伝子の大部分を示す。
【0063】
配列番号14は、その対応するアミノ酸配列を示す。
【0064】
配列番号15は、シュードモナスメソアキドフィラ(MX−45)からのパラチノースヒドロラーゼ遺伝子を示す。
【0065】
配列番号16は、その対応するアミノ酸配列を示す。
【0066】
以下に示す実施例は、本発明をさらに詳しく説明するために掲載する。
【0067】
【実施例】
実施例1
プロタミノバクター ルブルムからのスクロースイソメラーゼ遺伝子の単離
生物体プロタミノバクター ルブルム(CBS 574,77)からの完全なDNAを、Sau3A Iで部分的に消化させた。約10kBpのサイズを有する断片のコレクションは、ゲル電気泳動による分画化の後の溶出により得られる断片混合物から取得し、そしてこれをラムダーEMBL4ベクター誘導体λ RESII(J. Altenbuchner、Gene 123(1993)、63−68)の既にBamHIで開環させてある誘導体内に連結させた。遺伝子ライブラリーは、先に記載の引用に従い、大腸菌のトランスフェクション、ならびにファージのプラスミド内への形質転換により作製した。この遺伝子ライブラリー中のカナマイシン耐性コロニーのスクリーニングは、ハイブリッド形成により、成熟イソメラーゼのN末端の配列から得られる放射ラベル化オリゴヌクレオチドS214を用いて実施した。
【0068】
S214: 5′−ATCCCGAAGTGGTGGAAGGAGGC−3′
T A A A A
それに続き、適切な培養の後に、陽性反応を示すコロニーからプラスミドDNAを単離した。制限地図を作製した後に、この方法において取得したプラスミドpKAT 01からの適切なサブフラグメントの配列決定を行い、そしてこのようにしてイソメラーゼをコードするDNAの完全なヌクレオチド配列(配列番号1において示される)を取得した。この配列から得られるアミノ酸配列は、配列決定(エドマン分解)により得られる成熟イソメラーゼのペプチド配列に完全に対応する。SacIについての開裂部位はこのイソメラーゼ遺伝子の非コーディング3’領域内に存在し、そしてHindIIIについての開裂部位は非コーディング5’領域内に存在する。このことにより、当該酵素で予め開裂させてあるベクターpUCBM 21(ベクターpUC 12から得られる、Boehringer Mannheim GmbH社、Mannheim、Germany)内への完全なイソメラーゼ遺伝子のサブクローン化が可能になる。得られるプラスミドはpHWS 34.2と称し、そしてこのプラスミドはこれを宿している大腸菌細胞にスクロースイソメラーゼを合成する能力を付与する。
【0069】
P.ルブルムからのスクロースイソメラーゼ遺伝子の変異体は配列番号9のヌクレオチド配列を有する。
【0070】
実施例2
大腸菌内におけるP.ルブルムからのスクロースイソメラーゼのクローニングおよび発現
1. プラスミドpHWS88の調製
スクロースイソメラーゼ遺伝子の非コーディング領域を、配列
5′−CGGAATTCTTATGCCCCGTCAAGGA−3′
を有するオリゴヌクレオチドS434を用いてプラスミドpHWS 34.2から削除し、そして同時にEcoRI開裂部位(CGAATTC)を導入した。この方法において得られるイソメラーゼ遺伝子誘導体をBstE IIで処理し、そして突出しているBstE II末端をS1ヌクレアーゼの消化により切り落とし、そして続いてEcoRIでの消化を実施した。この方法により処理したイソメラーゼ遺伝子を、予めEcoRIおよびSmaIで予備処理してあるベクターpBTacI(Boehringer Mannheim GmbH社、Mannheim、Germany)内にクローン化させた。得られるベクターpHWS 88(DMS 8824)は、ATG開始コドンの前の先行するEcoRI制限部位、ならびにS1−切端BstE II開裂部位までに及ぶイソメラーゼ遺伝子の3’領域を有する修飾化イソメラーゼ遺伝子を含む。IPTGで誘導をかける際、このベクターは、このプラスミドを宿している細胞にイソメラーゼを産生する能力およびアンピシリン(50から100μg/mlまで)に対する耐性を付与する。イソメラーゼを産生させるのに用いるのが好ましいのは、lacレプレッサーを過剰産生する大腸菌宿主細胞である。
【0071】
2.プラスミドpHWS118::Tn1721Tetの調製
スクロースムターゼのための遺伝子カセットをトランスポゾン内に取り込ませた。
【0072】
