JPH08263A - マルトースをトレハロースに変換する組換え型酵素 - Google Patents

マルトースをトレハロースに変換する組換え型酵素

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JPH08263A
JPH08263A JP6156399A JP15639994A JPH08263A JP H08263 A JPH08263 A JP H08263A JP 6156399 A JP6156399 A JP 6156399A JP 15639994 A JP15639994 A JP 15639994A JP H08263 A JPH08263 A JP H08263A
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 マルトースをトレハロースに変換する組換え
型酵素とその製造方法、その組換え型酵素をコードする
DNA、そのDNAを含む組換えDNAと形質転換体、
さらには、その組換え型酵素によるマルトースの酵素的
変換方法を提供する。 【構成】 マルトースをトレハロースに変換する組換え
型酵素と、その組換え型酵素をコードするDNAと、そ
のDNAと自律複製可能なベクターを含んでなる組換え
DNAと、その組換えDNAを適宜宿主に導入してなる
形質転換体と、その形質転換体を培養し、培養物から組
換え型酵素を採取してなる組換え型酵素の製造方法と、
マルトースにその組換え型酵素を作用させてトレハロー
スを生成させる工程を含んでなるマルトースの酵素的変
換方法を構成とする。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、マルトースをトレハ
ロースに変換する新規な組換え型酵素に関するものであ
る。
【0002】
【従来の技術】トレハロースは、グルコース2分子が還
元性基同士結合した二糖類であり、天然には細菌、真
菌、藻類、昆虫などに微量存在する。トレハロースは分
子中に還元性基を持たないので、アミノ酸類の存在下で
加熱しても褐変反応を起こすことがなく、着色や変質の
懸念なく飲食物を甘味付けできる利点がある。しかしな
がら、従来の方法では所望量を入手するのが難しく、実
際に飲食物の甘味付けに使われることは殆どなかった。
【0003】これまでの製造方法は、微生物の菌体を利
用する方法と、糖質に複合酵素系を作用させる方法とに
大別される。前者の方法は、特開昭50−154485
号公報などにも見られるように、細菌、酵母などの微生
物を栄養培地で増殖させ、培養物からトレハロースを採
取するものである。一方、後者の方法は、特開昭58−
216665号公報などにもみられるように、基質にマ
ルトースを使用し、これにマルトース・フォスフォリラ
ーゼとトレハロース・フォスフォリラーゼからなる複合
酵素系を作用させ、生成したトレハロースを系外に取出
すものである。前者の方法は、微生物そのものの増殖は
比較的容易なものの、培養物中に含まれるトレハロース
が高々15%(w/w)と僅少であるという問題があっ
た。後者の方法は、トレハロースそのものの分離は比較
的容易なものの、反応自体が2種類の酵素による平衡反
応であり、しかも、その平衡が常時グルコース燐酸側に
傾いていることから、基質を高濃度にして反応させ、ト
レハロースの収量を上げることが原理的に難しかった。
【0004】斯かる状況に鑑み、本発明者らがマルトー
スを直接トレハロースに変換する酵素につき鋭意検索し
たところ、特願平5−199971号明細書に開示した
ように、ピメロバクター・スピーシーズR48を始めと
する種々の微生物がマルトースに作用してトレハロース
を生成するという、従来未知の全く新規な酵素を産生す
ることを見出した。このことは、大量且つ廉価に入手し
得るマルトースを原料にトレハロースが製造できること
を意味しており、斯かる酵素を利用することにより、ト
レハロースに係わる前記課題は悉く解決されていくもの
と期待される。しかしながら、上記微生物は酵素の産生
能が充分でなく、トレハロースを大規模に製造しようと
すると、微生物を大量に培養しなければならないという
問題がある。
【0005】一方、昨今の組換えDNA技術の進歩には
目覚ましいものがある。今日では、全アミノ酸配列が解
明されていない酵素であっても、これをコードする遺伝
子を単離し、その塩基配列を解明できれば、その酵素を
コードするDNAを含む組換えDNAを作製し、これを
微生物や動植物の細胞に導入して得られる形質転換体を
培養することにより、比較的容易に所望量の酵素が取得
できるようになった。斯かる状況に鑑み、マルトースに
作用してトレハロースを生成する酵素をコードする遺伝
子を突き止め、その塩基配列を解明するのが急務となっ
ている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】この発明の目的は、組
換えDNA技術を応用することにより、マルトースに作
用してトレハロースを生成する酵素を創製することにあ
る。
【0007】この発明の別の目的は、その創製された組
換え型酵素をコードするDNAを提供することにある。
【0008】この発明のさらに別の目的は、斯かるDN
Aを含む複製可能な組換えDNAを提供することにあ
る。
【0009】この発明のさらに別の目的は、斯かる組換
えDNAを導入した形質転換体を提供することにある。
【0010】この発明のさらに別の目的は、斯かる形質
転換体を利用した組換え型酵素の製造方法を提供するこ
とにある。
【0011】この発明のさらに別の目的は、組換え型酵
素により、マルトースをトレハロースに変換する方法を
提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】この発明は、前記第一の
課題を、下記の理化学的性質を有する組換え型酵素によ
り解決するものである。 (1) 作用 マルトースに作用させると、トレハロースを生成する。
トレハロースに作用させると、マルトースを生成する。 (2) 分子量 SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動法により測定
すると、分子量値約57,000乃至67,000ダル
トンを示す。 (3) 等電点 等電点電気泳動法により測定すると、約4.1乃至5.
1に等電点を示す。
【0013】この発明は、前記第二の課題を、斯かる組
換え型酵素をコードするDNAにより解決するものであ
る。
【0014】この発明は、前記第三の課題を、上記組換
え型酵素をコードするDNAと自律増殖可能なベクター
を含んでなる複製可能な組換えDNAにより解決するも
のである。
【0015】この発明は、前記第四の課題を、上記組換
え型酵素をコードするDNAと自律増殖可能なベクター
を含んでなる複製可能な組換えDNAを適宜宿主に導入
してなる形質転換体により解決するものである。
【0016】この発明は、前記第五の課題を、上記組換
え型酵素をコードするDNAと自律増殖可能なベクター
を含んでなる複製可能な組換えDNAを適宜宿主に導入
してなる形質転換体を培養し、培養物から組換え型酵素
を採取してなる組換え型酵素の製造方法により解決する
ものである。
【0017】この発明は、前記第六の課題を、マルトー
スに上記組換え型酵素を作用させてトレハロースを生成
させる工程を含んでなるマルトースの酵素的変換方法に
より解決するものである。
【0018】
【作用】この発明の組換え型酵素は、マルトースに作用
させると、トレハロースを生成する。
【0019】この発明のDNAは、自律増殖可能な適宜
ベクターに挿入して複製可能な組換えDNAとし、得ら
れる組換えDNAを、本来、この発明の組換え型酵素を
産生しないけれども、比較的容易に増殖させ得る適宜宿
主に導入して形質転換体とすることにより、この発明の
組換え型酵素の産生を発現する。
【0020】この発明の組換えDNAは、本来、この発
明の組換え型酵素を産生しないけれども、比較的容易に
増殖させ得る適宜宿主に導入して形質転換体とし、この
形質転換体を培養することにより、この発明の組換え型
酵素の産生を発現する。
【0021】この発明の形質転換体は、培養すると、こ
の発明の組換え型酵素を産生する。
【0022】この発明の組換え型酵素は、この発明の製
造方法により、比較的容易に所望量を製造することがで
きる。
【0023】この発明の酵素的変換方法により、マルト
ースを比較的容易にトレハロースに変換することができ
る。
【0024】次に、ピメロバクター・スピーシーズR4
8が産生する酵素の理化学的性質を解明すべく行った実
験について説明する。
【0025】
【実験例1 精製酵素の調製】
【0026】
【実験例1−1 酵素の産生】500ml容フラスコに
2.0%(w/v)グルコース、0.5%(w/v)ポ
リペプトン、0.1%(w/v)酵母エキス、0.1%
(w/v)燐酸水素二カリウム、0.06%(w/v)
燐酸二水素ナトリウム、0.05%(w/v)硫酸マグ
ネシウム7水塩、0.5%(w/v)炭酸カルシウム及
び水からなる液体培地(pH7.2)を100mlずつ
とり、115℃で30分間加熱して滅菌し、冷却後、ピ
メロバクター・スピーシーズR48を植菌し、27℃、
200rpmで24時間回転振盪培養した。次に、30
l容ジャーファーメンタに上記と同組成の新鮮な培地を
20lずつとり、同様に滅菌し、27℃まで冷却後、上
記で得た種培養液を1%(v/v)ずつ植菌し、培地の
pHを6.0乃至8.0に保ちつつ、27℃で約40時
間通気攪拌培養した。
【0027】培養終了後、培養物の酵素活性を測定した
ところ、約0.55単位/mlの酵素が産生していた。
培養物の一部をとり、遠心分離して上清を回収し、酵素
活性を測定したところ、約0.05単位/mlの酵素活
性が認められた。さらに、分離した菌体に50mM燐酸
緩衝液(pH7.0)を加えてもとの培養物と同液量に
した後、酵素活性を測定したところ、約0.5単位/m
lの酵素活性が認められた。
【0028】なお、この発明を通じて、酵素の活性は次
の方法により測定した活性値(単位)で表示する。すな
わち、マルトースを20%(w/v)含む10mM燐酸
緩衝液(pH7.0)を1mlとり、適宜濃度に希釈し
た酵素液を1ml加え、25℃で60分間インキュベー
トして反応させた後、100℃で10分間加熱して反応
を停止させる。50mM燐酸緩衝液(pH7.5)で反
応物を11倍希釈し、その希釈した反応物を0.4ml
とり、これにトレハラーゼを1単位/ml含む溶液を
0.1ml加え、45℃で120分間インキュベート
後、反応物中のグルコース量をグルコースオキシダーゼ
法で定量する。同時に、100℃で10分間加熱して失
活させた酵素液とトレハラーゼ液を用いる系を設け、上
記と同様に処置して対照とする。このようにして求めた
グルコース量から反応により生成したトレハロースの量
を推定する。当該酵素の1単位とは、上記条件下におい
て、1分間に1μmoleのトレハロースを生成する酵
素量と定義する。
【0029】
【実験例1−2 酵素の精製】実験例1−1で調製した
培養物を遠心分離し、得られた菌体(湿重量約0.5k
g)を10mM燐酸緩衝液(pH7.0)に浮遊させ、
常法により破砕後、遠心分離して粗酵素液約4.5lを
得た。この粗酵素液に硫酸アンモニウムを30%飽和に
なるように加え、4℃で4時間静置して塩析した後、遠
心分離して上清を採取した。この上清に硫酸アンモニウ
ムを80%飽和になるように加え、4℃で一夜静置後、
遠心分離により沈澱部を採取し、少量の10mM燐酸緩
衝液(pH7.0)に溶解し、10mM燐酸緩衝液(p
H7.0)に対して24時間透析した。透析内液を遠心
分離して採取した上清を予め10mM燐酸緩衝液(pH
7.0)により平衡化させておいた東ソー製イオン交換
クロマトグラフィー用カラム『DEAE−トヨパール』
に負荷し、0Mから0.4Mに上昇する塩化ナトリウム
の濃度勾配下、カラムに10mM燐酸緩衝液(pH7.
0)を通液した。溶出液より酵素を含む画分を採取し、
1M硫酸アンモニウムを含む10mM燐酸緩衝液(pH
7.0)に対して10時間透析後、遠心分離して上清を
採取した。この上清を予め1M硫酸アンモニウムを含む
10mM燐酸緩衝液(pH7.0)により平衡化させて
おいた東ソー製疎水クロマトグラフィー用カラム『ブチ
ルトヨパール』に負荷し、1Mから0Mに低下する硫酸
アンモニウムの濃度勾配下、カラムに10mM燐酸緩衝
液(pH7.0)を通液した。溶出液から酵素を含む画
分を採取し、予め10mM燐酸緩衝液(pH7.0)に
より平衡化させておいたファルマシア製イオン交換クロ
マトグラフィー用カラム『モノQ HR5/5』に負荷
し、0Mから0.5Mに上昇する塩化ナトリウムの濃度
勾配下、カラムに10mM燐酸緩衝液(pH7.0)を
通液し、溶出液より酵素を含む画分を採取した。このよ
うにして精製した酵素の比活性は約17単位/mg蛋白
質であり、収量は培養物1l当たり約46単位であっ
た。
【0030】常法により、この精製酵素を7.5%(w
/v)ポリアクリルアミドゲル上でゲル電気泳動したと
ころ、ゲル上には酵素活性を伴う実質的に単一のバンド
が観察され、精製酵素が極めて高純度であることが窺わ
れた。
【0031】
【実験例2 酵素の理化学的性質】
【0032】
【実験例2−1 作用】基質としてマルトース又はトレ
ハロースを5%(w/v)含む水溶液に実験例1−2で
調製した精製酵素を基質固形分1グラム当たり2単位加
え、20℃、pH7.0で24時間インキユベートし
た。反応物の糖組成を調べるべく、反応物を真空乾燥
し、ピリジンに溶解し、常法によりトリメチルシリル化
後、ガスクロマトグラフィーに供した。ガスクロマトグ
ラフフ装置は島津製作所製『GC−16A型』を、カラ
ムはステンレス製円筒管(内径3mm、長さ2m)に充
填したジー・エル・サイエンス製『2%シリコンOV−
17/クロモゾルブW』を、検出器は水素炎イオン方式
のものを、そして、キャリアーガスに窒素ガス(流量4
0ml/分)を使用し、カラムオーブン温度を160乃
至320℃(昇温速度7.5℃/分)に設定した。下記
の表1に反応物の糖組成を示す。
【0033】
【表1】
【0034】表1に見られるように、精製酵素は、マル
トースを基質にすると、トレハロースとグルコースをそ
れぞれ約73%又は約5%生成し、一方、トレハロース
を基質にすると、マルトースとグルコースをそれぞれを
約17%又は約3%生成した。これらの事実は、精製酵
素にマルトース及びトレハロースをそれぞれトレハロー
ス又はマルトースに変換する作用のあること、さらに
は、僅かながら、マルトース分子中のα−1,4結合や
トレハロース分子中のα,α−1,1結合を加水分解す
る作用のあることを示唆している。斯かる酵素作用は未
だ報告されておらず、全く新規な作用機序を辿るものと
推定される。
【0035】
【実験例2−2 分子量】ユー・ケー・レムリが『ネー
チャー』、第227巻、第680乃至685頁(197
0年)に報告している方法に準じてSDS−ポリアクリ
ルアミドゲル電気泳動したところ、本酵素は、分子量約
57,000乃至67,000ダルトンに相当する位置
に酵素活性を伴う実質的に単一なバンドを示した。な
お、このときの分子量マーカーは、ミオシン(200,
000ダルトン)、β−ガラクトシダーゼ(116,2
50ダルトン)、フォスフォリラーゼB(97,400
ダルトン)、血清アルブミン(66,200ダルトン)
及びオボアルブミン(45,000ダルトン)であっ
た。
【0036】
【実験例2−3 等電点】等電点電気泳動法により測定
したところ、精製酵素は約4.1乃至5.1に等電点を
示した。
【0037】
【実験例2−4 至適温度】常法により、10mM燐酸
緩衝液(pH7.0)中で60分間反応させる条件で試
験したところ、図1に示すように、本酵素は20℃付近
に至適温度を示した。
【0038】
【実験例2−5 至適pH】常法により、pHの相違す
る10mM酢酸緩衝液、燐酸緩衝液又は炭酸ナトリウム
−炭酸水素ナトリウム緩衝液中、25℃で60分間反応
させる条件で試験したところ、図2に示すように、本酵
素はpH7.0乃至8.0付近に至適pHを示した。
【0039】
【実験例2−6 熱安定性】常法により、50M燐酸緩
衝液(pH7.0)中で60分間インキュベートする条
件で試験したところ、図3に示すように、本酵素は30
℃付近まで安定であった。
【0040】
【実験例2−7 pH安定性】常法により、pHの相違
する50mM酢酸緩衝液、燐酸緩衝液又は炭酸ナトリウ
ム−炭酸水素ナトリウム緩衝液中、20℃で60分間イ
ンキュベートする条件で試験したところ、図4に示すよ
うに、本酵素はpH6.0乃至9.0付近まで安定であ
った。
【0042】
【実験例2−8 N末端アミノ酸配列】常法により、ア
プライッド・バイオシステム製気相プロテイン・シーケ
ンサ『470A型』を使用して分析したところ、本酵素
はN末端に配列表における配列番号1に示すアミノ酸配
列を有していることが判明した。
【0043】
【実験例2−9 部分アミノ酸配列】実験例1で調製し
た精製酵素を適量とり、10mMトリス−塩酸緩衝液
(pH9.0)に対して4℃で18時間透析後、10m
Mトリス−塩酸緩衝液(pH9.0)を加えて酵素濃度
を約1mg/mlとした。この溶液を約1mlとり、リ
ジルエンドペプチダーゼを10μg加え、30℃で22
時間インキュベートして酵素を部分加水分解した。加水
分解物を、予め16%(v/v)水性アセトニトリルを
含む0.1%(v/v)トリフルオロ酢酸により平衡化
させておいた日本ミリポア・リミテッド製高速液体クロ
マトグラフィー用カラム『マイクロボンダパックC1
8』に負荷し、28%(v/v)から44%(v/v)
に上昇する水性アセトニトリルの濃度勾配下、カラムに
0.1%(v/v)トリフルオロ酢酸を0.9ml/分
の流速で通液した。そして、通液開始から約46分後に
溶出したペプチド断片を含む画分を採取し、真空乾燥
後、50%(v/v)水性アセトニトリルを含む0.1
%(v/v)トリフルオロ酢酸に溶解した。以後、実験
例2−8と同様に分析したところ、ペプチド断片は配列
表における配列番号2に示す部分アミノ酸配列を有して
いることが判明した。
【0044】以上のような理化学的性質を有する酵素は
未だ知られておらず、新規物質であると判断される。な
お、ピメロバクター・スピーシーズR48は岡山県岡山
市の土壌から分離され、平成5年6月3日以降、茨城県
つくば市東1丁目1番3号にある通商産業省、工業技術
院、生命工学工業技術研究所、特許微生物寄託センター
に寄託番号『微工研条寄4315号(FERM BP−
4315)』で寄託されている。同じ特許出願人による
特願平5−199971号明細書には、本微生物の菌学
的性質が詳細に開示されている。
【0045】そこで、本発明者が、実験例2−8及び実
験例2−9で明らかにしたN末端アミノ酸配列及び部分
アミノ酸配列に基づき化学合成したオリゴヌクレオチド
をプローブにし、ピメロバクター・スピーシーズR48
の染色体DNAを鋭意検索したところ、下記の化3に示
す5´末端からの塩基配列を有する約1,700塩基対
からなるDNA断片が得られた。そして、その塩基配列
を解読したところ、同微生物が産生する酵素は568個
のアミノ酸からなり、下記の化4に示すN末端からのア
ミノ酸配列を有していることが判明した。
【0046】
【化3】
【0047】
【化4】
【0048】化3及び化4に示す塩基配列及びアミノ酸
配列を解明するに到った一連の工程を要約すると、次の
ようになる。 (1) 供与体微生物の培養物から当該酵素を分離し、
高度に精製した後、N末端アミノ酸配列を決定した。一
方、その精製酵素をプロテアーゼで部分加水分解し、加
水分解物からペプチド断片を単離し、そのアミノ酸配列
を決定した。 (2) 別途、供与体微生物の菌体より染色体DNAを
分離し、精製後、制限酵素により部分消化し、消化物か
ら約2,000乃至6,000塩基対からなるDNA断
片を採取した。DNAリガーゼにより、このDNA断片
を予め制限酵素で切断しておいたプラスミドベクターに
連結し、組換えDNAを作製した。 (3) 大腸菌にこの組換えDNAを導入して形質転換
体を作製し、前記部分アミノ酸配列に基づき化学合成し
たオリゴヌクレオチドをプローブとするコロニーハイブ
リバイゼーションにより当該酵素をコードするDNAを
含む形質転換体を選択した。 (4) 形質転換体から組換えDNAを採取し、プライ
マーとともにアニーリング後、DNAポリメラーゼを作
用させてプライマーを伸長し、得られた相補鎖DNAを
ジオキシ・チェーン・ターミネータ法により分析して塩
基配列を決定した。そして、その塩基配列から推定され
るアミノ酸配列と前記部分アミノ酸配列とを比較し、そ
の塩基配列が当該酵素をコードしていることを確認し
た。
【0049】次の実験例3及び4では、上記(2)乃至
(4)を具体的に説明するが、これら実験例で用いる手
法自体は斯界において公知のものであり、例えば、ジェ
ー・サムブルック等『モレキュラー・クローニング・ア
・ラボラトリー・マニュアル』、第2版、1989年、
コールド・スプリング・ハーバー・ラボラトリー・プレ
ス発行などにも詳述されている。
【0050】
【実験例3 ピメロバクター・スピーシーズR46由来
のDNAを含む組換えDNAと形質転換体の調製】
【0051】
【実験例3−1 染色体DNAの調製】ピメロバクター
・スピーシーズR48をバクト・ニュートリエント・ブ
ロス培地(pH7.0)に植菌し、27℃で24時間回
転振盪培養した。遠心分離により培養物から菌体を分離
し、TES緩衝液(pH8.0)に浮遊させ、リゾチー
ムを0.05%(w/v)加え、37℃で30分間イン
キュベートした。処理物を−80℃で1時間凍結し、T
ES緩衝液(pH9.0)を加えて60℃に加温し、T
ES緩衝液/フェノール混液を加え、冷却後、遠心分離
により上清を採取した。この上清に2倍容の冷エタノー
ルを加え、沈澱した粗染色体DNAを採取し、SSC緩
衝液(pH7.1)に溶解後、リボヌクレアーゼとプロ
テアーゼをそれぞれ7.5μg又は125μg加え、3
7℃で1時間インキュベートして反応させた。反応物に
クロロホルム/イソアミルアルコール混液を加えて染色
体DNAを抽出し、冷エタノールを加え、生成した染色
体DNAを含む沈澱を採取した。このようにして得た精
製染色体DNAを濃度約1mg/mlになるようにSS
C緩衝液(pH7.1)に溶解し、溶液を−80℃で凍
結した。
【0052】
【実験例3−2 組換えDNA pBRM8と形質転換
体BRM8の調製】実験例3−1で得た精製染色体DN
A溶液を1mlとり、これに制限酵素Sau 3Aを約
35単位加え、37℃で20分間反応させて染色体DN
Aを部分消化した後、蔗糖密度勾配超遠心法により消化
物から約2,000乃至6,000塩基対からなるDN
A断片を採取した。別途、プラスミドベクターBlue
script SK(+)を1μgとり、制限酵素Ba
m HIにより完全に切断した後、上記で得たDNA断
片10μgとT4 DNAリガーゼを2単位加え、4℃
で一夜静置してDNA断片に連結した。得られた組換え
DNAに東洋紡績製コンピテントセル『Epicuri
an Coli XL−Blue』を30μl加え、氷
冷下で30分間静置後、42℃に加温し、SOCブロス
を加えて37℃で一時間インキュベートして組換えDN
Aを大腸菌に導入した。
【0053】このようにして得た形質転換体を5−ブロ
モ−4−クロロ−3−インドリル−β−ガラクトシドを
50μg/ml含む寒天平板培地(pH7.0)に植菌
し、37℃で18時間培養後、培地上に形成された約
6,000個のコロニーをナイロン膜上に固定した。別
途、実験例2−8で明らかにしたN末端アミノ酸配列に
おける第6乃至11番目のGlu−Glu−Pro−G
lu−Trp−Pheで表される配列に基づき下記の化
5に示す塩基配列のプローブ1を化学合成し、同位体32
Pで標識後、前記ナイロン膜上に固定した形質転換株の
コロニーにハイブリダイズさせ、顕著な会合を示した5
種類の形質転換体を選択した。
【0054】
【化5】
【0055】常法により、これら5種類の形質転換体か
ら組換えDNAを採取し、それらに実験例2−9で明ら
かにした部分アミノ酸配列における第5乃至10番目の
Met−Leu−Glu−Ala−Met−Alaで表
わされる配列に基づき化学合成した下記の化6に示す塩
基配列のプローブ2をイー・エム・サザーン『ジャーナ
ル・オブ・モレキュラー・バイオロジー』、第98巻、
第503乃至517頁(1975年)に記載されている
方法に準じてハイブリダイズさせ、顕著な会合を示した
組換えDNAを選択した。以上にようにして選択した組
換えDNAと形質転換体を、それぞれ、『pBRM8』
又は『BRM8』と命名した。
【0056】
【化6】
【0057】この形質転換体BRM8をアンピシリン1
00μg/mlを含むL−ブロス培地(pH7.0)に
植菌し、37℃で24時間回転振盪培養し、培養終了
後、遠心分離により培養物から菌体を採取し、通常一般
のアルカリ法により組換えDNAを菌体外に溶出させ
た。処理物を常法により精製し、分析したところ、組換
えDNA pBRM8は約7,600塩基対からなり、
図5に示すように、当該酵素をコードする約1,700
塩基対からなるDNAが制限酵素Sma Iによる切断
部位の下流に連結していた。
【0058】
【実験例3−3 形質転換体BRM8による酵素の産
生】500ml容フラスコに2.0%(w/v)グルコ
ース、0.5%(w/v)ペプトン、0.1% (w/
v)酵母エキス、0.1%(w/v)燐酸水素二カリウ
ム、0.06%(w/v)燐酸二水素ナトリウム、0.
05%(w/v)硫酸マグネシウム7水塩、0.5%
(w/v)炭酸カルシウム及び水からなる液体培地(p
H7.2)を100mlずつとり、115℃で30分間
加熱して滅菌し、冷却し、アンピシリンを50μg/m
l加えた後、実験例3−2で得た形質転換体BRM8を
植菌し、37℃で24時間回転振盪培養した。培養物を
超音波処理して菌体を破砕し、遠心分離により不溶物を
除去した後、上清中の酵素活性を測定したところ、培養
物1l当たりに換算して、約850単位の酵素が産生し
ていた。
【0059】対照として、大腸菌XlI−Blue株又
はピメロバクター・スピーシーズR48をアンピシリン
無含有の上記と同一組成の液体培地に植菌し、ピメロバ
クター・スピーシーズR48の場合、培養温度27℃に
設定した以外は上記と同様に培養・処理した。処理物の
活性を測定したところ、ピメロバクター・スピーシーズ
R48による酵素の産生は培養物1l当たり約410単
位と、形質転換体BRM8と比較して有意に低いもので
あった。なお、宿主に使用した大腸菌XlI−Blue
株は、当該酵素を全く産生しなかった。
【0060】その後、形質転換体BRM8が産生した酵
素を実験例1−2と同様に精製し、その性質・性状を調
べたところ、SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動
で分子量57,000乃至67,000ダルトンを、ま
た、等電点電気泳動で約4.1乃至5.1に等電点を示
すなど、ピメロバクター・スピーシーズR48由来の酵
素とほぼ同じ理化学的性質を有することが判明した。こ
のことは、組換えDNA技術によっても当該酵素を製造
でき、且つ、酵素の生産性も有意に向上することを示唆
している。
【0061】
【実施例4 相補鎖DNAの調製並びにその塩基配列及
びアミノ酸配列の決定】実験例3−2で得た組換えDN
A pBRM8を2μgとり、これに2M水酸化ナトリ
ウム水溶液を加えて変性させた後、適量の冷エタノール
を加え、生成したテンプレートDNAを含む沈澱を採取
し、真空乾燥した。このテンプレートDNAに化学合成
した下記の化7に示す塩基配列のプライマー1を50p
mol/mlと、20mM塩化マグネシウムと塩化ナト
リウムを含む40mMトリス−塩酸緩衝液(pH7.
5)を10μl加え、65℃で2分間インキュベートし
てアニーリングした後、dATP、dGTP及びdTT
Pをそれぞれ7.5μM含む水溶液を2μlと、[α−
32P]dCTP(2mCi/ml)を0.5μlと、
0.1Mジチオトレイトールを1μlと、1.5単位/
mlのT7 DNAポリメラーゼを2μl加え、25℃
で5分間インキュベートすることによりプライマー1を
5´末端から3´末端に向かって伸長させ、相補鎖DN
Aを生成させた。
【0062】
【化7】
【0063】次に、上記で得た相補鎖DNAを含む反応
物を四等分し、それぞれにddATP、ddCTP、d
dGTP及びddTTPのいずれかを8μMと80μM
dNTPを含む50mM塩化ナトリウム水溶液を2.