これは、tacプロモーターの調節下にスクロースムターゼ遺伝子を宿すプラスミドpHWS88からのSphI/HindIII DNA断片を、トランスポゾンTn 1721が存在しているプラスミドpJOE105内にクローン化させることにより実施する。このプラスミドpJOE105は、ブダペスト条約の規定に従い、受託番号DSM 8825の基に、DSMに、1993年12月16日に寄託した。得られるプラスミドpHWS118においてはスクロースムターゼ遺伝子は調節可能なtacプロモーターの調節下に置かれており、このプラスミドを使用してF’プラスミドを含む大腸菌株を形質転換させた。図2はpHWS88およびpJOE 105からのpHWS 118の調製のためのクローニングチャートを示す。
【0073】
スクロースムターゼ遺伝子を含む大腸菌のトランス接合体を図3のチャートにおいて記載されるように調製した。この目的のために、まず最初にF’プラスミドにより媒介されるLac+表現型を保持するF’含有性大腸菌株CSH36(J.H.Miller、Experiments in Molecular Genetics、Cold Spring Harbor Laboratory(1972)、p.18)を、ナリジキシン酸に対する耐性を示す大腸菌株JM108と交雑させた(Sambrook et al.、上述p.A9−A13)。ラクトース、プロリン、およびナリジキシン酸を添加してある最小培地上での選択によりF’−Lac含有性トランス接合体を取得した。これを、tacプロモーターによるスクロースムターゼ遺伝子の調節を可能にさせる目的で、IqプラスミドFDX500(Brinkmann et al.、Gene 85(1989)、109−114)で追加的に形質転換させた。
【0074】
この方法で調製したトランス接合体を、スクロースムターゼ遺伝子を宿すトランスポゾンプラスミドpHWS118で形質転換させた。トランス接合体の選択のために、ストレプトマイシン耐性大腸菌株HB101(BoyerおよびRoulland−Dussoix、J. Mol. Biol. 41(1969)、459−472)内への交雑を実施した。トランスポゾンにより媒介されるテトラサイクリン耐性の転移は、接合もしくは動態化が不可能であるプラスミドppHWS118からの修飾化Tn1721Tetの、接合が可能であるF’プラスミドへの転位の後にのみ可能になる。HB101内の修飾化トランスポゾンを有するF’プラスミドの伝達体は、ストレプトマイシンおよびテトラサイクリンを含むLBプレート上で選択し、そしてアンピシリンおよびナリジキシン酸のプレートで再テストした。
【0075】
3. 大腸菌におけるスクロースイソメラーゼの発現
このようなF’プラスミド含有性大腸菌による酵素産生を調査したところ、この大腸菌はスクロースムターゼ蛋白質を産生することが可能であることが示された。追加的なLacレプレッサープラスミド(例えば、K1/1もしくはK1/10)を全く宿さないF’プラスミド含有性HB101細胞は、誘導物質であるイソプロピルβ−D−チオガラクトシド(IPTG)を使用した場合とそうでない場合とで、同一の量のスクロースムターゼ蛋白質を産生した。3つのトランス接合体K1/1、K1/10、およびK1/4の産生率を以下の表1に示す。
【0076】
Figure 0004301529
スクロースムターゼ蛋白質の産生中には大腸菌細胞の正常な生育を観察することが可能であった。
【0077】
スクロースムターゼ遺伝子をレプレッサーコード化プラスミドpFDX500(トランス接合体K1/4を参照せよ)の存在下におけるF’プラスミド内へ導入することにより、誘導物質IPTGで酵素産生を調節することが可能になった。IPTGなしの状態では酵素活性は測定しなかったものの、4時間の誘導の後には約1.6U/mgのスクロースムターゼ蛋白質の産生が観察可能であった。
【0078】
細胞成長についての不利な効果は観察されなかった。プラスミド含有性大腸菌は、4時間の誘導後には約3OD600の密度に達した。
【0079】
最高で1.6U/mgのスクロースムターゼ活性が、形質転換させた大腸菌内において測定された。合成作業はP.ルブルムのものと比較可能である。SDSゲル電気泳動による産生酵素の分析により、不活性蛋白質凝集物の証拠は得られていない。スクロースムターゼ蛋白質のバンドはクーマシー染色ではかすかに可視化できるに過ぎず、そしてウエスタンブロットにおいてのみ明確に検出された。大腸菌内のスクロースムターゼの産生においては、蛋白質バンドの強度と測定される酵素活性とを相関させることが可能であった。
【0080】
実施例3
エルウィニア ラポンティキからのスクロースイソメラーゼ遺伝子の単離