5μl加え、37℃で5分間インキュベートして反応さ
せ、20mM EDTA、0.05%(w/v)ブロム
フェノールブルー及び0.05%キシレンシアノールを
含む98%(v/v)水性ホルムアミド溶液を4μl加
えて反応を停止させた。反応物を沸騰水中で3分間加熱
後、6%(w/v)ポリアクリルアミドゲル上にとり、
約2,000Vの定電圧を印加しながら電気泳動してD
NA断片を分離し、次いで、常法によりゲルを固定し、
乾燥させた後、オートラジオグラフィーした。
【0064】ラジオグラム上に分離したDNA断片を解
析した結果、相補鎖DNAは配列表における配列番号3
に示す約1,700塩基対からなる塩基配列を含んでい
ることが判明した。この塩基配列から推定されるアミノ
酸配列は配列表における配列番号3に併記したとおりで
あり、このアミノ酸配列と実験例2−8又は実験例2−
9で明らかにしたN末端アミノ酸配列、部分アミノ酸配
列を比較したところ、実験例2−8のN末端アミノ酸配
列は配列番号3における第1乃至20番目の配列に、ま
た、実験例2−9の部分アミノ酸配列は配列番号3にお
ける第183乃至193番目の配列に一致した。これ
は、当該酵素が化4に示すアミノ酸配列を有するもので
あり、ピメロバクター・スピーシーズR48において
は、当該酵素が化3に示す塩基配列のDNAによりコー
ドされていることを示している。
【0065】以上説明したように、マルトースをトレハ
ロースに変換し、トレハロースをマルトースに変換する
酵素は、本発明者が長年に亙る研究の一成果として見出
されたものであり、従来公知の酵素には見られない独特
の理化学的性質を具備している。この発明は、組換えD
NA技術を応用することにより、この酵素を創製しよう
というものである。以下、実施例等を参照しながら、こ
の発明の組換え型酵素とその製造方法、用途につき、具
体的に説明する。
【0066】この発明でいう組換え型酵素とは、組換え
DNA技術により創製され、マルトースをトレハロース
に変換し、トレハロースをマルトースに変換する酵素全
般を意味する。この発明の組換え型酵素は、通常、解明
されたアミノ酸配列を有しており、その一例として、例
えば、化4に示すN末端からのアミノ酸配列かそれに相
同的なアミノ酸配列が挙げられる。化4のアミノ酸配列
に相同的なアミノ酸配列を有する変異体は、所期の酵素
作用を実質的に変えることなく、化4のアミノ酸配列に
おける構成アミノ酸の1個又は2個以上を他のアミノ酸
で置換することにより得ることができる。なお、同じD
NAであっても、それを導入する宿主や、そのDNAを
含む形質転換体の培養に使用する栄養培地の成分・組成
や培養温度・pHなどに依っては、宿主内酵素によるD
NA発現後の修飾などにより、所期の酵素作用は保持し
ているものの、化4のアミノ酸配列におけるN末端付近
のアミノ酸が1個又は2個以上が欠失したり、N末端に
1個又は2個以上のアミノ酸が新たに付加した変異体の
産生することがある。斯かる変異体も、それがマルトー
スをトレハロースに変換し、トレハロースをマルトース
に変換するかぎり、当然、この発明の組換え型酵素に含
有される。
【0067】この発明による組換え型酵素は、特定のD
NAを含む形質転換体の培養物から採取することができ
る。この発明で使用する形質転換体は、例えば、化3に
示す5´末端からの塩基配列又はそれに相同的な塩基配
列若しくはそれらに相補的な塩基配列のDNAを適宜宿
主に導入することにより得ることができる。なお、上記
塩基配列は、遺伝子の縮重を利用して、コードするアミ
ノ酸配列を変えることなく、塩基の1個又は2個以上を
他の塩基に置き換えてもよい。また、DNAが宿主中で
実際に当該酵素の産生を発現するために、当該酵素又は
その相同変異体をコードする塩基配列における塩基の1
個又は2個以上を他の塩基で適宜置換し得ることは言う
までもない。
【0068】この発明で使用するDNAは、それが前述
のような配列を有するかぎり、それが天然に由来するも
のか人為的に合成されたものであるかは問わない。天然
の給源としては、例えば、ピメロバクター・スピーシー
ズR48を始めとするピメロバクター属の微生物が挙げ
られ、その菌体からはこの発明のDNAを含む遺伝子が
得られる。すなわち、斯かる微生物を栄養培地に植菌
し、好気的条件下で約1日乃至3日間培養後、培養物か
ら菌体を採取し、リゾチームやβ−グルカナーゼなどの
細胞壁溶解酵素や超音波で処理することにより当該DN
Aを含む遺伝子を菌体外に溶出させる。このとき、細胞
壁溶解酵素にプロテアーゼなどの蛋白質加水分解酵素を
併用したり、菌体を超音波処理する際、SDSなどの界
面活性剤を共存させたり凍結融解してもよい。斯くして
得られる処理物に、例えば、フェノール抽出、アルコー
ル沈澱、遠心分離、プロテアーゼ処理、リボヌクレアー
ゼ処理などの斯界における通常一般の方法を適用すれば
目的のDNAが得られる。一方、DNAを人為的に合成
するには、例えば、化3に示す塩基配列に基づいて化学
合成するか、化4に示すアミノ酸配列をコードするDN
Aを自律増殖可能な適宜ベクターに挿入して組換えDN
Aとし、これを適宜宿主に導入して得られる形質転換体
を培養し、培養物から菌体を採取し、その菌体から当該
DNAを含むプラスミドを採取すればよい。
【0069】斯かるDNAは、通常、組換えDNAの形
態で宿主に導入される。組換えDNAは、通常、DNA
と自律増殖可能なベクターを含んでなり、DNAが入手
できれば、通常一般の組換えDNA技術により比較的容
易に調製することができる。斯かるベクターの例として
は、pBR322、pUC18、Bluescript
II SK(+)、pUB110、pTZ4、pC1
94、pHV14、TRp7、YEp7、pBS7など
のプラスミドベクターやλgt・λC、λgt・λB、
ρ11、φ1、φ105などのファージベクターが挙げ
られる。このうち、この発明のDNAを大腸菌で発現さ
せるにはpBR322、pUC18、Bluescri
pt II SK(+)、λgt・λC及びλgt・λ
Bが好適であり、一方、枯草菌で発現させるにはpUB
110、pTZ4、pC194、ρ11、φ1及びφ1
05が好適である。pHV14、TRp7、YEp7及
びpBS7は、組換えDNAを二種以上の宿主内で増殖
させる場合に有用である。
【0070】DNAを斯かるベクターに挿入するには、
斯界において通常一般の方法が採用される。具体的に
は、先ず、DNAを含む遺伝子と自律増殖可能なベクタ
ーとを制限酵素及び/又は超音波により切断し、次に、
生成したDNA断片とベクター断片とを連結する。遺伝
子及びベクターの切断にヌクレオチドに特異的に作用す
る制限酵素、とりわけ、II型の制限酵素、詳細には、
Sau 3AI、EcoRI、Hind III、Ba
m HI、Sal I、Xba I、SacI、Pst
Iなどを使用すれば、DNA断片とベクター断片を連
結するのが容易となる。DNA断片とベクター断片を連
結するには、必要に応じて、両者をアニーリングした
後、生体内又は生体外でDNAリガーゼを作用させれば
よい。斯くして得られる組換えDNAは、適宜宿主に導
入して形質転換体とし、これを培養することにより無限
に複製可能である。
【0071】このようにして得られる組換えDNAは、
大腸菌、枯草菌、放線菌、酵母を始めとする適宜の宿主
微生物に導入することができる。宿主が大腸菌の場合に
は、宿主を組換えDNAとカルシウムイオンの存在下で
培養すればよく、一方、宿主が枯草菌の場合には、コン
ピテントセル法やプロトプラスト法を適用すればよい。
形質転換体をクローニングするには、コロニーハイブリ
バイゼーション法を適用するか、マルトース又はトレハ
ロースを含む栄養培地で培養し、それぞれ、トレハロー
ス又はマルトースを生成するものを選択すればよい。
【0072】斯くして得られる形質転換体は、栄養培地
で培養すると、菌体内外に当該酵素を産生する。栄養培
地には、通常、炭素源、窒素源、ミネラル、さらには、
必要に応じて、アミノ酸やビタミンなどの微量栄養素を
補足した通常一般の液体培地が使用され、個々の炭素源
としては、例えば、澱粉、澱粉加水分解物、グルコー
ス、果糖、蔗糖、トレハロースなどの糖質が、また、窒
素源としては、例えば、アンモニア若しくはアンモニア
塩、尿素、硝酸塩、ペプトン、酵母エキス、脱脂大豆、
コーンスティープリカー、肉エキスなどの含窒素無機乃
至有機物が挙げられる。形質転換体を斯かる栄養培地に
植菌し、栄養培地を温度20乃至50℃、pH2乃至9
に保ちつつ、通気撹拌などによる好気的条件下で約1乃
至6日間培養すれば、当該酵素を含む培養物が得られ
る。この培養物は酵素剤としてそのまま使用可能ではあ
るが、通常は使用に先立ち、必要に応じて、超音波や細
胞溶解酵素により菌体を破砕した後、瀘過、遠心分離な
どにより酵素を菌体又は菌体破砕物から分離し、精製す
る。精製には酵素を精製するための通常の方法が採用で
き、例えば、菌体又は菌体破砕物を除去した培養物に濃
縮、塩析、透析、分別沈澱、ゲル瀘過クロマトグラフィ
ー、イオン交換クロマトグラフィー、疎水クロマトグラ
フィー、アフィニティークロマトグラフィー、ゲル電気
泳動、等電点電気泳動などの1種または2種以上を適宜
組合わせて適用すればよい。
【0073】前述のとおり、この発明の組換え型酵素
は、マルトース及びトレハロースに作用して、それぞれ
トレハロース又はマルトースを生成するという、従来の
酵素に見られない、独特の作用を有する。トレハロース
はまろやかで上品な甘味を有し、そして、何よりも、分
子中に還元性基を有しないので、着色や変質の懸念もな
く飲食物を甘味付けできるという大きな利点がある。当
該酵素のこの性質を利用することにより、従来、還元性
故に敬遠されがちであったマルトースを還元性を有さ
ず、扱い易く、付加価値の高いトレハロースに変換でき
ることとなる。
【0074】斯かる変換方法につきさらに説明すると、
この発明によるマルトースの酵素的変換方法でいうマル
トースとは、通常、マルトースを含んでなる糖組成物を
意味し、この発明の組換え型酵素が作用してトレハロー
スを生成し得るかぎり、その原料、製造方法は問わな
い。大量のトレハロースを効率的に製造するには、マル
トース含量の高い糖組成物を使用するのが望ましく、通
常、固形分当たり約70%以上、望ましくは、約80%
以上のものが使用される。斯かる糖組成物は斯界におけ
る通常一般の方法により得ることができ、例えば、特公
昭56−11437号公報や特公昭56−17078号
公報に開示されている、糊化澱粉又は液化澱粉にβ−ア
ミラーゼを作用させ、生成したマルトースを分別沈澱や
透析手段により分離する方法や、特公昭47−1308
9号公報や特公昭54−3938号公報に開示されてい
る、糊化澱粉又は液化澱粉にβ−アミラーゼとイソアミ
ラーゼやプルラナーゼなどの澱粉枝切酵素を作用させる
方法を採用することができる。
【0075】この発明による酵素的変換方法において
は、マルトースを含む水性媒体にこの発明の組換え型酵
素の有効量を共存せしめ、水性媒体を所定の温度、pH
に保ちつつ、所望量のトレハロースが生成するまで反応
させる。反応は0.1%(w/w)程度の低基質濃度下
でも進行するけれども、この発明の変換方法を大規模に
実施する場合には、より高濃度の約2%(w/w)以
上、望ましくは、約5乃至50%(w/w)とするのが
よい。反応時の温度とpHは組換え型酵素が失活するこ
となくマルトースに効率的に作用するレベルに設定さ
れ、温度は30℃付近まで、望ましくは、約4乃至30
℃に、また、pHは約6乃至9、望ましくは、約7乃至
8の範囲に設定される。組換え型酵素の量と反応時間
は、反応の進行具合に依って適宜に設定する。この発明
の酵素的変換方法により、マルトースは効率的にトレハ
ロースに変換され、その変換率は約80%以上にも達す
ることがある。
【0076】この発明の変換方法により得られた反応物
はそのまま使用可能ではあるが、通常、使用に先立ち精
製する。すなわち、瀘過、遠心分離などにより反応物か
ら不溶物を除去し、活性炭により脱色した後、イオン交
換樹脂により脱塩・精製し、濃縮してシロップ状物とす
る。用途に依っては、このシロップ状物を真空乾燥、噴
霧乾燥などにより固状物としてもよい。実質的にトレハ
ロースのみからなる製品を得るには、上記シロップ状物
にイオン交換樹脂、活性炭、シリカゲルなどによる糖質
を分離するための種々のクロマトグラフィー、酵母によ
る発酵、アルカリによる還元性糖質の分解除去などの1
種若しくは2種以上を適用する。大量に反応物を処理す
るには、例えば、特開昭58−23799号公報や特開
昭58−72598号公報に開示されている強酸性カチ
オン交換樹脂を使用する固定床方式、移動床方式又は疑
似移動床方式のイオン交換クロマトグラフィーが有用で
あり、これらの方法によるときには、従来、大量入手が
難しかったトレハロース含量が高い製品を大量且つ効率
的に得ることができる。
【0077】斯くして得られるトレハロース及びトレハ
ロースを含む糖組成物は、糖質甘味剤の還元性を嫌う種
々の物品に広範な用途を有し、例えば、飲食物一般、化
粧品、医薬品の甘味剤、呈味改善剤、品質改善剤、安定
剤、賦形剤として極めて有用である。
【0078】以下、2〜3の実施例により、この発明に
よる組換え型酵素の製造方法とマルトースの酵素的変換
方法を具体的に説明する。
【0079】
【実施例A−1 組換え型酵素の製造】500ml容三
角フラスコに2.0%(w/v)グルコース、0.5%
(w/v)ペプトン、0.1%(w/v)酵母エキス、
0.1%(w/v)燐酸水素二カリウム、0.06%
(w/v)燐酸二水素ナトリウム、0.05%(w/
v)硫酸マグネシウム7水塩、0.5%(w/v)炭酸
カルシウム及び水からなる液体培地(pH7.2)を1
00mlずつとり、115℃で30分間加熱して滅菌
し、冷却し、アンピシリンを50μg/ml加えた後、
実験例3−2で得た形質転換体BRM8を植菌し、回転
振盪下、37℃で24時間種培養した。次に、30l容
ジャーファーメンタに上記と同組成の新鮮な液体培地を
18lずつとり、同様に滅菌後、アンピシリンを50μ
g/ml加え、上記で得た種培養液を1%(v/v)ず
つ接種し、液体培地をpH6乃至8に保ちつつ、37℃
で24時間通気撹拌培養した。培養物を超音波処理して
菌体を破砕し、遠心分離により不溶物を除去後、上清中
の酵素活性を測定したところ、培養物1l当たりに換算
して約880単位の組換え型酵素が産生していた。この
上清を実験例1−2の方法により精製したところ、比活
性約34単位/mg蛋白質の組換え型酵素を約160単
位/ml含む水溶液が約5ml得られた。
【0080】
【実施例B−1 組換え型酵素によるトレハロースシロ
ップ状物の製造】馬鈴薯澱粉を濃度10%(w/w)に
なるように水中に懸濁し、懸濁液をpH5.5に調整
後、ナガセ生化学工業製α−アミラーゼ剤『スピターゼ
HS』を澱粉1グラム当たり2単位加え、95℃で加熱
して澱粉を糊化・液化した。液化液を120℃で20分
間オートクレーブして酵素を失活させ、50℃に急冷
後、pHを5.0に調整し、澱粉1グラム当たり、林原
生物化学研究所製イソアミラーゼ剤を500単位、ナガ
セ生化学工業製β−アミラーゼ剤を20単位加え、50
℃で24時間反応させて、固形分当たり、マルトースを
約92%含む糖液を得た。糖液を100℃で20分間加
熱して酵素を失活させ、温度10℃に冷却後、pHを
7.0に調整し、実施例A−1の方法で得た組換え型酵
素を澱粉固形分1グラム当たり1単位加え、96時間反
応させた。反応物を95℃で10分間加熱して酵素を失
活させ、冷却し、瀘過後、常法にしたがって活性炭によ
り脱色し、イオン交換樹脂により脱塩・精製し、濃縮し
て濃度約70%(w/w)のシラップ状物を原料澱粉固
形分当たり約95%の収率で得た。
【0081】トレハロースを固形物当たり約69%含有
する本品は、還元力がDE18.2と低く、しかも、温
和な甘味や適度の粘度・保湿性を有していることから、
甘味剤、呈味改良剤、安定剤、賦形剤などとして飲食
物、化粧品、医薬品などの各種組成物に有利に配合使用
できる。
【0082】
【実施例B−2 組換え型酵素によるトレハロース粉状
物の製造】実施例B−1の方法で得た反応物をpH5.
0に調整し、ナガセ生化学工業製グルコアミラーゼ剤
『グルコチーム』を固形分1グラム当たり10単位加え
て50℃で24時間作用させた。新たに得られた反応物
を加熱して酵素を失活させ、常法により脱色し、脱塩・
精製した後、トレハロース含量を高めるべく、東京有機
化学工業製ナトリウム型カチオン交換樹脂『XT−10
16』(架橋度4%)を用いるイオン交換カラムクロマ
トグラフィーに供した。すなわち、水に懸濁したイオン
交換樹脂を内径5.4cmのジャケット付きステンレス
製円筒管4本に充填した後、円筒管を直列に連結して全
カラム長を20mとした。カラム内温度を60℃に維持
しつつ、上記反応物をカラムに対して約5%(v/v)
負荷し、次に、60℃の温水をSV0.15で通液して
分画し、トレハロース含有の高い画分を採取した。この
画分を常法により濃縮し、真空乾燥し、粉砕して、トレ
ハロース粉状物を原料固形分当たり約55%の収率で得
た。
【0083】トレハロースを固形分当たり約97%含有
する本品は、還元力が極めて低く、甘味もまろやかであ
ることから、甘味剤、呈味改良剤、品質改良剤、安定
剤、賦形剤などとして飲食物、化粧品、医薬品を始めと
する各種組成物に有利に配合使用できる。
【0084】
【実施例B−3 組換え型酵素による結晶性トレハロー
ス粉状物の製造】実施例B−2の方法により得たトレハ
ロース含量の高い画分を、常法にしたがって活性炭によ
り脱色し、イオン交換樹脂により脱塩し、濃度約70%
(w/w)に濃縮した。濃縮物を助晶機にとり、撹拌し
つつ徐冷して晶出率約45%のマスキットを得た。次
に、約85℃の温風を噴霧乾燥塔上部から下方に向かっ
て送風しつつ、マスキットを乾燥乾塔の上部に設けたノ
ズルより約150kg/cm2の加圧下で噴霧乾燥塔の
下方に向かって噴霧する一方、噴霧乾燥塔底部に設けた
金網コンベア上に捕集した結晶性粉末を、コンベア下部
より約45℃の温風を送風しつつ、噴霧乾燥塔外に徐々
に搬出した。その後、結晶粉末を熟成塔に充填し、温風
気流中で10時間熟成し、結晶化と乾燥を完了した。こ
のようにして、トレハロース含水結晶の粉末を原料固形
分当たり約90%の収率で得た。
【0085】本品は実質的に吸湿性を示さず、取扱いも
容易であり、甘味剤、呈味改良剤、品質改良剤、安定
剤、賦形剤などとして飲食物、化粧品、医薬品を始めと
する各種組成物に有利に配合使用できる。
【0086】
【実施例B−4 組換え型酵素による無水
結晶性トレハロース粉状物の製造 【実施例B−4 組換え型酵素による無水結晶性トレハ
ロース粉状物の製造】実施例B−2の方法で得たトレハ
ロース含量の高い画分を実施例B−3と同様にして精製
した後、蒸発釜にとり、減圧下で煮詰めて水分含量約
3.0%(w/w)のシラップ状物を得た。このシロッ
プ状物を助晶機に移し、種晶として無水結晶トレハロー
スを固形分当たり約1%(w/w)加え、撹拌下、12
0℃で助晶後、アルミ製バットに取り出した。この状態
のまま、100℃で6時間熟成して得られたブロック状
物を切削機で粉砕し、流動乾燥して、水分含量約0.3
%(w/w)の無水結晶トレハロースの粉状物を原料固
形分当たり約85%の収率で得た。
【0087】強力な脱水作用を有する本品は、飲食物、
化粧品、医薬品若しくはその製造原料又は加工中間物の
脱水剤として、さらには、上品な甘味を有する白色粉末
甘味剤として飲食物、化粧品、医薬品を始めとする各種
組成物に有利に配合使用できる。
【0088】
【発明の効果】以上説明したように、この発明は、マル
トース及びトレハロースに作用して、それぞれトレハロ
ース又はマルトースを生成する、従来未知の全く新規な
酵素の発見に基づくものである。この発明は、組換えD
NA技術により、斯かる酵素を大規模且つ効率的に生産
する道を拓くものである。この発明の組換え型酵素を使
用する変換方法により、マルトースは極めて効率的にト
レハロースとグルコース及び/又はマルトースからなる
糖組成物に変換される。トレハロースはまろやかで上品
な甘味を有し、しかも、分子中に還元性基を有しないの
で、着色や変質の懸念なく飲食物一般を甘味付けできる
実益がある。くわえて、この発明の組換え型酵素は全ア
ミノ酸配列まで明らかにされた酵素であり、食品等への
配合使用を前提とするトレハロースの製造に安心して使
用し得るものである。
【0089】この発明は斯くも顕著な作用効果を奏する
意義のある発明であり、斯界に貢献すること誠に多大な
発明であると言える。
【配列表】
配列番号:1 配列の長さ:20 配列の型:アミノ酸 トポロジー:直鎖状 配列の種類:ペプチド 配列 Ser Lys Val Leu Gly Glu Glu Pro Glu Trp Phe Arg The Ala Val Phe Tyr 1 5 10 15 Glu Val Leu 20 配列番号:2 配列の長さ:11 配列の型:アミノ酸 トポロジー:直鎖状 配列の種類:ペプチド 配列番号:3 配列の長さ:1704塩基対 配列の型:核酸 トポロジー:直鎖状 配列の種類:Genomic DNA 配列の特徴 起源 生物名:ピメロバクター・スピーシーズ 株名:FERM BP−4315 配列 TCG ACC GTC CTG GGC GAG GAA CCC GAG TGG TTC CGC ACG GCG GTC TTC 48 Ser Thr Val Leu Gly Glu Glu Pro Glu Trp Phe Arg Thr Ala Val Phe 1 5 10 15 TAC GAG GTC CTG GTG CGG TCC TTC CGG GAC CCC AAC GCC GGC GGC ACG 96 Tyr Glu Val Leu Val Arg Ser Phe Arg Asp Pro Asn Ala Gly Gly Thr 20 25 30 GGT GAC TTC CGC GGC CTG GCG GAG AAG CTC GAC TAC CTG CAG TGG CTC 144 Gly Asp Phe Arg Gly Leu Ala Glu Lys Leu Asp Tyr Leu Gln Trp Leu 35 40 45 GGC GTC GAC TGC CTG TGG GTG CCG CCG TTC TTC AGC TCG CCG CTG CGC 192 Gly Val Asp Cys Leu Trp Val Pro Pro Phe Phe Ser Ser Pro Leu Arg 50 55 60 GAC GGC GGG TAC GAC GTC GCC GAC TAC ACC GGG ATC CTC CCG GAG ATC 240 Asp Gly Gly Tyr Asp Val Ala Asp Tyr Thr Gly Ile Leu Pro Glu Ile 65 70 75 80 GGC ACG GTC GAG GAC TTC CAC GCC TTC CTC GAC GGC GCG CAC GAG CGC 288 Gly Thr Val Glu Asp Phe His Ala Phe Leu Asp Gly Ala His Glu Arg 85 90 95 GGG ATC CGG GTG ATC ATC GAC TTC GTC ATG AAC CAC ACG AGT GAC GCG 336 Gly Ile Arg Val Ile Ile Asp Phe Val Met Asn His Thr Ser Asp Ala 100 105 110 CAC CCG TGG TTC CAG GCC TCC CGC AGC GAT CCC GAC GGC CCG TAC GGC 384 His Pro Trp Phe Gln Ala Ser Arg Ser Asp Pro Asp Gly Pro Tyr Gly 115 120 125 GAC TTC TAC GTC TGG TCC GAC ACC GAC GAG CTC TAC CAG GAC GCG CGG 432 Asp Phe Tyr Val Trp Ser Asp Thr Asp Glu Leu Tyr Gln Asp Ala Arg 130 135 140 GTG ATC TTC GTC GAC ACC GAG CCG TCG AAC TGG ACG TGG GAC CAG ACC 480 Val Ile Phe Val Asp Thr Glu Pro Ser Asn Trp Thr Trp Asp Gln Thr 145 150 155 160 CGC GGC CAG TAC TAC TGG CAC CGC TTC TTC CAC CAC CAG CCC GAC CTG 528 Arg Gly Gln Tyr Tyr Trp His Arg Phe Phe His His Gln Pro Asp Leu 165 170 175 AAC TTC GAC AAC CCG AAG GTC CAG GAC GCC ATG CTG GAG GCG ATG GCG 578 Asn Phe Asp Asn Pro Lys Val Gln Asp Ala Met Leu Glu Ala Met Ala 180 185 190 TTC TGG CTC GAC ATG GGC CTC GAC GGC TTC CGG CTC GAC GCG GTG CCC 624 Phe Trp Leu Asp Met Gly Leu Asp Gly Phe Arg Leu Asp Ala Val Pro 195 200 205 TAC CTC TAC GAG CGT CCC GGC ACC AAC GGC GAG AAC CTC CCC GAG ACG 672 Tyr Leu Tyr Glu Arg Pro Gly Thr Asn Gly Glu Asn Leu Pro Glu Thr 210 215 220 CAC GAG ATG CTC AAG CGG GTG CGG CGC TTC GTC GAC GAC AAC TAC CCC 720 His Glu Met Leu Lys Arg Val Arg Arg Phe Val Asp Asp Asn Tyr Pro 225 230 235 240 GAC CGG GTG CTG CTG TAC GAG GCG AAC CAG TGG CCG ACC GAC GTG GTG 768 Asp Arg Val Leu Leu Tyr Glu Ala Asn Gln Trp Pro Thr Asp Val Val 245 250 255 GAG TAC TTC GGG CCC GAG GAG CGT GAG GAC GGC ACG GTC GTC GGG CCC 816 Glu Tyr Phe Gly Pro Glu Glu Arg Glu Asp Gly Thr Val Val Gly Pro 260 265 270 GAG AGT CAC ATG GCC TTC CAC TTC CCG GTG ATG CCG CGC ATC TTC ATG 864 Glu Ser His Met Ala Phe His Phe Pro Val Met Pro Arg Ile Phe Met 275 280 285 GCG GTG CGC CGC GAG TCG CGC TTC CCG ATC TCG GAG ATC ATG GAG CAG 912 Ala Val Arg Arg Glu Ser Arg Phe Pro Ile Ser Glu Ile Met Glu Gln 290 295 300 ACG CCG GCG ATC CCG GAG GGC TGC CAG TGG GGC ATC TTC CTG CGC AAC 960 Thr Pro Ala Ile Pro Glu Gly Cys Gln Trp Gly Ile Phe Leu Arg Asn 305 310 315 320 CAC GAC GAG CTG ACC CTC GAG ATG GTC ACC GAC GAG GAC CGC GAC TAC 1008 His Asp Glu Leu Thr Leu Glu Met Val Thr Asp Glu Asp Arg Asp Tyr 325 330 335 ATG TGG GGC GAG TAC GCC AAG GAC CCC CGC ATG AAG GCC AAC ATC GGC 1056 Met Trp Gly Glu Tyr Ala Lys Asp Pro Arg Met Lys Ala Asn Ile Gly 340 345 350 ATC CGG CGG CGG CTC GCG CCG CTG CTC GAC AAC GAC ACG AAC CAG ATC 1104 Ile Arg Arg Arg Leu Ala Pro Leu Leu Asp Asn Asp Thr Asn Gln Ile 355 360 365 GAG CTG TTC ACC GCG CTG CTG CTG TCG CTG CCC GGC TCC CCC GTC CTG 1152 Glu Leu Phe Thr Ala Leu Leu Leu Ser Leu Pro Gly Ser Pro Val Leu 370 375 380 TAC TAC GGC GAC GAG ATC GGC ATG GGC GAC AAC ATC TGG CTC GGT GAC 1200 Tyr Tyr Gly Asp Glu Ile Gly Met Gly Asp Asn Ile Trp Leu Gly Asp 385 390 395 400 CGC GAC GGC GTG CGT ACG CCG ATG CAG CGG ACC CCC GAC CGC AAC GTC 1248 Arg Asp Gly Val Arg Thr Pro Met Gln Arg Thr Pro Asp Arg Asn Val 405 410 415 GGC TTC TCG GCG GCC ACG CCC GGC AAG CTG CAC CTG CCG ACG ATC CAG 1296 Gly Phe Ser Ala Ala Thr Pro Gly Lys Leu His Leu Pro Thr Ile Gln 420 425 430 GAC CCG GTC TAC GGC TAC CAG AGC GTC AAC GTC GAG GCG CAG CTG GAG 1344 Asp Pro Val Tyr Gly Tyr Gln Ser Val Asn Val Glu Ala Gln Leu Glu 435 440 445 AAC CCC TCC TCG CTG CTG CAC TGG ACC CGC CGG ATG ATC CAC ATC CGC 1392 Asn Pro Ser Ser Leu Leu His Trp Thr Arg Arg Met Ile His Ile Arg 450 455 460 CGC CAG CGC GAC GCC TTC GGG CTG GGC ACC TTC GAG GAC CTC GGC GGC 1440 Arg Gln Arg Asp Ala Phe Gly Leu Gly Thr Phe Glu Asp Leu Gly Gly 465 470 475 480 TCG AAC CCG GCG GTG CTG TCC TAC GTG CGC GAG CTG CCG GGC GAC GGG 1488 Ser Asn Pro Ala Val Leu Ser Tyr Val Arg Glu Leu Pro Gly Asp Gly 485 490 495 GGC GAC GAC GTG ATC CTC TGC GTC AAC AAC CTG TCC CGC TTC CCG CAG 1536 Gly Asp Asp Val Ile Leu Cys Val Asn Asn Leu Ser Arg Phe Pro Gln 500 505 510 CCG GTC GAG CTC GAC CTC CGG AAG TAC GAG GGC CGG GTA CCG GTG GAG 1584 Pro Val Glu Leu Asp Leu Arg Lys Tyr Glu Gly Arg Val Pro Val Glu 515 520 525 CTG ATC GGC GGC GTG CCG TTC CCC GCC GTC GGG GAG CTC CCG TAT CTC 1632 Leu Ile Gly Gly Val Pro Phe Pro Ala Val Gly Glu Leu Pro Tyr Leu 530 535 540 CTG ACG CTC AGC GGG CAC GGC TTC TAC TGG TTC CGG CTC ACG GAT CCG 1680 Leu Thr Leu Ser Gly His Gly Phe Tyr Trp Phe Arg Leu Thr Asp Pro 545 550 555 560 GAC ACG ACC GGG AGG CCC GTC CTG 1704 Asp Thr Thr Gly Arg Pro Val Leu 565
【図面の簡単な説明】
【図1】ピメロバクター・スピーシーズR48が産生す
る酵素の至適温度を示す図である。
【図2】ピメロバクター・スピーシーズR48が産生す
る酵素の至適pHを示す図である。
【図3】ピメロバクター・スピーシーズR48が産生す
る酵素の温度安定性を示す図である。
【図4】ピメロバクター・スピーシーズR48が産生す
る酵素のpH安定性を示す図である。
【図5】この発明による組換えDNAであるpBRM8
の構造を示す図である。
─────────────────────────────────────────────────────
【手続補正書】
【提出日】平成6年10月12日
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正内容】
【書類名】 明細書
【発明の名称】 マルトースをトレハロースに変換する
組換え型酵素
【特許請求の範囲】
【化1】
【化2】
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、マルトースをトレハ
ロースに変換する新規な組換え型酵素に関するものであ
る。
【0002】
【従来の技術】トレハロースは、グルコース2分子が還
元性基同士結合した二糖類であり、天然には細菌、真
菌、藻類、昆虫などに微量存在する。トレハロースは分
子中に還元性基を持たないので、アミノ酸類の存在下で
加熱しても褐変反応を起こすことがなく、着色や変質の
懸念なく飲食物を甘味付けできる利点がある。しかしな
がら、従来の方法では所望量を入手するのが難しく、実
際に飲食物の甘味付けに使われることは殆どなかった。
【0003】これまでの製造方法は、主として微生物の
菌体を利用する方法と、糖質に複合酵素系を作用させる
方法とに大別される。前者の方法は、特開昭50−15
4485号公報などにも見られるように、細菌、酵母な
どの微生物を栄養培地で増殖させ、培養物からトレハロ
ースを採取するものである。一方、後者の方法は、特開
昭58−216695号公報などにもみられるように、
基質にマルトースを使用し、これにマルトース・フォス
フォリラーゼとトレハロース・フォスフォリラーゼから
なる複合酵素系を作用させ、生成したトレハロースを系
外に取出すものである。前者の方法は、微生物そのもの
の増殖は比較的容易なものの、培養物中に含まれるトレ
ハロースが高々15%(w/w)と僅少であるという問
題があった。後者の方法は、トレハロースそのものの分
離は比較的容易なものの、反応自体が2種類の酵素によ
る平衡反応であり、しかも、その平衡が常時グルコース
燐酸側に傾いていることから、基質を高濃度にして反応
させ、トレハロースの収量を上げることが原理的に難し
かった。
【0004】斯かる状況に鑑み、本発明者らがマルトー
スを直接トレハロースに変換する酵素につき鋭意検索し
たところ、特願平5−199971号明細書に開示した
ように、ピメロバクター・スピーシーズR48を始めと
する種々の微生物がマルトースに作用してトレハロース
を生成するという、従来未知の全く新規な酵素を産生す
ることを見出した。このことは、大量且つ廉価に入手し
得るマルトースを原料にトレハロースが製造できること
を意味しており、斯かる酵素を利用することにより、ト
レハロースに係わる前記課題は悉く解決されていくもの
と期待される。しかしながら、上記微生物は酵素の産生
能が充分でなく、トレハロースを大規模に製造しようと
すると、微生物を大量に培養しなければならないという
問題がある。
【0005】一方、昨今の組換えDNA技術の進歩には
目覚ましいものがある。今日では、全アミノ酸配列が解
明されていない酵素であっても、これをコードする遺伝
子を単離し、その塩基配列を解明できれば、その酵素を
コードするDNAを含む組換えDNAを作製し、これを
微生物や動植物の細胞に導入して得られる形質転換体を
培養することにより、比較的容易に所望量の酵素が取得
できるようになった。斯かる状況に鑑み、マルトースに
作用してトレハロースを生成する酵素をコードする遺伝
子を突き止め、その塩基配列を解明するのが急務となっ
ている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】この発明の目的は、組
換えDNA技術を応用することにより、マルトースに作
用してトレハロースを生成する酵素を創製することにあ
る。
【0007】この発明の別の目的は、その創製された組
換え型酵素をコードするDNAを提供することにある。
【0008】この発明のさらに別の目的は、斯かるDN
Aを含む複製可能な組換えDNAを提供することにあ
る。
【0009】この発明のさらに別の目的は、斯かる組換
えDNAを導入した形質転換体を提供することにある。
【0010】この発明のさらに別の目的は、斯かる形質
転換体を利用した組換え型酵素の製造方法を提供するこ
とにある。
【0011】この発明のさらに別の目的は、組換え型酵
素により、マルトースをトレハロースに変換する方法を
提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】この発明は、前記第一の
課題を、下記の理化学的性質を有する組換え型酵素によ
り解決するものである。 (1) 作用 マルトースに作用させると、トレハロースを生成する。
トレハロースに作用させると、マルトースを生成する。 (2) 分子量 SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動法により測定
すると、分子量値約57,000乃至67,000ダル
トンを示す。 (3) 等電点 等電点電気泳動法により測定すると、約4.1乃至5.