遺伝子ライブラリーは、実施例1において記載されるものと同一の方法において、エルウィニア ラポンティキ(NCPPB 1578)からの完全なDNAの制限開裂により作製した。
【0081】
Figure 0004301529
とのプライマー混合物を使用してPCR増幅を行ったところ、あるDNA断片が得られ、このDNA断片を用いるとハイブリッド形成によってムターゼ遺伝子を含むコロニーの同定が可能になる。
【0082】
この方法において、エルウィニアのイソメラーゼ遺伝子の1305ヌクレオチ分の長さの断片を含む陽性クローンpSST2023を見いだした。この断片のヌクレオチド配列を配列番号2に示す。
【0083】
プロタミノバクター遺伝子との配列比較により、シグナルペプチド領域を含む完全な遺伝子分画については77.7%の相同性および78%の類似性が、そしてアミノ酸レベルにおいては83.4%の相同性および83.4%の類似性が認められた。
【0084】
配列の差異は主にシグナルペプチド領域に濃縮されている。この理由のために、比較に関しては、シグナルペプチドを伴わない、実際のムターゼ活性を担っている酵素コード化領域のみを考慮すべきである。これらの観点から、ヌクレオチドレベルにおける相同性もしくは類似性は79%となっている。この分画におけるアミノ酸配列の比較(図1)により87.9%の相同アミノ酸が示されている。エルウィニアのムターゼにおける398のアミノ酸の内の349がプロタミノバクターにおけるものと同一である。48の交換されているアミノ酸の内の25は高い類似性を示し、そのためAAレベルにおける総合的な類似性は94%となっている。AA交換は主にアミノ酸141と198との間の領域に濃縮されている。この領域の手前には、56の保存アミノ酸の配列が存在する。他の分画も特に高い保存性を示す(図1を参照せよ)。
【0085】
これらのデータにより、これまでにクローン化および配列決定を行った分画については、エルウィニアとプロタミノバクターとからの2つのムターゼには相対的に広域にわたる保存性が存在することが示される。
【0086】
エルウィニアからのクローン化ムターゼ遺伝子の同定
エルウィニアのゲノムDNAとの再ハイブリッド形成実験のために選択されたプローブは、pSST2023からの約500bpのサイズのSspI/EcoRI断片であった。ジゴキシゲニンでのラベル化の後にこの断片を、高緊縮性(68℃)を利用するエルウィニアDNAとのハイブリッド形成に使用した。SspI/EcoRIで切断した完全なエルウィニアDNAは、予測される約500bpのサイズの明確なハイブリッド形成シグナルを示した。SspIのみで切断したエルウィニアDNAは約2kbのハイブリッド形成シグナルを示した。
【0087】
エルウィニアのゲノムDNAとのpSST2023の再ハイブリッド形成が成功したことより、pSST2023内にクローン化されたムターゼ領域はエルウィニア ラポンティキから生じるものであることを立証することが可能であった。
【0088】
エルウィニアのムターゼのC−末端部分断片のクローニング
今日までにクローン化されているエルウィニアのムターゼ遺伝子のN−末端部分断片は1.3kbのサイズであり、そして配列番号2において示されるヌクレオチド配列を有している。完全なエルウィニア遺伝子は実質的には既知のプロタミノバクターの遺伝子(1.8kb)とサイズにおいて相同であると仮定することができるために、約500bpの分画がエルウィニア遺伝子のC−末端領域から失われていることがわかる。
【0089】
完全なエルウィニアDNAからの、約2kbのサイズのSspI断片を、エルウィニアのC−末端のクローニングのために選択した。サザンブロットにおいては、この断片は、pSST2023からのジゴキシゲニンラベル化DNAを用いた場合に明確なシグナルを示した。この2kbのSspI断片は3’端の約500bpがpSSt2023において既にクローン化されている領域と重複している。このサイズは、約500bpの消失遺伝子分画の完全なクローニングのためには十分であるはずである。pSST2023からのジゴキシゲニンラベル化断片プローブSspI/EcorIは探索するクローンの同定に適している。
【0090】
実施例4
プロタミノバクターのパラチナーゼ欠損突然変異体の調製
プロタミノバクター ルブルム(CBS 547,77)の細胞を、Miller、J.、(Experiments in Molecular Genetics、Cold Spring Harbor Laboratory、125−179(1972)により改変されているAdelberg et al.(Biochem. Biophys. Reseach Commun.18(1965)、788)の方法により、N−メチル−N’−ニトロ−N−ニトロソグアニジンで突然変異を起こさせた。パラチナーゼ欠損突然変異体は、20g/Lのパラチノースを添加し、濾過により滅菌させたMacConkeyのパラチノース培地(MacConkey Agar Base(Difco Laboratories社、Detroit、Michigan、USA)の40g/Lのもの、あるいは最小塩培地(リットル当たり、10.5gのK2HPO4、4.5gのKH2PO4、1gの(NH42SO4、0.5gのクエン酸ナトリウム・2H2O、0.1gのMgSO4・7H2O、1gのチアミン、2gのパラチノースもしくはグルコース、25mgのカナマイシン、および15gのアガロース、pH7.2)を使用して選択した。MacConkeyのパラチノース培地上で白色を呈するか、あるいはパラチノースを添加してある同一の培地の場合とは対照的にグルコースを添加してある最小塩培地上で生育する突然変異体を、パラチナーゼ欠損突然変異体として同定する。野生型ものとは対照的に、パラチノースをグルコースとフルクトースとに開裂する酵素活性(パラチナーゼ活性)は、これらの突然変異体からの細胞抽出物においては検出できない。
【0091】
培養開始後4時間から11時間までに過渡的にのみパラチノースを検出することが可能である野生型細胞とは対照的に、単一のC源として0.2%のスクロースを添加してある最小塩培地内においてこれらの細胞の培養を行うと、検出可能なパラチノース(イソマルツロース)の蓄積が継続的に存在する。同一の培地中で一晩培養させた培養物は、野生型細胞の場合にはパラチノースを含まないが、この方法において調製された(図4を参照せよ)突然変異体SZZ 13(DMS 9121)の場合においては>0.08%のパラチノースを含む。
【0092】
実施例5
微生物細胞の固定化
砂糖工場からの8kgの濃縮液(juice)、2kgのコーンスティープリカー(corn steep liquor)、0.1kgの(NH42HPO4、および89.9kgの蒸留水、pH7.2からなる滅菌栄養素培養基の内の10mL分を使用して、適切な株の継代培養物から細胞をすすぎ落とす。この懸濁液を、震盪装置内に入れてある先の組成の栄養素溶液200mLを含む1Lフラスコ内での予備培養のための接種材料として使用する。29℃における30時間のインキュベーション時間の後、10本のフラスコを(総含有量2L)を使用して30L用の小発酵器内に入れてある先の組成物の栄養素溶液18Lを接種し、そして発酵を29℃、および分当たり20Lの空気を導入させながら350rpmの撹拌速度において実施する。
【0093】
ml当たり5×109の生物体を上回る生物体計測数が達成された後に発酵を停止させ、そして細胞を遠心により発酵溶液から回収する。その後細胞を2%の濃度のアルギン酸ナトリウム溶液内に懸濁させ、そして2%濃度の塩化カルシウム溶液にこの懸濁液を滴下により添加することにより固定化する。得られる固定化物ビーズを水で洗浄し、そしてこれを数週間+4℃に保存することができる。
【0094】
パラチナーゼ欠損突然変位体SZZ 13(DSM 9121)の細胞は、既知の微生物プロタミノバクター ルブルム(CBS 547,77)およびエルウィニア ラポンティキ(NCPPB 1578)からの比較可能な細胞のものと比較して、それらの産物組成に関してより良い触媒特性を示す。
【0095】
SZZ 13の全細胞および未精製抽出物、ならびに先のように調製したアルギン酸ナトリウム中のSZZ 13の固定化物は、活性アッセイにおける産物組成に関してはその値が増大していた。実際の活性アッセイの前に、この固定化物を0.1モル/Lのリン酸カリウム緩衝液、pH6.5で膨潤させた。
【0096】
25℃における活性測定値により、突然変位体SZZ 13を使用する場合にはフルクトースおよびグルコースは見いだされない一方で、P.ルブルムの野生型細胞では2.6%のフルクトースおよびグルコース(単糖類および二糖類の総量に基づく)が全細胞内において見いだされ、そして12.0%が未精製抽出物中において見いだされた。E.ラポンティキの場合においては、4%のグルコースおよびフルクトースが全細胞内において、そして41%が未精製抽出物中において見いだされた。
【0097】
実施例6
他の微生物からのスクロースイソメラーゼ遺伝子の単離