1に等電点を示す。
【0013】この発明は、前記第二の課題を、斯かる組
換え型酵素をコードするDNAにより解決するものであ
る。
【0014】この発明は、前記第三の課題を、上記組換
え型酵素をコードするDNAと自律複製可能なベクター
を含んでなる複製可能な組換えDNAにより解決するも
のである。
【0015】この発明は、前記第四の課題を、上記組換
え型酵素をコードするDNAと自律複製可能なベクター
を含んでなる複製可能な組換えDNAを適宜宿主に導入
してなる形質転換体により解決するものである。
【0016】この発明は、前記第五の課題を、上記組換
え型酵素をコードするDNAと自律複製可能なベクター
を含んでなる複製可能な組換えDNAを適宜宿主に導入
してなる形質転換体を培養し、培養物から組換え型酵素
を採取してなる組換え型酵素の製造方法により解決する
ものである。
【0017】この発明は、前記第六の課題を、マルトー
スに上記組換え型酵素を作用させてトレハロースを生成
させる工程を含んでなるマルトースの酵素的変換方法に
より解決するものである。
【0018】
【作用】この発明の組換え型酵素は、マルトースに作用
させると、トレハロースを生成する。
【0019】この発明のDNAは、自律複製可能な適宜
ベクターに挿入して複製可能な組換えDNAとし、得ら
れる組換えDNAを、通常、この発明の組換え型酵素を
産生しないけれども、比較的容易に増殖させ得る適宜宿
主に導入して形質転換体とすることにより、この発明の
組換え型酵素の産生を発現する。
【0020】この発明の組換えDNAは、通常、この発
明の組換え型酵素を産生しないけれども、比較的容易に
増殖させ得る適宜宿主に導入して形質転換体とし、この
形質転換体を培養することにより、この発明の組換え型
酵素の産生を発現する。
【0021】この発明の形質転換体は、培養すると、こ
の発明の組換え型酵素を産生する。
【0022】この発明の組換え型酵素は、この発明の製
造方法により、比較的容易に所望量を製造することがで
きる。
【0023】この発明の酵素的変換方法により、マルト
ースを比較的容易にトレハロースに変換することができ
る。
【0024】次に、ピメロバクター・スピーシーズR4
8が産生する酵素の理化学的性質を解明すべく行った実
験について説明する。
【0025】
【実験例1 精製酵素の調製】
【0026】
【実験例1−1 酵素の産生】500ml容フラスコに
2.0%(w/v)グルコース、0.5%(w/v)ポ
リペプトン、0.1%(w/v)酵母エキス、0.1%
(w/v)燐酸水素二カリウム、0.06%(w/v)
燐酸二水素ナトリウム、0.05%(w/v)硫酸マグ
ネシウム7水塩、0.5%(w/v)炭酸カルシウム及
び水からなる液体培地(pH7.2)を100mlずつ
とり、115℃で30分間加熱して滅菌し、冷却後、ピ
メロバクター・スピーシーズR48を植菌し、27℃、
200rpmで24時間回転振盪培養した。次に、30
l容ジャーファーメンタに上記と同組成の新鮮な培地を
20lずつとり、同様に滅菌し、27℃まで冷却後、上
記で得た種培養液を1%(v/v)ずつ植菌し、培地の
pHを6.0乃至8.0に保ちつつ、27℃で約40時
間通気攪拌培養した。
【0027】培養終了後、培養物の酵素活性を測定した
ところ、約0.55単位/mlの酵素が産生していた。
培養物の一部をとり、遠心分離して上清を回収し、酵素
活性を測定したところ、約0.05単位/mlの酵素活
性が認められた。さらに、分離した菌体に50mM燐酸
緩衝液(pH7.0)を加えてもとの培養物と同液量に
した後、酵素活性を測定したところ、約0.5単位/m
lの酵素活性が認められた。
【0028】なお、この発明を通じて、酵素の活性は次
の方法により測定した活性値(単位)で表示する。すな
わち、マルトースを20%(w/v)含む10mM燐酸
緩衝液(pH7.0)を1mlとり、適宜濃度に希釈し
た酵素液を1ml加え、25℃で60分間インキュベー
トして反応させた後、100℃で10分間加熱して反応
を停止させる。50mM燐酸緩衝液(pH7.5)で反
応物を11倍希釈し、その希釈した反応物を0.4ml
とり、これにトレハラーゼを1単位/ml含む溶液を
0.1ml加え、45℃で120分間インキュベート
後、反応物中のグルコース量をグルコースオキシダーゼ
法で定量する。同時に、100℃で10分間加熱して失
活させた酵素液とトレハラーゼ液を用いる系を設け、上
記と同様に処置して対照とする。このようにして求めた
グルコース量から反応により生成したトレハロースの量
を推定する。当該酵素の1単位とは、上記条件下におい
て、1分間に1μmoleのトレハロースを生成する酵
素量と定義する。
【0029】
【実験例1−2 酵素の精製】実験例1−1で調製した
培養物を遠心分離し、得られた菌体(湿重量約0.5k
g)を10mM燐酸緩衝液(pH7.0)に浮遊させ、
常法により破砕後、遠心分離して粗酵素液約4.5lを
得た。この粗酵素液に硫酸アンモニウムを30%飽和に
なるように加え、4℃で4時間静置して塩析した後、遠
心分離して上清を採取した。この上清に硫酸アンモニウ
ムを80%飽和になるように加え、4℃で一夜静置後、
遠心分離により沈澱部を採取し、少量の10mM燐酸緩
衝液(pH7.0)に溶解し、10mM燐酸緩衝液(p
H7.0)に対して24時間透析した。透析内液を遠心
分離して採取した上清を予め10mM燐酸緩衝液(pH
7.0)により平衡化させておいた東ソー製イオン交換
クロマトグラフィー用カラム『DEAE−トヨパール』
に負荷し、0Mから0.4Mに上昇する塩化ナトリウム
の濃度勾配下、カラムに10mM燐酸緩衝液(pH7.
0)を通液した。溶出液より酵素を含む画分を採取し、
1M硫酸アンモニウムを含む10mM燐酸緩衝液(pH
7.0)に対して10時間透析後、遠心分離して上清を
採取した。この上清を予め1M硫酸アンモニウムを含む
10mM燐酸緩衝液(pH7.0)により平衡化させて
おいた東ソー製疎水クロマトグラフィー用カラム『ブチ
ルトヨパール』に負荷し、1Mから0Mに低下する硫酸
アンモニウムの濃度勾配下、カラムに10mM燐酸緩衝
液(pH7.0)を通液した。溶出液から酵素を含む画
分を採取し、予め10mM燐酸緩衝液(pH7.0)に
より平衡化させておいたファルマシア製イオン交換クロ
マトグラフィー用カラム『モノQ HR5/5』に負荷
し、0Mから0.5Mに上昇する塩化ナトリウムの濃度
勾配下、カラムに10mM燐酸緩衝液(pH7.0)を
通液し、溶出液より酵素を含む画分を採取した。このよ
うにして精製した酵素の比活性は約17単位/mg蛋白
質であり、収量は培養物1l当たり約46単位であっ
た。
【0030】常法により、この精製酵素を7.5%(w
/v)ポリアクリルアミドゲル上でゲル電気泳動したと
ころ、ゲル上には酵素活性を伴う実質的に単一のバンド
が観察され、精製酵素が極めて高純度であることが窺わ
れた。
【0031】
【実験例2 酵素の理化学的性質】
【0032】
【実験例2−1 作用】基質としてマルトース又はトレ
ハロースを5%(w/v)含む水溶液に実験例1−2で
調製した精製酵素を基質固形分1グラム当たり2単位加
え、20℃、pH7.0で24時間インキュベートし
た。反応物の糖組成を調べるべく、反応物を真空乾燥
し、ピリジンに溶解し、常法によりトリメチルシリル化
後、ガスクロマトグラフィーに供した。ガスクロマトグ
ラフフ装置は島津製作所製『GC−16A型』を、カラ
ムはステンレス製円筒管(内径3mm、長さ2m)に充
填したジー・エル・サイエンス製『2%シリコンOV−
17/クロモゾルブW』を、検出器は水素炎イオン方式
のものを、そして、キャリアーガスに窒素ガス(流量4
0ml/分)を使用し、カラムオーブン温度を160乃
至320℃(昇温速度7.5℃/分)に設定した。下記
の表1に反応物の糖組成を示す。
【0033】
【表1】
【0034】表1に見られるように、精製酵素は、マル
トースを基質にすると、トレハロースとグルコースをそ
れぞれ約73%又は約5%生成し、一方、トレハロース
を基質にすると、マルトースとグルコースをそれぞれを
約17%又は約3%生成した。これらの事実は、精製酵
素にマルトース及びトレハロースをそれぞれトレハロー
ス又はマルトースに変換する作用のあること、さらに
は、僅かながら、マルトース分子中のα−1,4結合や
トレハロース分子中のα,α−1,1結合を加水分解す
る作用のあることを示唆している。斯かる酵素作用は未
だ報告されておらず、全く新規な作用機序を辿るものと
推定される。
【0035】
【実験例2−2 分子量】ユー・ケー・レムリが『ネー
チャー』、第227巻、第680乃至685頁(197
0年)に報告している方法に準じてSDS−ポリアクリ
ルアミドゲル電気泳動したところ、精製酵素は、分子量
約57,000乃至67,000ダルトンに相当する位
置に酵素活性を伴う実質的に単一なバンドを示した。な
お、このときの分子量マーカーは、ミオシン(200,
000ダルトン)、β−ガラクトシダーゼ(116,2
50ダルトン)、フォスフォリラーゼB(97,400
ダルトン)、血清アルブミン(66,200ダルトン)
及びオボアルブミン(45,000ダルトン)であっ
た。
【0036】
【実験例2−3 等電点】等電点電気泳動法により測定
したところ、精製酵素は約4.1乃至5.1に等電点を
示した。
【0037】
【実験例2−4 至適温度】常法により、10mM燐酸
緩衝液(pH7.0)中で60分間反応させる条件で試
験したところ、図1に示すように、精製酵素は20℃付
近に至適温度を示した。
【0038】
【実験例2−5 至適pH】常法により、pHの相違す
る10mM酢酸緩衝液、燐酸緩衝液又は炭酸ナトリウム
−炭酸水素ナトリウム緩衝液中、25℃で60分間反応
させる条件で試験したところ、図2に示すように、精製
酵素はpH7.0乃至8.0付近に至適pHを示した。
【0039】
【実験例2−6 熱安定性】常法により、50mM燐酸
緩衝液(pH7.0)中で60分間インキュベートする
条件で試験したところ、図3に示すように、精製酵素は
30℃付近まで安定であった。
【0040】
【実験例2−7 pH安定性】常法により、pHの相違
する50mM酢酸緩衝液、燐酸緩衝液又は炭酸ナトリウ
ム−炭酸水素ナトリウム緩衝液中、20℃で60分間イ
ンキュベートする条件で試験したところ、図4に示すよ
うに、精製酵素はpH6.0乃至9.0付近まで安定で
あった。
【0041】
【実験例2−8 N末端アミノ酸配列】常法により、パ
ーキン・エルマー製気相プロテイン・シーケンサ『47
0A型』を使用して分析したところ、精製酵素はN末端
に配列表における配列番号1に示すアミノ酸配列を有し
ていることが判明した。
【0042】
【実験例2−9 部分アミノ酸配列】実験例1で調製し
た精製酵素を適量とり、10mMトリス−塩酸緩衝液
(pH9.0)に対して4℃で18時間透析後、10m
Mトリス−塩酸緩衝液(pH9.0)を加えて酵素濃度
を約1mg/mlとした。この溶液を約1mlとり、リ
ジルエンドペプチダーゼを10μg加え、30℃で22
時間インキュベートして酵素を部分加水分解した。加水
分解物を、予め16%(v/v)水性アセトニトリルを
含む0.1%(v/v)トリフルオロ酢酸により平衡化
させておいた日本ミリポア・リミテッド製高速液体クロ
マトグラフィー用カラム『マイクロボンダパックC1
8』に負荷し、28%(v/v)から44%(v/v)
に上昇する水性アセトニトリルの濃度勾配下、カラムに
0.1%(v/v)トリフルオロ酢酸を0.9ml/分
の流速で通液した。そして、通液開始から約46分後に
溶出したペプチド断片を含む画分を採取し、真空乾燥
後、50%(v/v)水性アセトニトリルを含む0.1
%(v/v)トリフルオロ酢酸に溶解した。以後、実験
例2−8と同様に分析したところ、ペプチド断片は配列
表における配列番号2に示す部分アミノ酸配列を有して
いることが判明した。
【0043】以上のような理化学的性質を有する酵素は
未だ知られておらず、新規物質であると判断される。な
お、ピメロバクター・スピーシーズR48は岡山県岡山
市の土壌から分離され、平成5年6月3日以降、茨城県
つくば市東1丁目1番3号にある通商産業省、工業技術
院、生命工学工業技術研究所、特許微生物寄託センター
に寄託番号『微工研条寄4315号(FERM BP−
4315)』で寄託されている。同じ特許出願人による
特願平5−199971号明細書には、本微生物の菌学
的性質が詳細に開示されている。
【0044】そこで、本発明者が、実験例2−8及び実
験例2−9で明らかにしたN末端アミノ酸配列及び部分
アミノ酸配列に基づき化学合成したオリゴヌクレオチド
をプローブにし、ピメロバクター・スピーシーズR48
の染色体DNAを鋭意検索したところ、下記の化3に示
す5´末端からの塩基配列を有する約1,700塩基対
からなるDNA断片が得られた。そして、その塩基配列
を解読したところ、同微生物が産生する酵素は568個
のアミノ酸からなり、下記の化4に示すN末端からのア
ミノ酸配列を有していることが判明した。
【0045】
【化3】
【0046】
【化4】
【0047】化3及び化4に示す塩基配列及びアミノ酸
配列を解明するに到った一連の工程を要約すると、次の
ようになる。 (1) 供与体微生物の培養物から当該酵素を分離し、
高度に精製した後、N末端アミノ酸配列を決定した。一
方、その精製酵素をプロテアーゼで部分加水分解し、加
水分解物からペプチド断片を単離し、そのアミノ酸配列
を決定した。 (2) 別途、供与体微生物の菌体より染色体DNAを
分離し、精製後、制限酵素により部分消化し、消化物か
ら約2,000乃至6,000塩基対からなるDNA断
片を採取した。DNAリガーゼにより、このDNA断片
を予め制限酵素で切断しておいたプラスミドベクターに
連結し、組換えDNAを作製した。 (3) 大腸菌にこの組換えDNAを導入して形質転換
体を作製し、前記部分アミノ酸配列に基づき化学合成し
たオリゴヌクレオチドをプローブとするコロニーハイブ
リダイゼーションにより当該酵素をコードするDNAを
含む形質転換体を選択した。 (4) 形質転換体から組換えDNAを採取し、プライ
マーとともにアニーリング後、DNAポリメラーゼを作
用させてプライマーを伸長し、得られた相補鎖DNAを
ジオキシ・チェーン・ターミネータ法により分析して塩
基配列を決定した。そして、その塩基配列から推定され
るアミノ酸配列と前記部分アミノ酸配列とを比較し、そ
の塩基配列が当該酵素をコードしていることを確認し
た。
【0048】次の実験例3及び4では、上記(2)乃至
(4)を具体的に説明するが、これら実験例で用いる手
法自体は斯界において慣用のものであり、例えば、ジェ
ー・サムブルック等『モレキュラー・クローニング・ア
・ラボラトリー・マニュアル』、第2版、1989年、
コールド・スプリング・ハーバー・ラボラトリー・プレ
ス発行などにも詳述されている。
【0049】
【実験例3 ピメロバクター・スピーシーズR46由来
のDNAを含む組換えDNAと形質転換体の調製】
【0050】
【実験例3−1 染色体DNAの調製】ピメロバクター
・スピーシーズR48をバクト・ニュートリエント・ブ
ロス培地(pH7.0)に植菌し、27℃で24時間回
転振盪培養した。遠心分離により培養物から菌体を分離
し、TES緩衝液(pH8.0)に浮遊させ、リゾチー
ムを0.05%(w/v)加え、37℃で30分間イン
キュベートした。処理物を−80℃で1時間凍結し、T
ES緩衝液(pH9.0)を加えて60℃に加温し、T
ES緩衝液/フェノール混液を加え、冷却後、遠心分離
により上清を採取した。この上清に2倍容の冷エタノー
ルを加え、沈澱した粗染色体DNAを採取し、SSC緩
衝液(pH7.1)に溶解後、リボヌクレアーゼとプロ