分離菌SZ62(Enterobactor spec.)、シュードモナス メソアキドフィラ(Pseudomonas mesoacidophila)(MX−45)からの、あるいは他の微生物からのゲノムDNAの部分消化、ならびに得られる断片の適切な大腸菌ベクター内への挿入、ならびに形質転換により遺伝子ライブラリーが得られ、この遺伝子ライブラリーの各クローンは2および15kbの間の受容生物体のゲノム分画を含む。
【0098】
これらのプラスミドを宿し、そしてコロニーが示す赤色を呈するこれらの大腸菌細胞を、MacConkeyのパラチノース培地上でのプレート培養により選択する。これらの細胞内に含まれるプラスミドDNAを、単一のC源としてのガラクトース上で生育することが不可能である大腸菌突然変位体(例えばED8654、Sambrook et al.、上述、ページA9−A13)内へと転移させる。
【0099】
この形質転換細胞株により、受容生物体のDNAから先に記載するように調製してある遺伝子ライブラリー内のパラチノース産生体を同定することが可能である。
【0100】
検索されるパラチノース産生性クローンを同定するために、遺伝子ライブラリーの細胞を単離し、そしてガラクトースおよびスクロースを含む最小塩培地上で培養する。同一の培地を含むプレート上におけるレプリカ平板法の後に、トルエン蒸気に露出させることにより細胞を殺した。次にはスクリーニング株の細胞を、遺伝子ライブラリーのコロニーにかぶせるように、C源を添加していない最小塩ソフトアガロース中に菌叢として広げ、そしてインキュベーションを行う。スクリーニング株の細胞の有意な生育は、パラチノースを産生している遺伝子ライブラリー中の細胞の位置においてのみ観察される。イソメラーゼの含有量は、レプリカ対照の細胞をテストする際に明らかになる。
【0101】
この方法において同定されるこれらの大腸菌クローンは、培地中の単一なC源としてのパラチノース上では生育することができず、全細胞もしくは細胞抽出物についてのテストにおいてはスクロースを開裂する能力を全く示さないが、これらの条件および培地にスクロースを添加していない状態における培養に際してはパラチノースを産生する。
【0102】
別法では、イソメラーゼクローンも、実施例3の処理法により調製されるPCR断片を使用して同定することができる。
【0103】
受容生物体からの固定化DNAとのフィルター上でのハイブリッド形成のためのプローブとしてこの方法において同定された大腸菌クローンからのプラスミドDNAの利用により、イソメラーゼ遺伝子を宿す遺伝子領域を検出することが可能になり、そして特別に作製されたこのような遺伝子領域を入手することができるようになっている。
【0104】
配列番号3において示されるヌクレオチド配列(この配列から得られるアミノ酸配列は配列番号6において示されている)はこの方法において同定した。同一の方法においてシュードモナス メソアキドフィラ(Pseudomonas mesoacidophila)MX−45(FERM 11808)のDNAからのイソメラーゼクローンを見いだした。
【0105】
SZ 62からのスクロースイソメラーゼの完全なヌクレオチド配列及びアミノ酸配列は、配列番号11及び12に示されている。MX−45からのスクロースイソメラーゼのヌクレオチド配列及びアミノ酸配列の大部分は、配列番号13及び14に示されている。
【0106】
実施例7
パラチナーゼ遺伝子のクローニング
実施例1において調製したプロタミノバクター ルブルムの遺伝子ライブラリーを、単離されたパラチナーゼのN−末端の配列から得られ、そして配列
CA(G,A)TT(C,T)GG(T,C)TA(C,T)GG−3′
を有する放射ラベル化オリゴヌクレオチド混合物S433を用いてスクリーニングした。
【0107】
陽性クローンを発見し、そしてpKAT 203と称するあるプラスミドをそのクローンから単離した。
【0108】
プラスミドpKAT 203を宿している大腸菌細胞はパラチノースを代謝することが可能である。パラチノースの、活性アッセイにおいて検出可能であるグルコースとフルクトースとへの開裂により、「パラチノース」の存在が示唆される。
【0109】
プライマーとしてのオリゴヌクレオチドS433を用いてpKAT203のDNAの配列を決定することにより、翻訳後にN−末端アミノ酸として我々に知られているアミノ酸配列のデータへと読み取られる可能性のあるDNA配列を取得することが可能である。読み取り枠を、次に行う配列決定段階において取得した。
【0110】
「パラチナーゼ」遺伝子の配列の決定
さらに詳しい「パラチナーゼ」遺伝子の配列決定のために、プラスミドpKAT 203からの部分断片を制限地図に基づいて選択し、そしてM13ファージ系内にサブクローン化し、そして一本鎖ファージDNAの配列決定を、万能プライマー
5′−GTTTTCCCAGTCACGAC−3′
を使用して実施した。
【0111】
重複する領域を考慮に入れて個々の断片について得られるDNA配列データを組み合わせることにより、「パラチナーゼ」についての1360塩基対の連続的な読み取り枠を決定することが可能になる(配列番号7)。
【0112】
このDNA配列をアミノ酸データへと翻訳することにより、453のアミノ酸(配列番号8)およびそこから演繹することができる約50,000Daの分子量を有する蛋白質が明らかにされている。これは、SDSゲルにおいて約48,000Da上にバンドを有する蛋白質分画を「パラチナーゼ」活性の濃縮により取得することができるという所見に矛盾しない。天然のゲルにおいては、パラチノース開裂性活性は約150,000Daのサイズのバンドから得られた。
【0113】
他の既知の蛋白質との相同性の比較
遺伝子バンク(SwissProt社)において保存してあるデータとの、このDNA配列から得られるアミノ酸配列の比較により、大腸菌(MelA)からのメリビアーゼとの相同性が明らかにされた(2つの部分における相同性は32%)。
【0114】
実施例8
P.メソアキドフィラ MX−45からのパラチノースヒドロラーゼ遺伝子のクローニング
実施例6において調製したP.メソアキドフィラMX−45の遺伝子ライブラリーから配列番号15で示されるヌクレオチド配列を有する遺伝子を得た。この遺伝子は配列番号16で示されるアミノ酸配列を有する蛋白質をコードする。この蛋白質はパラチノースヒドロラーゼであり、パラチノースを開裂してフルクトースとグルコースを生成する反応を触媒する。
【0115】
本発明の主な特徴または態様は以下のとおりである。
【0116】
1. スクロースイソメラーゼ活性を有する蛋白質をコードし、そして
(a)適切である場合にはシグナルペプチドコーディング領域を伴わない、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号9、配列番号11、もしくは配列番号13で示されるヌクレオチド配列の内の一つ、
(b)遺伝コードの縮重の範囲内に含まれる、(a)からの配列に対応するヌクレオチド配列、あるいは
(c)(a)および/または(b)からの配列とハイブリッド形成するヌクレオチド配列、
を含んでなるDNA配列。
【0117】
2. 以下に示す、
(a)適切である場合にはシグナルペプチドをコードする領域を伴わない、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号9、配列番号11、もしくは配列番号13で示されるヌクレオチド配列の内の一つ、あるいは
(b)少なくとも70%が(a)からの配列に相同であるヌクレオチド配列、を含んでなる、上記1に記載のDNA配列。
【0118】
3. 配列番号1において示されるヌクレオチド配列の内の、
(a)ヌクレオチド139−155、および/または
(b)ヌクレオチド625−644、
の部分領域に対して少なくとも80%相同なヌクレオチド配列を有する、上記1、もしくは2に記載のDNA配列。
【0119】
4. 配列番号1において示されるヌクレオチド配列の内の、
(c)ヌクレオチド955−1013、および/または
(b)ヌクレオチド1078−1094、
の部分領域に対して少なくとも80%相同なヌクレオチド配列を有する、上記1−3に記載のDNA配列。
【0120】
5. 上記1から4までの内のいずれかに記載されるDNA配列の内の少なくとも一つのコピーを含むベクター。
【0121】
6. 原核生物ベクターであるベクター。
【0122】
7. 環状プラスミドである、上記5もしくは6に記載のベクター。
【0123】
8. 10を下回るコピー数で宿主細胞内に存在する、上記6もしくは7に記載のベクター。
【0124】
9. 調節可能なプロモータの調節下においてスクロースイソメラーゼ遺伝子を含む、上記7もしくは8に記載のベクター。
【0125】
10.プラスミドpHWS 88(DSM 8824)。
【0126】
11.上記1から4までの内のいずれかにおいて記載されるDNA配列、あるいは上記5から10までの内のいずれかにおいて記載されるベクターを用いて形質転換させてある細胞。
【0127】
12.原核生物細胞である、上記11に記載の細胞。
【0128】
13.グラム陰性原核生物細胞である、上記12に記載の細胞。