テアーゼをそれぞれ7.5μg又は125μg加え、3
7℃で1時間インキュベートして反応させた。反応物に
クロロホルム/イソアミルアルコール混液を加えて染色
体DNAを抽出し、冷エタノールを加え、生成した染色
体DNAを含む沈澱を採取した。このようにして得た精
製染色体DNAを濃度約1mg/mlになるようにSS
C緩衝液(pH7.1)に溶解し、溶液を−80℃で凍
結した。
【0051】
【実験例3−2 組換えDNA pBRM8と形質転換
体BRM8の調製】実験例3−1で得た精製染色体DN
A溶液を1mlとり、これに制限酵素Sau 3Aを約
35単位加え、37℃で20分間反応させて染色体DN
Aを部分消化した後、蔗糖密度勾配超遠心法により消化
物から約2,000乃至6,000塩基対からなるDN
A断片を採取した。別途、ストラタジーン・クローニン
グ・システムズ製プラスミドベクターBluescri
pt II SK(+)を1μgとり、制限酵素Bam
HIにより完全に切断した後、上記で得たDNA断片
10μgとT4 DNAリガーゼを2単位加え、4℃で
一夜静置してDNA断片に連結した。得られた組換えD
NAに同上製コンピテントセル『Epicurian
Coli XLI−Blue』を30μl加え、氷冷下
で30分間静置後、42℃に加温し、SOCブロスを加
えて37℃で一時間インキュベートして組換えDNAを
大腸菌に導入した。
【0052】このようにして得た形質転換体を5−ブロ
モ−4−クロロ−3−インドリル−β−ガラクトシドを
50μg/ml含む寒天平板培地(pH7.0)に植菌
し、37℃で18時間培養後、培地上に形成された約
6,000個のコロニーをナイロン膜上に固定した。別
途、実験例2−8で明らかにしたN末端アミノ酸配列に
おける第6乃至11番目のGlu−Glu−Pro−G
lu−Trp−Pheで表わされる配列に基づき下記の
化5に示す塩基配列のプローブ1を化学合成し、同位体
32Pで標識後、前記ナイロン膜上に固定した形質転換株
のコロニーにハイブリダイズさせ、顕著な会合を示した
5種類の形質転換体を選択した。
【0053】
【化5】
【0054】常法により、これら5種類の形質転換体か
ら組換えDNAを採取し、それらに実験例2−9で明ら
かにした部分アミノ酸配列における第5乃至10番目の
Met−Leu−Glu−Ala−Met−Alaで表
わされる配列に基づき化学合成した下記の化6に示す塩
基配列のプローブ2をイー・エム・サザーン『ジャーナ
ル・オブ・モレキュラー・バイオロジー』、第98巻、
第503乃至517頁(1975年)に記載されている
方法に準じてハイブリダイズさせ、顕著な会合を示した
組換えDNAを選択した。以上のようにして選択した組
換えDNAと形質転換体を、それぞれ、『pBRM
8』、『BRM8』と命名した。
【0055】
【化6】
【0056】この形質転換体BRM8をアンピシリン1
00μg/mlを含むL−ブロス培地(pH7.0)に
植菌し、37℃で24時間回転振盪培養し、培養終了
後、遠心分離により培養物から菌体を採取し、通常一般
のアルカリ法により組換えDNAを菌体外に溶出させ
た。処理物を常法により精製し、分析したところ、組換
えDNA pBRM8は約7,600塩基対からなり、
図5に示すように、当該酵素をコードする約1,700
塩基対からなるDNAが制限酵素Sma Iによる切断
部位の下流に連結していた。
【0057】
【実験例3−3 形質転換体BRM8による組換え型酵
素の産生】500ml容フラスコに2.0%(w/v)
グルコース、0.5%(w/v)ペプトン、0.1%
(w/v)酵母エキス、0.1%(w/v)燐酸水素二
カリウム、0.06%(w/v)燐酸二水素ナトリウ
ム、0.05%(w/v)硫酸マグネシウム7水塩、
0.5%(w/v)炭酸カルシウム及び水からなる液体
培地(pH7.2)を100mlずつとり、115℃で
30分間加熱して滅菌し、冷却し、アンピシリンを50
μg/ml加えた後、実験例3−2で得た形質転換体B
RM8を植菌し、37℃で24時間回転振盪培養した。
培養物を超音波処理して菌体を破砕し、遠心分離により
不溶物を除去した後、上清中の酵素活性を測定したとこ
ろ、培養物1l当たりに換算して、約850単位の酵素
が産生していた。
【0058】対照として、大腸菌XLI−Blue株又
はピメロバクター・スピーシーズR48をアンピシリン
無含有の上記と同一組成の液体培地に植菌し、ピメロバ
クター・スピーシーズR48の場合、培養温度27℃に
設定した以外は上記と同様に培養・処理した。処理物の
活性を測定したところ、ピメロバクター・スピーシーズ
R48による酵素の産生は培養物1l当たり約410単
位と、形質転換体BRM8と比較して有意に低いもので
あった。なお、宿主に使用した大腸菌XLI−Blue
株は、当該酵素を全く産生しなかった。
【0059】その後、形質転換体BRM8が産生した酵
素を実験例1−2と同様に精製し、その性質・性状を調
べたところ、SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動
で分子量57,000乃至67,000ダルトンを、ま
た、等電点電気泳動で約4.1乃至5.1に等電点を示
すなど、ピメロバクター・スピーシーズR48由来の酵
素とほぼ同じ理化学的性質を有することが判明した。こ
のことは、組換えDNA技術によっても当該酵素を製造
でき、且つ、酵素の生産性も有意に向上することを示唆
している。
【0060】
【実施例4 相補鎖DNAの調製並びにその塩基配列及
びアミノ酸配列の決定】実験例3−2で得た組換えDN
A pBRM8を2μgとり、これに2M水酸化ナトリ
ウム水溶液を加えて変性させた後、適量の冷エタノール
を加え、生成したテンプレートDNAを含む沈澱を採取
し、真空乾燥した。このテンプレートDNAに化学合成
した下記の化7に示す塩基配列のプライマー1を50p
mol/mlと、20mM塩化マグネシウムと塩化ナト
リウムを含む40mMトリス−塩酸緩衝液(pH7.
5)を10μl加え、65℃で2分間インキュベートし
てアニーリングした後、dATP、dGTP及びdTT
Pをそれぞれ7.5μM含む水溶液を2μlと、[α−
32P]dCTP(2mCi/ml)を0.5μlと、
0.1Mジチオトレイトールを1μlと、1.5単位/
mlのT7 DNAポリメラーゼを2μl加え、25℃
で5分間インキュベートすることによりプライマー1を
5´末端から3´末端に向かって伸長させ、相補鎖DN
Aを生成させた。
【0061】
【化7】
【0062】次に、上記で得た相補鎖DNAを含む反応
物を四等分し、それぞれにddATP、ddCTP、d
dGTP及びddTTPのいずれかを8μMと80μM
dNTPを含む50mM塩化ナトリウム水溶液を2.
5μl加え、37℃で5分間インキュベートして反応さ
せ、20mM EDTA、0.05%(w/v)ブロム
フェノールブルー及び0.05%(w/v)キシレンシ
アノールを含む98%(v/v)水性ホルムアミド溶液
を4μl加えて反応を停止させた。反応物を沸騰水中で
3分間加熱後、6%(w/v)ポリアクリルアミドゲル
上にとり、約2,000Vの定電圧を印加しながら電気
泳動してDNA断片を分離し、次いで、常法によりゲル
を固定し、乾燥させた後、オートラジオグラフィーし
た。
【0063】ラジオグラム上に分離したDNA断片を解
析した結果、相補鎖DNAは配列表における配列番号3
に示す約1,700塩基対からなる塩基配列を含んでい
ることが判明した。この塩基配列から推定されるアミノ
酸配列は配列表における配列番号3に併記したとおりで
あり、このアミノ酸配列と実験例2−8又は実験例2−
9で明らかにしたN末端アミノ酸配列、部分アミノ酸配
列を比較したところ、実験例2−8のN末端アミノ酸配
列は配列番号3における第1乃至20番目の配列に、ま
た、実験例2−9の部分アミノ酸配列は配列番号3にお
ける第183乃至193番目の配列に一致した。これ
は、当該酵素が化4に示すアミノ酸配列を有するもので
あり、ピメロバクター・スピーシーズR48において
は、当該酵素が化3に示す塩基配列のDNAによりコー
ドされていることを示している。
【0064】以上説明したように、マルトースをトレハ
ロースに変換し、トレハロースをマルトースに変換する
酵素は、本発明者が長年に亙る研究の一成果として見出
されたものであり、従来公知の酵素には見られない独特
の理化学的性質を具備している。この発明は、組換えD
NA技術を応用することにより、この酵素を創製しよう
というものである。以下、実施例等を参照しながら、こ
の発明の組換え型酵素とその製造方法、用途につき、具
体的に説明する。
【0065】この発明でいう組換え型酵素とは、組換え
DNA技術により創製され、マルトースをトレハロース
に変換し、トレハロースをマルトースに変換する酵素全
般を意味する。この発明の組換え型酵素は、通常、解明
されたアミノ酸配列を有しており、その一例として、例
えば、化4に示すN末端からのアミノ酸配列かそれに相
同的なアミノ酸配列が挙げられる。化4のアミノ酸配列
に相同的なアミノ酸配列を有する変異体は、所期の酵素
作用を実質的に変えることなく、化4のアミノ酸配列に
おける構成アミノ酸の1個又は2個以上を他のアミノ酸
で置換することにより得ることができる。なお、同じD
NAであっても、それを導入する宿主や、そのDNAを
含む形質転換体の培養に使用する栄養培地の成分・組成
や培養温度・pHなどに依っては、宿主内酵素によるD
NA発現後の修飾などにより、所期の酵素作用は保持し
ているものの、化4のアミノ酸配列におけるN末端付近
のアミノ酸が1個又は2個以上が欠失したり、N末端に
1個又は2個以上のアミノ酸が新たに付加した変異体の
産生することがある。斯かる変異体も、それがマルトー
スをトレハロースに変換し、トレハロースをマルトース
に変換するかぎり、当然、この発明の組換え型酵素に包
含される。
【0066】この発明による組換え型酵素は、特定のD
NAを含む形質転換体の培養物から採取することができ
る。この発明で使用する形質転換体は、例えば、化3に
示す5´末端からの塩基配列若しくはそれに相同的な塩
基配列又はそれらに相補的な塩基配列のDNAを適宜宿
主に導入することにより得ることができる。なお、上記
塩基配列は、遺伝子コードの縮重を利用して、コードす
るアミノ酸配列を変えることなく、塩基の1個又は2個
以上を他の塩基で置き換えてもよい。また、DNAが宿
主中で実際に当該酵素の産生を発現するために、当該酵
素又はその相同変異体をコードする塩基配列における塩
基の1個又は2個以上を他の塩基で適宜置換し得ること
は言うまでもない。
【0067】この発明で使用するDNAは、それが前述
のような配列を有するかぎり、それが天然に由来するも
のか人為的に合成されたものであるかは問わない。天然
の給源としては、例えば、ピメロバクター・スピーシー
ズR48を始めとするピメロバクター属の微生物が挙げ
られ、その菌体からはこの発明のDNAを含む遺伝子が
得られる。すなわち、斯かる微生物を栄養培地に植菌
し、好気的条件下で約1日乃至3日間培養後、培養物か
ら菌体を採取し、リゾチームやβ−グルカナーゼなどの
細胞壁溶解酵素や超音波で処理することにより当該DN
Aを含む遺伝子を菌体外に溶出させる。このとき、細胞
壁溶解酵素にプロテアーゼなどの蛋白質加水分解酵素を
併用したり、菌体を超音波処理する際、SDSなどの界
面活性剤を共存させたり凍結融解してもよい。斯くして
得られる処理物に、例えば、フェノール抽出、アルコー
ル沈澱、遠心分離、プロテアーゼ処理、リボヌクレアー
ゼ処理などの斯界における通常一般の方法を適用すれば
目的のDNAが得られる。一方、DNAを人為的に合成
するには、例えば、化3に示す塩基配列に基づいて化学
合成するか、化4に示すアミノ酸配列をコードするDN
Aを自律複製可能な適宜ベクターに挿入して組換えDN
Aとし、これを適宜宿主に導入して得られる形質転換体
を培養し、培養物から菌体を採取し、その菌体から当該
DNAを含むプラスミドを採取すればよい。
【0068】斯かるDNAは、通常、組換えDNAの形
態で宿主に導入される。組換えDNAは、通常、DNA
と自律増殖可能なベクターを含んでなり、DNAが入手
できれば、通常一般の組換えDNA技術により比較的容
易に調製することができる。斯かるベクターの例として
は、pBR322、pUC18、Bluescript
II SK(+)、pUB110、pTZ4、pC1
94、pHV14、TRp7、YEp7、pBS7など
のプラスミドベクターやλgt・λC、λgt・λB、
ρ11、φ1、φ105などのファージベクターが挙げ
られる。このうち、この発明のDNAを大腸菌で発現さ
せるにはpBR322、pUC18、Bluescri
pt II SK(+)、λgt・λC及びλgt・λ
Bが好適であり、一方、枯草菌で発現させるにはpUB
110、pTZ4、pC194、ρ11、φ1及びφ1
05が好適である。pHV14、TRp7、YEp7及
びpBS7は、組換えDNAを2種類以上の宿主内で複
製させる場合に有用である。
【0069】DNAを斯かるベクターに挿入するには、
斯界において通常一般の方法が採用される。具体的に
は、先ず、DNAを含む遺伝子と自律複製可能なベクタ
ーとを制限酵素及び/又は超音波により切断し、次に、
生成したDNA断片とベクター断片とを連結する。遺伝
子及びベクターの切断にヌクレオチドに特異的に作用す
る制限酵素、とりわけ、II型の制限酵素、詳細には、
Sau 3AI、EcoRI、Hind III、Ba
m HI、Sal I、Xba I、SacI、Pst
Iなどを使用すれば、DNA断片とベクター断片を連
結するのが容易となる。DNA断片とベクター断片を連
結するには、必要に応じて、両者をアニーリングした
後、生体内又は生体外でDNAリガーゼを作用させれば
よい。斯くして得られる組換えDNAは、適宜宿主に導
入して形質転換体とし、これを培養することにより無限
に複製可能である。
【0070】このようにして得られる組換えDNAは、
大腸菌、枯草菌、放線菌、酵母を始めとする適宜の宿主
微生物に導入することができる。宿主が大腸菌の場合に
は、宿主を組換えDNAとカルシウムイオンの存在下で
培養すればよく、一方、宿主が枯草菌の場合には、コン
ピテントセル法やプロトプラスト法を適用すればよい。
形質転換体をクローニングするには、コロニーハイブリ
ダイゼーション法を適用するか、マルトース又はトレハ
ロースを含む栄養培地で培養し、それぞれ、トレハロー
ス又はマルトースを生成するものを選択すればよい。
【0071】斯くして得られる形質転換体は、栄養培地
で培養すると、菌体内外に当該酵素を産生する。栄養培
地には、通常、炭素源、窒素源、ミネラル、さらには、
必要に応じて、アミノ酸やビタミンなどの微量栄養素を
補足した通常一般の液体培地が使用され、個々の炭素源
としては、例えば、澱粉、澱粉加水分解物、グルコー
ス、果糖、蔗糖、トレハロースなどの糖質が、また、窒
素源としては、例えば、アンモニア乃至アンモニア塩、
尿素、硝酸塩、ペプトン、酵母エキス、脱脂大豆、コー
ンスティープリカー、肉エキスなどの含窒素無機乃至有
機物が挙げられる。形質転換体を斯かる栄養培地に植菌
し、栄養培地を温度20乃至50℃、pH2乃至9に保
ちつつ、通気撹拌などによる好気的条件下で約1乃至6
日間培養すれば、当該酵素を含む培養物が得られる。こ
の培養物は酵素剤としてそのまま使用可能ではあるが、
通常は使用に先立ち、必要に応じて、超音波や細胞溶解
酵素により菌体を破砕した後、瀘過、遠心分離などによ
り酵素を菌体又は菌体破砕物から分離し、精製する。精
製には酵素を精製するための通常の方法が採用でき、例
えば、菌体又は菌体破砕物を除去した培養物に濃縮、塩