【0129】
14.腸内細菌細胞である、上記12に記載の細胞。
【0130】
15.大腸菌、プロタミノバクター ルブルム、もしくはエルウィニア ラポンティキ細胞である、上記12に記載の細胞。
【0131】
16.上記1から4までの内のいずれかに記載されるDNA配列によりコード化される、スクロースイソメラーゼ活性を有する蛋白質。
【0132】
17.以下に示す、
(a)適切である場合にはシグナルペプチド領域を伴わない、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号10、配列番号12、もしくは配列番号14で示されるアミノ酸配列の内の一つ、あるいは
(b)少なくとも80%が(a)からの配列と相同であるアミノ酸配列、
を含んでなる、上記16に記載の蛋白質。
【0133】
18.配列番号4において示されるアミノ酸配列の内の、
(a)アミノ酸51−149、
(b)アミノ酸168−181、
(c)アミノ酸199−250、
(d)アミノ酸351−387、および/または
(e)アミノ酸390−420、
からの部分領域に対して少なくとも90%相同であるアミノ酸配列を有する、上記16もしくは17に記載の蛋白質。
【0134】
19.スクロースイソメラーゼ活性を伴う蛋白質をコードするDNA配列を少なくとも一つは含み、そしてパラチノースおよび/またはトレハルロースの代謝が減少している細胞。
【0135】
20.インベルターゼおよび/またはパラチナーゼ遺伝子の発現の部分的もしくは完全な阻害によりパラチノースおよび/またはトレハルロースの代謝が低下している、上記19に記載の細胞。
【0136】
21.プロタミノバクター ルブルム突然変位体SZZ 13(DSM 9121)。
【0137】
22.スクロースイソメラーゼ活性を伴う蛋白質をコードするDNA配列を含む供与体生物体からの遺伝子ライブラリーを適切な宿主生物体内に作製し、この遺伝子ライブラリーのクローンを調査し、そしてスクロースイソメラーゼ活性を伴う蛋白質をコードする核酸を含むクローンを単離する、スクロースイソメラーゼ活性を伴う蛋白質をコードする核酸を単離するための方法。
【0138】
23.大腸菌を宿主生物体として使用する、上記22に記載の方法。
【0139】
24.遺伝子ライブラリーのクローンの調査に当たって、スクロース開裂性クローン、ならびにそのクローンに含まれ、そして受容生物体から生じるDNA配列を単離し、そしてそれを、ガラクトースを利用せず、そしてその遺伝子ライブラリー中のクローンのためのスクリーニング株として使用する大腸菌株内において形質転換させる、上記22に記載の方法。
【0140】
25.遺伝子ライブラリー中のクローンの調査を、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号9、配列番号11、もしくは配列番号13から得られる核酸プローブを使用して実施する、上記22もしくは23に記載の方法。
【0141】
26.プライマーとして、
Figure 0004301529
とのオリゴヌクレオチド混合物を使用して受容生物体からのDNAのPCR増幅により予め取得されているDNA断片を核酸プローブとして使用する、上記25に記載の方法。
【0142】
27.上記16から18までの内のいずれかに記載される蛋白質、上記11から15まで、もしくは上記19から21までの内のいずれかに記載される生物体、あるいはこの種類の生物体からの抽出物を糖類の産生に用いる、非齲蝕性の糖、特にトレハルロースおよび/またはパラチノースの産生のための方法。
【0143】
28.生物体、抽出物、もしくは蛋白質を固定化形態において使用する、上記23に記載の方法。
【0144】
29.非齲蝕性の糖、特にトレハルロースおよび/またはパラチノースの産生のための、上記16から18までの内のいずれかに記載の蛋白質、あるいは上記11から15まで、もしくは上記19から21までの内のいずれかに記載の生物体の利用。
【0145】
30.パラチナーゼおよび/またはトレハルラーゼ活性を有する蛋白質をコードし、そして
(a)配列番号7もしくは配列番号15で示されるヌクレオチド配列、
(b)遺伝コードの縮重の範囲内に含まれる、(a)からの配列に対応するヌクレオチド配列、あるいは
(c)(a)および/または(b)からの配列とハイブリッド形成するヌクレオチド配列、
を含むDNA配列。
【0146】
31.上記30に記載されるDNA配列の少なくとも一つのコピーを含むベクター。
【0147】
32.上記30に記載のDNA配列もしくは上記31に記載のベクターを用いて形質転換させてある細胞。
【0148】
33.上記30に記載のDNA配列によりコード化される、パラチナーゼおよび/またはトレハルラーゼ活性を有する蛋白質。
【0149】
34.配列番号8もしくは配列番号16で示されるアミノ酸配列を有する、上記33に記載の蛋白質。
【0150】
【表1】
Figure 0004301529
【0151】
【表2】
Figure 0004301529
【0152】
【表3】
Figure 0004301529
【0153】
【表4】
Figure 0004301529
【0154】
【表5】
Figure 0004301529
【0155】
【表6】
Figure 0004301529
【0156】
【表7】
Figure 0004301529
【0157】
【表8】
Figure 0004301529
【0158】
【表9】
Figure 0004301529
【0159】
【表10】
Figure 0004301529
【0160】
【表11】
Figure 0004301529
【0161】
【表12】
Figure 0004301529
【0162】
【表13】
Figure 0004301529
【0163】
【表14】
Figure 0004301529
【0164】
【表15】
Figure 0004301529
【0165】
【表16】
Figure 0004301529
【0166】
【表17】
Figure 0004301529
【0167】
【表18】
Figure 0004301529
【0168】
【表19】
Figure 0004301529
【0169】
【表20】
Figure 0004301529
【0170】
【表21】
Figure 0004301529
【0171】
【表22】
Figure 0004301529
【0172】
【表23】
Figure 0004301529
【0173】
【表24】
Figure 0004301529
【0174】
【表25】
Figure 0004301529
【0175】
【表26】
Figure 0004301529
【0176】
【表27】
Figure 0004301529
【0177】
【表28】
Figure 0004301529
【0178】
【表29】
Figure 0004301529
【0179】
【表30】
Figure 0004301529
【0180】
【表31】
Figure 0004301529
【0181】
【表32】
Figure 0004301529
【0182】
【表33】
Figure 0004301529
【0183】
【表34】
Figure 0004301529
【0184】
【表35】
Figure 0004301529

【図面の簡単な説明】
【図1】プロタミノバクター ルブルム、エルウィニア ラポンティキ、および分離菌ZE 62からのスクロースイソメラーゼのアミノ酸配列の比較を示す。
【図2】トランスポゾンTn 1721上にスクロースイソメラーゼ遺伝子を含む組換えプラスミドpHWS 118の調製のためのクローニングチャートを示す。
【図3】Fプラスミドのスクロースイソメラーゼ遺伝子を含む大腸菌トランス接合体の調製のためのチャートを示す。
【図4】P.ルブルム野生型細胞およびP. ルブルム突然変位体SZZ 13の細胞により産生される糖類間の比較を示す。

Claims (4)

  1. スクロースイソメラーゼ活性を有する蛋白質をコードし、そして
    (a)配列番号11、配列番号13で示されるヌクレオチド配列の内の1つ、
    (b)配列番号12、配列番号14の内の1つのアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列、あるいは
    (c)(a)および/または(b)からの配列と68℃で0.2xSSCおよび0.1%SDSでの1時間の洗浄後にハイブリッド形成するヌクレオチド配列、
    を含んでなるDNA配列を有する単離された核酸。
  2. 請求項1に記載される配列の内の少なくとも一つのコピーを含むベクター。
  3. 請求項1に記載されるDNA配列、あるいは請求項2に記載されるベクターを用いて形質転換されている細胞。
  4. 請求項3に記載される細胞、あるいはこの種類の細胞からの抽出物を糖の産生のために用いる、トレハロースおよび/またはパラチノースの生成方法
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