析、透析、分別沈澱、ゲル瀘過クロマトグラフィー、イ
オン交換クロマトグラフィー、疎水クロマトグラフィ
ー、アフィニティークロマトグラフィー、ゲル電気泳
動、等電点電気泳動などの1種又は2種以上を適宜組合
わせて適用すればよい。
【0072】前述のとおり、この発明の組換え型酵素
は、マルトース及びトレハロースに作用して、それぞれ
トレハロース又はマルトースを生成するという、従来の
酵素に見られない、独特の作用を有する。トレハロース
はまろやかで上品な甘味を有し、そして、何よりも、分
子中に還元性基を有しないので、着色や変質の懸念もな
く飲食物を甘味付けできるという大きな利点がある。当
該酵素のこの性質を利用することにより、従来、還元性
故に敬遠されがちであったマルトースを還元性を有さ
ず、扱い易く、付加価値の高いトレハロースに変換でき
ることとなる。
【0073】斯かる変換方法につきさらに説明すると、
この発明によるマルトースの酵素的変換方法でいうマル
トースとは、通常、マルトースを含んでなる糖組成物を
意味し、この発明の組換え型酵素が作用してトレハロー
スを生成し得るかぎり、その原料、製造方法は問わな
い。大量のトレハロースを効率的に製造するには、マル
トース含量の高い糖組成物を使用するのが望ましく、通
常、固形分当たり約70%以上、望ましくは、約80%
以上のものが使用される。斯かる糖組成物は斯界におけ
る通常一般の方法により得ることができ、例えば、特公
昭56−11437号公報や特公昭56−17078号
公報に開示されている、糊化澱粉又は液化澱粉にβ−ア
ミラーゼを作用させ、生成したマルトースを分別沈澱や
透析手段により分離する方法や、特公昭47−1308
9号公報や特公昭54−3938号公報に開示されてい
る、糊化澱粉又は液化澱粉にβ−アミラーゼとイソアミ
ラーゼやプルラナーゼなどの澱粉枝切酵素を作用させる
方法を採用することができる。
【0074】この発明による酵素的変換方法において
は、マルトースを含む水性媒体にこの発明の組換え型酵
素の有効量を共存せしめ、水性媒体を所定の温度、pH
に保ちつつ、所望量のトレハロースが生成するまで反応
させる。反応は0.1%(w/w)程度の低基質濃度下
でも進行するけれども、この発明の変換方法を大規模に
実施する場合には、より高濃度の約2%(w/w)以
上、望ましくは、約5乃至50%(w/w)とするのが
よい。反応時の温度とpHは組換え型酵素が失活するこ
となくマルトースに効率的に作用するレベルに設定さ
れ、温度は30℃付近まで、望ましくは、約4乃至30
℃に、また、pHは約6乃至9、望ましくは、約7乃至
8の範囲に設定される。組換え型酵素の量と反応時間
は、反応の進行具合に依って適宜に設定する。この発明
の酵素的変換方法により、マルトースは効率的にトレハ
ロースに変換され、その変換率は約80%以上にも達す
ることがある。
【0075】この発明の変換方法により得られた反応物
はそのまま使用可能ではあるが、通常、使用に先立ち精
製する。すなわち、瀘過、遠心分離などにより反応物か
ら不溶物を除去し、活性炭により脱色した後、イオン交
換樹脂により脱塩・精製し、濃縮してシロップ状物とす
る。用途に依っては、このシロップ状物を真空乾燥、噴
霧乾燥などにより固状物としてもよい。実質的にトレハ
ロースのみからなる製品を得るには、上記シロップ状物
にイオン交換樹脂、活性炭、シリカゲルなどによる糖質
を分離するための種々のクロマトグラフィー、酵母によ
る発酵、アルカリによる還元性糖質の分解除去などの1
種又は2種以上を適用する。大量に反応物を処理するに
は、例えば、特開昭58−23799号公報や特開昭5
8−72598号公報に開示されている強酸性カチオン
交換樹脂を使用する固定床方式、移動床方式又は疑似移
動床方式のイオン交換クロマトグラフィーが有用であ
り、これらの方法によるときには、従来、大量入手が難
しかったトレハロース含量が高い製品を大量且つ効率的
に得ることができる。
【0076】斯くして得られるトレハロース及びトレハ
ロースを含む糖組成物は、糖質甘味剤の還元性を嫌う種
々の物品に広範な用途を有し、例えば、飲食物一般、化
粧品、医薬品の甘味剤、呈味改善剤、品質改善剤、安定
剤、賦形剤として極めて有用である。
【0077】以下、2〜3の実施例により、この発明に
よる組換え型酵素の製造方法とマルトースの酵素的変換
方法を具体的に説明する。
【0078】
【実施例A−1 組換え型酵素の製造】500ml容三
角フラスコに2.0%(w/v)グルコース、0.5%
(w/v)ペプトン、0.1%(w/v)酵母エキス、
0.1%(w/v)燐酸水素二カリウム、0.06%
(w/v)燐酸二水素ナトリウム、0.05%(w/
v)硫酸マグネシウム7水塩、0.5%(w/v)炭酸
カルシウム及び水からなる液体培地(pH7.2)を1
00mlずつとり、115℃で30分間加熱して滅菌
し、冷却し、アンピシリンを50μg/ml加えた後、
実験例3−2で得た形質転換体BRM8を植菌し、回転
振盪下、37℃で24時間種培養した。次に、30l容
ジャーファーメンタに上記と同組成の新鮮な液体培地を
18lずつとり、同様に滅菌後、アンピシリンを50μ
g/ml加え、上記で得た種培養液を1%(v/v)ず
つ接種し、液体培地をpH6乃至8に保ちつつ、37℃
で24時間通気撹拌培養した。培養物を超音波処理して
菌体を破砕し、遠心分離により不溶物を除去後、上清中
の酵素活性を測定したところ、培養物1l当たりに換算
して約880単位の組換え型酵素が産生していた。この
上清を実験例1−2の方法により精製したところ、比活
性約34単位/mg蛋白質の組換え型酵素を約160単
位/ml含む水溶液が約5ml得られた。
【0079】
【実施例B−1 組換え型酵素によるトレハロースシロ
ップ状物の製造】馬鈴薯澱粉を濃度10%(w/w)に
なるように水中に懸濁し、懸濁液をpH5.5に調整
後、ナガセ生化学工業製α−アミラーゼ剤『スピターゼ
HS』を澱粉固形分1グラム当たり2単位加え、95℃
で加熱して澱粉を糊化・液化した。液化液を120℃で
20分間オートクレーブして酵素を失活させ、50℃に
急冷後、pHを5.0に調整し、澱粉固形分1グラム当
たり、林原生物化学研究所製イソアミラーゼ剤を500
単位、ナガセ生化学工業製β−アミラーゼ剤を20単位
加え、50℃で24時間反応させて、固形分当たり、マ
ルトースを約92%含む糖液を得た。糖液を100℃で
20分間加熱して酵素を失活させ、温度10℃に冷却
後、pH7.0に調整し、実施例A−1の方法で得た組
換え型酵素を澱粉固形分1グラム当たり1単位加え、9
6時間反応させた。反応物を95℃で10分間加熱して
酵素を失活させ、冷却し、瀘過後、常法にしたがって活
性炭により脱色し、イオン交換樹脂により脱塩・精製
し、濃縮して濃度約70%(w/w)のシロップ状物を
原料澱粉固形分当たり約95%の収率で得た。
【0080】トレハロースを固形分当たり約69%含有
する本品は、還元力がDE18.2と低く、しかも、温
和な甘味や適度の粘度・保湿性を有していることから、
甘味剤、呈味改良剤、安定剤、賦形剤などとして飲食
物、化粧品、医薬品などの各種組成物に有利に配合使用
できる。
【0081】
【実施例B−2 組換え型酵素によるトレハロース粉状
物の製造】実施例B−1の方法で得た反応物をpH5.
0に調整し、ナガセ生化学工業製グルコアミラーゼ剤
『グルコチーム』を固形分1グラム当たり10単位加え
て50℃で24時間作用させた。新たに得られた反応物
を加熱して酵素を失活させ、常法により脱色し、脱塩・
精製した後、トレハロース含量を高めるべく、東京有機
化学工業製ナトリウム型カチオン交換樹脂『XT−10
16』(架橋度4%)を用いるイオン交換カラムクロマ
トグラフィーに供した。すなわち、水に懸濁したイオン
交換樹脂を内径5.4cmのジャケット付きステンレス
製円筒管4本に充填した後、円筒管を直列に連結して全
カラム長を20mとした。カラム内温度を60℃に維持
しつつ、上記反応物をカラムに対して約5%(v/v)
負荷し、次に、60℃の温水をSV0.15で通液して
分画し、トレハロース含有の高い画分を採取した。この
画分を常法により濃縮し、真空乾燥し、粉砕して、トレ
ハロース粉状物を原料固形分当たり約55%の収率で得
た。
【0082】トレハロースを固形分当たり約97%含有
する本品は、還元力が極めて低く、甘味もまろやかであ
ることから、甘味剤、呈味改良剤、品質改良剤、安定
剤、賦形剤などとして飲食物、化粧品、医薬品を始めと
する各種組成物に有利に配合使用できる。
【0083】
【実施例B−3 組換え型酵素による結晶性トレハロー
ス粉状物の製造】実施例B−2の方法により得たトレハ
ロース含量の高い画分を、常法にしたがって活性炭によ
り脱色し、イオン交換樹脂により脱塩し、濃度約70%
(w/w)に濃縮した。濃縮物を助晶機にとり、撹拌し
つつ徐冷して晶出率約45%のマスキットを得た。次
に、約85℃の温風を噴霧乾燥塔上部から下方に向かっ
て送風しつつ、マスキットを噴霧乾燥乾塔の上部に設け
たノズルより約150kg/cm2の加圧下で噴霧乾燥
塔の下方に向かって噴霧する一方、噴霧乾燥塔底部に設
けた金網コンベア上に捕集した結晶性粉末を、コンベア
下部より約45℃の温風を送風しつつ、噴霧乾燥塔外に
徐々に搬出した。その後、結晶性粉末を熟成塔に充填
し、温風気流中で10時間熟成し、結晶化と乾燥を完了
した。このようにして、トレハロース含水結晶の粉末を
原料固形分当たり約90%の収率で得た。
【0084】本品は実質的に吸湿性を示さず、取扱いも
容易であり、甘味剤、呈味改良剤、品質改良剤、安定
剤、賦形剤などとして飲食物、化粧品、医薬品を始めと
する各種組成物に有利に配合使用できる。
【0085】
【実施例B−4 組換え型酵素による無水結晶性トレハ
ロース粉状物の製造】実施例B−2の方法で得たトレハ
ロース含量の高い画分を実施例B−3と同様にして精製
した後、蒸発釜にとり、減圧下で煮詰めて水分含量約
3.0%(w/w)のシロップ状物を得た。このシロッ
プ状物を助晶機に移し、種晶として無水結晶トレハロー
スを固形分当たり約1%(w/w)加え、撹拌下、12
0℃で助晶後、アルミ製バットに取り出した。この状態
のまま、100℃で6時間熟成して得られたブロック状
物を切削機で粉砕し、流動乾燥して、水分含量約0.3
%(w/w)の無水結晶トレハロース粉状物を原料固形
分当たり約85%の収率で得た。
【0086】強力な脱水作用を有する本品は、飲食物、
化粧品、医薬品又はその製造原料若しくは加工中間物の
脱水剤として、さらには、上品な甘味を有する白色粉末
甘味剤として飲食物、化粧品、医薬品を始めとする各種
組成物に有利に配合使用できる。
【0087】
【発明の効果】以上説明したように、この発明は、マル
トース及びトレハロースに作用して、それぞれトレハロ
ース又はマルトースを生成する、従来未知の全く新規な
酵素の発見に基づくものである。この発明は、組換えD
NA技術により、斯かる酵素を大規模且つ効率的に生産
する道を拓くものである。この発明の組換え型酵素を使
用する変換方法により、マルトースは極めて効率的にト
レハロースとグルコース及び/又はマルトースからなる
糖組成物に変換される。トレハロースはまろやかで上品
な甘味を有し、しかも、分子中に還元性基を有しないの
で、着色や変質の懸念なく飲食物一般を甘味付けできる
実益がある。くわえて、この発明の組換え型酵素はアミ
ノ酸配列まで明らかにされた酵素であり、食品等への配
合使用を前提とするトレハロースの製造に安心して使用
し得るものである。
【0088】この発明は斯くも顕著な作用効果を奏する
意義のある発明であり、斯界に貢献すること誠に多大な
発明であると言える。
【0089】
【配列表】 配列番号:1 配列の長さ:20 配列の型:アミノ酸 トポロジー:直鎖状 配列の種類:ペプチド 配列 Ser Lys Val Leu Gly Glu Glu Pro Glu Trp Phe Arg The Ala Val Phe Tyr 1 5 10 15 Glu Val Leu 20
【0090】配列番号:2 配列の長さ:11 配列の型:アミノ酸 トポロジー:直鎖状 配列の種類:ペプチド
【0091】配列番号:3 配列の長さ:1704塩基対 配列の型:核酸 トポロジー:直鎖状 配列の種類:Genomic DNA 配列の特徴 起源 生物名:ピメロバクター・スピーシーズ 株名:FERM BP−4315 配列 TCG ACC GTC CTG GGC GAG GAA CCC GAG TGG TTC CGC ACG GCG GTC TTC 48 Ser Thr Val Leu Gly Glu Glu Pro Glu Trp Phe Arg Thr Ala Val Phe 1 5 10 15 TAC GAG GTC CTG GTG CGG TCC TTC CGG GAC CCC AAC GCC GGC GGC ACG 96 Tyr Glu Val Leu Val Arg Ser Phe Arg Asp Pro Asn Ala Gly Gly Thr 20 25 30 GGT GAC TTC CGC GGC CTG GCG GAG AAG CTC GAC TAC CTG CAG TGG CTC 144 Gly Asp Phe Arg Gly Leu Ala Glu Lys Leu Asp Tyr Leu Gln Trp Leu 35 40 45 GGC GTC GAC TGC CTG TGG GTG CCG CCG TTC TTC AGC TCG CCG CTG CGC 192 Gly Val Asp Cys Leu Trp Val Pro Pro Phe Phe Ser Ser Pro Leu Arg 50 55 60 GAC GGC GGG TAC GAC GTC GCC GAC TAC ACC GGG ATC CTC CCG GAG ATC 240 Asp Gly Gly Tyr Asp Val Ala Asp Tyr Thr Gly Ile Leu Pro Glu Ile 65 70 75 80 GGC ACG GTC GAG GAC TTC CAC GCC TTC CTC GAC GGC GCG CAC GAG CGC 288 Gly Thr Val Glu Asp Phe His Ala Phe Leu Asp Gly Ala His Glu Arg 85 90 95 GGG ATC CGG GTG ATC ATC GAC TTC GTC ATG AAC CAC ACG AGT GAC GCG 336 Gly Ile Arg Val Ile Ile Asp Phe Val Met Asn His Thr Ser Asp Ala 100 105 110 CAC CCG TGG TTC CAG GCC TCC CGC AGC GAT CCC GAC GGC CCG TAC GGC 384 His Pro Trp Phe Gln Ala Ser Arg Ser Asp Pro Asp Gly Pro Tyr Gly 115 120 125 GAC TTC TAC GTC TGG TCC GAC ACC GAC GAG CTC TAC CAG GAC GCG CGG 432 Asp Phe Tyr Val Trp Ser Asp Thr Asp Glu Leu Tyr Gln Asp Ala Arg 130 135 140 GTG ATC TTC GTC GAC ACC GAG CCG TCG AAC TGG ACG TGG GAC CAG ACC 480 Val Ile Phe Val Asp Thr Glu Pro Ser Asn Trp Thr Trp Asp Gln Thr 145 150 155 160 CGC GGC CAG TAC TAC TGG CAC CGC TTC TTC CAC CAC CAG CCC GAC CTG 528 Arg Gly Gln Tyr Tyr Trp His Arg Phe Phe His His Gln Pro Asp Leu 165 170 175 AAC TTC GAC AAC CCG AAG GTC CAG GAC GCC ATG CTG GAG GCG ATG GCG 578 Asn Phe Asp Asn Pro Lys Val Gln Asp Ala Met Leu Glu Ala Met Ala 180 185 190 TTC TGG CTC GAC ATG GGC CTC GAC GGC TTC CGG CTC GAC GCG GTG CCC 624 Phe Trp Leu Asp Met Gly Leu Asp Gly Phe Arg Leu Asp Ala Val Pro 195 200 205 TAC CTC TAC GAG CGT CCC GGC ACC AAC GGC GAG AAC CTC CCC GAG ACG 672 Tyr Leu Tyr Glu Arg Pro Gly Thr Asn Gly Glu Asn Leu Pro Glu Thr 210 215 220 CAC GAG ATG CTC AAG CGG GTG CGG CGC TTC GTC GAC GAC AAC TAC CCC 720 His Glu Met Leu Lys Arg Val Arg Arg Phe Val Asp Asp Asn Tyr Pro 225 230 235 240 GAC CGG GTG CTG CTG TAC GAG GCG AAC CAG TGG CCG ACC GAC GTG GTG 768 Asp Arg Val Leu Leu Tyr Glu Ala Asn Gln Trp Pro Thr Asp Val Val 245 250 255 GAG TAC TTC GGG CCC GAG GAG CGT GAG GAC GGC ACG GTC GTC GGG CCC 816 Glu Tyr Phe Gly Pro Glu Glu Arg Glu Asp Gly Thr Val Val Gly Pro 260 265 270 GAG AGT CAC ATG GCC TTC CAC TTC CCG GTG ATG CCG CGC ATC TTC ATG 864 Glu Ser His Met Ala Phe His Phe Pro Val Met Pro Arg Ile Phe Met 275 280 285 GCG GTG CGC CGC GAG TCG CGC TTC CCG ATC TCG GAG ATC ATG GAG CAG 912 Ala Val Arg Arg Glu Ser Arg Phe Pro Ile Ser Glu Ile Met Glu Gln 290 295 300 ACG CCG GCG ATC CCG GAG GGC TGC CAG TGG GGC ATC TTC CTG CGC AAC 960 Thr Pro Ala Ile Pro Glu Gly Cys Gln Trp Gly Ile Phe Leu Arg Asn 305 310 315 320 CAC GAC GAG CTG ACC CTC GAG ATG GTC ACC GAC GAG GAC CGC GAC TAC 1008 His Asp Glu Leu Thr Leu Glu Met Val Thr Asp Glu Asp Arg Asp Tyr 325 330 335 ATG TGG GGC GAG TAC GCC AAG GAC CCC CGC ATG AAG GCC AAC ATC GGC 1056 Met Trp Gly Glu Tyr Ala Lys Asp Pro Arg Met Lys Ala Asn Ile Gly 340 345 350 ATC CGG CGG CGG CTC GCG CCG CTG CTC GAC AAC GAC ACG AAC CAG ATC 1104 Ile Arg Arg Arg Leu Ala Pro Leu Leu Asp Asn Asp Thr Asn Gln Ile 355 360 365 GAG CTG TTC ACC GCG CTG CTG CTG TCG CTG CCC GGC TCC CCC GTC CTG 1152 Glu Leu Phe Thr Ala Leu Leu Leu Ser Leu Pro Gly Ser Pro Val Leu 370 375 380 TAC TAC GGC GAC GAG ATC GGC ATG GGC GAC AAC ATC TGG CTC GGT GAC 1200 Tyr Tyr Gly Asp Glu Ile Gly Met Gly Asp Asn Ile Trp Leu Gly Asp 385 390 395 400 CGC GAC GGC GTG CGT ACG CCG ATG CAG CGG ACC CCC GAC CGC AAC GTC 1248 Arg Asp Gly Val Arg Thr Pro Met Gln Arg Thr Pro Asp Arg Asn Val 405 410 415 GGC TTC TCG GCG GCC ACG CCC GGC AAG CTG CAC CTG CCG ACG ATC CAG 1296 Gly Phe Ser Ala Ala Thr Pro Gly Lys Leu His Leu Pro Thr Ile Gln 420 425 430 GAC CCG GTC TAC GGC TAC CAG AGC GTC AAC GTC GAG GCG CAG CTG GAG 1344 Asp Pro Val Tyr Gly Tyr Gln Ser Val Asn Val Glu Ala Gln Leu Glu 435 440 445 AAC CCC TCC TCG CTG CTG CAC TGG ACC CGC CGG ATG ATC CAC ATC CGC 1392 Asn Pro Ser Ser Leu Leu His Trp Thr Arg Arg Met Ile His Ile Arg 450 455 460 CGC CAG CGC GAC GCC TTC GGG CTG GGC ACC TTC GAG GAC CTC GGC GGC 1440 Arg Gln Arg Asp Ala Phe Gly Leu Gly Thr Phe Glu Asp Leu Gly Gly 465 470 475 480 TCG AAC CCG GCG GTG CTG TCC TAC GTG CGC GAG CTG CCG GGC GAC GGG 1488 Ser Asn Pro Ala Val Leu Ser Tyr Val Arg Glu Leu Pro Gly Asp Gly 485 490 495 GGC GAC GAC GTG ATC CTC TGC GTC AAC AAC CTG TCC CGC TTC CCG CAG 1536 Gly Asp Asp Val Ile Leu Cys Val Asn Asn Leu Ser Arg Phe Pro Gln 500 505 510 CCG GTC GAG CTC GAC CTC CGG AAG TAC GAG GGC CGG GTA CCG GTG GAG 1584 Pro Val Glu Leu Asp Leu Arg Lys Tyr Glu Gly Arg Val Pro Val Glu 515 520 525 CTG ATC GGC GGC GTG CCG TTC CCC GCC GTC GGG GAG CTC CCG TAT CTC 1632 Leu Ile Gly Gly Val Pro Phe Pro Ala Val Gly Glu Leu Pro Tyr Leu 530 535 540 CTG ACG CTC AGC GGG CAC GGC TTC TAC TGG TTC CGG CTC ACG GAT CCG 1680 Leu Thr Leu Ser Gly His Gly Phe Tyr Trp Phe Arg Leu Thr Asp Pro 545 550 555 560 GAC ACG ACC GGG AGG CCC GTC CTG 1704 Asp Thr Thr Gly Arg Pro Val Leu 565
【図面の簡単な説明】
【図1】ピメロバクター・スピーシーズR48が産生す
る酵素の至適温度を示す図である。
【図2】ピメロバクター・スピーシーズR48が産生す
る酵素の至適pHを示す図である。
【図3】ピメロバクター・スピーシーズR48が産生す
る酵素の温度安定性を示す図である。
【図4】ピメロバクター・スピーシーズR48が産生す
る酵素のpH安定性を示す図である。
【図5】この発明による組換えDNAであるpBRM8
の構造を示す図である。
フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 C12P 19/24 7432−4B //(C12N 9/10 C12R 1:01) (C12N 1/21 C12R 1:01) (C12N 15/09 ZNA C12R 1:01) C12R 1:01)

Claims (27)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 下記の理化学的性質を有する組換え型酵
    素。 (1) 作用 マルトースに作用させると、トレハロースを生成する。
    トレハロースに作用させると、マルトースを生成する。 (2) 分子量 SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動法により測定
    すると、分子量値約57,000乃至67,000ダル
    トンを示す。 (3) 等電点 等電点電気泳動法により測定すると、約4.1乃至5.
    1に等電点を示す。
  2. 【請求項2】 下記の化1に示すN末端からのアミノ酸
    配列かそれに相同的なアミノ酸配列を有する請求項1に
    記載の組換え型酵素。 【化1】
  3. 【請求項3】 請求項1乃至2に記載の組換え型酵素を
    コードするDNA。
  4. 【請求項4】 下記の化2に示す5´末端からの塩基配
    列又はそれに相同的な塩基配列若しくはそれらに相補的
    な塩基配列を有する請求項3に記載のDNA。 【化2】
  5. 【請求項5】 遺伝子コードの縮重に基づき、化1のア
    ミノ酸配列を変えることなく、化2の塩基配列における
    塩基の1個又は2個以上を他の塩基で置換した請求項3
    又は4に記載のDNA。
  6. 【請求項6】 ピメロバクター属の微生物に由来する請
    求項3、4又は5に記載のDNA。
  7. 【請求項7】 請求項1乃至2に記載の組換え型酵素を
    コードするDNAと、自律増殖可能なベクターを含んで
    なる複製可能な組換えDNA。
  8. 【請求項8】 DNAが化2に示す5´末端からの塩基
    配列又はそれに相同的な塩基配列若しくはそれらに相補
    的な塩基配列を有する請求項7に記載の複製可能な組換
    えDNA。
  9. 【請求項9】 DNAが、遺伝子コードの縮重に基づ
    き、化1のアミノ酸配列を変えることなく、化2の塩基
    配列における塩基の1個又は2個以上を他の塩基で置換
    したものである請求項7又は8に記載の複製可能な組換
    えDNA。
  10. 【請求項10】 DNAがピメロバクター属の微生物に
    由来する請求項7、8又は9に記載の複製可能な組換え
    DNA。
  11. 【請求項11】 自律増殖可能なベクターがプラスミド
    ベクターBluescript II SK(+)であ
    る請求項7、8、9又は10に記載の複製可能な組換え
    DNA。
  12. 【請求項12】 請求項1乃至2に記載の組換え型酵素
    をコードするDNAと自律増殖可能なベクターを含んで
    なる複製可能な組換えDNAを適宜宿主に導入してなる
    形質転換体。
  13. 【請求項13】 DNAが化2に示す5´末端からの塩
    基配列又はそれに相同的な塩基配列若しくはそれらに相
    補的な塩基配列を有する請求項12に記載の形質転換
    体。
  14. 【請求項14】 DNAが、遺伝子コードの縮重に基づ
    き、化1のアミノ酸配列を変えることなく、化2の塩基
    配列における塩基の1個又は2個以上を他の塩基で置換
    したものである請求項12又は13に記載の形質転換
    体。
  15. 【請求項15】 DNAがピメロバクター属の微生物に
    由来する請求項12、13又は14に記載の形質転換
    体。
  16. 【請求項16】 自律増殖可能なベクターがプラスミド
    ベクターBluescript II SK(+)であ
    る請求項12、13、14又は15に記載の形質転換
    体。
  17. 【請求項17】 宿主が大腸菌である請求項12、1
    3、14、15又は16に記載の形質転換体。
  18. 【請求項18】 請求項1乃至2に記載の組換え型酵素
    をコードするDNAと自律増殖可能なベクターを含んで
    なる組換えDNAを適宜宿主に導入してなる形質転換体
    を培養し、培養物から組換え型酵素を採取してなる組換
    え型酵素の製造方法。
  19. 【請求項19】 DNAが化2に示す5´末端からの塩
    基配列又はそれに相同的な塩基配列若しくはそれらに相
    補的な塩基配列を有する請求項18に記載の組換え型酵
    素の製造方法。
  20. 【請求項20】 DNAが、遺伝子コードの縮重に基づ
    き、化1のアミノ酸配列を変えることなく、化2の塩基
    配列における塩基の1個又は2個以上を他の塩基で置換
    したものである請求項18又は19に記載の組換え型酵
    素の製造方法。
  21. 【請求項21】 DNAがピメロバクター属の微生物に
    由来する請求項18、19又は20に記載の組換え型酵
    素の製造方法。
  22. 【請求項22】 自律増殖可能なベクターがプラスミド
    ベクターBluescript II SK(+)であ
    る請求項18、19、20又は21に記載の組換え型酵
    素の製造方法。
  23. 【請求項23】 宿主が大腸菌である請求項18、1
    9、20、21又は22に記載の組換え型酵素の製造方
    法。
  24. 【請求項24】 培養物中の組換え型酵素を遠心分離、
    瀘過、濃縮、塩析、透析、分別沈澱、イオン交換クロマ
    トグラフィー、ゲル瀘過クロマトグラフィー、疎水クロ
    マトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、
    ゲル電気泳動及び/又は等電点電気泳動により採取する
    請求項18、19、20、21、22又は23に記載の
    組換え型酵素の製造方法。
  25. 【請求項25】 マルトースに請求項1乃至2に記載の
    組換え型酵素を作用させてトレハロースを生成させる工
    程を含んでなるマルトースの酵素的変換方法。
  26. 【請求項26】 マルトース含量が50%(w/v)ま
    での水性媒体に有効量の組換え型酵素を共存せしめ、温
    度4乃至45℃、pH5.5乃至9.0で反応させる請
    求項25に記載のマルトースの酵素的変換方法。
  27. 【請求項27】 反応物がトレハロースを固形物当たり
    約80%まで含む請求項25又は26に記載のマルトー
    スの酵素的変換方法。
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